ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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赤い竜と土の旅人

赤い竜と土の旅人

舞台芸術集団 地下空港

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

もっと毒を盛っても良かったかも?
 赤い竜は、なにを象徴しているか? 考えながら見ると面白かろう。土が何を象徴しているかは明らかだろう。食と住処、飲料水など生きてゆくための必要条件だ。

ネタバレBOX

 確証破壊の痕、後にヒトが人らしく生きたいという望みを最終部に描いている点に救いがあると同時に人間的である。

By the way,
 ヒトは制御できない技術を使うべきでもなければ持つべきでもない。作・演出の伊藤氏は、イギリス、ウェールズ国立劇場の日本人招聘プログラムに初めて選出された人物だ。学生時代から11か国を回ったという。当然、国際的視野は持ち合わせているから、セラフィールド、ラアーグの核燃料再処理工場の海洋汚染の凄まじさや、近隣で発生している癌、白血病他の健康被害についても良く知っていよう。核物理学に疎い日本人の多くは、原発での核利用と兵器としての核利用に本質的違いがあると勘違いしているようだが、核燃料の純度をどのくらいにするかという点だけが大きく異なっているのと兵器にすることを目的に作られているかいないかという差があるだけで核技術そのものと核物質を燃やすことで起きる弊害に於いて、総ての生命を危険や死に晒すという意味で大差はない。何故なら、命の設計図であるDNAや細胞同士がくっつきあう力に対して、放射性核種が発するエネルギーは桁違いに大きく、総ての生命の基本構造に大打撃を与えるからである。このことが、この段落の最初に挙げたヒトは制御できない技術を使うべきでもなければ持つべきでもない、という主張の意味する所である。而も、現在地球上に生息する生き物の食物連鎖最上位に位置する我々、ヒトは他の総ての生命に対する責任を負っている。更に核技術はヒトが開発した技術だから猶更なのである。
煉獄

煉獄

一般社団法人 日本演出者協会

小劇場B1(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

原作では男1人、女1人の2人芝居だが
 日本演出者協会とソウル演劇協会が共催する日韓演劇作品交流プロジェクトは、ソウル演劇祭で若い演劇人を顕彰する“未来へ羽ばたけ”部門の最優秀作品を日本で、演出者協会が催している“若手演出家コンクール”の最優秀作品を韓国で上演するプロジェクトである。
 それにしても韓国の役者の身体鍛錬の見事なこと。生のパーカッションや緊張感のある音響の効果も見事だ。

ネタバレBOX

 今作は、ギリシャ悲劇の「王女メディア」を下敷きに「死と乙女」や「谷間の女たち」で知られるアリエル・ドーフマンが書いた作品だ。
 嫉妬の怒りと悲しみの果てに女は我が子を手に掛け、王を殺しと凄まじい復讐を果たしてゆく。一方、男は、妻を裏切って他の女と関わった。二人は死後、煉獄で互いの罪を延々と非難し合う。然し、転生する為には互いを救い合わねばならないのだ。この矛盾をアウフヘーベンする為には不和の種を取り除かねばならないのだが、始まりが終わりに重なり終わりが初めに重なるメビウスの輪のような煉獄では、波が起こっては崩れ、霧消してまた起こるように無限とも思えるほどに繰り返すのだ。而もそれは常に不定形で何がどうなるのかは予測しがたい。そのような場所から逃れられず、延々と互いの罪と自らの内側を見据えねばならぬ地獄は、今、ここで生きる我々と繋がっている。

ラスボスのお城の前で

ラスボスのお城の前で

アナログスイッチ

王子小劇場(東京都)

