忘却曲線 【満員御礼!終演いたしました。】
パンチドランカー
ひつじ座(東京都)
2009/11/27 (金) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
楽しかったです。
脚本がおもしろく、時間があっとい間でした。今回は、旗揚げ公演ということで、今後も楽しみにしています。
11月戦争とその後の6ヶ月
アロッタファジャイナ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
観てきました!
初めてのギャラリールデコでの観劇で、
初めてのアロッタファジャイナでした。
真っ暗な中での性描写は敏感にドキドキするのだなぁ
と、見えないことへの演出にハッとさせられました。
最後の料理人
味わい堂々
OFF OFFシアター(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
女性たちが元気
役者のみなさんがとにかく生き生きとして元気で
パワーをもらえる感じが好きです。
『白鳥の湖(全幕)』
牧阿佐美バレヱ団
藤沢市民会館 大ホール(神奈川県)
2009/11/28 (土) ~ 2009/11/28 (土)公演終了
満足度★★★
白鳥を見る
主演の伊藤友季子を目当てに藤沢まで。彼女を見るのはこれが初めて。良いダンサーだった。白鳥の湖の場合、オデット・オディールという正反対の役を演じ分けるのが見所なわけだけど、演じる本人の持ち味によって、淑女向き、悪女向きというのがあるのは芝居の役者の場合と同じだろう。細身の体つき、清楚な雰囲気の彼女はどちらかというとオデット向きかなと思う。いいかえれば、オディール役では悪の魅力、魔性の女っぷりがもうちょっとあればと。ただ、テクニックを見せる回転ワザなどはすごく安定感があり、安心してみていられた。
牧阿佐美バレヱ団の公演を見るのはこれが3度目くらい。これまでに見た日本のいくつかのバレエ団のなかで、踊りのテクニックではなく、芝居の演技力という意味で、マイムがいちばん下手なカンパニーではないかと思う。
白鳥の群舞のように、一糸乱れぬ動きを演じるには全員が音楽にぴったりと合わせることが必要だけど、マイムのときまで同じように音楽にぴったりと合わせるのはおかしいと思う。踊りのきっかけとして、また舞台を進行させるうえで音楽は必要かもしれないけど、マイム自体は音楽がなくてもなりたつはずだし。感情の動き、感情が生じるきっかけを音楽にすべてゆだねてしまうと、自律的に動いている感じがしないし、まるで音楽に操られているようにさえ思えてくる。
ただまあ、踊りの中にマイムが組み込まれて混然一体となっているような場合(特にヒロインの白鳥)もあるので、踊りとマイム、そんなにくっきりとすべてが区別できるわけではないのだけど。
主演の伊藤はマイムの表現力が豊かで、彼女の出ていない第1幕は退屈というか、かなり不機嫌になってしまった。上記の批判はそのまあ鬱憤晴らしです。
地方の市民会館が会場だったので、幕は上から降りてくる緞帳だった。カーテンコールというのは文字通り、横開きのカーテンがあるからそう呼ぶのだと今回あらためて気づいた。
そういえば終幕後、客席の拍手に答えて緞帳が上がったとき、主役の二人が最後に乗っていた大きな白鳥型の乗り物がまだ舞台に残っていて、裏方の人が大慌てで撤去するところだったので、客席がどっと沸いた。
乾かせないもの【御来場有難うございました】
机上風景
タイニイアリス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
ああ、何て素晴らしいんでしょ
これだから、古川の描く世界は見逃せないのです。西洋の風景が簡単に思い描く事のできる演出は劇中導入の音楽と、待つ女達の衣装、バックに干してある洗濯物だけで表現する。その情景は美しく、天を見上げれば澄み切った青空の下での女たちの想いが空中を彷徨い、やがてその感情は・・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
やがてその感情は伍長の帰還によって一変する。彼の報告で希望を失った女たちは自分の身に起きたことが、いかにおぞましく、「待つ」という少しの希望さえも無くなり、この先の長い道のりに消えない絶望を押し付けられてしまったからだ。身内の死と直面し、絶望と悲しみの感情はやがて、一人の帰還兵士とその妻への怒り、妬み、嫉みとなって攻撃してしまう。
その感情は深い亀裂のような恐怖と絶望と屈辱の混じった表情でもって、一組の夫婦を追い詰めてしまい、双方の感情はもはや拭い去ることが出来ない烙印が自分たちの上に刻み込まれたことを思い知るのだった。一組の夫婦はこの地に居場所が無くなりいたたまれなくなって、除隊を決める。
一方で夫・ビン軍曹の死を報告された妻は自害してしまう。残された妻たちは、大切な人を待つ必要が無くなったことから、陸軍に志願して前線に出て戦いたいと言い出し、彼女らの感情はぶつかり合う。そんな折、ビン軍曹がひょっこり帰還する。
この世の不条理と己の身の上に押された烙印の深さを思い知らされた舞台だった。待つ女たちの感情と心理描写をさりげなく深く訴えた作品だったと思う。ほんと、素晴らしい!
