ウォーターバック 【終演しました!次は8月、駅前劇場!】
ぬいぐるみハンター
吉祥寺シアター(東京都)
2014/05/30 (金) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★
オープニングが秀逸
オープニングが秀逸。何か観てるだけでニコニコさせてくれる雰囲気を全体から醸し出していて良かった。今まで観た作品よりも万人受けする内容。反面、尖がっていないのはちょっと残念。きちんとした突っ込み役が不在だったからかな。
ネタバレBOX
前園あかりは期待通り。彼女の良さは、35人いても際立つ存在感。役柄が殆ど影響しないオープニングからそうなのだから凄い。劇中の役柄もピッタリ嵌っててキューで良かった。別役の際に男担ぎ上げるのは流石の怪力。
一色洋平も相変わらず凄まじい身体能力。あのアクトは殆ど二階から飛び降りているようなものだ。ただ、初めて印象の刷新みたいのは感じなかった。次はどんな役なのか楽しみ。これだけな訳が無いことを『モノロオグ』を観て知っている。彼はもっと凄い。
浅見臣樹の飄々とした軽妙でボケているのか、突っ込んでいるのか微妙なツッコミは笑えた。野口オリジナルの発声がホント良くて吉祥寺シアターのような天井高くて奥行きのある劇場にも負けないのも印象的。
寄り添い支える
KATO企画
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2014/05/30 (金) ~ 2014/05/31 (土)公演終了
満足度★★★★★
心洗われる、
大切な大切な公演になりました。美しいピアノの音色に乗せられた、亡くなった人・残された人それぞれの思念、白檀の香りが漂うような淡い思い・・・。後半の朗読劇では震災を扱い、決して風化されてはいけない現実(多分、その現実は私が思うより重く深い、)を思い起こさせてくれました。個人的に、ネットには書けない様々な琴線に触れるお芝居で。前半の途中から涙がとまらなくて、心のデトックスになったように思いました。同時期にお誘いいただいた数々の舞台の中から素子さんのお芝居を選んで良かったなと心から思います。
ネタバレBOX
亡くなってから息子に買ってあげたカメラに思念を残した素子さんのコミカルな演技がめちゃくちゃ可愛かったです(^^)
なお、私の2011年度こりっちアワードの投票は、1位が加藤素子さんご出演のさいたまゴールド・シアター、2位が吉田能さんがピアノと役者でご出演のキコでした。どちらも、震災後に絶望して辛かった頃に私を救ってくれた演劇で。そのお二人がまたこうしてタッグを組むということで、とても楽しみにしていました。
そして絵空箱の吉野翼さんが作るモヒートは絶品だという噂を役者さんから聞いてたのでそれもまた楽しみで(笑) こちらも今までに飲んだことのない美味しさで。モヒートを飲みながら吉田さんのピアノ、最高でした。終演後に吉田さんがいつもよりキラキラして見えたのは内緒です(笑)
毒舌と正義
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/12 (木)公演終了
満足度★★★★★
いい話
色々なことが明らかになりました。
ネタバレBOX
修学旅行中に男子生徒数人が一人の女子生徒を殴ったということで先生たちが集まって原因究明と対応を協議する話。
系列進学校から意に反して転任させられ、敗訴はしたものの元の高校に復職したいと裁判まで起こした国語の先生を辞めさせようとする教頭らの動きに対抗して男子生徒が集めた署名を当該女子生徒が盗んだことが背景にありました。
酒好きの添乗員が女子生徒が署名を破棄しようとした現場を偶然街で見掛けたという一番部外者的な人のお手柄で事件が解明されたというオチと、国語の先生は生徒たちから愛されていたという現実、さらには、学校法人側も先生を左遷したわけではなく、生き残り策として魅力ある高校にしようと考え白羽の矢を立てたということが明らかになりました。
先生から注意されると、うぜえ、めんどくせえ奴、とか言う女子生徒が登場していたら、このお芝居は成立しなかったのかもしれません。
学校側も説明不足でしたが、先生も男気がなかったですね。転勤を経験してなかったから仕方なかったのかもしれませんが、よしっ、この高校をいい高校にしようと考えたり、せめて多くの生徒から好かれていることぐらいには気付くアンテナがほしかったです。
