nらoむkれe〜nずaんkの観てきた!クチコミ一覧

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あるこくはく [extra track]

あるこくはく [extra track]

ほろびて/horobite

SCOOL(東京都)

2021/06/19 (土) ~ 2021/06/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#あるこくはく
#ほろびて
出会ってから何作品目になるだろう。万華鏡のようにクルクルと表情を転がしてみせる #鈴政ゲン さんのその振り幅は、観る度に大きく広がっているような気がする。目は口ほどにものを言いう…を実践する女優が、確かにそこに存在した。彼女のモノローグの可笑しさに思わず吹き出してしまった。
設定は、あまりにもバカバカしいのだけれど、その裏側には世界に蔓延るさまざまな差別が浮き上がる。それを結びつけるのはもちろん無理矢理で強引なのだけれど、俳優の確かな演技力がそれを成立させた。中でも、トイレから戻った父親 #吉増裕士 さんの怒りと憤りが圧巻。そこには当然、娘への愛情が溢れているのだが、同時に世間の常識の代弁者となり、差別的な視線を反映させる。日本人の自意識の奥底に潜むアジアでの優位思想が滲む。戦争や災害などの非常事態に浮き彫りとなるその感情は、醜くも自分の中にあることを自覚し嫌悪する。人間は脆いという言葉が、抜けない棘のように、ゆっくりと心臓へ向かって攻撃を続ける。
たった1時間とは思えない密度の公演。ラストのリレーするモノローグの意味について、繰り返し反芻しながら考えている。
いま、キャリアのある俳優さんの中で観たい人と問われれば、この三人を選ぶ。#木場勝巳 さん、#相島一之 さん、#吉増裕士 さん。今作は、それを一層強く感じさせる濃密な時間だった。

おどる小説 プツンパツンプチン

おどる小説 プツンパツンプチン

CHAiroiPLIN

ザ・スズナリ(東京都)

2021/06/17 (木) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#プツンパツンペチン
#チャイロイプリン
レンジャーのヒロインにもダフト・パンクにも見えた #清水ゆり さん。彼女の唯一無二な存在価値が、更に高まったことを実感する公演だった。主宰の #スズキ拓朗 さんと彼女がいれば、それがチャイロイプリンで、そこがチャイロイプリンだ。あの娘もあの人もみんな重要なキャストだし、だったけれど、この二人だけはどうやっても替えが利かない。今作は彼女のスタイルの良さも際立ち、オリエンタルなセレブ感や極楽の境地が、人間の煩悩を見事に具現化した。果てしない欲求を更新し続ける人間というイキモノは、同時に飽きっぽい。次から次へと目移りし、いとも簡単にポイッと捨てる。客席の誰もがプチーンとしたくなったはず。ナカミカラッポニシテネが、なんともエロティックで、妄想が果てしなく広がった。もちろんキャッチーな歌も存分に楽しめる。彼女のロングブレスには、歌い手としての才能の確かさを改めて感じた。
ダンス・音楽・照明の素晴らしさは言うまでもないが、今回は衣装も粋だった。水に濡れると浮き上がるラインがスタイリッシュでクール。水も滴るイイ女とイイ男の群舞が、まるでマイケル・ジャクソン『スリラー』のゾンビのような激しさで迫ってくる。スズナリのあの距離でのそれは圧巻。そこにダフト・パンクのクールさを織り交ぜてくるのだから堪らない。スズキ氏のラストのソロダンスには、芥川の孤独と悲哀が漂った。また一つ彼らが名作を手に入れた。ここ数作の完成度の高さたるや…ため息が出る。もう、次の公演が待ち遠しくてウズウズしている。その時にはきっと、それがワクワクへと変化しているに違いない。

Silent Scenes

Silent Scenes

ゼロコ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/06/11 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

#ゼロコ
#SilentScenes
演劇とパントマイムの中間といった感じ。マイムのコメディ要素を抽出して巧く演劇に寄せていて楽しかった。マルセル・マルソーも観ているため、マイムの精度は目を瞑り、演劇としての楽しさを味わいたい。
これは作り手の問題ではないが、客席に過剰に反応する人や、妙なタイミングで反応する人がいると興醒めしてしまう。これはコメディの宿命なのかな⁉️

