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「ボイルド・シュリンプ&クラブ」(8月)

「ボイルド・シュリンプ&クラブ」(8月)

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2012/08/15 (水) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しー!!!
バリバリゴリゴリのコメディ。「庶民エンタメ」って感じで、とても楽しいひとときだったなあ。

60分×2本の構成になっていて、どちらもおもしろかったです。
欲を言えば、登場人物をクロス(?)させてくれたらな、と。1本目のヒロインが、2本目のチョイ役で登場するみたいな。

主人公の男探偵(妹尾伸一さん)は、一見、『古畑任三郎』の古畑、『相棒』の杉下のよう。 ま、コメディタッチの刑事役で、オリジナル色を出すってのは難しいのかも。 でも、冒頭シーンはたまらなく可笑しく(繰り返し登場するシーンでもあるのだ!)、魅力的なキャラクターでした。

もう一人の主人公の女探偵(椎名亜音さん)。彼女が、見事にストーリーに色を添えるんだよなあ。ま、ドギツイ原色なんだけどさ(笑) シーンが進むにつれ、勢いが増してきて・・・いいキャラだよなあ。椎名さん、美人なんだけどね。

ストーリーは、かなりベタです。当日パンフレットに、犯人書いちゃってるし(笑) でも、まったく飽きない造りになってるんだよねー。「これでもか!」ってくらいにネタをぶち込んでくるし。そもそも、2本立てじゃなくて1本を2時間作品に伸ばすこともできただろうに。 どこまでサービス精神旺盛なんじゃい!って感じ。サイコー!!!

サービス精神と言えば、この6カ月連続公演ラストということで、それまでの公演の出演者のカメオ出演が。こういうのウレシイなあ。。。

『天国の待合室』に出演してた八子あゆ味さん・・・すっげー髪盛ってた。色っぺー!!!

そして、宇田川美樹さん。すごくイイ女なんだけどね。婆さん役なんだよね(笑) 『関ヶ原でダンス』同様、完璧だね、完璧。

ネタバレBOX

刑事モノってのは、映画やテレビドラマでよく観てるだけあって、過去の刑事や犯人に投影してしまうとこがあって。

主人公の男探偵と1本目のヒロイン(町田奈緒さん)との絡みは、『古畑任三郎』の田村正和と堺正章のような緊迫感が。 てか、舞台上の2人は、まさしく正和様&堺正章だった(笑) あっ、町田さんは、とっても可憐できれいな女性ですけども。でも、表情というか醸し出すオーラは、堺正章だったね(←シツコイ)。

2本目の犯人のオーナーシェフ(小沢一之さん)は、草刈正雄と阿部寛を足して2で割ったようなシブさ。誤解を恐れずに言えば、浮いちゃうほど濃厚(←褒めてます)。

あまりにも楽しい芝居で、語りつくすことはできませんので・・・最後に一言。

女探偵(椎名亜音さん)の女子高生コスプレは、「不審者」というより「女装子」です。新宿三丁目の構内でよく見かけます。

以上!
劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/08/17 (金) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

スタンディングで鑑賞。
イス席もあるけど参加型なのでガッツリ立って観るのもよし。上演時間は約一時間十五分。美男美女が暴れまくって、演技もうまい。韓国の俳優はカッコえーなー。「スリル•ミー」韓国版の“私”に似た人がいた。

ネタバレBOX

いろいろ驚いたけど、俳優(「スリル•ミー」韓国版の“私”に似た人)が火を吹いたのには本当に驚いた(笑)。消えものも大胆。
人間なんてラララのラ

人間なんてラララのラ

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2012/08/01 (水) ~ 2012/08/10 (金)公演終了

満足度★★★★

やっぱりいつものだるま座
中央線快速人身事故のため、電車遅延。駅からダッシュしたけど、少し開演時間に遅れる。入場の際にはスタッフの方々にお手数かけました。お詫びとお礼を申し上げます。さて、芝居の方は笑えて、泣けるいつものだるま座。この安心感がいいんですよね。死神さんたちもいいひとだなー。

ラクト

ラクト

ブルーノプロデュース

東中野レンタルスペース(東京都)

2012/08/09 (木) ~ 2012/08/15 (水)公演終了

満足度★★★★

枠が滅失して
一応、お芝居を見に行くという意識とともに会場に入ったのですが、
その足掛かりが持てない中で
空気が流れて、惹きこまれていく。

舞台と客席の端境を失った中で、
くみ上がっていく虚実に
立ち位置を見いだせないままに、
でも、通常の演劇のフォーマットでは感じ得ないものが
流れ込んできて、
深く揺さぶられてしまいました。

