満足度★★★★★
言語化できない衝撃
「おどろおどろしさ」を演劇で表現するのは実は難しいと思います。単に殺人や悲惨なことが舞台上起こるだけなら、演劇というよりは安っぽくて悪趣味な見世物にすぎないからです。悲惨なもの、グロいものなら、本物がネットにいくらでもころがっています。「鬼の居ぬ間に」は、そういう即物的なものではない、曖昧模糊として捉えにくい悪意や迷信、蒙昧、そしてそれらを包有する空間を作り出す稀有な劇団さんだと思っています。
劇場に入ってすぐ舞台美術でぐっと引き込まれたのを覚えています。771の雰囲気もありますが、ここから異世界に入るんだという感覚。決して楽しい物語が始まるわけではないのに、不思議な高揚感がありました。物語の根幹自体はかつての日本にありふれた話だったと思います。ただ物語の構造や伏線の複雑さなどの文学的な問題はさておき、時間が経っても、劇場で受け取った「異世界感」の異様さ・インパクトをありありと思い出すのです。細かい枝葉のお話は時間が経てば忘れてしまいますが、あの言葉にならない圧倒的な異質さは今でも残っています。言葉にならない部分が大きい作品でした。
満足度★★★
力はあるのだから、物語の理屈を良く考えて
三つ巴というコンセプトのタイトルだったので、この劇団特有の曖昧模糊とした世界を二層、三層と積み重ねることによって、この鵺的社会のおぞましさを暴く作品になるのかと考えていたのだが、今作では寧ろ殺害そのものの凄惨をエスカレートさせることに重点が置かれ過ぎたように思う。
満足度★★★
空気感良くも、見えない。
照明の雰囲気、音の使い方、テーマ性、好みである。もっとドロリとした後味の悪い凝縮が可能に思えた。人間は業が深く、身体の中には常にさまざまな「毒」が巡っているのだと思う。
面白かったのだが、満席もあって前列前々列の人の頭で、ツラの座り芝居はほとんど見えず・・・。非常に残念でした。小屋の限界かもしれないけど、座席配置に至るまで試みが必要と感じました。
満足度★★★★
とても良い演劇だと思いました。
その村は貧しかった。掟は近代になっても,生きていた。食糧には限りある。だから,子ども一人が生まれてきたら,誰かが犠牲になって,断崖絶壁から突き落とされる・・・
村おさには,助役がついている。この重要ポストを巡って,三人の男は駆け引きする。三人三様にずるいやつらだ。この人たちに,般若心経をきかせ,人間にある欲とか怒りの毒を鎮めろ!と説教する。
仏教思想を背景に演じているが,実は,演劇そのものは西洋演劇の手法にちがいない。出演者に,生野和人という名があった。彼は,数年前,イプセンでクロクスタをやっていた。つまり,イプセン的な役柄が合う役者がそこにいたのだ。
本田劇場の中で一番遅れてできた劇場は,小さくて狭かった。そこに,この人気の演劇を観るために,たいへんな数の人間が押し寄せた。たぶん,ハッピーエンドにあきたひとたちには,人間のゆがんだ世界が納得できるのだろう。
非常に,特異な演劇だと思うが,一度は観ておくのも良いと思った。仏教に近づくのが,このような形で良いとは思わない。というのも,ここに出て来る般若心経は,どうも口先ばかりのものに思えるのだ。
彼の妻は,アンタには,仏教があっていいワネ,あたしにも何かそんなものがあったらいい。アンタは,仏教でもなんでも,やっていればいい・・と毒ずく。本来の仏教者は,もっと人から尊敬され,信頼されているべきだと思いたい。
満足度★★★★
無題1478(15-126)
14:00の回(晴)。
13:25会場着、受付始まっていました、13:33開場。最前列は座椅子、薄暗い舞台には樹木が絡み合ったような影、天井にも葉が伸びています
「地獄篇 ―賽の河原―(2014/1@王子)」からで3作目です。Islandの津金さんは、先日、「板橋でカフェやってます。(2015/4@板橋)」を観たばかり、本作では真逆のキャラクター。
佐々木さんは「四の五の言わずに恋しろリーマン!(2013/6@BASE THEATER)」、山本さんは物凄くアクが強いキャラクターで初めてかなと思っていたのですが、帰宅して確認するとなーんと「ヒガンノウタ(2015/3@BASE)」(関西弁バージョン)で観ていました。そういえば押しの強さは共通かも。
島田さんは直近ですと「In The PLAYROOM(2014/10@ミラクル)」、いつも満身創痍(!)。
