「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2017/01/18 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/02/01 (水)
座席1階L列28番
NODAMAP『足跡姫』を観劇。野田秀樹から中村勘三郎さんへの、この世あの世を跳び越えたラブレター。逆もまた真也。
アンサンブル(コロスという言い方は古臭いのかね)の動かし方には、蜷川幸雄さん演出の空気まで感じてしまった。野田さんの舞台は昔から今でも、時や空間を自由に行き来する。ここはどの空間だとか、暗転がないと場の切り替えができないとか、縛られない。それは、芝居の可能性を誰よりも信じ探してきた人だから。
そしてコトバというものが本当は、時も空間も飛び越えるものだから。言葉の力と怖さをよく知っているからだ。
宮沢りえは鬼のような気迫で足跡姫を、聖女のような可憐さで三、四代目出雲の阿国、双つの貌を見事に演じてみせた。古田新太の不気味さとかっこよさの区別がよくわからなくなる生臭さ、怪物感。池谷のぶえの(いい役者さんですね)高く澄んだ声のキレと力強さ、立ち姿の粋なこと。布、板、雪、穴、桜、肢。次は何が起こるのかいつもわくわくして見る。
唯一、よくなかったのは舞台前面にマイクが設置してあったこと。たぶん。自分の耳がどうかしたのでなければ、マイクを通した声に聞こえた。野田さんの芝居でマイクは・・ないだろう。お陰で台詞はよく聞こえたけれども、やはり芝居の魅力はナマ声だよ。何か事情があったには違いない。
近年、ホントにマイクで声を拾う芝居が多い。肉体はまだ(近い将来ホログラムを超えた4D芝居とか作られてしまいそうだから)生、LIVEだが、音楽と違ってマイクを通した声はLIVEではない。生とそうでないのとでは、決定的に何かが違うのだ。その何かがあるから芝居は愉しいのだ。
SIMPLY BECAUSE IMITATION -偽物だからこそ-
SECOND・N PRODUCE
高田馬場ラビネスト(東京都)
2017/01/24 (火) ~ 2017/01/29 (日)公演終了
満足度★★★★
作品はとても良かったのですが、作品外の部分で残念な点の多い公演でした。
自由席の公演で確実に希望の席を取りたい人は、早めに来て並んだりと努力をしています。なのに、劇団側が何のお断りもなく、約束の時間よりも早く開場するというのは如何なものでしょう?
先に入った人が後から来るお連れさんの席を取っておく事を係員が認めてしまっているのも、公平さを欠いていると思います。
客を詰め過ぎて窮屈で仕方なかったりと、とても快適とは言い難い観劇環境でしたし、出演者の一人の「アンケート書いて下さい。暇な時に読みますから。」と言うのも、冗談にしてもあまり気分のいいものではありませんでした。
文句ばかり言ってしまいましたが、作品自体はとても良かったです。自分の恋人がもしそうだったら…、など、いろいろと考えさせられました。良い作品と出会えました。ありがとうございます。
アマテラス
少年社中
紀伊國屋ホール(東京都)
2017/02/03 (金) ~ 2017/02/13 (月)公演終了
満足度★★★★★
レバ刺し食べたーい!
