これまでCoRichでは公演情報のシェアをはじめ、全国の小劇場団体を対象に開催するCoRich舞台芸術まつり!などを通じ、地域を拠点とする団体とさまざまな交流を持ってきました。そんな豊かな出会いや関わりを活かして、Keicobaでは、全国各地で活躍する表現者へのオリジナル連載【出張インタビュー】シリーズを始動。日本の演劇シーンをたしかに彩る団体や劇作家、俳優などアーティストのみなさんにこれまでとこれから、そして現在地についてお伺いしていきます。
Vol.3は、北海道・札幌市を拠点に活動するポケット企画より、主宰で劇作家の三瓶竜大さんが登場。「ポケットに入れて持ち運べる演劇」をテーマに2018年に旗揚げし、第6回全国学生演劇祭やウイングカップ 2022年度で最優秀賞を受賞。2024年上演の『さるヒト、いるヒト、くる』では、第14回せんがわ劇場演劇コンクール最終審査対象となるほか、CoRich舞台芸術まつり! 2024春制作賞も受賞し、全国区での活躍にも注目が集まっています。高校時代の同級生たちと続ける演劇活動や地元・札幌への思い、旭川銀座小劇場シアターロビン柿落とし公演参加作品『すまふ』の創作についてたっぷりお話を聞きました。

モテたくて演劇部に入部? 予定外の観劇でコメディに魅せられ…
―まずは、三瓶さんが演劇を始めたきっかけからお聞かせ下さい。
同世代の餓鬼の断食の川村くんの回を読んで、恋愛がきっかけだったという話がすごく興味深かったのですが、実は僕も近しい理由で…。なんというか、端的に言うと、モテたかったんですよね(笑)。高校では演劇部へ入部希望を出している女子がクラスに多かったので、「ここでならモテられるかも」という邪な気持ちがありました。川村くんの赤裸々な答えに背中を押され、正直にお話をしてみました(笑)。
―早速赤裸々にお話いただき、ありがとうございます(笑)。それまでは演劇にはとくに興味がなかったと。
中学までは野球部に所属していて、演劇に特別関心を持っていたわけではありませんでした。でも、文化祭や学習発表会みたいな催しは好きで、人前で表現をすることも抵抗なく楽しめるタイプでした。高校でも何らかの部活に入ろうと思っていたのですが、熱心に続けるつもりはなく、恋愛に限らず人と繋がる一つのきっかけのような感じで入りました。でも、演劇部入部と札幌演劇シーズンをきっかけに劇場へ足を運ぶようになって、そこで観たパインソーっていう劇団に衝撃を受けたんですよね。山田マサルさんが代表を務める劇団の人間の業や欲望をテーマにしたお芝居で、大人がくだらない下ネタを真剣に連呼する、みたいなコミカルさにも惹かれて…。その日は元々別の演劇を観る予定だったんですけど、劇場を間違ってしまったんですよ。それで当初観る予定になかったパインソーと出会ったので、不思議な運命を感じます。
―縁を感じるお話です。これは北海道という土地の一つの特徴でもあるかと思うのですが、とにかく広いじゃないですか。高校演劇においても地区分がすごく多そうですよね。
僕の高校の地区は石狩支部エリアで、札幌周辺の都市が一つの区分になって支部大会が行われ、僕らの時代は60校ほどが参加をしていました。大会期間は6日間で、その間に他校の作品もたくさん観ましたね。コロナの時は参加校がグッと減って、大変だったと聞いています。1年生の時に地方予選に進むことができたのですが、その大会は釧路のオホーツク支部というまた別の支部で開催されて…。釧路も高校演劇の強豪校が多く、盛り上がっている印象がありますが、遠方はなかなか接点を持つことができないので、もどかしく感じていました。なので最近は自ら道内の地域を横断した公演などを企画したりしています。

