遠ざかるネバーランド
空想組曲
ザ・ポケット(東京都)
2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了
満足度★★★★
逆説的ネバーランド
ピーター・パンの物語をどう描くのだろうという興味で観に行った。想像していたのとは違っていたが、なかなか面白い芝居だった。
全体に観客満足度が高いようで、みなさんのレビューに言い尽くされている感じで、楽しく読ませていただいたせいか、自身は書きあぐねてしまった。
ほさかようは、深層心理的な世界を描くことが好きらしく、巧みである。私が若手の劇作家の力量をはかる基準のひとつとして、もし、これをメジャーな俳優の配役で、中央の劇場で上演したとしたらどうだろう、お金をとれるだろうかというのがある。その点で、ほさかようは期待できるひとりだと思う。作家としての個性はまったく違うが、20代のころの坂手洋二に将来性を感じたときと似た感覚を持った。
ネタバレBOX
「一緒に空を飛ぼうよ!」とピーター・パンは子供たちを誘う。ひところ盛んに言われた「ピーター・パン症候群」は大人になりたくないというモラトリアム現象だが、この劇のピーター・パンの「飛ぶ」も現実逃避ではあるが、大人にならないことというよりもっと深刻な、文字通り、死のダイブを意味しているらしい。終盤登場人物がそれぞれ「いずみ」を名乗って、ネバーランドは実は主人公の少女の心の中の世界であることがわかる。ともあれ、役者がみな適役で、ピーターの中村崇、小玉久仁子のタイガー・リリーなど、いかにも見た目それらしい雰囲気が出ている。小玉久仁子は「時間のムダ!ムダ!」と前回のホチキス公演の役のアテ書きの様な台詞も出てくる(笑)。作・演出家の中には脚本至上主義で「役のアテ書きは邪道」と言い切り、さほど俳優に関心を持たない人もいるが、ほさかようは日ごろからいろんな芝居での俳優さんをよく観ているのでは、と思った。これは人によって好き好きだと思うが、私は俳優の個性に関心を持つ作・演出家のほうが芝居も面白くなると思っている。
トゥートルズの二瓶拓也が「夕ご飯のハンバーグが冷めないうちに食べなさいと言ってくれることが本当のやさしさ」と訴えるところは胸が詰まった。彼は、本当に童話から抜け出したようにあどけない(笑)。台詞を言うとき、いちいちマイクを使って囁くフック船長(中田顕史郎)がおかしい(笑)。ルフィオの石黒圭一郎(ゲキバカ)など、最初のほうに倒されてしまうので、出番が少なく、もったいない気もした。少年(斎藤陽介)が最初、出てきたときはただのひねくれものかと思ったが(笑)、終盤に向けて徐々に正体をみせていく描き方も巧い。ビスカ役の横田有加は、まことに人魚らしく美しい。海賊フォガーテの尾崎宇内はアングラ芝居のときとまったく違う印象で面白いなーと思って観ていた。私がアングラ芝居で観ている俳優はなぜか、近頃、違う役どころで良さを発揮しているような気がする。若いうちからいつも同じような役どころを演じてイメージが固まってしまうよりも、機会があれば、いろんな劇団に客演していろんな役に挑戦して引き出しを増やしてほしいと思っている。実力のある俳優に対してはなおさらそう思う。
ウェンディの清水那保はCoRichでも人気があり、前から観てみたいと思っていた女優だが、台詞を言うときに首が常に前に出る姿勢の悪さが気になった。時折こういう女優を見かけるが、癖なら早く直したほうがよいと思う。母親(武藤晃子)が冒頭、絵本を読み聞かせることや、妖精のティンカーベル(これも武藤晃子)がやけにオバさんくさい理由も、だんだんわかっていく。だが、ティンカーベルは、ネタバレせずに妖精の間はもう少し妖精らしく振舞ってもよかった気もする(笑)。
主役の西内裕美の降板で脚本を一部書き直さねばならなかったようだが、それでもこれだけに仕上げたのは見事。機会があれば、本来のストーリーで再演してほしい。ズバリ書割そのもののようなセットがラストに大道具転換されるのもよく考えられていると思った。ラストで学園物になっていたのが、ちょっとガッカリしたが、これは私の個人的な好みの問題なのであしからず(笑)。
私が子供のころ、民放TVで「ディズニー・ワールド」とかいう番組があり、あるとき、ディズニー・アニメにより「人間の感情と理性」を説明的に描いた作品が放送されたことがある。「感情のカンちゃん」と「理性のりーちゃん」という子供の姿をした2つのキャラクターが人間の頭の中に棲んでおり、頭の中の自動車のハンドルをめぐってしじゅう主導権争いをしている。男性には男の子、女性には女の子の姿をしたカンちゃんとリーちゃんが棲んでいるという、子供にもわかりやすい設定に大いに感心したものだ。今回の公演を観て、そのアニメのことを思い出した。どこか共通点を感じる。