やっぱり少年社中はすごいよ。
裏切らない。
何もかもが。みんなみんなすごくいい。それぞれの人らしさがあって、役らしさがある。
衣装も美術も音響も照明も一級だ。演出部さんには頭が下がる。
古事記の古くさい話なんかじゃないからちょっと無理してでも見に行った方がいいよ。
ネタバレは避けるけれど、三上俊さんがとてもとてもとてもいい仕事をしていて、その為に見に行ってもお釣りがくることは確かだよ。
三上俊さんに関しては、舞台上はもちろん、パンフもお買い逃しなく。
ありそさんとみかしゅんさん、振り切ってて好き。
振り切ってるのはウミサチ・ヤマサチ兄弟なんだけど、2人の空気感がすごく良くて、絶対裏では苦労してるんだけど、楽しい面だけ投げてくれるのがすごく嬉しい。コメディができる人って本当に頭がいい。
主演の竹内尚文さんが、とても「少年」らしさを持っていて、「人間」らしさを持っていて、今この人がやるべき役だなぁって劇中ずっと思ってた。太陽みたいに明るくて温かいヤマトタケルの愛情を、客席で受け取ることができて幸せでした。
ものすごく乱暴なまとめ方かもしれないけれど、X−QUESTの『神芝居』が好きだと思った人は、少年社中のアマテラスを見たほうがいい。見て欲しい。
いろんな共通項とそれぞれの差異が感じられて、どっちも愛おしくなるから。
その探偵の名、
インプロカンパニーPlatform
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/09/23 (水) ~ 2015/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
初めて「コンセプトインプロ」というものを観たのはこれでした。どんなものなのか分からない中観劇して、観終わった後の感想がとにかく「すげぇ」って感じだった。目の前で今、作られていることにとても驚いた。本当に台本ないところはないんだなぁと。
タイトル通り探偵ものの作品。自分もそういうのが好きなのもあり、とても楽しかった。観に来ている人だけでなく、舞台の上でも本気で「探偵」として当てようとしていた。そんな一体感に惹かれました。
ネタバレBOX
私はチープルックが自衛官の回を観た。
最初のアミーゴの依頼のシーンではインプロの手法みたいなのを紹介してくれていて、私みたいなインプロ初心者には嬉しかった。ワンボイスとかペーパーズとか。
推理のシーンでは結構ポンポン容疑者の感情を当て、最後の3人まで行ったのに、惜しかった…。
でもその本気に悩んでる様を見て、こっちまで同じ気持ちなってきて、そんな雰囲気を造り出すなんてすごいな、と思ったのはよく覚えている。
ヒドラの匣。
インプロカンパニーPlatform
ワーサルシアター(東京都)
2016/10/06 (木) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
2回観に行ってきました(^^)
私が観たのは、ハッピーエンドだったけど、ちょっとバットエンドも観たかったなぁと思いました
毎公演どんな、世界観で結末がどうなるのか、ドキドキワクワクしながら、楽しめる
ヒドラロスになるほど、ずっとそこにいたいと思う
内容的は、人の心の鍵やダークな部分が取り上げられてるけど、最後にはスッキリできたのかなぁと、私は思ったし感じました
シャッフルキャストで、主人公の立場や関係性が変わるのも、面白い要素の一つかなと思いました
また、再公演してほしいなぁと思った
陥没
Bunkamura/キューブ
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2017/02/04 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★
ケラ作・演出舞台は三つ位、残念ながらヒットに未だ遭遇せず。いや遭遇しても私がそう思わないだけかもであるが(ウェルメイドなタッチが苦手という事は言える)。映像で観た二作の一つは毒が前面に出て悪くなかった。建造物のように芝居を堅固に構築する印象。昨年「8月の家族たち」を観劇したのはケラ氏の「演出のみの舞台」をみたかったからだが、確かな技であった。
だが今作、気になるのは芝居じたいの結語になる部分、芝居本体よりは、洒落や蛇足と見えなくもない部分だ。(またまた例によって歴史云々の話になりそうだがご勘弁を。)
