毛皮のマリー
平常
プーク人形劇場(東京都)
2007/10/23 (火) ~ 2007/10/28 (日)公演終了
満足度★★★
人形劇というより、一人芝居
R-15指定 人形劇と銘打っているだけあり、
ほのぼのとした人形劇ではありません。
また浄瑠璃とも違います。
抽象的で幾何学的な人形が怪しく生々しい。
びっくりした。
木を彫って?作ったらしい人形は非常に柔かく見え、
芸術的であった。
しかし、これは人形劇というよりも、平 常 タイラジョーという人の
一人芝居なのである。
イメージとしては「いっこく堂」のステージを見ている感覚に近い。
そういう意味では、戯曲はしっかりとしているので
話に見応えはあるのだが
「え?彼自身が美少年?」、そう、タイラジョー氏の素顔に興味が
なければ、全く持って、魅力がない。
特に官能的な作品だけども、決して色気のあるタイプではない
タイラジョー氏が自分に酔いしれているかのように
見える芝居の構成は、正直、水があわなかった。
彼自身のテクニックは、素晴らしい。
しかし彼自身のキャラは、ステージで前面に出るのは
どうかと。ビジュアル面、センス面においても。
それでも、人気のこの公演。
なんと来年は博品館で上演とか。
細やかな動きの優雅さを堪能する、人形劇を
博品館のような中劇場で。
やっぱり人形は脇役で、彼自身が主役なんだろう。
個人的な感想として、それでは一巡したら飽きられるだろう。
教育再生シリアスゲーム『昭和クエスト』
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2007/10/06 (土) ~ 2007/10/21 (日)公演終了
満足度★★★
B級の大衆演劇
12年ぶりにSETの舞台を見ました。
久々のSETは、東京芸術劇場なんて大きな上等な小屋で
大掛かりな舞台を展開してましたが
残念ながら、量産臭さがする埃っぽいB級な大衆演劇の
印象が残りました。楽しいは楽しいですよ。
年に1回程度、芝居を楽しまれる方、ご年配の方には
最適な作品と言えましょう。
相変わらず、いろいろ詰め込まれたバラエティショーですが、
歌も踊りも芝居も、どうも一流なエンターテイメントショーとは
感じられなかった。華がないのだ。
先入観というか、昔の印象が強かったので期待値とのギャップと
思うので、これは僕個人の印象です。
非常に分かり易い流れ、作風、ギャグもベタベタ、
パクリと思われたオープニングや、「今さら」と思うような
何丁目かの夕日のような昭和の設定。
お約束な結末・・・大衆演劇としては間違っていませんが
SETの個性というか、味わいが感じられませんでした。
12年前は、シアターアプルで岸谷五郎や寺脇康文が、まだ在籍していて
三宅裕司も若かった・・・・。
ダンスシーンはキレがあって格好良かったし、
三宅裕司のシーン、岸谷らのシーン、それぞれに見応えがあり
密度の濃い作品だった。(最後は、なんか事件ものだった)
今、三宅裕司の年代と、若手と、年齢差が開きすぎて
どこかの企業じゃないけど、中間層が殆ど今回の作品にはいなく、
作品として、苦しそうな印象が残る、
劇団だから、若手を育てなきゃいけないのは宿命だけど、
話の軸を彼らにしているせいで、見応えがなく安っぽいのだ。
B級になってしまうのだ、こんな一流の劇場で上演しているから
余計に。
三宅・小倉は、狂言回しになるしかないので、
彼らの本来の役者としての味わいが、出せれない。
(出そうと思うと、その年代の人を集めた作品にせざるえない。)
そんな彼らが前面に出た外部作品は、本田劇場や、銀河劇場といった
もっと小さな劇場で上演しているのに、
劇団公演は理由はわからないけど、1000人超える大劇場だから
密度も薄く、感動も薄い。
いっそのこと、吉本新喜劇のように
単純でわかりやすいギャグ満載な方向に行けば
成功するかもしれませんね。
そうそう、劇術劇場で上演している作品にもかかわらず、
チケット代金が6500円まで、というのは
今の時代なのに良心的でしょう。
それに見合う作品かどうかは別として。
見続けている方は、愛着もあるし事情も色々存じているので、
これは非常に失礼な意見かもしれませんが
進化している印象よりも退化している印象になってしまいました。
海野広大 戦います
脱線劇団PAGE・ONE パートII
シアターブラッツ(東京都)
2007/10/11 (木) ~ 2007/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
なんと、第24回公演!
脱線劇団・・・ん~知らなかった。
あの「へそのはなし」を3回リピートして見に行った
シアターブラッツの次回公演で紹介が
あったので足を運んだのですが
娯楽に徹した良心的な作品を作り出しています。
コントなのかコメディなのか、よくわからなけど
楽しく過ごした90分。
難しいことは一切なし、バカバカしいけど、後に何も残らないけど、
それはそれで十分じゃないですか。
タイトルロールを演じた岩井さんという人は、
外部の人っぽいんだけど、渡辺正行に似た雰囲気ではあるけど
特に目立つタイプではなく、
タイトルロールからしてスター芝居のようだけど
そんな雰囲気はありません。
途中途中でミニコントやショーがあるバラエティショー。
こんな娯楽を、もっと身近に楽しめる習慣が広がれば、
時間が空いたときにフラっと寄れるような存在になればいいなぁと
感じました。
おしゃれで、カラっとしていて、くだらないけど面白い、気取らないけど
ギリギリ品がある、今後も注目していきたい劇団と思いました。
青熊辻宮浅河鰻
双数姉妹
王子小劇場(東京都)
2007/10/11 (木) ~ 2007/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
脚本は素晴らしい
4つのオムニバスになっており、それぞれに個性のある作品。
とても見応えはある。
しかしながら役者は、この作品を、消化しきれていないのが歯がゆい。
小劇場に顕著なんだけど、話の展開が面白ければ、
少々の荒は気にならない。でも、どうにもバランスの悪さが
鼻につく。