ろばの葉文庫でセット券を購入し、カラーコピーを使った美しいチケットだったが、今回受付で回収されてしまい、手元に残らなかったのが残念。予約リストにチェックを入れるだけではダメなのか。釈然としない。
凡骨タウン
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2010/02/05 (金) ~ 2010/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
木下恵介の「惜春鳥」を思わせる作品
もともと、暴力場面が多い芝居は苦手で、しかも、前作を観ていないので人間関係がよくわからない点もあったが、引き込まれ、胸を深くえぐられた。
正装し、ご馳走を並べたテーブルにつく出演俳優たちを撮影したフライヤー。一見、公演の記念写真のようだが、この物語の登場人物たちにはまったく無縁の世界なのだということが芝居を観るとわかる。逆説だけにいっそう切なくなった。
この芝居を観た直後に、名匠木下恵介の「惜春鳥」を観る機会があり、時代状況も人物設定もまったく異なる作品だが、非常に酷似したものを感じた。
「惜春鳥」は会津を舞台に幼馴染の同級生の友情と裏切り、挫折を描いた作品。この映画の中で主人公の青年が悟るのは「立場が違えば心情的に理解できる部分もあるけれど、自分は自分の生き方しかできない」ということ。木下作品は救いようのない人間関係や貧困の泥沼の中で懸命に生きる人間を描いて感動を呼ぶ。蓬莱竜太のこの作品もまた、現代の「惜春鳥」だと思った。
ネタバレBOX
劇の冒頭、早乙女がケンに語る「もしも、俺がおまえだったら、こうするという考え方はまちがってる。その人間に生まれたら、何から何まで条件は同じ。まったく同じことが周囲にも起こり、違う考え方や生き方なんてできっこない」
という意味の台詞。これが胸に突き刺さった。この台詞で始まらなければ、感情移入して観ることはできなかったかもしれない。この町に転校してきたケンは妹と祖母と3人暮らしで、ほとんど寝ている祖母の口癖は、「金持って来い、食べ物持って来い、男連れて来い」だった。たとえ盗んででも、ケンはそれを実行し、祖母は時にはケンを布団の中に引き込むこともあったという。
そういう異常な生活の中でケンは早乙女兄妹と出会い、早乙女の妹キヌ子とも互いに好意を抱くようになる。早乙女は、不良少年グループを統率し、仲間のしるしとしてからだに墨を入れることを強要。少年たちはひるむが、一番最初に刺青を施すことになったのはキヌ子はだった。キヌ子は少年たち以上に兄には絶対服従で、兄の命令で人に言えないような仕事もしてきたようだ。キヌ子はきれいな仕事(スーパーのレジ?)で稼いだお金だから、これを持って町を出るようケンに勧めるが、ケンはとどまり、仲間が離れても 早乙女に抵抗し、敗北の瞬間を迎える。回想場面も挿入されるので、前作を観ていないと時系列的にわかりにくくなるところもあった。
萩原聖人のケンは、真に迫った演技で、その説得力がこの芝居の根幹を支えている。私は萩原の舞台はこれ以前に一度しか観ていないが、そのときも妹と2人で世間から隔絶して暮らし、そこに入り込んできた男に支配される役柄だった。
千葉哲也の早乙女は不気味で迫力があって本当に怖い。古山憲太郎の演じるハルフミが足を引きずっているのは、当たり屋をやって生活してきたという設定だからだそうだ。木下恵介も「惜春鳥」や「冬の雲」でグループの中に1人足の不自由な若者を出しているので、そこも共通点を感じた。古山のもう一役、ケンの妹カナエの同棲相手ウメオが最初、同一人物なのかと思ってしまった。寡黙で暗いハルフミは適役だが、純朴なウメオも持ち味が出ていた。客演ばかり観ていて、本拠地のモダンスイマーズで古山を観るのは初めて。ウメオのユーモラスな演技にはブラボー・カンパニーでの経験が生きている気がした。キヌ子の緒川たまきは最近は舞台の仕事が多いが、やはりモダンスイマーズに客演したことのある鶴田真由と口跡や雰囲気が似ていると思った。佐古真弓はケンの妹カナエ、祖母を思わせる老婆との2役を演じ分ける。ケンを慕うナーの津村知与史は、饒舌で楽天的な演技が逆に悲しみを誘う。ケンと早乙女を結びつけたのはほんの些細なエピソードなのだが、青年が暴力団員となるきっかけというのも、頼るものなく、世間に背を向けてずっと孤独に日陰を歩いてきた若者にとって、暴力団員のわずかな温かさが胸にしみ、その道に入ってしまうのだと聞いたことを思い出させた。
