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現代韓国演劇上演「四番目の人」

現代韓国演劇上演「四番目の人」

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

生田さん演出の作品を鑑賞したくて行きました。
歴史の厚みが伝わる作品でした。

ネザー(Su)ポット

ネザー(Su)ポット

劇団しようよ

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2026/05/28 (木) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

まず言及したいのは舞台美術の再現力の高さでした。

ネタバレBOX

劇場に入るやいなや、そこには緻密に設計された電車の車内空間が広がっていて、思わず歓声が漏れてしまいました。その車内を通らねば客席に辿り着けない造りになっていて、さらにキャスト陣は役としてすでに電車の座席に座っていたりもするため、ドキドキしながら車内を通り抜けました。「物語の世界を経由して客席に着く」という流れが、作品への没入感を手伝う導入として大きな効果を発揮していました。

内容としては、その車内空間で起きる出来事をリフレインして描いたワンシチュエーションもの。ディズニーランドに向かう二人組、泥酔している若い女性、ベビーカーを伴う母親、あまりうまくいっていなさそうなカップルなど、それぞれ属性や背景が異なる人物が乗り合わせていて、リフレインの度に焦点が当てられる乗客や出来事が変わることによって、乗客たちの心の内や社会の暗部が徐々に露わになってくる様子が興味深かったです。

基本的には日常会話が語られているのですが、時折挟まれる独白によって人物造形が具になったり、また角度を変えて同じ場面を繰り返し描くことで、1ターン前には気づかなかった表情や動きを発見できる面白みがありました。なかでも、終始肩身の狭そうな表情をしている母親の、疲弊し切った心が発露するシーンでは、身に覚えのある痛みに胸が詰まる思いがしました。育児中に抱えるストレスや社会からの孤立。「何か手伝いましょうか?」と思わず声をかけたくなるけれど、「乗客」でなく「観客」である私にはそれが許されない。その状況が、奇しくも『では、「乗客」の時は果たしてそれができるのか』という問いとして迫るような思いにもなり、他者に手を伸ばすことの必要と難しさを逡巡しました。
一方で、全ての乗客にスポットが当たるわけではなく、ポイントに絞られているため、テーマが偏り、その一方でメッセージは散漫としてしまっているような感触も受けました。多くが語られないことによって想像力を駆り立てられた節もあるのですが、もう少し一人ひとりを相対的ではなく、絶対的な存在として見てみたかったという心残りがありました。しかしながら、舞台美術こそ素晴らしい虚構であるものの、ここで描かれていたことはほぼ私たちが生きる上で経験する日常でもありました。「帰りの電車での風景が行きと比べて違って見える」という点が、本作が導いた最も大きな体験だったような気がしています。
ファーム・ホール

ファーム・ホール

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2026/06/15 (月) ~ 2026/06/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

重厚で硬派な会話劇で観応えがある。俳優座の名優6人で演じられるが、どの人も最高に素晴らしい演技。照明や音響、回転舞台など演出上の工夫がいくつかあるが、何と言っても台詞の発声と演技つまり俳優の力でここまでやれるのかと感嘆させられる。これを俳優座スタジオの小さい空間で臨場感たっぷりで観劇できるのは最高に幸せなことと思う。人間関係やおのおのの科学的・政治的立場を事前に配布される用語集をつぶさに読んである程度頭に入れておくのが望ましい。

現代韓国演劇上演「四番目の人」

現代韓国演劇上演「四番目の人」

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

社会派ドラマのようなつもりで観始めたが、そういう側面より、魂という内面の問題を扱う内容が印象深かった。病名を忘れたが、通常の感情体験を持てずサイコパスと間違われやすい少女が内面の魂について答えを求めて問いかける姿から、なんとなく、『攻殻機動隊』の高度に電脳化・擬体化された人間として生きる中で「ゴーストの囁き」を聞く少佐を連想した。現実と頭の中の空想の場面が交錯する作劇法は魂の問題を扱う本作品では非常にふさわしく感じられ、「逃げ場はないよ・・・」や「刑務所に入るばかりが・・・」など興味深い言い回しの台詞もあってなかなか面白かった。

ローヤの休日

ローヤの休日

カキカク

小劇場 楽園(東京都)

2026/05/13 (水) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/05/17 (日) 13:00