ささやかなさ

ささやかなさ

小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク

SCOOL(東京都)

2021/06/11 (金) ~ 2021/06/18 (金)公演終了

実演鑑賞

#スペースノットブランク
#ささやかなさ
大好きな #西井裕美 さんが出逢わせてくれた #小野彩加 さんと #中澤陽 さんのお二人が演出するユニット。二人の演出家がいる公演をここ以外に知らない。言葉と音と身体の融合が生み出す化学反応に毎回圧倒される。自分の理解力や想像力の乏しさに打ちのめされることもあるけれど、ハマった時の面白さが堪らない。それはいつも…細やかな差ではなく、大きな衝撃。今作の1番の驚きは、あのジェネシスが世に知らしめたバリライトが7本(あの1つもそうなら8本⁉️)も吊るされていたこと。小さなスペースにそれがイキモノのようにうねうねと眩い光の渦を作る。その中を #荒木知佳 さん #古賀友樹 さん #矢野昌幸 さんが躍動する。願わくは、西井裕美さんの声をもっと聞きたかった。演奏家ではなく俳優としての姿をもっと味わいたかった。

愛、あるいは哀、それは相。

愛、あるいは哀、それは相。

TOKYOハンバーグ

座・高円寺1(東京都)

2021/06/13 (日) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#TOKYOハンバーグ
#愛、あるいは哀、それは相
#清水直子 さん、#北澤小枝子 さん、#吉本穂果 さんの母娘が素晴らしい。この一家を迎え入れる妹夫婦の #甲津拓平 さんと #橘麦 さんも流石。
珈琲が好きな人は香りがたまらないだろう。
「HOTくれ」が「ほっといてくれ」に脳内変換されて、彼の地の声が木霊しているように思えた。
ネット社会に溢れる情報、何かに忖度し偏るメディア報道。
何がホントなんですか⁉️
叫びとも思える声。
その人たちが知りたいことは…いま⁉️未来⁉️それとも過去の事実⁉️
毎年やってくるその日も、安全な(と思い込んでいる)場所で生きてきた者には、思い起こし思いを巡らせる日なのかもしれないけれど、そこに住む人や住んでいた人たちには変わらぬ同じ1日、日常なはず。
人を思いやることについて考え、大切な人に思いを巡らせる時間がそこにある。
席の間隔を空けた劇場で、味わっていただきたい。

ネタバレBOX

流れの良い戯曲だし、演出も丁寧でよかった。
避難者に対するイジメやバッシング、長女が帰郷する理由、ライターが一家を取材する理由あたりは、もう少し描いて欲しいところ。
先生の淫交疑惑の件とかはカットしてでも、その辺を加筆してもらいたいところ。
そして、ラストシーン。
あの瞬間を座席が震えるほどの轟音で再現する作品を幾つも観てきた。アレはやはり気持ち良くない。彼の地の人たちはどうなのだろうか⁉️あの地響きを感じながらあの音を耳にして終わることに、後味の悪さを感じるのはわたしだけだろうか。
その前

その前

東京タンバリン

高架下空き倉庫(杉並区阿佐谷南2-36)(東京都)

2021/06/03 (木) ~ 2021/06/07 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#その前
#東京タンバリン
#高架下空き倉庫
演劇に不慣れな人でも、1時間前後の公演だから試してみてはいかがだろう。その長さとは思えないほどの充実感。それは、これまでに何本もこれくらいの長さの作品を作ってきた実績によるものに違いない。この尺では物語が転がる前に終わりかねないし、だからと言って要素を盛り込めば尺に収まる訳がなく、無理に収めようとすれば薄っぺらくなる。しかし本作は、クロスワードパズルを用いたクイズ的な心理戦…いや、推理をさせながら、実に豊かに物語を転がしていく。そこに現代社会への風刺をユーモアに包んで忍ばせる。
スマホ等ネットを使ったコミュニケーションはできても対面で会話できないディスコミュニケーションは至る所にある。それは陰口や噂話や誤解の温床。そこに真実はどれくらいあるのか。嫉妬というスパイスを振りかければ、たちまちピリッと辛めのドラマが転がりだす。シーンの切り方繋ぎ方が観客の興味を掻き立てる。
これまでの上演でもダンス…というかムービングを取り入れていたけれど、今作のそれは小道具の受け渡しや衣装替え(上着を着たり脱いだり)も含ませて、美しいだけでなく、会場の特徴に合わせた見事な動きだった。その中で、キリッとした目鼻立ちと姿勢の良さで #青海衣央里 さんの美しさが際立った。
#萩原美智子 さんの大胆なラップには度肝を抜かれたけれど、なんだか気持ちよくなってきて普通に聴けてしまった不思議。

