直ちの間に一興
劇団 竜人世界
布施PEベース(大阪府)
2023/06/10 (土) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
満足度★★★★
思っていたよりも、頭にスーッと入ってきた オムニバスかと思っていたが、そうではなく、時間の前後のやりくりも何度か有るが、分かりにくくはない
ただ、それはちょっと有りエヘンやろ〰️ということもあって、次回に期待します
半魚人たちの戯れ
ダダ・センプチータ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2023/04/13 (木) ~ 2023/04/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
バンドと、少し先の未来を想定した群像劇
ネタバレBOX
ある売れないバンドのボーカルとそのメンバー、そのボーカルの売れた音楽仲間、そのボーカルのバイト仲間、そのボーカルの死んだ彼女、といった人々の群像劇。死んだ彼女が遺した詩が「半魚人たちの戯れ」であり、ボーカルはそれに曲をつけて成功の兆しを見せる。
舞台は素舞台で、地明かりの照明もそれほど作り込まれてはおらずさながら王子小劇場そのものであった。音楽が重要なモチーフとなるため音響も意識していたが工夫は見られず、スタッフワークに少々疑問が残った。
脚本は近未来を思わせる用語が含まれている一方場面は断続的で、焦点を絞るのが難しかった。
とはいえ自分が見たのは初日であり、展開がスムーズになれば、例えばセリフのやりとりの上では笑いが起き、それを手掛かりに見えてくる部分もあったのでは無いかとも思う。作中言及のあった再生医療や「ムーンショット目標」は現実に存在、あるいは存在しうる物だけに描き方によってはより切実に「死」の曖昧さを描けたのでは無いかとも思う。これから間違いなく「生」と「死」は揺らいでいくのだから。
令和5年の廃刀令
アガリスクエンターテイメント
としま区民センター・小ホール(東京都)
2023/05/01 (月) ~ 2023/05/02 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ウェルメイドなシチュエーションコメディ。
ネタバレBOX
もし現代まで帯刀が認められていたら、という世界を舞台にした討論劇。現代に相次ぐ刀剣による殺傷事件を受けて廃刀令の是非を議論するタウンミーティングに観客は参加しているといった構図。
まず真っ先に意識するのはアメリカの銃規制の問題であろう。銃乱射事件が頻発してもアメリカが銃規制に踏み切れずにいるのに対して、それを日本における刀に置き換えるのはそれぞれのナショナル・アイデンティティを上手く置き換えているように感じた。
しかしそれ以上に、コメディとして面白い。廃刀令の推進派、反対派に分かれた有識者が壇上で討論している様子は「朝まで生テレビ!」よろしく、議論の深まり以上にある種のエンターテイメント性を内包している。登場人物たちの造詣も豊かで、全日本刀剣協会の支部長や(さながら全米ライフル協会のような)、いかにもメディアに“美人”政治家と揶揄されそうな女性活動家、斜に構えた歴史小説家など、登場人物それぞれに見せ場があり、魅力があった。もう一点、評価すべきは会場を劇場ではなく区民センターなどの公共施設にしたことであろう。タウンミーティングといった設定を生かす上で、演出と制作体制が一体となった会場選定は観客にとっても効果的で成功していたように思う。応募時に団体が書いていた「ポータブルで持続可能な演目づくり」という点も、各地の行政施設で上演可能な作品と考えれば狙い通りであろう。
概ね面白いエンターテイメント作品として楽しんだが、審査会で別の審査員からは歴史的解釈やリアリズムとしての問題点について指摘があった。「国民皆が帯刀している」という点や、それが何故現代まで許容されているのかといった視点を持つと疑問に感じる観客もいるのだと認識した。シチュエーションコメディの設定にどこまで細部を求めるかは考え方次第の部分もあるかと思うが、指摘には肯く部分もあったので記載しおく。
あなたがわたしにくれるもの(がたり)
やみ・あがりシアター
インディペンデントシアターOji(東京都)
2023/06/07 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
役者へのプレゼントを全て美術として使う実験的な演劇で面白かった。
贈られてくる美術にストーリーの方を合わせる様子が可笑しかった。
松竹亭一門会Ⅱ 春の祭典スペシャル
【2024/6/5解散】
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ダンスカンパニーによる異色の落語会。
ネタバレBOX
自分が鑑賞したのは《そば組》の公演で、それぞれ松竹亭白米(おにぎりばくばく丸/上田勇介)が『青菜』、松竹亭ズブロッカ(服部哲郎)が『蒟蒻問答』、松竹亭ごみ箱が『居残り佐平次』、仲入り後には『ダンスで分かる三方一両損』なる演目が行われ、最後にフィナーレのダンスで幕切れとなる。
面白かったです。あの、それは落語の出来を楽しみたかったら寄席に行った方が良いのですが、そこは工夫をしていらして、『青菜』では本当にお酒を飲んだり、『蒟蒻問答』では問答の場面でダンスが挿入されたりと、ダンスカンパニーが落語会をする、といった標題通りになっていたかと思います。いわゆる天狗連とは一味違いました。