孤独と貧困と暴力のやりきれない連鎖。ケンが抜け出す道はなかったものだろうか。
~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)
バナナ学園純情乙女組
インディペンデントシアターOji(東京都)
2010/03/22 (月) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★
※食べ物はたいせつに!※
バナナ学園は二度目。おはぎライブのみの方がかえって潔くよくて 心の底から楽しめました。相変わらずの脱ぎっぷりはじけっぷりだし、みんなほんとに ほんとに可愛いしww
観客と舞台との距離感を、物理的に埋めにかかる・・・
っていうか客席の男の人にキスしてましたね。キャストがほんとにすぐ傍にくるので、びっくり。さらにパワーアップした印象でした。
そして・・・・
立ちっぱがしんどくて、すごくお酒が飲みたくなりました。次は座席があるといいな。もしくは飲酒可だといいな。
スイングバイ
ままごと
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★
21日
アイディアは優しく新鮮で、シンプルな物語に見事な深みを与えてくれますが、演出の方法に気を取られるからでしょうか、役者さんのお芝居にはあまり引き込まれませんでした。
三日月に揺られて笑う
タニマチ金魚
ザ・スズナリ(東京都)
2010/02/23 (火) ~ 2010/02/28 (日)公演終了
満足度★★★★
面白!
役者さんが全員良かった。客演の方でめっさ好みな人がいて目が離せなくなった(笑)
ソリティアが無くなったらこの世は終わり
山田ジャパン
サンモールスタジオ(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★★
秀作
今までで一番。これから先も期待できる秀作。感動しました。笑いが少し多めな気がしました。もうちょっとシリアスでも好き。
夜のプラタナス
弘前劇場
赤坂RED/THEATER(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/24 (水)公演終了
満足度★★★★★
姉妹のめあて
凪がざわめく海辺の崖の上に立つ一軒の家。崖は自殺の名所だったりする。舞台は、その家の離れにある書斎。そこで繰り広げられる3人の濃密な物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
かつては俳優で現在はエッセイストである53歳の男が住んでいる。男の世話をする姉妹が二人。姉は36歳、妹は26歳。男はガンだ。しかも男はもう長く生きられないことを悟っているようだ。男は終の棲家を探し、この家を借りた。そうして家を借りる時の条件がこの二人の姉妹も付いて、とのことだった。男は奇妙に思ったが、それでも自分の身の回り一切の世話をしてくれるのは丁度いいと思ったのだ。男には家族が居なかったから・・。
場面は病院に行かない男とその世話をする姉の描写から始まる。セットは大きなテーブルと積み上げられた本。右サイドには大きな本棚に横に並べられた本の数々と、その中央に立てかけられた一艘の舟。
この舟が実に奇妙に映る。そうして本の並び方にも。
男の殆どの世話を担当する美しい姉。そうして時々ふもとの街からこの家に通ってくる闊達で可愛い妹。どうやら妹は男とデキてるらしい。一方で男は姉とも肉体関係こそないが感情の部分で繋がってるようす。姉妹の会話が実に楽しい。哲学的でコミカルだ。姉は全ての文学に精通してるようで上質な会話も得意とする。姉妹にも家族はいない。父親は54歳で女と駆け落ちをした。母親は既に亡くなって姉妹二人きりになったのだ。
崖の家から見える洞窟に住んでいるチャトラとチュートラの大きな猫の戦いの描写が可笑しい。まるで姉妹が牽制し合うような風景だ。顎を上げ胸を張り笑みを浮かべて男を眺める妹は、家来に指先へのキスを許可する貴族の女のようだ。一方で清楚な裏に見え隠れする妖艶な輝きを帯びた目をする姉。二人ともネコ科の肉食動物を思わせる危険な光も同居している。
庭にひまわりの種を撒く姉妹。しかし、男はひまわりの花を観る事は出来ない。時折、カッコーの鳴き声が聞こえる。カッコーは自分の卵を他の鳥の巣に落として育てさせる。そんなカッコーに「企んできたかー、君たち!」とささやく姉妹。そして男の事を「少しずつ私たちのものになっていく訳だから・・・。」と二人は愛情を持っているかのように男の世話をする。同時に家の世話をしているようにも見える。