後から知ったんだけど、この作品は新人公演だったよう。
だからかどうか、わからないけど
出演者全員が、自分を前面に出すのに必死なのだ。
相手の芝居に合わせているとは思えない。
自分の役を消化するのに必死なのだろう。
一人ひとりを見れば、決して悪くはない。
特に女性で、バスケットボールの話でディレクター?役をしていた
彼女は「室井滋のような、個性派を狙っているんだろうなぁ」
まるわかりな演技で、とても目立つんだけど浮いてしまっている。
やっぱり、お芝居ってコントラストが大事なんだなぁ。
個人が上手くても、バランスが悪かったら、印象は変わるんだ。
群像劇で、ちゃんと見応えがある作品の役者さん達は
「引き」の演技も出来るから、ちゃんと芝居が出来あがっているんだなぁ。
まぁこういうのは演出家の仕事なんだろうけど。
そういや、この劇団の人達も、お見送りしなかったなぁ。
新人なんだから、ちゃんと挨拶しないと。
御客さんは、忙しい中、新人芝居を見に劇場に行ってるんだから。
「肉体の神秘」
おども
シアターPOO(東京都)
2007/10/13 (土) ~ 2007/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
新たな才能の誕生に立ち会えた幸せ
「こんなところに劇場が!?」と思う場所にあるシアターPOO,
何年も建物の前を歩いていましたが、全く気づきませんでした。
雑居ビルの中の3階、スナックのステージを舞台に変えたのでしょう、
30人も入ったら息苦しくなるほどの小さな劇場、ビールを飲みながら
芝居を楽しめました。
チケット代は、観劇料¥1000+ドリンク代¥500 計¥1500と
映画よりも安い価格で、十分楽しめた2人芝居100分。
若い2人が、目・口・胸・・・など9つの部分をテーマに
オムニバス形式で作品を繰り広げます。
芝居か、コントか分かれ目が微妙ですが
楽しさの中に、毒や風刺もいれ、退屈せずに芝居に
引き込まれました。
限られた舞台条件の中、小道具や照明も非常に工夫して展開しており、
手作り感が上手く成功していました。
なにより、9つの作品、全てキャラクターが違うのですが
役者の2人は、見事に演じ分けています。
それぞれのキャラクターを使い分け、大人にも子供にも男性にも
女性にも移り変わり、今後、演劇をしょっていく2人になりそうな
予感さえ、ありました。
この作品のスタッフ、役者さん達の過去は知りません。
ひょっとしたら、どこかの劇団で活躍されていたのかもしれませんが
「おども」という劇団としては第一回公演、
宣伝も殆どされていないと思いますが、
偶然見つけて、鑑賞する事が出来た事に喜びを感じました。
新たな才能の誕生に立ち会えた幸せって滅多にないじゃないですか。
これからも応援したくなりました。
チケットをメールを通じて劇団で、手配をしたのですが、
非常に対応も良かったです。
どんなに素晴らしい作品でも、スタッフの方の姿勢が曲がっていると、
げんなりしますもんね。
願わくば、終演後、お見送りは、して欲しかった。
その日は、24人しか観客もいないんだから。
よるべナイター
FUKAIPRODUCE羽衣
サンモールスタジオ(東京都)
2007/10/18 (木) ~ 2007/10/21 (日)公演終了
これは、カルト集団の祝祭か!!!
小劇場だから、何をしてもかまわないとは思うけど、
それを承知の上での印象・・・。
縁があって足を運んだサンモールスタジオ、
何だか新興宗教の催し物かと思うような、
意味深といいますか、狂気の沙汰のような祝祭が
繰り広げられてました。
開演前から「劇場が狭い上混雑しておりますので上演時間中にトイレなどの
出入りは非常に困難です、お早めに」と案内があったよう、
小さいながら劇場は超満員。
以外なことに、若い男性が多く、小劇場の客層とは少し違うのが印象的。
始まって10分、20分過ぎた頃から、
非常に居心地が悪いというか気分が悪くなってきて
劇場から出たかったんだけど
案内のよう、一度、祝祭が始まってしまったら、
もう退場は許されず・・・。約100分、この祝祭に付き合っておりました。
この劇団は一体何なんだろう?
耳障りの悪い疲れた声で歌ったり朗読のように台詞を言ったり
キレの悪い踊りを繰り広げたり
怪しげな舞台装置が敷き詰められていたり・・・
第七回ということなので定期公演をしている劇団なんでしょう、
女性陣はともかく、怪しげな男優陣の見苦しい叫びの場面が多く、
それ念仏のような呪文が唱えられ・・・。
これは実験芝居とか、抽象芝居という類とも違うと思うんだけど
観客はいるので、何か支持をされてるってことでしょうか。
いろいろな表現方法について否定はしませんが
僕の守備範囲とは遠く離れた作品でした。
評価は不能です。
演じる女たち<3部作> -ギリシャ悲劇からの断章-
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2007/10/06 (土) ~ 2007/10/08 (月)公演終了
シアターコクーンは素晴らしい
開館当初、中島みゆきが宣伝部長よろしく「何でも出来る可能性を
秘めたホール」と触れ込んでいたシアターコクーン。
久しぶりに、このホールの素晴らしさ、このホールの懐の広さを、
堪能出来た作品です。
詳細はネタバレに書くとして、とにかく世界最高水準のホールと、
言えましょう。
どんな素晴らしい料理も、それを提供する店の雰囲気やサービスに
満足できなければ印象が変わるもの、皿や食器などのハードもしかり。
このホールで提供されていると、格調が高く見えるし、
実際満足度も高いんだなぁと感じました。
最近は蜷川作品や商業演劇に近い御馴染みの俳優さんを
集めただけの作品が多く、食傷気味になって、足も遠のいていましたが、
こういう情報量の少ない作品を上演した時こそ、
その素晴らしさを再確認できるというものでしょう。
作品としては、いわゆる前衛劇なので、非常に難解な作品。
上品な方、知的な方、またそれっぽく見られた方は
「すばらしいわねぇ」と述べられるでしょう。
劇評なら、「五感に訴えかける」「作家性が強く反映されている」と、
きっと書かれるのでしょうが、正直僕には????