2016/02/25 (木) ~ 2016/02/29 (月)公演終了

満足度★★★★

ゆる~ 箍外し
 アナログスイッチ流箍外しが至る所に仕組まれた今作、いつもながらゆる~い箍外しは健在だ。

ネタバレBOX

オープニングではステージ上手壁面(城の城門部分)に魔王と勇者一行の因縁が映写される。
因縁とは、魔王と勇者一行の代を重ねた闘争の歴史。勇者サイドは一方的に負け続けてきたのだが、この関係は然しながら200年もの間途絶えていた。その平和のせいか、魔王、勇者それぞれの者達は、すっかり戦闘意欲を失っていた。おまけに現魔王のキルギスは、門番のシルバに魅力を感じており、魔王など引退して駆け落ちしようと狙っている。美人で魅力的な若い魔王に直に口説かれて抵抗できる男は居ない。二人は駆け落ちすることに乗り気だが、問題は忠臣のコーザをどうするかである。というのもつい最近、勇者一行が城を目指してやってくるとの新聞情報があり、彼は今まで通り魔王一族VS勇者一行との戦いは為されるべきだ、と主張しており戦わずして負ける、というより勝を譲るなどという考えは到底認められない。だが、彼一人を城に残していけば勇者一行に彼は殺されるであろう。忠臣だけに無碍に放ってはおけないという気持ちも強い等々の事情があった。
 一方、勇者一行は手に入れた地図の情報が正しいか否かも定かではない為、何しろ古い地図で所々、読み取り難い。それでそれらしき城に到着すると、こちらも戦いの意思などないまま、取り敢えず惰性で門を押してみた。すると門は何の問題もなく開くではないか! 拍子抜けしつつも、戦士が暫くして出てきた門番の鼻面迄近づき互いに攻撃をしなかったことで、何となく安心という手応えを得た。その後、それでも因縁の対決なのだから白黒決するべきだとの認識もあり、追いかけるが追いつかないなどのアリバイ作りに頑張ったりしている。この辺りのおとぼけ感覚がアナログスイッチの人気の源泉なのではないか? ところで、正室の娘、キルギスに魔王の座を奪われ、追放されたとして側室の娘、ウッカとヤンギスが勇者陣に合流魔王一派に戦いを挑むが、上に挙げたような理由から勇者たちは、戦う意思など毛頭ない。而も、ウッカは本当はコーザの娘で魔法は使えない。妹として育ったヤンギスが、ウッカが杖を使うのに合わせて魔法を使っていたのだ。従ってヤンギスだけが第二夫人の娘なのである。といった具合で、この手のギャグ満載の作品にゃのだ。
火の音

火の音

ひねもすほろすけ

BAR COREDO(東京都)

2016/02/25 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

チャラケルなら、作品内でそれを構造化しないと
 役者陣は、第1回公演としては頑張っている。

ネタバレBOX

 若い人たちの第1回公演とあって、大人たちの狡さに対する嫌悪感・不信感が根底にあるのだろう。それ故にこそ、序盤敢えてタメを省いたような表現をしているのだと思われるが、芝居の常道としては、それならばそれで、自分達の立ち位置を作品内に構造化して提示すべきであろう。演劇の基本は対位法である。この原則を守っていない為に、序盤は、言いたいことを唯投げ出してみせたようなゾンザイで舌足らずで、必然性を欠いた印象を与えてしまうのだ。
 中後半からは、シナリオにも絞まりが出て深刻な題材を、多面的に眺めて面白い展開にしていたが、精神科のカウンセラーのキャラクター造形には、もっと注意が必要だろう。リアリティ-を敢えて否定することが目的なら、この点でも作品の要請として精神科医そのものが実は、絶対的な判断基準の上に立って判断しているわけではないことくらい仕込んでおくべきだろう。
Scoreless

Scoreless

劇団SUNS

新宿村LIVE(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 タイトルからはスポーツ作品かと思っていたのだが、実際は、ミッドウェー敗戦後の太平洋戦争の話であった。

ネタバレBOX

出演者がホントに若い人ばかりなのだが、兵隊の動きが機敏で実際の大日本帝国軍下級兵士たちもこのようであっただろうと思わせるような動作・所作で感心した。演劇がとどのつまり役者と観客の身体表現を賭した一騎打ちである以上、このようなことはとても大切なことで、ダンスもかなりうまいし科白も殆ど通っていた。
 シナリオは、戦争を知らない世代は無論のこと、知っている世代にもキチンとコミットできる内容と質でありながら、広い層に戦争の本質、即ち“無用に失い、取り返しがつかない愚行”という内実を分かり易く押し付けがましくない形で提示されており、心に深く訴えるものである。実際心を撃つシーンが随所に鏤められており深く考えさせる内容である。
 出演する役者が若いので、悲劇ではあるのだが、一種の爽やかささえ感じさせる舞台であることもこの舞台の特徴である。生の歌が歌われるのも嬉しい。主に映画「オズの魔法使い」でジュディー・ガーランドが歌った「Over the Rainbow」が歌われるのだが、繰り返し歌われるこのメロディーが大切な効果を齎している。同時にアメリカが世界の憧れであった頃のイメージを彷彿とさせるのには驚いた。
 無論、視覚的な美しさにも充分配慮した形になっているし、タイトルも適確
ストアハウスカンパニー『Remains』

ストアハウスカンパニー『Remains』

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

2本立て
 1公演で日本のストアハウスカンパニーの身体表現とタイから招かれたB-floorかDemocrazyどちらかの公演を観ることができる、2本立てである。自分は、ストアハウスカンパニーの「Remains」とDemodrazyの「Hipster the King」を拝見した。間に役20分の休憩が入る。Remainsは身体表現であるから、観客が何をどう解釈しようが観客の自由である。自分の解釈は追記で述べさせて頂くが、こちらもとても興味深く拝見した。一方、Hipster the Kingはちょっと意表を衝いた作品になっている。笑わせ方にも大きな比重を置いているが、非常に知的な作品である。(追記後送)

bar TAMARANCHI(予定)

bar TAMARANCHI(予定)