ついに男は日に日に衰えて死んでしまう。それでも男は幸せだったに違いない。男が死ぬ間際まで姉妹は男に尽くしたからだ。「もし、私が理由で君たちに5月の笑顔がないのだったら悲しい。」なんて最後のセリフを吐く。最後の最後まで姉妹を疑うことなく死んだ男。
男の財産を目当てに企んでいた姉妹は、ようやく男が死んで男の財産が自分たちのものになる。姉妹は長い仕事が終わったかのように二人でご飯を食べる。こうやって姉妹は男を食い物にして生きてきた。まるでカッコーのように・・・。
実に秀逸な舞台だった。書斎から見える海の描写や3人の織りなす感情。いきざまなどを観客に投げつけるような物語。セリフの一つ一つは確実に高レベルで言葉に存在感がある。だから長谷川の本は好きだ。重厚な質の高い小説を読んでいるようで、しかもちょっと毒もある。3人のキャストらの演技もお見事で、だからこそ本に厚みが出る。
まなざし
掘出者
タイニイアリス(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/23 (火)公演終了
満足度★★
笑えない。。。
人の話を聞かない、自己主張のみ、こだわりすぎ、ナイフ所持。これが現代の若者だとしたら、こわいです。怖すぎます。笑えません。
~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)
バナナ学園純情乙女組
インディペンデントシアターOji(東京都)
2010/03/22 (月) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
どうにか死人は出なかった。
汗まみれ声ガラガラ。死力を尽くした大バカ騒ぎ。観るほうもバカにならなきゃ損。入場時にもらったバナナをメガホンみたいに叩いてたら痛んで色が変わっちゃった。
いずれ是非ともDANCEROIDをゲストに迎えてケンカして欲しい。ケンカと称してダンスでバトルするんじゃなくて、普通に殴り合いして欲しい。
ネタバレBOX
怪我人はいたと思う。足に痣のある役者がいた。壁に穴を開けるくらいだし、それくらいで済んで何より。ひとまず客に怪我させてないならセーフ。気持ちの上での火傷はさせたろうけど。
舞台上に原チャリが突っ込んで来るのは観た事がある。客席に来たのは初体験。ホント、体験。観てる場合じゃない。
最早ロロロに違和感が全くなくなったのは自分が毒されたからか?次回は久々に芝居寄りなものをやるみたいだから、その時に確かめよう。
岡安嬢が舞台上で自撮りしてた(笑)。
『学生・生徒または未成年者は勝馬投票券を購入できません(再)』
8割世界【19日20日、愛媛公演!!】
劇場MOMO(東京都)
2010/03/16 (火) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★
真面目。
コメディを作る人は真面目って、よく言われるけど、この劇団の方々もほんと破綻してるようで真面目で知的なんでしょうね。(けっして皮肉ではありません。)アフタートークで前回の出演者に演出家やシェイクスピア俳優になった方がいると聞いて、なんか納得してしまった。
おばあちゃん家のニワオハカ
鳥公園
市田邸(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/23 (火)公演終了
満足度★★★
市田邸を上手に利用した演出。
土曜日の暖かくて天気のいい午後ならではの気持ちよい観劇。でも、内容がいまひとつ迫ってこない。先生や徹子さんより、おばあちゃんはもしかしてここに本当に住んでいたんじゃないかと思わせるようなエピソードがほしかった。
相対的浮世絵
キューブ
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/03/18 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★
可もなくなく不可もなく
物語は淡々と展開していく、役者はそれぞれの持ち味を出している。脚本がどうも自分には合わないようです。あと音響が大きすぎました。コクーンはどうも好きになれない
スイングバイ
ままごと
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
これはすごい
時代と人と仕事が見事に重ね合わさって見えた。
どんな些細な仕事にも歴史があり、社会を作る欠かせぬ
一片であり、また誰かに代用がきくことも確か。
しかし家族だけは代用の効かない唯一の絆。
一見前衛的な演出にも見えるが、ジレンマをシンプルに
繊細に紐解いた気がする。お見事!