脱獄を試みる女囚たちを中心とした物語、元はオール男声キャストで女性版も演を重ねているが初見。序盤で「独房と言っていなかったか?」と疑問を抱いたので終盤で「あ、やっぱり♪」と納得。
そしてそこに至るまでが賑やかで楽しいだけにビターな結末がイタいが、それを緩和するエピローグ(?)が救い。
また、一人を除いて初見の出演陣、いずれも的確な配役・演技で好感を持った。

空の下の約束

空の下の約束

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 初日を拝見、絶対観るべし! 華5つ☆ 尺は約100分。

ネタバレBOX

 板上はセンターに木製ベンチその下手にブルーシートで作られたホームレスの住い。この住いの手前観客席側にはどうした訳か赤い花中心の花束、白い花を中心の花束が1つずつ、在る。上手にはシートを被せた三輪車と思しき物、雑多な拾得物、生活の要を為す空き缶等が積まれた一角。場所は東京下町のドヤにある空間。
 自分の観た龍門作品の最高峰、素晴らしい作品であった。村手氏の直球勝負がこれほど深く嫋やかに世界を表象して魅せたことに只感嘆するばかりである。脚本の素晴らしさ、演出の良さもさることながら役者陣の演技が素晴らしい。何れの役者もその役を生きていることは当然のこととしてその上のプラスαがあるのである。その存在の全体から滲み出てくる各々の個性が脚本に描かれたビビッドな科白に存在そのものの持つ深みと測り難い広がりと奥行きを載せて観客に届けてくる。これぞ、演劇の醍醐味、必見の作品だ。ラストに被る中島みゆきの曲もグー。
逃げない

逃げない

かるがも団地

新宿バティオス(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/24 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/06/24 (水) 17:00

お気に入り劇団の本気のコントで、くすくす笑って面白い。(前説3分含み)61分。
 近年最も気に入った劇団で、通常の芝居でもクスクス笑うシーンは多い劇団だが、それが本気でのコント公演で以前も観たことがある。「見えない」「解らない」「逢えない」「知らない」「継がない」「食えない」「逃げない」という7つのショートコントを、劇団員と4名の客演で送る。大笑い、というより、クスクスの連続で楽しんだ。全体として30代の感覚だなと思える題材が多いが、なるほど、というエピソードを選んだ感じで、興味深く観た。個人的には「継がない」「逃げない」が面白いなと思った。

長生炭鉱――生きたかった

長生炭鉱――生きたかった

温泉ドラゴン

座・高円寺1(東京都)

2026/06/05 (金) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

日韓共同制作の演劇。歴史を体感できて良かったです。ドキュメンタリー作品が好きな方にはオススメ。

何処へ行くギルガメシュ

何処へ行くギルガメシュ

パスプア

カタリナスタジオ(北海道)

2026/05/21 (木) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

この演劇が何の誰の話であったかを説明をしようとすると、途端に迷路に入り込んでしまう。しかし、この体感こそが本作のメッセージだったのかもしれない。慣れない北海道の街を「こっちじゃない」「あっちも違う」と時間をかけて移動しながら、私はそんな実感に辿り着きました。

ネタバレBOX

ギルガメシュという人物を主軸にいくつものモチーフやストーリーがコラージュされ、場所、時代、時空さえも「移動」しながら進む物語。地下鉄の路線のように入り組み、まるで行く手を阻むように現れる不条理に次ぐ不条理、ナンセンスオブナンセンス。配達の仕事をしているにも関わらず、客に料理を届けるのを渋るギルガメシュをはじめ、滅茶苦茶な昔話を展開する落語家、電柱相手に路上ラップバトルをする男など、次から次へとヘンテコな人物が現れます。しかしながら、それらが何らかの大きなものや流れに対する「抵抗」や「格闘」であることはそこはかとなく浮かび上がってきて…。そして、最終的にはギルガメシュが抱える家庭や社会からの抑圧や搾取、消費といった問題につながっていく。

呆気に取られながらも、私は日に日に本作に「カウンターの物語」としての手触りを感じるようになりました。劇中で具体的な家庭問題が詳らかにされるわけでも、特定の社会問題が語られるわけでもありません。しかし、登場人物たちは確実に何かに異を唱えていた。それは、この混沌とした現代を生きる人々の姿そのものなのかもしれません。「何処にも行けない」と思っていた人が一歩を踏み出す話にも思えるし、そうしてやがて「何処へでも行ける」ということに気づくまでの話にも思える。そして、「何処へ行く」と問われているのはギルガメシュだけではない。おそらく、観客にも等しく向けられた言葉であるのだと感じました。

