ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

41-60件 / 3405件中
雷ノ鳥

雷ノ鳥

劇団カルタ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/11/07 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 尺は途中休憩10分を挟み約150分。追記後送

ネタバレBOX

 都内では最近、誘拐事件が多発しており警察は独自に対策チームを結成、捜査をしていた。然し首謀者は、実行犯に犯行に最低限必要な情報しか与えず、連絡も足のつかない方法で行い、犯罪基地を海外に置いている場合が多い為、捜査は難航を極めていた。更に悪いことにこの誘拐事件の影の主犯と目される人物は公安から特別な扱いを受け、実質的に警察から守られていたのである。而も表の主犯は、既に組織の罠に嵌められ消されている。
 何故、このような事態に至ったのか? この謎を解く為、娘を誘拐されたカメラマン夫妻は警察から潜入捜査協力を打診され承諾して夫が組織の内部に潜り込むと同時に、夫妻で黒幕と思しい女(チカナ)が滞在するホテルで客室勤務をしながら事件の鍵となる物の行方を追っていた。
冬物語

冬物語

明治大学シェイクスピアプロジェクト

アカデミーホール(明治大学駿河台キャンパス)(東京都)

2025/11/07 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 いつも乍ら学生演劇とは思えないレベルの高さ、大学がバックアップしていることもあり、舞台美術の壮麗、衣装の豪華なことは特筆に値する。無論、肝心要の脚本も翻訳を学生が担っているが、翻訳の難しさは単に訳される言語だけではなく、訳された言語(シェイクスピア作品の英語から、相応しい日本語へ)双方への深い知識と素養・理解が必要な点である。これは重要なことだ。どちらか一方が欠ければ決して満足な翻訳にはならないからだ。まして戯曲の翻訳となれば言葉のリズムにも留意せねばならぬ。いくら役者陣が活舌を鍛えていても台詞のリズムが悪ければ覚えにくいし、観客にとっても不快になる。殊更、革新的な効果を狙うのでない限り、リズムを大切にすべきは常道であろう。この点に於いても翻訳がこなれていることは見事である。演者達の役作り、発声、挙措も手際の良い演出の効果もあり見事な出来、無論、歳老いた役柄を演ずるに当たっては、よる年波に相応しい姿・身体能力の衰えと経験に裏打ちされた表情を自然に表現するのは極めて難しいが。通常の学生演劇を凌駕する豪華絢爛とスタンダードな創りは、矢張り特筆すべきであろう。スタッフの対応も合理的で而も親切、感謝する。

ロックスターは死んだ

ロックスターは死んだ

中央大学第二演劇研究会

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2025/11/06 (木) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 タイトルからイメージしていたより遥かに良い出来であった。

ネタバレBOX

というのも、自分はロックという音楽ジャンルを創造し実際に活躍するスターたちの創造の原動力を基本的には少年・少女時代に抱いていた夢や希望、少年・少女時代に苛めや差別に遭い潰れそうになった辛い過去に対し、思春期以降増してくる自分達の体力や飛躍的な身体的成長を遂げた段階で自分達を虐げてきた人々に対し突っ張るという形を採り、自分達が抱えている精神的苦痛を、壊れてゆく夢の痛みを、自壊せざるを得なかった崩壊の音に託して表現した音楽と考えており、その痛みが未だ社会的経験に乏しい彼ら彼女らをカモる悪徳興行者らによって収奪されてゆく現実との対比に於いて極めて正確に描かれていたからである。若さとは端的に社会的な経験不足を意味し社会経験を積んだ連中がこのような若者をカモることは容易い。今作の太い柱は、この構造をクッキリ描き出した点にある。契約書の持つ社会的・法的意味、事件化する程手広くあくどいプロモーターを登場させ、警察・司法の介在を通して進行する社会的「正義」の意味等がしっかりした骨太の脚本によって実現されている。経年後の元バンドメンバーだった者達の現在をも活写している点も泣かせる、ギター片手に“Daydream Believer”を合唱するシーンは最高だ! 役者陣の演技、演出も良い。舞台美術も内容に応じて過不足なく合理的に機能している。いつもながらスタッフの対応もグー。お勧めの舞台である。
高知パルプ生コン事件