劇団ICHIGEKI☆必殺

こった創作空間(東京都)

2016/02/26 (金) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

花四つ星
 そのバーの髭のバーテンダーは、願い事を叶えると言われる。但し差し入れが気に入った場合だけである。

ネタバレBOX

どこからこの噂を聞きつけたか、数々の客が集まってくる。無論、皆自分の願いを叶えたいが為。その様を、コント、パロディー、寸劇、中編などで描く。バーテンダーは、髭を付けた者。役者人数に限りがあるので、入れ替わり立ち代わり各役者が様々な役をこなす。殆どの作品がホントに短いので凄さが部分的にしか伝わらないが、ラストの中編は見事。こんな作品だけで構成したら年間ベスト1に多くが投票するのではないか。実力集団である。
 ラストの作品、上演中故、細かいことは記さないが、得心のゆく作品であった。設定が凄い。女1人、男2人の仲良しグループ。若者なので通常あり得ない。直ぐ三角関係になるだろうからである。或いは一婦多夫か。現実にはそうなるだろうことを見越して、子供の頃からの仲良しということにはなっているが、男女関係そんな綺麗事では済まないのは多くの者が経験済みだろう。で、ある条件が提示される。その条件が知れると関係がぎくしゃくしてくるのだが、このぎくしゃくの間にある互いの思いやりや人としての意が、あり得ない設定の中でリアリティーを帯びるのだ。それは恰もマイナスとマイナスを掛け合わせると+に変じるような見事さである。


キミが読む物語2016

キミが読む物語2016

ナイスコンプレックス

あうるすぽっと(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/29 (月)公演終了

満足度★★★★

初日を拝見
 折角いいシナリオなのに、声が届かない役が結構居た。勿体ない。同時にゲネプロでは本番会場を使っているハズだから、音響調整でも科白のよりよく通る演出に心がけて欲しかった。惜しい。(追記後送)

ネタバレBOX


 イントロが、古本屋で子供が古本屋のオヤジからイニシエーションを受けるというスタイル。時に応じて、多くは病室として使われる舞台奥とフロントを隔てるように紗の幕が掛かるのだが、この紗幕に描かれているのが丁度中ほどで開かれた大部の本であることによって、観客をも舞台のメタ空間に引きずり込むような仕掛けが施されているのも気に入った。
Stay of Execution

Stay of Execution

メガバックスコレクション

錦糸町SIM STUDIO 4F C-studio(東京都)

2016/02/20 (土) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

Bチームを拝見
 2030年関東を襲った大地震で東京は壊滅。(追記2016.2.23)

ネタバレBOX

舞台はそれから2年半以上を経た時点、正確には地震発生後1010日目から更にその101日後迄の、閉鎖系内の葛藤・自壊の諸過程を描く。ヴァレリーの「ユーパリノス」やサルトルの「出口なし」なども想起させる面白い作品だ。
 亜空間に閉じ込められた“幽霊たち”は2030年に関東地方を襲った大地震の際、地下鉄の構内に閉じ込められた160名のうちの5名。死神ワイズに直ぐ従った者らもあるが、ショックから直ぐには川を渡らなかった霊もあった。それらの霊は101日毎に巡ってくる迎えの日毎にショックの眠りから醒める。1010日目に目覚めた5人の魂にワイズは自分に従って来るように勧めるのだが、2人しか賛同者は得られなかった。その2人も他の者が行かないと強く言ったことから前言を取り消し、次の迎えの日迄、この閉鎖系に留まることにした。改札口のあった場所からは永遠の闇が広がり、一旦魂が其処へ入り込むと二度と其処から出ることができずに永遠に彷徨う。他の場所は崩れ落ちた土砂で埋まっていたりして出られないという設定だ。霊ならば肉体を持たず通れるハズという論理は、ゾンビのような存在と半ば彼らが意識している触れられる実態と化している為に不可能である。先に指摘したような「ユーパリノス」や「出口なし」の登場者は肉体を持たぬことの条理に従わざるを得ないことに対する理論的展開が頗る面白く展開されるのだが、今作は、その点では、アンリ・バビュルスの「地獄」に近い作品と言った方が良いかも知れぬ。何れにせよ、見も知らぬ世界へ、いきなり断ち切られ未練を残した状態では出向くことができないという拘りと、無為という状況の中で、意味を追求せざるを得ない知的存在である人間の懊悩との鬩ぎ合いが、自壊を引き起こし、それに耐えられなくなって争いや精神の崩壊を齎してしまう状況を画いているのだが、最後にカタルシスを持ち込んで一般的な作品にしてしまった。ここはもっと冒険をして、敢えて地獄のみを更に尖鋭化する作品でもよかったのではないかと考える。何故なら、日本という名のアメリカの植民地では、事実、何が起きているかをその被植民者個々人が深い所から認識することが先決だからである。政治屋共が、こんな馬鹿ばかりなのも、反対をする連中の捏ねる論理が表層に過ぎないのも、本当のことをキチンと見、認識し、反芻して深く考えることをしていないからである。こんなことでは、いつまで経っても光明が見えてこないことは必然である。先ずは自らの手で自らの着ている欺瞞・瞞着、臆病、虚言などの表層にメスを当て切り開かねばならぬ。
カゲキ・浅草カルメン