一つアイデアがあるとすると、もっとイベントとして、お祭りとしてやっても良いのではないかなと思います。例えば出店を募ってお客さんが買えるようにしたり、地域の他のアーティストにも声をかけて出し物をやってもらったり、もっと言うと一つの公演ではなく“afterimageフェス”みたいにして、そのうちの演目の一つとしてやってみたらより広がりがあるのではないかと思いました。そうすればこういう色物に加えて、本気のダンス演目も加えて締めたりと、客層も広がるのかなと考えたりしていました。制作大変そうですが、出来なくもない気がします。
初老の血
劇団 枕返し
北池袋 新生館シアター(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かったです。
全ての登場人物にクセがあり、役者さん達は、そのキャラを全力で演じていました。
ヤクザを主軸としたストーリーでしたが、アットホームな雰囲気で、笑い溢れる舞台でした。
楽しい時間を過ごせて満足でした。
少女仮面
ゲッコーパレード
OFF OFFシアター(東京都)
2023/03/16 (木) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
唐十郎の名作と、俳優の肉体と。
ネタバレBOX
戯曲は説明するまでもないが1969年初演、岸田國士戯曲賞を受賞した唐十郎の代表作の一つ。まずは若手と呼ばれる団体が日本の既存戯曲に取り組むことは積極的に評価したい。日本の特に小劇場ではやはり新作上演が多く、戯作と演出を兼ねることも多い。それ自体はそれぞれの創作過程の上で選択してきたことであるのだが、やはり古典や名作の再解釈や現代的価値観との化学反応は、演出という職能を考える上で重要に思う。ヨーロッパが文化としての、あるいは市場としての舞台芸術を築けたこともそれぞれの時代の戯曲を再解釈して現代作品として提示する一貫性が観客と共有できる部分として用意されていることも大きいと感じる。大きく様式の異なる近松や南北にすぐに取り組むのは難しくとも、木下順二や宮本研、寺山修司といった近代における名作を再解釈する余地はまさにこれからであろう。どれも新劇やアングラといった枠には収まらないはずだ。
前段が長くなってしまったが、1960年代から連なるアングラ演劇の旗手たる唐十郎の作品にゲッコーパレードが取り組むことは、まさに前述の文脈にも適うことだろう。その上で、その上演をどう評価するかというと少々難しい。ほぼ元の戯曲通りに上演された本作は、その演劇が我々が想像しうる“伝統的”アングラの作法に則っていたようにも思う。デフォルメされた動きに節のついた台詞回し、少し毒を感じる衣装やメイク。俳優達はケレン味たっぷり。特に劇場内を不規則に力強い足どりで移動していた小川哲也演じるボーイは、自分にとって春日野八千代より印象的であった。
今回の応募にあたってゲッコーパレードは「この公演の一番の意気込みは、俳優中心の演劇を作ること」と述べ、それは演劇にとって必要不可欠である俳優が消費されず、主体的に演劇を作ることを目指しているとしていた。なるほど、それは確かに取り組まれていたのかもしれない。俳優はそれぞれ異なる演技体を持って作品に臨み、舞台美術や小道具は排除され、俳優が制約を受けるものは極力取り除かれていた。『少女仮面』の戯曲を読んだことや作品を見たことのない観客は場面が想像できない部分もあったかもしれない。それでも俳優たちは自由であったのかもしれない。では、そして、自由になった後の俳優たちはどうなるのか。舞台の上での虚構を失い、自己の肉体のまま戯曲の台詞を語る俳優は、何者になるのだろう。
ゲッコーパレードの、特にこのシリーズの取り組みは道半ばであろう。俳優が俳優として舞台に存在することになった先に何を描くのか、それは特権的肉体論の先を描かなければならないのではないか。模索してほしい。
初老の血
劇団 枕返し
北池袋 新生館シアター(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
肩の力を抜いて楽しめました。面白かったです。時間軸の違うエピソードを上手く自然に入れていて、ともすると、場面がわからなくなることがあるのですが、そんなこともなく上手くできていると思いました。演者の皆さんも個性ある演技でそれぞれ印象に残りました。ぬりかべ 大変な制約の中の演技良かったです。
「その先の闇と光」
ISAWO BOOKSTORE
雑遊(東京都)
2023/06/03 (土) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
AとCの回を拝見しました。特にAの保険金殺人方は両方の気持が伝わってくるような素晴らしい演技で胸が苦しくなりながら拝見しました。Cの世田谷一家殺人事件の方は未だ解決していない事件ですよね。本当に忘れてはいけないと思いました。事件と向き合う前向きなラスト良かったです。脚本、演技ともにとても素晴らしかったと思います。
初老の血
劇団 枕返し
北池袋 新生館シアター(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
昭和時代に流行った任侠映画、その美学(義理 人情)と妖怪を絡めた物語であろうか。今一つ 何を描き伝えようとしているのか分からない。自分の感性が初老を超えて枯渇したか?
