虚ロ鯨〜カンナビ篇〜
白昼夢
タイニイアリス(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
”らしさ”はあったが・・・。
初日の観劇でしたが、台詞聞き取りにくい部分有、声やダンスが揃っていない、
等々精度はまだまだだった。
抽象的な台詞、独特のダンスパーフォンマンス、死んで神になったのか象徴的な化粧は白昼夢らしさが出ていたと思うが、前回の”地獄任侠観音列伝”と比べるとストーリーが解かりにくい!
しかし、あの運動量から溢れるパワーは凄い!
PUCK(パック)
宝塚歌劇団
東京宝塚劇場(東京都)
2014/11/21 (金) ~ 2014/12/27 (土)公演終了
満足度★★★★
隅々まで行き届いた舞台に感動。
今回は日経貸切公演で観劇してきました。座席は抽選だったのですが幸運にも6列目。普段購入するときは2階席の後ろが多いので、違う視点での観劇に感動しました。後ろではわからないことですが、真ん中で演じている役者ではなくハケていく役者などの細かい演技までもが良く見え、ちいさな部分までが緻密に作られているその様子はとても楽しめました。
レビューなど全体の美しさを観たいときは、もうすこし後ろの座席がいいですが、役者の表情や動きがよく観える前方席での観劇もいいですね。
鈴木忠志の世界 再び!『トロイアの女』・『からたち日記由来』
SCOT
吉祥寺シアター(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/26 (金)公演終了
満足度★★★★
戦いを挑まれたような観劇時間。
「トロイアの女」すごかったです。
圧倒されて筆舌に尽くしがたいのですが、あんなことを何十年もやり続けているというのが、まず恐ろしいです。
74年の初演から何十年ぶりかの再演とは思えない、2014年らしい内容である点も素晴らしかったです。
強姦シーンも、芝居の域を超えたすごいものでした。
襲う側の男たちの動きが、役者が演じているというよりは戦士の動きというか、ホンモノというか、速すぎて動きが見えないというか、いえ、見えているのですが、そこにリアリティがあったというか。とにかく息が止まるかと…。
女として「レイプされる」怖さというよりは、人として「殺される」怖さが優っていたのがリアリティに繋がっていたのかもしれません。
以前違う劇団でも強姦シーンがありましたが、強姦する側の手加減が見えてしまったがために作り物臭さが逆に鼻についたのです。
人形の手をもがれるシーンでは脳内にシリアの映像が浮かんで苦しくなりました。
ただの白い布の人形が、そういうものを喚起させる芝居に背筋が寒くなりました。
ここまで命を引き合いに、真剣勝負を挑まれた舞台というものに出会ったことがありません。
芝居を観てこういう意味でここまで疲れたのは初めてです。
今日の観劇、命のやりとりの迫力に負けました。
「トロイアの女」から「からたち日記由来」への転換の30分は、客席からの質疑に鈴木忠志さんがお応えしてくださるトークタイム。
ある素材もコンテクストの違いでその意味が全く変わると言うお話しなど、大変興味深い話をウイットに富んだ語り口で聞かせていただけて、大変面白かったです。
今の時代、やはり戦争や死は避けて通れないということを、さらっと、けれどしっかりと打ち出してくるその説得力のすごさ。
重すぎて脳も体も疲れましたが、とてもいい時間でした。
海のホタル
オフィスコットーネ
小劇場B1(東京都)
2014/12/17 (水) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★
ヒカリを求めて
誰にでもその要素はあるもので、運命を疎ましく思います。保険金殺人。どこにでもいる平凡な人々が織り交ざり…。とてもヒリヒリしてでもどうしようもなく泣けて、物語の中に入り込んでしまいました。ラストがまた素敵。同じ日にもう一本の「山の声」も観劇。こちらも見応えがありました。
コンフリクト
演劇ユニット チャンぷる
現代座会館(東京都)
2014/12/17 (水) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
序盤に惜しい部分あるも総じて良くできたアクションもの
冒頭のいくつかのシーンがバラバラに感じられてしまうのとはじめのうちは本役とモブの区別がしにくい(麻見組はみんな顔に個性があるからなぁ(笑))のが惜しいが、キャラクター設定(演者に合わせた?)、程よいボケ具合、必ずしもハッピーだけではない結末、各々が手にする武器(種類・デザイン・それを使った殺陣)、タイミングが的確な音響効果など、総じて良くできたアクションもの。
Nyan SELECT 2014
シアターカフェNyan
自由表現空間 シアターカフェNyan(大阪府)
2014/12/20 (土) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
無料公演だけど、面白かった!