高知パルプ生コン事件

燐光群

「劇」小劇場(東京都)

2025/10/31 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 華4つ☆(追記後送)

ネタバレBOX

 開演前には往時の様子が、ラジオニュース放送時のような形で流されている。板上の美術は至ってシンプル。上演はどちらかというと朗読劇的に感じられた。恐らく、作・演出の坂手氏自身がより演劇的手法で表現するより、実際に企業や自治体、日本国家(政治屋及び体制側官僚)、法と対峙しつつ最後迄戦い抜き、実質的勝訴(実際には罰金刑)を勝ち取った人々の態度、主張、理知的戦い方、優れた想像力、実践時の合理性と正確さ、彼らの主張と矛盾しない環境や人間の本質的権利等々に対する見事さ、連携した人々が最後迄共闘し得た内実等を能う限り忠実に再現したかったからだと解釈した。だが、このケースに見られる”成功例”は僥倖と言ってよかろう。此処迄は至らなかったものの、一所懸命に戦い諸々の事情(原爆症による死・闘病等)によって完遂は出来なかった人々の事情、社会的、職業的差からくる周りの人々の反応の差迄を描き、このような成功例が如何に例外的であり最後迄戦い抜いた人々と彼らに実質的エールを送っていた事件被害者や公害を引き起こした企業の第1組合を中心とするメンバーら実際の事情を識り内心臍を嚙んでいた人々の姿をも事実に近い形で知らせ、現実に成功する為に何が必要であり、どのように戦うのが実際に有効かを示す為にこのような表現形態を選んでいるように思われる。
 実際板上に表現されている舞台美術はオープニング時、移動式テーブルを横一列に並べただけの質素なものである。これが場面に応じて移動、組み換えられ時には高台、津波時の避難塔となったりもする。演劇的な設定はタイムスリップものになっている点で、タイムスリッパー2名は2026年からスリップして来たピーファス被害の父と娘の2名。タイムスリップ着時点は同時期、地点はほぼ同じ場所であったもののやや離れた場所であった為、タイムスリップの影響で記憶喪失を起し中々記憶を取り戻すことのできなかった、父・娘(こちらは比較的早く回復)の邂逅は何か月遅れ、父・娘各々が地場で公害に反対するリーダーグループの世話になったり、公害企業で働くことになったりして公害を出す側と周辺住民、反公害の主張とムーブメントの消長等が対比されつつ展開してゆく。
人のいぬ山

人のいぬ山

発条ロールシアター

中野スタジオあくとれ(東京都)

2025/10/31 (金) ~ 2025/11/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 華4つ☆
 分かったようで分からぬタイトルだが、

ネタバレBOX

如何にも、一見脳天気な作品を装うこの劇団らしいタイトルでもあるから、今迄この劇団を観てきた観客には、時代の激変とそれに巻き込まれて右往左往している多くの人々にもこうして自分達の特性を今回の公演でも守っているこの劇団の健全性に心打たれるかもしれない。その一例がのっけから、まあ何故このタイトルなのか? に現れていよう。だが解は観てのお愉しみの1つだ。
 今作を笑って観ることが出来るか否かが、観る者の健全性のバロメータになりそうな作品でもある。
 観終わった瞬間は、ほにゃら! という感覚だが、妙に引っ掛かる。そこからメタ思考が始まり、様々なシーンを思い起こしてはその意味する処を詰めてゆく。そんな観劇体験を愉しめる作品だ。
『眼球綺譚/再生』

『眼球綺譚/再生』

idenshi195

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2025/10/29 (水) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 華4つ☆

