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千と千尋の神隠し

千と千尋の神隠し

東宝

博多座(福岡県)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/28 (日) 12:00

*

新生!熱血ブラバン少女。

新生!熱血ブラバン少女。

博多座

博多座(福岡県)

2024/04/06 (土) ~ 2024/04/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/13 (土) 16:00

*

いつかの交差点で、僕たちは異次元の希望を探す

いつかの交差点で、僕たちは異次元の希望を探す

kazakami

スタジオ空洞(東京都)

2024/05/05 (日) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/05 (日) 13:00

少子化を筆頭とした家族/家庭の問題に関する会話のスケッチ集……であるがシンポジウムや討論会のように大上段に振りかぶった堅苦しいものではなく、飲みの席や終業後の職場などでのものなのでカジュアルでとっつき易く大胆な説(ってか暴論?(笑))まで出てあれこれ考えさせられる。
また、複数の場での会話だが場が代わる度に舞台上手にその場の情景画像を掲示し、演者が上衣や眼鏡の脱着で人物の違いを表現するのもイイ。(とか言って気付くのが遅れてしばし戸惑ったが(爆))
さらにそれまで併走していた各場が終盤で「花火」によって一つに収束してゆくのが巧いしドラマとしてのまとめ方として好み。

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/12 (日) 10:30

「思い出せない夢のいくつか」
アゴラ劇場サヨナラ公演もあと3日を残すところとなり、建物外観の写真を撮る人が目につく。
大人3人の夜行列車の旅。
木製の座席とランプの灯りが、”大人の銀河鉄道の夜” を柔らかく見せる。

ネタバレBOX

芸能人の女性、ベテランマネージャーの男性、それに若い付き人の女性の3人が
夜行列車の座席に座っておしゃべりしている。
星座の話、結婚式の話、煙草を吸いに行ったら変な乗客がいた話など。
付き人の女性が星座盤を持っていること、鳥捕りや灯台守など、
「銀河鉄道の夜」のエピソードがいくつも織り込まれ
この列車はひょっとして、死者を乗せているのかと思ったりする。
あるいは死にゆく人を乗せているのかと・・・。

会話の ”間” は、信頼関係の度合いを表すものだが、
彼らのそれは緊張感を伴うものの、苦痛は感じない。
この静けさとテンポが、心地よかった。

駒場東大前というこの駅、この街、この商店街が好きだったなあと思う。
アゴラ劇場が無くなるなんて、考えもしなかった。
だがこの芝居のように、全ては夢のごとく過ぎ去って、
私たちは皆いつか、銀河鉄道の乗客となるのだろう。

ありがとう、さよなら、アゴラ劇場・・・。

ブルーアイデンティティ

ブルーアイデンティティ

X-QUEST

王子小劇場(東京都)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

それはその男の夢なのか夢想なのか、まあどうとっても良いのでしょう。それよりも殺陣やダンスや衣装や役者陣の素敵なところを見惚れて終わる80分。
その後の撮影タイムはステージから一人ひとり観客をみんなで見つめてくれる、一瞬の幸せでした。
途中何回かの公演が中止になってしまったので、いろいろ購入して応援したいところですが諸々事情もありまして、次回公演もきっと観に行きます。

風と共に去りめ

風と共に去りめ

かーんず企画

シアター711(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

あらすじにあった通りに
『裕福な家庭』『無機質なオフィス』『1Rマンション』『画家のアトリエ』
を白線で分けて舞台上に四つの世界を表現してるので
結構狭い感じに見えたかなぁ
中心は一人の男であり
彼がオフィスの人間に罪をかぶせられて放逐され
画家のアトリエからも逃げ
ネット配信していた女性の元も追い出され
傷つき倒れていたところを
医者夫婦の裕福な家庭にて助けられるのだが・・・
と展開がクルクルと
舞台上の四つの世界を男が巡ってゆく作品