玄人好みする作品って言われるのかもしれませんね。
絶賛した「へそのはなし」とは真逆に位置するような作品。
ギリシャ悲劇がベースになっているようですが、
抽象的な表現が多く、全く訳わかりません。
シアターXが専売特許で上演するような作品を、
なんで、コクーンで???って感じではあります。
客席も閑古鳥。シアターXなら程よく埋まる客数。
日本語で上演されても訳わからない内容なのに、
ウズベキスタン語とかイラン語とかインド語とか、
馴染みのない語感と宗教観が入り、僕には忍耐が必要な3時間弱。
敷居が高い作品というか、娯楽性を排除した真面目な作品というか、
芸術性に富んだ作品なんでしょう。
僕の守備範囲からは外れていました。
劇場の評価にも繋がりますが、美術、照明は素晴らしいです。
非常に美しい幾何学的な舞台装置は、表彰物と思います。
「芸術の秋」を堪能するには、ふさわしい作品と思います。
僕は年中堪能しているので、今回はご遠慮申し上げます。
※一旦、評価しましたが守備範囲外な作品なので、
評価をする立場ではございませんでした。
評価を取り消します、失礼しました。
ウェストサイド物語
劇団四季
四季劇場 [秋](東京都)
2007/09/08 (土) ~ 2008/01/20 (日)公演終了
満足度★★★
古い・・・あまりにも古過ぎる・・・
「世界で唯一、初演版を上演している」
「ミュージカルの王様である初演版を尊重して一切手を加えない」
四季は、誇らしげに語っているけども
すでに50年程度昔に上演された作品が、その当時のまま
上演されれば、時代錯誤を感じられずには、いられない。
とにかく、古い・・・あまりにも古過ぎる演出で、
こんなに素晴らしい作品を、安っぽい、陳腐な作品に
してしまっていた。
これが時代劇であるならば、「伝統」というスタイルで
上演をし続ける価値があるだろう。
また小さな劇場で限られた来場者に向けて
公演をされる分には、何も不満を持つまい。
勿論ファミリーミュージカルや、ディズニーなどの
ファンタジーの作品なら問題ない。
でも、この作品は等身大の人間を描き作家の思想が
含まれた作品。そのメッセージを伝える手段は
定期的な見直しをしなければならないと思う。
昭和30年代の「君の名は」が国民的大ヒット作品がありました。
これを今、作品として出しても懐かしさで楽しむ人はいても、
21世紀を生きている人は、面白いと感じるだろうか。
楽曲は色あせることなく素晴らしい、ダンスの振り付けも素晴らしい。
メインの役者も合格点。
トニーを演じる阿久津陽一郎は四季なんて閉鎖的な
世界にいるのが残酷に感じすぎるほど
大きなオーラを醸し出し、非常に安定感のある芝居を見せる。
見ごたえのある芝居を見せてくれ、チケット代の価値のある
存在感を見せてくれた。
きっと日本の若手ミュージカル役者の中では
トップクラスだろう。
マリアの木村花代は、芝居も歌もダメだけど、清楚なイメージがあり、
マリアのイメージにあう。
イメージが合えば、少々演技が下手でも気にならない。
リフの松島勇気、バレーダンサーで、四季と2足のわらじを履いている
人のようだけど、見ごたえのあるダンスを見せてくれた。
加藤敬二と樋口麻美のコンビは
クレイジーフォーユーと全く同じコンビネーションで
新鮮味がないけど、安定した芝居は見れる。
四季作品だから、御馴染みの顔が出るのは仕方ないでしょう。
・・・・と、素材はいづれも悪くないのに
ものすごく、埃っぽいというかカビくさい匂いが立ち込める
作品になってしまっているのは原因が2つ。
契約とか版権とか諸事情があるにしても、演出の古さと、
役者の平均年齢の高さゆえでしょう。
これは若さゆえの暴走、疾走の話のはずなのに
なんだか加齢臭漂うオッサン達がイガミあっている姿を見ていると
民族問題とか宗教問題といったテロのような話に
感じられてしまう。
舞台って、芸能って夢を売る仕事だと思います。
そして現代を映す仕事であり、誰かの人生に影響を与える仕事と、
思います。
何十年も前の作品を、ただ押し入れの奥から
引っ張り出してくるんじゃなくって、
アンテナを張った演出家が洗いなおした作品であり
思い入れを込めた作品を出して欲しいと思う。
あ~、非常に残念。
これ同じ素材を、日生か青山で東宝の制作で上演したら
(演出は亜門でも山田でもいいけど)
きっと、ここまでの不満はない思うなぁ。
期待が大きい分、失望も大きく・・・。
ミザリー
コマ・プロダクション
シアターアプル(東京都)
2007/09/29 (土) ~ 2007/10/10 (水)公演終了
満足度★★★
あまりにも平凡、あまりにも普通
浅利慶太は、「作品の中でキャスティングの重要性は60%」と、
語っていますが、この作品に関しては、100%。
スティーブン・キングの持つ原作の雰囲気にしても、
キャシーベイツ主演の映画にしても、
いづれも同じ、劇画チックというかベタベタなタッチで
展開する、いわばキャストの個性があれば
セットも照明も音楽も、何もいらない作品。
娯楽の殿堂、庶民の味方、コマスタジアム制作の作品なので、
どこにもヒネりもなければ、思想やテーマといった
小難しいことは、一切ありません。
作家や演出家の想いの欠片もありません。
そう、観客に考えさせてはいけないのがコマ流。
観客がポスターやチラシから想像出来る範囲の事を、
シンプルに、そつなく展開すのが流儀。
その点では、どこにも間違いがなく、どこにも抜けはありません。
でもねぇ、これは自分自身の問題なんだけど、
少しくらい新鮮味というか「あ、こんな見せ方もあるんだ」と
感じる部分は欲しいんだよね。作品の個性というかねぇ。
あまりにも平凡、あまりにも普通、どこにも冒険心がなくって
微妙なイライラ感が出てきたりして。
地方公演も多いし、これが正当法、間違いがないのは
わかっているんだけど、なんだろう、この後味の悪さ。
もう一つ。
これも個人的な意見だけど、
渡辺えり子改め渡辺えり、とか、竹中直人とか室井滋とか白石加代子とか、
いわゆるキワモノ役者を中心に据えた作品って、
なんだか品がなく見えるんだよね。
いわゆる個性派俳優の方は、あくまでも脇役で、作品にスパイスを
与えてもらうのが筋道かと。
これを、あっと驚くようなキャストで見せてみらえれば、
楽しいだろう、と思います。
心の移り変わりとか微妙な表情なんか必要なく
思いっきり大げさなギョウギョウしい芝居をしていれば
いいだけの作品なんだから。
太陽に灼かれて
劇団EXILE
ステラボール(Stellar Ball)(東京都)
2007/09/20 (木) ~ 2007/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
ゴージャスな学芸会
EXILEって殆ど知らないんですよ、だから出演者の中で
誰がEXILEか、わかるかなぁって思ってましたが