ネタバレBOX

 「再生」を拝見、朗読形式なので美術は至ってシンプル。絵空箱の入り口に対しLの字を反時計回りに90度回転させた形で客席を設け対面の壁と客席に囲まれた空間が役者陣の陣地である。L字長辺の下手に箱馬型の照明器具が2つ役者を斜めから照らすように置かれ、丸椅子に座った役者を挟んで上手に骰子型の照明器具が1つ置かれている。演出家が、演者の発語していない時空をも表現の一部と見做して演出しているので、中々張り詰めた空気の中で、演者達の朗読が為され効果的だ。
 物語は怪奇幻想譚といった雰囲気のゴシックロマン風の作品。登場人物は、大学教授兼作家の壮年男性と彼の大学に通う女子大生(22歳)との恋愛譚の形式を採る。2人のなり染めは精神科の待合室。教授はアル中の治療の為、彼女はクロイツフェルト・ヤコブ病治療の為来院していたが、受付で教授の名が呼ばれたのを機に彼女が彼に話し掛けたことがきっかけであった。2人は歳の差にも拘らず愛し合い結婚するに至ったが、彼女の病は間もなく彼女の身体を酷く蝕んでゆく。大学への就職が内定していたにも関わらず、教授は彼女を休ませる為、別荘に2人っ切りで引き籠り治療の為に止めていたアルコールに再び依存、遂には彼女の特性である再生能力に賭ける決断をし実行した。果たしてその結末は? 
 朗読乍ら、その悍ましさと悲惨にゾッとするシーンもあり中々良い出来である。尺は約90分。
かもめ

かもめ

劇団 新人会

上野ストアハウス(東京都)

2025/10/29 (水) ~ 2025/11/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 長尺ものの脚本を用いている為、短いヴァージョンに比べチェーホフの作品の持つ奥深さ、繊細性、先進性と往時のロシア社会とのギャップとがより明確に出而も痛切に観客の魂に刺さる。流石に新人会の公演。東京演劇アンサンブルの志賀さんの演出、新人会役者陣の上手さも光る。華5つ☆(追記後送)

恋愛漫画~鳳凰篇~

恋愛漫画~鳳凰篇~

ライオン・パーマ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 楽日拝見版。パソコントラブルで文章を入力することができず丸2日以上ロスしてしまった。劇団にお詫び申し上げる。(追記後送)極めてバランスの良い、傑作。華5つ☆

ネタバレBOX

 初日のレビューは敢えてネタバレを書かなかったから、今回はネタバレを中心に書く。ストーリー展開のメインは漫画家と編集者との駆け引きの凄まじさである。無論、両者共に良い作品を本という形で読者に届けたいという念が共通している。その為に編集者は作家(今作では漫画家)と読者をどのようにすれば最善の形で結べるか? に知恵を絞り、作家はそれに応える為に徹夜の連荘も厭わず作品を創るのだ。このような生活が健康的である訳がないことは重々分かりつつである。一方、出版社も利益が確保できなければ倒産してしまう。雑誌でも本でも印刷・製本をせねばならぬしその前に紙面のデザイン・レイアウト、使用する紙の選別・調達、サイズに合わせての断裁等々もしなければならぬ。編集者も忙しいのである。無論、これらの作業の他に打ち合わせや編集会議は何度となく繰り返される。特に締め切りに間に合わなければ印刷に掛かる多大な費用の決済が滞り出版社、印刷屋の連鎖倒産も起こりかねないから創作者の責任は極めて重い。然し作家は本当に自分で納得できる作品が上がらなければ世に出すわけにはゆかない。こんな背景があるから締め切り期日は関ケ原の合戦の如き意味を持つ。ところで互いにプロであるから、以上の前提に立って編集者は予め早目の期日を作家に告げ、作家はその点を見越して対応するので両者の丁々発止は熾烈を極めるのだ。
人間になりたがったミミズと、

人間になりたがったミミズと、

劇団うぬぼれ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2025/10/24 (金) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 発想の面白さ、脚本のしっかりした構造性、構成の妙、これらを活かす演出の細かい点にまで留意した点、演者達の若者らしさと爽やかさ、何れもグー。舞台美術も良い。(追記後送)