一方で、やはり展開が混沌としすぎていて、咀嚼するまで時間がかかり、そういった実感に辿り着くまでにだいぶ苦労したというのも素直な感触でした。同時に、意味がわからなくても見入ってしまう、というのもまた俳優の身体性が導く演劇の魅力でもあるのだと思います。なかでも、身体の部位を執拗に口にしながら、ダンスに満たないダンス的動きが繰り返されるシーンは、心の在処をたしかめるようでもあり、奇妙ながらに何か切実なものを感じました。また、500円を前払いし、終演後に追加料金を決めて支払える「ワンコイン観劇プロジェクト」も興味深いものでした。
裸足

裸足

劇団道学先生

雑遊(東京都)

2026/06/23 (火) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

〈黄色いヘビチーム〉

『どんな色がすき』
『ホ・レッ!』
開演前SEで育児サポート音楽YouTubeチャンネル、「うたスタ」がカバーした楽曲が流れている。出来が良い。ノリノリで客席案内をしているのは〈青い鳥チーム〉の和田渚さん。

演出における青山勝氏と寺十吾氏には全幅の信頼を寄せているので今回も間違いなかった。何が良くて何が駄目なのかの価値観がハッキリしている。そこをあやふやにしていない。その感覚は信用出来る。

今作は畑澤聖悟氏の『親の顔が見たい』の本歌取り、幼稚園における教員内虐めのドラマ。作品内にちゃんと「親の顔が見たい」との台詞もある。岸田國士の『紙風船』オマージュも。役者達はきちんと為すべきことをこなしている。
面白かった。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

虐めのターゲットになっている教員、鎌宮彩羽(さわ)さん。
実は視野が広い園長、永川剛志(つよし)氏。
その息子で気の優しい教員、鵜飼拓斗氏。
実は彼の恋人でもある教員、木下綾夏さん。
ベテラン教員の冨岡奈央さんは味があって巧い。
方言丸出し天然の新人教員、小松崎郁(かおる)さん。

虐めの加害側教員、石川佳那枝さん。リアル。
虐めの加害側教員、河原邦恵さん。

教材メーカーの山口拓人氏。鎌宮彩羽さんに惚れている。
ある意味主人公の松田一亨(かずあき)氏。鵜飼拓斗氏の中学時代の先輩。彼の紹介で送迎バスのドライバーに雇われる。鎌宮彩羽さんに惚れている。この人の大暴れがドラマを生む。

どうしようもなく追い詰められた時には、自分の持っている運を信じるしかない。自分に与えられた天運を。

The Rolling Stones 「In The Stars」

カードで運を試す奴がいる
ウイスキーグラスに骨を放り込む奴だとか
成功したいなら沢山の幸運が必要
雷が落ちた時、俺はそこに立っていた

手が重たく感じる
立てた計画に縛られてしまう

全ては星の中に それが俺達の運命
全ては星の中に お前と俺は決まってた
全ては星の中に 全く不思議なことじゃない
全ては星の中に お前と俺は決まってた
お笑いライブ『すっとこどっこい』

お笑いライブ『すっとこどっこい』

大川興業

新宿Fu-(永谷ホール)(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/24 (水)公演終了

実演鑑賞

玉石混交と申しましょうか。
玉は確かにありました。
前回公演よりも沢山ありました。

この上のない下水筒

この上のない下水筒

コトリ会議

アトリエ春風舎(東京都)

2026/06/12 (金) ~ 2026/06/17 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2026/06/15 (月) 15:30

価格3,800円

劇が始まって以降、舞台と客席を包み込む空気感が、
いい意味でピリッとしていました。
役者さんの台詞の抑揚・間の取り方・主張する照明…
今までに経験したことのない空気感でした。

朝倉くんが急逝したあと、
中学校の同じ部活だった同級生4人が集まります。

思い出話に花が咲く…といったのどかな感じは全く無い。
むしろ、朝倉くんと部員たち、そして部員同士の間に
当時さまざまな思いや感情があり、感動や共感・すれ違いや悲しみの
あったことが明らかになります。
そしてそれらは、現在進行形でもありました。