登場人物のキャラクターは濃く楽しめるが、ヤクザの抗争というよりは昔馴染みの諍い。それを何故だか定食屋内には持ち込まない不文律のようなものがある。コメディだから細かいことは気にせず楽しめば良いのだろうが…。
一方 劇団のコンセプト?妖怪(作品には必ず登場)…今回は「ぬりかべ」で、一般的に知られる形とは異なる。その異形の存在と舞台美術という両面で巧く活用している。一種の被り物で、ずっと舞台上にいるという 体力的に厳しい役柄だ。
「ぬりかべ」の役割は 「何か」若しくは「誰か」を守りたい、という<思い>であり、時を遡行し戦時中へ。個人的にはこの場面をもう少し掘り下げ、任侠の世界と絡ませて観(魅)せてほしいところ。先のヤクザと ぬりかべの話がラストに少し絡む程度で…。表層的にドタバタしただけのコメディ、それなりの繋がりで もう少し心に響くものがほしい。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は、上手(阿過組)と下手(死路組)は非対称、しかしどちらもビールケース(サッポロVSアサヒ)で居酒屋の雰囲気を漂わす。中央に壁(ぬりかべ)があり仕切っている。中央(客席寄り)は、別のビールケース(キリン)が置かれ 立場の違いを表す。下手に別空間を表すカウンター席。
長年諍いの絶えない2つのヤクザ組織ー阿過組と死路組だが、それぞれ世代交代の時期を迎えている。阿過組では二代目が引退をし、三代目に孫娘を考えている。一方 死路組は末娘が四代目の跡目を継いだばかり。暴対法の影響で組員も減少し、といった昨今の事情が描かれる。諍いの原因は シノギ にあるらしい。第三者(牽制 中立?)的な立場として地元警察を絡ませる。冒頭 先輩刑事が新人刑事に、地元ヤクザの実態を教えるという構図でこの店に来る。それぞれの組の事情を親分と幹部組員の会話で紡いでいく。
物語が動くのは、阿過組の組員が死路組の組員に向かって発砲したこと。双方が負傷しどう修羅場を収めるか。阿過組の跡目を渋っていた孫娘が、「誰一人欠けてもいけない 」といった啖呵を切る。二代目も ヤクザは「誰にも相手にされなくなった者の駆け込み寺のような世界」と言う。一見 昭和の義理人情の世界が観えるが、深みがない。ちなみに二代目が引退したいのは、刑事に惚れという自分都合。そのため孫娘を呼び返す我儘ぶりである。孫娘(35歳)は、若い時(25歳)に流産し子が産めないよう。嫁ぎ先では辛い思いをしていた。
この孫娘の「命」の話…誰一人欠けてもいけない、発砲騒ぎを起こした若い組員を赤ん坊の時から面倒を見ている、そして妖怪「ぬりかべ」の守(護)りたい者(モノ)のため、戦時中へ遡行したい思い。それらの場面を縦横無尽に紡ぎ、もう少し広がりと深みのある物語にしてほしい。
表層的なドタバタコメディ(先輩刑事を投げる等)に止めておくには惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
スイートホーム
制作「山口ちはる」プロデュース
シアター711(東京都)
2023/06/07 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
三軒茶屋ミワさんの歌謡ショーは残念ながらなかったのですが、それを補って余りある面白さ!カーテンコールまで目が離せませんでした。
それにしてもあの血溜まりはいつからあったのか。気づかないうちにああなってましたねえ。これからご覧になる方はご注目。
そして冒頭の劇中台本の台詞も・・・
コンテナ
極東退屈道場
山本能楽堂(大阪府)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
満足度★★★
大阪の過去(未来?)を、歌舞伎の舞台を使って演じるのだが、歌舞伎舞台を使って演じる理由が…
けっこういろんな場所や変わった手法を用いている劇団だが…
大阪万博で、舞洲 咲洲等々は復活する?しない?