極端に、ホント冗談みたいに棒読みで台詞をいう数人がいたんで、
「あぁこの人達か」と、わかりました。
北区つかこうへい劇団を卒業した黒川恭佑とか下宮嬢のほうが
目立ってました、というよりアンサンブルは、非常に芝居が
しっかりしている(ように見える)。
ダンスも種類が違うのかもしれないけど、EXILEと、そんなに変わらない
レベルに見える。
このアンサンブルは非常にレベルが高く感じられた。
照明が凄いんです。
セピア色とか、見たことないようなコントラストがあって
ビジュアル的に見応えがありました。
これは、帝劇とか青山とか照明な立派な劇場は多々あれど
トップレベルと思います。
さすが、ユーミンな命名したステラボール。
ステンドグラスを模したようなスライドも美しい。
目まぐるしく変わるライティングで
ダークな世界、EXILEの世界観を再現する事には
成功していると思います。
天井も劇場にしては、とても高く開放感がある。
でも、他のインフラは宜しくないです。
他の方も意見してましたが、劇場内に段差が全くないので
舞台の底辺が全く見えないんです。
この作品は、底辺で寝ている人達の存在感も大切なのですが
それが見えないから、特に導入部は、何が何やら、話さえもわからない。
またヒロインが、床に寝て、何かしたりされたりする
シーンも多いんだけど、これも全くわからない。
構造は、すり鉢状ではなく、ステージ以上に
客席の横幅が広い上、ステージ脇に大きなスピーカーが
ぶらさがっているので、非常に視界を遮り、見づらい。
床は、ベニア板で作った敷座があり、その上にパイプ椅子。
昔の赤坂アクトシアターや宝塚1000days劇場よりも安っぽい作り。
このインフラで、チケットは9500円。
いかがなもんだろうか。
EXILEってファン層は小中学生?よくわからないけど。
まぁ話自体が、どんなアプローチでも、きっと殆どわからないと思う。
少年ジャンプかマガジンに出てくるような劇画調の話で
IQの低そうな若者(EXILEは決して若くないように見えますが・・・)が
勢いや血の気にまかせて拳銃やナイフを持って、
ヤンヤヤンヤ暴れているだけの話。
神だの悪魔だの、ツジツマを理解するには
努力を要するような話で、
「へそのはなし」で感動の極みを感じた後の作品だっただけに
「くだらない」。
ウトウト眠くなるんだけど、爆音や大音量がバンバンなるから
ビックリして目が覚める。
個人的には、こういう暴力的な話は、とても苦手。
なんでも来年3月には、劇団EXILE第二弾が決定しているとか。
ステラボールでだけは、上演しないでほしいですね。
ディレクション
劇団たいしゅう小説家
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2007/09/15 (土) ~ 2007/09/24 (月)公演終了
満足度★★★
ソープオペラの極み
川野太郎って船越英一郎に似てるなぁ、話が進むにつれて
「そろそろ叫び声が聞こえるんじゃないか」
「ここで誰か死体を発見するんじゃないか」なんて
変な妄想を持ちながら(笑)、見てました。
これは、アメリカとかで御馴染みの昼メロを
生ドラマ形式で公開録画している、いわゆるソープオペラを
狙っているんじゃないでしょうか。
笑いの質も、お涙の質も、とっても軽やかで
万人受けする非常にわかりやすい構成。
なんら刺激は、ありません。
劇団たいしゅうの前作、いしだ壱成の作品も、そんな感じだったから
この劇団のカラーなんでしょう。
(でも、舞台装置の雰囲気とか、話の流れが、
良く似ているのは、ちょっと・・・)
キャパ違うけど、三越劇場とか博品館とか、そういう劇場の客層を
狙って上演すればいいのに。
ただ、中身がソープオペラなのに、チケット代が
¥6000もする。これは高い!
せいぜい¥4000までの料金でしょう。
だから客席もガラガラ。
風邪引いて、熱が38度以上あったから、
劇場へ足を運びのを、どうしようかと真面目に悩んだけど
決して観客に判断を委ねたり、考えさせるような場面はなく
テンポよく複数の人物相関図を器用に構成していく
アンサンブルは、とっても気持ちよい。
作家とか女優とか別荘とか、本当にベタな設定ではあるけど
まぁ御愛嬌でしょう。
印象に残ったのは、曽世海児ってStudioLifeの人。
いやぁこの人の立ち姿は美しい。
とにかく舞台の上で目立つのだ。
彼が出てくると、舞台が締まるというか、キリっとする。
舞台の出演回数が出演者の中で一番多い?からかなぁ。
非常に板についている感じがする。
出番や話の流れからいっても、彼が主役と言っても
おかしくないけど、知名度から川野太郎や
仁左衛門の娘さんが前面に出るのは仕方がない。
元タカラジュエンヌの汐風さんの歌声も聞ける場面もあって
なかなか盛りだくさん。
この作品にも××レンジャー(○○ライダーかもしれない)上がりの
若い男の子が、出演。
しかし、戦隊モノ出身の人、多いなぁ。
へそのはなし
昭和芸能舎
シアターブラッツ(東京都)
2007/09/14 (金) ~ 2007/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★
リピートで更なる感動
話の筋がわかっているのに、作品の「あら」が見えるどころか
前回より更なる感動で、涙が止まらない。
観劇友達数人に「これは、いい!」と薦め、引き連れて早速のリピート。
連休前の金曜日の夜公演なのに
数日前とは、うってかわて場内は超満員。
手荷物の会社鞄も足元におけないくらいで、スタッフに預かってもらい
観劇。
前回よりも、展開が速く感じる、台詞の一つ一つは更に心に響く。
これまでリピートで行くと、注目する場面と息抜きする場面が
分かっているから、途中途中、息抜きするんだけど、
今回は、それが全くない。
本当に、良く出来た作品だ。プロの仕事だなぁと感心。
登場人物、全てにドラマがあって、それぞれが、
押しづけがましく、感情を観客に押し付けるのではなく
自然に胸に響くような訴えかける。
役者の醸し出す空気感が、しっかりと伝わってくる。
これぞ、ライブの醍醐味。
ライブだからこそ味わえる、素晴らしい体験なのだ。
もちろん、人によって好みは色々だから
この作品が苦手な人、退屈に思う人もいるでしょう。
それでも、この作品を僕は自信を持って薦められると思う。
小奇麗な門構えではない、街の定食屋に入って
普通の煮魚定食を頼んだら、腰が抜けるほど、
魚は勿論、御飯も味噌汁も漬物も、小鉢に至るまで旨かった、
そんな気分です。
へそのはなし
昭和芸能舎
シアターブラッツ(東京都)
2007/09/14 (金) ~ 2007/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★
これぞ職人技!見事です!
