ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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Offline Game

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縁ろず屋

シアター風姿花伝(東京都)

2019/08/15 (木) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★

 如何にも現代日本の若者の作品。

ネタバレBOX


 社会に目を向けず、周囲の人間関係とゲームとが密接に絡み合う現代日本の若者達の日常を或る意味掬い取った作品ではあるが、いかんせん表層的で情緒的、これでは、世界中で起こっている差別・被差別問題の本質に迫ることができないのも世界との齟齬を認識できないのも当然だろう。例えば1989年から問題になってきたフランスのスカーフ論争の意味する所も、そこで暮らすマグレブ出身の2世、3世、4世の抱えるラヒール・ワタン問題も、旧宗主国であった仏の抱えるアンヴィヴァレンツも、翻って我が国が抱える在日の方々との歪や重厚長大産業延命策としての軍事路線邁進の政治も何も見えて来ないだろう。
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

 第三部を拝見。この作家のぶきっちょと真摯が如実に現れた作品。今年の上演作品総ての中でベスト10入りは間違いないと思われる作品だ。自分としてはベスト3以内にノミネートしたい。必見!!!(華5つ☆追記後送)

TIME

TIME

まんざらでもねぇ

Geki地下Liberty(東京都)

2019/08/10 (土) ~ 2019/08/11 (日)公演終了

満足度★★★

 板上基本的にはフラット。

ネタバレBOX

変形箱馬などが必要に応じて用いられる他、奥はスクリーンになっており、ムービー等が流されると同時に、コント、演劇、手品ミックスステージらしく、映像で水を用いるシーンで客席に飛沫が飛んできたりとの演出もある。マジックは弟の担当、始めて3年ということで未だ修行の余地あり。コント、演技共に更に磨きを掛けて欲しい。
陰謀の摩天楼にて

陰謀の摩天楼にて

カスタムプロジェクト

調布市せんがわ劇場(東京都)

2019/08/10 (土) ~ 2019/08/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

 正解者はかなり少ない。然し無論その分、エキサイティングなチャレンジができる。心して掛かるべし!(追記後送)

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』

DULL-COLORED POP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★★★

 第2部を拝見。現地の人々のがどのような政治的・経済的状況に置かれていたかについては、相当に具体的イメージを持つことができた。

ネタバレBOX

 反原発の理由については旧知のことが殆どなので新味はないが、政治というものの本質的な詭弁性と一歩踏み込みが足りないが、まあ、日常レベルで金銭経済に巻き込まれてニッチモサッチモ行かない中でもがく、日本に住む「我々」のアンヴィヴァレンツを板上で見せられると、己が信ずる論理を徹底させることのできない人々の切実な内的亀裂を感じさせる。
 上手いと思わせたのはファーストシーンで穂積家の愛犬、モモを登場させ、未だ美しく寒い福島双葉町の凍った朝に、光が射し氷が煌めき、溶けかかった水が輝く北国の清朝で透明な無垢を、生命そのものの輝きと重ねて描いている点だ。因みにこの日がモモの命日でもある所がニクイ! また、既に我々は知ってしまっている人間という生き物のどうしようもない無責任と愚かさ及び傲慢を、人間以外の総ての生き物の代表として死後も彷徨う霊となったモモが、最後迄人間達を見守り、話し掛け続ける謂わば一種のボンサンスとして狂言回しならぬ人倫を囁き続ける姿が印象的である。当然のこと乍ら、無数に彷徨う霊たちは人間に語り掛け続けているのだが、人倫故か、か細い声故か、人間には殆ど聴き取られぬ所が恐らく作家の意図せざるアイロニーとなっていよう。
 分析が甘いと感じた点は、生きる為、生活の為に必要だと思い込まされている「金」について即ち現在世界中で猛威を揮う債務貨幣システム・部分準備金制度の齎す、経済危機やそのような状態に対する脆弱性を分析していない点である。それに踊らされた結果が、反原発運動のリーダーであった人物を原発推進派に変えて行く訳だから、単に地方VS中央だとか、補助金制度、電源三法などに矮小化せず、更に本質的な問題にまで踏み込んで欲しかった。
 また忠が詰め腹を切らされることになる吉岡の論理も切り崩すのは案外容易。彼の用いたデュアリズムの限界をみればそれは明らかなことであろう。
TRAIN A

TRAIN A

シアターグリーン学生芸術祭Vol.13短編部門A

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/07/29 (月) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