結局税金だから…
あげとーふ
無名劇団
無名劇団アトリエ(大阪府)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
高校生5人組の卒業旅行を描くロードームービー的舞台。
ネタバレBOX
劇団の母体となる演劇部が高校の全国大会で準優勝した時の作品を15年ぶりにリメイクした上演。テキストはテアトロ新人戯曲賞佳作を受賞している。この高校の大会で上演したのが2008年とのことなので、自分とはほぼ同世代ということになる。舞台は卒業旅行中のアメリカで、道中様々なトラブルが起き、それぞれの少年達が抱える葛藤や問題を乗り越えたり抱きしめたりしながら物語は進んでいく。
物語としては映画「スタンド・バイ・ミー」よろしく、ある種の伝統と形式に則ったプロットで描かれ、斬新さの代わりに安心感を得ている。役者の演技は情熱的で、20人程のキャパの会場において熱気が伝わってきた。一歩外に出ると西成の商店街に位置しているということを意識する観客もいただろう。
ここまで書いてきて思うのは、自分は本作の本来の没入感を捉え切れていない気がする。これは、自分が“高校演劇”というジャンルを捉え切れていないことにもつながる気がしている。大人になってから“高校演劇”というものを知った自分は、それが単に「高校生の演劇」であるだけではなく、“高校演劇”自体を愛好する人々がいることを知った。例えだが野球であってもプロ野球の方がレベルが高いことは承知の上で、それとは別に甲子園球児を応援する人々の気持ちと言うべきか。ある種の熱狂は、それを知るものにしか共有出来ないものがあるのかもしれない。その時人々は、技術やクオリティを見ているわけではないのだ。
これは、何も高校演劇が特異なものであると言及したいのではなく、特定の人々が理解できるある種の文脈がその作品にとって重要な場合、そうでない人々はどう観たら良いのか、という他の作品にもつながる課題であるように感じる。
ロケット・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・シガレット
無限のネコ定理
北千住BUoY(東京都)
2023/06/07 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ちょっと廃墟感のある地下のスペースを目一杯使った意欲作。休憩10分を挟んだ約140分。前半終了時のワクワク感を後半で上回るとまではいかなかったが、チケ代以上に楽しませてもらった。今後にも期待。
ホテル・ミラクルThe Final
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【STAY Ver.】
どすけべ前説 「ホンバンの前に」 寺園七海さん 今井未定さん
①「THE WORLD IS YONCHAN's」 河西凜氏 森下凜央(りお)さん
②「噛痕と飛べ」 今井未定さん 秋山拓海氏 寺園七海さん
③「愛(がない)と平和 -Bagism by Love&Peace.-」 岡村梨加さん 藤本康平氏
〈5分休憩〉
④「スーパーアニマル」 金田一央紀氏 小練(こねり)ネコさん
⑤「最後の奇蹟 最終形」 環幸乃さん 坂本七秋氏
①チェリ男こと河西凜氏は全世界のもてない童貞男の象徴とも言うべきピープルズ・チャンピオン。この役をやる為にこの世に生を受けたのでは。ヨンちゃんこと森下凜央さんは凄かった。こりゃ人気ある訳だ。童貞男のパンパンに膨れ上がったエロ妄想が具現化したようなルックス。今作を世界中の(精神的)童貞男に捧ぐ。面白かった。
④最高傑作。金田一央紀氏が全作品の中の間違いなくMVP。この作家は天才だ。現代の“あしながおじさん”の織り成す街角のささやかなメルヘン。都会でささくれだった心を潤してくれるようなひとときの安らぎ。小練ネコさんがまた素晴らしい。客席がドッカンドッカン沸いてうねった。凄く文学性も高い。これが観れただけで何の文句もない。
⑤「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」ならぬ「さようなら、全てのシアター(ホテル)・ミラクル」。『シン・シアター(ホテル)・ミラクル』のようなラスト。環幸乃さん&坂本七秋氏のキャスティングこそ最期にふさわしい。
帰りには隣の「レイスケバブ」でケバブラップ中辛(500円)を噛じれば満腹。なかなかこれからは行くこともなくなる。
ネタバレBOX
前説の今井未定さんがエロエロ。