Nyan8年目記念の無料公演!
Aグループの3団体さんを観劇しました。
各団体さんが20分の短編を公演。
①らふ・トランポリン企画:『夢の名残を知りたくて』
演技も雰囲気も良かった。ストーリーも心温まる内容で、疲れていても、明日頑張ろうと思えるお話でした。
②辻田鯉絵単独『アラサー女子真優美の妄想自己裁判』
アラサー女子の妄想。一人芝居を熱演。昭和世代のツボをつくネタが、とっても面白かったです。
③ピンクとブルー:「ここではないどこか『ラーへゆく』」
未来なのか過去なのか、不思議な世界。面白いけど、少し切ないお話でした。
山笑う
僕たちが好きだった川村紗也
新宿眼科画廊 スペース地下(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/24 (水)公演終了
満足度★★★★★
AEON
川村おさやぴーはおしゃんてぃなモノで勝負してくると勝手に思っていたんだけど、意外にも地に足のついた芝居でおじさんは安心しました。
荻野友里、嫁にきてくれないかなぁ。
シカク
企画演劇集団ボクラ団義
サンモールスタジオ(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
シカク
予想を良い意味で裏切る展開!
先が分からない楽しみがありました!
これで毎回キャストが入れ替わるとなると話の内容が分かった後でも面白いと思います!
風雲!チキン野郎城Ⅳ~導かれし者たち~
ポップンマッシュルームチキン野郎
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2014/12/15 (月) ~ 2014/12/16 (火)公演終了
大人の馬鹿騒ぎ
風雲!チキン野郎城はⅠから参加していますが、やはり今回も、とても楽しかったです。
たくさん笑って、1年の嫌なことや辛いことがどうでもよくなれた気がします。
毎回くだらないことを大真面目にやる大人達。(お客さんも含めて)
企画自体も面白いとは思いますが、それをちゃんと真面目にやっているからこその面白さだと思います。
他でやったら怒られるだろうなーということをやってはいますが、ちゃんとするところはちゃんとしているからこそ、安心して笑うことが出来ます。
全裸とは言え、股間は決して見せないとか(笑)
開演時間もしっかりしていて、5分程度の遅れでもきちんと言ってくれるところに好感。
今回は久しぶりにゲストの方がいましたが、司会というある意味一番安全な場所に置くことで、そのゲストのファンで、PMC野郎初心者の方にも楽しみやすくしていたんじゃないかな…。
西田シャトナーさんの「浮気切り抜け王」は、ちょっとした短篇を観た気分になれました!
空想科学
うさぎストライプ
アトリエ春風舎(東京都)
2014/12/21 (日) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
色んな観方ができそうな一作/60分弱
人生を大局的に捉えた場合の青春期の儚さ、儚いがゆえのきらめきが切なくも美しく描かれていて、ジ~ンとさせられた。。
青春を謳歌するカップルと、喪服姿の三人組がどう交わるのかも見モノ。
『空想科学』というタイトルが呼び起こすものからは大きくかけ離れた内容だったが、空想に多くを負った劇であるのは間違いない。
ネタバレBOX
飲み会帰りにエッチして名前も知らないままに付き合い始めた、チャラ男とチャラ子から成る若いカップル。
地味に生き六十数歳で独身のまま死んだ叔母の遺品整理にあたる姉妹と、姉のほうの夫。
無関係に思えた二組が交差して判るのは、恋とは一生無縁だったと姪たちに思われている地味な叔母の若き日の姿こそ、他ならぬチャラ子だということ。
私はこの点に感動!