 演劇の力をマザマザと感じさせてくれる必見の舞台。華5つ☆

ネタバレBOX

 科白は殆どなく9人で出場する際は1人が黒、他の8人は総て白の衣装である。各作品5分ほどだろうか。ソロ作品とほぼユニゾンと言ったら良いようなユニットによる作品がオムニバス形式で演じられてゆく。照明は昏めで、時折下方から照らすなど様々な工夫がされ、音響も効果的に用いられるばかりでなく、ピッタリ息の合った集団的所作の見事さや、ストップモーション、スローモーション、断続的な動きや所作の、計算され効果的な動きと、背景のスクリーンに映し出される詩的スクリプトが、作品の持つ鋭い批評性と現在時の日本に於ける演劇表現の可能性をマジマジと実感させてくれる。当にexcellentと呼ぶに相応しい作品。今後の活躍が大いに期待できる力量を備えたグループと見た。演者達の力量、作・演出の素晴らしさ、照明・音響のセンス総てに於いてハイクオリティーである。
TRAIN A

TRAIN A

シアターグリーン学生芸術祭Vol.13短編部門A

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/07/29 (月) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★

 登場人物は4人。

ネタバレBOX


だが、「現実」には2人である。名前はそれぞれ違うし演じる役者も異なり、間の取り方や滑舌の余り良くない者も居るので当初頗る分かり難いのだが、単純な話である。劇中実在するのは、茜と同期の演劇研修生 一方劇中の役柄は茜演ずる百花と同期研修生演じる委員長である。委員長は転校してゆく1級下で高1の百花に告白するのだが、これは憑依されたのだと主張する。無論、百花を嫌って居た訳ではない。逆に好きだったことは事実だ。然し彼女には好きな人が居ることも知っていたので告白して自分の彼女にするより、彼女の好きな人と上手く行くよう応援したいと考えたのだ。
 ところで作品の中で「現実」に存在している茜と同じ演劇の研修生は茜より1つ年下の21歳、同棲相手を結婚相手として選んでいいか否かで悩んでいた茜が彼に相談したことから親しくなった。研修生は茜を好きなので百花を演じている茜に委員長を通じて告白させることによって自らの念を彼女に伝えようとしたのだ。因みに百花が好きな人は同期の女性である。
 内容は以上のようなものであるが、若者の閉塞状況の在り様の一つとして本能の荒々しさすら喪失し、ひね媚びた自同律の不快をすら対象化し得ない受け身の心象風景には気持ち悪ささえ覚える。このようなメンタリティーが昨今のような日本の終末をのさばらせるのかも知れぬ。
ARTE Y SOLERA 『琥珀』

ARTE Y SOLERA 『琥珀』

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

世田谷パブリックシアター(東京都)

2019/08/03 (土) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 世田谷パブリックシアターの3階席から拝見したが、歌舞伎と同じでこういう席は全体を俯瞰できるので、衣装、被り物と衣装のコントラスト、照明の効果、群舞の際のポジショニングや全体のコントラスト等々が構造的に把握できて実に楽しい。

ネタバレBOX

また鍵田 真由美さんと佐藤 浩希さんの2人にはソロのシーンがあるが、流石にソロを踊れるだけのダンサーである。鍵田さんのソロは、ステップの紡ぎ出す正確なリズムと身体の用い方の見事さ、衣装を翻す際の艶やかさのみならず、観ている我々の身体の奥底に普段休眠しているリズム感迄叩き起こして、共鳴させてくれる。これは彼女のダンスが単に身体の見事な動きやステップの刻む正確なリズムによってばかりではなく、これらを通して彼女と共鳴する空間・身体が一体となって、延び広がるような彼女のイマジネーションによって繋がり、その踊りを大きく見せている為だと思われる。佐藤さんの場合、パンタロンの裾巾を物凄く広く取って身体の動きに興趣を添えるとか、スペイン伊達の若者が着るようなコスチュームを纏っても良いかも知れない。この辺り、男性は男性なりの衣装の工夫がもっと欲しい。群舞を舞った踊り手たちも基本は可也できている方々なので、自己と宇宙とのコレスポンダンスを図って欲しいと思うのだ。
 演出的には照明とのマッチングで素晴らしい効果が上がるので、それらの効果を総ての作品について検証して欲しい。自分が最も気に入ったのは黑い衣装に星を鏤めたようなショールを用いた鍵田さんのソロ、矢張り彼女のソロで、赤い被り物を用いた作品の2つ。1番が黒作品であった。頭の可也暗めのぼやかしたようなスポットからグラデーションをつけピンスポに持っていった辺り、照明にも痺れた! 無論この光の変化の中に翻る正しく小宇宙のようなショールの翻る様の美しさも、ネゲブ砂漠の大岩の上に設えられたベッドに寝転びながら、アメリカ在住の著名アーティストと一緒にみた夜空のように素敵なものであった。
500万 ~2019~