100人も収容しないような小劇場で、こんな感動を味わえるなんて。
とにかく、圧倒され、とにかく驚き、とにかく涙し笑った。
これぞ、プロの仕事、職人技。
久しぶりの満足感、満腹感です。
「お金をもらって芸能を披露するとは、こういうことだよ!」と
言われても納得するほどの、良い出来栄え。
テンポ、照明、芝居、全てが完璧に近い完成度と言える。
この小さな空間でも満席にならないのだから
大きな劇場は難しいんだろうけど、紀伊国屋やパルコで上演されても
不思議ではないような作品だ。
来年に赤坂アクトシアターで舞台上演される、
僕が涙涙した映画「フラガール」の
作家が座頭を勤める新宿芸能社が送る、この作品は、
非常に綿密に練り上げられた構成、よく練習、訓練されている芝居、
サービス精神満点な内容、と3拍子揃った快作である。
中途半端に情に流れない、ドライだけど現実的だけど
温かみがある。
ごまかしがきくような空間設定はなく、とにかく裸一貫勝負。
奥行きの深い劇場を、ふんだんに利用し、
下手な小細工が利かない中、役者陣は
本当に良いチームワークで、しかも熟練の味さえ感じられる。
器用だけど、丁寧な演技は、見ていて本当に心地よい。
この劇団、もう10回も、いろんな作品を公演しているようです。
これまでの作品を確認したら、少しイロモノっぽいタイトルだった。
主役の倉貫君は、レンジャー物上がりのようです。
結構過去の作品にも出続けているようで、劇団員ではなさそうだけど
非常に、この空間とチームに溶け込めている。
綺麗な顔立ちな男の子で、とても目立つ、存在感もおり、
ダンスも上手。
「男前は、髪が無造作、ワイシャツもシワだらけでも、
清潔感があるんだなぁ」と、感心。
ヒロインの福下さんもステレオタイプな現代っこを
嫌味なく、キュートに演じきっている。
「くっさー」となりそうな場面でも、ギリギリのところで
素直で清純な感じで持ちこたえていたのは
彼女のおかげと思う。
終演後は、狭いロビーで、ちゃんと出演者がお見送り。
これは小劇場の基本ですよ。
いやいや、本当に驚きました。
小劇場で、こんな感動が味わえるなんて。
挑戦的とか刺激的、斬新なって表現には
ならない作品なので、平凡なのかもしれないけど
そんな作品を一流のエンターテイメントに仕上げたと言える。
近いうちにメジャーになること、間違いなしと思うんだけど
それまでの間、劇場にリピートして
温かい感動と、微笑みを頂戴してこようと思う。
このサイトで、こんな事書いたら、チケットなくなっちゃうと
いけないなぁ、その位、オススメできる作品です。
殺ROCK ME!
劇団鹿殺し
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2007/09/08 (土) ~ 2007/09/13 (木)公演終了
満足度★★
千秋楽だったんだけど・・・
「鹿殺しを見たい」、という知人の女性に、
「劇場に一人でなんかいけない!」と頼まれ、
同伴して再度、観劇しました。
平日で、しかも午後6時開演という時間設定だったせいか
千秋楽だけど、特に客席は混み合わず。
開演前の半裸の綺麗な男の子達の姿に知人は目を真ん丸くしている
姿を見て
「最近、流れ作業的に芝居を見ているなぁ、ちゃんと新鮮な気分で
見なきゃ、手垢が付き過ぎている」と
反省しながら、芝居に臨む。
心を改めて姿勢を正して、作品を見ていましたが
どうにもこうにも、話がわかっているのに、乗り切れない。
全体のフットワークが重いのだ。
前回よりも、役者陣が疲れている、というかキレがない。
声の張りや、動きのダイナミックさが、感じられない。
いちおう初の中劇場進出の記念公演の
ファイナルのはずなのに
「弾ける」感じがないのだ。
千秋楽公演に良く見られる、「客席との一体」的な
様子も全くなく、
(ゲスト出演した「深沢敦と書いてキャメロンディアス」さん曰く
この作品はミュージカルなんだそうだ、ミュージカルだから
ゲストを引き受けた、と)
役者の歌に、客席からの手拍子もなく、
僕は嫌いだけど、千秋楽公演に見られる、舞台上の悪戯とか
手前みそ話も、なく、
そしてカーテンコールでも涙はなく・・・
拍手もないのに、Wカーテンコールはしてました。
どうもねぇ、ちぐはぐ、な雰囲気が、舞台の上から
感じ取られてしまったのだ。
千秋楽だから、役者も疲れちゃったのかなぁ。
幕が下りた後、
王妃を演じていた鹿殺しの劇団員の方だけが
ロビーに出てきて
お客さんへの挨拶、および物販のお手伝いをしてました。
特定の人にだけ挨拶するのではなく、
ちゃんと頭を下げて「忙しい中、有難うございました」と
挨拶をしてくれました。
これは、本当に嬉しい。
チケット代も大事だけど、社会人にとって
最も貴重なのは「時間」なのだ。
これだけ溢れる作品が上演されている中
選んだ作品を見に劇場へ足を運ぶ行為が
一番貴重。
すかして腕組んで、劇場入り口辺りに立って
知ってる人とくっちゃべってる、その作品の関係者(演出家など)が
多い中、彼の行動は、当たり前な事だけど
また見に行ってあげよう、と思わされる挨拶でした。
しかし、他の出演者達も、特に外部から参加している
15人位の人たちも、みんな小劇場クラスなんだかた
ロビーで挨拶くらいすればいいのに。
このチケットを前日に
電話でチケットを劇団へ御願いした時
「センターブロックで前から5列目、中通路前の席で用意しました」と
言われましたが、当日手渡しされたのは、後方のサイド。
それでもって、前方とかセンターとか、ガバっと空いてるんだよなぁ。
いつもながら、どんな場合でも、席は選べるシステムを
構築して欲しい、IT社会なんだから。
殺ROCK ME!
