ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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東京物語(横浜公演)

東京物語(横浜公演)

チームラヴ・ガン

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2026/05/29 (金) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 華5つ☆ タイゼツベシミル!! 尺は約85分。(追記6.2)

ネタバレBOX

 大きな布に墨で大書された東京物語のタイトルがホリゾントに掛かっている。箱馬が全部で8個、平台が2個。
 板上は完全フラットで始まるが箱馬と平台を物語の展開に応じて組み立て実に上手に用いている。オープニングから可成りの時間役者陣の表情が見え難い程昏い照明が続く。これは観客の感覚を耳に集中させる為の良く練られた演出と観るべきだろう。
物語は監獄に閉じ込められた2人の囚人、革命家・ブレーキ(憲俊)とおかまのオリーブ(八代将弥)2人が語らって脱獄を図る話として展開するが、この昏い照明下オリーブの台詞は脱獄後匿ってくれるお婆さんとオリーブの対話ともなって語られるのだが、この声音の使い分けの見事なこと! 役者の力量によって本当に舞台そのものが息づくのだという体験を実感させる見事なもので、演出の素晴らしさと役者の力量によって本当に引き込まれる。
 また相方のブレーキは革命家という設定なので靭い精神と合理的で的確な判断で2人の脱獄方法についてもリーダーとしての資質を発揮するが、最後に世話になったオリーブの遠縁の叔母さんの家で食べた物が原因と思われる下痢に襲われた折り、周囲を官憲に囲まれたことを知り逃亡を優先することを選び排泄を堪える為にインターナショナルを歌い乍ら失禁してしまう挿話を入れることによって崇高な革命の理想が我らの身体の原理である自然に裏打ちされており、それに逆らうことは不可能でるという至極単純な事実を提示することで嗤ってみせる。
 ラストシーンがどのように展開するかは、明かさないが、極めて優れた脚本『竹内銃一郎)を、これまた優れた佃典彦さん演出と各々の役者特有の演技で見せて見事である。殊に佃さんは役者としても出演なさっているが、その役を当に生きて来たという初老の刑務官の演技は自然体で若い役者さんはどんなに上手くともこのように自然な演技は出来まいと思わせる流石の域。
ツイスト・アンド・対話

ツイスト・アンド・対話

南京豆NAMENAME

シアター風姿花伝(東京都)

2026/05/27 (水) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 尺は105分(追記6.2)2つの物語が交差する可成り知的な作品。

ネタバレBOX

 板上は幾重にも重ねられ、ずらされた大小様々なパネルによって構成されており下手側にはソファほぼセンターに大きめなテーブルと椅子、上手には側壁から延びた化粧台と丸椅子。側壁には鏡が4枚、等間隔に貼られている。奥にはハンガーに掛かった衣装が見える。つまり上手側は楽屋である。下手の舞台美術は高校の世界史教師、荒井とその教え子であった、たまの愛の巣。センターの机と椅子は2つの空間で共有される仕組みだ。何故、このようなレイアウトになっているかと謂えば2つの物語が対比されつつ上演される仕組みの作品だからである。荒井とたまのカップルは恰も人生を脱臼したか、箍を外されでもしたかと思える不思議なカップルで既に10年目。此の曰く言い難い不思議なカップルの唯一の友人が矢張り教師の堀川で脱力したような彼らの愛の巣に突拍子もなく表れる。
 片や1か月という超ロングランの公演を打っている芝居出演者たちの楽屋。長期の公演だから体調を崩して降板してしまった者が出る。出演している役者陣の怪我や病気で公演が続けられるか否かの瀬戸際に立たされる日々ではあるが描かれるのはその最後の3日間。降板してしまった役者の穴埋めにプロデューサーが町で拾ったチンピラ、でんすけとその後輩ででんすけに心を寄せるギャル、ひろこをスカウトした。偶々でんすけの憧れの的であった元アイドルのなちょが出演していた。但し現在は元アイドルという肩書とプライドが重く圧し掛かって総てが瓦解しそうになるなちょ。そんな彼女をでんすけが精神的に支える。他の面々も各々様々な問題を抱える。例えばミヤケは体調不良で喀血ばかりしているし、ハンサムなクボダイは直ぐに骨折する。イケメンのクボダイにホの字のサワグチがハグしただけで骨折する始末である。こんな中、唯一前向きなアミリは最近マッチングアプリで恋人ができた。その恋人は教師の堀川。こんな故障者ばかりが出演している公演のプロデューサー、キムビーはてんやわんやの日々を送っているが・・・。
 物語の肝は当に“show must go on”であり待っている観客の為に演劇人はあらゆる困難を乗り越え舞台に立つとの気概を示して、荒井・たまカップルの脱力系と対比させ互いを対比することで批評性を持たせ、観客にどのような生き方が望ましいか? 選択を迫る相乗効果が狙われている。可成り知的な作品である。因みに荒井が何度も着て出てくるTシャツには“うぞう・むぞう”の文字が記されている。
The Freak

The Freak

劇団カルタ

RAFT(東京都)

2026/05/29 (金) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

尺67分(追記後送)

ネタバレBOX

 板上は劇空間入口を出捌けとし観客席を長辺に沿って設えてある。板空間を観客が挟む形だ。出捌けから劇空間への入り口がこの物語が展開する事故物件の玄関となる。日本家屋のようで隣室の音は薄い壁で直ぐに響く。室内に住むのは10年前に家賃の安さに惹かれて入居した男が1人、男やもめの住まいらしく玄関を入って直ぐの場所に収納ボックスが横向きに置かれその上には本や雑誌、この10年間この住人が拘ってきた件に関わる資料などが置かれている。部屋の奥には長方形の卓袱台、その下にはノートパソコンが置かれ毛布が見える。部屋の奥には旅行用スーツケース、洗濯物入れ、等。ちょっと変わっているのは板と観客席の狭間に蛍光管が留められていること。幽霊の話なので部屋の外の光景を表す際などに点灯し実に上手く機能している。
じべた