ネタバレBOX

演者との距離の近さということでいえば、
昨今のお芝居には同様のものがけっこうある。
カフェ公演などだと、本当に近い位置に
物語が展開していく。
でも、この公演には、
物理的な距離による空間の一体感に加えて
物語としての枠が滅失していて。
明らかに舞台上の3人を観ているのですが、
それらを受け止めて対峙するための
物語としての骨組みや端境が降りてこない。
枠がないので、
空気は移ろい、色は日和見のごとく変化して
観る側もあるがごとくに流されていく。

でも、それが少しもバラけて感じられないのですよ。
演じる側に場にあるに足りる強さがあって
互いが互いの引力に委ねつつ
自らのロールを剥ぎだし空気を作り重ねていく。
その一瞬ごとが、息をのむほどにビビッドで
重なりが混濁せずエッジを持ち、
観る側を虚実の端境に置き、
刹那達の細微な揺らぎに染めてしまうのです。
高揚に背景がなくても、そこに理が生まれ
沈黙に言葉がなくても、醸される空気が観る側の心を揺らしていく。
語ること、次第に溢れていくもの、そしてそれを受け取る姿、
そこには枠に頼ることなく、
役者たちの作る求心力で
観る側を場に繋ぎ、見つめ続けさせる強さがあって。
役者たちが自らを置くその空気に
同じようにその空気に身をゆだねてしまう。

突然、場の出来事を嘘と言う。
わかっていて、なのに驚き、
そのことで、振り子のようによどみから抜けて
更に世界に閉じ込められてしまう。
そして、終演後には、
それが川に投げられた救命浮輪のように感じられました。
もし、その浮輪につかまることがなければ
終演後にも、
虚実の端境から抜け出せなかったかもしれない。

役者たちそれぞれの想いに染まりつつ、
時間の概念すら失い、、
やがて、唐突に役者たちが退出し、
流れがあっけなくその部屋を離れ、
終演となります。
一呼吸おいて、突然まわり始めたシーリングファンに
押し出されるように我に返る。

観終わって、これが何かと問われるならば、、
純然たる演劇なのだと思うのです。
でも、残る感覚というか、
記憶としておかれる場所が
常とは明らかに違っていて。
もっといえば、
残っているものは記憶とは別の、
感情側に差し込まれた何かのような気がして。

自らが持った感覚が、
演じた役者たちの印象とともに、
終演後もずっと消えることがありませんでした。

八月花形歌舞伎

八月花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2012/08/04 (土) ~ 2012/08/23 (木)公演終了

満足度★★★

海老蔵オンステージの『伊達の十役』
お家騒動の物語を、海老蔵さんの10役演じ分けや、宙乗り、大掛りな美術といったエンターテインメント性溢れる演出で描く、楽しい作品でした。

冒頭の口上で、これから演じる10の役の写真が掲げられていて、簡単に登場人物の関係が説明されるので、発端から二幕目の滑川宝蔵寺土橋堤の段にかけて矢継ぎ早に異なる役を演じても混乱することもなく分かり易かったです。
三幕目前半の足利家奥殿の場は子役と竹本が活躍していましたが、あまり変化がない場面で、ちょっと長過ぎるように思いました。後半は立ち回りや宙乗りもあり、躍動感がありました。
四幕目の山名館奥書院の場は海老蔵さんの長台詞が印象的でした。門註所門前の場ではコミカルな要素も多くあり、シリアスな場面が引き立っていました。

海老蔵さんはほとんど出ずっぱりで、男女善悪を声や表情や動きで演じ分けていて見事でした。役ごとの個性を出す為に声を作り過ぎて何を言っているのか分かり辛いところがあったのが残念でした。
最後には忠義の自決を果たすことになる絹川与右衛門のとぼけたキャラクターや、腰元累の「畏まりましたー」の言い回しが楽しかったです。

色々な趣向が盛り込まれていて、休憩を含めて4時間半の長丁場でもほとんど飽きることはなかったのですが、強く引き込まれる部分もほとんどなく、少々物足りなさを感じました。

劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

劇団ハタンセ『タイタス・アンドロニカス』

こまばアゴラ劇場

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/08/17 (金) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