終わってみれば、そこまで深刻そうな顔をするほどでもなく、いい話やんというくらいの話でした。
この日の東京は前作の続きかと思われるくらいの大雨の一日でした。
ところで、コーラがほしくてほしくて仕方ないようになったときは病気です。教頭先生と言うよりは作家さんがそうなのかと心配になりました。
ゴーストシティ
青年団リンク・RoMT
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/22 (木) ~ 2014/05/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
様々な喪失
語りかける事にこだわった演出は居心地良いし楽しいしドキドキした。語られるエピソードは大小さまざまだけど深い喪失があるなぁ。今はもう無いものへの思いがジリジリ来てヤバイ。
ネタバレBOX
あの、照明とゴゴゴゴの音、しばらく余韻続きそうだ。上演中、なんどか俳優さんから話し掛けられて幸せ。ドキドキして、キョドってしまったけど。
みんな、一斉に同じ瞬間に死んでしまったのかなぁ。
でも、例えば今は亡くなってしまった娘を思う父親とか、戦争で仲間を皆亡くした認知症の老人とか、別れ話を切り出されて地球に生命が誕生して人類が今日まで進化した奇跡を持ち出して彼氏を引き止めるとか様々なエピソードがあって。
『昔あった、もしくは今はある』ものが、無くなる。それは、信頼であったり、生命だったり、言葉だったり様々だけど。そうした無くしてしまうものへの思いが浮かび上がるんだなと思いました。
『ここからは山が見える』の時も刺激的だったけど、明らかに観客を意識して、語り掛ける手法はすごく直接的で強い演劇体験になるし、作品自体の印象も多面的になるように思います。個人的には全然長くなかったし、身構えて見なくてもジワジワ染みてくる居心地の良い作品でした。
ash Melody
満月動物園
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2014/02/28 (金) ~ 2014/03/02 (日)公演終了
満足度★★★
歌と詞で紡ぐファンタジー
父を探すパヤオの黒い衣装。訪れた村の人は白い衣装。葉っぱ屋の独特の雰囲気。図書館のシーンが好きです。
戦場に降る雪。向日葵の種。大切な誰かを失った、人たち。
観たときは難しく感じて、自分には理解できなかったなぁと思ってました。
憎しみや嘆きではなく、残された人たちの静かな生活と、生き続け、あるいは捜し続ける人の、消えない哀しみが描く反戦、だったのかな、といま思い返す。
チケットプレゼントありがとうございました。
言うなればゲシュタルト崩壊
MCR
駅前劇場(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
台本どうなってんのかな?
・・て、思うくらいの舞台の方が良いんじゃないかな、たぶん。
後でもうちょい・・
五反田怪団ザ・ベスト
五反田団
アトリエヘリコプター(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
プリ×プリ
その日一番の恐怖・・
「上演時間2時間40分ナリ」
その時、カイジの「ぐにゃ」が広がった気がした。
「ザワ・・ザワ・・・」
気のせいか♨
自分の膀胱との勝負。
男性トイレは一人分。いつも並ぶ。
ビール、飲むべきか飲まざるべきか。
休憩ありまひた。
ネタバレBOX
「決して笑わない」
そう誓ったもののあちこちでつい笑ってしまったが(苦笑
必要最低限にとどめたつもりだった。
そのお蔭か?
ムードがぶち壊されることも無く、
会場のあちこちで「予想外に怖かった」との声が聞こえた。
良かったべな。
ちなみに
京都に行く途中で奈良のサカキバラ古墳に行った、という話があったんだけど、
それは三重の榊原温泉に遊びに行った、という解釈で良かったんだろうか?♨
平田オリザ・演劇展vol.4
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
平田オリザの【演劇展】を観劇。
【働く私】【忠臣蔵・武士編】【忠臣蔵・OL編】【ヤルタ会談】の短編、中編を含む4本立て。
特に面白かったのは忠臣蔵シリーズだ。
武士編もOL編も設定が変わっているだけで、内容はほぼ一緒。
大石を含む侍たちが、吉良邸に討ち入りするか否かの顛末を描いている。
そこで大石たちは武士道精神に則って切腹するか?仕官になるか?