ネタバレBOX

 学生演劇のようだが脚本の発想が面白い。脚本の構造がしっかりしているので物語の展開も理路整然として分かり易く合理的なのだ。オープニングで物語に登場する進化系ミミズ・ミミズαへの進化過程が流され彼らがどのように進化して来たのかが流される。舞台となるのは森に棲むミミズαの高校。何故、高校があるのか? も作中で語られるがミミズαへの進化は直接の先祖であるプラナリアの持つ能力からとされる。
カメレオン探偵

カメレオン探偵

人となり

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2025/10/24 (金) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

 板上は下手奥コーナーにバーカウンタ。丸椅子3脚、中央に円のセンターを色分けしたマークのついた扉、扉の直ぐ左手に貸鉢に植えられた植栽。上手には蓄音機。出捌けは上手側壁部の袖から。

ネタバレBOX

 オープニング早々、吉本1年目というお笑いコンビが登場するが、寒い。余りにも寒い。芸の理想は夢と現の狭間で夢想空間を現出せしめることだと理解している自分にとって、これ以上の寒さは信じられないレベルの「表現」であった。
 タイトルのカメレオン探偵も一種のSFであるが、内容は乏しく感じられた。残念である。全体の構成も良いとは感じられず、脚本も甘い。役者陣の演技はまずまず。開演後照明は昏め。尺は90分程。
恋愛漫画~鳳凰篇~

恋愛漫画~鳳凰篇~

ライオン・パーマ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/10/22 (水) ~ 2025/10/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 初日を拝見。ライオン・パーマが何度となく再演してきた作品とのことだが、自分は初見。尺は休憩無しの約2時間25分。然し一瞬たりとも目を逸らすことが出来ない傑作だ。初日が開けたばかりなのでネタバレは極力控えるが必見の作品。華5つ☆。観るべし!

ネタバレBOX

 板上は嵩上げされた奥のホリゾントセンターの幕のど真ん中に“万引きは極刑です”の張り紙、上手には“万引きを見つけたら金一封”、同様に下手には“本屋→警察→学校→親”と記された紙が目を引く。これだけで尋常ではない、笑いの種が撒かれている。因みに開演前にはサマータイム等のBGMが流れてセンスの良さを感じさせる。明転すると板中ほど上手は本屋の入口、小さな町の本屋で、店員が正面を向いて座っている。センターやや下手には引き戸式の手洗い、下手は書架が置かれている。嵩上げされた奥は、場面、場面で書店主が兼業している小さな出版社の編集部になったり、ラーメン屋のキッチンになったりとオムニバス形式の今作の物語の展開次第で様々に変容する。枢要なプロットは漫画家vs編集者、書店と常連客、張り紙に纏わる諸々、ラーメン屋の顧客獲得作戦と山奥に残る狼保護vsダム建設、瞬時伝送システムを持つ企業の実際、天才漫画家の闘病と後継者問題これらの挿話がくんずほぐれつしつつ終盤で一気に集約されてゆく。この手際の見事なこと。而も上質な笑いを誘うシーンが随所に鏤められ観客を擽る。無論、これだけの傑作、それだけで終わらない。一々の挿話自体が深く、隠されたテーマは各々大変本質的で喫緊の問題群でもあるが、これらを如何に非専門家の生活者に届けるか? についての極めて稀な成功例でもある。

リーディングセッション『蠅取り紙ー山田家の5人兄妹』

リーディングセッション『蠅取り紙ー山田家の5人兄妹』

OVER40S

ザムザ阿佐谷(東京都)

2025/10/18 (土) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 over40’sの 顔見世公演である。出し物は「蠅取り紙」飯島 早苗さん、鈴木 裕美さん作。開演前とリーディンング中の効果音はアコーデオンの生演奏が入る。尺は途中休憩を10分挟み2時間10分。華4つ☆