すごすぎる
観客との距離が近い演劇があると思いますが、これは零距離演劇と言えるような参加型演劇だと思います。正直言葉は、一部日本語で話してくれる箇所もありますが、全く解りません。物凄く頭を使って観る芝居だと思います。雰囲気は伝わります。話の概要が書かれた用紙があるので、知らない人は先に読んで観るのも、観てから読むのもどちらでも良いかと。
色んな意味で凄い。初体験が多かったです。お客さんを巻き込む、魅せる、考えさせるという意味で、演劇らしさが沢山詰まってました。

ネタバレBOX

惨たらしい報復が繰り広げられる悲劇ですが、開演前に役者さんが既に出ていて音楽交流を求めてきたり、ワインのようなものを振舞ったりと、韓国人役者さんだからなのか斬新過ぎました。観客はローマ人や元老院議官という設定なのかと思っていたら、黒子の如く動く板を抑えたり、小道具を渡したりします。一見、客に対する扱いかよ!と思う方もいるでしょうし賛否別れそうです。けど僕は凄い面白かった。板上の席から観ることはあっても、立ち見もありで黒子役までやらされるのはそうないです。僕は絶対観る側に徹するぞと思いつつ、いくつかやらされてしまいました。
劇場の空間を全面に使い、多方面から観れます。口封じに舌と手首を切り落とすシーンは理解出来たし怖かったです。女性の胸元が露出しそうになる、食い物や水が観客まで飛び散る、終わりには膝から出血しているなど、放出されるエネルギーが半端なかった。結局言葉はわからないですが、ここは意識を置いている、ふざけた所、トチったなど何となくはわかります。国が違っても、演劇なのだと感じました。
レジスタンス

レジスタンス

サウザンドワークス

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★

懐かしかったり
ナンセンスな展開ですが、知っている人は知っている、懐かしいネタもあったりと、面白かったです。力量も差があったように見受けられましたが、身体も張って若さ溢れるパワーが伝わるお芝居でした。

ネタバレBOX

謎の新興宗教を中心に、宇宙からの来訪者と世紀末な隕石から感動で救うお話。
意外と言いにくい、大日本すっぽんぽん教。理念も意外と筋が通っています。教祖様と信者がよいキャラをしていました。短い時間に収めにきて良かったのですが、もう少し感動のエネルギーについて深く追求したり、基本的な発声も出来たらより良くなるのではないかと思いました。ぶっ飛んだものを作るなら、前張りのような挑戦も欲しかったです。
学生さんでも葉っぱ隊はギリギリ知っているラインだったのか、非常に懐かしさを覚え、若さを感じながら観れました。股間から声はシュールでした。
なにわバタフライN.V

なにわバタフライN.V

パルコ・プロデュース

嘉穂劇場(福岡県)

2012/08/11 (土) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★

花から花へ
 一人芝居とは何か? そこから出発した舞台だ。
 劇団の人数が少ないから一人芝居、という「引き算」の判断で仕方なく一人だけの舞台を作る“劇団ひとり”な俳優は少なくない。しかしその場合、「なぜ一人で演じなければならないのか」「一人だからこそ表現できるものは何か」という問題は忘れ去られがちだ。
 前日の一人芝居フェスティバルでは、九州勢の殆どが、劇作の時点からその問題に真剣に取り組んでいるとは言えず、「演劇もどき」に成り果てていた。それらとは対照的に、三谷幸喜は戸田恵子という逸材を使って、様々な一人芝居のありようを提示してみせた。近年、佳作もあれど全体としては粗製濫造がとみに目立つみたにではあるが、腐っても三谷、というべきか。
 三谷も戸田も一人芝居は初めてであるから、原点から出発せざるを得なかった。それがかえって功を奏したのだろう、舞台はシンプルで小道具も少なく、戸田一人しかいないにも関わらず、実にバラエティに富んだ、ある「喜劇役者」の一代記が展開されることになる。

 ミヤコ蝶々をモデルにした、ということになっていて、「なにわ“バタフライ”」というタイトルにもそれは確かに明示されている事実ではある。しかし、「モデルである」ということは、決してミヤコ蝶々と戸田の演じるキャラクターがイコールであるという意味にはならない。舞台上の「役者」はあくまでも戸田が演じている「名前の明かされない一人の女優」なのだ。
 戸田が蝶々に似ていないから、そういう作りにしなければならなかったという、これも「引き算」の判断で設定した面はあるだろう。だがこの舞台の場合、蝶々のエピソードはあくまで「素材」であって、そこに戸田の持つ芸の力をいかに発揮させるか、という「肉付け」を行うことによって、確実に「ある女優一代記」を構築することに成功している。引き算をしたままでは終わらない工夫が、しっかり施されているのだ。
 ミヤコ蝶々に似ている、似ていないという表面的な視点だけでこの舞台を見てしまっては、その本質を見誤ることになってしまうだろう。