そして、古川大輔って、セクシーだよね。あの尋常じゃないセクシーさはどこから発汗されるのか・・笑
ローザス「ツァイトゥング Zeitung」
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2009/11/27 (金) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
アフタートークは聞かなかった
映像も含めて、これまでに見たローザスの作品の中ではかなり好きなほう。
上演時間は2時間弱。開演前はずいぶん長いと思ったが、始まってからはあまり気にならなかった。
ネタバレBOX
出演者は9人。国籍が多彩で、その点では今年亡くなったピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団を連想させる。ただし、ヴッパタール舞踊団のメンバーよりもこちらのほうがずっと踊れる人が揃っている感じ。
出演者の中では古株といっていい池田扶美代が唯一の日本人ダンサー。一人だけハイヒールの赤い靴を履いていて(他のダンサーは素足)、動きの面では若いダンサーとの競合をはなから避けているようだった。ダンサーが群れ集う場面では、素足の中にハイヒールが混じっているのでヒヤヒヤした。踊る凶器というか、彼女はローザスの秘密兵器だった。顔立ちがニブロールの矢内原美邦に似ていると感じるのは私だけだろうか。ついでにいうと、ローザスの韓国人ダンサーであるスーヨン・ヨウンは、ヴッパタール舞踊団の日本人ダンサー、瀬山亜津咲になんとなく似ている気がする。
舞台の下手奥にはピアノが一台。立て看板ふうの舞台装置がいくつか後ろ向きのまま三方の壁際に間隔をあけて並んでいる。座った席が最前列だったので、見上げると高い天井に組まれている照明器具設置用の骨組みが複雑に入り組んでいるのが見える。そして舞台の両端に置かれたいくつかの椅子。全体としてはダンスの稽古場のような雰囲気が感じられた。音楽はアラン・フランコという人がピアノを演奏したほか、録音も使っていた。バッハは何曲か聞いたことがあるが、シェーンベルクは名前だけ、ウェーベルンは名前も知らなかった。聞いていてわかったのは、クラシックと現代音楽がともに使われていて、ダンスといっしょに聞くぶんにはまったく抵抗がないということ。
ダンス作品で使われる音楽は、踊りの伴奏だったり、作品の雰囲気を盛り上げるBGMだったりすることが多いと思うが、一部の振付家は音楽をもっと積極的に聞き込んでいて、ダンスの振付と音楽の関係もより密接なものになっている。いってみれば、聴覚的な刺激である音楽をダンスによって視覚化していると感じられる。ジョージ・バランシンやナチョ・ドゥアトの振付がそうだと思うし、ローザスの振付家であるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの作品にも同じことがいえるのではないだろうか。
ダンスを通して音楽を見ている感じ。それさえあれば、ドラマ的なものを別に想像しなくても最後まで退屈せずに見ていられる。
劇場でもらったプログラムを見ると、即興も行われているらしいが、まったく気づかなかった。ただ、コンタクトがほとんどないなかで、ロシア出身の男女が終盤で猛烈に絡み合っていたところがコンタクト・インプロビゼーションぽいかなと感じたくらい。最前列の座席だとソロダンスの場合はともかく、複数のダンサーが踊るときには見づらくなったりするものだが、各ダンサーのソロも用意されていたので充分に満足だった。
序盤で色付きの紐を使って距離を測るみたいな動きがあったり、大勢が舞台上をわらわらとあちこちへ移動するだけという場面もあったが、そのどちらもちゃんと音楽と連携しているのがわかった。
最後の料理人
味わい堂々
OFF OFFシアター(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
満足度★★★
毎度お馴染み
荒船泰廣さんの映像、物語の内容を汲み取るセンスがいつも良くて今回も楽しませていただきました。芝居は店長である「おかか」の存在を強くし過ぎないで控えめに進み、7人の居場所がきちんとある感じ。ゆったりした時間が長く感じたかな。以前のお試し公演でやった役柄が前半登場します。おかかさん、愛おしい。
我が名はレギオン
演劇実験室∴紅王国