ネタバレBOX

 物語は山田家の5人兄弟を中心としたホームドラマ。未だ蝿取り紙が使われていた昭和30年代頃の話も思い出話として出てくるからそれから兄弟が大人に成る頃迄の話と考えてよかろう。因みに蝿取り紙とはガムテープ程の幅の赤茶色の紙の両面に粘着剤を塗って蠅を捕る為に使われた紙。鮮魚等を扱う店頭では上から吊るし巻き芯を錘として用いた。未だ日本は貧しく1$は固定制で360円。令和の現在より総てが荒々しく活気に満ちており都内の祭りでも喧嘩神輿の風習が残り時折死者が出た。然し近所付き合いは盛んで子供たちは近所の道や広っぱで缶蹴りやビー玉、メンコ、ベーゴマからかくれんぼ、鬼ごっこ、縄跳び、だるまさんが転んだ、ままごと、戦争ごっこ、けん玉、相撲、野球、木登りなど何でもやって遊んだ、今より遥かに自由でゆるやか、大らかな時代であった。無論、時々子供同士の喧嘩はあったが、大人が止めに入ると、「子供の喧嘩に大人が口だすんじゃねえ!」と啖呵を切る子供さえ居た。世の中は今よりずっと暮らし易かった。下町の長屋では、朝布団を質屋に入れて働きに出る親も多かったが、味噌や醤油、マッチが切れれば近所の部屋の何処に何があるかは子供が知っていたから親は自分の所に無い物を借りに行って賄いをし合うそんな融通が利くことが当たり前の、少なくとも精神的には相見互いの時代の了解が根底にあった時代の話である。
 今思えば、人々の人生は現在より遥かに人間的で充実していたのではあるまいか。現在のように何でもかんでも禁止、それが如何に不合理であっても意図的に作られたトレンドであってもそれが時代のトレンドであれば、それに逆らったり敢えて無視したり、対抗・対向したりすれば否定的で無責任な匿名の非難、悪罵が殺到するという現象は無かった。
 これに反し現代資本主義がスタグフレーションやリーマンの詐欺的手法の失敗以降更なる利潤優先を推し進めてきた結果、我が国でも人々の発言は二極化し片や非難しようのない毒にも薬にもならぬ用心深い表現に、片や非難している対象の内実で何が問題とされているか考えることさえせず唯嫌いだとか、己の狭い了見に合致せぬというだけでダメージを与えようとする意志と匿名で投稿するのであれば意味の無い自己顕示欲? を満足させる為だけにSNS等ネット上の表現方法を用いて叩く、寒いだけの時代を更に推進するだけの緩やかな自滅に加担する者達の群れに自らを進んで没入させる思考停止した人々の何と御し難い趨勢であることか! 
 より遥かに精神的に健全であるが故に暮らし易い、安寧な時代であった。そんな時代を描いた作品である。出演した皆さんの活舌も良く、間合いの取り方も上手い。初めての海外両行に出た父母だったが、ハワイへ向かう航空機内で不調を訴えていた母は到着して病院へ直行、入院する羽目に陥ったが原因は盲腸、オペは成功したが麻酔から醒めない。この状態で母は子供たちの集まっている自分の家へ帰還してしまった。子供たちはびっくり、実は母の生霊らしいということは推測できるものの、目覚めなければ大変なことになる。観劇中、生霊について自分はWミーニングで捉えながら拝見(拝聴)していた。つまり今作の母の生霊と源氏物語の六条御息所の生霊とを同時に思い浮かべつつ拝見(拝聴)していた訳だ。タイプが正反対の生霊なので実に得難い体験をさせて頂いた。と同時に良質なホームドラマを堪能させて頂いた。
三道楽煩悩 Sandra born now サンドラ・ボーン・ナウ

三道楽煩悩 Sandra born now サンドラ・ボーン・ナウ

劇団Turbo

OFF OFFシアター(東京都)

