ファジー「ours」 公演情報 TeXi’s「ファジー「ours」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

     レイヤーが成立する為には先ず存在しなければ。時代の表層だけ観てその趨勢に乗っかった論理を用いている気がする。

    ネタバレBOX

     板上はこの小屋としては少し珍しいレイアウトを採っている。劇場入口側にL字を鏡文字にし時計回りに90度回転させて短辺を据え成り行きで長辺になる両部分を客席とし、劇場入口から板上迄は階段で繋ぐ。板長辺の対面に長辺下手から順に中、大、小の順に矩形の枠が据えられている。長辺上手には最も低くサイズは大きい矩形が倒れた状態で据えられている。この矩形各々が、凡そ各登場人物の棲むエリアということになるが、下手から3番目の矩形には黒色系の紗のようなカーテンが三つの面に付けられている。出捌けは客席変形L字のコーナーの対角辺りに1か所。尚天井からは様々なオブジェが吊るされており各矩形の各々の桟や矩形の奥にある壁、壁際に設けられた簡易衛門掛けには衣装等が掛けられていたり、様々なオブジェが貼り付けられていたりするが色調はほぼ暖色系。
     物語が何を意味するのか? 論理的に追うのは可成り難しそうだ。というのも脚本家によれば男女二元論の持つ加害性について三部作を書いたとのことであるが,作家の言う男女二元論が実際何を意味しているのかが、今作では全く触れられておらず、今回演ずるのが総て女性によってである以上例えばジェンダー論で考えるなら女性に対する男性による加害性ということが考えられるものの、実際に演じられる舞台では、女優達は一応自称‟僕“だったり‟私”だったりしつつ幾つかのグループに分かれて同時に台詞を発し、而もその台詞自体若い日本の現代女性が使う類の言葉なので正確な日本語とは程遠いうえ出演者全員が異なる台詞を同時に発音するから観客の殆どは何がどのように語られて居るのか総てを正確に聞き取り判断することが出来ない。最初からそのような混沌を作り出すことが目的であるならそれはそれで興味深いものの或る二元論の間に発生する対立の加害性を問題化しているのであれば、二元論を構成する各々の存在論がアプリオリに示されている必要があるにも関わらず、その点に関して一切表現されていないと感じたのは今作の上演形態そのものが全体の聞き取りを不可能にしているせいなのか或いは三部作の第二部ということで一部で既に表現されているからなのかは不明だが、少なくとも終演後に初めて見た当パンによれば男女二元論の加害性が問題だと捉えているのであろうから、問題の発生する源である♂、♀の存在論は必然的に示されねばならない。これが欠落しているから自らの健康状態を即ち肉体を根拠率に発言する他無いキャラが登場するのである。このキャラは存在論という今作の主張の根拠となり得る共通項を持たせる為に絶対必要な根拠律であるにも関わらずこの視座が欠落している為に総てが瓦解し焦点の定まらぬいい加減な作品なったと思われる。結果このような脚本と演出自体がその主張と矛盾し、結果破壊すべき二元論そのモノに対する論理的批判自体が成立し得ないのではないか? 既に述べたようにそもそも男女二元論とだけ言って実際その二元論を具体的に示している訳でも無く、ハッキリ象徴化している訳でも無いから、個々の主張そのものが、何ら共通項を持たぬ論点に向けて唯わあわあ騒ぎ立てているという形にしかならない。
     作家の言によれば、これらの位相を表現する為に三つのレイヤーを設定しそのレイヤー間の差異と発語される台詞の差異とでそれらを差異化しているというが、その為にはそれら総ての台詞が総ての観客に一旦総て理解されその上で選択されねばなるまい。然し乍ら先に述べたように殆どの観客にそんな芸当ができるとは思えない作りなので言っていることとやっていることとは矛盾する他はあるまい。この点が決定的に問題であると捉えた。

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    2024/08/25 02:36

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