う~ん
ドニーダーコみたいな感じだったかなぁ と

ネタバレBOX

最終的に男が隕石の衝突を認めて
受け入れてくれてた医者夫婦の一人娘が
その隕石落下という事象を受け入れる?
という感じであっているのだろうか・・・

隕石とタイトルの風とかは
あまし繋がりを感じなかったかしら
風の名はアムネジアみたいな話の方が
分かり易かったかなーとも
『緋色の研究』『四つの署名』

『緋色の研究』『四つの署名』

東映

サンシャイン劇場(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「四つの署名」を観劇
広い洋館の一室、ソファーには名探偵ホームズとワトソン
てっきり二人の回想録で物語を紡いでいくものかと思っていたら、次々登場してくる人物達も全てこのお二人で演じ分けていくという
場面転換も変幻自在、リーディング公演の自由度を大いに活かしながら、海外ミステリー独特の世界観をみるみるうちに創り上げていくテクニックには驚かされました
ストーリー的には雰囲気美人な印象でしたが、莫大な利権の匂い、浮かび上がってくるきな臭い人物達、段々と立ちのぼってくるおどろおどろしい空気感にはゾクゾクさせられます

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『阿房列車』

1991年初演、『思い出せない夢のいくつか』(1994年初演)と同じ会話があったがこっちが先だった。オチのない話を皆で回す『すべらなくもない話』。何か落語っぽいよね。主演の中藤奨(なかとうしょう)氏の喋り方が太田光みたいで、笑いのない漫談を聴いている感じ。掛けっ放しの深夜ラジオを何となく聴いているような。
奥さん役のたむらみずほさんが流石だった。会話の何気ない一言に急に大声を上げてブチ切れるツッコミが客席を沸かす。
何気なく席についた田崎小春さんは話好きの夫婦に延々と捕まってしまう災難。

ネタバレBOX

見た目は老夫婦にした方が味があったと思う。
「何だかよく分からないが、でもこれが人生」みたいな感慨を狙った作品なのだろう。
まるで同一人物が二人いるような田崎小春さんのネタだけが特殊な仕掛け。

「噛むのは本能、飲み込むのは迷信」とか何かよく分からない平田オリザ節連発。生と死だとか日常と非日常だとか、まあよく分からない。作品の狙いは何となく判るのだが、もっとガチガチに面白くしてもいいのではないか?笑いで会場をうねらせても最後の余韻まで辿り着くと思う。ガラガラの名画座で老人と並んで観るような作品も悪くはないのだが。
「AM0時のFMで」

「AM0時のFMで」

劇団Funplace

STAGE+PLUS(大阪府)

2024/05/11 (土) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

満足度★★★

千秋楽拝見 満席🈵💺
内容はそれなりで、涙している人も生きる目標を持って生きている人は…自分の好きなことをして生きている人は…そのきっかけを教えてくれる物語

初級革命講座飛龍伝

初級革命講座飛龍伝

一般社団法人シアター&アーツうえだ

THEATRE E9 KYOTO(京都府)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/10 (金) 18:30

当時のつかこうへいの熱気が大いに伝わる。連続した台詞の量に圧倒される。中学出の機動隊とインテリの学生運動家との対比、お互いが青春を捧げた70年安保の戦いの思いが切に伝る。権力が東大生と日大生に手心に差をつける。楽しく興味深く観劇。

空夢

空夢

劇団papercraft

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/04/26 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

セットを見たときに不安を覚えましたが、やはり私には響かなかった。
演ってる方もつらいのでないかとまで思いましたが、なんかWコールでした。(形式的なのかな?)

いつか、ある夜。ノクターン。

いつか、ある夜。ノクターン。

演劇ユニット41×46

劇場HOPE(東京都)

2024/05/10 (金) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

中川浩六さんの作るめんどくさい人の話が私にはとても面白かった。
2話目のバーテンさんはかっこよかったです。私はシナトラのFlyMeToTheMoonの方が好き。エヴァンゲリオンのもいい。
ほかのも総じてよかったです。ギターも。
あ、前説(録音?)の『本公演』のアクセントが私の想像するアクセントと違っていたけど北海道方言でしょうか?