①高校時代の憧れの女の子(森下凜央さん)と飲みに行った冴えない童貞男(河西凜氏)、目覚めるとそこはラブホで二人共半裸。酔っ払って何の記憶もないまま、興奮してパニクる。
森下凜央さんの佇まいや受け答えの感じが巧い。後半、無理筋の展開が残念。
②女漫才師(今井未定さん)がネタを書く為にラブホに籠もり、後輩のピン芸人(秋山拓海氏)に自分が怠けないよう監視させる。
無理筋の設定を成立させる為の論法が強引、イマイチのれない。
③金が媒介する男女の純愛。リアルを追求してボソボソ喋る二人。殆ど聞こえない、何とも言えない空間。地獄の底の御通夜みたいなムード。この退屈さの正体はナルシシズム。作家と役者が自分に酔っている。他人のナルシシズムを本能的に人間は嫌う。『出会って4秒で合体』ネタも空振り。
だが、この沈滞が次の作品の大爆発に繋がるという面白さ。
④援交に手を出して十年のベテランエロ紳士(金田一央紀氏)が一番のお気に入りのJK(小練ネコさん)に贈る人生応援歌。
言語への過剰な拘り、myルールに対する信仰にも似た敬虔な姿勢。快楽主義者だからこその理路整然と生きる男の哲学の揺れ。田山花袋の『蒲団』さえ思わせるラスト。昔、風俗に通いまくっていた知り合いのことを思い出した。自己分析的で理知的な駄目人間の詩。金田一央紀氏の乱雑に脱ぎ捨てられたセーラー服や靴下に対する愛情のこもった畳み方が美しい。フェティシズムへの畏敬。それに対する小練ネコさんの在り方が美しい。
⑤地球最期の日をラブホで過ごす見知らぬ二人。
ブルーハーツの『月の爆撃機』が主旋律。もっとレイ・ブラッドベリの『刺青の男』みたいにやらなきゃ駄目なネタ。設定がブレブレ。とは言え、「僕達を縛り付けて一人ぼっちにさせようとした、この世の全てに感謝します。2023年小劇場代表シアター・ミラクル!」みたいな気持ちにさせてくれた。
どうも有難うございました。
海の木馬
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/05/30 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
あらゆる面でクオリティが高く満足度も高いが、扱うモチーフが戦時中・史実であったりと展開・演出にも広がりも少なく一貫して堅苦しい空気が終始支配していた。個人的にはおとぎ話的なフィクションの方が好み。
コンテナ
極東退屈道場
山本能楽堂(大阪府)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
なんでしょうかね?未来の夢洲はこうはなって欲しくありませんね。狂言の動きとかあって、クスッとは楽しめましたね。笑
お芝居観られてありがとう。
初老の血
劇団 枕返し
北池袋 新生館シアター(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
期待通り、おもしろかったです。
笑いがふんだんにあり、笑いました。
本当にところどころ、考えてつくられていて、上手い。
やはり、やーさんコメディーは迫力があり、観ていてスカッとした。
[ぬりかべ]が、観ていて、いろいろ表情が変わり楽しい。
顔ひとつなのに、演じている役者さんはスゴいと感激した。
これは[目玉]のひとつかな、と思う。
(あかぐみ) の組長役の役者さんがインパクトがあり、最高におもしろい。
とても良いキャラで、だれにでも好かれそうです。
個人的に私が好きだったのは、関口ミッシェルさん。
白の衣装がよく似合い、完璧なやーさんで良かったです。
ノリ役の役者さん、何度も投げられて痛そうで、かわいそうに思いました。
観てよかったです。満足でした。
あなたがわたしにくれるもの(がたり)
やみ・あがりシアター
インディペンデントシアターOji(東京都)
2023/06/07 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
実験公演と銘打っての104分。面白い。
amazonの欲しいものリストに出演者(と照明・音楽スタッフ)がリストを載せ、プレゼントしてくださる「モノ」を小道具に舞台を作る。ベースの物語は同じだが、日々増えるモノで展開が微妙に変わり、おそらく徐々に長くなるんだろうなぁ…。企画もさることながら、ベースの物語が面白く、企画をユッタリ楽しむことができる。録音・撮影・録画OKというのも太っ腹だが、衣類のプレゼントは実際に着る、アルコールのプレゼントは実際に呑む、というシバリも興味深い。
先日の猿博打でも思ったが、笠浦は天才だ!
