BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】 公演情報 劇団バッコスの祭「BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ニュースの向こう側の事件にスポットを当てた考えさせられる作品
    テロリストって、
    ・日本には存在しない
    ・海外で無差別に爆破テロとかを実行する
    ・恐ろしい凶悪にして狂信的な(人間性の壊れた)怪物達

    今までニュースの向こう側の事件を目にする度に
    そんなふうに思っていました。

    しかし、
    (全てが正しい主張とは言えませんが)
    そもそもは現状の自国や世界の状況を憂い、
    それを改善しより良き状態に持って行きたいと思いつつも、
    政府その他の状態からまっとうな手段が通じない/使えない状況下において、
    最後の手段としての武装蜂起その他の手段に出た人達、
    でもあるんですね。
    (単なる悪人ではなく、一番に国と国民の事を考えた人達、といえるのかも…)


    本劇の中のテロリスト達は本当に「人間」でした。
    (ペルーのリアルな現状は把握していませんが)
    貧富の差および国民全員がまっとうな教育を受けられない
    現状を憂いてテロリスト集団を率いたリーダー。

    そして今日食う金にも困る、ただそれだけの理由で
    アルバイトとしてテロリストメンバーに引きこまれた人まで。

    そこに居るのは、この犯行を犯したのはあくまでも「人」でした。


    「ストックホルム症候群」
    立てこもり事件などの異常な状況下において、
    犯人と人質達の間に一種の信頼関係が産まれた状態、
    でしたっけ?

    それが関わってくるのは当初から予想がつきましたが、
    確かに目の前で”テロリスト”と呼ばれる人達が
    (自分達の行動やその目的、犯人と人質という人と人との関係に対して)
    苦悩/葛藤し、「単なる人」としての夢を語り討論しあう姿を見ていて、
    彼らを「単純な悪」とみなす事は
    観客の視点であっても出来ないと思いました。
    (自分が日本という比較的ぬるま湯な国に産まれたのでなければ、
    多分に共感出来る考え方であったとも思えます。)


    実際
    ・「日本大使公邸で起きた」という点
    ・当時のフジモリ元大統領が日系人であるという点
    以外において、
    本事件を日本人として深く考えた事はありませんでした。

    しかし、「強行突入にて人質死傷者0、軍隊死亡者2名」という
    強行突入ではありえないような幸運とも思われる結果について、

    背景が本劇の通りであったとしてもおかしくない、
    そう思える「骨太(説得力のある)」物語であり、
    各人間達の思考と行動だったと思います。

    ネタバレBOX

    【思った事】
    ・ 最初は配役/単純な出演者数などから
      テロリスト達が数百人の人質をとって立てこもった、
      という状況を「うまくは表現出来ていないなあ」など、
      演出面での不満もありました。

      実際人質となった主要メンバーについてすら
      その設定を「覚えきれるかな?」などの不安もありました。

    ・ 物語が展開していくにつれて、
      人質だけではなくテロリスト達も
      それぞれが「人間」として動き出し、
      人質達との関わり方が変わっていく様を見て、
      「ストックホルム症候群」もので
      お涙頂戴的に終わるのかな、とラストを想像しました。

    ・ しかし、単なる「一緒に暮らして来たから仲良くなった」ではなく、
      テロリストのリーダーと(架空の存在である)フジモリ大統領の娘の
      「本当にこの国の現状を変えるにはどうしたらよいか?
      軍隊は必要なのか?そしてその維持費は国家予算のどれほどが妥当か?」
      など、テロリストという単なる凶悪集団であったはずの人(達)が、
      この国(ペルー)の未来について本気で理想を持った上で
      人質相手であっても真面目に討論しあう光景に
      涙腺に来るものがありました。

      「ああ、この人は(決して間違いではない)”夢”を持っているんだな」と。

    ・ 最終局面に入り、人質とテロリスト達の中に信頼関係が産まれ、
      午後テロリスト達が運動不足の解消の為にサッカーをしている、
      と突入チャンスを伝えられる光景を見ていても、
      「本当に時と場所、国の状況が悪くなければ
      この人達は普通に生きられた”ただの”人達だったのに…」
      と、ノンフィクション題材ゆえに定められた結末へ向かう様にも
      何か悲しみが漂いました。

    ・ 実際当時考察のあった事なのでしょうか?
      フジモリ元大統領が
      立てこもりの長期化による「ストックホルム症候群」の発生、
      テロリスト達が人質を守る盾になる事を狙っていたというのは。
      (ジャーナリストの言葉に強い説得力を感じました。)

    ・ テロリストのリーダーが最後に残した命題、
      「もし自分達の理想とする国が出来たとして、
      それに武装し向かってくるものがあったらどう対処したらいい?」
      難しすぎる問題だと思います。

      とってはいけない手段を取った以上、
      それに対しては「テロには屈しない」という姿勢を見せなければいけない、
      というのは理解できます。
      しかし、その意図したもの/目的が真に正しいものであった場合、
      その思想までも無碍(むげ)にしてしまって良いものかどうか…

    ・ ジャーナリストの言う「国民の知る権利」、
      この言葉を使って色々な人達から「自分だけが」
      知りたい事、売れる事、を知ろうとする態度、
      「ああ、これぞ日本で最も毛嫌いされるマスゴミの姿勢(本性)」
      なんだろうなあ、と思いました。
      
      劇中の女性ジャーナリストを含め、まっとうなジャーナリズム精神にもとづき、
      ではなく、単に他社の先を越して売れる為に、
      どんな場面でも「知る権利」などという言葉を
      使う連中こそ成敗されてしまえばいいのに、
      なんて考えたりもしました。

    ・ タイトルの「BIRTH」(誕生)、こう名付けた理由について
      考えてみましたが、
      テロリストのリーダーが、当時のペルーという国に対して、
      その問題を投げつけた、国家としての命題が「産まれた日」、
      という事でいいんですかね?

      劇中ではフジモリ元大統領の娘と
      日本大使館大使の2人がそれを受け止めていましたが、
      実際の「日本大使公邸人質事件」では
      このテロを起こした理由/目的を誰が受け止めてくれたのでしょう…


    なんて事を考えたりしました。
    劇団バッコスの祭さんは毎回刺さる「テーマ」で攻めてくるなあ( ´ー`)

    お芝居中の細かい出来事やそこに凝らされる技巧などといった点を
    あまり気にせず見られるので、後々の感想をまとめるのは楽なのですが、
    「演出」(セット/照明/音響その他)面では
    ちょっと物足りない、と感じているのかも知れません(自分が)。

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    2015/09/06 16:46

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