カゲキ・浅草カルメン

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2016/02/19 (金) ~ 2016/02/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

浅草 弾左衛門の宴
 幕末の江戸、人外の頭、浅草 弾左衛門の支配地で繰り広げられる無礼講の宴、

ネタバレBOX

供されるのは士農工商には禁じられた獣肉、大蒜、韮、葱、生姜など禁制の野菜を用いた料理。当然、酒も振る舞われる。語られるのは、当時鎖国の価値観では禁じられていた海外の情勢・事情など禁制の情報である。集まったのは、世の中では変わり者、反逆者、余計者と看做されるような人々。即ち体制の枠になど収まり切らない自由な人々であった。勝 海舟の父・小吉、海舟、水戸藩出身の尊王攘夷派、干 愚鈍、そして河竹 黙阿弥と後に称される劇作家等々。三人は義兄弟の契りを結ぶが、その内実がちょっと変わっていると同時に洒落ている。酒では無く、時代の空気を呑んだのである。もし誓いを反故にしなければならぬ場合、誓った空気を吐き出してしまえばよい、という遊行の精神をも取り入れながら人倫の掟にのみ従う誓いであった。
かくして各々は、各々の道を選ぶ。愚鈍は、カルメンにアヘンを盛られて彼女に魅入られてゆき、黙阿弥は、商家のぼんぼんから人外を仲間とする河原者になり、勝は蘭学を学んで時代の荒波を乗り切る先兵となった。愚鈍は、結果、未来を見通そうとする意志を失って走り、意味も無く散ったが、時代の動く時には悪が一瞬仇花を咲かせることを予言し予言に殉じた。勝は、先見の明とその聡明さによって黒船来航以降その本領を発揮する。そして黙阿弥は戯作者となって現代にもその名を作品と共に残した。
覚醒時呼吸症候群

覚醒時呼吸症候群

明治大学演劇研究部

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2016/02/19 (金) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★

植民地の奴隷に未来なんてにゃい
 現代日本というアメリカ植民地で生きる若者に未来などあるハズが無い。

ネタバレBOX

地位協定でがんじがらめに縛られ、国民は真実を知らされていないことに疑問も感じないほど馬鹿である。更にこの事実を自覚できないほど、救いがたい馬鹿が過半数を超え事大主義を金科玉条として、他人を切り捨てることを歯牙にも掛けない。自分が何時、その立場に立たされることになるかを想像することさえできず、人間として最も大切な価値、自由だの人間らしい価値観だのを鼻先でせせら笑って恬淡として恥じることすらない。下司であるというより人間の皮を被った我執、ハッキリ言って魔物である。
そんな魑魅魍魎が跋扈するこの植民地で若者が未来を夢見ることは愚か、夢を夢見ることすらできないことは余りにも明らかであろう。今作は、そのことをやや未熟ではあるが、必死に訴えた作品だと解釈した。
 だが、現状を実際どう変えて行けるのか? については簡単な問題で無いことも事実である。本気なって変えようと思うのであれば、実際の国際関係の中で自分達の位置を、刻々変わり続ける部分と構造的に変わる部分と、そして地球全体としてどのように変わらなければ人類のみならず、総ての生き物が滅ぶことを避けられないか! についての説得力のある論理を編み出さなければなるまい。その為には、現在、この植民地で一般に膾炙しているアメリカ流の価値観・或いはヨーロッパ流の価値観総てを再検証し、全地球の全生物にとって未来を夢見ることのできる理論の構築と現実的に何は出来、何はできないかのシュミレーションを構築することを始めねばならない。先ずは、この程度の組み立てを予めしてのち、初めて我々は世界に対して堂々と自らを主張し、その正当性を他国、多民族に問いかけることが可能となろう。問い掛けられた彼ら自身が自らの問題として捉えられる形で。
親の顔が見たい