自分の保身を考えつつも吉良に対する復讐などを現代風に描いているのだが、彼ら、彼女らは自分が武士であるが所以の悩みを抱えてつつ、今の置かれた環境の中で必死にもがいていくのである。それは昔から現代に至ってもなにも変わらない何処かに所属しているサムライ=サラリーマン、OLという図式だ。
そして最後には一致団結して討ち入りをするのだが、そこで大石は名言を吐くのである。
【自分とは何なのか?誰なのか?】
現代口語演劇を武器に、現在の小劇場界の潮流を築いた平田オリザが、
アングラごときのセリフを平然と書く辺りに現代口語演劇の本質を発見したような気がする。
必見!
透明な箱の中の王様【ご来場いただき、誠にありがとうございました!】
劇団えのぐ
上野ストアハウス(東京都)
2014/06/05 (木) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★
純粋な感じ
パンフも舞台セットも作品を表している
優しい絵本のようなお芝居
観終わった後 自分がどれだけ俗世に毒されているか
忘れたコトを思い出させる
自分が弄れているのか、それだけにラストと主人公の成長過程に
もう一捻り欲しかった
綺麗な中に教訓めいたモノがあったら
もっと深くなると思う
おもちゃたちの会話中 主人公が机で現実世界を演じているのは
面白い演出
見比べていて自然と笑顔になる
まだ第4回公演 次回が楽しみ
キンギョの人々vol.3「穴の宇宙」
突劇金魚
突劇金魚アトリエ(大阪府)
2014/06/01 (日) ~ 2014/06/30 (月)公演終了
金魚の宇宙
会場わかるかな~、と見渡せば、屋根に大きな金魚。
一歩足を踏み入れると赤くてふわふわの空間に丸いのぞき穴がいくつか。白い座席に座って黒い宇宙で繰り広げられるお話をみる。全話みたいのでとりあえず最終日を予約してきたが、あの空間には違う時間帯にも行ってみたい。
55Av(Fifty-Fifth Avenue)の戦慄
メガバックスコレクション
ART THEATER かもめ座(東京都)
2014/05/17 (土) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
やっぱり良かった
一番前の席で観ました。誰かの肩越しではなく目の前でのあの緊迫した演技。その空間の中に自分もいるような錯覚で、本当に息苦しく窒息してしまうのではないかと思った。そのくらいのめりこんでしまってあっという間に終わった。ただし話がもう少し延びていたら本当に具合悪くなったかも。事故後の空間なんて想像したこともなかったけれどすごいな。ああいう状況あり得る。生き残ったほうが苦しいのかも。
執行の七人
劇団太陽族
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2014/06/05 (木) ~ 2014/06/09 (月)公演終了
会議劇
停滞する会議とその話し合いのうちに気づく他のこと。「七人の部長」のおとな版みたいな。おとなな分だけ抱えてるものは重いけど。それぞれの人物の個性がきちんと描き分けられているのはさすがです。
ONE LOOKY TWO IN
株式会社Legs&Loins
Geki地下Liberty(東京都)
2014/06/03 (火) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
:『Tic Hut Invite Round Tragedy, Yea!』
【T】は最高のシチューション・コメディー、【P】は全人類に問いかける衝撃的な逸品!
毒舌と正義
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/12 (木)公演終了
満足度★★★★
さすがという感じ
別に教育界の問題を捉えて云々といった内容ではなく、とある教師の意地の物語。修学旅行の宿泊先で起こった事件と、主人公の教師にまつわる案件が次第に絡まっていきます。
丁寧でしっかりとした台本、きちんとした演技、作りこまれた舞台美術など、高いレベルで見事です。さすが実績のある方々の芝居です。
惜しかったのは、肝心な所で台詞を噛むのが散見されたこと。自然な噛み方ならよかったのですが、ちょっと目立ってしまいました。とはいえ観劇したのが初日だったので、二日目以降は無くなると思います。
ネタバレBOX
生徒の起こした二つの事件が最後に阿久津教諭に結びつく展開は見事でした。ただ、教頭が人事権を持っているかのような描写は疑問符が付きます。体制側の人間として教頭しか出せなかったのでしょうが、本当は理事とかになるのでしょう。
複数の場所を同時に描写する手法は最近よく見かけますが(私がたまたま見るのか?)、惜しいと思ったのは鬼海教諭が途中から入って来たこと。どうせなら最初からベッドに寝ていたほうが、統一が取れました。
あなたがもしもを選んだあとで
Moratorium Pants(モラパン)
新宿眼科画廊(東京都)
2014/05/16 (金) ~ 2014/05/28 (水)公演終了
両方
女の子
男の子
みんなが楽しめて
わくわくするかんじだなあ
ONE LOOKY TWO IN
株式会社Legs&Loins
Geki地下Liberty(東京都)
2014/06/03 (火) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
『Tic Hut Invite Round Tragedy, Yea!』
とにかく飽きさせない、技のある役者ぞろい。
真剣さが呼ぶ笑い好き。あー、面白かった〜♬
赤鬼
こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
青山円形劇場(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
薄い、薄っぺらい
10年前学生時代に初めてシアターコクーンに行ったお芝居でした。
それと比べては行けないのでしょうが、、、とても薄っぺらく感じられました。表面的と言うか・・・
ネタバレBOX
玉置さんの水銀がもっと深みがあると良かったかなぁと。難しい役所でしょうが・・・
旦那er’s High!!