ザ・ポケット(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
ヘヴィー級の手応え
ミステリーとして見せてたら、失敗していたと思う。だって結末、みんな知ってるもの。
そうではなく、観客みんなが事件を知っているという前提で書き、それでなお引きつけた。
160分という長さが気にならない力作。
ネタバレBOX
劇団で女優を目指す妹が、医師を目指す兄によって殺されたあの事件を下敷きにしている。だがこちらの作品では、「使徒」を名乗るシリアル・キラーは医師ではなく、まさに警察官のキャリアを目指している。
劇中で言及されるヱヴァをはじめ、さまざまな映画を想起させながら、物語は着地点めがけて突き進む。
主張する作品ではなく、問いかける作品だった。
結果的に160分は長いが、上演中は引き込まれ、時を忘れてのめり込んだ。
乾かせないもの【御来場有難うございました】
机上風景
タイニイアリス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
号泣
とにかく泣きました。
戦争は自分にとって遠いものだと思っていたけれど、待つ女たちを通してこんなに感情移入できるとは思ってもみませんでした。
素晴らしい作品。
ネタバレBOX
日常から突如訪れる悲劇。
本当に悲劇。
夫たちの死亡報告を聞き号泣する女たち。
彼女たちの前で泣くまいと必死に堪え、何とか希望の道を探そうとするキリヤ。
その対比に号泣でした。
自分がもしこの立場になったら・・・やっぱり泣くことしか出来ない。
泣きまくることしか出来ない女、泣いちゃいけない女。
待つ身は辛いです。
最後キリヤの夫の死亡通知が届いたシーンでまたさらに号泣。
本当に素晴らしい作品でした。
高き彼物
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2009/11/18 (水) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
秀逸
何かしらの演劇賞にはノミネートされ、、多分受賞するかな。
SISTERSほどドロドロせず、笑いにあふれつつ、
シンミリとした演出もしつこさ無く、
作品も役者も良いし、
じんわり良い雰囲気を作り出してます。
再演希望!
最後の料理人
味わい堂々
OFF OFFシアター(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
満足度★★★★
実は自然な感覚
人物の描き方がとてもしっかりしていて、
核心が無駄なく豊かに捉えられています。
そのパーツで築かれた世界が
自然な重さで降りてくる
観ていてそのままに引きこまれてしまいました。
ネタバレBOX
要所がしっかりとしているお芝居で、
よしんば多重構造的な部分があっても
すっと観る側に負荷なく伝わってきます。
登場人物がうまくパターン化されているので
風通しがすごくよいのです。
視点がキチンと固定されていていることが
物語をしっかりと安定させていていたように思います。
小説の登場人物というフィルターが効いていて
その喫茶店で時をすごす女性たちが、
作り手が自然体で見えている感覚で
描かれている。
だから、終盤、観客が物語を俯瞰する場面、
とても、ナチュラルに
作り手が表現しようとする感覚が
受け渡されてくるのです。
それぞれの役者たちが自らの役割を
豊かに演じきっていて・・・。
人物の背景がよく見えなくても
薄っぺらくなっていない・・・。
歌やダンスなども、気持ちよく決まって
感覚にふくらみが生まれて・・・。
観終わって、その質感を自然に羽織らせてもらったような感覚が、
とても印象的でした。
アジア舞台芸術祭2009東京【国際共同制作】
APAF-アジア舞台芸術人材育成部門
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/27 (金)公演終了
【《ハノイ》タンロン水上人形劇団】伝統芸能プラス
予約なしの当日券で観劇。
地下1階の広場に亀の形をした池が作られており、そこが舞台。
観客は立ってそれを取り囲むようにして観劇する。
いわゆる古典的な伝統芸能の上演かと思っていたら、少々違っていた。
ネタバレBOX
水上人形劇は、水の上を舞台として、池の後ろにすだれを下げそこから操演する。