500万 ~2019~

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2019/08/02 (金) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 一言で言って爽やかなコメディーである。

ネタバレBOX

基本的に板上はフラット。数個の箱馬があるだけだ。各ストーリーが個別演じられるが、Aの場面にはその相手方のBの場面が、そしてBの場面にはその関連噺のC場面が演じられるというオムニバス形式で物語が紡がれてゆくが、この説明から明らかなように、場面場面は密接な関連を有し各々の関係を詳らかにしてゆく。随所に擽りが入り、展開もスピーディーであり而も爽やかで心温まる内容なので素直に楽しめるし演技・演出も良い。お勧めの作品である。
 必要な額を500万という手の届きそうな額に設定していることも成功の要因になっている。
真・恋愛漫画

真・恋愛漫画

ライオン・パーマ

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2019/07/31 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

 通常、演劇を書く際に絶対必要な条件として、事件、対立・葛藤、笑い、危機一髪、意外な結末等を挙げられよう。だが今作で作家は、先ずこれらの要素を否定することから入ったのではないか?(華5つ☆、必見!)若干の追記あり2019.8.13

ネタバレBOX

 そう思わせる説明文である。先ず、この辺りから検討しなければならない所で既に観客は作品世界に足を突っ込んでいる。即ち実際に作品を観る前から劇的世界に入り込んでいるという訳である。この辺りの仕掛けが実に巧みで興味深い。
 作品内容の細部については公演終了後に若干追記するが、内容的な深さには感心させられた。最近、自分は表現する者として自らを積極的にアイデンティファイすることに、聊か恥ずかしさを感じているのではあるが、当然のこと乍ら、自らの生きる根底にそれを置いているし、自分が生きてあることの意味もそこに置いている。そのような人間として今作が提起する諸問題は何れも極めて本質的で仮借ないものであり、其処を避けて通ればそれだけで表現者失格と言う問題ばかりである。例えば我々は何処から来て、何処へ行くのか? 我らが生きる意味は何か? そもそも、我らに意味はあるのか? 
 表現技法については、上に挙げたような総ての技法を取り去った時に如何に書くことが可能か? といったことや、もう一つの哲学的大問題。即ち死。死とは何か? から始まって死の意味する所とは何か? 死と生を対比させることで我らは何をどのように観、考え、生き、そして避けようの無い最期を迎えるのか? その時の己の心と魂、人間関係や総て関わりの在ったもの・ことと一体どのように対峙すれば納得のゆく最後が迎えられるのか? といった切実で誰一人逃れることのできない心と魂の裸形の葛藤を浮かび上がらせるのだ。そして、実際の生活である日常の、事件も起こらず、笑いも取り立てて必要とは言えず、危機一髪のアクションなんて余計で、意外な結末などもってのホカで、落語でもないのに下げも要らないという世界の限りない愛おしさをこそ描いてみせたのだ。傑作である。無論、演技の質も高く、笑わせてくれるシーンも、本当に落涙させたり、ハラハラさせたり、憐みを感じさせるシーンも鏤められている。総ての要素のバランス感覚も素晴らしい。追記は以下
 火山火山が編集者となって後任を託した天才漫画家・天童 幸一郎の担当編集者となって己を超えるべく矢継早に無理な注文を出す不自然な様や、それとなく臭わせる演技から勘のいい観客は早くから気付いたであろうが、決定的だったのが、部下に水を持って来させ薬を飲むシーンで死病であることが決定的になるシーンなど、実に上手い。
『熱海殺人事件』  vs.  『売春捜査官』

『熱海殺人事件』 vs. 『売春捜査官』

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2019/07/26 (金) ~ 2019/08/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

 つか こうへいに礼を尽くした作品でもある。(追記後送 華5つ☆)

ネタバレBOX

 沖縄の痛みを見事に掬い上げ流れ着く者達の状況、メンタリティーと、そのような人々を迎え入れる沖縄という地域の人々の真の優しさ、強さ、リアルな連帯を結ぶ根底として彼らの持つ、他者の痛みを己の痛みとして受け止める、ウチナンチューやシマンチューの経験してきた凄まじい歴史とリアルな想像力の凄さに撃たれる。
♭1~役者への道~

♭1~役者への道~

ThreeQuarter

中野スタジオあくとれ(東京都)