その人生に楽しいことなど無かったと思われている叔母にも、行きずりのセックスから恋に落ちるような青春の一ページがあったと判り、私は正直、救われた思いがした。
馴れ初めこそチャラくとも、斉藤マッチュ演じる遊び人風の男・ユウスケに川田智美演じる若き日の叔母が一途に惚れ込んでいく様子は健気で微笑ましく、そんなキラキラしたひとときを束の間でも持てた叔母を私は「良かったですね」と言祝いであげたい気分に。
叔母は「ユウスケが淋しい思いをしないように、私はユウスケより長生きして大往生するんだ(笑)」とさえ言っており、その一途さには心打たれた。
「束の間」と書いたのは、ユウスケは行きずりのセックスを終え眠っている間(ま)に斧を頭に振り下ろされて惨殺されており、ほどなく天に召されるのは間違いないから。
そう、ここまであえて書かずにおいたが、若き日の叔母が惚れたユウスケは幕が開いた時点ですでに死んでおり、頭に斧が刺さったまま叔母とホテルで過ごしているのだ。そして叔母は相手が死者であるのを承知の上でユウスケと過ごしている。
死んでいるユウスケが煙草を吸ったり叔母と口を聞いたりとまるで生きているかのように振る舞うのも不思議なら、叔母の年長の姪であるのぞみの夫が殺害者であることもおいおい判って、話はますます混迷。
接点などあるはずのない二人は夢の中で出会い、のぞみの夫は夢に出てきたユウスケを妻の叔母の元カレだとはつゆ知らないまま殺してしまったらしい。
いや、「妻の叔母の元カレ」も何も、話がここまで荒唐無稽だと叔母とユウスケのセックスもそこから始まる交際も現実の出来事だったのか疑わしく、二人が出会ってなかった可能性も、そして叔母もその遺品整理をする姪たちも誰も彼もが存在してない可能性も否めなくなってくる。
そう、演劇なんて所詮は空想の産物であり、舞台上で起きることはすべて現実なのだと客が思いなすことによってかろうじて成立しているに過ぎないのだ。
しかし、演劇というものがそこまで恣意的に作られているのなら、それを客が恣意的に解釈する権利だって認められていいはず。
そこで私は本作をこう解釈する。
死んでいるというのは劇を面白くするための設定に過ぎず、ユウスケはあの時たしかに生きていたし、叔母はたしかにユウスケと幸せなひとときを過ごしたのだと。
いや、そうとでも考えないと、あまりにも叔母が浮かばれない。
虚ロ鯨〜カンナビ篇〜
白昼夢
タイニイアリス(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
無題1343(14-392)
14:00の回(雨)13:30受付、開場、座椅子席(夢中席/DVD付と一般席)。
「ラフレシア(2013/10@明石」からなので3作目です。
14:00前説(アナウンス 85分)、14:05あたりからなんとなく開演~15:39終演。お話はよくわかりませんでした(すみません、でも、つまらないというのではないです)が、振り付けがよかったし、観ている間はとてもよい感じでした。
トオル役の鶴田さんは、「日芸」のお芝居を観始めるきっかけとなった生活図鑑「凹(2013/9@大山)」に出ていらして、たまたま制作の平岡さんに劇団のことをお聞きし、その翌月「ラフレシア」を観に行ったのでした。
「うつろくじら かんなびへん」 と読むそうですが、どこかに鯨がでてきていたのだろうか...カンナビは「神奈備」...神道において、神霊(神や御霊)が宿る御霊代(みたましろ)・依り代(よりしろ)を擁した領域のこと(wiki)。とあり、だから「神」と「人間」があるのか...と後になって気がつく。
青い葉っぱ、白い紙吹雪。ライトが放射され、舞台上は一気に熱量が増す。
当パンにd-倉庫の「ダンスがみたい!」の案内がありました。この公演、チラシは持っていてどれか行こうと思っているのですが、年明けの出勤初日に行けるかどうか...。
シカク
企画演劇集団ボクラ団義
サンモールスタジオ(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
んな
無理に仰々しくしなくても良かったのではないかと思いました。
ネタバレBOX
男Aが、暴行事件に遭った当時は彼女であった女、彼女の新しい恋人である男B、刑事をしていて女の兄である男Cとの会話を経て、三人の過去を暴く話。
次第に真実が明らかになる過程は面白かったですが、心臓移植された人に対して臓器提供者が感情を支配することや、警察は一人で捜査するはずもなく、こぶしに怪我をしている男を放っておくなど考えられず、そして最後は過去を暴かれた三人が、男Bは心臓だけとも言えますが、川に飛び込んで死ぬような、あり得なさや唐突感で食傷気味になりました。
シカクという言葉の意味付もどうでもよく、別にそんなにこだわることもなかろうにと思いました。
ドアを開ければいつも
演劇ユニット「みそじん」
atelier.TORIYOU(東京都)
2014/12/20 (土) ~ 2014/12/27 (土)公演終了
満足度★★★★★
無題1342(14-391)
18:00の回(曇)。外で待つも風がないのでそれほど寒くない。
17:30受付、開場。初演(10/5雨)を観ているので2回目です。階段をあがって2階、靴を脱ぎ、座椅子席(ザブトン2枚重ね)へ(前回は左だったので、
今回は右端)。部屋の中はさすがに冷えるため使い捨てカイロが用意されていました。
流れているのは昔のラジオ放送(編集版)。
なんとなく時代を感じさせる。「異邦人(1979)」「ペッパー警部(1976)」五木寛之「変奏曲(1975)」「国電(1987民営化)」。
登場しない父、亡くなった母。実家に集まった4人姉妹。千恵がビールを飲むときの表情、裕美が部屋の隅に座り込んでみせる感情、真紀子の想いと啓子の想いがぶつかりながらも、寄り合いおうとする気持ち。
4人が流した涙は雪となって降る。
ロングラン...また観に来ましょう。
体夢-TIME
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★
初めての桟敷童子
おもしろかった。
東さん演出の舞台は観ていたので、なんとなくの雰囲気はわかっていたのだけど、やっぱり初めての劇団を観る時はドキドキした。
最初は少しだけ入りづらかったのだけど、後から引き込まれていって、
集中してた。
ネタバレBOX
欲望がなくなる奇病。
食欲もなくなって食べないようになって死んでしまう。
でも欲望がないから争いもない。
もし死なないとしたら争いがない世界のほうがよくないかな?とか
欲望がないってことはこうやって芝居を観ることもないし、つまらなくないかなとか?