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『思い出せない夢のいくつか』

どさ回りの落ち目の歌手(兵藤公美さん)が列車に乗っての地方巡業。かつては一斉を風靡したこともあり、それに憧れた歌手志望の少女が今は付き人(南風盛〈はえもり〉もえさん)に。長い付き合いの裏も表も知るベテラン・マネージャー(大竹直〈ただし〉氏)。

兵藤公美さんは室井滋っぽい。会話の雰囲気が小林幸子を思わせる。結婚離婚のエピソードは大原麗子を連想。カンパニーデラシネラ、『気配』で主人公の奥さん役だった。

舞台美術が凄い出来。撒かれた白と灰色の砂利、敷かれた線路、昭和初期の木製の客車。車輪に見立てたバーベルが前後に転がっている。星座早見盤を取り出す南風盛もえさん。三人は蜜柑や林檎を食べながら窓の外の星を探す。煙草を吸いに行ったりジュースを買いに行ったり。

ネタバレBOX

『銀河鉄道の夜』の同人みたいな作品。沈黙の三角関係を深読みする人もいるが、どうもそんな風には受け止められない。足りない話を宮沢賢治の匂いで補完した感じ。

自分的には物足りない。手が合わないのか、この配分が気に食わないのか。『銀河鉄道の夜』のコロンがないと、とても観ていられない薄さ。深読みする程、興味が持てない。

ただ、夢のシーンが秀逸。このワンシーンだけで今作を忘れることはないだろう。

ジュースを買いに行かされる南風盛さん。なかなか帰って来ない。歌手もマネージャーも寝てしまう。すると、客席後ろの通路を通って南風盛さんが現れる。歌っているのは間延びした「星めぐりの歌」。二人に林檎を置いて去って行く。呆然と眺める兵動さん。しばらくして南風盛さんが本当に帰って来る。「あんた、死んだのかと思った!」「死んだのは私の方か?」
深い森のほとりで

深い森のほとりで

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋ホール(東京都)

2024/05/10 (金) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

バングラデシュで待っている人のために、次々直面する困難を乗り越えて、ワクチンつくりに挑む科学者の物語。素直に感動した。運営交付金を減らされる弱小国立大学、金のない人たちが死んでも、多額の資金のかかる薬の開発に腰を上げない製薬会社(「死の谷」という)、海外からは何をしているか見えないガラパゴスの日本の研究者など、新聞かテレビのドキュメンタリーのように今日的実情が盛り込まれている。また、ビル・ゲイツ財団やワクチン開発支援機構など、ハードルは高いが支援の手があることも分かる。2017年2月から2023年3月31日まで、最後の場面ではコロナ禍もかかわってくる。

主人公原陽子(湯本弘美)の研究者歴もきちんと語っている。恩師本田教授(広戸聡)のおかげで今があるという背景が、物語の奥行きを深めている。わきに配された人々も、それぞれモデルがいておかしくないつくり。東大史料編纂所の学術支援専門員という、知り合いの娘さんが来ていて「まさに自分も、作中の産学連携支援の山口さんと同じような立場」と言っていた。女性研究者たちの直面する壁、挫折、それでも持ち続ける研究への思いを、過たず描いていた。

夢と生活のはざまで悩んだことのある、多くの人の心を打つ舞台である。主人公の壁にくじけず挑戦し続ける姿に励ましをもらえるだろう。
俳優たちは、青年劇場らしい楷書の演技で、ユーモアさえまじめさがみえる。看板役者たちは今回はおらず、広戸さん以外は知らない顔だが、よかった。若い五嶋佑菜さんには太めキャラの愛敬があり、八代名菜子さんは清楚な美しさがよかった。

白狐伝

白狐伝

SPAC・静岡県舞台芸術センター

駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場(静岡県)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「アウトサイダーの嘆き」

 岡倉天心が1913年に亡くなる直前に書いた唯一の戯曲を宮城聰が劇化した。「ふじのくに野外芸術フェスタ2024」の新作である。

ネタバレBOX

 舞台上には上下に御簾の掛かった演奏スペースが設置され、草花の意匠をあしらった衝立が目につく。真ん中の衝立の向こうから現れた美加理演じる狐のコルハは、口に青く光る魔法の玉を咥えている。SPACの劇団員による演奏も相まり、白皮の狐姿の美加理は愛らしくも妖しく我々を劇世界へといざなう。