仕方ないのだけれど、あの距離での対面客席は、向こうの観客の表情が気になって、集中するのが難しかった。

ウィット

ウィット

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/06/05 (土) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

#文学座
#ウィット
人はみな裸で生まれてくる。そして、死にゆく時に何も持っては行けない。名誉も学識も財産も、最後に役立つものでは無い。最後に欲しいのは慈しみや優しさ。
これは、何となく分かること。それくらいのことは考えられること。特に新鮮な発見や驚きはない。ただ、40歳を過ぎた頃から漠然と抱いていた人生の終幕について、健康寿命について考えさせられることになった。人間の尊厳について。人は失敗する。真剣に取り組んでいるものや大切にしていることには、それが起こりがちだ。そしてそれは重大な問題として迫ってきたりする。そのいたたまれなさを噛み締めた。
研修科公演で輝いていた #張平 さんを久しぶりに観ることができたのが楽しかった。

★ネタバレに追記
そろそろ書いてもいいかなと思って。

ネタバレBOX

❶ラストシーン
正直に言って違和感アリ。むしろ不快感と言ってもいい。その少し前から、嫌な予感がしていた。そして『嗚呼、来る来る。やめてやめて…』という、ジェットコースターがゆっくりと上昇して行くような気持ちになった。もちろん本に書いてあるのだろう。海外戯曲で制約もあるのだろう。ならば、コレを選ばなければよかったのにとさえ思ってしまった。病で死にゆく人間のモノローグは身につまされるけれど、予想できる範疇を超えてこないし、演劇として魅力を感じなかった。

❷張平さんの看護師役
看護師役には演出の工夫をして欲しかった。そもそも日本人が海外戯曲を上演しているわけで、そこに台詞が異国情緒を醸す彼女をキャスティングするなら、役自体も外国人の設定にする方がいいし、そうでないならキャスティングの意図が伝わらない。大好きな俳優さんだからこそ、もっと良さを引き出せる工夫をして欲しかった。

❸プロンプター
こんなにもプロンプターの存在が際立った公演に出会ったことがなかった。初日だったからだけだろうか。あれだけの長台詞の独白なのだから仕方ないとも思うけれど、プロンプターの力を必要とした俳優が一人だった訳ではない。確かに役柄と俳優の実年齢が近ければリアル感は増すかもしれない。でも、そもそも芝居なのだから違う年齢の俳優が演じても良いはず。もっと若い俳優が担っても良いのではないだろうか。
あれでは間をとった演技なのか、台詞を思い出しているのか心配になること多数。それでは作品に集中できるはずもなく。
公演も終盤に入りました。滑らかになっていると祈る。
キネマの天地

キネマの天地

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/06/05 (土) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#キネマの天地
#プレビュー
#佐藤誓 さんをとにかく観て欲しい。
演劇が……芸術が…… ウィルス感染予防による自粛要請で窮地に立たされている中、演劇讃歌、俳優讃歌を感じる作品に大いなる拍手を送りたい。演劇人に対する自虐ネタもあるけれど、それも愛あるが故。笑い飛ばして感謝して、デフォルメされた可笑しさを堪能すればいい。皆さん芸達者でそれはもう素晴らしい。中でも #佐藤誓 さんの可笑しさと惨めさと健気さと……愛しさの向こうに立ち上がる格好良さに痺れる。四人の世代を異にする看板女優のバトルも見事。鼻につくほどにオーバーアクションする(もちろんそういう演出)#趣里 さんと、それを見事に拾っては跳ね返す #鈴木杏 さんの確かさに唸る。後ろ姿がまたなんとも美しい。#那須佐代子 さんと #高橋惠子 さんの巧さに説明はいらない。蔑むように見下ろし、死んだような目をする #千葉哲也 さんと、エネルギーを注入する #章平 さんの凸凹コンビも味がある。
さぁ、演劇のアンサンブルを存分に楽しもうじゃないか。