いくつかのパートに分けられ、最初は、竜2頭が水を吐きながら泳ぐ、次は、極彩色の鳥のつがいに卵が生まれ、ひなが孵る話。
そして、子供たちが相撲をしていると、段々大きな子どもが現れ相撲に勝っていく。そこへ最初にいた子どもによく似た子が現れ、大きくて強い子どもに勝ってしまう。その子は、カッパに似た妖怪のような者だった。
と、ここまでは、水上演劇なのだが、突然観客側から人が現れる。
スーツにネクタイという男装の女性で、トランクを手に人類の進歩・進化について語る。その声を聞き、水の中から先ほどのカッパが現れる(人間の俳優)。
彼に、言葉と衣服と食べ物(マック)を与える。彼は、水の中の仲間、エビ、カニ、魚たちが止めるにもかかわらず、それにつられて水から出てくる。
そして、水の仲間たちも一緒に連れていこうとするが、彼らは水から出すと動かなくなってしまう。
彼は、与えられたモノを戻し、仲間と水の中へ帰っていく。
ラストは極彩色の動物たちが喜ぶ。
というストーリー。
実にわかりやすい。
水上演劇のほうの台詞はすべてベトナム語なので、実際は何を言っているのかまったくわからないのだが、ストーリーは追える。
20分の上演時間だし、スタンディングで観るには丁度いいと思う。
舞台となる池は見下ろす位置なので、後ろだと観にくいかもしれないが、前だと水がかかってしまうかもしれない。
星を付ける感じではないので付けないでおく。
アジア舞台芸術祭2009東京【国際共同制作】
APAF-アジア舞台芸術人材育成部門
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/27 (金)公演終了
満足度★★
【《台北》世紀當代舞團】しなやかでのびやか
台北の世紀當代舞團と矢内原美邦さんが組んで上演した40分の中編作品。
当方が内容をつかみそこねたか・・・残念。
ネタバレBOX
台北のイマを映し出すようなクラブ(語尾が上がるほうのクラブ)が舞台。
数脚の椅子と少し高い場所にたくさんのミラーボールで飾られたDJブース、そして背の高い鏡、さらに飲み物が置いてある小さなカウンターというシンプルな舞台装置。
ビートが効いた音楽に乗り、数人の男女が踊る。
そして、たどたどしい日本語で「1人で来た」と告げる。
台北の夜の街や市場の風景が、舞台に降りて来たスクリーンに大きく映し出される。
このスクリーンは、舞台の影を映し出したり、字幕用のスクリーンにもなる。
また、舞台から客席に降りて、観客も踊らせるような演出もある。
ダンスと台詞、そして映像が散文詩のような世界を織り上げる。
都会の孤独、なのかと思ったのだが、男女間に関する孤独と言ってもいいようだ。
舞台で繰り広げられるのは、(たぶん)男女間についてのみなのだ。
ダンスは延々そんな感じであり、ダンスそのものは、しなやかできれいな動きではあったが、もうひとつ内容的な深みを感じなかった。
台北の市場の様子(夜?)や町中で運動する人々の姿が映像で映されるのだが、その関係がイマイチわからなかった。
どうも消化不良。
中ホールの1階のみであったが、わざわざ台北から来た出演者に申し訳のないほどのガラガラぶり。
そもそも告知の方法・時期に問題があるのではないだろうか。
無料なのに。
フォト・ロマンス(ラビア・ムルエ、リナ・サーネー)
フェスティバル/トーキョー実行委員会
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
「創作とは何か」と「レバノンの現状」を静かに語る
レバノンの現状と、さらに創作に対するメッセージが込められていた。
オリジナルの映画作品を下敷きにし、それを新たな作品に取り込みつつ、オリジナルにあった骨格をうまく利用するということで「創作」についての考察を、さらに再構築によって生まれつつある作品内容そのものには「レバノンの現状」を織り込んでいくという舞台だった。
ネタバレBOX
イタリア映画『特別な一日』の設定や台詞を使い、新たな作品を再構築する、という企画を、企画の段階でレバノンの検閲官にプレゼンテーションするという内容。
しかも、それを制作するのは、今回の舞台を作り上げた3人という設定であり、リナ・サーネーとシャルベル・ハベールは、自分の役をそれぞれ自らが演じ、プレゼンの場所には来ていない設定のラビア・ムルエは、検閲官を演じるという複層的な構成になっている。