劇団鹿殺し
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2007/09/08 (土) ~ 2007/09/13 (木)公演終了
満足度★★★
「劇団鹿殺し公演」というよりも・・・
数年前の東京初進出?の、こまばアゴラで「卍」という芝居を
見て以来、記憶に残っていた「劇団鹿殺し」。
その時、劇団のサイトからチケットを予約していったんですが、
「初めてのご観劇ですよね、有難うございます。」と、
なんと旧作品のDVDをプレゼントしてくれて「また、見に来て下さい」と
微笑ましい事をされて、好感を持っていた、この劇団。
不思議と、秋葉原の駅前や新宿東口などで、路上パフォーマンスを
見る機会も多く、何となく親近感を持っていた、この劇団。
映像を通じてですが、プレゼントしていただいたDVDや
ゴールデン街劇場公演、シアターグリーン公演、
この夏のチョビさんの外部出演公演など、この劇団の活動を
見続けていました。
いつのまにか、新宿コマ、あややの公演に戯曲は提供したり、
500席程度はある、スペースゼロ(この劇場も
10年ぶり以来、確か前回は遊・機械~の公演だった気がする。)に
進出なんて、立派になったなぁと思いながら、
劇場に足を運びました。
開演前から、半裸の男の子達が何やらパフォーマンスを
舞台でしているのですが、いやいや、沢山の出演者。
「こんなに劇団員も増えて大きくなったんだぁ」と
思ってみていたら、驚いた事に
先月、王子小劇場で2人芝居をしていた男の子が
いるでは、ありませんか????
チラシとか内容を、しっかりと確認していなかったんで、
背景がわからず、「どうなっているのかなぁ」と思い、芝居を見てました。
つかこうへい作品のように、シンプルな舞台装置の中で、
沢山の言葉、慣用句や熟語、比喩を使って、思いの台詞を語る、
社会派な側面を持ち、世の中に何かを訴えかける、熱い集団、
そんな、鹿殺しカラーは薄くなっていました。
ショーアップされ、歌い踊るエンターテイメントショーのような
雰囲気さえ感じさせられる、この作品。
「劇団鹿殺し公演」というよりも、
どこかのプロダクションの作品に、鹿殺しのメンバーが
参加している、って感じでした。
正直、「すけだち」よりも、わかりやすい構成になっていました。
アングラっぽい演出で、何やら妖しい、胡散臭い感じが
この劇団の個性と思ってましたが
何やら健康的で、角が取れてしまってます。
大きな劇場で、大きな人数で、大きな舞台装置で
公演を打つ為には、必然的に大量動員が必要な訳で
その為には、個性を消して、
「大衆に、わかりやすい」作品にしなければいけない背景は
わかりますが、
ちょっと、骨抜き、牙抜き、コビ売りすぎじゃないでしょうか。
客席には、ちゃんと並んで受付していた
新感線「いのうえ」氏(メタルマクベスのTシャツにトミーの帽子、
タランティーノ同様、大御所になっても気取ってない感じが
いいですねぇ)や、テレビや舞台で見た事のあるギョーカイっぽい
人も沢山来ており、舞台には日替わりゲストまで、出演してました。
出世とか、成長するって、演劇の世界であっても
いろいろ大変なんだろうあぁ。
シラノ・ド・ベルジュラック
メジャーリーグ
青山円形劇場(東京都)
2007/08/29 (水) ~ 2007/09/09 (日)公演終了
満足度★★★
バランスの悪さが、どうにもこうにも。
とにかく、僕にとってはバランスの悪い作品だった。
きっと、この作品の製作者や、演出者の意図と、
全く持って相性が悪いんでしょう。
ある意味、個性のある作品とも思われるので、
好みが別れるのでしょうが、僕は好きではありませんでした。
「長々ベタベタとやりません!」、
のふれこみで、
「おっこれは、きっちり1時間30分、90分一本勝負で来るか」っと思いきや、
休憩まであり約3時間。3時間って十分長々じゃないか。
ここで、すでに作品と大きな距離と抵抗を持ちました。
同じ題材の作品でも、
島田正吾は、ひとり芝居で90分で仕上げていたのに・・・。
それに青山円形は素敵な劇場ですが、ここも所詮はパイプ椅子。
足も自由に組めないような狭い席間に、窮屈で固い椅子は、
2時間が限界で・・・ストレスが溜まってくるんです。
何より、90分程度で充分まとまる話を、広げている感が。
どんなに素晴らしいレストランの料理でも、
運ばれてくるタイミングが遅かったり、
店の雰囲気と料理の内容が合わなかったり、
素材と調理方法が違う、と感じたら、その店の印象が
良くならないのと、僕にとっては評価基準は同じ。
劇場のスペックとか、宣伝、上演時間も含め作品以外の要因って、
その作品の印象を左右する、とっても大きな要因の一つなんです。
あと、右近のべらんめぇ口調、これは個性というか味とは思います。
でも、その様子を言うならば、
ベタベタな感じって形容が一番合うと思うんだけど、
ベタベタしてませんって謳い文句をされてたら、
センスが違うんだなぁと感じざるを得ません。
「痛快無比」
胸がすっとするように愉快になると自負している、この作品。
右近が「見得」のような台詞を切るシーンが数回あるんだけど、
こんな小さな劇場なのに大芝居で、暑苦しいこと、この上なし。
身近で、そんな芝居を見られて幸せな方もいらっしゃると思いますが、
僕のセンスとは合わず、胸やけ・・・。
それどころか、ラストなんか、すっごい後味の悪さが残っているんだけど。
「抱腹絶倒」
自画自賛も、ここまでくれば立派です。
どのシーンをもって、腹抱えて笑えって言うんだろう?