話の流れや台詞に抽象的なところは全くないのですが、
全体的にかなり抽象度の高い作品でした。
観たあと、自分の中で消化する(咀嚼する)のに時間のかかる劇でした。
咀嚼した結果、タイトルの「この上のない下水筒」が持つ意味が分かる
ところまで行ければいいのですが、まだまだです。

質の高い、イイ劇を観せていただきました。
ありがとうございました。

僕ん家の冷蔵庫は 雪男ん家じゃない

僕ん家の冷蔵庫は 雪男ん家じゃない

劇団わたあめ工場

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

​日常の延長線上にあるシュールで奇妙な世界観を、個性豊かな役者陣の掛け合いで小気味よく描き出した一幕。
​タイトル通りのクスッと笑えるユーモアと、どこかノスタルジックで愛おしい空気感が劇場を包み込む。突飛な設定ながらもテンポの良い会話劇として心地よく引き込まれ、観劇後にふんわりと優しい余韻が残る魅力的なステージでした。また、劇場内が寒くて一体感が増して良かったです。

借金大王

借金大王

中央大学第二演劇研究会

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

​「運貸し」を巡る物語は少年漫画さながらのスピード感があり、一発逆転を夢見て破滅へ向かう中毒者たちの剥き出しの熱量に、学生演劇ならではの荒削りなエネルギーが炸裂。人間の尽きない欲望と業の深さを、スリリングかつダイナミックに突きつけられた見事な一幕だった。

現代韓国演劇上演「四番目の人」

現代韓国演劇上演「四番目の人」

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

天井から地上1.2m程の高さにLEDバーライトを吊るして部屋の輪郭を縁取る美術。要所要所で青く点灯。

失感情症の女子高生、赤松怜音(れお)さんが黒沢清映画キャラの雰囲気。ロボットが人間の心に興味を持ち自分もそれを感じてみたくて追求するような話。自分の心、自我、意志、魂、アイデンティティ···。自分自身が突き動かされるような衝動に憧れる。何度も何度も鬼頭典子さんに聞く話は良心の疼きについて。その正体は何なのか?

パク・ヨンミの1990年のデビュー・アルバ厶に収録された代表曲『私は寂しさ あなたは懐かしさ』。この曲を鬼頭典子さんが昔好きだったと思い出す。
「私は寂しさ、私は流離う雲。
 私は果てしない海を漂う舟。」

ネタバレBOX

ある殺人事件で容疑者となった西山聖了(きよあき)氏。彼は自閉スペクトラム症(ASD)で強く自己主張が出来ない為、担当検事(石井英明氏)によって虚偽の自白を強要され服役。後に本当の犯人を名乗る女(鬼頭典子さん)が検事のもとに自首しに来る。検事は既に裁判の終わった案件に関わりたくなかった為、黙殺した。鬼頭典子さんは良心の呵責からか検事に手紙を送り続け、検察庁の前で独り抗議活動を行なう。検事の娘(赤松怜音〈れお〉さん)は失感情症で自分の感情を認識出来ない。周囲からは無表情でじっと人を観察している気味の悪い人間に思われる。何を考えているのか分からない薄気味悪い奴と。彼女は父のもとにずっと送られて来る鬼頭典子さんの手紙を読み、出所している西山聖了氏と会わせようとする。

脚本が詰め込み過ぎでリアリティがない。演出もちぐはぐ。役者陣の熱演だけが伝わった。勿体無い。韓国の司法制度ってこうなのか?検事が弁護士に指示して自分の娘を守る?拘置所は検事の思うがまま?警察は機能してないのか?