 魔法の玉の力を狙う悪右衛門(動き:貴島豪/語り:吉植荘一郎)は、歌舞伎や京劇を思わせるようなメイクで強いインパクトを与える。悪右衛門一味の放った矢で負傷し窮地のコルハは、土地の領主である保名(動き:大高浩一/語り:若菜大輔)に助けられる。このあたりでいよいよ宮城がコルハの語りで物語に加わり客席が湧いた。

 保名は許嫁の葛の葉(動き:美加理/語り:宮城聰、共に二役)と彼女の誕生日を祝っているところを、葛の葉に横恋慕する悪右衛門一味に屋敷を侵略され、彼女を奪われてしまう。野外劇場の舞台機構をフルに使った軍勢や立ち回りは見ごたえがあった。葛の葉の破れた片袖を握ったままさまよい歩く保名を救うため、コルハは葛の葉そっくりに姿を変え保名を山中の隠れ家に匿う一方、悪右衛門を罠にかけ崖から突き落とす。

 葛の葉に姿を変えたコルハは保名とのあいだに生まれた幼子を育てながら静かに暮らしていたが、ある日保名の留守中に家の前を通った巡礼の一隊から、保名を探すことを諦めた葛の葉が明日剃髪することを知らされる。恐れおののくコルハを美加理の動き、宮城の語りが絶妙なコンビネーションで表現しここが一番の見ごたえがあった。心を決めたコルハは保名に万感を込め最後の願いを告げる。

 昨年の『天守物語』同様に人間界と自然界の対立と調和に通じる作風ながら、本作が特徴的なのは人間にも狐にもなりきれないのコルハのアウトサイダーとして嘆きである。古典芸能の世界で散々描かれてきた世界に、現在私たちが直面している人種間やジェンダーなど、さまざまな状況を重ねて観られる、きわめて間口の広い上演であった。

かもめ

かもめ

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「愛情と承認の物語」

 ドイツの演出家であるトーマス・オスターマイアー率いる劇場、シャウビューネが2023年に初演した『かもめ』である。初演からわずか1年あまりの来日に満場の客席が大いに湧いた。3時間半の上演が苦にならない充実ぶりである。

ネタバレBOX

 いつもの静岡芸術劇場の舞台上に馬蹄形に客席が配置され、奥のホリゾント幕前には数脚の木製の椅子や机、ビーチチェアやカウチが置かれている。定刻になるとホリゾントには墨絵のような筆致でゆっくりと山肌が、つぎに大樹が描かれて、ここが自然のなかなのだとわかる。

 幕開きから意外だったのは平時から喪服を着ていることを嘆くマーシャ(へヴィン・テキン)と彼女に叶わぬ思いを寄せる教師のメドヴェージェンコ(レナート・シュッフ)の対話がボールを蹴りながら交わされた点である。まったくしめっぽくないばかりか演技スペースと近い客席にもボールが届くことになり戸惑いの笑みがこぼれる。この軽さと親密さが本作を貫く新しい感覚である。登場人物がまとっている衣装も現代の我々のそれと大差ない。これは誰しも経験しうる物語なのだという主張がここでわかる。

 とはいえ大筋はほぼ原作通りである。作家志望の青年トレープレフ(ラウレンツ・ラウフェンベルク)が恋人で女優志望のニーナ(アリナ・ヴィンバイ・シュトレーラー)に屋敷の庭で組んだ仮設舞台で新作を演じさせる様子を、トレープレルの伯父で屋敷の主であるソーリン(トーマス・バーディンク)をはじめ屋敷の人びとが鑑賞するも、トレープレフの母で女優のアルカージナ(シュテファニー・アイト)に失笑され上演を取りやめてしまう。原作ではニーナがトレープレフの書いた抽象的な台詞を謳いあげるが、ここではトレープレフはマイクを客席に向け小鳥のさえずりのような声を集めたり、全身タイツで世界創生のときにいたのであろう原始生物を演じたりしていてキワモノ感がより強く出る。

