星降る教室 公演情報 青☆組「星降る教室」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     ベシミル。未だ埋まっていない回もあるとのこと。寒くなって来た、ジンワリ温まれる、お勧め作品である。

    ネタバレBOX

     板上はホリゾントの幕に樹木が立ち並ぶさまをあしらった。この樹木群はその枝葉が厳冬早朝の陽光に輝くように煌めいている。物語は20年程前にラジオドラマとして書かれた作品がベースになっているが大きな変更は無いリーディング公演だ。尚、ラジオで放送された際にはディレクターが賢治へのオマージュ作品を連続放送するという企画の1編として放送された。童話系の物語なので賢治のみならず「不思議の国のアリス」に出て来る兎のようなキャラも登場する。無論、他にもクラムボンや茸の集団、猫、桜の木、アネモネ、泉等々たくさんの生き物や自然が人間同様に喋ったりオノマトペを用いた表現をしたりと小学校6年生のイマジネイション豊かな子供と同等の交感を交わす亜空間がその不思議な世界だ。
     きっかけは現在教師になっている、主人公の転校生で1年間雫の森小学校で学んだだけのユキコに担任だった青木紺次郎先生から葉書が届いたことだった。20年後の今、卒業式を挙行する招待状であった。彼女は雫の森小学校へ出掛けてゆく。だが思い出は既に忘れてしまっており総てが新たな体験のように瑞々しい出会いの経験として展開してゆく。この設定が素晴らしい。総てが新鮮に観客に伝わるからである。こうして初の体験という感覚で“小学生”ユキコは観客を物語に没入させてゆく。
     作・演出の吉田 小夏さんの才能はこれだけに留まらない。リーディング公演だからこそ、敢えて効果音の多くを口ジャミでこなし、マイクや人工的な機器は使わず、鈴のような原始的楽器のみを併用する。またテキストも完全に暗記せず、丁度音楽家が譜面を見ながら演奏するような具合でリーディングの質を自然な状態で推移させてゆく。このような配慮が実に微妙なバランスの上で成り立っている自然に人間が感応することを可能にしているのだ。同時に転校生故のデペイズマンもユキコを他の子供たちから心理的に孤立させ人間集団内のみの会話・対話と少し周波数の異なる自然界への窓を開けている点にも注目したい。ヒトは余りに人間集団に馴染み過ぎると、自然と感応し得る孤立と孤独な感性を見失う。すると大抵の人は孤独感・孤立感でその身を削り本来持っていた繊細性を喪失してしまう。
     すると自然を荒らしていることに気付かなくなる、後は推して知るべし。今作の持っている温かさは、ユキコの持っているこの繊細性が自然と感応し、例えば厳冬の朝ぼらけ、立木の幹に触れてみると良い、生きているもののほのかな温かさが伝わってくる。そのような暖かさが作品を通して伝わってくる点に今作の温かさが在る。

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    2024/12/09 12:16

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