プレゼンは、モニターに作品内容を示す写真を投影し、リナが脚本を読み上げ、作品の意図を説明し、シャルベルが生演奏で音楽を付けていく。
検察官は問題になりそうな個所を指摘し、リナはそれ対してさらに意図と理由を説明する。
検察官は、徐々に作品に取り込まれていき、プレゼンに協力する。最後は、自ら演奏に加わってしまうのだ。
映像を見せ、それを言葉で説明するというものなので、演劇的な要素は低い。
しかし、映像作品というわけではなく、それを説明して見せるのに、「検閲」という手法を使うところで、内容への指摘、その反証などが無理なく使われ、「創作」や「レバノンの現状」という2つのテーマが浮き彫りになっていく。
舞台で演じられる、検閲官と制作者のやりとりが「演劇的」な部分なのだが、プレゼンされる作品の内容そのものも、とても重要である。
プレゼンする新しい作品は、レバノンのベイルートが舞台となっている。もとになった映画ではローマが舞台で、ヒトラーのイタリア訪問パレードに町中の人々が参加するという設定であり、この舞台中の作品では、レバノンにある2つの政党のデモに町中の人が参加するという設定になっていた。
パレードやデモの熱狂は遠くで行われており、誰もいなくなりひっそりとした街の中に残された女と男が出会うという「ロマンス」的な物語がその中心となる。
映画のほうはイタリア映画らしいしっとりとした情感があるもので(あまりよく覚えていないが・笑)、舞台での作品は、そのロマンス部分(2人に何かが直接的に起きるような意味のロマンスではなく、出会いによって心が少し動くという意味のロマンスではないかと思うが)を少し残しつつも、レバノンの現状を静かに語る。
検閲官に作品内容を説明しつつも、「作品を創作する」ということは、実は「かつてあった作品の再構築と引用にすぎない」というメッセージが繰り返し語られる。
この舞台でプレゼンされる作品がまさにそれであり、あえてそうすることで新たな作品を生み出すことができるのかどうかということを、実際にわれわれ観客に提示しているのだ。
それは作品を創る側としては、挑戦的なテーマであり、自らも血を流すことになるかもしれないという諸刃の刃ともなる。
「創作とは何か」を自ら考えてみようとする作品なのだろう。
そういう「作品を作り上げる」という行為、「創作」について述べているだけでなく、作品の内容で語られるものについても興味深いものがある。
それは、例えば、現在のレバノンでの女性の立場やあり方、それは、戦時中のイタリアの女性のそれにダブってみえるし、ファシスト党が台頭していたイタリアと、この舞台の作者が語る、レバノンにあるファシスト的な要素もダブらせてある。
ということは、自国の政治活動り一部をファシズムと重ね合わせていることであり、レバノンの情勢はよく知らないが、とても怖いことではないかとも思う。
そういう重ね方が面白く、かつ刺激的でさえある。
レバノンの現状は、とても複雑怪奇で、一言では言えないような状況のようだ。宗教や宗教の中でも派や政治的な信条、その他いろいろな要素で分断混乱しているように見え、語られる内容はとても重いものがある。
デモを行う2つの大きな政党のことさえ、この作品を観るまでは知らなかったのだから。
新たにつくられる作品そのものの内容についても、日常生活に疲弊した女が男と出会うことによって、何かが変わっていく、心の中にさざ波が立つということが、静かに示されるのだが、それはとてもドラマチックなことであった。
実際にプレゼンされる作品は、観客のわれわれにも検閲官と同時にプレゼンされることになるのだが、男女の心の動きと、内容がはらむテーマの具象化(例えば、永遠に続くループだったり、家族の姿は一切見えないなど)がとても実験的で面白く、これが実際に映画になったとしたら、とても面白いものになるのだろうと予感させる。
と言っても、シネコンでロードショーされるような作品ではなく、ユーロスペースとかシアターイメージフォーラム的な劇場で単館ロードショーされるように作品であろうが。
イタリア映画『特別な一日』もまた観たくなった。
ちなみに生演奏される音楽は、エレキギターが中心で、ループを使う感じがリシャール・ピナスあたりを彷彿とさせ、また、ノイズ的な使い方やピアノや鍵盤ハーモニカとの合奏も心地よく、とてもいい雰囲気を持っていた。
乾かせないもの【御来場有難うございました】
机上風景