じべた

椿組

小劇場B1(東京都)

2026/05/25 (月) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 華5つ☆ 観るべし! 後程追記するかも。
 劇空間レイアウトは入口右側が観客席、及び四辺形のA,時計回りにB及び観客席、C,側壁、D,側壁。板上には、至る処に紙屑やらぼろきれやらがまきちらかされており、所々に椅子だの、踏み台だの中華鍋だの、木の棒だのが転がって雑然としている。この混沌の只中に卓袱台。
 これらの雑然たる空間の2か所にマンホールのような穴。側壁には各々1か所ずつの切れ込みがあり、都合4か所が出捌けとして用いられている。尚側壁には工場内の作業工程を示す映像が映されたりもする。更にラストシーンではもう一つの仕掛けが明らかになる。

ネタバレBOX

 今作は谷川 俊太郎の絵本「じべた」にインスパイアされた鳥越 勇作氏が脚本を書いたようだ。谷川の絵本を読んでいないがそのエッセンスを深い処で読み取り継承しているのだろうと想像する。何れにせよ尺110分に仕上げるのはほぼ完全な創作と言って良かろう。
 描かれている場所も時代も観客の思う通りに解釈すれば良い。そのような創りになっている。じべたの上に生きる人間たちは、諍い、だべり、乳繰り合ったり、嫉みあったり、誤解し合ったりを繰り返し乍ら、大きな建物を建てたり壊したり、を繰り返す。変わらないじべたの上で。
正義の血が騒ぐ

正義の血が騒ぐ

ライオン・パーマ

テアトルBONBON(東京都)

2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 今回は刑事物、尺は休憩無しの130分。(追記2026.5.23)

ネタバレBOX

 物語は物騒なことで知られるある街で迷宮入りしていた殺人事件をきっかけとして展開する。この街に東京からやって来た八神という刑事が居た。彼は着任早々、アイビーという名の喫茶店を探しに掛かった。何でも珈琲が矢鱈に旨いと評判の店ということであった、然し探してみると旨いと評判の割に見付け難かった。それもその筈、この店のマスターは1年前に惨殺され顔の見分けがつかない程傷つけられた状態で発見されたまま、事件が迷宮化していたという経緯があり、この街自体がカポネ時代のシカゴのように警察と犯罪グループが結託し共謀しているという節があったからである。このような街にありがちな怪しい風俗店、闇医者かと勘繰りたくなる唯一の医師は、事件の鑑定医も兼ねており、刑事絡みでは情報屋や情報屋へネタを売る提供者もおり、元ネタをバラす人物も存在していた。
 更なる問題は、八神がやってきた原因の殺人事件には収まりきらなかったことだ。迷宮化している事件はこの1件だけでは無かったのである。而も、アイビーに辿り着いた八神が出会った現在のマスターも元刑事、殺された前任者も元刑事であった。それだけではない。アイビーに出入りする客たちにも刑事や怪しい人物たちが居る。他に貸花をしている花屋には行方知れずの父を探している娘が出入りしており、迷宮入りしている事件ファイルに父に関わる記録が無いか確認したがってもいた。更に所轄には極めて真っ当な刑事や若手の優秀な刑事も居て各々、生き方のスタンスが違うから必然的に事件に対する向き合い方も異なる。これら諸条件が組んずほぐれつ明らかになって行く経緯の複雑さと可成り意想外な結末への収斂が見所だ。

花待つ鏡の向こう側

花待つ鏡の向こう側

四宮由佳プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2026/05/19 (火) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 時代だな~。

ネタバレBOX

 余り主人公がハッキリしないような時代を映す鏡の如き作品。コスメだの性自認意識だのと平和が長く続いた地域なればこその存在そのものやレゾンデートルに纏わる深刻な悩みというより遥かに恣意的な即ち感覚的なそれ故に説明し難く当事者でなければ理解し難い在り様でも、社会は何とか対応しているかを非当事者は非当事者間内では装えるレベルで推移し得る事象についてのあれやこれやが描かれている分、非本質的と見做され易く、その対応に苦慮する事象のオンパレードということになる。従って明確で深い根拠を探すことは難しい。今作でも殺人事件が起きているのではあるが10年程の間、被害者は謎の失踪を遂げたと解釈されていたのだ。情報は錯綜しヒントはあちこちに転がっているものの、何れが真か? それを特定することはまるで鏡に映った像の奥を探しているかの如く判然としない、本来その時の鏡像の対面を確定すべきなのに奥を探ろうとする以上、正解が出る訳もなく、結果的に機が熟すのを待つほかは無かったという結末になっている。その分、物語の枠組み自体が前提に在った様々なヒントに想を得、それらを繋ぎ合わせ論理的に結論を導くという知的緊張感も極めて弱い。非演劇的状況を如何に演劇作品とするか? し得るか? という問いに対する回答の一つと解することができよう。為に舞台上のレイアウトは高低の段階を伴ったものとなり、最下段にはドラッグストア店内が、その上にバーが設定され、その上に更に最上部が置かれて恰もその構造にヒトには関与し得ぬ生々流転を司る宿命を差配する力の源泉が揺蕩ってでも居るような時空が表現されているのかも知れない。面白いのは、これらの諸関係がドラッグストアに置かれたモニターに映るインフルエンサーの流す画像にヒントの1つとして時折映し出されることである。而も失踪した人物とされる者が現れるのは多くのシーンで最上段からであった。
TKG25~徳川の希望~

TKG25~徳川の希望~

FREE(S)

ウッディシアター中目黒(東京都)

2026/05/13 (水) ~ 2026/06/07 (日)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★★

 現代日本を揶揄する傑作、観るべし!