自分の犯した罪で罰せられる無実の西山聖了氏。鬼頭典子さんは殺した奴に対しては当然の報いだと思いつつ、苦しむ彼を見棄てる自分が許せなかった。この世界は正しくあるべきだ。だが司法に携わる人間にそんな感覚はない。「真実」や「正義」なんかにそもそも興味などない。現実はもっと歪んでいる。大きなシステムの中、自分に与えられた仕事をこなすだけ。そこに「文学」はない。

作品内に流れる青い哀しみが84歳ポール・マッカートニーの新曲、『Days We Left Behind』を何となく思わせた。青い青い何処までも青い無力感。

Paul McCartney 『Days We Left Behind』

苦しみを抱えることになる奴もいる
でももっと先へ進もうとした奴もいた

何一つ同じままじゃいられない
泣く必要なんかない
何一つ取り戻せない
僕等が置いてきた日々

(中略)

何一つ同じままじゃいられない
泣く必要なんかない
そして誰のせいでもない
僕等が置いてきた日々

あの日々は置いてきたままに

※赤松怜音(れお)さんの指がごつい。体育会系。

※FUCK OFF!死ね!
『私立シバイベ女学園』私達のインフラ編

『私立シバイベ女学園』私達のインフラ編

SFIDA ENTERTAINMENT

劇場MOMO(東京都)

2026/06/17 (水) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/06/19 (金) 18:30

 実は前にも、私立シバイベ女学園を観ていて、今回で観るのは2回目となる。
 何となく前回が、芸能界に蔓延る悪慣習、ハラスメント、ハニートラップ、放送事故発言等々、芸能界に深く関わる問題をテーマに時に茶化し、真剣になり過ぎず、そういった問題について学園に入らされた訳あり過ぎる、個性豊かでアクの強い生徒たちと、鋭いツッコミをするが、生徒たちに振り回されがちな女性教師、時に威圧的だが、人によって態度が露骨に変わる女性副校長ら、生徒たちに負けず劣らずクセ強な教師陣、自由過ぎる保健の先生役のゲストの役者、時々盛り込まれるアドリブや一発芸などが混ぜこぜの、時々考えさせられつつも、全体としては大いに笑えるドタバタコメディだったので、今回もそういう感じかと思っていたら、良い意味で裏切られた。

 実際に観てみたら、今回は教師はいなく、教師の代わりをAIが努め、声優の有澤澪風さん演じる関節系アイドル「POP☆SWEET」リーダー陽向信愛さん、北瀬永莉さん演じる、同じく「POP☆SWEET」メンバーでリーダーの信愛さんに対しても当たりが強く、最近急上昇中の後輩グループを目の敵にする、しっかり者の白月莉美さん(学園に入った理由が謎)、HKT48を2022年12月に卒業の宮崎想乃さん演じる美容系アイドル「POP★QUEEN」所属のあざと可愛いが、キツイ遠回しの皮肉も上手い佐野愛里沙さん、この白月さんと佐野さんが新たに学園に入ったことが分かるところから、話が本格的に進む。
 前回と違い、テーマがインフラについて考えるだったので、インフラに関わる問題が多く、正直、馬鹿でなくても詳しくは分からない。簡潔に説明するとなると、尚更言葉が出てこない問題が多く、笑える場面もあったが、前回よりも、インフラや青切符制度、還付金、インボイス制度等、名前は聞いたことのあるものの、詳しくは知らない問題を多く扱っており、結果として、前回より、社会派テイストが強まり、考えさせられた。
 具体的に青切符詐欺に登場人物の白月莉美さんが引っ掛かりそうになったり、陽向信愛さんが確定申告をしていなかったり、佐野愛里沙さんがかつて熊本地震で大切にしていたモー君(実は観葉植物)を亡くしたことから、自身に対してのトラウマが強いことが描かれたりすることで、日常とコミットさせて考えることができ、具体的なイメージが掴みやすかった。
 
 どうしても、自然災害とか、インフラとか、イランと米国、イスラエルによる戦争というと、あんまり身近な問題として捉え難いが、ホルムズ海峡が封鎖していることによって、日常的に使っているものの物価が高騰したり、劇の登場人物自身が震災を過去に体験し、大切にしていたものを失うことで防災について深く考えるようになる。
 青切符制度について、劇の登場人物が青切符詐欺に遭いそうになって初めて交通ルールについて考えるようになる。
 そういった劇の中で描かれるのと同じように、自分の身近で、何か起こらないと具体的に想像することが出来なくなってきてしまっているのかも知れないと、危機感を感じた。
 私は、日頃、新聞を読んだりして、普通よりかは、社会問題や、戦争、紛争、平和とは、民主主義とはといったことに思いを巡らせてきたつもりだが、これからは、よりいっそう気を引き締めて、少しの異変にも気付けるように気を付けていきたいと、思いを新たにした。