左から時計回りに森大輝、ぽち、さとうともこ、まいまい、松田知優、藤川駿佑、吉田侑樹、さいとうあすか、泰地輝、三瓶竜大(真ん中)
「別に地域は寝てねえよ」 この土地で演劇を続けるということ
―そうした北海道の地域性みたいなものを三瓶さんは劇作家としてどんなふうに捉えていらっしゃるのでしょうか?
2024年上演の『さるヒト、いるヒト、くる』でも北海道という土地やその歴史をテーマに劇作をしたのですが、関われば関わるほど地域によって固有の背景や歴史を背負っていると感じます。本州から開拓のために人がやってきて、それぞれの土地で文化が作られていった経緯があるので、道内でも地域によって全然文化が違うんですよね。また、北海道では本州のことを「内地」と言ったりするのですが、そこにも北海道という土地固有の視点や差別・被差別といった歴史があると感じます。同時に、演劇の歴史や文化においてはその差を興味深く感じることもあり、ある地域では歌舞伎、また別の地域では人形浄瑠璃が盛んであったりして、古典芸能から現代劇に繋がるまでにルーツが複数あることを面白くも感じています。
―そうした背景から、劇団公演だけでなく、地域を横断した公演を企画したり、交流の場を設ける活動もされていると。
道内で演劇を続けている同世代の人たちはそうした歴史をどう思っているのか。そこを知るために活動している部分も大きいです。これは東京にも言えることだと思うのですが、札幌が都市部であることから「自分たちが文化の中心だと思いがち」ということにも気付かされます。僕たちが作ったものを他地域に持っていくことは可能ですが、そこで地域間をほぐすような深い交流が生まれるかっていうと、やっぱり一筋縄ではいかないところもあって…。もちろん、演劇を通じたコミュニケーションの広がりは生まれるのですが、互いの地域やその歴史を理解し合えたかというと、難しいところなんですよね。だからこそ、僕は「その土地でフィールドワークを重ね、まず一つの作品にしたい」という思いがあります。なんというか、「札幌から持ち出す」という視点ではなく、「札幌に持ち帰ってくる」っていうことがしたいと思っているんですよね。

―課題も含め、とても重要な視点からお話をしていただいていると感じます。
北海道に限らず、「地域おこし協力隊」として都市部から地域に若者が赴く試みってあるじゃないですか。僕がそうした活動の中で実際に言われてハッとしたのが「別に地域は寝てねえよ」って言葉だったんですよね。都市部から人がズカズカと行って、数時間のインタビューで「どんな生活してるんですか?」「どんな歴史があるんですか?」って聞きに行くだけではただの消費なのかもしれない。そんな風に気付かされた一言でした。強い線引きをするのではなく、その場でまず過ごしてみるだとか、一緒にご飯を食べたりすることから始めたいと考えを改めるようになって…。北海道でそうした活動をするには、やはり他の都道府県と比べて時間と距離の問題はすごくあるなと思いますが、どうにか続けていけたらと思っています。
―私も地域の劇団や作家さんの作品について話している時に「東京公演をやってほしい」と口にしてしまったことがあって…。取材を重ねる中で、自ら赴くということを考えなかった自分を恥じましたし、東京は必ずしも「進出先」ではないということも強く感じました。三瓶さんのお話は東京都心部で生活する私にとっても、身につまれるお話です。
今後のビジョンにも繋がることなのですが、僕にとっては、北海道という土地がまだまだ面白いんですよね。興味深い生活や文化がいろんなところで行われているし、自分がインプットしたものを「消費」にはならないようにきちんとアプトプットする必要性も感じているんです。その必要性が感じられるうちはこの土地で作品を作り続けたい。「全国区に作品を届けたい」という思いはもちろんありますが、東京に拠点に活動するビジョンを考えたことはありません。自分にとっては、ライフスタイルの中に演劇があり、それをできるだけ続けていきたいという気持ちがある。シンプルにそれだけなんですよね。