2019/07/28 (日) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

 今回は30分尺の短編を3本上演。ワークショップに参加した者達も出演していることから、ワークショップ風に、通常は幕などで隠して見せない裏通路や場面転換等も見えるという演出。ワークショップの課題は「新たな自分への挑戦」そしてテーマは「出会い、そして○○」だ。チームは“ひまわり”と“あさがお”の2つ。ひまわりを拝見した。作品は上演順に①婚活パーティー②corn☆er③KRZ1900A・Tomの3本。(追記後送)

群盗=滅罪

群盗=滅罪

クリム=カルム

シアター711(東京都)

2019/07/24 (水) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

 小屋の使い方が凄い。兎に角、楽屋迄様々に楽しめる。(華4つ☆)

ネタバレBOX

 原作は言わずと知れたシラー。然しシェイクスピアにしろこのシラーにしろ、人間を描く為に実に多くの言葉を連ねていることに改めて驚かされる。この膨大な科白の量に今更ながら驚かされるのは、現在書かれる多くの作品は世の中が余りにギスギスして総てを金銭に換算して計量する結果からか兎に角、干からび人間に対する信頼を既に失って長いせいかも知れぬ。少なくともシラーの時代までは人間はどうしようもなく矛盾に満ちた存在であり、救いようのない生き物ではあるが、それでもそのことを出来るだけ精緻に描くことによって、つまり人間の醜い部分もあからさまに観、意識化することで未来に繋がる何らかの可能性を見出そうとすることができる、との念が作家の心の奥底に未だ残っていたのではないか? と思うのである。
Pickaroon!【クチコミ待ってます!次回東京公演は10月!】

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壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2019/07/26 (金) ~ 2019/07/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

 殊に気に入った役者は男虎役、伊武役、佐久間役。力石役。追記2019.7.27

ネタバレBOX

 脚本は極めて本質的な為政者の持つ政治性即ち臣民操作と非人間性を見事に描きつつ、エンターテイメントとしても高い質を保っている。というのは、七人の盗賊たちの衣装が見事で誰の衣装をとっても何れも歌舞伎者が着そうな派手で洒落たものばかり。舞台美術も凝っており、見応え十分な上に殺陣が結構入るのだがスピーディーな動きと身体能力の高さを随所で見せてくれる。
 盗賊七人各々の持つ武器、闘い方も見所である。自分は結構シナリオの出来を重く見る方だが、骨太で完成度の高いシナリオであると感じるのは、例えば宮廷の宮という位置にある者は本当は非在だ。という視点などに現れてくる。確かロラン・バルトが「表徴の帝国」で書いていたことに日本文化というのは中心に空虚がある、ということであった。東京のど真ん中にある皇居、実質空間としては、殆どが庭、即ち空間的には“虚”であることを衝いた鋭い指摘であった。為政者としては、この認識が正しかろう。丁度、それは国家という幻想が責任無化の為のシステムでしかないのと同義である。であればこそ裕仁は「朕は国家なり」と言い募ることが可能であった訳であり、敗戦迄唯一の主権者であったにも拘わらず、戦争責任を平気で逃れていたのだと言わざるを得まい。と同時に彼自身戦争責任を問われることが不思議でならなかったのだろう。何故なら虚でしかないのだから。
翠...そして見知らぬ我が家

翠...そして見知らぬ我が家

東京ストーリーテラー

ブディストホール(東京都)

2019/07/24 (水) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

 普通の人が普通に書けば、パラレルワールド作品ということを中心に書くだろう。(華4つ☆追記2019.7.27)