昭和三部作という。・・歴史の描き方には二通りある。問題の根を掘り起こす視点と、讃うべき現在へのルーツを再発見・再構成する視点。このように区分すれば、という話だが、この舞台は後者になっている。単純に、前者は現在と過去に懐疑的で、後者は逆に肯定的、という違いに過ぎないが、単なるドラマのタイプの別を超えた根本的な違いがあると、私は思っている。
3時間に亘る作品をただこの区分で振り分けて批評するのは乱暴だが、重大な分岐がそこにある、と、多くの観客を動員する公演だけに申したくなる所なのである。(くだくだしい論議はネタバレへ)
ネタバレBOX
懐疑史観と肯定史観、「作品」の中では両者混在するのが通常だが、話の閉じ繰りが歴史秘話の開陳の体裁なら、後者のそれだと言える。『陥没』はそれに属する。
もちろんこの舞台は「歴史物語」ではなく、1964年の東京五輪開催に合わせたホテル開業の夢が今花開かんとする、準備段階のホテルの中で展開するドタバタ、ラブコメディだ。史実に触れているのは「東京五輪」くらいである。が、五輪を睨んだ「時」を歩んでいる設定は、強い。必然今の2020五輪を睨む現在にも重なってくるからである。
さて、冒頭の場面ではホテル建設の夢を語る男(山崎一)とその娘(小池栄子)、その許婚(井上芳雄)が慎ましく暖かな関係を見せている。が、父が倒れたとの知らせとともに暗転、タイトルロールが映像で流れ、本編に入った三年後では、娘小池は夫井上とは既に離婚し、冒頭場面の最後に「気持ち悪い」風情で登場した、父の会社に引き抜かれた有能な新社員(生瀬勝久)と小池はなんと再婚している。小池は取締役社長として現場を健気に仕切っており、従業員は他に事務員(緒川たまき)と、あとは生瀬。そして死んだ父の霊も天界から男女二名を伴って登場する(観客にしか見えない)。
ホテルのロビーで展開する話の中心は、小池の元夫・井上と、若い新しい恋人(松岡茉優)との婚約式が翌日、このホテルで開かれるというもので、井上の弟(瀬戸康史)と彼らが連れてきた友人?(山内圭哉)、井上の母(犬山犬子)、松岡の高校時代の教師(山西淳)などが出入りする。どういう経緯か逗留しているマジシャン(高橋惠子)、その秘書(だったと思う・近藤公園)、婚約者の女友達の歌手(趣里)も加わる。天界の同伴者二人は丸い電灯で表現され声のみ出演(誰かは不明)、やがて姿形を現すが、その場合はある登場人物の体を借りて行動し、乗り移られた方はその間の記憶をなくしているという案配。天界人の「七つ道具」惚れ薬が厄介な事態を引き起こし、カテゴリー的にはラブコメそのもの。
冒頭の伏線は、本編の歪んだ状況(生瀬が小池の夫である事、元夫も別の相手と婚約しようとしている事)を、超克すべき視点を残し、忘れた頃にその問題が浮上して解決へと動き出す。撒かれた伏線が最後には拾われ、あるべき形に収まる、完結したドラマになっている。
その構図を楽しめば良いという話ではあるが、やはりこの劇は「歴史」を落としどころにしている。東京五輪の前年に、こんな事があったとさ、無かった?無かったとは言えないさ、誰も見ていないんだから・・ま、そんなあれこれがあって、つまり日本はあの時代をくぐって、今という時代を迎える事ができたんだね。うん。なんか、感動だね。・・そういうオチで閉じられている。「日本」「歴史」の共有感が介在して成立するドラマのフォーマットを借りて、お客のご機嫌を窺う芝居に落ち着く訳なのだ。
知られた歴史の「裏話」的な語りとは、史実を「それ以外にありえなかったもの」と規定し、「実はその裏には・・」と寝物語に話すあのニュアンスがある。パロディは、パロる対象が堅固であるほどよく、権力が強大で悪どいほど面白い諷刺を生むのと同じ構造だ。
芝居はもっと複雑で多様な視点をぶちこむ事も可だが、芝居全体がどういう叙述となっているか、だ。芝居の序盤、世情を皮肉る台詞が吐かれるが、流れにそぐわず飲まれてしまう。
高度経済成長時代の「秘話」は、昭和の当時の風俗を散りばめながら、しかし人物らの感覚は現代に近く、「誰もが知る」(訳ではないがそんな風情の)歴史=「昭和」のキャンバスに遊ぶ時間である。
主語は時代。心温まった後味の理由は「現在の肯定」にある。芝居には毒もあったから、肯定された気にならない客も居たかも知れないが。。
歴史の「肯定」と書いたが、歴史を俯瞰し、それが必然であったという意味で史実が「確定」された時、肯定か否定かという論議のステージは通り越している。
