ハナイトナデシコVol.9 公演情報 ハナイトナデシコ「ハナイトナデシコVol.9」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     誰のせいでこんな人生生きてんの? (華4つ☆追記後送)

    ネタバレBOX

     個人情報を守る為と称してマスクを付けて下さいとの指示に従って目元を覆うマスクを付けて入場した1人目の女、ネット時代らしい注意事項だが、入室すると部屋に置かれたパソコンを覗きこむ。何でもゲームは3人揃ってから始めること、部屋には爆弾が設置してあり、嘘を吐くと爆発することなどが伝えられる。追々他のメンバーも集まってくるが。本当に爆弾が爆発するか否かは分からない。が、パソコンのある机上には段ボールに入った荷物があり、それには爆弾と書かれていた。集まったのは女2人、男1人の3名なのだが、初めに女、次も女と続く中、3人目が女なのか男なのかで、次が男の人だったらどうしよう、といったと戸惑いを描き込む点、如何にも女性作家らしい視点が男の自分にとっては新鮮だ。世の中で新鮮なのは、イマジネーションの強烈なライバル、子供と、謎の存在、女性である。まあ、こんな個人的なことはどうでも良い。
     ハナイトナデシコの作品を書いている劇作家の優れている点は、劇的な状況がどのような設定で可能か? を良く心得ていることだ。今作でも、爆弾が目の前に存在していることからくる緊張感は、ホントに爆発するか否かに関わりなく極めて重大である。何故ならその緊張感がひしひしと観客にも共有されるからである。実際に爆弾が身近に置かれたら生きた心地がしないほどの恐怖を感じるだろう。こんな緊張感の只中にいきなり、ニュースになったブラック企業勤めだった人が、実は最後に入室した男の兄であるという事実が告げられ、而も兄が不眠不休で開発したプロジェクトは他の者に横取りされ、横取りした人物は評価されて2週間海外有給休暇を与えられる。横取り野郎の欠勤分の仕事は兄が担った。こんな悲惨なおまけつきの現実がいきなり開陳されるのだ! 働き過ぎで兄は精神を病み療養中である。
     これって、まともに働いてる人達には、自分のことと重なる日本の現実じゃないのか? 判子押してるだけの奴が高い評価を受けてドンドン出世してゆき、一所懸命,当に身を粉にして働いている自分達は派遣でいつ切られるかも分からず、給料も安い。恋をしてもデート代すらない。こんな人生を一生強いられるのは、目に見えているのではないか? 拝見しながら去来するのは、こんな現実、人生の深淵である。
    「晴れの日のクロニクル」
     Mask gameをゆるやかに継承しつつ展開するゲーム終了3か月後の不条理劇。お姉ちゃんの見合い相手は最後迄登場しないのだが、これがベケットの「En attendant Godot」最大の問題点、ゴドーの出現しないことを意識的にベースにしているとしたら、凄い。

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    2019/07/21 00:46

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