そんなことを考えてた。
最初に入りこめなかったのは体夢の母が襲われてるシーンが嫌だったから。
役者さんも気になる人ができたし、また観に行きたい。
メリークルシミマス
パフォーマンスユニット【Bremen】
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
イケメン
特製クリスマスケーキは背の高いケーキでした。
ネタバレBOX
クリスマス時期に父母を航空機事故で亡くしてクリスマスが嫌いになった洋一が、兄と兄の恋人や友人たちの誤解が誤解を呼んでの騒動を経て立ち直る話。
洋一を女優さんが演じるとは思ってもいなかったのと、その女優さんが鼻筋通ったいい男っぷりだったので、宝塚の男役を見ているようでドキドキしました。
洋一の兄と妹は血が繋がっていないような感じでしたが、そこのところの説明はありませんでした。友人がケーキ屋さんのバイトをクビになった理由も良く分かりませんでした。
兄と恋人の騒動に関しては、勘違いした恋人の方が謝ったため少ししんみりさせ過ぎたように感じました。勘違いさせるシチュエーションを作って面白くしようとしたはずです。勘違いした方が悪いわけではありません。勘違いさせた兄が誤解を解いてハッピーエンドというのがコメディとしては良かったのではないかと思いました。
海をゆく者
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2014/12/08 (月) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
孤独な「海をゆく者」は、どこへ漂っていくのか
酒と煙草とポーカーと、クリスマス。
酒浸りのむさ苦しい男たちの物語。
完全なるネタバレなので、これからこの舞台を観る人、あるいはもしかしたら再々演もあるかもしれないので、それを観ようと思っている人は、読まないほうがいいと思う。
ネタバレBOX
平田満さん、吉田鋼太郎さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、そして小日向文世さんという舞台の上で観たい役者が5人も揃っている。
さらに演出が栗山民也さんということで、間違いのない舞台だろうと思っていた。
想像通りのいい舞台だった。
そして、物語の展開には驚いた。
再演ということもあり、初演の感想や今回の感想などには目を触れないようにした。
フライヤーも読まないようにしたぐらいに気を遣った。
ただ、表のデザインを見ると明らかに「クリスマスツリー」である。
それはわかった。
ただ、普段はそんなことをしないのだが、劇場に行く前に、ふと原題の『The Seafarer』の意味だけを確認しようと思って、検索してみた。
最初に出てきたのは、イギリスの古い詩だった。
その詩には、「主人公の追放者が孤独な航海を続ける悲しみと試練」がうたわれ、そして「キリスト教」的な意味合いがそこにあるらしい。
しかし、それとこの舞台はさほど関係ないと思っていた。
なので、「Seafarer」の意味、すなわち「船乗り」「海の旅人」だけを確認した。
舞台の冒頭、キリストの絵が象徴的に見えてくる。
額縁に飾られた絵の下にある赤いランプに灯が点き、平田満さん演じるシャーキーがそれを意味ありげに見るのだ。
そこで気が付いた。
先の『The Seafarer』というタイトルの古英詩のことをだ。
つまり、このオープニングを意味しているように、キリスト教的な何かを暗示するような作品ではないのか、ということだ。
しかも、舞台中央にはクリスマスツリーがある。
フライヤーのツリーのデザインはこれだ。
クリスマスはキリストの誕生日なのだし。
舞台の設定は、現代のアイルランドで、クリスマス・イブからクリスマスの朝までの出来事である。
シャーキーの兄、リチャード役の吉田鋼太郎さんのテンションが最初から凄い。
このテンションで3時間近い舞台を行くのか? と思ったら、ほぼそうだった。
こういうテンションの芝居は、見ていて辛くなることが多いのだが、さすがにそうはならなかった。