てげ最悪な男へ

てげ最悪な男へ

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#てげ最悪な男へ
#小松台東
#小園茉菜 さんが「彼氏できたー」と叫びながら自転車で登場する爽やかさとは真逆の、生き辛さが充満した作品。二幕の冒頭も彼女の自転車で始まるのだけれど、カールした美しい髪が、まるで人生の歪みを表しているように見えたのは、我が心も歪んでいるからだろうか。人に纏わり付く影…負い目。それが自身の失敗ではなく家族の行為によって生じたものならば、その責任を背負わされる家族について考えると胸が締め付けられる。被害と加害。起こったこと、起こしてしまったことによる支配。それはいったいどこまで、誰にまで広がり、いつまで続くのか。そしてどうやったらその支配から逃れることができるのか。たとえ許されなくても、解放されるときは来るのか。謝罪は決して楽になりたいだけなんかじゃない。そうじゃないんだけれど…不本意ながらもそうなる部分はあって、それを突きつけられれば反論は難しい。死ぬまで過去は消せない。でも、死んだって過去は消せないし、それこそ自らが負うべき十字架を家族に背負わせて逃げ出すことであり…それは勝手に楽になろうとする行為なはず。だから…死ねないし逃げられない。人間が嫌悪する感情で発する敵意や悪意ほど恐いものはない。
言葉は難しい。この二週間で何度聞き、何度実感したことか。勇み足で溢れた一言が、積み上げてきた人生の全てを台無しにする恐怖。台無しにしてしまったかもしれない恐怖。そんな思いは二度とご免だ。そう思うと口がきけなくなる。しかし、声であろうと文字であろうと手話であろうと…自ら言葉を発しなくなったら、果たしてそれは人間としての徳を有していると言えるのだろうか。先天性のものや病や事故ではない。だからこそ、あの家に集まってきた人たちは言葉とどう向き合い、恐怖にどう立ち向かっていたのかということについて…何度も反芻している。
劇中、そのオーラを激変させたのは #瓜生和成 さん演じるフミオ。優しさと思いやりの包装紙は薄くて柔。どうやったって包んだ下心は透けて見える。望もうが望むまいが、始まった二人での生活は『支え』から『支配』に変わってしまった。時間も人の感情も残酷だ。覚えていて欲しいことは忘れ去られ、忘れて欲しいことはいつまでも記憶され続ける。
這いつくばって嗚咽して苦しむ彼の姿に身を斬られるような苦しさを感じた…が、彼の方がその傷は深く強い痛みを感じているに違いない。にもかかわらず、隣の席の観客はクスクスと笑っている。まるで世の中が彼を…そしてわたしを嘲笑っているかのような錯覚を覚えた。世間に笑われながら、地に這いつくばって、彼は…いや我々は、何を守り、何を失いながら生きていくのだろう。生きていけるのだろう。受け入れ難いことを受け入れ、忘却力を頼りに、時の経過が苦しみや悲しみを薄めてくれるのを息を潜めて待つ。
ここ数作品における主宰 #松本哲也 さんの脚本の引き算に痺れる。誰がいつどこで何をどうしたか…ということを客席は追いかけたくなる。でも、その人がいないこと、来ること、それだけが重要で、細かなことは想像に委ねられる。あの家の世界が果てしなく広がり、闇は深く深く沈んでゆく。
観客はいつだって作品と自らの共通項を見いだし、現在過去未来に結びつけ、時に教訓にもしながら、人生を生活を顧みる。それは演劇に限らず、映画も文学も、歌の歌詞からも、我々は自分を探す。安心したり、恐れたり、教訓にしたりしながら生きる。
フミオを見つめながら我が身に降りかかった災難を俯瞰していた。自分の愚かさを突きつけられながら、励まされた気がした。