ネタバレBOX

 板上手前は通常の板、その奥に嵩上げされたやや幅の狭い板、更に奥に二段目同様の幅だが更に嵩上げされた板が見える。ホリゾントには二段目、三段目の板とほぼ同じ幅に白っぽいパネルが張られている。映像を用いることが直ぐに分かる。この小屋特有の下手デベソ舞台も健在。総て素舞台である。殺陣シーンが可成りあるのでこのようにレイアウトされているとみて良かろう。
 面白い! 奇抜な発想とシャ-プなアイロニーの切れが冴えて嫌味な粘質性が全くないのは見事。オープニングでは主人公のカオスがいつも通りの悪戯をやって他の島民とうまくやれない状況が表現される、と同時に雀や烏果てはペガサスとの対話迄やってのける挿話が演じられる。直後、大政奉還止めた! の報せ。この報せに間髪を入れぬ情報拡散の模様が二段目及び一番幅の広い処に集まっている庶民たちの騒ぎによって瞬く間に拡散し浸透してゆくさまが如実に演じられるが、この辺り脚本の冴えと演出の煌めきが見事に噛み合ってイキナリ観客を作品に没入させる。役者陣の演技も総じて良い。ちょっと噛むシーンが多かった役者がいたので華5つ☆はつけないが、これがなければ文句なし華がついた作品だった。役者で殊に気に入ったのが主人公カオスを演じた中村 悠希君。
 作品詳細についてはネタバレになるので敢えて述べない。ただ、作品の訴えは為政者はこの点に留意して治世に当たるべし! との指南だと解釈した。徳川埋蔵金という幻のお宝の話と関わってもくる。タイトルにあるTKGが何を意味して居るか? にも関わる。正解を得たい方々は、実際に観て確かめて欲しい。
空(くう)

空(くう)

空(くう)公演

RAFT(東京都)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 少し変わったレイアウトである。客席が演劇空間をL字型に挟み役者陣はこのLと壁に挟まれた空間で朗読するのである。出捌けは演劇空間入口。その外側が袖の役割を果たしている、尺は78分。
(追記後送)

ネタバレBOX

物語は地勢学的には隣に大国がある小国の、内戦下の庶民を描いた作品だ。一方は現体制政府軍、敵は反政府軍である。一進一退の攻防は何時果てるとも知れない。情報は途絶え、インターネットは使えず、モバイルも使えない。ラジオですら幸い受信できる場合ですら雑音混じりの音が聞こえる程度だし、その内容もどちらかのプロパガンダでしかない。砲撃や空爆で建物の殆どが既に瓦礫と化し食料、水も不足している。そんな中、物語が進行するショッピングモールの一角に在るこの場所だけが辛うじて未だ屋根や壁が残存し内鍵が掛かり電気も通じてはいるが天井の一角を除き採光箇所は無い。
 オープニングでこの場所に居るのは兄(元警察官)と弟(元洗車で生計を立てていた若者)2人。商業エリアであったことから内戦状態で多くの建造物が瓦礫と化した現在も何とか保存食である缶詰が在るから生きていられるものの外へ出れば何時命を落とすことになっても不思議ではない状況であることが台詞の端々から判る。当然の事ながら拳銃を所持している兄が外出するが施錠してある鍵を開けるには暗号化したノックを用いている。
川ひとつ向こうの、はるか遠い街。

川ひとつ向こうの、はるか遠い街。

乙戯社

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2026/05/08 (金) ~ 2026/05/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 開演前には中国風の音楽がずっと流れ板手前には段ボール箱を積み重ねた正面にタイトルが一行ずつ映写されている。尺は70分。観るべし華5つ☆

ネタバレBOX

 明転すると舞台全体が見えるが舞台美術は極めてシンプルで奥が嵩上げされて観易くなっている以外、ホリゾントに様々な映像が浮かび上がる他は余計なものが一切ない極めて合理的でシンプルな舞台である。奥の嵩上げされている部分が所謂スラムと一般に表現されるエリアであるが深さ150㎝程しかない日用廃棄品や犬猫の遺体及び人間の遺体が廃棄され異臭を放つどぶ川の手前には裕福な街が広がっており、手前の住民にとって奥の塵溜のような町もその住民も在って無きが如しの存在であり、そうみられている町の住人の意識にも、こんな小さな腐臭を放つ川に越えることのできない絶望の象徴を観る日々への強制が昨日も今日も当然明日以降の総ての日々も予め決定されその生命体の避け難い滓の様に堆積させられている。だから生まれてから物心つく迄は、キラキラしていた幼児たちの目はその後どんより曇り生涯再び光を放ってキラキラすることが無い。それが住民の実態であった。
 然し、無論こんな逆境にあっても脱出したい。そう切に願う者が例外的に存在する。今作はこの脱出に自らの総てを賭けた幼馴染の生き様を描く。背景にあるのは、この川向うに住む住人達の日常的な生活である麻薬、酒、売春、娼婦から稼ぎを撥ねるヤクザ者らの陰惨な生活である。冒頭に書いたどぶ川に捨てられた遺体は、このような状況下で殺された人間であることが容易に想像でき、このような町で警察権力が機能するハズも無いことも自明である。ここにこのような奇蹟が起きた唯一の解があったことも。
 余談ではあるが、現在世界中で進行するグローバリゼーション(globalization)は極端な貧富の差を拡大し続けている。一例を挙げればつい最近公表された世界初のトリリオネア候補は断トツでテスラやスペースX等でのして来た人物である。他の企業有名人ではLVMHのトップ、アマゾンのトップ等で殊にアマゾンのトップはその傲岸不遜と露骨な収奪を恬として恥じない態度で知られるが、流石にトリリオネア世界初を予見される人物は扱う物が違う、世界中の環境を懸念する人々が目指すCO2削減を目指すEV,また人々の夢見やすい宇宙開発や衛星通信網を提供する株式会社を立ち上げ拡張してきた。無論、資本主義をベースであるから収奪の構造は変わらない。ところで、この資本主義の根本的原理である収奪を基にして蓄財した莫大な資産を彼らは何に用いようと考えているのか? それを我々庶民も考えるべき時期を迎えているであろう。1つだけ誰でも簡単に思いつく予想事例を挙げておこう。近未来に現実化する地球環境悪化に対し何とか生き延びる為の手段として、ということであると。飛躍しているとみる向きが多いかもしれないが、今の内に考えておいた方が良かろう。
わたしは、タイタス・アンドロニカス