酔っぱらっていて、粗っぽいが目が見えないリチャードが、物静かな弟シャーキーにとってのガンではないかと思うほどの酷さだ。
しかし、目に見える通りではなかったのだ。
本当に酷い男はシャーキーのほうであり、そのことがこの舞台の展開にかかわってくるのである。
その「物語の展開」にはビックリした。
シャーキーとリチャード兄弟の家にやってきた、唯一背広&ネクタイの紳士然とした男、ロックハート(小日向文世さん)は、「悪魔」であるという。
シャーキーが牢屋にいたときに知り合い、彼は約束通り、シャーキーの魂を取りに来たというのだ。
悪魔は、酔っぱらって殴った人を殺してしまったシャーキーと、牢屋でポーカーをして、シャーキーに負けたので、出してやったという。
その「悪魔である」というのは、文字通りのことではなく、何か別の目的で来た男が比喩のように名乗ったものでないか、と思っていた。
リアルな舞台が故に、そんな突飛なファンタジー的な要素が入るとは思っていなかったからだ。
しかし、そうではなかった。
本当に「悪魔」だった。
酔っぱらっているのだが、その千鳥足がシャンとする場面があったり、火が付いているはずのストーブを素手でうったり触っても、何も感じなかったり、さらに、ロウソクの炎を一瞬で消してみせたりする。
フライヤーの写真では、ロックハート(悪魔)の小日向文世さんが、下界の者を、まるで操るがごとく振る舞っている。つまり、そういうことなのだ。
ここに来て、さらに先の『The Seafarer』という古英詩がクローズアップされてくる。
シャーキーはアル中で、町の厄介者であり、その行為によって、孤独な男だったのだ。
「追放者」とも言え、兄の住んでいる家にも久しぶりに帰って来た。
つまり、そんな男が悪魔に魂を取られてしまうのか、というストーリーなのだ。
キリスト教とも深くかかわってきそうだ。
キリストの誕生日であるクリスマスの一夜に、シャーキーは「救われるのか?」ということなのだ。
悪魔であるロックハート(シャーキー以外はその事実を知らない)を含む5人は、ポーカーをすることになる。
最後の勝負でシャーキーは有り金以上のものを賭けてしまうのだ。
それによって魂が奪われることになってしまう。
シャーキーはロックハートに負け、「壁の向こう側」に行くことになるのだが、あり得ない展開で助かることになる。
それは、リチャードの友人、浅野和之さん演じるアイヴァン(ド近眼)のカードの手が、実はエースの4カードだったことが判明するからだ。
それによって、勝者は、リチャードとアイヴァンとなるからだ。
悪魔であるロックハートは、悪酔いとそのことにうろたえ、倒れてしまうほど。
この「どんでん返し」には、笑った。
ド近眼のアイヴァンは、メガネがないと壁にぶつかってしまうほど目が悪い。それほど目が悪いのにメガネがないまま、目の見えないリチャードと組んでポーカーに参加する。
だから、「4の4カード」だったと思っていた自分の手が、メガネが見つかったことで、実は「1(エース)の4カード」だったと気が付いた。「4」と「1」は「似ているから」ということだ。
しかし、よく考えてみると、トランプのカードは「数字」だけが書いてあるわけではない。ハートやスペードなどの図柄が、その数字だけ並んでいるわけであって、「1」はそれぞれの図柄が、カードの真ん中に1つだけあり、「4」は図柄がカードの四隅に1つず、計4つ並んでいるのだ。
たとえ目が悪くても、それも見えないのならば、カードはできない。なにより普通トランプは「図柄のほう」が「数字」よりも「大きい」し。
そして、いつもポーカーをして楽しんでいる者が、カードの図柄の位置を見間違えることはないのだ。
つまり、アイヴァンが「何かをした」のではないかということだ。
ストーリーの後半で、悪魔であるロックハートが、アイヴァンがポーカーで大勝ちしたことを言う。相手の4万ポンドもする船を取り、その相手は自殺してしまう。
この出来事に対して、アイヴァンもリチャードも触れたくないようだ。
ロックハートは何か知っているようだが、それに言及させることはなかった。
アイヴァンはその大勝ちしたポーカーでも「何かやった」のではないか。