笑わそうとしているシーンは、1幕を中心に何回か理解しました。
僕は笑わないけど、あれ笑ったとしても「クスっ」って笑いの技で、
腹抱えて手を叩いて「あっはっはははは」って笑いではありません。
きっと制作陣だけが、抱腹絶倒しているんでしょう。
内輪ネタとか手前ミソなギャグが満載だったのかもしれませんね。
時々、役者が御互いの顔見て噴出しそうな顔したり、
したり顔して笑ったりして(特に2幕)、その様子で笑っている
(喜んでいる)観客もいました。
そういうシチュエーションを狙った演出かもしれませんが、
僕は、そういうハプニングというか、
ミスを見て喜ぶようなことはなく(むしろ不愉快)、
ましてやロクサーヌのような古典劇でで、そういう事するか?って。
「感涙絶句」
基本的に、男前な安寿ミラが、ロクサーヌなんてロマンティックな
役柄に配役されている時点で、感情移入が非常に困難。
「かよわさ」が感じられれば、「しおらしい」雰囲気になる台詞も、
「たくましさ」を感じられる女優が、そのような台詞を話せば、
「傲慢」で「嫌味」で「勘違い」としか受け止められなくなる。
彼女は一生懸命、真面目に演じているとは思うけど、
自分の持つ個性というかキャラクターを活かした役柄とは思えない。
とにかく個性の強いアクの強い役者ばかりが集まった芝居で、
感涙で絶句というより、油っぽくってゲップって感じでした。
と、制作陣が売り文句にしている内容と、
僕のセンスが全くかみ合わなかったので、非常に苦痛な3時間でした。
昔ながらの活動演劇的な切り口で上演したかったのかも
しれませんが、摩天楼の真ん中にある最先端技術の劇場では、
その世界に入りきれませんでいた。
このメンツなら、やっぱり隣の青山劇場辺りで、
思いっきり派手に豪華に、ケレンミたっぷりにフライングでもしながら、
スモークや爆裂をふんだんに使った作品のようが、
良かったのでは、ないでしょうか。
性癖優秀
柿喰う客
新宿シアターモリエール(東京都)
2007/08/29 (水) ~ 2007/09/04 (火)公演終了
満足度★★★
小劇場なのに・・・
「鉄拳」のライブ依頼のシアターモリエール。
このサイトで評判が良かったし、チケット代も安い、しかも場所も
便利だったので、日曜日の夜に足を運びました。
「鉄拳」ではベンチ椅子で、客数も50人位だったのに、
この作品、ご評判がいいだけあってか、超満員。
自由という名の不自由な席(狭い、固い、段差がない!なパイプ椅子)で、
2時間10分以上もの拘束を強いられて観劇しました。
比較的テンポのよい動きと、キレのある台詞と会話の運びに、
「どこかで見たような、どこかで聞いたような」感はあるけど、
まぁまぁ面白く見ておりました。
しかし、話が進むにつれて、どんどん湧き出てくる登場人物、
一人で何役も演じているのかと思えば、皆、別人。
次から次へと、小さな舞台に、それはそれは沢山の出演者。
頭を抱えなければ立つことも出来ない舞台上手にも、
ギッシリと、いるよいるよ、人人人・・・
その人人人が、狭い舞台を、新感線よろしく右往左往と
駆け巡る。小劇団のお約束キャラの、ブスキャラ、コスプレキャラ、
脱ぎキャラ、田舎者キャラ、お色気キャラ、もう何でも総集合で、
オールキャスト揃い踏み。
話の内容も、青山劇場か新橋演舞場で上演しているかのよう
スケールが大きい?そうなドタバタコメディ。
狭い狭い小劇場で腰を屈めながら走り回る。
舞台最後列まで埃っぽく感じるほどでした。
舞台から、溢れるパワーと熱意は伝わってきましたが、
何だか御腹いっぱい胸やけしそうで、
ラストの歌では、思わず「ゲップ!もういいよ」って感じになりました。
安い定食屋で、古い油を使って調理したレバニラと唐揚げを、超山盛で
食べさせられた気分。
「これは、おばちゃんの隠し味だよ!」って
ぺ!ぺ!ってつばでもふっかけた手で作られながら
出された感じでした。
俺には、ちょっとヘビー・・・。
多分主役は、南海キャンディーズの山ちゃんに似た12歳の子供役の人か、
アフタートーク会にも出演していた、久本雅美の男版みたいな弁護士役の人
なんだろうけど、誰がメインで誰がアンサンブルなのか。
小劇場公演なのに、こんなに舞台の上に人がいる
作品は初めて見ました。
これだけ出演者がいれば、出演者一人で5人の友人でも
連れてくれば劇場は満員になるんだろうなぁ。
NEW YOKA 2007 Rockin' Broadway
和央ようか
東京国際フォーラム ホールA(東京都)
2007/08/17 (金) ~ 2007/08/19 (日)公演終了
満足度★★★
まり様は控えめ・・・
日本最大級の5000席をほこる東京国際フォーラムA、
4公演で2万人もの動員するショーが、どんなものか
見に行きました。
8000円もするんですよ、本編70分のショーで。
2時間フルに活躍する、今をときめく倖田クミや浜崎あゆみなんかより
全然高い定価。
僕は今回も「大好きな、和央ようかさんのショーに
空席を作りたくない」方から
映画より安い金額で譲っていただきましたが・・・。
このホールA、バブルに作られただけあって、ステージの間口は
やや見づらいものの、椅子は横幅広く席間も広いから、とても快適。
ミュージカルでおなじみのホールCより、数段高級そう。
客席は満席で、最後列まで、ギッシリと詰まっていている光景は
圧巻でした。
ひそかに
「和央ようかショーではあるけど、目的は俺と同様に花惣まり様じゃねぇか」
と思っていましたが
2600円もするペンライトを皆様お買い上げされて
(これが、ホント100円ショップレベルのチャチっぽく見える代物なんです)
ショーが始まった瞬間、総立ちになって歓声を上げる5000人の姿を見ると
「本当に人気があるんだなぁ」と
不思議に思いました。
内容は、いわゆる「コンサート形式」でした。
よくミュージカル俳優が公演する「リサイタル形式」でも
「レビュー形式」でもなく、ロックやラテンのような曲を
振り付け交えて、衣装を何度も変えて、
和央ようかは歌ってました。
出ずっぱりといわれていますが、正味1時間ちょっと、アンコールをいれても
90分弱。
コンサートですから、和央ようかが好きな人が
楽しめるように作った構成でしょうから、僕がどうのこうの
言う立場ではない事を重々承知の上、
1点だけ言えば、「キツいなぁ」。
ショー形式であれば、その人の良さを楽しめればいいと思うんですが
いわば歌謡曲とか、振り付けがあり「タテノリ」で楽しむ
コンサートです。
和央ようかは、松田聖子やキョンキョンではないのです。
(多分、その位の年代だよね???)