ネタバレBOX

 嘉穂劇場の花道を、「戸田恵子」が客席にお辞儀をしながら、小走りで舞台に駆け上がる。息を整えながら、「戸田恵子です」と挨拶。「一人芝居ですから、前説から小道具の準備まで、全部一人なんですよ」と笑いを誘う。
 中央には背丈ほどもある風呂敷包みがあるが、その結び目を“取る”(ほどくのではない。結び目ごとスポッと抜ける仕掛け)と、中から鏡台や卓袱台などの小道具が取り出せる。
 最初は、これまでの公演の流れなどを、戸田恵子は「戸田恵子」として語っていく。「嘉穂劇場はいいですね。この雰囲気。このお芝居のモデルになったミヤコ蝶々さんも何度か立たれたところで」「三谷さんが、古本屋でミヤコ蝶々さんの自伝を見つけまして、こんなに面白い話はない、芝居にしようと……」など、これらは今までにも何度も語られている成立の経緯。蝶々さんの名前が語られるのは、この前説の時だけだ。
 一人芝居とは、と、様々な一人芝居のパターンも実際に演じてみせる。ある人物を演じた後、立ち位置を変えて別の人物を演じる。一人で喋りながら、相手の台詞も自分の台詞に組み込んで喋る(これを古畑任三郎=田村正和の声マネで演じたが、あまり受けていなかった。世間的には古畑も既に忘れ去られているようである)。
 「今回のお芝居は、そのどれでもありません」
 戸田恵子はそう言って、ふと虚空を見つめたかと思うと、すっと“別人”になる。その“別人”と、戸田恵子が会話する。
 「あんたが、私をやりはるんか。似てまへんな」
 「似てなくていいんですよ」
 しかしもう「蝶々」の名前は語られない。そこにいる「幽霊さん」は、ミヤコ蝶々かも知れないし、そうでないかも知れない。しかしこの時の「幽霊さん」の口調は、晩年の蝶々さんの、あの落ち着いてはいるがどこか突き放したような、それでいて優しさを失わない関西弁の口調、そのままだ。巧い。既に虚実冥合の境に戸田恵子はいる。
 立ち位置を変えての演技は、台詞と台詞の間にどうしてもタイムラグを産むが、ここは相手の台詞を受けて喋る間と長さを一致させることで不自然さを無くしている。これも巧い演出だ。
 勝手にやりなはれ、と幽霊さんは言うが、怒ってはいないのが客席に伝わる。そして、戸田恵子は羽織を脱いで、子供の格好になっていく。

 全体は三部構成。

 第1部は、幼少期から、最初の結婚の直前まで。
 芝居好きの父親の肝煎りで初舞台、劇団を作り、漫才を始め、筑豊の劇場主の息子「ぼん」と初恋をする。しかしこれは巡業先のこととて、すぐに破局。
 第二の恋は、漫才の相方「兄やん」と。知識の豊富な彼に、彼女は私淑するが、読み書きは不得意なままだった。自由のない暮らしがしんどくなり、彼女は兄やんと駆け落ち。しかし度胸のない兄やんは、すぐに逃げ帰ってしまう。仕方なく彼女も父の元に帰るが、それ以来、子供だ子供だと言われていた彼女は、めっきり女らしくなったと評判になる。

 一人何役もどのような形で行うかと思ったら、基本は相手の声は聞こえず、自分の受け答えだけで会話を想像させる、一人芝居の定番パターン。
 日常会話は殆どその形だが、問題はない。しかし、漫才シーンになるとさすがに無理が生じる。相方がどうぼけているのか分からないから、彼女がただ突っ込むだけで、何がなんだか分からなくなるのだ。ナンセンスを狙ったつもりだろうが、客席からの笑いもなく、これは失敗していた。三谷幸喜も気付いているはずだが、上手いアイデアが思い付かずに放置したようである。
 時折、木枠を相手に見立てて会話をする。「ぼん」や「兄やん」の枠は普通の大きさ、父親の枠は小さい(歳を取ると二段構えで更に小さくなる)。戸田恵子は、たまに枠の中から顔を覗かせて、相手の台詞を喋ることもある。この「枠を使った一人芝居」が、この劇の最も優れたアイデアだ。人形劇のアレンジではあるが、戸田恵子の指の動きが、男達一人一人の“表情”を自在に創り出している。
 「兄やん」から、笑いの極意として「緊張と緩和」を教わる件は、本作唯一の「笑い論」。