わたしは、タイタス・アンドロニカス

演劇ユニットキングスメン

LIVE HOUSE 曼荼羅(東京都)

2026/05/05 (火) ~ 2026/05/06 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 本日6日は17時開演、曼荼羅は手洗いが1か所しかないし、尺が長く途中休憩が無いから小屋に入る前に用はたしておく方が良い。サックスの生演奏が入り、役者陣の熱量も高い。

ネタバレBOX

 余り上演されることの多い作品ではないが、その理由の一端はその内容が余りにも凄惨なことが上げられよう。而も今作、その台詞内容も未だシェイクスピアとしては未熟な時期に書かれたと解釈する向きもあるように所謂シェイクスピア四大悲劇同様台詞で展開される論理の整合性が熟年期の作品に比べて粗いと感じる者も多かろう。だがこの理由として今作は他の観方もできる作品であると考えることも可能ではある。例えばアーロン、ゴート族の女王であったタモーラの愛人であり、今作で “悪”の要を自認する彼の画策をとうとうと自白するシーンが終盤にあるが、何故彼がそのような人物に成長してしまったのかについては一切語られていない。これは、ムーア人のアーロンこそ、今作の真の主人公だからだと考えてみたらどうだろう。実際シェイクスピアの書いた作品の中の四大悲劇の主人公となっていくオセローの前駆的存在こそ、アーロンではなかったか? と考えてみたとすれば。最終盤でアーロンが捉えられ我が子をも捕縛された挙句、己の犯した犯罪を只息子を助ける為だけに縷々述べるに及んで自らの悪に染まった真の原因については何一つ語らなかったことの意味するもの・ことこそ唯肌の色が黒いというだけで加えられた差別だったのではないか? この不条理は本人の責任では在り得ない。而も恰も本人の責任が当然だと己の属する社会から扱われる。こんな経験が朝から晩まで毎日当たり前のこととして繰り返されるのだとしたら・・・。拗ねないことの方がよほど不自然ではあるまいか? 今作に登場する人物たちはこんな視点から眺めてみると皆、このように己の置かれた社会的位置から自由ではない。主人公であるタイタス・アンドロニカスも名将軍という社会的地位の奴隷であり、サターナイナスとて先帝の第一皇子という位置の僕に過ぎまい。知恵に長け狡猾なゴート族の女王とされるタモーラとて捕虜としてゴート族の支配地からローマへ連れて来られた際、戦闘で亡くなったタイタスの息子たちの霊を弔う為生贄として選ばれたタモーラの長男、アラーバスは、母タモーラの切実極まる助命歎願にも関わらずタイタスの命令で惨殺された。タモーラがその後、アーロンと組んでタイタス一族に祟ったのは我が子惨殺に対する母として当然の復讐からだった。要は、何れの登場人物も皆例外なく己の抑え切れない欲動によってその人生の最も肝要な選択の動機づけが為されており、少し俯瞰して己自身を眺めることができたならば滑稽とすら自分自身で気付くことができる程に今作で描かれている総ての事態を回避できたであろうに。シェイクスピアが実際に書いたのはそれができなかった人間というものの愚かさであった。この点に深い意味があることをキチンと捉え、可成り錯綜している今作原書からの小田島雄志氏の訳をその本質を捉えた上で分かり易く上演台本化した篁さんの力に拠るところが大きい。また、殆どの人間が、自らの行動を真に決定しているものが、自らの存在の原点と信じ込んでいる情動によって動かされているに過ぎないことの愚かしさをも照らし出している。
 無論、上演される演劇は他者の書いたものを役者が演じ、観客はそれを観て他人事とするのが常である。然し、もう一歩踏み込んで想像力を働かせ自分事として体験し直してみるという観方は更に深く作品を味わう為の良い方法の一つであろう。今作のタイトルに原作には無い“わたしは”が付いているのは、この意味で、日々我々が見聞きしている世知辛い世の中の報道なども、発信する者各々の社会的位置や利害迄正確に見極めなければ見誤るというメッセージとして受け取っても良かろう。今作上演にはそれだけの深さがある。
劇的

劇的

ポッキリくれよんズ

浅草九劇(東京都)

2026/05/01 (金) ~ 2026/05/05 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 尺は約103分。