ネタバレBOX

然し、自分は全く別の視座から、今作を拝見した。無論、パラレルワールドを描いているということを否定している訳ではない。ただ、自分の観方はそういう点よりもっと我々の現実の深みに根差した観方をした、というに過ぎない。
 序盤の内容は可也シリアスだ。町工場同然の小企業から出発したが、倒産の憂き目を見た、先代の志を継ぎ、手放さざるを得なかった元の家を買い戻したい。それが?社長の夢であった。若い頃の彼はそのことに熱中し最愛の妻と所帯を持った安アパート生活でも決して諦めることはなかったが、技術革新が目覚ましい現代。どうしても特許が取れるような技術を開発しその技術を用いて積年の夢を叶えたかった。その為に最先端技術を入手する必要を感じた彼は米留学を望む。留学後、培った技能・技術、最新の知見を基に彼は技術特許を取得、会社は順調な伸びを示し、現在では中堅と呼ばれるまでに成長した。
 然しグローバリゼーションの嵐の吹き荒れる中、守れるだけは守ってきた社員達も何かあれば馘首せざるを得なくなっているのは、金融に支配される総ての産業の宿命である。もとより社会主義国家である国々も現実には債務貨幣システム上で機能している以上この罠から逃れる術はない。例外は、既に大きくなり過ぎた企業のみだ。リーマンショック後にも世界中でコングロマリット企業が政府の金融政策(too fail too big)によって生き延びたのは衆知の事実である。ところで一般の人々が勘違いしている重大極まることがある。言われてみれば、何だ、そんなこと!? と鼻であしらわれそうだが、コロンブスの卵の例えもある。しっかり心に留めて欲しい。リーマンショック後もそうだったが、「評論家」も一般の人々もやれGDPが何%急落しただの、失業率が何%になっただのということは言うが、実際は金の流れ(非流通を含む)に激変があった結果起っていることであって、その逆ではないということである。現在、この世界の頂点に君臨するのは金融であって他の何物でもない。これが例えば環境の激変によって食糧・水が現在の半分以下の量になったとしたら猶更である。この傾向はこのように生きるに絶対必要な物が0になるまで続くであろう。(人間が今迄通り愚かであれば、残念極まることではあるが。)
 この件に関して面白い本が出ている。東洋経済新報社刊の「公共貨幣」だ。著者は山口 薫氏。世界中の経済学会でタブーとされた初期シカゴ学派の唱導したプランの再評価であると共に、ミクロ、マクロ等の経済学とケインズ、新古典主義経済学のアウトライン、マルクス経済学のアウトライン他、長い間絶版になっていたIrving Fisher「100%Money」の再評価などが概括されている。他に彼の開発したものを含む様々なシミュレーション分析とその結果から、現行の債務貨幣システムの問題点と克服すべきシステム上の欠陥を指摘している。
一方、インターネットが世界中をその網の目のネットワークを結びつけた結果人々の生活は格段に便利にはなったものの、一方では企業会計上の利益率を増大させる為、生産手段としての機械化に停滞や飽和を感じた企業は、労賃全体をそのままにして労賃の安い国々にサテライトを設け労賃の安い人々に労働市場を求めた。結果例えば先進国の熟練労働者1人分の資金で数倍以上の人員を雇用することが可能となった。機械化が停滞・飽和状態まで進んだ結果、作業自体は殆どが単純作業であるから、生産性は、増えた人数と等倍にはならなくとも全体としての生産性は上がり、企業会計には大きな黒字を齎すことになる。これがインターネットの網の目が世界中に広がり、人々が便利を享受する代わりに得た、社会の経済体制であり、製造業に携わる企業そのものは、金融から金を借りることで事業を起こし運営している訳だから金融は一般企業より強い位置を確保しているということである。
一方、アメリカがリーマンショックを起こした国であり、そこではリバレッジを最大化した取引が行われていてそれが破綻した為に起こったのがリーマンショックの正体だろう。1929年の世界大恐慌の発端もアメリカであり、債務貨幣システムそのものは当時も現在も変わっていない。であれば、金の流れそのものを支配している現在の債務貨幣システムそのものの問題を解かなければ、必ず同じことがまた起こるということでもある。
By the way,上に挙げた論理も一つの意見、見解である。もう一つ面白そうな本を上げておこう。ソ連崩壊以降「共産主義は破綻した」と嗤う人々がいくらでも居た。マルクスはおろか、その主著たる「資本論」第一部も読まず(生前マルクス自身が完成させたのはこの部分のみ。2部はかなり多くを完成レベルまで推敲したが絶命)、共産主義の定義さえ知らずに蠢いている人々の罵声に何の意味も無かったが。マルクスの草稿を現在研究中の著者が一般読者向けに書いた「資本論」角川書店刊。人口に膾炙した多くの解釈の過ちをキチンと分かり易く説いてくれる優れた研究者の著書である。今、金に支配される世の中を如何に人間化し得るかまで考えさせる好著。執筆は佐々木 隆治氏。
小島弥太郎 槍襖仁王立ち異聞

小島弥太郎 槍襖仁王立ち異聞

劇団東京ドラマハウス

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2019/07/25 (木) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

 謙信が女性だった、という説を実証してゆく物語。様々な資料を積み重ねて行く手法には中々の説得力がある。(追記2019.7.27)(華4つ☆)