親の顔が見たい

かわさきシアターカンパニー

川崎H&Bシアター(神奈川県)

2016/02/19 (金) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

KY
 苛め、虐待のニュースが後を絶たない。今作は、名門女子校で苛めを苦に自殺した中学2年の女子の事件を、学校側と苛めた子らの親との対話を通して炙りだしてゆく作品だが、日本の(というより西側先進国一般の)、陰湿さを増す苛めの実態を明らかにすると共にその背景にある事大主義の欺瞞性を暴いて見事である。

ネタバレBOX


 シナリオがしっかりしている点、シンプルだが必要十分な舞台美術、緊張感のある対話でぐいぐい引っ張って行く芝居作りにも共感した。子供達をサポートしようとして、親も犯罪の共犯者になるような入れ知恵をしたりすることが描かれている点でも良い。
 舞台は三方を客席に囲まれた状態で、正面客席に対して机は斜めに配置され、奥の壁には時計が掛けられている。時刻は19時。朝、遺体発見後の措置として急遽休講になった後、16時から苛めた側とされる生徒ら5人は登校するよう連絡を受け、登校している。5人は、被害者から届いた書面に名前を書かれていた生徒である。学校側としては、事情を知っている可能性もあることから、参考人として呼び出し、事情を聴いていたわけである。因みにこの学校は歴史も古く、良家の娘の通う学校との評判が高い。母、娘と通うケースも多いのだが、授業料も高い。そういったことに見合う娘たちが通うのが一般である。
 尤も日本では、KYという言葉が苛めを避けるキーワードになっているが、このコンセプトは、日本人の本質と性格、即ち事大主義の現代的用法だと思われる。強い者には媚び諂い、自分のポジションを保守する為には、平気で人間性の発露としての自由や人間性を喪失しながら、恬淡として恥じることすら忘れ果てている姿を正当化しているのである。
無理矢理員数合わせをし、民主主義の多数決原理に則った振りばかりしながら。だが、ギリシャで生まれた民主主義は、為政者として就任した者が戦争に負けたり、不正なことをして罷免された場合は財産没収の上、時に死罪、流罪、追放など重い刑罰を科された。それも多くの場合拷問つきの裁判を受けての結果としてである。
これに対して我が国の近々の例を上げておくならば、第二次世界大戦の敗戦(1945年9月2日)を8月15日に置き換え(終戦記念日と言い換えて敗戦の重い現実から目を背け、キチンと現実に向き合わないというまやかし)た。更に戦争責任の明らかな天皇裕仁を利用して、アメリカに都合の良い占領政策を採ったことは現代史の常識であろう。時の総理大臣、殿上人クラスの皇族・貴族を含め世の指導者と目されて来た連中の殆どが、日本占領の全権を委任されたマッカーサーに或いはマッカサーに通じる可能性のあるジャーナリスト迄含めて自らばかりは戦争責任が無い、と申し立てた。無論、事実は誰が見ても責任があったのである。大日本帝国憲法で唯一の主権者が天皇、即ち裕仁であったと同義である。内心恥じた者もあるだろう。その可能性は否定できない。然し公式なレベルでそれらの人々も、都合の悪いことは総て不問に付し、忘れた振りをした。その結果、社会はズブズブの、原理原則もなければ人倫もない鵺のような社会になった。
 このことを糺さない限り、日本人が世界の一角を占めるに足る民族だなどの戯言は、避けなければならない。このような判断こそが、世界に打って出る時に必要な判断・ボンサンスだと考えるからである。
第47回「a・la・ALA・Live」

第47回「a・la・ALA・Live」

a・la・ALA・Live

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/02/20 (土) ~ 2016/02/20 (土)公演終了

満足度★★★★

楽しめる
 1「風」2「戦場の…」3「マリリン東京公演vol.3~吹き語り&エトセトラ」4「花も嵐も」5「昼下がりの喫茶店」6「夢は夜開く」7「販促サービス」8「オペラ座の道化師、春を待つ」9「世界に一つ」これらの演目を芝居、道化(手品つき)、演奏つきパフォーマンスなどで構成。中心になっている荒山 昌子さんの出演は1、4、6、9の4本。各挿話が総て関連していて、そのサンドイッチパンに挟まれる形で他の演目が上演されるのだが、これがとても楽しい。(追記2016.2.24 0:28)