ネタバレBOX


 物語は信州にある一軒家で展開する。直前にこの家から車で少し行った山間にある神社へ久しぶりに参詣した吉村家の父子3名が滑落に巻き込まれ亡くなった後の葬式に集まった関係者の立ち位置の相違から巻き起こされる諸問題を巡るあれやこれやを大学で演劇をやっていた千秋のつてを頼って脚本家が取材に訪れているという設定の下進行してゆく。
 この脚本家はそれ迄自分の周囲、半径5mを描く脚本を書き続けてきたが、今回初めてもっと広範囲な社会をドキュメンタリー作品として描きたいと千秋に相談、内諾を得ておりやって来たのであるが、無論親族が3名も同時に滑落事故に巻き込まれて亡くなるなどという事態は織り込んでいるハズもなかった。然し、葬儀に纏わるてんやわんやの中でも親族の許しが出てこの計画は実行されることになった。それが上演される内容である。
 どこにでもあるように地方のそれなりの旧家は、地元寺院や地域住民との関係が密接である。その分、人間関係も密で当人同士しか共有していない情報が多い。今作では、偶々を装って劇作家が新作創作の為の取材をするという形式を通して当事者間に留められていた情報を暴く糸口をこじ開ける取っ掛かりを「自然」に見せている訳だ。ラスト寸前には舞台美術の屋台骨である柱を取り外すことを始め解体が演じられるのも、ドキュメンタリーの本質である「真実」を露呈させたという演技であるのは言うまでもない。然し乍ら、ドキュメンタリー作品を撮り続けてきた映画監督や彼ら彼女らを支えてきた人々を実際に知り合いとして持ち話もしてきた自分にとって、今作の劇中脚本家に託されたドキュメンタリー認識には可成りの齟齬があることも事実だ。劇中の台詞の中でも千秋との関りの関係で「フィクションとして描く」という台詞が出てくるので今作自体がフィクションであるとの認識を否定する訳ではないが。本当のドキュメンタリー作家、脚本家、監督等は実際に亡くなった方もいらっしゃるし、命賭けの取材をしていることも事実であるから、違和感を覚えるのである。そういった現実の中で自分も友人であった監督の1人を失くしている。まあ、そんな経験の無いであろう人が書いた作品としては可成りノンフィクションとフィクションの境目ギリギリの線上をゆく作品ではあろう。
パズル2026

パズル2026

A.R.P

ウッディシアター中目黒(東京都)

2026/04/22 (水) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 完成度の高さが抜群! 脚本、演出、演技、キャスティング、舞台美術、照明、音響、下手のデベソ舞台の使い方など実に上手い。

ネタバレBOX

 脚本は極めて論理的に纏められており、観客は観劇中に提出されるパズルの断片を如何に組み立てててゆくかを脚本家との競争を楽しみながら観劇できるから飽きてしまう時間は全くない。而も物語が進めば進む程パズルピースは増え、ピースが1つ増える度組み合わせは格段に増えてゆく訳だから、観劇し乍ら総てを解くことのできた頭脳を持つ者はかなり知的能力が高いと言えるだろう。何れにせよ、このような形でも娯しめる作品である。
 最終盤に突入すると様々なピースに鏤められていた伏線が一気に収斂する訳で様々な引っかけ、両用に解することのできる伏線、曖昧化されたそれ等が一挙に押し寄せてくると同時に笑いの要素迄まぶしてあるから判断を正確に行う為の冷静さを観客は失う。こんな観劇情況の中に現れるキーマンとなる役者が板に着くタイミングも見事だ。描き方によっては相当シリアスな作品になり得た今作を上質なエンタメの枠内に留めおく喜劇的手腕の見事なこと。役者陣の演技、キャスティングの妙と各々に特異な性格、傾向を持たせて場面場面でクスリと笑わせる上手さ、舞台美術の完成度の高さ、謎解きに必要最小限の情報をホリゾントに飾られた灰白色の絵画に映写して知らせる点もグー。丁寧に作られた作品である。唯一、敢えて難点が在るとすれば脚本家は多くの表現者がその根底に抱えている育ちの中や社会的位置の為に体験せざるを得なかった不条理の体験からくる人生に対する苦い認識が弱いかも知れない点だけである。余りにも理知的なのだ。まあ、それがこの作家の強みでもあろうが。
裏切りのリング

裏切りのリング

アクト計画(株式会社バランス企画)

アトリエ三軒茶屋(東京都)

2026/04/25 (土) ~ 2026/04/29 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

 初めて行った小空間。

ネタバレBOX

 板上には下手側壁にパイプ椅子2脚。上手側壁には脚立、丸椅子、鍛錬用の器具2つ。ロープは張られていないがプロレスリングの設定なので皆ロープを跨いで出入りする。小さなスペースということもあり出捌けは劇空間入口と設定上事務所空間となっている袖のみ。登場人物は、ジム会長、所属レスラー4名及び女性。他登場はしないが既に60歳を超えた在籍レスラー1名。練習がきつ過ぎる、とプロレスラーをやめたがっている最年少レスラーをはじめ事務所移転希望者だの横領している者等、事務所内はてんやわんやであるが、実は天変地異まで襲ってきたか? と疑われるほど空模様も怪しいらしい。それは最年長の彼の為に特別に組まれた本日の特訓に現れない唯一のレスラーの様子を探る為に外出したメンバーらが戻ってくる度に口にする異様な情報から推測できるものであった。内にはプロレス事務所崩壊危機、外には故知らぬ不気味な災害⁉ かも知れぬ何か・・・が迫る。癇癪持ちでスパルタ式の鍛え方一辺倒の会長の機嫌を損ねまいと悪戦苦闘する面々とどうやら崩壊してしまった街全体の真っただ中で、唯一取り残されてしまった、彼らの選択は? を描く60分。外で起こっていたことは環境崩壊に伴う都市の完全崩壊であるが、その伏線が最年長レスラーの様子を確認しに出た者の報告である。然し彼らの口頭の報告だけが演じられるのでインパクトが弱い。ラジオの音声が時折途切れ途切れで聞こえ、それが臨時ニュースのキレッパシで天候の異常な急変を告げているとか、信じられない異常事態が起こったといったことが観客に何となく分かるようにしておいた方がラストを際立たせるだろう。
 THRESHOLD

THRESHOLD

神奈川県演劇連盟

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2026/04/23 (木) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 各劇団30分の作品を上演。場転はスピーディーで1~2分程。トータル130分休憩なし。各々の劇団の個性が良く出た作品群だ。各作品については後送。全体評価では☆4つ、。追記2026.4.27 15:04