 この私立シバイベ女学園のシリーズ、次は、なぜ世界各地で戦争、紛争が起きるのか、なぜ戦争、紛争は一旦始まると終わらないのか。
 平和とは、憲法とは、民主主義とは、ポピュリズムとは具体的にどういったことか等をテーマにしてみても良いんじゃないかと感じた。
 また、LGBTQ+やジェンダー格差、障害者雇用、部落差別、外国人問題、DV、虐待、カスハラ、いじめ等の問題を扱いつつ、シバイベ女学園シリーズならではの笑いも交えて、そういった社会問題をテーマにしてみるのも面白いと感じた。

 佐野愛里沙さんを演じる、元HKT48の宮崎想乃さんが、今回登場人物のうち3人がより主役として描かれて見えたが、良い意味で他のその他大勢のクセ強な登場人物たちに混ざると、元HKT48と言うような、1人突出して目立ち、光り輝いているというようなことはなく、自然に溶け込んで見え、悪目立ちはしていなかった。
 他の登場人物を演じる人たちも、宮崎さんが元HKT48だということで、特に特別視したり、異様な緊張感は見られず、和気あいあいと楽しげに各々の役を自然に演じていて、観ている側も劇世界に自然と入り込めた。

音楽演劇「光かもしれない」

音楽演劇「光かもしれない」

エリア51

スタジオ空洞(東京都)

2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

オリジナル楽曲のバンド演奏と俳優の身体表現を同じ地平で立ち上げること。これが、エリア51が標榜する「音楽演劇」の形です。しかし、そこには、単なるジャンルの融合や横断だけではなく、観客が劇場という場や観劇という機会に対して抱える緊張や不安をできる限り解そうとする、演劇におけるアクセシビリティやケアへの観点が忍ばされていました。

ネタバレBOX

日本において「劇場」という場所はまだまだ多くの人にとって緊張を余儀なくされる場所であると感じます。もちろん、その緊張感も時としては濃密な劇体験の一部ではあるですが、体質や体調など様々な事情を持つ観客にとってはその数時間が喜びどころか苦痛に感じられてしまう。
そんな中で、本公演では飲食しながらの観劇やスマホでの撮影、ゆるやかな退場時間の設定や途中入退場がしやすくなるようなアナウンスと、状況や文脈が異なる他者とともに芸術や文化の喜びを体験する上での様々な工夫が凝らされていました。まるでライブやフェスに来た時のような体感で劇場での時間を過ごせること。そうした演劇公演が決して多くない中で、エリア51はこのフォーマットを追求し続けており、実際に多くの観客の方が前のめりかつ自由に楽しんでいる様子が伺えました。

物語としては、人類が「旧人類」と呼ばれるようになった未来のお話で、旧人類である主人公がかつて深い友情を築いたアンドロイドを探し、ロボットと旅に出る、というスペクタクルな宇宙冒険譚でした。そこにギター、マリンバ、ベースの生演奏とボーカルの歌声が並走していて、時には演劇が詩的なMVのように音楽の魅力を引き出し、またある時は音楽が劇伴として物語に流れる変化や予感を引き立てたりと、効果的な相互作用を生んでいました。会場はいわば、音楽と演劇を相乗りさせた一つの宇宙船。そんな風にも思えてくるパフォーマンスでした。

星を越えて紡がれる友愛を描いたこの音楽演劇は、圧倒的に異なる出自や背景や性質を持つ私たちが他者と生きていくことの困難と、それを越えた先にある喜びを伝えるものでもあったのかもしれません。同時に、アンドロイドやロボットといったAIとの共存という喫緊の社会現象を盛り込んだ劇作でもありました。そうしたメッセージを受け取るにあたって、音楽と演劇という異なる文化が同配分で混ざり合うフォーマットは理に叶うものであるとも感じました。
シャープさんフラットさん

シャープさんフラットさん

キューブ

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2026/06/19 (金) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演は2008年。ナイロン100℃の15周年公演として、ブラック・ホワイトの2チームに分け、更に台本も書き分けて上演されました。今回はふたつの上演台本をミックスした「ハイブリッド版」とも言えます。

元々すごく好きな一作ですが、18年ぶりに観て、忘れていたシーンが多かったことも事実(すみません)。また、初演の出演者の「影」が見えず、今回のキャスト陣による良さや、初演とは異なる空気感が感じられたことも印象に残りました。