 挫折感に苛まれ森の中に迷い込むトレープレフをよそに、女優としての野心に満ちたニーナはアルカージナの愛人で新進気鋭の作家トリゴーリン(ヨアヒム・マイアーホッフ)に強く惹かれる。原作では30代の設定だが、後の幕で「年寄り」「理髪店のおやじみたいな髪型」と揶揄されるくだりがあった。この設定変更によってニーナの先行世代への羨望、もっと言えばファザーコンプレックスに近い感覚がより強く出るようになった。

 シュテファニー・アイトのアルカージナは貫禄ある大御所女優というよりも女盛りといった感覚で、マーシャの若さへの嫉妬やニーナとトリゴーリンが惹かれ合うことへの焦りの芝居が印象深い。自殺未遂をしたトレープレフの包帯を取り替えるときに互いに激しく罵り合うやり取りも、愛する息子への忠言というよりはまるでもう一人の若い恋人を批難しているように見えた。そうなるとトレープレフもアルカージナに対して、一人前の男として認められたいという願望を強く抱いているように見えてくる。これらの人物のやり取りを観るにつけ、『かもめ』は世代間対立の物語という側面だけでなく、愛情の行き違いから起こる承認の物語でもあるのだということがわかってきた。

 2年後にソーリンの体調を気遣い屋敷に戻ってきた人々が再会し、シャムラーエフ(ダヴィット・ルーラント)がトレープレフが撃ち落としたかもめの剥製をトリゴーリンに見せるくだりも原作通りだが、台詞をいくつかカットしてトレープレフが自身に向けた銃声が鳴り暗転して幕を閉じる。ここでもう一捻り、現代における上演意義を示してもらいたかったというのは叶わない願いか。

(あたらしい)ジュラシックパーク

(あたらしい)ジュラシックパーク

南極ゴジラ

王子小劇場(東京都)

2024/03/28 (木) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「独自の劇世界が描く青春模様」

 2020年に『贋作ジュラシックパーク』を発表した脚本・演出のこんにち博士が新たに取り組んだ作品である。

ネタバレBOX

 物語は全4話であり、全編を通し映画『ジュラシック・パーク』で紹介された方法を模して新しく作られたというパークで展開される(この設定がまずおかしい)。第1話「お天気ボックス」は新しいジュラシックパークで生まれ育った主人公・湾田ほんと(端栞里)とその同僚や友人たちの日常が描かれる。できる仕事人を夢見る湾田だが同じ「小型草食恐竜管理室」チームのアルミ(九條えり花)に任された仕事を台無しにしてしまい、微山治夫(こんにち博士)には先を越され、リーダーのメガマック(TGW-1996)からの評判もよくない。窮地に陥るとAIコーチの明星(井上耕輔)を呼び出しては助けを乞うことがお決まりである。仕事終わりに友人のドゥドゥ(古田絵夢)と語らう時間が息抜きになっているが、同僚たちからはあまり評判がよくない。

 たまたま花形部署の「大型肉食恐竜管理室」に欠員が出たため手伝いに来たワンタだったが、そこで働くシャークウィーク(瀬安勇志)と自分のスキルの差を思い知らされる。そこへパーク外からやってきた中黒二鳥(ユガミノーマル)が、塗れば剛毛が生える「オオカミ男クリーム」のセールスを装い園内に侵入する。中黒は恐竜の胚を盗み出そうとするも、ワンタたちの仕事の失敗に巻き込まれ散々な目に遭ってしまう(第2話「オオカミ男クリーム」)。

 ある日湾田はコピー人間造りを企んでいる浮卵博士(和久井千尋)と遭遇する。その半年後、パークには湾田と姿がそっくりだが格段に能力の高いワンダー(揺楽瑠香)が入ってくる。この半年間に同僚たちもそれぞれ能力があがり、湾田はひとり不貞腐れ気味だ(第3話「人間製造機」)。そこに来た博士は自作の人間製造機を使えば、湾田とワンダーの脳みそを入れ替えることができると話を持ちかける。一度はその話に乗った湾田だったが、自身の決断には迷いがあるようで……(第4話「エアポッツ」)。