ネタバレBOX

「鹿」平塚直隆氏作の短編戯曲、演出は中山朋文氏
演ずるはtheater 045 syndicateである。尚中山氏は、役者としてもバス運転手を演じている。
 物語は修学両行で訪れた奈良春日大社のバス停留場で起こった極めて奇妙でシュールレアリスティックな変身譚に纏わる。明転するとバス運転手と車内にたった1人残った男子生徒が浮かび上がる。男子はどうやら車内から出たくないらしい。何時迄経っても出ようとしないので運転手が外へ出て鹿と遊んでくればというような声掛けをするが、生徒は出ようとしない。それで運転手と生徒があれやこれや話をしている内に、友達付き合いができないこの生徒の憧れの女性らしい人の名や、今迄に関わりのあったクラスメイトの名等が想起される度に、鹿春日大社内の鹿と戯れていたクラスメイトらが鹿に噛まれたと助けを求める声が届き遂にはバスの真下にまで来て救助を求める。生徒は窓を開けて車内に引っ張り上げようとするが失敗、そのまま被害者は完全な鹿へと姿を変えてしまう・・・。といったシュールな展開が面白い作品だ。このシュールな展開が何を契機として生じたか? が今作の提起する問いであろう。評価☆5つ

「物語の書き方」劇団820製作所
間違いなく20世紀最大の哲学者の1人であったマルティン・ハイデガーと彼の教える学生の内最も優秀な学生であったアンナ・ハーレントは、互いの類稀な才能故の運命的な出遭いに遭遇し惹かれ合う。それは単なる師弟の関係であるというより哲学者としての、知的最大のライバルとしての互いの存亡を賭けての遭遇であった。時代の遷移はナチズムの隆盛を招きハイデガーは大学の学長とされ、吹き荒れるナチズムの最中、ナチ党員となった。一方、ユダヤ人アーレントは亡命を余儀なくされアメリカへ渡った。ドイツ敗戦後、旧師弟は再び会い生涯を通じて交流を続けた。類稀な才能に恵まれた両雄の知的でのっぴきならない関りをその見解の相違を活写して描いた傑作。華5つ☆

「presentation」劇団スクランブル/クエル・ペッパー
 何から何までなってない、作品を観た段階で☆2つ、当パンの言い訳を読んで論外。結果☆1つ

「明日、また、明日」演劇プロデュース螺旋階段
 この劇団は脚本の流れや展開の上手さが光り、台詞のここかしこが立って独特の情緒を醸し出したり感慨を呼ぶ味のあるまた深みのある作品を創るし、役者陣もこの勘所を上手く表現していぶし銀のようにセンスの良さを光らせるが、今作でも短編ならではの形にこれらを凝縮して魅せてくれた。流石である。☆5つ

リバースデイ騎士

リバースデイ騎士

無頼組合

オメガ東京(東京都)

2026/04/23 (木) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 この劇団らしい人間性と細やかな人情の機微を良く台詞化した脚本が鮮やかだ。尺は約110分。アクション場面も可成り多く特に柊と始末屋・辻の格闘シーンはみもの。殺伐とした世の中、心安らぐ秀作である。未だ席も確保できるようだ、必見! 華5つ☆ 脚本の良さは無論のこと、作品の細部迄出演する役者さん全員で見事に創り上げている。追記25日20時45分

ネタバレBOX

ところで現在の世間は衆知の如く暴走する資本主義の収奪構造に完全に呑み込まれ1%未満の富裕層に囲い込まれ、起業する才も必要な知も学も発想も意欲も環境も無い人々は唯必死に日々の糧を得るべく、毎日同じ環境に置かれた被収奪者との競争を強いられ心身を擦り減らし他者を思いやる力を失って益々無益な競争に駆り立てられていると同時に目先にぶら下がる煌びやかなイメージや宣伝文句に載せられて大して必要でもない商品を買わされ続け、唯でさえ余裕の無い生活を益々貧しくさせられている。結果は更に殺伐とした世界だ。
その結末が、既に地球上の年平均気温は産業革命以前より1.5℃以上高くなり気候変動による異変の齎す影響は風水害等の大規模化、常態化、低地の水没と同時に別地域での砂漠化も留まることを知らない、豪雨や砂漠化による農業の危機、天候異変による農林水産業の衰退、要は食物生産量の劇的減少と食料の高騰、木材の不足は喫緊の大問題だ。またこのまま気温の上昇が続けば南北両極に残っている氷山の氷や高山の氷河も総て溶ける結果水面上昇は全地球規模で起こる。その時水辺に建てられた多くの原発は水没するだろう。それまでに総ての原発の廃炉作業を行える訳ではあるまい。一部のビリオネイヤーが考えている宇宙開発は、そのようなことを考え準備しておけばごく僅かの金持ちだけが変化した地球上に残っても生き残れると考えての上だろう。ということに既に多少回転の速い人々は気付いている。
まあ、我らは一部の大金持ちが以上のような考えの基に考え行動している時代に、彼らの途方もない夢を実現に近付ける為にあくせく他の自分達と同様の人々を出し抜こうと日々を過ごしている者が殆どだ。こんな世知辛い世界で人が人として生き抜こうとし、人の心の温かさ、靭さをややはにかみ乍ら生きている人間が居たとしたらどうだろう? そんな人物が描かれているのが今作ではあるまいか? 殊にリバース探偵事務所長・柊の表向きはザックバランで気の置けない態度の裏に隠された本音を表す台詞の何とも繊細で優しい心遣いが見える点は秀逸だ。柊の気遣いは新入りの五代銀次と鶴田紅を本人達が「名前(ファーストネーム)で呼んで下さい」と言い出す迄は苗字で呼んでいた点にも表れている。アクション場面も始末屋の辻と柊の格闘シーンはみものだと既に書いたが何故、彼らは命懸けの戦をする羽目に陥ったのかなど。無論、物語を観れば、以上述べたような堅っ苦しい内容だけではなくれっきとした活劇であることが、良く判る。だがそれは観てのお愉しみだ。観て十二分に楽しみ、心豊かに劇場を出て欲しい。
それはいつも♂♀から始まるetc.