2025/10/14 (火) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 板上に30㎝程の高さの平台を置き、中央に緋色の布を巻いた高座、噺家登壇の際は無論座布団を敷く。高座の奥ホリゾント壁から観客が観易い角度に調整されたスクリーン。その他、下手、上手に丸椅子と舞台美術は至ってシンプル。尺は約100分。因みにタイトルにある三道楽とは煩悩のうちの“飲む-打つ-買う”を表しているとのこと。

ネタバレBOX

 師匠と弟子たちの話である。師匠は酒のせいで目を患い何度もオペを繰り返してきたが、一向に酒を断つことが出来ず、失明すると分かって居ながらことあるごとに弟子に酒を買って来いと命ずる。買って来なければ破門との要求に遂に新弟子が屈し飲んだ結果、片目の視力を完全に失った。それでも総ての弟子に月稽古をつけることを止めない。この稽古での出し物が演じられてゆくという作りになっているのだ。ピンの話芸が中心だが歌を交えるケースが多く歌の上手い役者が多い。その中で古参の弟子の地方に住む両親が歳を取り最後の面倒を見て欲しいとの切なる願いが伝えられ、芸の親と生みの親とに引き裂かれ悩む弟子の何とも言えぬ苦悩・悲哀が下敷きとなって、生前葬というシーンに仮託されて師匠が弟子が実家に戻ることを許す場として演じられ、終焉時実際に舞台を去ることが告げられるが悲喜交々の感情が去来する実際の役者さんの人生そのものが見えて観客の心を撃つ点が秀逸。
 何れにせよ登場する役者個々人の個性が異なることが良く判る小劇場演劇の特性を活かした作りの作品であるが、歌の上手い役者が多い中で殊に上手いと感じたのが最も新しく入門した新米という芸名の役者、ギターも極めて上手いし楽器を大切にしている様も良く見て取れるのがグー。因みにこの師匠の芸名の名付け方は師匠自らを含め総て米絡み。ターザンのような衣装で登場する人物が歌うシャンソンの仏語も正確である。
平和

平和

うずめ劇場

シアターX(東京都)

2025/10/17 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 東京公演初日を拝見、尺は途中休憩10分を挟み丁度2時間。お勧めの舞台である。(追記後送)

ネタバレBOX

 今回の上演作品は、現在普段は九州で活動するうずめ劇場を主宰する矢張り東ドイツ出身のペーター・ゲスナーさんが先ず東京上演の後、ベトナムのニンピンでの上演を予定しているという意気込みからも窺える。
 史実として、大ディオニュシア祭で今作が上演されたのは主たる戦争推進者であったアテネ将軍・クレオンとスパルタの指導者であったブラジダス両名が戦死した後の空僚をアリストファネスは如何にも喜劇作家らしい自由な視座から利用したと考えてよかろう。(この点も当パンに記された観点をベースに記している)近年ではチャップリンがヒトラー全盛期にヒトラーを茶化した「独裁者」を発表したことと似ている。
 喜劇は現実の悲惨、耐え難い苦悩、人々の魂が負った深い傷をも、その原因となる元凶を茶化し笑いで無化する作用を持つ最もラディカルな表現手段である。そして最も大きな害を齎すものこそ戦争なのではないか? 先に挙げた害悪の最たるもの・ことは総て戦争の必然的産物に他ならない。気を付けねばなるまい。
曇天に咲く華

曇天に咲く華

劇団KⅢ

萬劇場(東京都)

2025/10/15 (水) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 尺は休憩無しの130分。某領主が城を建設中の領地。時代設定は不明確だが城は間もなく完成する予定だ。
 殺陣シーンが可成り多く、役者の身体能力に合わせてスローモーな殺陣にしたり、通常のスピードにしたりの工夫がある。尺はもう少しギャグを削って詰めても良かろう。バチではあるが歌い手が入って歌うシーンもあり、歌の上手い歌手である。極めて深い台詞や名シーンもあるのでギャグを削っても充分訴えかける力を持つ作品になろう。(追記後送)

桜の園

桜の園

パンケーキの会

com.cafe音倉(東京都)

2025/10/10 (金) ~ 2025/10/11 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 流石にパンケーキの会の朗読公演! 