素顔で挑むコンサートは、役柄という、カクレミノがなく
現実的なものになります。
全快で右往左往する和央ようかを見ていて、
派手な演出でスポットライト浴びてはいますが
強いオーラは感じられませんでした。
彼女の座長芝居(ミュージカル)では、大きな動員力は
作品の力が大きくなければ、かなり難しそう。
彼女のコンサートですから当然なんですが
公演時間中、ずっと舞台に出ていた和央、暑苦しい位。
それに比べ、まり様は、本当に控えめ・・・。
数曲目が終わった頃から、サササっと舞台に登場しても
アンサンブルのリーダー程度で、特に目立つ衣装を着るわけでも
ソロのダンスシーンがあるわけでもありません。
和央の衣装チェンジの場つなぎに、軽く歌ったり
デュエットをする時以外、トークの場面でも登場せず
決めポーズもありません。
にもかかわらず、まり様は、まり様です。
登場シーンは、印象に残ります、輝いてました。
流石です。
アンサンブルと同じ衣装で、、同じ振り付けをしていても
遠い遠い2階席から見ていても、必ず解る、
まり様の背後には後光が射している(笑)。
あえて、あぁいう地味な役回りにしていなければ
和央が、かすんじゃうから、そうしなきゃいけないんだなぁと
感じるほど、素晴らしい立ち姿。
でも、アンコールでは
まるで一昔前の、レッツゴーヤングのバックダンサーのような
衣装と振り付けで舞台に立つ姿は、魅力的ではありますが
痛々しい・・・。
まり様も、そろそろご年齢とかも是非考えて頂き、
早く日本のミュージカル界に帰ってきてほしい。
「エリザベート」でも「サウンドオブミュージック」マリアでも「メリーポピンズ」
でも「リーガルブロンド」でも、何でも十二分に演じられるでしょうから。
花の命は短し、まり様、早くご帰還を。
しかし、宝塚の人って
「和央ようか」って名前があるにもかかわらず
「タカコの部屋」ってコーナーがあるようにタカコって
本名だか別名だか分からない名前があったり
ニックネームがあったり
何だか、面倒くせー!!!
まぁそういうのも魅力なんでしょう。マニアの方の。
人様の土俵に入り込んで、不満はいけませんね。
失礼しました。
きみは死んでいる/その他短編
MU
OFF OFFシアター(東京都)
2007/08/15 (水) ~ 2007/08/20 (月)公演終了
満足度★★★
挑戦的かつ挑発的で、野蛮
このサイトで話題になっているので、あまり好きではない街、
下北沢の小劇場まで見に行きました。
Aバージョンでした。
見終わって、ただ思うのは「俺も年取ったんだなぁ」。
正直、話についていくのが、しんどい。
なんていうか、瞬発力が必要なんですよ。
話についていくのに。
場面の状況を掴む努力を上演時間中しなければいけないのです。
頭の切り替えを終始しながらや、台詞の一つ一つの意味を捉えて
作品に向き合わなければいけません。
チラシに書かれた作者のコメントで、
「ボっとしている観客は、三谷幸喜でも見てればよく
自分の作品は観客の脳内を刺激する・・・云々、
判断は観客に委ねる・・・云々・・・」
と記されているよう、作家の確信犯的構成なのでしょう。
そういう意味では成功しています。
僕が取り残されていた、だけなんです。
2時間の上演時間の間、
全てにおいて意味があるかのような挑発をしかけ、
タブーに近いような暴力や関係に挑戦しているように思えましたが
野心的とか、思想的とか、そういう言葉が
ファンには当てはまるのかもしれませんが
正直、僕には品性のない野蛮な作品に見えました。
「為替ディーラー35歳定年説」があるよう、
瞬時の状況判断、場面予想をする能力が求められ、
自分自身は若い頃に比べ、随分落ちたなぁと感じさせられるような作品、
観劇体験でした。
襲いくる睡魔と闘いながら、
場面を理解するのに必死でした。
いわば、話の「起承転結」の内、「承転」しか描かれていないので
いわゆる人物設定、そして結末を想像しなければいけません。
まぁ映画でも芝居でも、
劇場名のよう「OFFOFF」で上演している作品は、
万人を相手にしている公演ではなく
作家性とか芸術性を前面に出し
「その作品と、その作風が好きな人の為、また作家の
個性を披露する為」の空間であり公演なので
若い人の集まりに、間違えて、いや背伸び?して
入っちゃったって感じです。
やっぱり僕には、帝劇やコクーンで上演されるような
親切な作品のほうが楽しめるかなぁ。
まだ明治座や新橋演舞場には退屈するけど。
ロマンス
こまつ座
世田谷パブリックシアター(東京都)
2007/08/03 (金) ~ 2007/09/30 (日)公演終了
満足度★★★
和物では、なかった。
作品のあらすじや解説も確認せずにポスターだけの前知識で
観劇に臨んだら、作品が始まって暫くは???って感じでした。
古い日本家屋の前に正装して並ぶキャストを見て、勝手に
「お盆だし、井上ひさしだし、戦争をふりかえって志を見つめ直す、
望郷の念、平和への叫び、のような作品」と思ってました。
そしたら全く違った作品で、「一体何をしているの?」と、
戸惑ってましたが、そこは芸達者揃いなので、そこそこ楽しく
観劇しました。
1幕はともかく、2幕が圧巻。特に後半、晩年期のシーンで
改めて思った、
大竹しのぶって何であんなに上手いんだろう・・・って。
単純は喜怒哀楽を表現するだけではなく
今回は、劇中劇の中に役柄の気持ちを織り交ぜて、という
複雑な泣き笑いを、本当に本当に丁寧に器用に演じている。
でーんと構えた立ち姿、何があっても揺るがない信念のような
ものが感じられ、圧倒的な存在感。
そんな大竹しのぶを、陰日向となって支える男優陣も見事。
普段、主役を張っているからか、どうしても自分が前に前に
出ようとした結果、見事に大竹しのぶの存在に
玉砕してしまった、松たか子。
前から10列目からでも、目障りなほどよくわかった
井上芳雄の洪水のように流れる玉のような汗、季節感が台無し。
お歌を歌っているときだけ目に力が入っていて
かなりアンサンブルの中でも浮きまくり。
大きな劇場(新橋演舞場や日生劇場など)でも
きっと満席になるであろう、豪華な顔あわせの作品ですが
お芝居って、個性の強い人と個性の薄い人が
一緒に舞台に立ってこそ、味が引き立つんだなぁと再確認。
井上ひさしって言う、京都風をベースにしたような薄いけど
印象に残るような作品(料理)を
フォアグラやカマンベールチーズやイベリコ豚のような
強い味の具材で仕上げたような
上等なんだか高級なんだか、良くわからないけど
記憶には残る作品と思います。