 第2部。

 落語家の「師匠」と恋仲になり、師匠を座長にした劇団を旗揚げする彼女。問題は、師匠には妻がいたことだった。「取ったもんは取られる。覚えときぃや」。そう捨て台詞を残して師匠の妻は去る。
 晴れて夫婦となった二人だが、師匠の浮気癖は治らない。薬(ヒロポン)に逃げる彼女だが、そんな彼女を支えて、薬からも何とか脱出させることに成功したのは、彼女の弟子の「ぼくちゃん」の存在があってこそだった。
 師匠と彼女は離婚し、そして彼女はぼくちゃんと結ばれる。

 師匠の下から逃げ出して、ぼくちゃんと泊まった宿屋が、兄やんと駆け落ちした時の宿と同じ、という設定。どちらも、相手ににじり寄られて身を任せてしまうのだが、「それは違うと思うンよ」と同じ台詞を彼女が言うのが可笑しい。
 こういうルーティーン(繰り返し)のギャグは、三谷幸喜は昔から巧い。この巧さがあるから、他に難点があっても、三谷の舞台は一定水準を保ってきた面がある。
 ぼくちゃんの木枠は普通で、師匠の枠はひときわ大きい。これは彼女から観た「人間の器」の象徴でもある。師匠はたとえ浮気をしようと、彼女にとっては「大きな人」だった。父親は本当にこぢんまりとしてしまったが、それは卑小なのではなく、彼女にとっての父親は、本当に「かわいらしい人」だったのだ。

 第3部。

 ぼくちゃんとの漫才コンビも軌道に乗り、テレビ出演も増え、一躍人気者になった彼女。しかし、芸の甘さが目立つぼくちゃんに、彼女は“師として”厳しく当たる。それがぼくちゃんを浮気に走らせるきっかけになった。
 「取ったら取られる」。ぼくちゃんの愛人を睨みながら、師匠の前妻の言葉を思い出す彼女。結局、二人は離婚し、ぼくちゃんは愛人と結婚したが、漫才コンビは人気が落ちない以上は解消するわけにもいかず、その後も続けることになった。ぼくちゃんが死ぬまで。
 糖尿病が悪化したぼくちゃんは、妻とも離婚し、面倒を見られるのは彼女だけになっていた。ぼくちゃんの死の床で、歌を歌う彼女。「タコに手無し、ナマコに眼無し」。それは、子供の頃、父親から教わって、舞台で歌っていた歌だった。
 一人になっても、彼女は、舞台を続けた。舞台に出る前にはいつも、彼女は恋してきた男達と想像の中で会話をして、それから舞台に立った。
 今もそうしている。

 鏡台が平行になって、ぼくちゃんが横たわるベッドに「変身」したのには感心した。初演は観ていないが、セットもきちんと作っていたのと違い、現在は最低限の小道具だけで演じる形に変化してきたらしい。その中でのこの「鏡台の変身」である。何もない空間で、衣装を替えるだけの一人芝居もありえるだろう。しかし、このベッドの側に頬杖をして寄りそう戸田恵子を観れば、これがあった方が、観客はそこに横たわるぼくちゃんの姿を連想しやすくなることに気付く。「見立ての変化」の驚きが、我々の想像力を刺激しているのだ。
 
 師匠のモデルが三遊亭柳枝で、ぼくちゃんのモデルが南都雄二であることは知っている人は知っている。南都雄二の芸名の由来が、文盲に近かったミヤコ蝶々が、台本を読みながら「これ、何と言う字?」と相方にしばしば訊いていたから、という俗説がマコトシヤカに囁かれている。ギャグとして使おうと思えば使えるネタだ。
 しかし、三谷幸喜は、そういう「ミヤコ蝶々であることをはっきり示せば笑いを誘えるネタ」を一切使わなかった。前説で戸田恵子が口にしていた「ミヤコ蝶々」の名前も、舞台を観ているうちにすっかり忘れていた。そうさせたのはまさしく戸田恵子の「芸の力」である。
 三谷幸喜の、戸田恵子への信頼が、小手先のギャグを封印しても構わないという判断を三谷にさせたのだろう。戸田の造形した「彼女」は、表面的にはミヤコ蝶々から遠く離れたが、「芸の力」という共通点によって、ぴったりと重なった。これはそういう舞台であったと言える。