運命論は、「それ以外に辿る道はなかった」のは宿命、即ち「必然」であって天の道理にかなっている、という叙述になる。複雑に絡み合ったものが解きほぐされ、収まるべき所に収まる物語じたいが「運命論」と言い換えて良いが、この話の中に人間の情熱や努力が無かったかと言えばそうでもなく、運命を「切り開こう」とする人間は描かれている。
ただ、小ぢんまりな世界での右往左往が、「感動」の次元に持ち上げられるには、やはり「歴史」という大きな物語の力が不可欠であった。肯定された「現在」は、日本という国、あるいは共同体のそれであり、観客はその一員に組み込まれて、等しく祝福に与るという寸法である。
永井愛の「時の物置」は60年安保の翌年、経済路線に舵を切り、生活の安定と「正しさの追及」(主に政治的次元)が齟齬を持ちながら同衾する事になった日本の、庶民レベルでの風景を描いた秀作だが、受験勉強に勤しむこましゃくれた高校男子にさらりとこう言わせている。「叶わぬ夢を追うより現実を愛した方がいい」
これを演劇、ドラマに置き換えると、一つの補助線になるだろう。
ドラマチックたる根拠を「歴史」そのものに置く叙述の方法。ドラマ作家と歴史の依存関係(「歴史」が擬人化して自らを肯定されたがっている、とみれば)が、私には欺瞞に感じられる。互いを称賛しあって付加価値を高めるのは、あながち商業面に限った話とは言えないが、損得勘定の匂いは燻る。
作劇の才能と集客力を持つ作り手だけに、そこに繊細であって欲しい願望がある。
渇えた人心には甘い蜜こそ栄養なのやも知れぬが、ナショナリズムという蜜(麻薬?)の扱いに芸術家は慎重であるべし。
即興演劇イベント「improll night」12/12
インプロカンパニーPlatform
Live Bar BUNGA(東京都)
2016/12/12 (月) ~ 2016/12/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
初めて参加しましたが、ずっと笑ってました(笑)
アットホームな雰囲気で安心して楽しめるのが、すごくよかったし本公演とは違って、距離感が近いのが嬉しい
合間の休憩中や終わってからのメンバーから、いろんな話ができるから、次も参加したいって思える
私もはまりました(笑)次も、参加したいって思った
売春捜査官
★☆北区AKT STAGE
北区AKTSTAGE 西が丘アトリエ(東京都)
2017/01/14 (土) ~ 2017/02/19 (日)公演終了
満足度★★★★
【Nチーム・鈴木万里絵伝兵衛】鑑賞-
一つの公演(チーム)としては、まだまだだが、万里絵さんがほぼ仕上がってます。
彼女の演技を観るだけでも、遠方から通う価値あり!!
⇒個別評価なら五つ星です。
ヒドラの匣。
インプロカンパニーPlatform
ワーサルシアター(東京都)
2016/10/06 (木) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
精神治療という難しいテーマを即興で行なう。
実際の医療でも即興の面があることを再確認した。
終演後には自分が治療されたような気分になる公演でした。
ヒドラの匣。
インプロカンパニーPlatform
ワーサルシアター(東京都)
2016/10/06 (木) ~ 2016/10/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
全15回の公演の内、10回以上を観に行きました。
同じ舞台とキャラ設定でも、毎回結末が異なるコンセプトインプロ。
その中でも、コンセプトインプロだからこそ表現出来る作品だったと思います。
ハッピーエンドかバッドエンドかに関わらず、何度も泣きました。
主演が主人公としてそこに生きていたからこそ、その心の叫びに共感し、心が震えたのです。
この作品に出会う為に生まれて来たのだと、今でも思っています。
出発
9PROJECT
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2017/02/07 (火) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
初日、たった今見終わりました。初めての劇団でしたがつかこうへい作品を感じられて、とっても楽しい時間でしたよ!