 全4話の物語は湾田の成長物語として一本筋が通っており、ほかにもさまざまに小ネタが仕込まれているため単独でも愉しめるようになっていた。他の誰も真似できない独自の作品世界を創造した点は注目に値するが、満場の客席に過不足なく伝わっていたかは疑問が残る。ジュラシックパークの設定であるとか科学技術の説明に馴染むまでかなりの時間を割かなければならなかった点に加え、小手先のギミックにこだわりすぎるあまり各登場人物の掘り下げが浅く、肝心の若者の成長や青春模様が十分に描けていたとはいいがたい印象を受けた。終盤で湾田が漏らす、自分が凡庸な人間とわかりきっているが特別でいたいという嘆きは万人の共感を得るものだし、最後にとる選択も納得がいくものであるため惜しい。

 ジュラシックパークのセットや恐竜の模型など手作り感あふれる舞台美術は手が込んでおり、プロローグの出演者による合奏を含め、作りたいものや見せたいものを舞台に上げたのだろうなと深く得心した。しかし実際に紙製の素材でできた恐竜や作り込んだ特殊効果を舞台に上げても、映画のそれと比べれば見栄えで劣ってしまうのはわかりきった話である。だからこそ舞台上では俳優の芝居と観客の想像力に託し、たとえば暴れまわる恐竜の様子を語り物のようにして伝え、生々しい恐怖感を与えるという手法も考えられたのではないか。
天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

「客席をハイジャックする歴史劇」

 1970年3月31日に発生した日本赤軍によるよど号ハイジャック事件に取材した作品である。2022年に新型コロナウイルスのため上演中止になった公演のリベンジとなった。

 客入れでかかるサイモン&ガーファンクルの曲が往時を思わせ、機内アナウンスを模した上演前の案内が客席を劇世界へといざなう。楽園の二面舞台最奥を操縦席に見立て、そこから対角線上を飛行機内と見立てることで、客席がハイジャック犯に占拠されたかのような気持ちにさせる空間設計がまずうまい。

ネタバレBOX

 機長の石田真二(祥野獣一)と副操縦士の江崎悌一(北川サトシ)により運航されていた日本航空351便は、赤軍派を名乗る田宮貴麿(杉浦直)らによってハイジャックされ、北朝鮮へ向かうことを強いられる。客室乗務員の神木広美(秋月はる華)は乗客の命を最優先に他の客室乗務員と奮闘するが、新米の植村初子(吉永雪乃)はオロオロするばかり。その頃地上では日本航空専務の斎藤進(高橋亮次)が対応に苦慮するなか、運輸大臣の橋本登美三郎(齊藤圭祐)の代わりに政務次官の山村新治郎(山村鉄平)が自ら人質になることを申し出る。しかし山村には他に隠している家庭内の苦慮があった。

 事件にかかわった人物を実名で舞台にあげた勇気には感服したが、この上演を通して伝えたいテーマが見えてこないため、調べたことをただなぞっていたようになってしまった点が残念である。また状況の変化がすべて台詞で説明されてしまうため劇的な効果を殺いでしまっていた。さらに機内の様子や航空会社、関係省庁や議員が行く末を見守る様子に加え、乗組員のプライベートの描写が入ってきたことで情報が錯綜し、観ていて混乱した。いっそ機内の様子に的を絞ったほうがより緊迫感が増しただろうに残念である。

 俳優は皆健闘していたが、説明的な台詞のために深い共感を呼ぶようなものが少なかったのも残念な点である。そんななかでも実行犯に一時的に共感する様子を見せる沖宗陽子を演じた岡田さくら、冷静な指導教官深澤聡子を演じた下平久美子が印象に残った。
雨降りのヌエ

雨降りのヌエ

コトリ会議

扇町ミュージアムキューブ・CUBE05(大阪府)