タイニイアリス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★
残された者たちの、脆い日常。
派手な戦闘シーンで、戦争を見せるのではなく。舞台の天井が、澄み切った青空に感じられる日常の中で、辛く重い戦争の現実を表現した秀作でした。
ネタバレBOX
妙に耳に残るBGMだと思っていたら、オリジナルでしたのね。
虫の声のBGMとあいまって、記憶に残りました。
情報一つで、一喜一憂する皆が。
微笑ましくも悲しい話への伏線になってました。
ユエの死に方も、帰還兵の登場シーンにも、
洗濯物が上手な使われ方していました。うまいです。
ラストの戦地へ赴こうとするシーンと、
自分の旦那の死亡通知見せて号泣するまでで。
一気に感情が揺さぶられました。
ひょっこり帰ってきた、ユエの夫になぞり、
死亡通知が来るまでは、生きている事を信じる事にして。
日常に戻りつつ、その日常に影を落とすヘリコプターの音が、
上手に劇を閉めましたね。見事な演出でした。
明るい洗濯シーンだけ見てると、ジブリアニメみたいで。
役者さんも上手に演じてたなぁって思いましたが。
その分、後半の陰りが引き立ちました。
白黒はっきりする事が、全て良い事ではなく。
戦争と言うものは、ほんとによくない事なのだ
というメッセージが、心に強く届きました。
モスラを待って
あうるすぽっと
あうるすぽっと(東京都)
2009/11/27 (金) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
アタシ帰ります
劇中、エキストラ役者が連発するこの台詞を何度叫んで退場したかったことか!
たぶん、後1ヶ月あるけれど、私の今年度ワースト1舞台だろうと予測できます。
せっかく、キラ星のように気のきいた台詞を散りばめながら、これでもかという蛇足台詞の追い討ちで、作者自らそれを台無しにしてしまう稚拙な脚本に、心底がっかりしました。
これが、初演で文化庁の芸術祭優秀賞を受賞したなんて!私には、その審査基準が理解できません。
こんな場所でそんな会話しないでしょうという、あまりにもリアリティのない情況設定にも辟易。
上質なハートウオーミングコメディになりそうな要素をたくさん持っているのに、人物造型の甘さが全てをぶち壊し。1秒も感情移入できない舞台に唖然でした。
昨年の賞を総なめにした「焼肉ドラゴン」を見逃したので、この作家の作品を非常に楽しみにしていたのに、期待を踏みにじられた思いです。
ただ、舞台セットはとても洒落ていたし、使い走りのスタッフ役の役者さんがとても、好演されていたので、それで、救われた気がします。
最後の、父親からの電話内容が私の予想的中で、一度だけ苦笑はしましたが、他の観客のように、笑い声を立てるなんて、あり得ない状況でした。
本当に、残念無念!
11月戦争とその後の6ヶ月
アロッタファジャイナ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
松枝佳紀さんの脚本演出に・・・異論反論オブジェクション?
テーマを忘れて楽しめる作品にはなっていない!
不要な展開はカットすれば、すっきり1時間で終わるでしょう。
小道具使いすぎ、掘り下げ場面間違い、暗転多すぎ、キリがないです!
観客には何を見せつけたいのか、煮詰まっていないのでしょうか?
半端な演劇に終わってしまったことが残念です!
役者のキャパシティを60%程度しか、引き出していないのは、雑な脚本と浅はかな演出の結果ですよ!
欲望貴族
角角ストロガのフ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
満足度★★★★
やっぱり角角ワールド
第1回公演からみさせていただいてると、その移り変わりとかスタイルの変化とかまで含めて楽しめて、こういった楽しみ方も演劇ならではかな。
今回の角角はエログロを廃して「少年犯罪」をテーマに持ってきた作品ということで作風の変化に注目してみてました。
演出手法や戯曲の構成とかは基本変わってないし、やはりスピーディーに同時多発かつ同時進行で進むフォーマットはそのままだし、劇場に大掛かりな具象美術を作るあたりもそのままに。
でも、音楽の選び方とか使い方、映像の使い方、細かい照明の使い方等、確実に進歩を感じる作品でした。
達者な役者さんたちの魅力を最大限に引き出してるところも素敵です!