それはいつも♂♀から始まるetc.

劇団ノーティーボーイズ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2026/04/15 (水) ~ 2026/04/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 役者では専務役が気に入った。終盤に登場する元経理女性の娘の独白の持つリアリティーがグー。尺は約105分。お勧め。華4つ☆

ネタバレBOX

 物語は、20年ほど前に現社長と専務が共同で立ち上げた会社の社員や関係者で賑わう小料理屋で展開する。この舞台美術が中々粋ですわりも良い。色調もそれらしく落ち着きホリゾント下手にある和風丸窓にもセンスの良さを感じる。上手側壁前にカウンター。板上には2つのテーブルと周囲の椅子。下手側壁中ほどに大きな暖簾の掛かった出入口、その対面の側壁に矢張りカウンターへ入るに都合の良い出入り口。ホリゾント中ほどにも出捌け。何れも暖簾がつけられている。
 物語はタイトル通り、♂と♀とのetc.という他ない男と女のあのねのねだが、起承転辺りまでは、下世話なギャグが多用される展開だ。然し結に入ると全く印象の変わるシリアスで緊張感のあるものに変わる。一方、コメディーに良く用いられる手法であるが、各登場人物たちが吐いた嘘が、利害を異にする者達から矛盾を突かれとんでもない言い訳を思いついてのドタバタが演じられつつ、極めてシリアスな男女関係の縺れが齎した結果が演じられ、更にそれが二転、三転して終盤に至る。この流れと結末を舞台を観ながらどこまで解けるか? を愉しむことができる舞台だ。
春に思い出す、夏の君はもう遠く

春に思い出す、夏の君はもう遠く

劇団皇帝ケチャップ

シアター風姿花伝(東京都)

2026/04/15 (水) ~ 2026/04/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 春チームを拝見。尺は約115分。華4つ☆

ネタバレBOX


 物語は12年前高校生であった2人由香里と美佳子を中心とした女子高生活と12年後に小説家&女優として脚光を浴びる由香里と編集長として活躍する美佳子の現在を対比させつつ展開する。
 由香里と美佳子はレインツリーという名の芸能事務所から現役女子高生コンビとして売り出されていた。由香里のキャラはどちらかというと合理的で理知的な優等生タイプ、美佳子は独特の感性と発想を持ち特異な発想で物事を見るユニークな女子。コンビは、若さと組み合わせの妙、面白さなどから人気も出、注目を集めるようになっていた。当然、2人のファンは各々タイプが異なっていたし、評価される点も異なっていた。だが人の世の定めは不思議なもの。その2人は、仕事の関係で知り合った年上のカメラマンに心を惹かれていた。
 結果、恋のライバルとして互いに意識し合うようになる。こんな状況の中、或る事件が起こった。写真誌に件のカメラマンと由佳里の某マンション前でのツーショットが報じられたのである。高校生の人気デュオの片割れがこともあろうに大人のカメラマンと連れ添って2人だけで・・・。と取られたのである。カメラマンと由香里の間に何が実際にあったか? などということはゴシップには関係ない。話題になること自体が致命的であった。結果、決まっていたレインツリーでの仕事は総てキャンセルされ由香里は謹慎を命じられて暫く干されることとなった。偶々、この事件の起こる前から美佳子は大学に入りたいとの思いもあり、コンビを抜けたいと事務所に申し出ていたこともあり、コンビは消滅した。
 こんな経緯から互いに一生会うこともあるまいと思っていたが、12年後2人は、小説家兼女優となった由香里と某出版社編集長となった美佳子として偶然再会することとなった。美佳子の夫は件のカメラマン、この12年間各々の生きた道程が今作の肝となる。
賢治の風

賢治の風

劇団演奏舞台

演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)

2026/04/10 (金) ~ 2026/04/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

dododo dodo dodonqdo gionn (追記2026.4.11)尺は約75分。お勧めである。

ネタバレBOX

 オープニングは演奏の開始と同時にホリゾントに宇宙を思わせるイマージュとどどどどど、どどどど、どどどどどなどと表記された文字が躍る中、役者陣が登場、どどどどど、どどどど、どどどどどと発声、続いて「春と修羅」の序が朗読形式で綴られる。100年以上前にこんなに正確な宇宙のイマージュと我らヒトの裸形を言語化し得た賢治の天才に改めて驚嘆した。次に「雨ニモマケズ」寺山は欺瞞的と嘲笑した作品だが自分は寺山の持っていた歪が言わしめたことだと思っている。というのも賢治自身家業に対する複雑な感情を抱えていたこと、大学での専攻、旱魃や山崩れ、大水被害等の天災に襲われる度、我が娘を人買いに売らねばならぬ東北農民の厳しい生活を重々知っていたからである。次には結核で亡くなった賢治の才能の最も良き理解者であった妹・としへの痛切な詩「松の針」続いて「林の中の柴小屋に」「北いっぱいの星ぞらに」「小作調停官」等が続き賢治の生きた世界を示した後としの亡くなった瞬を詠んだ余りにも痛切な詩「永訣の朝」続いて「風がおもてで呼んでゐる」を挟んで「どんぐりと山猫」で滑稽な様を描いて観客を自分達が普段暮らしている俯瞰すれば喜劇の世界へ解き放っている。この間いつものようにシンセサイザーとギターの生演奏が入るが、今回は場面によってフルートの生演奏も入っているのが新鮮。役者陣の演技と相俟った朗読も質が高い。而も朗読作品群の選定及び上演順の工夫も極めて効果的だ。
おくらいり