夜、夜中
害獣芝居
atelier SENTIO(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★
闇に挑んだ異色作
今回は劇とコンテンポラリーダンスを組み合わせたような実験的なパフォーマンス。
主宰が作・演出を担当する劇団が多い中、害獣芝居を主宰する浅沼ゆりあさんは自身で脚本は書かず、「身体を使った表現」を追求し続けている人。何度か上演している「火學お七」の初演は大学の新人公演だった。大勢の新人を起用し、アングラ群集芝居をまとめあげた手腕には目を見張ったものだ。
久々に届いたDMのカードのようなミステリアスなデザインに惹かれ、出かけることにした。この公演、DMが来たのも公演間近で、HPにも情報がUPされておらず、宣伝がふじゅうぶんだったのが残念。WEB担当者が今回出演していなかったためかと思われる。
ネタバレBOX
会場が、浅沼さんがかつて所属した明治大学の「実験劇場」の客席そっくりにしつらえられていて、懐かしかった。
夜。暗闇の中で、ひとりの少女が、闇の気配に身構える。観客も共に闇をみつめる。若い女性たちのとりとめのない会話が聞こえてくるのも暗闇の中。
夜のドレスを纏う女たちは、夜の精だろうか。黒、ダークブルー、真紅と、ドレスの色が変わる。タンゴの調べが怪しく響く。
夜の精と少女たちの動きを見ていると、歌舞伎の「だんまり」を連想した。「だんまり」は、様々な扮装をした役者たちが暗闇の中を手探りで歩き、多くはひとつの「宝物」を互いに奪い合って、最後は全員見得を切って幕となる短い舞踊劇(長い演目の一場面の場合もある)だが、「最近の役者は本当の闇を知らないため、だんまりの歩き方が下手」と言われて久しい。しかし、この公演では、俳優たちの歩き方がとてもよかった。若い歌舞伎俳優の「だんまり」より、闇の掴み方が巧いのではないだろうか。公演が行われたアトリエのある夜の住宅街もひっそりとして、とにかく暗く、闇に始まり、闇に終わった公演。観終わって江戸川乱歩の世界を浅沼さんに演出してもらいたいと思った。
怒りを込めてふりかえれ
ピーチャム・カンパニー
シアターPOO(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
あえて★4つ!
ピーチャム・カンパニーの前身に当たる劇団サーカス劇場、地上3mm時代を通じても、私が★4つを進呈するのは初めてのこと。劇団メンバーが大学生だったころから長年見続けてきた自分にとっても画期的なことだ。前回の公演を観劇したという人のブログに「屈葬状態」という表現があって爆笑してしまったが、今回はその客席の状態も格段にゆったりと改善されていた。狭小空間を感じさせない舞台美術のセンスも悪くない。ポップな背景に意図的に入れたわずかな裂け目が印象的だった。今回の劇の私の評価は限りなく★5つに近い★4つ(その理由はネタばれで)。ピーチャム・クラシックスのシリーズを2本観て、清末浩平・川口典成コンビはオリジナルより古典、それも翻訳ものの脚色のほうが向いているのでは、という感想をもった。東大在学中のサーカス劇場公演でもアングラ色の強いオリジナル作品よりも好評だったのは翻訳物の「カリギュラ」だったのだから。そこに真面目でオーソドックスな川口演出がうまくはまっている。清末氏は昨年の赤澤ムック脚色・演出の公演「赤と黒」でも脚本化する前段階の作業をサポートした。オリジナル路線で行くにしても、このクラシックスのシリーズはときどきやってほしいと思う。
ネタバレBOX