14:00前説(アナウンス、105分)、14:06開演(読経)~15:51終演。
限られた資源(労働、食糧)の中で生き抜くためのルール=社会性に対する問いは、「トロッコ問題」に近いのかもしれませんが、依然として「社会」のなかに留まっているため、人知を超えた恐怖という点は前作より薄まったような印象を受けました。
「里長」役の吉田さんは異様な雰囲気を身に纏った不思議な役どころでした。
自ら定めた理のゆえに滅びゆく関係、絶対のものと思い込むことが生きるために必要なことであったはずであるのに。
満足度★★★★★
人の業とは
貧しくても幸せだったはずの村が少しづつ崩壊しついには・・・
京極夏彦が描く世界を舞台で見ているようだった。
特に幸平演じる島田さんの表情がだんだんと狂気に変化していく様が凄く、最後まで目が離せなかった。
個人的に貞蔵役の山本さんがとても素敵だったので、おどろおどろしい話なのについ見とれてしまいました。
満足度★★★★
救いようのない人間の業を
この舞台で見せつけられた。おそらく100年ほど前、日本の交通網が徐々に発展していく中で、周囲から取り残された木曽三沢山の山間、貧しい巴里で行われる助役選び。
「欲望、怒り、愚かな心」の三毒を、助役を巡って争う三人の男達に絡めた脚本は良くできているし、役者もまた表現力に溢れている。
ただ舞台背景から難しいかも知れないが最後まで救いのない話とせずに、希望や人間愛を感じさせる展開が欲しかった。
満足度★★★★★
すごかった…
お芝居を見るのが久々だったのに、
この劇団を選んでしまったのは幸か不幸か…。
もちろん演出的な怖さもあったけど、
人間の愚かさとかそういったものが、怖くて悲しい。
役者さんたちの熱が入った演技にひきこまれました。
満足度★★★★
ごろん
独特で迷いのない世界観は主宰で作・演出の望月氏の
ぶれないスタンスによるものだと思う。
設定も展開も暗澹とした物語だが、全ては人間の慾から生じたもので
その普遍性が共感を呼ぶ。
スピーディーな出ハケや的確な照明でとても解り易く進行する。
過酷な掟と里を束ねる浅水の因縁や葛藤が描かれたら
さらに奥行きが出たかと思う。
浅水のキャラが魅力的なだけに、もっと彼女のことが知りたいと思わせる。
島田雅之さん、山本佳希さんが強く印象に残る。
冒頭の読経が厳かで大変良かった。ありがたや。
満足度★★★★
三毒
雰囲気がよく出ており、また、場面の切り替わりの演出が素晴らしかったです。効果音が絶妙でした。三人の男と仏教三毒が絡み合う様を、充分に堪能しました。
満足度★★★★
恐怖と解りやすさは反比例する?
あれ、効果音が変わったな、とすぐ感じた。綺麗な音でした~。もはや音楽。ストーリーが追いやすく、その分、恐怖感が薄まった気がした。良庵の立ち位置が何だかもどかしい。この人の読経はなかなか見事でしたが、仏教色を濃厚に感じさせてくれるけれど、ストーリーの展開に絡んでいるようないないような、中途半端な感じが抜けない。最後まで、彼がどこかで重要な所にからんできて、それが恐怖を増幅するのだろうと勝手に想像していたのですが・・・。印象的な登場であっただけに何だか残念な感じに終わった。しかし、恐怖というものは、何だかよくわからないところに最も強く感じられるものなんですね。それと、仏教というものはかなり理知的・哲学的なもので、こうした不条理な因習などとは少しそりが合わない感じ。
満足度★★★★
和製「セブン」?
金田一耕助が呼ばれて訪れるような地方の村で起こる惨劇…。
人の「業」がねっとり(べっとり?(笑))と渦巻いて各人物はそれらに抗えず押し流されて行くが如し。
当日パンフレットに記載され、劇中でも語られる仏教の「三毒(貪・瞋・癡)」がモチーフとして活かされているあたりは和製「セブン」か?
あるいは昭和50年代の松竹映画?
ラストシーンも衝撃的だったなぁ。
満足度★★★★
無明長夜
山村の持つ閉鎖性と因習をモチーフにした、徹頭徹尾沈鬱にさせる空気感はさすが。
その展開や音響には雑な印象を多少抱くもこれまでより観やすい仕上がり。
ベタなんだけれど癖になる、これはこれでエンターテインメントの一つの形か。
*
整理券未配布、開場時の誘導を全く行わない等、スタッフワークはひどかった。
(毎年200数十本観る中で、対応のまずさは間違いなく本年度ワーストワン)