 大千秋楽ということで、カーテンコールの後、三谷幸喜のナレーションが突然奈がされた。「戸田さーん、三谷です。探してもいませんよ。録音です。後ろを見て下さーい!」。
 「祝 100回、目指せ1000回(200という数字を消している)」という垂れ幕が下りる。観客が一斉にクラッカーを鳴らし、ダンサーたちが現れて踊り、花束が贈呈される。全てサプライズの演出。
 実は100回公演を果たした後、地方を廻る時の前説で、戸田さんはいつも「100回記念でもクラッカーが鳴るわけでもなく」とネタを振っていたのである。突然のお祝いに喜びながらも、戸田さんはどうやら仕掛けに気付いていたようだった。「何となくみんなの動きが怪しかったので」だそうだ。でも「1000回は難しいけど、200……150回なら何とか」と観客に期待を持たせて幕。「またこの劇場に呼んで下さい!」

 今回、観ることが出来たのは、一人芝居の「進化」の形の一つなのだろう。まだまだ甘いところ、もっとシンプルに出来るところ、更に台本を改訂する余地もあろうと思う。
 『12人の優しい日本人』もそうだったが、三谷幸喜が再演を掛ける時には、台本を大胆に書き換えることも少なくない。今回の「N.V」が最終形態というわけではないだろう。戸田恵子の「底」も、まだ探ればもっと大きな広がりが見えるのではないかとも思う。それが数年先になるか、十年先になるか。
 たとえミヤコ蝶々の没年に近くなっても、観てみたいと思わせる舞台だった。
明日を落としても

明日を落としても

ピンク地底人

インディペンデントシアターOji(東京都)

2012/08/17 (金) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

許し、か~
開演前に舞台上に置かれた機材を見ても、イメージがわかず。どういう公演になるんだろうと思っていましたが。静かでシリアスで不思議。演劇が好きだから、こういう方法を取るんだなぁと思うような、演劇だから出来る独特なパフォーマンス。ただ、緊張するシーンが続いて、なおかつ非常に繊細な空間になっているので集中力を維持するのが大変でした。好き嫌いが分かれるのかなぁ、僕は好きでした。地底人は非常にマジメだなぁ。劇場で配られた公演案内に「生きていることを人に許してもらいたい」という言葉が引用されていますが、その言葉を観劇後に噛み締めるような味わい深い作品でした。

ネタバレBOX

「豚キムチが好きで、映画監督になりたかった息子がいなくなる」というモチーフが執拗に繰り返されることで、「息子がいなくなった母親」の内向的な心情がありありと描かれる。観客席以外の3方向の壁際に並べられたマイクスタンド。マイクを通して、効果音や母親が今いる場所の音が全て生の声で表現される。雑踏に飛び交う声も、普段は気にしないような周囲の音も、その空気まで役者の発声で表現されて、それがとても新鮮で物語に合っている表現だと思いました。同時多発の声や音は、勿論全部は聞こえないけれど、情景をよく現していて、一つ一つこだわっていて、非常に繊細だなと思いました。

息子は本当はどこにいるのかわからないという風景がずっと続く。母親は息子が留学先に向かう飛行機事故で死んだことを受け入れられないのか、女優である母親の稽古中のお芝居の中身なのか、理由がわからず失踪して行方不明なのか、そもそも息子は生まれてなくて母親の妄想なのか、息子は家を出て街中で無差別殺人を犯して電車に飛び込んで死んだのか、といったようにシーンが繰り返される。緊張し続けて緩和があまりないので、上演時間は80分くらいなのに、集中して結構疲れてしまいました。この表現方法で、世界が広がり続ける様を見せてもらえたら、もっと自分の好みだなと思いました。
Count Down My Life

Count Down My Life

劇団TipTap

ザ・ポケット(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

凄くイイ!
友人に誘われて鑑賞した須藤香菜さんのライブで、須藤さんの魅力にイチコロ。
「評判イイらしいよ」と彼女を連れて観に行くことに。

Bver.→Cver.の順番で観劇。

同じ脚本、楽曲なのに(ちょっと違うところもある気がしたけど)、舞台を覆う雰囲気が全く違う、感じ方も全く違う・・・複数バージョンの興業も悪くないな、と初めて思ったなあ。

彼女がお気に入りのBver.は、ボクから見るとBL要素が強め(笑)

ボクがお気に入りのCver.は、須藤さんの魅力が爆裂してる(笑)
あの衣装、反則だよ・・・胸キュンしまくりだよ。。。


生演奏付のミュージカル舞台。

ちょっとドキドキはするけど、ベタな感じの脚本なので、どっぷりひたれるかと。

華やかなシーン、笑いのシーン、シリアスなシーン・・・緊張と緩和のサジ加減も心地よい。

誰もが楽しめる良質のミュージカルだと思います。

日曜日の昼公演(Cver.)、すっごく行きたくなってきた!