タンバリンステージ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★
ボイスレコーダーが活躍!
今回はやや強引過ぎた感は拭えないが、前半の別の話で作った小道具が後々の話のポイントで活かされてくるような繋がりは保木本氏の真骨頂。最後に謎を全て明かしてくれるのは分かり易くスッキリした。面白かったです。
ネタバレBOX
20〜30代の既婚の男性が妻の愚痴を話す為、月1回近くの喫茶店に集合。しかし、いつしか惚気のサークルになる。そのメンバーの一人の辻の妻の里美の浮気疑惑。妻の里美も辻への浮気疑惑に悩んでいた。つまり、どちらも浮気していないのに、お互い勝手に勘違いしていた。最終的には疑惑が晴れ、めでたしめでたしとなるのだが、そこに至るまで、旦那そっくりの首人形、マネキン、ボイスレコーダーなどの小道具が話のポイントに上手く使われている。
DOKURITSU KOKKA FES.2014
劇団東京ペンギン
スタジオ空洞(東京都)
2014/06/03 (火) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★
東京ペンギン?変化
というわけで東京ペンギンだけで様々な劇団を演じてしまおうという今公演。「Love Liner Disco」と「東京エンペラー」を拝見。東京エンペラーは、もうちっとつけたしがあるので、後ほど追記(2014.6.7)。若い劇団なので、役者自身の存在感や深みは、これから創って頂こう。
ところで6月6日はダミアンの誕生日。来週は13日の金曜日。うふ。
ネタバレBOX
Love Liner Disco
鉄道研究会メンバー3人に科されたルールは、5本の特急列車を使うこと。成功報酬を得る為の駅を特定し19時3分迄に、目的の駅に到着すること。一度、使用した路線は再び使わないこと。一度降りた駅には、降りないこと。新幹線は使わないこと。鉄道以外の乗り物は使わないこと。
目的駅から終着駅までの旅は、成功報酬だ。但し目的駅へ辿りつく為の条件が一つ。駅に降りる度、乗り換えでランダムに使えなくなる路線が1つある。
3人のうち、1人は男、残る2人は女。男は、謂わば線路の延びる所に関しては、マジッシャンの異名を持つ。片や時刻表の魔女。彼女は卒業後、イギリスへの研修が決まっている。彼女が、時刻表マニアになったのは、マジッシャンの気を引く為であった。残る1人は電車好き。子供の頃、帰れなくなった所へ現れた少年から、鉄道の楽しさを教えられた。その少年こそ、マジッシャンであった。当然、女子同士は恋のライバル。マジッシャン、魔女2人の力で、問題は、ほぼ片付き、最後の関門に掛かった。目的の上野駅まで残り1本、特急を使っていかなければならない。特急の停車駅から上野迄は、使えなくなる路線というリスクがあるが、成功する為のベストプラン。然し、様々な縛りのせいで、難度はグンと上がっている。運を天に任せたが。心配した通りになった。ここからは、走破するしかない。結構な距離だ。魔女は、何冊もの時刻表の入った重いバッグを背負っている。彼女が転んだ。立ち上がれそうもない。女子2人は、もう駄目だ、とへばっている。ここでマジッシャンは男を見せる。魔女の荷物を持ってやり、約束への切符、西瓜も持って走る、走る。果たして、彼らは間に合うのか? そして恋の行方は?