おくらいり

ゼータクチク&ACTACTION by TEAM HANDY

新宿眼科画廊スペース地下(東京都)

2026/03/27 (金) ~ 2026/03/31 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 これは面白い。タイゼツベシミル。華5つ☆ 尺は95分。10年活動している劇団というが8作目。初の警察モノだという。

ネタバレBOX

 板奥に段ボール箱を積み重ねた山が 二山。上手の山は下手の山より奥に在り前後にずらしてあるので下手の山の奥が袖の役割を果たす。場面によって上手の山の観客向きの部分がスクリーンとして用いられる。この段ボール山の手前に蓋の空いた段ボール箱が1つ。
下手観客席近くの側壁に沿って机と椅子が前後に並べられている。手前の机上には電気スタンドが載っている。
 基本的設定ではこの空間は新宿警察署の資料保管室である。無論、場面によって街の張り込み場所になったり、演じられるプロットに相応しい空間になったりする。オープニングでは、作品解説に在る通り、新宿の街角で発砲音がしたとの通報が複数あり誰かが誰かを撃ったとの通報もあった為、現場に急遽駆け付けた所轄警察官らは現場捜索をしたが何ら怪しい物証も形跡も発見できなかった。と、雲を掴むような話から始まる。この後の展開が上手い。更にこの展開の中で所轄の刑事2人がこの事件を追い続けることになる。徐々に明らかになってゆく部分はあるものの肝心の犯人に辿り着くことはできず、犯人と関わった可能性のある参考人は中々見付からない。時効迄二月となった頃、雑誌等でこの事件が蒸し返された。事件の核心を掴み何とか解決に導きたいという念に駆られる人情厚く、正義感の強い刑事は、偶々事件当日逃げる犯人とぶつかって階段を転げ落ち半身不随になってしまった当時22歳だった女性にプレゼントを送ったり何かとケアしたりしていたから猶更であった。然し時効1か月前に現れたのは本庁の監察(警察の中の警察と称される部門)からやって来た監査官である。彼女は至急この段ボールの山の中から一月後に時効になる件の件についての書類を探していた。時間は無い。監察のルールではこの仕事は監察官である彼女独りで遂行せねばならない。然し膨大な量の書類を一人っきりで処理するのは難しい。結果、所轄刑事2人にも手伝って貰うことになった。この過程で世の中で実際に起こっている不条理な出来事や、組織と個々人の諸関係に在る普段隠されている諸問題やその隠蔽の不条理など、国民が常々感じている諸組織の嘘、嘘を糊塗する上書きの嘘・・・、圧殺され踏み潰されて粉微塵にされ人々の意識から抹殺された真実等々数え挙げればキリがないという嘘ッパチの上塗り構造はここでも健在だ。更に物語が進みラストでは謎に包まれていた事件の真相が露わになるが、このシーンでは現実と演劇創作との関係がメタモルフォーゼであるより、寧ろメタ化であるということ、少なくとも今作にとってはそうだと解釈したが、一旦メタ化され劇として表象されている脚本は一見した観客から不条理劇として観られることを拒否し更なるメタ化を目指していると捉えた。実に面白い。
Once more,

Once more,

VOGA

北千住BUoY(東京都)

2026/03/27 (金) ~ 2026/03/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 不思議な感覚を味わいたいムキには特にお勧め。尺は約2時間。

ネタバレBOX

 VOGAはちょっと変わった表現集団である。結成は1997年12月、囲いや屋根の無いスペースでの野外公演を関西で上演してきたが2025年拠点を関東に移し現在に至っている。今回はBUoYでの公演だから屋外では無いがこの表現集団の境界という曖昧な領域を効果的に表現する意図であろう。屋内の照明は昏めに設定され奥行や天井高が意識できないような境界領域の雰囲気を濃厚に漂わせている。これはこの表現集団の作品創造コンセプトがまさしく“境界”にあることの現実的舞台表現に他なるまい。
 例示すれば内側と外側、海と陸、空と海等々いくらでも例示できる何かと何かの間である。然し乍らこの境界領域をキチンと定義することはことほど左様に単純ではない。海と陸の間には潮の満ち引きがあるから時間軸によって海になる領域と陸になる領域とは異なるという日常見慣れた景色によってもこの事実は単純に事実として知っていよう。こんな具合なのである。
 そして我々はこのように曖昧な領域で生きている。物語は海へ延びる岬と岬の奥にある森や大地に囲まれた港町に住む者達のケとハレ、若者同士の恋や生活等と同時に森の神への厚い信仰、自然に根差した地域産業(漁労や海産物加工等)や産婆以外には医療制度が存在しない暮らしなど自然の影響を受け易い状態をホリゾントに映写される島宇宙の映像や大正琴に似た音色を出す弦楽器によって紡ぎ出されたであろう音響、あくまで昏めの照明などの相乗効果によって醸し出された不思議な時空間の中に立ち現れた森の神の台詞「総ては震動している、一見硬く形を保っているように見える物も総てが震動している」という内容の台詞は恰も現代物理学の素粒子論の如きである。開演直後からずっと演じられていた身体パフォーマンスに合わせて繰り返し発語された文言の意味する処は物質の生々流転、変容などの仏教思想と現代物理学の論理とを重ね合わせたような感覚を呼び覚ますに充分である。此処にも境界が設定されているとみるべきであろう。動作は極めて美しくスタイリッシュだ。
 こういった作品構造の中に2026年と40年後が一組の若い男女の恋愛譚兼或る重大事件の顛末として嵌入され、通常の物語に近いテイストを醸し出している。極めてユニークな作品である。

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