観客からの率直な批評 全国区での活動で感じたこと
―「全国区に作品を届けたい」というお言葉も出ましたが、近年はさまざまな演劇祭で最終候補となったり、受賞をされたりと話題も集めていらっしゃいます。
北海道で活動を続けていく上で、それでも外に向けて発信したいという思いは常にあるんですよね。劇団の発展だけでなく、内向きにやっているだけだと聞こえてこない声を拾いに行く行為としても必要だと感じていて…。第2回公演の時、韓国からの観光客の方がフラッと観に来て下さって、いたく感動した様子で「メールを送りたいからメアドを教えてくれ」って言われたんですけど、いざメールを開いたらめちゃめちゃダメ出しだったんですよ。「ノンバーバルな表現をもっと磨くべきだ」「君は何のために演劇をやってるんだ!」と結構突っ込んで書いてあって…。でも、僕はそれが嬉しかったし、すごく勉強になったんですよね。これぞ演劇の醍醐味だと思いましたし、文化ってそもそもそういうところが出発点なのだ、と痛感しました。
―なるほど。
一方で、東京には東京の地域性があって、札幌には札幌の地域性があることもまた事実で。それらを互いに完全に理解し合うことは難しいけれど、同じ土俵で演劇をやっていくために自分たちの表現やその伝え方は磨き続けていきたいし、そういう意味で「上手くならないと!」という気持ちもあります。自分たちのやりたい表現は変えず、飛距離をどんどん伸ばしていきたい。そんな風に考えています。

旭川で柿落とし公演に参加仕事と演劇、そして『すまふ』ということ
―今日の稽古からもそうした思いはすごく伝わってきました。また、共通の言語や認識も多いように感じられました。意思疎通のスムーズさはポケット企画の一つの強みなのではないでしょうか?
たしかに、僕たちはコミュニケーション面においてはさほど苦労はしていないかもしれません。というのも、ポケット企画の母体は僕が所属していた北海学園大学演劇研究会なのですが、多くのメンバーは高校時代からの仲なんですよ。高校演劇を通じて知り合った先輩や、同じ高校の別コースに通っていた同級生が美術や衣装を担当してくれていたりもします。卒業をしてみんなが芸術分野から離れていくのが寂しくて、そのための場所として劇団を作ったというか、初期衝動としてはそれが一番大きかった気がしますね。進路に悩んだ時に、札幌に残ったり、札幌に帰る理由にしてもらえたら、という思いもありました。なので、みんなでものづくりを続けていくためのプラットフォームや居場所として劇団を続けていけたらと思っています。

―今日もみなさんそれぞれ退勤後にこうして稽古場に集っていらっしゃいますよね。社会人劇団としてはどんなビジョンをお持ちなのでしょうか?
演劇界では「演劇が流行っているか否か」の論争が巻き起こったりしていますが、アフター5や週末を活用して創作や表現を続けている僕たちにとって、演劇は日常でもあるんです。同時に、流行はさておき、「演劇を盛り上げたい」っていう気持ちは常にあって…。作品のクオリティを突き詰めていきたいですし、仕事をしながらでも、生活の中でも演劇はできるということを信じて続けていきたいです。メンバーがいなければ僕の今の活動は叶っていない。そうしたことも忘れずにいたいですね。

―今日の稽古は、まもなく開幕する旭川銀座小劇場シアターロビン柿落とし公演参加作品『すまふ』に向けたものです。本作にはどんな思いを込めているのでしょうか?
僕は、演劇を通じて人の「ままならなさ」を描きたいと思っています。対立構造にするのではなく、言葉にできない一個人の心の揺らぎや迷いなど、そういうものをまず身体と言葉で表現したいんですよね。その中に北海道の歴史があったり、地域や社会の問題があったりするというか…。例えば、「戦争反対」と言うために演劇を作ることもできるけれど、それ自体が目的なのだとしたら、デモに行った方がいいかもしれない。だから、演劇という装置を用いるのであれば、まずは人やその営みを描きたいという思いがあるんです。僕が「戦争反対」と思いながら人々の生活を描けば、自ずとそういうものになるはず、とも思っています。『すまふ』はゴミ捨てを巡る話ですが、それもやはり人々の生活の話なのだと思います。

―稽古場ではどんなことを大切にしていますか?
稽古場でも「こういう人いるよね」「この間こういうことがあって…」みたいな話をよくしていますね。普段の生活ではわざわざ集って考えたりしないようなことも、演劇があるからできるし、演劇を真ん中に置いてこそ生まれる対話やコミュニケーションがある。演劇という人がいないと成り立たない芸術が僕の性には合っているのだと感じます。普通の生活じゃできないようなことが、演劇を理由にできる。演劇が何かへの理解を深めるきっかけになる。もちろん上演も大切だけど、やっぱりそうした過程の一つひとつがすごく楽しいと僕は思っています。