「その先の闇と光」
ISAWO BOOKSTORE
雑遊(東京都)
2023/06/03 (土) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。【A・B】観劇
濃厚な骨太作品…内容的には全国的に知られた刑事事件をフィクションとして描いているが、そこには(刑事)司法への警告も込められている。物語を虚実綯交ぜにすること、その客観化によって興味・関心を持たせる上手さ。背景や状況を被害者・加害者側という(対決)構図とは一歩引いた立場の人物を絡ませることで、どちら側にも偏ることなく観せる。刑事事件という性質上、笑う要素を排除し冷徹に描き切った秀作。
勿論 俳優陣の熱演、その演技力に負うところが大きい。同時に A「壁の向こうの友人ー名古屋保険金殺人事件ー」は、シンプルだが 被害者(遺族)・加害者そして刑務官という3者三様の立場が一目瞭然の舞台美術が見事。一方、B「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件ー」は加害者の子供たちという残された家族の辛苦。刑事事件としては動機不明、状況証拠のみという曖昧な捜査に照らしてみれば納得のいかない判決、そこに問題を投げかける。事件が世間の注目から遠のき、穏やかな暮らしが…あえて波風立てる行動を起こす必要があるのだろうか。その選択を自らしよう 「もう逃げない」と…。
基本的に 両作品とも心情劇。Aは、決して許せない<心>とは別のところで疼く<思い>のようなもの、その揺れる気持があるのも事実。Bは加害者(母)の子供であり、決定的な物的証拠がない以上 信じたいが、しかし長女の「(母)眞須美を信じられない、娘だから言え(分か)ること」には驚愕する。ちなみに、Bはいつ時点での話であろうか。
A「壁の向こうの友人ー名古屋保険金殺人事件ー」
B「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件ー」
(上演時間1時間45分 途中休憩なし 舞台転換5分)
ネタバレBOX
A「壁の向こうの友人ー名古屋保険金殺人事件」
拘置所 面会室…中央にアクリル版越しに面会する椅子2つ、上手に刑務官が座る場所があるだけ。冒頭、刑務官・岡本(江刺家伸雄サン)が拘置所と刑務所の違い、分り難い法律用語・制度等を説明。
被害者親族(被害者の実兄)・原口(虎玉大介サン)と加害者・長谷(幸将司サン)が面会し、何となく情を交わすことはないと思うが、ここでは加害者の〈死刑判決〉を巡るドラマという観点で描いているようだ。加害者の自己利益(会社経営)のために弟を殺された兄が減刑嘆願をする。仮に弟に妻や子がいたら、その家族は加害者を許せるだろうか。確かに兄も加害者に向かって「絶対許さない」と叫ぶが…。
しかし、理性という建前の扉に隠された、人の奥底に潜む 剥き出しの本性が引きずり出されるのではないか。その意味では 一歩引いた立場、そこに真のエゴイズムが見えなかった。理論の「死刑廃止論」…その賛否は色々あろうが、どちらにしても その理屈は被害者家族の悲しみを超えることは出来ない。そこにあるのは理論 理屈ではなく激情・滂沱という心だから。この物語で物足りないとすればキレイごとのようで<心>が迫ってこないこと。
B「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件」
加害者の子供たちが集まり、母の冤罪を晴らそうと相談する。そのため長女の家へ。中央にソファ、ローテーブル・椅子が置かれた一般的なリビング、それゆえリアルでもある。
長女・森田真子(丹下真寿美サン)は結婚し子もいる。勿論 夫・清水(阿紋太郎サン)は妻の母が殺人を犯し死刑囚であることは知っており、それを承知で結婚している。長男・高史(二神光サン)は、母の事件が動機・物的証拠なし、さらに自供もしていないことから冤罪の可能性を疑っている。二女・裕子(永池南津子サン)はプロポーズされ 近々結婚する予定だが、相手には母の事件のことは伝えていない。三女・由梨香(福井花耶サン)は幼い頃のことで良く分からないが、長男が言う金になるなら…。子には子の夫々の生活があり、今の状況を語り合う。
世間から忘れ去られたであろう事件、それを今更蒸し返したくない、というのが本音。しかし、もし冤罪であればという肉親(子)であるがゆえに揺れる心情が痛いほど伝わる。一方 母のことを忘れることによって自分の小さな幸せを掴むことが出来る。その天秤の傾きの如きあちこちに漂流するような濃密な会話。そんな中で放った長女の言葉が衝撃的だ。
フィクションとノンフィクションの絶妙な境界をなぞった秀作。
次回公演も楽しみにしております。