「SEVEN・セブン」「岸田國士恋愛短編集」

「SEVEN・セブン」「岸田國士恋愛短編集」

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2021/04/09 (金) ~ 2021/04/16 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#SEVEN #セブン
#オフアトリエ企画
7人の女性によるモノローグ。告白とエピソードの連続。イヴ・エンスラーの『ヴァギナ・モノローグス』を思い起こした。
女性が強いられてきたことの理不尽さ。その恐怖の歴史は想像をしても及ばない。それをわかっているのだけれど……恐怖を煽るような演出は好ましくない。男である自分がいま、別の恐怖を感じていることも自覚している。
声を上げられない人々が、声を上げられるようになるまでの葛藤。性差による暴力はダメだ。ただ、人類のこれからの恋愛はどこに向かっていくのだろうか……と漠然と考えている。
#山崎美貴 さんを堪能。そして #つかもと恵子 さんの言葉の深さが味わい深かった。

「SEVEN・セブン」「岸田國士恋愛短編集」

「SEVEN・セブン」「岸田國士恋愛短編集」

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2021/04/09 (金) ~ 2021/04/16 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#岸田國士恋愛短編集
#文学座
#初日
#恋愛恐怖病
一瞬で #下池沙知 さんに恋をした。そこに座ったお嬢様はしっかりと箱に入れられて綺麗に育っていた。彼女は雄弁な白目を持ち、男女の友情と恋の境界線で綱引きをしてみせる。ちょっと鼻にかかるイイ声で言葉遊び。あんなに心を擽る「おやおや」なんて聞いたことがない。「さぁ、どうぞ」なんて言ってキラッキラの瞳を向けて、八重歯から悪戯っぽく恋の罠を仕掛けられたら抗えるはずがない。二の足を踏む男は滑稽で愚かだ。連れ去られても後の祭り。

#チロルの秋
ユーリズミックスのアニー・レノックスのようにクールな #渋谷はるか さんに心を掻き乱される。影を纏い、神秘のベールに包まれた彼女に惚れ惚れする。コレが観たくて劇場に足を運んでいるのだということを、彼女はいつも再確認させてくれる。共演の #小谷俊輔 さんと #渡邊真砂珠 さんは、研修所57期で『わが町』からずっと拝見してきたお二人。震える組み合わせだった。

『crash~M銀行人質事件~』

『crash~M銀行人質事件~』

singing dog

小劇場B1(東京都)

2021/04/08 (木) ~ 2021/04/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#crash〜M銀行人質事件〜
#singing dog
初日夜。脚本家 #藤崎麻里 さんが主宰するこのユニットは、事件などを糸口に社会問題に切り込む。#劇団チョコレートケーキ が扱う事件が戦争などの国家的と言うとすれば、ココで扱うのはより身近で人間的な事件。要因と結果、そこに至る過程におけるターニングポイント、人生のボタンの掛け違えを炙り出す。丹念な取材が肝。脚色の割合を考えさせない程に、人間の抱える闇が観ている者に迫る。言葉…声…光…そうした空間の構築に才を発揮する #吉田康一 さんの演出を支える #山口紘 さんの音と #渡辺隆行 さんの照明が冴える。あの音と光がサスペンス感を生み出す。尻の下から伝わってくる轟音がその不気味さをカラダの芯まで差し込んでくる。今作で事件を最もリアルに引き寄せたキャストは #内海詩野 さん。彼女が纏った薄幸の美しさが、自己肯定感の低い男の虚栄心を満たす光であり砦であることを確信させる。冒頭で彼女が見上げたソレは、まるで人生を閉ざす霧だ。人質に寄り添った刑事 #坂井宏充 さんも印象的だった。
残念だったのは、作品に対して舞台のサイズが合わず窮屈に感じられたこと。きっと演出家も俳優も感じていたに違いない。演技をコミカルに感じ、作品の方向性とチグハグに見えたのもその影響があるだろう。捜査官による権力争いのマウント合戦はもう少し丁寧に伝えて欲しいと感じた。そして、犯罪における加害被害に対する人権問題は、我々がまだまだ考えなければならない課題である。
さぁ、秋に予定されている次回公演では、どんな事件と向き合わせてくれるのか。期待したい。