戀女房ー吉原火事ー
占子の兎
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2017/02/05 (日) ~ 2017/02/08 (水)公演終了
満足度★★★★
1911年4月9日に発生した吉原の大火に材を取って描かれた今作。
ネタバレBOX
吉原と根岸を対置する構図で持たざる者と物持ちを対比した作品だが、無論、鏡花らしく人の創る憂き世の哀れ、儚さ、酷さを堪えて生きる吉原の人情や、男女(浦松重太郎・お柳)の深く真摯な愛と重太郎の実母、重太郎の妹樫子とその婚約者、岩造など根岸の傲岸不遜で近代かぶれ、体裁と家紋にがんじがらめにされながら、エリート気取りで軽佻浮薄、而も冷酷な屑どもを比較して描く。
第一の見所は、お柳が、吉原の花魁たちの墓に乱暴狼藉を尽くした岩造一味に鉄槌を下した頭たちを宥める場面で啖呵を切るシーンか。当に江戸っ子の心意気ここに在り、と思わせる名台詞。すっとこどっこいをぎゃふんと言わせ、心が晴れると同時に男社会で女伊達を張るお柳の覚悟のほどを見事に見せつけるシーンである。第二に、重太郎の妻となっていたお柳が、根岸を離れる際にもう一度啖呵を切るが、惚れた男の為に我慢に我慢を重ね、高いプライドを折って土下座して迄頼んだ願いを無下にされての無念、観ている観客の腸が煮えくり返る思いになる。終盤、浦松の婆と吉原を焼き尽くした赤い老魔者とが、人界と魔界で交感し合いながらお柳と重太郎を責め苛むが、鳶の頭らの助けもあり、遂には魔物に打ち勝つ大団円に持ち込み幕。
トランプの差別的発言や、沖縄に対する或いは、在日の人々に対するヤマトンチューの差別発言が問題になる昨今、差別・被差別、強者・弱者をバイアスの無いというより弱者の側に立とうとし続けた鏡花的視点で見直してみる必要があろう。
うえをむいてあるこう
劇団天動虫
要町アトリエ第七秘密基地(東京都)
2017/01/28 (土) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
作者は同じでも演出が違うとやっぱり世界観が違って見えるもの。
しかし舞台上の心地よい疾走感は変わらず、天動虫に灯る温かい心はそのまま。
劇団創設5周年、満を持して舞台に上がった主宰の帆足さん。
お世辞にも抜群にうまい演技とは言わないが、
これまでの天動虫公演の根底にある女の意地と芯の強さ、
仲間への愛と思いやりをガッツリ表現していた。天動虫の心を感じる。
また、マジに照明にぶつかるワダタワーさん、色摩そのもの藤田さん、存在感が衣を纏う平野さんなど、毎度魅力的な役者さんが登場するのは天道虫の楽しみの一つ。
特に前作「飛び火」の透明感あふれる少女と2回転半回った小うるさい藁科さんを演じた鹿又さんや、ほぼほぼ常連で滑稽な女の子を地で行く温井さんなど素敵な人材を引き付けるのも持ち味か。
素敵な歌で締められたエンディング。客だしで配られた歌詞カードを片手にボソッと口ずさみながら帰途につく。
ネタバレBOX
人の生と死、夢と希望、友情の距離感、様々な事を考えさせられる物語。
つか必ず死ぬ人間が目標や夢を持つ事で生きる事の意味を見つけられる。
看板女優ジョニー演じる霊媒師と、親友を消されたくない旭がバチバチの場面。
ここまで育て上げた女優と演出の師弟対決にワクワク感高まる。
互いに一歩も引かずに高みを目指す感覚がカッコ良かった。
そして、個々の個性を引き立てる衣装も素敵で、
霊媒師・常願寺さんとオーラの無い姫川さんなどは、
衣が体を表すがごとく特異なキャラクターを引き立てていた。
また早く魅力的な劇団員総出の舞台も観てみたい。
世界☆独創
シャービィ☆シャービィ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/02/02 (木) ~ 2017/02/06 (月)公演終了