2024/03/09 (土) ~ 2024/03/30 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「待ちわびていない兄の再来」

 扇町ミュージアムキューブのオープニングラインナップとしてまるまる1ヶ月、さまざまな企画を詰め込み劇団が総力をあげて取り組んだ公演である。

ネタバレBOX

 全4話からなる『雨降りのヌエ』は、長兄の四宮幸人が亡くなった2124年10月5日の21時に弟妹に起きた出来事を描いている。どの話にも共通して、客入れの挨拶を終えた若旦那家康が「私は死にました」と舞台に上がると物語が始まり、「兄」として物語に介在し続ける特徴がある。

「第夜話 縫いの鼎」は4番目に生まれた次女の優香理(三ヶ日晩)と夫の壮太(山本正典)が離婚届に判を押そうとすると、横から兄がくまさん判子を押してきて妨害する様子をコミカルに描く。二人とも幸人が亡くなったことはわかっているし、その場に立ち妨害行為をしてくる点も納得済みであるというところがこの物語の奇妙な点である。優香理は幸人の葬式に行こうとしているが、急に兄思いになった彼女の異変を壮太は見逃さない。どうやら家族にとって兄は邪険の対象だったことがここで示唆される。壮太の不倫を疑う優香理は葬式に行こうとしない彼を咎め、やがて矛先は兄へと……互いの腹を探ろうとする言葉少なな問いかけの応酬と、電動ケトルで湯を沸かす音でできる間が、この夫婦の心情を台詞以上に物語っていて面白い。

 急にSF色が濃くなる「第空話 盗んだ星の声」は、火星へと旅立つ宇宙船での珍事を描く。末弟の和(吉田凪詐)と並んでの宇宙船の最低客席に寝転ぶ友人の高橋隆也(まえかつと)は、傍らにいる兄がずっと自分たちを眺めている様子を気味悪がっている。3年かかる航路の最中は冷凍冬眠が必要のようで、あらかじめ必要な薬剤を渡されたのだが、英語の取扱説明書が読めない高橋は薬剤を全て飲んでしまい体が硬直しかかりパニックに陥っている。地球に何の未練もない二人のヤケクソ、体を固めた状態で寝場所を行き来する様子は面白かったが、ちょっと元気過ぎるように見えた。

「第蓋話 糠漬けは、ええ」は幸人のすぐ下の弟の康雄(大石丈太郎)が営む占いの館「きら星」が舞台である。息を吸うようにぬか漬けを食べる訪問者の楓智子(川端真奈)は、その臭いに子どもの頃兄から受けたトラウマティックな仕打ちを思い出した康雄に不機嫌な顔をされる。智子はやがて自分は体を乗っ取られて火星人になったことを告白し、和の火星への航路を案じる康雄を戦慄させる。いつの間にか兄の頭には宇宙人のツノが生えており、彼もまた火星人になっていたことが明かされる。今から100年後に訪れる火星人の侵略、黙示録的な未来世界がコミカルに描かれる。

 5人きょうだいの真ん中、長女の理子(花屋敷鴨)と兄の分身(原竹志)との対話「第形話 温温重」を観ると、四宮家における幸人の立ち位置がより鮮明になる。運転中の理子は幸人の分身と子どもの頃父親が起こした事故のことや、その父親の葬儀で見せた幸人の暴挙を咎める。幸人の分身はただ無表情に受け流すだけで、その様子に腹がたった理子は幸人の分身をクッションで散々に殴りつける。やがて理子はトランクのなかにある兄の遺体を県境に捨てにいこうとしているのだと告げる。かたくなな理子に対して幸人の分身がとる行動が常軌を逸してくる。いまにも泣き出しそうな理子を演じた花屋敷と、ずっと舞台上にいる若旦那同様に無表情ながら次々におかしな行動をとる原演じる兄の分身の腹のさぐりあいは見ごたえがあった。ドライブ中にサザンオールスターズの「希望の轍」がかかり、サビに入るタイミングで消音したり、扉の開け閉めや灰皿を回収する擬音を台詞で言ったりするなど、ここでも音とその間が台詞以上に雄弁である。