ネタバレBOX

 どんなことが表現されているかといえば、こんな気持ち・あんな気持ちにマイノリティーやちょっと出来の悪い後輩に“さしすせそ”の理論。“さ”は流石、“し”は知らない、“す”は凄い、“せ”はセンス良い! 、“そ”はという具合に営業トークを伝授しようとするのだが。というのがNO.7 の内容。NO.1 の“風”では、バカ代表の安倍辺りがスマップ解散についてコメントを述べたこと。そんな暇があるなら、他にすべきことがたくさんあるだろうに、ということ。
まあ、あんなアホでは、アメリカの命令に尻尾を振って、恰も日本政府が独自に様々なことを決め、実行に移していると国民を騙すことができると信じ込むことしかできまいが。というアイロニーが込められているというのは自分の解釈である。安倍以下、現在彼をサポートする彼より頭がマシと評価されているハズの連中の内容も実にレベルの低いものだとい厳然たる事実と、事大主義の下司根性ばかりが見える。こんなアホばかりが政権中枢に居座ってデカい面をしているから、アメリカ程度の知的レベルしか持たない国家にさえ馬鹿にされるのだ! 論理的必然として、このように知的レベルの低い国民から奴隷扱いされる我が“国”の愚衆がバカにする者より国際的に低く見られているのは当然のことである。自分に自信があり、国際的な荒波に漕ぎ出してキチンと勝負できる者は勝負せよ。それができないならば、自分を鍛えよ。鍛えることすらできないならば、一生自分を恥じるが良い。
その上で、遊ぶことを楽しむのだ。自由の根底をキチンと自分の土台に据えた上で。そのようにして今作を観るとホントに楽しい。全体的柔らかな感性で楽しめる舞台なのだ。例えばクラウンの特異性に小さな子供が怯えて泣き出すなど、大人になると皆忘れたふりをするデモーニッシュなもの・ことに対する懼れを感じ取ることのできる子供達には、このクラウンの芸が本物であることが分かるのである。残念乍ら、年齢的には大人になってしまったにも拘わらず子供精神も併せ持つ自分には、この程度子供達の感じる身体の震えが分かるのである。
『月花抄』

『月花抄』

演劇ユニット 金の蜥蜴

ブディストホール(東京都)

2016/02/17 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

優雅な地獄
 嫉妬と己の地位から来る誇りに嗜みを失い、生霊と化した六条御息所と光源氏との確執を縦糸に、生霊に憑かれて殺される夕顔、葵の上を太い横糸に、更に彼女らの便を偲ぶ末として紫の君。ここに紫の君として源氏の意姫を登場させたのは、式部の自己主張なのかも知れぬ。何れにせよ、源氏物語を下敷きにし、能にも取り上げられている「葵上」「野々宮」「夕顔」を現代風にアレンジした作品である。舞台上で直接役者が演じる訳ではないが、源氏物語の有名なシーン(雨夜の品定め・末摘花に纏わるエピソードなど)が、源氏の親友・頭中将との対話の中で出てきてふくらみを持たせている。(追記2016.2.24 0:46)

ネタバレBOX


 舞台美術も平安時代の代表的な建築様式である寝殿造りの一部を再現したようになっており、下手渡り廊下に当たる部分は能の橋掛かりにもなっていて様式的にも平安と室町を繋ぐようで面白い。更に源氏と藤壺の近親相姦の悍ましさの中に蠢く、男女の愛欲の業(カルマ)がヒトもまた獣であるという本性を示し、本能を抱えて悩まざるを得ぬ知的生命体の哀れを示唆するかのようで、その救い難さと共に深く心に刺さる。今作の救いは、六条御息所が狂うまでに悩みぬく点にもあるであろう。それだけ真剣なのである。その真剣さのみがこの地獄の中を照らす光明であるとでも言うように。他の登場人物たちも其々に不幸であり、その身に纏った煌びやかさと反対に悩み惑う姿が、短いが深い科白に萎縮されている。また、ラスト、源氏自身がこれらの女性たちの宿世を負って、叫びによってしか表現し得ない人の弱さ、無力を描いている点でも、ものの哀れを文化の基調の一つとする日本を表していよう。
谷間の女たち

谷間の女たち

劇団櫂人(解散しました)

上野ストアハウス(東京都)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

日本人にこの作品の怖さがわかるのかな?
 1973年9月11日、チリのアジェンデ政権はCIAや米国の後押しによるピノチェトの軍事クーデターによって崩壊させられた。