妻の両親の猛反対を押し切り、結婚したものの、出身階級の違いから、何かにつけて妻のアリソンをなじるジミー。そのアリソンにやさしく接する同居人 クリフ。この奇妙で危ういバランスのもと成り立っていた3人の関係に割って入ってきたアリソンの友人ヘレナにより、事態は一変する。ヘレナはジミーの横暴を非難し、アリソンは妊娠をジミーに告げられないまま、別れて実家に戻る決意をする。しかし、厳粛なクリスチャンでジミーに批判的だったはずのヘレナは意外にもジミーと関係を結び、同居し始める。ヘレナは、教会にも行かなくなり、男たちの取っ組み合いが始まると慣れたようにアイロンもさっと避ける適応能力のある女性。アリソンのように避けきれずアイロンでやけどするようなヘマはしない。そのせいか、クリフは居場所がなくなり、家を出て行くことを決意する。そこへアリソンが戻ってきて、ヘレナも出て行く。赤ん坊を失ったアリソン(中絶したのか流産したのか、台詞だけでは判別できなかったが)はやっとジミーの気持ちが理解できるようになったと言い、2人は元の鞘に納まる。ジミーは今日で言えば、言葉のDV男だ。アリソンのようにお嬢さま育ちで鈍さがあるか、ヘレナのように賢く適応能力にたけているかでないと、とてもこんな男とは暮らして行けないと思う。この劇の成功は何といってもジミー役の神保良介とクリフ役の八重柏泰士の熱演によるところが大きいと思う。2人とも、サーカス劇場や唐ゼミ☆の芝居に出ているときよりもずっと魅力的だし、実力を発揮できていた。こんなに素晴らしい俳優だったのかと、目を見張る思いだ。八重柏は前回の老け役もよかったが、今回も良い。日本人俳優にとって欧米の翻訳劇の人物を演じるのは、まず、西洋人という壁があり、動きなどなかなか原作の人物になりきれないものだ。キャリアも手腕も申し分ない俳優がやってこそ、何とか観ていられるというケースがほとんど。今回の若い2人は難役であるにもかかわらず、しっかりと役を自分のものにしている、物語の人物になりきれている、自然にその国の、その世界の人になりえたというだけでも、大手柄だと思った。
アリソンの父、堂下勝気は悪くはないが、この人、どの役のときもまったくしゃべりかたが同じで変わり栄えがしないのが気になる。
男優陣とのギャップが大きかったのが女優陣。神保、八重柏に伍した女優がそろえられたら、さらに素晴らしい舞台になったと思うだけに残念だ。アリソンのとみやまあゆみは、学生演劇ならどうにか及第点といったところでミスキャスト。この役は荷が重すぎる気がした。演技が硬く幼く、一本調子。どう見てもおどおどした東洋人女性で、この役として魅力が感じられなかった。
今回の公演は、HPの情報では他の2作と違ってワークショップオーディションの募集がなく、最初から出演者が決まっていたようなので、よけいに疑問を感じた。この役は大竹しのぶや寺島しのぶのように、“かなり女優としての血が濃いタイプ”の女優に向いた役だと思うからである。
ヘレナの赤荻純瞬も家に入り込んだ直後の演技はよかったと思うが、ジミーと関係を結んで同棲を始めてからの変化があいまいで、彼女の表情を見ていると、この役の性根がわからなくなってしまうときがあった。ヘレナも舞台女優という設定なのだから、もう少し華やかさがほしかった。衣裳も、男性のほうはあれでよいと思うが、女性の衣裳は色調に違和感があった。アリソンが前半、赤いシャツ(ブカブカなのはヘレナのときと同様、男物という設定なのか?)にオレンジのスカートという同系色でも難しい色の組み合わせがどうにも野暮ったい。しかもそのシャツのまま、スカートだけはき替えて教会に行こうとする。絵面上、もう少し考えてほしかった。舞台上の着替えの動きも、もたついていて美しくない。ヘレナも教会に出かける前の朝食で、スーツの上着を着ているが、食後に「階下でしたくをしてくるわ」と言う台詞があるから、食事の間はブラウス姿でもよかったのではないだろうか。濡れた野菜を触るのにスーツのまま、サラダの準備をするのが違和感があった。ヘレナを見ていると、寝るときもあの上着を着て寝るのでは、と思えてしまうほど色気がなく、役の上でも舞台女優らしく見えない。これは女優だけの責任ではなく、演出の問題もあると思う。学生時代も含め、男性中心の芝居が多かった川口氏は演出上、女優の扱い方があまり慣れていないのでは。前作の「アルトゥロ・ウイ」のときも同様のことを感じた。