ネタバレBOX
「NB法」という、未成年者の犯罪は親が代わりに刑に処されるという世界での話。
そうなると子供たちが悪い事をして親がその代わりに罰を受けて、というのがパターンかと思っていたら、むしろ子供たちの方が犯した罪の意識に苛まれて葛藤と共に生きていて、親の方が罪の意識が薄くて実はとんでもない親たちだった事がわかってゆく。
その展開が複雑な同時多発で進んで行くので理解がなかなか難しいのですが、分かってくるとこの作品で描きたい事がすっきりと見えてきて、意外とスッと中に入ってくる感じ。
父親の存在が舞台中も存在としても大きくて、役者さんがとても魅力的に演じられていたのが印象的でした。
というか、どの役者さんも魅力的なんですよねー。
小劇場であんな水槽を舞台に持ってくるだけでも大変だと思うけど、最後水槽に入った聖奈さんの存在と、それを一心不乱にデッサンする次男の姿の異様さが引き立って、面白い演出だなあと感じました。
今回はエログロを廃したということで、見やすかったです。
次回以降もこういった方向で行ってくれた方が、奇抜さよりも物語に集中できて良いと思います。
ただ、演出的にわかりづらい部分も多々あって、宗教関係の描写と三男の話が良く理解できない部分が多かったのも事実で、三男が目をくりぬかれたというのはアフタートークを聞いて初めて理解できました。。。
ルデコでやった短編は、時間的な制限と舞台装置的な制限から、無駄を排して、それでも角角の世界がしっかり作られていたので、あの方向性での本公演も見てみたいです。
白キ肌ノケモノ【満員御礼!次回は三月!】公演写真up中!
ACTOR’S TRASH ASSH
笹塚ファクトリー(東京都)
2009/11/14 (土) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★
ギリシア悲劇かシェイクスピアか(笑)
副題にある通り、この4月と7月に上演された『刻め…』の前日譚にあたる物語で、負のオーラ満載!(笑)
運命の糸に絡め取られるように悲劇的な結末に向かうさまはさながらギリシア悲劇かシェイクスピアの如し。
が、その悲劇のすぐ後に現代の母娘のエピソードで緩和するのが上手いっちゅうかズルいっちゅうか…(笑)
また、「盗っ人にも三分の理」ではないが土蜘蛛がああなったのもそもそも謂れのない差別を受けた上にあんな悲劇まで経験したから、としているのが巧い。(兄妹愛が絡んでいるので余計そう感ずるのかも?)
さらに、冒頭と終盤の外道丸のポジションが正編とカブっているのもシリーズとして◎。あの盲目の男なんて、出てきた途端に「あ、外道丸!」なんてワカっちゃうもんなぁ。
あと、3つの時制(メインパート、十数年後、現代)を組み合わせて使い分けたのも上手い…って、思い起こせば正編もそうだったっけ。骨組みは同じでありながら違った物語を紡ぐというのは正編と外伝を語るのに適したスタイルかもなぁ。
夕焼けのカナタ*アカツキの手前-2009邂逅-
SHAFT
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/11/13 (金) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
テーマがよりハッキリ見えた気がする
突然のトラブルで列車が全線運休となり、山梨県内の小さな駅で運転再開を待たされることになった人々を描いた群像劇系。
その中には強盗殺人事件を起こした者もいて…というサスペンス風味もありつつ、劇団四季の『夢から醒めた夢』や深夜ドラマ「奇妙な出来事」(←「世にも奇妙な物語」の前身)の1挿話「待合室」を連想。この系統って好きなんだなぁ。
で、3年半前の初演(@麻布 die platze)を観ており、詳細については記憶が風化していたものの、大筋や全体の構造は覚えていたので、ストーリーを追うことに気をとられた初演と違って、テーマがよりハッキリ見えた気がする。
また、映像や音楽などグレードアップされており、終盤の1シーンだけのために客席前方の天井に仕込んだ豆球(こういうのがあるから後方で観る方を選ぶのさ)には感心。