ネタバレBOX

 良いか悪いかの判断は読者諸氏の判断にお任せするが、弥太郎の死に様は、男の理想の死に様の一つではあろう。己も、相手の女性も共に初の体験で、偶々戦場で出くわした女子に乱暴を働いて大人になった十四歳の弥太郎の犯した相手は一つ年上の姫君であった。彼女にとっても初めての、生涯唯一の男、この男が自分を犯した申し訳に、もし何かの縁で再び会うことがあれば、彼はこの女性の為に命を的にして守ると誓ったのだった。
 初陣で大手柄を立て、その後も多くの武勲を立て、通り名迄得て勇名を馳せた弥太郎だったが、刈り取った首を売れなかった。余りに酷な様を目の当たりにしたことが原因だ。既に19歳になり戦場の悲惨は見て来た彼が、首を買い取った漢方薬の製造人が頭蓋をかち割った頭から脳を取出し、薬にする為の準備をしている所を見て仕舞ったのが彼が父の仕事を継ぐ気になった原因である。一旦、親の反対を押し切って武士になることを選んだ弥太郎が渡し守になろうと本意を翻したのだから相当のショックを受けたに相違ない。然し、父や母から世の中には裏と表があること、子供の頃は父母が立ちはだかって裏を見せないようにしていたが、父も戦に赴いた節には、首を売りその金で芋を買って弥太郎はそれを食べて大きくなったのだと諭す。言ってみれば、これが弥太郎が精神的に大人になるイニシエーションであったということになろう。更に言えば、父がこの漢方薬製造者を唐人と知りながら発言は決して差別的で無い点も注目しておきたい。
 何れにせよ、運命の出会いは上杉家のお家騒動迄待たねばならない。このお家騒動は長兄・晴景とその妻・妙による跡目相続問題に絡む謀反であったが七夕に催された本丸での上杉家女衆の集いは謀であった。ここで晴景夫妻は、跡目は阿虎に譲ると決めていた於虎御前以下、跡目を継ぐ者とされた阿虎、実権を握る母・於虎御前を含めて殺そうと企てたのだが図ったのは妙。然し於虎御前は後継と決めていた阿虎を先に逃がし阿虎の姉・阿亀と共に本丸に残って晴景の手勢を破った。一方、謀反を起こした長兄配下の者達に追われた阿虎は、弥太郎が船頭をする川辺へ至った。大勢の者が一人を襲うは卑怯と阿虎に助太刀した弥太郎に対し阿虎は「仕官せぬか」と問う。彼の活躍ぶりに剛の者と知りキチンと武道を知っていると見て名を問う阿虎に当初、弥太郎は今までの経緯から否と応えるものの、阿虎の述べる戦うことの意味は民の為であることを知り、彼女が陣に臨んで詣でた際に毘沙門天が降りてきて民の為に戦うのであれば庇護してやろうとの言を賜ったこと、自分の初陣の折、犯した女子であったこと、彼女はその後、疱瘡を患って顔半分にあばたが残り、女を捨てた。生涯たった一人の男がそなた・弥太郎であり、その時彼が吐いた言葉を繰り返されると最早従う他はなくなった。この運命の出会いから川中島での信玄との四度目の戦いで、彼女が月のもののせいで戦線を離脱せざるを得なかった際に彼女の退路を確保する為に槍衾となって立ちはだかった剛の者、今弁慶として男の死に様を見せた英雄として戦うシーンぇの隈取は矢張り迫力。彼の死後、年をとった弥太郎の父母が渡し賃を稼ぐことができなくなると、戦国時代であるにも関わらず橋を掛けさせて通行料を彼らの収益とし、弥太郎の妻が夫を失って難儀していると聞くと、体を戦で傷つけた家臣の侍と結婚させ生活に苦労が無いよう計らったりと細やかな心使いを見せたという美談付きである。史実にも謙信は人格的に高い評価を受けている武将である。品もある。近頃、ホントに品のある方が少なくなった。自分が子供の頃には、ホントに品のあるお婆様などが結構いらっしゃったものだが。
 ところで、今作には他にもしみじみさせられるシーンがある。謀反を起こした晴景夫婦を罰するに於虎御前は頭を丸めて出家することを命じた。命は助けたのである。裏切って自分達を殺そうとはしたものの、晴景は自分の子、そして妙はその妻であるからだ。男勝りの武勲を立てた武将でもある於虎御前という女性の、母としての愛の深さをしみじみ思わせる良いシーンである。

おどる韓国むかしばなし『春春~ボムボム~』

おどる韓国むかしばなし『春春~ボムボム~』

あうるすぽっと

あうるすぽっと(東京都)

2019/07/20 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了

満足度★★★

 板上に何層にも様々な文様を描いた、これまた様々な地色の大きな紙が縦横無尽に置かれていたのを、踊りながら演者が剥がしてゆくと季節が変わり景色が変わってゆく。オープニングでは強い北風の音の中、光の入った奥のスクリーンの手前を右上がりに延びるスロープが浮かび上がるまでは実に見事なのだが、群舞では、各々の動作タイミングが意識的ではないズレを生じて折角の画面を台無しにしてしまった。時間的な制約もあるであろうが、多くの子供達が観る舞台だ。もっと鍛錬して欲しい。群舞の動きは途中からやや良くなってきたので序盤はウォーミングアップ不足かも知れない。群れで演じる人達も一人一人が演出もしているスズキ氏と同等の動きやセンスを目指して欲しい。不幸にして既に大人になって仕舞った我々は子供達に一流の芸を見せたいではないか。
 演出、照明、音響、吊り具などの使い方がグー。(華3つ☆)