ネタバレBOX

何故か? 1970年民主的選挙によって南米初の社会主義政権が誕生していたからである。民衆の人間としての当然の権利の伸長を恐れたアメリカは、自国の利権を守る為、大資本家を守る為だけにこのクーデターの裏で糸を引いていた。日本人の多くにとって、今自分がここに書いていることは青天の霹靂かも知れない。然し、第二次安倍政権になって矢継ぎ早に強行された法案の改悪などが、アーミテージ、ジョゼフ・ナイなどによって予め命じられた筋書通りであったことは、新聞にも既に報じられてその比較表迄出ていたことだから、いくら政治には無関心な人々も頭の隅っこ位にはこの情報が届いているかも知れない。
ベトナム戦争拡大の為に実施されたトンキン湾事件(1964年8月4日)がアメリカの自作自演だったことや、国鉄の下村さんが亡くなった松川事件、三鷹事件などにCIA設立にも関わったチャールズ・ウィロビー(日本戦領時には諜報・検閲・保安を担当)が関わり、そのウィロビーの宿泊していた帝国ホテルへ吉田 茂が、裏庭からこっそり出入りすることはしょっちゅうであった。戦後、アメリカ追従を徹底的に行った外務大臣・首相としての国賊第一号である。その前に外相であった重光 葵は、アメリカに対して自主独立路線を採ろうとした為追放の憂き目を見た。何故、今作に直接関係の無いこんな話を持ち出すかと言えば、国際法だの、自由と民主主義だのと綺麗事ばかり言うアメリカと言う国家の正体を先ずは知らせる為である。アメリカが自由と民主主義の国であり、其の為に世界中で戦い続けているのだ、というお目出度い神話を信じているようでは、今作の真の恐ろしさは伝わってこない。観たいにも書いておいたことだが、アメリカがピノチェト一派を利用してアジェンデ政権を崩壊させた事実は、そして軍事政権の下でどのような圧政が行われていたかは、今作にも出てくるように目隠しをされて、何歩歩いたかだけで自分が何処へ来たか類推するような状況に総ての仲間をはぎ取られた状態で置かれ、拉致後は拷問に掛けられて自分の仲間の名を1日1名ずつ吐かされてゆく。その上、多くの者が飛行機に乗せられ上空から突き落とされて墜死した。だから簡単に遺体が発見できる訳もないのである。無論、こんな情報は、メディアでは発表されることがあるまい。自分も確かな情報網から直接聞いた話である。
 女たちの見る夢も不気味である。針と糸を持って何かを縫ってゆく。気付くとそれは口であったり、目であったり、耳であったりする。即ち三猿、見ざる、聞かざる、言わざるである。このような仕掛けが至る所に仕掛けられたシナリオなのだが、自分が懸念することは、これらの意味する所が多くの日本人には理解できないのではないか? という点である。
(追記後送)
西遊伝〜福岡の妖怪!?〜

西遊伝〜福岡の妖怪!?〜

劇団 西遊伝

Studio NOV(東京都)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/22 (月)公演終了

満足度★★★

まだまだ修行が必要にゃ
 構成がちょっと変わっている。三部構成にゃのだ。

ネタバレBOX

一部で芝居、二部はミニコンサート、三部がミニトークにゃ。女の子ばかりの劇団なのでややアイドル路線を狙っているという印象も受けにゃん。座長は流石に芸があるが、若手はメンバー3人の歌のユニット“スターベガ”を作ったりもしていて、歌は中々上手いにょ。但し、3人のうち1人は芝居には出ず、スターベガのみにゃ。他の若手も色気より食い気といった可愛らしい感じにゃ。
By the way,
シースコ、シビアなことも書いておこう。
本気で芝居をやる気なら、自分の芸で勝負して欲しい。未だ若いメンバーが多く、自分自身にとことん向き合った経験のないメンバーも多いようだが、役者という職業は実に奥の深いものだ。徹底的に自分を掘り下げて、本質を表面に滲み出させる位にならないと本物とは言えない。そしてここまでできる人間は、役者を目指した人間の1万分の1未満である。才能があっても磨かなければ光らないのは当たり前のことだが、諸般の事情で役者稼業を断念する者もある。いつまでも若いまま居られる訳ではない。身体は年齢と共に劣化してゆくのが必定。それでも役者であり続ける為には身体で勝負しなければならない。老いてなお役者であり続ける為にはどのようなことが必要かも、無論、各々が考え、決めてゆかなければならない。時代に対する鋭敏でしなやかな感性を持ち続ける必要もある。哲学や様々な文化的教養、歴史観や芸の習熟、身体鍛錬、己のスタンス決定などしなければならないことは山ほどあり、時間は限られている。仕事や恋もあろう。それらをどう自分の芸に活かしてゆけるか? 常に自分自身に問いかけ答えを見つける努力をしたり、何等かの納得できる対応を見つけなければならない。それら総てが演技に現れるからである。これらを意識した上で頑張って欲しい。

sanari

sanari

SPINNIN RONIN

シアターX(東京都)

2016/02/17 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

身体による言語(花四つ星)惜しむらくは哲学的にちと浅いか

 素舞台で縦横無尽に駆け巡る演者たちの身体を用いた「言語」表現が素晴らしい。兎に角、敵国へ入国する隠密行動の背景まで役者陣が作るのだが、鍛え抜かれ考え抜かれたその表現は名画のワンシーンのような美しさを醸し出して絶賛に値する。