ネタバレBOX

サナトリウムに集う人々による群像劇。なのですが。時代がバブル後期で、高額な保養所としての機能も兼ねている、という設定。つまり、比較的元気な人と、病気治療中の人が混在する場所。登場人物たちの多くはそれぞれの闇や背景を抱えており、劇中でさらりと語られる真実ひとつひとつに重みがある。コメディ作としての「笑い」と、人間ドラマとしての「切実さ」。その両面が際立つ作品に感じられました。何より、主人公の劇作家の苦悩が、その立場であれば直面するであろうリアルな感情として描かれており、その印象が強く残りました。

タイトルには「世の中の動きや価値観と折り合いのつかない人」という意味が込められています。社会の分断が進み、その間をSNSが埋めようとして逆に溝が深まる……という今日において、よりリアルに受け止められるテーマだと思います。
かいころく

かいころく

安住の地

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『かいころく』は養蚕農家編、蚕種編、工女編の3部作から成る安住の地のツアー公演で、私が観劇したのは、横浜の若葉町ウォーフで上演された養蚕農家変・工女編でした。

ネタバレBOX

上演に入る前に、作・演出を手がけた私道かぴさんから、本公演の背景や、なぜ「蚕」に関するお話を書こうかと思ったのか、そこにどんな出会いや気づきがあったのかが語られました。簡潔でありながら、公演の意図や思いが伝わるとても丁寧な解説で、演劇作品に入る導入としても、舞台と客席を均すコミュニケーションとしても素晴らしい前説でした。その前説によると、本作の制作は「元養蚕農家で上演する作品を」という依頼をもとに始まり、取材やフィールドワークなどを重ねて作られたそうです。そうした人々の歴史や暮らしといった背景や、そこで発生する生の声からあらゆる言葉やシーンが紡がれたことが実感できる、生々しく繊細な作品でした。

『養蚕農家編』は養蚕農家に生まれた青年の人生やその葛藤を描いた一人芝居で、男手を中心に行われる厳しい肉体労働や母への思い、やがて戦争に召集される様子までもが描かれていました。対して『工女編』は、同じく一人芝居でありながら、養蚕農家に生まれ育った女性が製糸工場に出稼ぎにいくところから結婚や出産などを含み、数世代にわたって女性の姿を描いた作品でした。日本における男性性と女性性をめぐる様々な歴史や問題を考えるにあたって、この二つがセットで上演されている回があることにもとても意味があると感じました。

同じ女性としては、13歳という年齢で家を支えるために自立せねばならなかった少女の姿に、母性との距離感やえも言われぬ寂しさ、戦争がもたらした様々な苦しみや、現代にも通じるヤングケアラーといった問題なども切々と想起させられ、観劇後にもいろんなことを考えました。カンパニーの代表作としてはもちろん、戦争やそれによって人々の暮らしにどんな変化がもたらされたのか、また、性や性差をめぐる問題を考える上でも、今後も何度もさまざまな場所で再演される意味のある公演であると感じました。
関連して、チラシ束には劇場付近で開催されているシルクにまつわる美術展の案内が入っており、そのことに言及がされていたことも素晴らしく、「養蚕」という営みが最終的にどういった形になるのか、人の手に届くのかも含めて、深く考え抜かれたクリエーションであることが伝わる一幕でした。
幕末異聞 武士の影

幕末異聞 武士の影

演劇企画戯舎

「劇」小劇場(東京都)

2026/05/13 (水) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2026/05/16 (土) 13:30

とある藩で起きた事件から十年の時を経て黒幕が再び動き始めたことに対して当時下手人とされた義賊も対応し……なピカレスク時代劇、2013年、2017年に次ぐ3度目の上演。
初演時に若干の抵抗を覚えた落としどころも再演ではさほどではなく、三演目の今回はむしろ説得力のようなものを感じたのは改稿によるものかこちら側の変化によるものか?
また、処刑された罪人の亡骸を「腑分け」に使うことに少し前に観た映画「幕末ヒポクラテスたち」との共通点を見出したりラストカットにスターウォーズ(第一作)のそれを想起したり(玄八=オビワン説(笑))。
それにしても初演にあの人、再演のその人がご出演だったとはすっかり記憶から抜け落ちていた……いやぁ、申し訳ない!(爆)

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