折り合いをつけて生きながらもぶすぶすと燃えている社会や自分への怒りと焦燥感は、現代人にもある。実は観劇した日の帰途、電車内でまるでジミーのような男性に遭遇した。ジミーと違い、若者ではなく、2日後に52歳になるというこの男は、話しかけた若い女性乗客が自分を警戒し、無視する態度をとったと怒り、長時間、初対面の女性を英語交じりでののしり続け、「君はちっとも魅力なんかない。君のために言ってやってるのになぜ眠ったふりをする。俺の国、アメリカではこんなことはない。もっと、みんなフランクにいろんな話をするよ。俺は少しばかりテンションが高いだけなのに、日本人はだれも俺の相手をしてくれない。いまの日本に魅力を感じない、日本は嫌いだ(日本人のようだったが)」とひとり、大声で怒鳴りまくっていた。彼はたぶん、社会にも自分にも怒りを抱えて孤独に生きているのだろう。この芝居はまさに今日的なテーマを描いていると思った。
まなざし
掘出者
タイニイアリス(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/23 (火)公演終了
満足度★★★★
ちょっと時間はかかったけれど・・。
冒頭から少しの間は
困惑したけれど、
ふっと焦点があったような感覚がやってきて
急に面白くなりました。
ネタバレBOX
相手の中にある自分と、
自分の中にある相手・・・。
たとえば
自分の中での相手はすべてであっても、
相手の中での自分はOne of themに過ぎないこと。
それは占有率に留まらず。、
時に重要度であったり、
色であったり・・・。
その存在感や質感の違いが、
ある意味すごくリアルに描かれていきます。
また、その現実を俯瞰するシステムの存在やルール、
それぞれのキャラクターに当てられた立場や想い。
さらには、管理者による退場宣告などにも
現実の事象が想起されてぞくっときた。
舞台上の個々の場面の視座のわかりにくさこそが
逆にさまざまな人間関係での
自らの想いと相手の想いの錯誤を
したたかに浮かびあがらせているようにも思えて。
あとに残った不安定な感覚に
この舞台の秀逸を感じたことでした。
☆
Fight Alone 2nd
エムキチビート
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
満足度★★★★
緑を観ました
4作品ともそれぞれの趣があって。
短時間のパフォーマンスではありましたが
ぎゅっと中味が詰まっておりました。
ネタバレBOX
それぞれの作品にしっかりした完成度があって
しかも、さらに広がっていく予感がありました。
小道具の使い方などにも
工夫が感じられて・・・。
他の組を拝見できなかったのがとても残念・・・。
今回は2とのことですが、
継続して育てていただきたい企画かと思います。
なんでもねぇが、突然バーンと落ちてきた ただそこに転がる日
ロ字ック
APOCシアター(東京都)
2010/03/20 (土) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
人生は、ライク・ア・ローリング・ストーン。
とりあえず、周囲にいるひとたちに合わせて適当に笑ったり、相槌うったり、時々ジョークなんか飛ばしておけば避難される機会から逃れられることだろう。社会人たるもの顔で笑って心で泣け。的な教訓は美徳として脈々と受け継がれていると思しき今日において、そのようになれない者はおはじきみたいにはじかれて組織の枠からいとも簡単にあぶれてしまう。
普通に暮らす。って、まともになる。ってどういうことなのさ。とつくづくおもう。
この物語の主人公は、苦虫を噛むように押しだまって黙々と何でもない毎日を消化していく忍耐があるだけの、しかし曜日感覚が欠落してしまった類の若者で、周囲は彼の気持ちなどお構いなしに好き勝手にやりたい放題、身も蓋もないオチも微妙でくだらないジョークがマシンガンのようにぶっ飛んでくる。両者のテンションの温度差がものすごい。
相手の立場になって物事を考える、という人間の初歩的なことがすっかり抜け落ちていて感心する。惨たらしいテロリズムだった!