少なくとも4万ポンドという賭けに、アイヴァンは「それに見合うだけの金または物」を賭けることができたのか? という疑問も残る。
シャーキーと悪魔の取引について何も知らないアイヴァンが、シャーキーを助けることになったのだ。たとえそれが正しい方法でなくても。
大酒飲みで風呂にはクリスマスにしか入らない兄リチャードは、アル中で鼻つまみ者で孤独な弟シャーキーのことを心から愛しているということが、クリスマスの一夜の出来事の中で語られ、それは、すなわち、悪魔が「あの方」と呼ぶ方が、彼らに味方したということでもある。
クリスマスにふさわしいストーリーなわけだ。
リチャードは弟のシャーキーと、友だちのアイヴァンにクリスマスプレゼントを贈り、クリスマスの朝の礼拝に行くと言う。
信心がシャーキーを救ったのではないかもしれないが、そうかもしれない、と思わせるラストだ。
5人の役者がとにかくいい。
兄リチャードを演じた吉田鋼太郎さんは、荒くれぶりの中に、弟のシャーキーのことを考えているということがよくわかる。彼と仲の悪いニッキー(大谷亮介さん)を呼んできたのも、ひとりぽっちのシャーキーのためであろう。
そうした不器用な優しさがよく表れる演技がうまい。
弟シャーキーを演じた平田満さんは、目が見えなくなった兄想いであり、アルコールを断っていて、「孤独の海」にいる様子が滲み出ていた。悪魔と出会ってから、さらに気持ちがダウンしていく様もさすがだ。
悪魔のロックハートを演じた小日向文世さんは、ほかの4人と比べると荒くれ度はかなり低い。
5人のメンバーの中で一番クールな役を演じるだろうと思っていたら、「悪魔」だった。
きちっとしたスーツ姿で、あくまでもクールにシャーキーを追い詰めていく。酔っぱらって千鳥足の姿は笑わせるが、核心を突いてくる台詞には恐さが漂う。
リチャードの友人アイヴァンを演じた浅野和之さんの、少し情けないのだが、リチャードとの友人関係の良さ、リチャードが彼を信頼しているということがよくわかるような演技がいい。
そして、かなり細かいことを絶えず行っていて、役を見事に見せてくれた。
ニッキーを演じた大谷亮介さんは、不器用だけど、憎めない感じが出ていた。いかにも失敗しそうなチーズ屋を始めると言っている台詞のあたりの何も考えてない感がいい感じ。
4人の男たちはそれぞれダメな人なのだが、悪人ではなく、チャーミング。
悪魔も「悪い人」(笑)ではなく、やはりチャーミングなのだ。
役者もいいのだが、やはり演出もうまい。
「笑い」の塩梅もいいし、きちんと笑わせてくれる。
それぞれのキャラクターがくっきりしていて、その絡み合いがとにかく面白い。
5人全員が舞台の上にいるときには、絶対何かをそれぞれやっていたりして、それを見るのも面白い。
アイヴァンが、カードに何かしたのではないかと思っているのだが、その瞬間を見ていないのが心残りである。
ダメな男たちが集まって、飲んだくれて、ポーカーをしただけの、クリスマスの一夜だったとも言える。
悪魔は、夜やって来て、朝、去った。
「孤独の海を航海する船乗り」のシャーキーは、兄が自分のことを心から想ってくれていることと、地元には仲間がいるということを知り、孤独の航海を終え、「陸に上がる」のだろう。
もちろん、真人間になれるとは思えないが、たぶん「Seafarer」ではなくなる。
彼の心の中にいる「悪魔」とも決別できたであろう、クリスマスの朝だ。
そして、クリスマスの一夜に悪魔に出会っただけに、「あの人」の存在を身近に感じるのではないだろうか。
いいラストであり、終演後の余韻もいい。
ダキニ城の虜
舞台芸術集団 地下空港
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2014/12/16 (火) ~ 2014/12/22 (月)公演終了
満足度★★★★★
楽しかった~
今回が2度目の観劇でした。1度でももちろん楽しめますが、新たな気づきがあったり、納得できたり、違った見方で違った感じ方ができました。
3度、4度と観るとまた違った感じ方ができる気がします。
笑いも涙も全力疾走!