東京エンペラー
今作は、ゆとり世代のコンプレックスについて書かれた作品と捉えた。
そこでゆとり世代という良く聞く言葉をイメージしてみたが、定義が良く分からないので調べてみると、1987年4月2日以降2004年4月1日迄に生まれ、ゆとり教育期間中に学校教育を受けた者ということになるようだ。従って現時点で最も高齢でも27、8歳、最も若い者で19歳位とみておく。
頗るおおざっぱに言うと、バブル崩壊後の日本経済低迷期に学生生活を経験しており、通信インフラ・機器類の急激で爆発的な成長と共に大きくなった世代と言える。当然のことながら、デジタルメディアは自家薬籠中のものであると言えよう。一方、価値観は、堅実で安定度の高いものを求めると言われる。
そうかも知れない。だが、それは本当だろうか? 今作「東京エンペラー」を観る限り、そうは思えない。今作では描かれていないものの、リストカットをしなければ、自分の存在している感覚を確かめることもできず、思い余って思いっ切り障害にぶつかろうと体当たりして殻をぶち壊そうと何度トライしても、周到に準備され、身体化されて自分自身では排除することさえできなくなった幾層ものショックアブソーバーに邪魔されて、まともにぶつかることも傷つくことも外的には不可能となり、complex(多重意識)に悩みながらも、自爆する程、突き詰めなければならない何事も無い。真綿で首を締められるような苦しみにあがくともなく足掻く地獄を生きる世代のように見える。当然のことながら、彼らにアイデンティティーを確立しようなどという積極的なパースペクティブは無い。そのような論理の地平は、少なくとも、日本の現代社会の中からは、排除され、亡き者とされている。そんな彼らが携帯端末を用いて頂点に立つ。即ちプランクトン・浮遊する者として積極的に頂点を目指すのだ! 滑稽そのものであるから、それを目指す者は正しく狂人と呼ばれているが、そのものの役名を東京エンペラーと名付けた。東京エンペラーになるには、ツイッターのフォロワーを一番多く持つことが条件だ。即ち、支持されているということだから。民主的だろ? ところで立候補する者、対抗する者は? 1人は無論、狂人。彼は、誰のフォロワーにもなりたくも無い少女を「革命家」に仕立て上げようとし、拳銃を持たせて対抗馬を抹殺しようと図るが、少女にその気は無い。だが、第一次世界大戦勃発の要因と言われるエスターライヒ・エステ大公ことF.フェルディナンドのガヴリロ・プリンツィプによる暗殺、所謂サラエヴォ事件をちょろっと出して、天皇暗殺を嗾ける辺り、芝居の筋などより、今波に乗っている劇団、チョコレートケーキへのチャレンジを思わせて微笑ましい。一観客として言わせて貰えば、チョコレートケーキは手強いぞ! 殊に、演出の日澤氏の力量は並大抵ではない。横道に逸れた。閑話休題と参ろう。
もう1人は、朕である。即ち、嘗て「朕は国家である」と抜かした”現人神”とやらである。たまさか、少女ははずみで朕を銃撃したが、彼は死ななかった。暫く、動かなかったのだが「朕は不死身である」として、蘇る。キリスト復活を思わせ、現人神的神性を顕現するという仕掛けだ。極めて危ないこれら無根拠の情動・こじつけに対し、第3勢力がぐんぐん伸びてくる。それは、デジタル時代にマッチした勢力ではあるのだが。
それぞれの0(ゼロ)
ねじリズム
ギャラリーLE DECO(東京都)
2014/06/03 (火) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
毎日楽しんでいます。
2日目から観劇中。
番外公演なので照明や音響オペもほぼキャストがされています。
ストーリーはシンプルな構成ですが、日替わりゲストがご出演され、一日2公演でも昼夜ではまた違った個性あふれる舞台で毎回新鮮です。
LE DECOがギャラリースペースなので舞台と客席の段差がない&凄く客席と舞台が近いのでキャストの細かい仕草までよく分かります。
舞台を2方向から観劇できるので場所によっても印象が違いますし、客席レイアウトも毎回変えられているので色々な場所から観劇されるのも楽しみの一つではないでしょうか?