ネタバレBOX
あ、逃げるなら今のうちですよ。だってコレはテロだもの。
なんてオープニングからはじまっちゃうストーリー。
サトウは木造オンボロアパートに暮らしている、NO FUTUREな若者。
先日一年ちょい勤めていたリフォーム会社をクビになり、今はおっかさんからの仕送り(フロム青森)が主な収入源。仕事を探すつもりも、理不尽な社会に中指を突き立て反抗する気合いも全然なくて、コンビニ弁当食ったりいいとも見たりしながら悠々自適(?)なニート生活を送っていたが、ある日の昼時、大家からサトウの住むアパートを近々取り壊すことを聞かされた。
最悪な気分に浸る間もなく腹を空かせた全身真っ赤に着飾ったナゾの女がどこからともなくやってきて勝手に宅配ピザを注文するわ、ハレルヤ灯とかいう万人の幸福を願うために布教活動を行っているらしい新興宗教団体が押しかけてくるわ、NHKがLOVE過ぎる集金オッサンはやって来るわ、ピザ屋のバイトくんからは金貸せ!だなんて軽く恐喝まがいなことまでされるわでサトウの小部屋はたちまち小さな戦場に。
カミからのSEX or DIE!のお告げのあったらしいハレルヤ灯の一員の女は、ピザ屋のバイトを誘惑しちゃってせっせとやりまくり、NHKがLOVEすぎる集金オッサンはドレミファれっしゃ(おかあさんといっしょのエンディングテーマ)を全力で踊りまくり、ナゾの女はトイレに立てこもり、挙げ句、サトウが敬愛しているマイケルさんスリラー踊るわ、イナバ物置のオッサン出てくるわのそのどろっとしたエネルギー量の大きさに「すげぇ…」と呟いていたほど。
で、好き勝手し放題な奴らの行いのどこかにサトウも参加できればよかったのだが…、あいにくどこにも馴染めなかったサトウは、ハブられたような孤独感に部屋がめちゃくちゃに荒らされていくフラストレーションが相乗効果となったのか、包丁をぶんぶん振り回してしまい、それをきっかけにして奇妙なパーティーはお開きとなる…。苦笑
帰り際、NHKがLOVEすぎる集金オッサンは「受信料は払えよ。義務なんだから。」なんてサトウの肩をポンと叩いて会社に戻り、全身真っ赤のよくわからない女はサトウに会って一番最初に聞いた質問、「私が不幸な女か惨めな女かどっちだとおもう?」なんて、どちらにしたってサトウにはさして問題のないことをもう一度問いただし、その上理不尽の反対って何なのさ。って問いを投げかけ去っていく。
サトウの住むボロアパートの目の前の道路を、輝かしい未来約束します。そんな理想を訴え選挙カーを走らせるどっかの政党もサトウにとって何も意味のないことだった。
物語の冒頭とラストで流れるゴダイゴのガンダーラがサトウの、雲を掴むようなぼんやりとした日常をなぞらえる唄として用られている。そういえばゴダイゴの由来は、GO DIE GOで、ガンダーラは三途の川を超えた者を想い、そちちの世界でお世話になるまで死を夢想するうた、であるはずだった。
謎の女の言葉を借りれるならこの”ハイパー暗い唄”にサトウが何となく聴いてしまうまでの、心の揺れのようなものがもう少しあってもいいようにおもった。サトウなら自殺未遂くらいはしそうだな、うっかり薬にだって手を出しちゃいそうだな。っていうのがその理由。
ハレルヤ灯と国主党の言ってることって基本的に同じだったので、ここは是非ひとつにまとめて、宗教×政治でメタ化して頂いてもよかった気がするのだけど、どうなのだろう。謎の赤い女と大家さんの言い回し(誰かのものまねをする時)が同じだったのもちょっと気になった。
個人的なザ・ベスト・オブ・アクトは、ハレルヤTシャツの上からブラジャーつけて恍惚とした表情で官能的(?)なダンスを踊りまくった水色Tシャツ宗教女さん。(あぁいうはっちゃけ方、めちゃくちゃ好き!)
自分の座った位置からTV画面の右上に小さく”ぶっ生きかえす!”とか張ってあったり、青森LOVEなのに何で壁画は富士山なの?と軽く心のなかで突っ込めるような配慮が随所になされていて好感持ちました。
あと、非売品のティッシュもらいました。ありがとうございました。家宝にします。笑
~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)
バナナ学園純情乙女組
インディペンデントシアターOji(東京都)
2010/03/22 (月) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
1時間があっという間
オールスタンディング形式でパワーが一層増したよう。
時間があっという間に過ぎて行きました。
ネタバレBOX
相変わらず音響等の問題はあるのですが、
それを関係ないと言わせるだけのパワーがあって・・・。
出演者たちがここ一番で本当にキュート。
空間の使い方もちょいと掟破り、
さまざまなものが
どんどん見る側を押し上げていく。
終わって見る側までホントに楽しかったと思える疾走感。
しかも勢いだけでなく
その裏にしっかりした振り付けやフォーメーション、
パフォーマーの技量があって・・・。
単にお祭り騒ぎではない
したたかな舞台でもありました。
宦官提督の末裔(かんがんていとくのまつえい)
江戸糸あやつり人形 結城座
シアタートラム(東京都)
2010/03/18 (木) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
前方で観劇できて
細かいところまで良く見ることができました。
でも、この作品の奥まで理解し楽しむところまではいきつけませんでした。非常にいろんなものを観客にも要求する舞台だと思いました。