観終わったときの爽快感はたまりません!!
止まらずの国
ガレキの太鼓
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★
バックパッカー流、世界の愉しみ方。
といった内容だろうか。アザーンが背景に流れる宿の宿泊者たちに何が起こるかは、観てのお楽しみ。
ネタバレBOX
まあ、国によってガイド本の代表的なものはあるのだが、日本の場合は「地球の歩き方」だろう。日本人と旅先で迄一緒に居たくない人には「ロンリープラネット」などもある。自分が良く旅した頃には、日本語版は無かったが、新聞が読める程度の語学力で読める。今は日本語版もあるらしいが。何れにせよ、旅先では、様々な経験をする。日本に居るだけでは決して味わうことのできないような経験も多い。それを楽しめる者と乗り切ることが出来る者だけが、旅人なのであろう。今作には、そのような旅人と初心者、素人等様々なキャラクターが出てくるのだが、宿泊先の日本人宿で繰り広げられる、様々な事象が、言葉の余り出来ない人々ばかりの集団にどのような影響を与えるかが描かれていて興味深い。同時に、日本の閉鎖性を嫌い、自由に振る舞うことのできない社会を心底嫌って戻らない人々の呟きには、この「国」に対する本質的な忌避感と諦念にも似たアイロニーが含まれていて、自分などは、完全に同意してしまった。旅は死であり、風であるから。そして、その上での遊びであるから。
【ご来場ありがとうございました!】桜が散るために降るような雨
C´s PLAY FACTORY
APOCシアター(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★
千秋楽観劇です
基本の黒い素舞台に白枠での窓やらドアの木枠を配し、写真を釣り下げて白い桜の木をひとつ置いた舞台セットでありました。
頑張ってはいたけど小品感やどっかで見たなぁ感が抜けなかった約90分
劇場前には花が多く送られていました♪
ネタバレBOX
開演が10分近く遅れました・・・なんか対策を練る必要を感じませんか?
小劇場界では当たり前、とか考えてるとよくないと思います。
EX.プレゼント抽選タイムにしたり、製作さんに旅の話させたり、小芝居うって「まだ開演はしてません」と場内整理のお姉さんに言わせたりするような配慮はあって損は無いと思うデス。
話は東野圭吾がブレイクすることとなった出世作の焼き直しのような印象を受けました。こっちは一卵性双生児の妹に交通事故死した姉の意識が出てくるという設定。
衣装は白いシャツに黒のパンツなどと白黒設定でまとめていました。
(でも時々は妹さんみたいに変える必要はあったなぁと思った)
青峰誠也=父親は写真家で舞台となってる家を建て、息子を雑誌ライター兼カメラマンとして父のコネで仕事を貰っている。禁煙を続けている。冬桜を見に行く途中で恋人の美香と共に交通事故に合う。
青峰波留=誠也の妹=女子高生であったが、無事に東京の大学に合格し兄と共に住むことになった。
中谷美香=雨女であり事故死したのは1年前
中谷利香=生まれた時からすぐに里子に出された美香の妹、近年やっと姉と連絡とれて何度か話しができるようになっていた。寝てる時に姉の意識が乗り移り、嬉しい時に姉が書いていた日記を姉妹で交換日記としてやりとりする。
牛島彰敏=誠也の友人
牛島麻耶=彰敏の妻であり作中にて帝王切開で子供を生みます
中谷美恵子=美香と利香の母
中谷和義=父です、娘を事故死させた恋人の誠也を苦しめようとしていたが和解する。
自分的には青峰兄弟の関係はSAOの主人公兄弟の関係を当てはめて、中谷姉妹は「秘密」風に妹の意識を完全支配したりとか。もっと複雑で人間心理をかきなでるような感じを出して欲しかったかな。で、姉の意識が出てくるキッカケとかの設定をもっと深く納得できるものを用意して欲しかったかしら。
あまり上記のような話を知らなければ普通に楽しめたかな、とか思えたっす。
この劇団さんの雰囲気だと、王道ジュブナイルとかが上手そうなので。SFマガジンで賞を取った「タンポポの宇宙船 by 藤崎慎吾」みたいな話を演じてみれば合うんじゃないかなぁ?とか思いました。
止まらずの国
ガレキの太鼓
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★★
