実演鑑賞
満足度★★★★
#crash〜M銀行人質事件〜
#singing dog
初日夜。脚本家 #藤崎麻里 さんが主宰するこのユニットは、事件などを糸口に社会問題に切り込む。#劇団チョコレートケーキ が扱う事件が戦争などの国家的と言うとすれば、ココで扱うのはより身近で人間的な事件。要因と結果、そこに至る過程におけるターニングポイント、人生のボタンの掛け違えを炙り出す。丹念な取材が肝。脚色の割合を考えさせない程に、人間の抱える闇が観ている者に迫る。言葉…声…光…そうした空間の構築に才を発揮する #吉田康一 さんの演出を支える #山口紘 さんの音と #渡辺隆行 さんの照明が冴える。あの音と光がサスペンス感を生み出す。尻の下から伝わってくる轟音がその不気味さをカラダの芯まで差し込んでくる。今作で事件を最もリアルに引き寄せたキャストは #内海詩野 さん。彼女が纏った薄幸の美しさが、自己肯定感の低い男の虚栄心を満たす光であり砦であることを確信させる。冒頭で彼女が見上げたソレは、まるで人生を閉ざす霧だ。人質に寄り添った刑事 #坂井宏充 さんも印象的だった。
残念だったのは、作品に対して舞台のサイズが合わず窮屈に感じられたこと。きっと演出家も俳優も感じていたに違いない。演技をコミカルに感じ、作品の方向性とチグハグに見えたのもその影響があるだろう。捜査官による権力争いのマウント合戦はもう少し丁寧に伝えて欲しいと感じた。そして、犯罪における加害被害に対する人権問題は、我々がまだまだ考えなければならない課題である。
さぁ、秋に予定されている次回公演では、どんな事件と向き合わせてくれるのか。期待したい。