こどもとつくる舞台『花をそだてるように、ほんとうをそだてています。』

こどもとつくる舞台『花をそだてるように、ほんとうをそだてています。』

ひとごと。

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/03/24 (水) ~ 2021/03/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#花をそだてるように、ほんとうをそだてています。
#ひとごと。 こどもとつくる舞台
2回観劇。密度の濃い楽しい作品。親子の観劇にうってつけで、子どもの感性を刺激するに違いない。お絵描きされた服、ピタゴラスイッチ的な音と動きの連動、オノマトペからやがて言葉が紡ぎ出される。カラダとコトバの繋がりが自然で、観ていてシアワセになる。
とにかくキャストが皆さん素晴らしい。可愛らしくて愛おしい。最も目を奪われたのは #藤瀬のりこ さん。体幹がブレないということがどれほど美しいかを目の当たりにした。長い手足がしなやかに舞いキレもある。美しいダンスに見惚れた。
BGM⁉️となる親子の会話がまた素晴らしい。子どもの豊かな発想と、母親の見守り受容する愛に溢れたそれが客席を幸福で包む。
嗚呼、世界に伝われ❗
戦争じゃなくてドッヂボールすればいいのに。

振り返る人たち

振り返る人たち

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2021/03/27 (土) ~ 2021/03/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#二兎社
#振り返る人たち
3回目を迎えたドラマリーディング。毎回戯曲の力強さと、切り取られたシーンを見事に立ち上げて見せる俳優陣の確かさに感心させられる。今回も例に漏れない。
目当ては、何作品も出演作を拝見し、その鋒の鋭いナイフが如く尖った演技が魅力的な #稲村梓 さん。『兄帰る』の姉で遺憾なく発揮された。そこで帰ってきた兄を演じた #池田遼 さんはなかなかに目を引いた。また観たいと思った。
スタートとラストに『私たちは何も知らない』を女性版と男性版という対にした上演がされ、とても興味深かった。特に保持研を演じた二人が対照的だった。#文学座 の #松本祐華 さんは清らか、#キャラメルボックス の #多田直人 さんは毒を孕んだ曲者を立ち上げた。どちらもアリだし素敵だった。
『かたりの椅子』で組み上げた椅子が崩れたが、演出なのだとしたら天晴れ。
今回も素晴らしかった。来年も必ず観たい。

生きてる風/ ブタに真珠の首飾り

生きてる風/ ブタに真珠の首飾り

アマヤドリ

シアター風姿花伝(東京都)

2021/03/18 (木) ~ 2021/03/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#アマヤドリ
#生きてる風
現代社会が抱える闇…病み。海底生物のごとく閉ざした世界にひっそりと生きる。かつての世でも俗世との交流を断ち、山奥で暮らしたりする歌人や詩人などもいた。ここにいるのは、その世界から抜け出そうとする者、抜け出す手助けをしようとする者、抜け出さずにいる者。解決するきっかけとなる事件……なんて起きない。特効薬もない。その心理…真理について抉る……ことはできなくても、一歩踏み込む。
主宰の広田淳一さんの新作はいつでも刺激的だ。その言葉が観客の心を絡め取って行く。
今回、劇団を離れていた #松下仁 さんの出演を知り、リアルに叫び声を上げ、泣いた。アマヤドリらしさというものがあるとすれば、間違いなく彼の中にそれはあった。そして彼の妹役の台詞の向こう側に、劇団を離れた女優の姿…言葉があった。彼女は彼女であると同時にアマヤドリそのものだったと、改めて知る。わかっていたけれど、わかっていなくて……凄い発見だった。
同時に、初見の #宮川飛鳥 さんと #徳倉マドカ さんという若い二人の力強さに惚れ惚れもしている。魅力的な若い俳優さんとの出会いは、なんとも幸せだ。
そして、開場から客出しまで130分リアルに引きこもる、ほぼオブジェの #大塚由祈子 さんに敬意を。

INDESINENCE 

INDESINENCE 

LUCKUP

赤坂RED/THEATER(東京都)