雰囲気が、ものすごく良く出ていたなぁって感心しきりでした。
バックパック旅行の経験は日本国内ぐらいしかないんですが、海外の日本人宿の雰囲気ってこんなんだろうと想像通りの展開が楽しめました♪
上演時間は1時間35分(予定)
ネタバレBOX
簡易な2段ベットやら増加人数対応用の長椅子などが置かれた、イスラム圏での日本人宿内で展開する物語です。(受付の横の物販でイスラム系のものが売られていたのはユニークでした(ポスターは今日、出来たそうですよ。)
モテ期が来たと思わせられる女性へのセクハラ話やら、パスポートや現金を普通に日本的に持ち歩くのは危ないというシーンは納得だった。(日本では肩下げバックから覗く財布とか、ラーメン屋のカウンターに平気で財布やスマホを置く神経が、この国以外ではまったく通じないという考えが浮かばない現実を再認識させられますね。=まぁこの国から出なけりゃ良いんですけどね(^^)
もう中東などは情勢不安で渡航できないですね~。
日本では馴染みの薄いイスラム系の話は、事情知ってると笑どころも多くて楽しかったけど、知らん人にはなんで酒瓶1つで皆が盛り上がったのは理解できなかったろうな~とか思いました=イスラムは禁酒なんで酒の流通も乏しかったりするんです。
「アザーン」と緊急放送の区別がつかないところとか、バックパッカーでの女性がコリアンだったりとか。う~ん流石に実体験での話が生きてるなぁと思ったデス。(どこにでも出没する旅行者は日本と独逸が多いそうです(^^;)
舞台(世界遺産となったバザールが近くにあるという設定です)は出会いと別れを繰り返す宿らしい展開で、夜半に銃声・砲撃音まで響いて混迷するも夜明けには明るく解決するという破天荒な話になってましたが。予定上演時間よりも感覚的に長く感じた芝居でありました。 好きだなぁこれは&’15には舞台芝居をしないという話もあり、星はおまけいたしました♪
大塚=髭面の男(日本を出て2年半)。けっこう飄々とパッカー生活を楽しんでいるが、同じパッカーだった日本人女性とのあいだに子供が出来。出産するまでという期間限定で、旅行をしている。けっこー適当な感じの性格です。今日でビザが切れるという危機感も薄かった方(^^;)
竹田=パッカー初デビューがこの国の新米さん(外国人旅行許可であるパーミッションの手続きも知らなかった方)。ケータイの持込やらデジカメ壊れたり、シャワータイミングはいつも水になるという、何となくタイミングの悪い若者。ノリ良く、ちかさんのお別れ会をしようとしていた。現地のサンドイッチと呼べるカナッペに当たって下痢してます。パスポートをバックに入れとくような初心者さん。
ちか=ベテラン女性パッカー(歴は1年半)。今日でこの宿を出て泊まり無料の代わりに教師役をするという条件で現地小学校に移動する予定。
コウジ=韓国人女性の彼女(キョン・ミン)と共に宿に来るも、友人の結婚式に出るために今晩には宿を出る予定。旅慣れてる感じであったが、街が軍に包囲され爆撃音などが響くと日本に帰りたいと弱さを吐露し宿を出る。
キョン・ミン=日本には行きたくないという韓国人パッカー。現地の衣装=イスラム圏の女性の服装(アバヤとかニカーブと呼ばれる、目だけ出した黒い衣装。)を纏う知恵を利かせる人物。7ヶ月前に出会ったコウジが好き♪
サン=スニーカーでエベレストを登山したとか数々の逸話のあるUMAみたいな伝説の男性バックパッカー(2段ベットの上でマイペースに生活してます=この国の第23代トコチン王の顔の写真(?)を飾ってました
のじまともか=初の海外旅行でこの国を選んだという心臓な女性旅行者=白いトランクが、らしさ爆発です(^^)やっと休めた2週間の旅行ではあったが、3500$あった現金は取られてしまい。今の手持ちは50$となり、次の直行便で日本に帰るまでと現地で知り合ったちかを頼りに宿に来る。痴漢や盗難で泣きの入った現代日本女性の代表といえる役どころ(^^;)
おばちゃん=現地の宿(1日10$ぐらいで住める)の管理人、なかなからしく役者さん(山本女史)が演じられてました♪
オサマ=実は10代だったという現地の観光客引きさん。いろいろとちゃっかりしてる感あり
日本人(男性)=ラストのお祭り騒ぎに、楽しい国だと色とりどりの絵の具つけて現れるバックパッカーくん
閑話休題:評価がすっごく分かれるんだ・・・・・・・・面白いなぁこの話(^-^)