 本来不在であるはずの兄の幸人が常に物語の中心に位置し、死してなお弟妹たちに影響を及ぼし続けている4作を観ていて、私はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を想起した。4人とも兄の再来を待ちわびてはいないものの、生前素行がよくなかったからむしろ亡くなってくれて嬉しいかと思いきや、いざいなくなったらその不在に苛まれている点では、ウラジーミルやエストラゴンと近い心持ちだろう。しかしいつまでもやって来ないゴドーとは異なり、可視化された兄が具体的に行動を起こしていた点が独特である。その意味では別役実の『やってきたゴドー』の展開に近いものを感じた。

 番外編の「第糸話」は楽屋落ちとSFの要素を融合させた人形劇である。消息を絶った若旦那家康を探す劇団員たちの珍道中を、映像とアテレコでリアルタイムに紡いでいく。途中に入れ込む音楽やテレビアニメのパロディなど、手数の多い遊びを好き放題やっていて面白い。

 充実した短篇公演を敢行しただけでも瞠目だが、ほかにもトークショーや公演準備の公開、過去公演のリーディングや公開デッサンなど、企画力の高さが伺える内容であった。
新ハムレット

新ハムレット

早坂彩 トレモロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/03/22 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「開戦間際の風景」

 太宰治が太平洋戦争開戦間際の1941年7月に発表した初の書き下ろし小説であり、レーゼドラマである。

ネタバレBOX

 中盤までの大筋はほとんどシェイクスピアの『ハムレット』通りであるが細部が異なる。デンマーク国王のクローヂヤス(太田宏)は先王亡きあと間もなく王妃のガーツルード(川田小百合)と結婚した。そのことを受け王子ハムレット(松井壮大)は義理の父と実母に心の距離ができてしまう。侍従長のポローニヤス(たむらみずほ)の息子レヤチーズ(清水いつ鹿)のように遊学へ出かけることもできず、ポローニヤスの娘で恋人のオフィリヤ(瀬戸ゆりか)との関係もぎくしゃくしている。親友のホレーショー(大間知賢哉)から先王の幽霊が出るという噂を聞いたハムレットは、クローヂヤスに疑念を向ける。

 本作の特異な趣向は、序盤に登場する男(黒澤多生)がナレーターのような役回りで作品を進行している点である。男は原作にある「はしがき」を読み上げて作品解説を加え、作中描かれている内容を要約し観客に伝えてくれる。男が初登場時の人物の名前や役柄を読み上げたとき、ティンカの音とともに和洋折衷の衣装を身にまとった人物に光が指し、顔を上げる演出が『忠臣蔵』の「大序」のようで面白い。このように物語の語り部として作者つまり太宰治自身を舞台に上げたことでメタフィクションとしての趣が強くなっている。木製の足場で組まれた舞台機構を回転させながらその近辺で物語が進行するというのもこの傾向に拍車をかけた。上演するには長すぎる部分を男の語りで端的に済ませたことで観やすくなったという利点があり、作品が書かれた1941年の時代状況を踏まえたうえで鑑賞するという意識もまた持ちやすくなった。

 また、たむらみずほ演じるポローニヤスの存在も本作の興味深い趣向である。作中ではハムレットにけしかけ王殺しの劇中劇に加わり、怒りを買ったクローヂヤスに思いの丈を述べたあと殺されてしまうという役回りである。これだけだとただの悲劇の登場人物だが、侍従長というよりは田舎侍のような風体、ガニ股でコミカルな動きでこの役を演じたことで、あたかも道化のようにももう一人の狂言まわしのようにも見えて面白い。

 幕切れは戦争が始まりレヤチーズの乗った船が沈んだ知らせを聞き、自傷行為に走るハムレットのもとへガーツルードの入水自殺の報が入るという、太宰独自のものである。中盤まで登場していた語りの男はいつの間にか消えて、太宰そのひとが投影されているかのようなハムレットの嘆きが耳に残る。開戦と同時に訪れるカオスは作品が書かれた時代、そして現代と二重写しになっていて見応えがあった。

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