満足度★★★★
戦いを挑まれたような観劇時間。
「トロイアの女」すごかったです。
圧倒されて筆舌に尽くしがたいのですが、あんなことを何十年もやり続けているというのが、まず恐ろしいです。
74年の初演から何十年ぶりかの再演とは思えない、2014年らしい内容である点も素晴らしかったです。
強姦シーンも、芝居の域を超えたすごいものでした。
襲う側の男たちの動きが、役者が演じているというよりは戦士の動きというか、ホンモノというか、速すぎて動きが見えないというか、いえ、見えているのですが、そこにリアリティがあったというか。とにかく息が止まるかと…。
女として「レイプされる」怖さというよりは、人として「殺される」怖さが優っていたのがリアリティに繋がっていたのかもしれません。
以前違う劇団でも強姦シーンがありましたが、強姦する側の手加減が見えてしまったがために作り物臭さが逆に鼻についたのです。
人形の手をもがれるシーンでは脳内にシリアの映像が浮かんで苦しくなりました。
ただの白い布の人形が、そういうものを喚起させる芝居に背筋が寒くなりました。
ここまで命を引き合いに、真剣勝負を挑まれた舞台というものに出会ったことがありません。
芝居を観てこういう意味でここまで疲れたのは初めてです。
今日の観劇、命のやりとりの迫力に負けました。
「トロイアの女」から「からたち日記由来」への転換の30分は、客席からの質疑に鈴木忠志さんがお応えしてくださるトークタイム。
ある素材もコンテクストの違いでその意味が全く変わると言うお話しなど、大変興味深い話をウイットに富んだ語り口で聞かせていただけて、大変面白かったです。
今の時代、やはり戦争や死は避けて通れないということを、さらっと、けれどしっかりと打ち出してくるその説得力のすごさ。
重すぎて脳も体も疲れましたが、とてもいい時間でした。