新潟競馬遠征は来週にしよっかな。。。

おやすみ、母さん

おやすみ、母さん

劇団ガプリヨツ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

母を思い、自分を振り返り。
この『おやすみ、母さん』は、3度目の鑑賞。
過去の2度の母親役は白石加代子さん。娘役は、渡辺えりさんと中島朋子さん。

渋谷LeDECOでの『おやすみ、母さん』は、母親に斉藤まりえさん、娘役に日沼さくらさん。お二方とも30歳前後の女優さん。

日沼さんを一目見て「ジェシー(娘の名)にしては若いし、綺麗過ぎるな」と思ったのは事実。渡辺&中島ジェシーの印象が強すぎたからかな。

でも、芝居が進むにつれ、ジェシーの羞恥心、虚無感、絶望がビシビシと伝わってきた。彼女の自意識過剰っぷりにイラつきもしたけど。人間なんて、パッと見は多種多様だけど、似た者同士だと思うけどね、根っこのとこは。ず~っと理想と現実との乖離に悩んでるし。良いことばっかじゃないからね。

斉藤さんのセルマ(母の名)の母親っぷりが凄い。白石セルマの達観してるともいえる母親とは違う「等身大の母親」といったところかな。だからこそ、ラストシーンがグッと引き立つんだよなあ。哀しいシーンなんだけど、強烈な生命力を感じるんだ。

90分間、どっぷりとひたって(時に、自分の母親を思って胸が締め付けられそうになりながら)、「良い芝居を観たな」と思った・・・けど、もっと攻めて欲しかった気もする。

この『おやすみ、母さん』は、翻訳モノなんだけど・・・シェイクスピアの作品を見た時にも思うんだよね、「セリフの量が多すぎやしないか」って。

たしかに、母娘の会話だけの戯曲だし、それぞれのセリフに玉のような言葉が散りばめられてはいるんだけど、情報量が多すぎて咀嚼しきれないところがある・・・ボクが、歌舞伎や落語のような「間」を楽しむ芸能が好きだからなのかもしれないけど(じゃ、どこをカットすりゃいいんだい?と問われたら、間違いなくボクは沈黙しますけども 笑)。

あと、母娘役を入れ替えたバージョンも観てみたいなあ。コメディのテイストを強めたバージョンもおもしろそう。80歳と60歳の母娘なら?父息子の関係だったら、観る方の感じ方が変わってくるのかなあ?

って、ここまできたら『ガラスの仮面』の世界だな(笑)

でも、そんなことを思うくらい魅力的なユニットでした。

ネタバレBOX

それにしても、自殺予告なんて・・・「予告なんてしないで勝手に死んでくれよ!」だよなあ。他人事であることを承知で言えば。

そんなに甘えないでよ、って感じ。

まぁ、だからこそ、ジェシーに言われたように「ジェシーが自殺した」と息子に電話する母の姿にグッとくるんだけど。

でもさ、生きてくれてるだけでイイんだけどなあ。。。。

その気持ちが伝わらないってつらいよ。
ダンス・ダンス・ダンス!?-点と点-

ダンス・ダンス・ダンス!?-点と点-

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

2日目を観劇
上演時間休憩込みで3時間半、長めだが必要に応じて作品の合間に入退すればよい。何が飛び出すかわからない面白さがある。6者とも個性的で出演を堪能しているようで気に入ったが、強いて一つあげれば石本華江、感情の変化に移入した。

師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

アリー・エンターテイメント

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/08/15 (水) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

花柄八景
師匠 の 笑顔が すてきでした。

ネタバレBOX

最後には とても 笑ってしまって 泣けました。
そうか、君は先に行くのか

そうか、君は先に行くのか

カムヰヤッセン

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/08/10 (金) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

やぶからし編観劇
上演時間70分。役者の皆さんがいい演技。

カンガルー

カンガルー

劇団東京乾電池

駅前劇場(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

昭和な作風そのまま
あぁ別役作品。観劇後3時間以上過ぎてもまだまだ余韻を楽しめる作品。娼婦役の高尾祥子さんのぽわんぽわんしているんだけどビシバシつっこみ的雰囲気、カンガルー?役の戸辺俊介さんのとぼけた素直さ、そのほかキャスティングが面白い。特に中盤以降のピクニック的公園の風景は心温まる場面。なんなんだろ。面白かった。もう一度観たい。