ネタバレBOX

 チェーホフの原作をそのまま上演すると尺は3時間に及ぶ。今回の朗読公演では伊藤 毅さんの翻案で休憩を10分取り2時間20分に縮めて上演された。つまり脚本を三分の一削ったことになる。
 衆知の如くチェーホフの作品は緻密で人生の綾や希望とぞっとするような個々人のカルマが齎す破滅に由来する底抜けの虚しさ迄を濃厚に漂わせる名文だから、原作の要をキチンと残したまま作品の齎す様々な陰影を表現する為の翻案には大変大きな格闘があったことが窺えるが、その甲斐あって結果は見事なもので原作の持つ繊細で豊かな情緒表現や瞬間、瞬間の登場人物達の心の動きが良く判る創りになっている。若干、噛む役者が居たことは残念だがパンケーキの会に参加する役者陣はレベルの高い役者さんが多いので臨場感たっぷりの質の高い公演になった。
223番のはなし 東京公演

223番のはなし 東京公演

劇団芝居屋かいとうらんま

OFF OFFシアター(東京都)

2025/10/10 (金) ~ 2025/10/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 必見、華5つ☆。終演後、色々深い作品故更に追記する。

ネタバレBOX

 板上、ホリゾント両側壁にはびっしり茂った樹木の葉が見える。板上はフラット。箱馬があちこちに置かれている。開演前、三味線の弦を爪弾くような音と金属を叩く音が聞こえ、折々水滴が垂れ金属に落ちるような音が混じる。なんとなく怪奇譚が始まるような雰囲気を醸し出している。
 幕が開くと和服を着た面々が寄り合い何かの儀式を行っている模様。着衣は皆和服である。場転、明転すると和服の者らが箱馬を幾つか整然と並べて、そこへ長い杖状の棒を差し込む。その向こう側には洋服を着た男が独り箱馬に腰かけ客席側を向いている。資料を挟んだしかつめらしいバインダーを持って女が尋問を始めた。ここは牢屋である。男は未決拘留されており女は事件の経緯についての尋問を行っているのだ。容疑は反逆罪等。然し、男は虫も殺せない、と妻が言うほど心優しくとても大それた事件を起こしそうなタイプには見えない。名を山岸という。機械等を扱う会社で営業をやっていた47歳のサラリーマンである。尋問している女は調査官。名は月守。
 冒頭のこの場面、舞台美術を極力簡素化し、簡素化した機材を見事な用い方で牢屋に変換する演出も舞台美術も秀逸でいきなり作品に引き込まれる。無論脚本も発想自体が素晴らしく細かい点迄よく書き込まれ骨太で構造のしっかりした建築物のようでもあると同時に生き物の持つ柔らかさが充満した少し不思議な安らぎを齎す優れもの。この脚本にして、この演技、それを上手く合致させたセンスの良い合理的な演出。これらを支える音響、照明、道具、衣装も村の住人は和服で統一して古を象徴し都市から来た者は洋服で統一して現在を象徴しているのみならず、村の娘と結婚を約している是枝という男の着こなしでは和服の下からYシャツの襟が覗いている点等細かい処で是枝がどういう人間か、上手く示唆している。(この辺り衣装担当の努力と工夫もみものだ)
 実に考えさせる内容であるから、この詳細については終演後に書き記すこととする。
シャガ

シャガ

SHEDDING

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/10/09 (木) ~ 2025/10/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 シャガを祭るミツガオカ村の物語。尺は約2時間。(追記後送)

ネタバレBOX

 ちょっと変わっているのは、村長がこの村を国家同様のコンセプトを用いて機能させようとしていることだ。この奇妙な発想から鎖国政策が今回も出され村人が領域から出ることも、よそ者が領域外から入ることも法に触れ死刑に処される。このような掟に縛られながら生きる村人たちは村に在る祠にことあるごとに神頼みして来た。言い伝えによれば祠を開けることが出来れば願いが叶うと伝えられ開けた者は英雄として遇される。為に天災等の大災害に因る危機の度、祠を開けようと挑む者が絶えなかった。一度も成功した験しが無かったにも関わらず。今、また旱魃が村を襲い、村人たちは飢えていた。
埋められた子供