しだれ咲き サマーストーム

しだれ咲き サマーストーム

あやめ十八番

吉祥寺シアター(東京都)

2019/07/19 (金) ~ 2019/07/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

 吉原には「八朔」という行事があったという。柑橘類の話ではない。文字通り旧暦の八月一日のことである。家康が天正十八年八月朔日に江戸に入ったことを記念して各大名、旗本、御家人などは白装束で将軍に拝謁したのだが、江戸庶民にとっては、吉原の遊女が白小袖を着て客を迎えたことを意味した。未だ暑い盛りであるから白い小袖は、雪の純白や純な娘にも通じ、粋を尊んだ江戸っ子達の人気を博したようだ。(新暦では大体8月末頃)(追記2019.7.24)

ネタバレBOX

 無論、この物語の面白さは、八朔にだけあるのではない。この時代の日本では“嫐打ち”という名の面白い風習があったのだという。(今作の時代設定での江戸が寛政以前であることは、それ以降にはこの風習が廃れているから明らか)どんな風習であったかというと三行半を突き付けられ離縁された女房の亭主が一月以内に新たな祝言を上げた場合、前妻は徒党を組んでカチコミを掛けることが出来たというのだ。応戦する側にも助っ人は認められていた。一応、刃物を持って戦ってはいけないとか、器物の打ち壊しは構わぬが、人を叩いてはならないなど規則があったようだが、無論、怪我人は多く出たそうである。唯刃物は禁じられていたので、獲物は台所や家庭にある箒や擂粉木のような家事道具の類であったらしい。何れにせよ、チャンと果たし状のような物を相手に送って、それに返書も届くのだが、今作ではどちらも候文が用いられていて、流石に和物に強い劇作家だと感心させられることしきり。現代の我々が極めて面白く感じるのは、カチコミ掛けるのに、挨拶も糞もネエだろうという現代日本人の感覚からみるとホントに滑稽なのが、この名乗りというか挨拶状のやりとりで、こんな悠長なことが成り立っていたこと自体、当にジョークである。
 閑話休題、火事と喧嘩は江戸の華とはよく言ったもので、映画の「吉原炎上」の時代設定は明治末頃とされていて関東大震災の時ではないが、大震災の際に大門を開けてもらえず多くの遊女が亡くなったことは誰でも知っていよう。花魁ともなれば高嶺の花でもあった訳だし、この後述べる東薫が大門の内に入れなくなったのは、彼が放火してボヤを出した話も出て来るのでこの連結にもそう無理はあるまい。
 更に面白さを増すのが、この脚本のメタ構造である。5年の間に元同門の落語家3名のうち、1人は真打となって白菊の跡目を継いだが、師匠の娘、袖は弟弟子の東薫に取られている。というのも東薫は中々の色男で袖がゾッコンだったが為だ。然し、東薫は、兄弟子から貰った金で同輩の岩鼻と共に出向いた吉原で鬼瀬川という花魁に入れあげてしまう。東薫は新婚ほやほやにも関わらず、袖に離縁を迫るが一向進展せぬまま5年が経った。岩鼻はこの間に戯作者として名を成していたが、白菊から新作落語を、吉原の大店からは、八朔に行われる俄か狂言の脚本執筆を頼まれる。そこで吉原の有様をつぶさに観察できる部屋に住み込み、取材を始めるがその際、身の周りの世話役に朝蛾於という遊女をあてがわれる。岩鼻は、精緻な取材の結果、筋だけを組み立て、登場人物達そのものを差配して落語の新作と俄か狂言の脚本のクライマックスを同時に八朔当日に仕組んだ。つまり今作は、岩鼻という劇中に登場する戯作者が書きあげたシナリオを劇に登場する人物達が演じるという構造になっている訳だ。無論、現実には実際の脚本を書いた実在の作家が、総てを計算して書いている訳でこの幾重にも重ねられたメタ構造自体が極めて楽しめるものとなっているのだ。この複雑な面白さに比べたら、Vチューバー・のよという名のバーチャルアイドルとその制作者達、落語と俄か狂言の連結、何となく現代日本と江戸のそれが重なりあっていることなど取るに足りまい。あちこちに敷かれた伏線から、東薫狂乱の場などはシェイクスピアの「マクベス」敗退の場面を彷彿とさせるし、実際に今作を書いた劇作家は、江戸時代の作家として日本のシェイクスピアと謂われる近松門左衛門や戯作者井原西鶴現代日本版を目指しているのかも知れないなどとも感じさせる。
 登場人物の中で最も気に入ったのは岩鼻、朝蛾於。
律儀な強盗犯