26歳の劇作家として抱く 今後の新たな挑戦と展望
―生活に根ざした劇団の設計や在り方が伺えるお話です。ちなみに、ポケット企画はポケットに入れて持ち運べる演劇が由来ですが、そこに込めた思いは?
上演だけでは終わらない、観た人が生活の中に持ち運べるような作品を作りたい、という初期衝動があり、それは今も大切にしているところです。だからかはわからないのですが、短尺な作品が多いことも特徴なのかもしれません。コンクールのレギュレーションに従っているケースも多いのですが、長尺の作品は少ない気がします。ただ、今後札幌で劇団を続けていくにあたって、長尺の作品を観客の方に届ける必要性も感じ始めていて…。昨年は柴幸男さんの戯曲『わが星』をお借りしたのですが、12月には北海道戯曲賞優秀賞を受賞された石崎竜史さんの戯曲『長い正月』をお借りして、上演させていただきます。110分という尺を自分たちなりにどう表現できるか、みんなで奮闘したいと思います。

―最後に今後の展望をお聞かせください。
今後は俳優として作品に関わる機会を減らして、ポケット企画での作家活動に集中したい、という思いがあります。劇団を大きくすることにももちろん興味はあるのですが、それよりも長く続けていくために、もっといろんなお客さんに作品を届けたいと考えているんですよね。劇団外の活動としては、応用演劇や市民の方と演劇に取り組むワークショップなどにも関心があります。札幌には民間劇場がたくさんあるのですが、市民の方に演劇をひらいていく企画や機会はまだそんなに多くなくて…。なので、将来演劇に関わる人を増やすための草の根活動として、そこに応答できるような劇作家活動ができればと思っています。劇団内での活動と外での活動、公的な自分と私的な自分の間で揺れることもあるのですが、一人の表現者として表現したいことへの興味と世間との関心に揺れながら模索を続けていけたらと思っています。

取材・文・稽古場写真/丘田ミイ子
<プロフィール>
三瓶竜大(さんぺいりゅうた)/2000年生まれ。劇作家・演出家・俳優。せんがわ劇場DELメンバー。2018年よりポケット企画の代表として、札幌を中心に道内外で公演活動を行う。創造と生活との距離感を図りながら、継続的な演劇活動を目指す。
ポケット企画/2018年より札幌を拠点に「ポケットに入れて持ち運べる演劇」をテーマに活動。日常を生きる人々のままならなさを描いた会話劇を中心に、社会問題を取り上げた作品や不条理な笑いのある作品、古典やモチーフのある作品への挑戦と、実験や研究を繰り返しながら上演を重ねる。これまでの受賞歴に、TGR札幌劇場祭2019 新人賞、第6回全国学生演劇祭最優秀賞、おうさか学生演劇祭vol.15最優秀劇団賞、ウイングカップ 2022年度 最優秀賞、CoRich舞台芸術まつり! 2024春 制作賞などがある。
<今後の予定>

*旭川銀座小劇場シアターロビン こけら落とし公演
旭川豆芝居2026 『多面体』
※ポケット企画は後半週Bグループとして6/27(土)、6/28(日)に短編新作『すまふ』を上演。
*ポケット企画 第12回公演『おもり』
2026年9月18日(金)〜21日(月)
会場:ターミナルプラザことにパトス
作・演出:三瓶竜大
出演:さとうともこ、さいとうあすか、森大輝、河野千晶、高橋咲希、吉田諒希、
横山 貴之ほか
*ポケット企画第13回公演『長い正月』
2026年12月18日(金)〜20日(日)
会場:生活支援型文化施設 コンカリーニョ
作:石崎竜史(20歳の国)
演出:三瓶竜大(ポケット企画)
出演:さとうともこ、さいとうあすか、宮ノ森しゅん、中禰颯十、河野千晶、吉田諒希ほか