翠...そして見知らぬ我が家 公演情報 東京ストーリーテラー「翠...そして見知らぬ我が家」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     普通の人が普通に書けば、パラレルワールド作品ということを中心に書くだろう。(華4つ☆追記2019.7.27)

    ネタバレBOX

    然し、自分は全く別の視座から、今作を拝見した。無論、パラレルワールドを描いているということを否定している訳ではない。ただ、自分の観方はそういう点よりもっと我々の現実の深みに根差した観方をした、というに過ぎない。
     序盤の内容は可也シリアスだ。町工場同然の小企業から出発したが、倒産の憂き目を見た、先代の志を継ぎ、手放さざるを得なかった元の家を買い戻したい。それが?社長の夢であった。若い頃の彼はそのことに熱中し最愛の妻と所帯を持った安アパート生活でも決して諦めることはなかったが、技術革新が目覚ましい現代。どうしても特許が取れるような技術を開発しその技術を用いて積年の夢を叶えたかった。その為に最先端技術を入手する必要を感じた彼は米留学を望む。留学後、培った技能・技術、最新の知見を基に彼は技術特許を取得、会社は順調な伸びを示し、現在では中堅と呼ばれるまでに成長した。
     然しグローバリゼーションの嵐の吹き荒れる中、守れるだけは守ってきた社員達も何かあれば馘首せざるを得なくなっているのは、金融に支配される総ての産業の宿命である。もとより社会主義国家である国々も現実には債務貨幣システム上で機能している以上この罠から逃れる術はない。例外は、既に大きくなり過ぎた企業のみだ。リーマンショック後にも世界中でコングロマリット企業が政府の金融政策(too fail too big)によって生き延びたのは衆知の事実である。ところで一般の人々が勘違いしている重大極まることがある。言われてみれば、何だ、そんなこと!? と鼻であしらわれそうだが、コロンブスの卵の例えもある。しっかり心に留めて欲しい。リーマンショック後もそうだったが、「評論家」も一般の人々もやれGDPが何%急落しただの、失業率が何%になっただのということは言うが、実際は金の流れ(非流通を含む)に激変があった結果起っていることであって、その逆ではないということである。現在、この世界の頂点に君臨するのは金融であって他の何物でもない。これが例えば環境の激変によって食糧・水が現在の半分以下の量になったとしたら猶更である。この傾向はこのように生きるに絶対必要な物が0になるまで続くであろう。(人間が今迄通り愚かであれば、残念極まることではあるが。)
     この件に関して面白い本が出ている。東洋経済新報社刊の「公共貨幣」だ。著者は山口 薫氏。世界中の経済学会でタブーとされた初期シカゴ学派の唱導したプランの再評価であると共に、ミクロ、マクロ等の経済学とケインズ、新古典主義経済学のアウトライン、マルクス経済学のアウトライン他、長い間絶版になっていたIrving Fisher「100%Money」の再評価などが概括されている。他に彼の開発したものを含む様々なシミュレーション分析とその結果から、現行の債務貨幣システムの問題点と克服すべきシステム上の欠陥を指摘している。
    一方、インターネットが世界中をその網の目のネットワークを結びつけた結果人々の生活は格段に便利にはなったものの、一方では企業会計上の利益率を増大させる為、生産手段としての機械化に停滞や飽和を感じた企業は、労賃全体をそのままにして労賃の安い国々にサテライトを設け労賃の安い人々に労働市場を求めた。結果例えば先進国の熟練労働者1人分の資金で数倍以上の人員を雇用することが可能となった。機械化が停滞・飽和状態まで進んだ結果、作業自体は殆どが単純作業であるから、生産性は、増えた人数と等倍にはならなくとも全体としての生産性は上がり、企業会計には大きな黒字を齎すことになる。これがインターネットの網の目が世界中に広がり、人々が便利を享受する代わりに得た、社会の経済体制であり、製造業に携わる企業そのものは、金融から金を借りることで事業を起こし運営している訳だから金融は一般企業より強い位置を確保しているということである。
    一方、アメリカがリーマンショックを起こした国であり、そこではリバレッジを最大化した取引が行われていてそれが破綻した為に起こったのがリーマンショックの正体だろう。1929年の世界大恐慌の発端もアメリカであり、債務貨幣システムそのものは当時も現在も変わっていない。であれば、金の流れそのものを支配している現在の債務貨幣システムそのものの問題を解かなければ、必ず同じことがまた起こるということでもある。
    By the way,上に挙げた論理も一つの意見、見解である。もう一つ面白そうな本を上げておこう。ソ連崩壊以降「共産主義は破綻した」と嗤う人々がいくらでも居た。マルクスはおろか、その主著たる「資本論」第一部も読まず(生前マルクス自身が完成させたのはこの部分のみ。2部はかなり多くを完成レベルまで推敲したが絶命)、共産主義の定義さえ知らずに蠢いている人々の罵声に何の意味も無かったが。マルクスの草稿を現在研究中の著者が一般読者向けに書いた「資本論」角川書店刊。人口に膾炙した多くの解釈の過ちをキチンと分かり易く説いてくれる優れた研究者の著書である。今、金に支配される世の中を如何に人間化し得るかまで考えさせる好著。執筆は佐々木 隆治氏。

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    2019/07/26 12:49

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  • 皆さま
    遅くなりましたが追記しておきました。
    ご笑覧下さい。
                    ハンダラ

    2019/07/27 22:56

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