実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。【A・B】観劇
濃厚な骨太作品…内容的には全国的に知られた刑事事件をフィクションとして描いているが、そこには(刑事)司法への警告も込められている。物語を虚実綯交ぜにすること、その客観化によって興味・関心を持たせる上手さ。背景や状況を被害者・加害者側という(対決)構図とは一歩引いた立場の人物を絡ませることで、どちら側にも偏ることなく観せる。刑事事件という性質上、笑う要素を排除し冷徹に描き切った秀作。
勿論 俳優陣の熱演、その演技力に負うところが大きい。同時に A「壁の向こうの友人ー名古屋保険金殺人事件ー」は、シンプルだが 被害者(遺族)・加害者そして刑務官という3者三様の立場が一目瞭然の舞台美術が見事。一方、B「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件ー」は加害者の子供たちという残された家族の辛苦。刑事事件としては動機不明、状況証拠のみという曖昧な捜査に照らしてみれば納得のいかない判決、そこに問題を投げかける。事件が世間の注目から遠のき、穏やかな暮らしが…あえて波風立てる行動を起こす必要があるのだろうか。その選択を自らしよう 「もう逃げない」と…。
基本的に 両作品とも心情劇。Aは、決して許せない<心>とは別のところで疼く<思い>のようなもの、その揺れる気持があるのも事実。Bは加害者(母)の子供であり、決定的な物的証拠がない以上 信じたいが、しかし長女の「(母)眞須美を信じられない、娘だから言え(分か)ること」には驚愕する。ちなみに、Bはいつ時点での話であろうか。
A「壁の向こうの友人ー名古屋保険金殺人事件ー」
B「明日は運動会ー和歌山毒物カレー事件ー」
(上演時間1時間45分 途中休憩なし 舞台転換5分)