埋められた子供

劇団昴

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2025/10/03 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 必見、華5つ☆。休憩を挟み2時間10分を越える大作だが役者陣の見事で迫真の演技から目が離せない。(追記第1回)10.11

ネタバレBOX

 何度でも観たい、そう思わせる作品だ。というのも“理解する”とかこう“判断する”と言い切れないが不気味、不安定、底知れなさ、軽妙で洒落た笑い、唐突、所在なさ、皮肉、各々の登場人物個々人が抱える不安、遣る瀬無さ、かつての栄光と現在の己の間で生き乍ら引き裂かれる魂の無力・退廃、抗う術を持たぬことから生じる虚無感、そしてこれら総てをその根底から支える唯一“罪”の意識。に観客は当に立ち合うことになるからである。
 多くの観客が感じるであろうことは論理的であるとか、矛盾があるなどの指摘が為され得る作品ではないということだ。そういう作品であれば、理解した気にはなれる。今作は、元々そのような反応を拒む作品ということができよう。意味らしい意味は互いに無関係な科白の応酬によって無化され、台詞と台詞の間に紡がれるもの・ことは通常の対話ではなく先ずはその登場人物個々のザインであり、要所要所に於けるダーザインである。而もこれら存在の諸形態は無規定の直接性として我々、ヒトの持つ最も奥深いもの・ことを刺激し続けるのだ。外では強い雨が、こんな人間共の心象を嘲笑いでもするかのように時に激しく雷鳴を伴い、時にしとしと降り込めて外界との接触を極めて煩わしいものと為す。同じ家に居ながら互いに通じ合えない人間という生き物の根源を描いた傑作戯曲を実に深く理解し翻訳された今回の広田敦朗さんの脚本と、極めて難しい演出をこなし魅せる舞台に仕上げた桐山知也さん。難題を抱えた戯曲を見事に身体化し演じたドッジ役の金尾哲夫さん、ティルデンを演じた佐藤洋杜さん、ブラッドリーを演じた中西陽介さん、ヴィンスを演じた赤江隼平さん、一方でアメリカ人の心法を支えるものにプロテスタンティズムがあるのはご承知の通り。今作では、ファーザーを揶揄する形や、ドッジの妻・ハリーの何をおいても神の名を挙げる態度に痛烈なアイロニーとして反映されている。面白いのが、ずっと家に居るのはドッジであることだ。無論病身であるから外出しないということは分かる。然し年中、どれくらいの期間になるのかも分からぬ外出をするのが妻・ハリーであること、それも神職とはいえ同伴するのが男性であることも様々な含みを感じさせる。更に言えば宗教がバックボーンとなる国民性とはクリティカルな精神というより信じ込む精神を意味しよう。その過ちを質すのが容易ではないことも示唆する。それは刷り込み同様ア・プリオリな固定観念となっていると考えられるからである。

6月26日/生きてみれば

6月26日/生きてみれば

FUTURE EMOTION

キーノートシアター(東京都)

2025/10/03 (金) ~ 2025/10/04 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 「生きてみれば」「6月26日」2作品を上演、途中15分の休憩を挟み、尺は2時間から2時間5分。(追記後送)

ネタバレBOX


 仏語の名詞にdépaysementという単語がある。今作の内容に合致する訳をあてはめてみと凡そ以下のような意味を持つ:異なった環境や習慣の中に身を置いた者が、その環境や習慣になじむことができず異和感や居心地の悪さ、戸惑いなどに悲哀を感じて苦しむこと、という意味を持つ単語であるが、古くは異国への追放を意味した。今回、上演される2作品の何れにもこの単語の意味する処が根底に流れている気がする。2作品に共通するのは歴史に翻弄される人々という点であろうか。

このページのQRコードです。

拡大