律儀な強盗犯

ウィークエンドシアター

ARISE 舞の館(東京都)

2019/07/06 (土) ~ 2019/07/21 (日)公演終了

満足度★★★★

 律儀な強盗という発想自体がユニークなのだが、こんなコンセプトを聞いて自分が思い浮かべたのは飛翔力の乏しい“説教強盗”であった。然し、今作は遥かにこんなありきたりを超えている。大体、強盗に走った動機が非凡である。だって善意の塊なのだ。どんな風に展開するかは観てのお楽しみ。50分強の中編で、入り口で履物を脱ぎ、ドリンクをオーダーすべし。観る価値は無論充分あり。(華4つ☆ネタバレ追記2019.8.26)

ネタバレBOX

 さて、肝心の内容であるが、この強盗は郵便局に押し入る際に犬の仮面を被り、玩具のナイフで脅し局員に必ず返すと言って強盗を犯したのである。而も動機は会社の先輩が彼に借りた金の返済期限に金を返せず、詫びを入れてきたのだが、当てにしていた金が無いと自分達の結婚式場の資金が出ずにっちもさっちもいかなくなることであった。実際に起こったことだというから猶更驚く。事実は小説より奇なりとはよく言ったものである。
ハナイトナデシコVol.9

ハナイトナデシコVol.9

ハナイトナデシコ

ギャラリーサイズ(東京都)

2019/07/19 (金) ~ 2019/07/21 (日)公演終了

満足度★★★★

 誰のせいでこんな人生生きてんの? (華4つ☆追記後送)

ネタバレBOX

 個人情報を守る為と称してマスクを付けて下さいとの指示に従って目元を覆うマスクを付けて入場した1人目の女、ネット時代らしい注意事項だが、入室すると部屋に置かれたパソコンを覗きこむ。何でもゲームは3人揃ってから始めること、部屋には爆弾が設置してあり、嘘を吐くと爆発することなどが伝えられる。追々他のメンバーも集まってくるが。本当に爆弾が爆発するか否かは分からない。が、パソコンのある机上には段ボールに入った荷物があり、それには爆弾と書かれていた。集まったのは女2人、男1人の3名なのだが、初めに女、次も女と続く中、3人目が女なのか男なのかで、次が男の人だったらどうしよう、といったと戸惑いを描き込む点、如何にも女性作家らしい視点が男の自分にとっては新鮮だ。世の中で新鮮なのは、イマジネーションの強烈なライバル、子供と、謎の存在、女性である。まあ、こんな個人的なことはどうでも良い。
 ハナイトナデシコの作品を書いている劇作家の優れている点は、劇的な状況がどのような設定で可能か? を良く心得ていることだ。今作でも、爆弾が目の前に存在していることからくる緊張感は、ホントに爆発するか否かに関わりなく極めて重大である。何故ならその緊張感がひしひしと観客にも共有されるからである。実際に爆弾が身近に置かれたら生きた心地がしないほどの恐怖を感じるだろう。こんな緊張感の只中にいきなり、ニュースになったブラック企業勤めだった人が、実は最後に入室した男の兄であるという事実が告げられ、而も兄が不眠不休で開発したプロジェクトは他の者に横取りされ、横取りした人物は評価されて2週間海外有給休暇を与えられる。横取り野郎の欠勤分の仕事は兄が担った。こんな悲惨なおまけつきの現実がいきなり開陳されるのだ! 働き過ぎで兄は精神を病み療養中である。
 これって、まともに働いてる人達には、自分のことと重なる日本の現実じゃないのか? 判子押してるだけの奴が高い評価を受けてドンドン出世してゆき、一所懸命,当に身を粉にして働いている自分達は派遣でいつ切られるかも分からず、給料も安い。恋をしてもデート代すらない。こんな人生を一生強いられるのは、目に見えているのではないか? 拝見しながら去来するのは、こんな現実、人生の深淵である。
「晴れの日のクロニクル」
 Mask gameをゆるやかに継承しつつ展開するゲーム終了3か月後の不条理劇。お姉ちゃんの見合い相手は最後迄登場しないのだが、これがベケットの「En attendant Godot」最大の問題点、ゴドーの出現しないことを意識的にベースにしているとしたら、凄い。

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