カンガルー

カンガルー

劇団東京乾電池

駅前劇場(東京都)

2012/08/16 (木) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★

インドで
高尾祥子のカタコトというかマイペースな雰囲気を筆頭に、ユーモラスな演技と演出に彩られた舞台。

ネタバレBOX

外国行きの船に乗れなかった帽子屋(谷川昭一郎)と妻(山田キヌヲ)と男(戸辺俊介)。船長と呼ばれる老人(綾田俊樹)らからカンガルーといわれる男と街の娼婦(高尾祥子)との間で奇妙な関係が生まれる…。

率直になんなのかわからなかったが、男の孤独な魂を娼婦が救う話かなと。弱々しくてふわふわしている男と、舞台を動かすパワーをもった娼婦のアンバランスさがユーモラス。100分も長くは感じなかった。

高尾祥子の魅力的な演技がうまい。あと、ヒモ役の伊藤潤も、ギャング役の血野も。山口智子の弾き語りも○。
なにわバタフライN.V

なにわバタフライN.V

パルコ・プロデュース

嘉穂劇場(福岡県)

2012/08/11 (土) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

すごかった!
とても面白かったです!ミヤコ蝶々さんのことは正直いって知りませんでした。漫才する人でしょ?とうっすらとしか知りませんでした。でも、今回の戸田さんのミヤコ蝶々さんを見てミヤコ蝶々さんに興味を持ちまして観劇後に色々調べていくと観劇後でしたがあぁーこの人がそうだったのかーとかいろんな発見があってとても面白かったです。嘉穂劇場はやっぱり最高の舞台だと思います!

ローザ【全国ツアー!!】

ローザ【全国ツアー!!】

時間堂

エル・パーク仙台 スタジオホール(宮城県)

2012/07/24 (火) ~ 2012/07/25 (水)公演終了

満足度★★★

仕事帰りに滑りこみ
なんとか間に合ったと思ったら開演。シンプルだけど美しい美術。照明の使い方による空間演出。俳優さんも皆さん魅力的でした。熱演という感じではなく、クールな大人のお芝居に好感を持ちました。物販のグッズ素敵でした。

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

アマヤドリ

ぽんプラザホール(福岡県)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了

満足度★★★★

アマヤドリ
ずっと観てみたかった渡邉さんが福岡公演だけのみの参加ということで観させていただきました。とても満足しました。榊さんも可愛かったです!

好きな人を独り占めしたい、他の人の目に触れさせたくない。
というのかな?そういうのってあぁー分かる!分かる!
と思いながら見ていたのですが本当に監禁?軟禁?してしまったら
ダメだよなーでも、本当にそんな状況に追い込まれたら
私も小田と同じ事をしてしまうのかな?とか色々考えました。
そういう時って他の人になに言われても2人の世界にどっぷり浸かっていたりしていて俗に言う周りが見えていないという。なんか本当に色々考えさせられました。でも、時々妙に笑えてきて途中から笑ってましたけどね・・・
チケプレで観させて頂きありがとうございました!感謝します。
でも確かにひょっとこの時にはあまり足が進まなかった気もします。
名前って意外に大事なのですね。

シアターグリーンにて~立った立ったハイブリットクララが立った!!~

シアターグリーンにて~立った立ったハイブリットクララが立った!!~

ハイブリットハイジ座

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2012/08/17 (金) ~ 2012/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

おもしろい! おすすめ でも下品
2時間30分の大作。中だるみ無く全力投球。無茶苦茶で散らかり放題の内容を最後はちゃん回収。ちゃんと?

どの役者さんもとても魅力的。
南美櫻さんはオープニングのダンスからちょっと尋常じゃない感じ。
まばたきをしない表情のコントロールがすごい。
キャラの濃い中で松下裕光さんの普通っぽさは輝いて見えた。

座り芝居が結構あり最前列以外の座席からはちょっと見難いかも。

汗だくで演じ切る役者さんたちに感動。
ただ、下品。


[千穐楽に再度観劇]
機材トラブルか、第1章、第2章、終章の文字テロップがプロジェクションされなかった。冒頭の日本語字幕は出てたのに.....
文字のデザインがよかったので、楽日しか観ていない人はちょっと残念。
2回観てもほんとに楽しめました。役者さんの器用さもよくわかりました。

3日間、おつかれさまでした。

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