2021/03/24 (水) ~ 2021/03/28 (日)公演終了

実演鑑賞

#INDESINENCE
#藍澤慶子 さんを観る。単純に言ってしまえばそれ以外の目的はない。綺麗な方がたくさん出演される公演ならではの雰囲気が客席にも舞台にも満ちていた。キャストを目当てに足を運ぶ人にとっては、それぞれに見所が用意された作品であり、満足のいく構成ではなかろうか。こうしたキャスティングの作品で多く見られる常套手段と言える。
ミステリーとしては甘さがあるけれど、後半の展開はなかなか興味深い。ただ、少々説明し過ぎな感も否めない。特にラストで幾つかメッセージが語られてしまって……やや興が醒める。
藍澤慶子さんは、かなりの演技派だと思っている。しかし、その麗しさが重宝されて、演技のポテンシャルを発揮するポジションを与えられていない気がして…焦れる。語弊を恐れず言えば宝の持ち腐れな気がする。誰か、少人数の会話劇にキャスティングしてくれないかな。
【追記】
藍澤慶子さんの衣装はオシャレで奇抜だった。
でも、あれはアリなのだろうか⁉️

見てないで降りてこいよ

見てないで降りてこいよ

ぽこぽこクラブ

オメガ東京(東京都)

2021/03/10 (水) ~ 2021/03/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#見てないで降りてこいよ
#ぽこぽこ倶楽部
開場時から板付き……からの数本のショートムービーによる作品の助走。その場と時間と客席のバリアフリーの演出が見事。切り口は明るく楽しいけれど、テーマはなかなかにディープ。障害か個性か。それを決めてしまうのは周囲の人間の目であり考えであり扱いである。生きにくい世の中にするのも、生きやすくするのも、不幸にするのも幸せにするのも、人次第。
#都倉有加 さんが温かみのあるマドンナを好演した。

共生

共生

さんらん

アトリエ第Q藝術(東京都)

2021/03/17 (水) ~ 2021/03/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

#共生
#さんらん
絶滅危惧種、野生動物、保護動物…まざまな生き物との共生を考える。人間の身勝手を突きつけられ胸が痛む。何かの犠牲の上にある贅沢な趣向品について、人間の欲望について考えさせられた。
三つの時間、三世代の時間が流れる。戦時中、高度経済成長期、現在。興味深い構成だった。ただ、ウイルス感染対策としての配慮として上演時間をコンパクトにする意図が働いていると思われるが、やや言葉足らずで強引に感じる部分もあった。それを補うためもあってか、意味を感じ取れと言わんばかりの舞踏や、俳優に動物を演じさせる演出はフィットしていないと感じた。
親切は人の為ならずを感じられたシーンがよかった。戦場ではみなケモノという言葉が印象的だった。
キャストはほとんどが初見の方だったが、皆さん期待以上で、とても上手かった。#中村有 さんが素敵だった。
目当ての #山本由奈 さんはオーラのある人。芯のある声が胸の深いところまでスッと入り込む。顔が小さくてコケティッシュなのだけれど艶っぽさがある稀有な俳優。イベントのお姉さんの演技はさすがアイドル活動をしているだけある。

オパンポン★ナイト〜ほほえむうれひ〜

オパンポン★ナイト〜ほほえむうれひ〜

オパンポン創造社

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/03/05 (金) ~ 2021/03/07 (日)公演終了

何度か観るチャンスを逃していた劇団。評判も高かったし、期待しての初見。過剰に期待してしまったのがいけなかった。併せて、客席に自分とかけ離れた感覚で笑う客がいたことが更に気持ちを萎えさせた。辛かった。苛立った。
スコーンと清々しく笑いたかった。

十二夜

十二夜

文学座附属演劇研究所

文学座アトリエ(東京都)

2021/02/18 (木) ~ 2021/02/21 (日)公演終了

#新訳、十二夜、あるいは、お好きなように
#月チーム
若者の公演であることで、選曲やいくつか台詞に現代にアジャストしようとした演出の試みが見られた。ただ、賑やかす声や音で必要な台詞が聞き取れず残念。大好きな作品だから、もう何度も観て知っているからいいけれど、知らないで観たら、話を理解できるだろうか?
演技にも演出にも隙間が見えて粗さを感じた。
キャストの力量にも、随分と差があるように感じられた。緊張はあるだろうけれど、もう少し楽しんでくれたらいいのに。
オリヴィアの大木あゆみさんの存在感が群を抜いていた。特に恋に落ちていく表情の変化が一番の見どころ。台詞もよく届いた。
アントーニオの藤田侑乃さんの声は張りがあってよかった。

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