ネタバレBOX


 忍びの一団が中心になった作品なので、殺陣のシーンも多いのだが、これも見事である。実際、この劇団以上の殺陣を演じることができる劇団は、今までの所他に観たことがない。シアターXの舞台はかなり広いので、何の造作もない空間を演技する身体だけで埋めるのはかなりキツイ。だが、この劇団には、この何もない広がりこそ必要であったというのがよく分かる。(追記後送)

草莽の果て

草莽の果て

劇団HumanDustUnion

サンモールスタジオ(東京都)

2016/02/17 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★

草莽 今政治屋にこれを望むのは絶望的
 薩摩の西郷や下級貴族から成り上がった岩倉具視らの支援を受けて結成された赤報隊は、薩摩藩邸の浪士隊で人望厚かった相良 総三を総裁とした組織で新政府の許可を得て、東山道軍先方として、年貢半減などを各地で喧伝、各地で民衆からの支持を得た。

ネタバレBOX

然し新政府は、年貢半減は無謀と判断を覆し、彼らを裏切ったうえ、偽官軍の汚名を着せ、偽官軍の烙印を各地で触れ回った。隊は一番隊から三番隊までの三隊。今作では相良を一番隊隊長として描く。彼らの目論見では信濃の中山道と甲州街道の分岐点にあたる碓氷峠を占拠することによって、北陸雄藩と江戸を遮断することが主眼点であった。軍略的に極めて合理的な判断だろう。相良の智将としての側面を窺わせる。だが、西郷・岩倉らの裏切りは、赤報隊を追い詰めてゆく。この後史実とは異なる展開になるが、そこは伏せておこう。
 シナリオは、中盤以降締まったものになるが、前半は、だらだらした内容で大幅にカットして良かろう。そうすれば尺も短くなりもっと締まった舞台展開になる。また、殺陣を十全に演じる為には、この小屋は小さい。予算の関係もあろうし、殺陣そのものがまだまだであるから更に上を目指して精進して欲しい。ただ、草莽に思いを馳せた志は買いたい。
ソンナニイヤカ?

ソンナニイヤカ?

演劇ユニットどうかとおもう

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/02/14 (日) ~ 2016/02/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

痴的? いや 知的!

 8本の短編を連ねた90分程の短編集。タイトルつけ方からして中々捻りが効いている。無論、病ダレを想像する人が多かろうとの推理の上に成り立っているタイトルなのであるが、洒脱でイマジネイションに富んだ作家は、その持ち味を活かし各エピソードを実に有機的且つ批判的、そしてユーモラスに描き上げている。役者陣の演技も制作の人々の観客対応も実によい。無論、作品内容も知的で社会的、ちゃんと揶揄や毒も盛り込んである。いくらでも深読みできる内容なだけに、本質が捉えられていなければ作品がぶれてしまうが、今作に関わっている演劇人にその心配は無さそうだ。面白く、鋭く、同時に適確な距離を描かれる対象に対して持った作品である。

馬鹿ずきんちゃん

馬鹿ずきんちゃん

劇団八幡山ほしがりシスターズ

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2016/02/13 (土) ~ 2016/02/14 (日)公演終了

満足度★★

ニャロメ!
 ローマ法王とロシア正教総主教が歴史的会談を遂げたばかりだが、西方教会のカソリックで主に言われる7つの大罪(高慢、物欲、妬み、憤怒、貪食、色欲、怠惰)の話が出てくるかと思えば、馬鹿ずきんちゃんが馬鹿であることは果たして罪であるか否か?

ネタバレBOX

 がある種の宗教裁判(道徳裁判)に掛けられる。登場人物たちのうちで、それぞれの大罪を具体化する役割が振られたりしているのに、本来ならメインストリームとなるそれらの関係や寓意が、何ら関係のないギャグや下らないオチでめちゃめちゃにされる為、演劇効果はまるでない。かといってそれをキチンと狙っているというより、無理やり時間を引き延ばしてアドリブで流してみたりする。オープニングこそ、満席の客席の間を態々10名近い役者が横切って、鐘や太鼓、笛にタンバリン、蛇皮線にギター等々を奏でながら登場する。上手い人もそうでない人も交じっているので、演劇発祥の要素であるカーニバルの怪しさのような雰囲気が出て、これは! と期待したのだが、その後が悪い。神様役が、魂の生まれ変わりに対して次の役を振ってゆくのだが、これが事務的な為、直ぐ飽きてしまう。こんなことを長いこと演るものだから興が覚めてしまうのだ。この後は推して知るべし。演劇という意味では評価1にも値しない。だが、馬鹿に対する意気を買って星は2つ。

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