満足度★★★★
カラフルポップなステージに効果的な照明と目を引くプロジェクター映像。
視覚効果の演出も巧みな世界創造の物語。
無邪気の恐怖、悪気のない悪。飛び交う台詞や舞台美術のオブラートに包まれるも、
本質的に見え隠れする闇が現実社会を映し出しているよう。
やっぱり神様は暇つぶしでこの世界をお創りになられたのだろうか。
ネタバレBOX
面白い役者さんを揃え、的確に情景を視覚化する演出は素晴らしい感性。
ただ子どもたちの無邪気さが少々単調で後半まったりしたものの、
むーちゃんの怒が心地よく助けられる。
オセロ王
劇団鋼鉄村松
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★
苦痛を感じる位のへんな座席配置だった。
あとはわかりません。
オセロ王
劇団鋼鉄村松
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
鋼鉄村松を深読みしよう。
と言うか、テーマが忍ばせてあったりすることが結構あるので、そこを考えてみた。
表面的なアレコレの、もうひとつ先があったりするので。
今回のバブルさんの作だけでなく、ボスさんの作品でも、いろいろあると思う。
(ネタバレBOX長くてすみません)
ネタバレBOX
核戦争を生き延びた一握りの日本人は、白人文化に憧れる「はくにん」と黒人文化に憧れる「こくにん」に分かれて、と、銃の所持とか、そんなことから、「え、何? 今、メリケン文化をディスる話なわけ?」と思って観ていたら、そうではなかった。
つい、「はくにん(白い人)」と「こくにん(黒い人)」を「肌の色」的な意味合いからの対立ととらえてしまい、そういった「言われなき差別」を声高的に取り上げた作品かと、思ってしまった。
それだと「日本人」がわざわざ演じてみせる理由もよくわからないからだ。
しかし、観客のほとんどか物語の早い時期から気がついていたと思うのだが、「はくにん」も「こくにん」も、そもそもは「日本人が顔にファンデーションを塗っただけ」ということで、てっきりそれがオチかと思っていた。すなわち、元の日本人に戻ってメデタシ、メデタシとなるオチだ。
物語の中盤でも、確認の意味で、「朝起きてからファンデーションを塗っている」「黒いファンデーションでなく、白いファンデーションを塗れば、こくにんも、はくにんになれる」と言う台詞がある。
しかし、それは行わないのだ。
当然ラストもそこには辿り着かない。
すなわち、「肌の色」や「民族」「性別」など、生まれ持ってきて変わることができないことに対する「差別」がこの作品のポイントではない、ということなのだ。
朝塗るファンデーションひとつで変わることができるもの、に対する「差別」だ。
それは、「後から獲得した」、いや「後から自らが選んだ」ものであり、そこには「プライド」さえある。
これは例えば、「宗教」と考えてみたらどうだろうか。
「宗教」は自らが選択し、それを変えることも可能である。
しかし、誰もが簡単に変えることができない。
それはなぜか。それにはプライドがあり、歴史があるからだ。
綿々と続いてきた祖先や家族が受け継いてきたもので、それに対する「疑問(なぜこの宗教を信じているのか?)」もわかない、という自然な状態にも「宗教」的なものを感じる。
あるいは「文化」と言ってもいいのかもしれない。
したがって、ヒロスエ歴200年も経つと、単なるファンデーションの色は、ファンデーション以上の意味を持つものとなってきている。
宗教も生まれてから数百年で、それぞれが選択したものから変えることができなくなっていた。それが元で戦争も度々起こっているし、現時点でも争いの元になっている。
ざっくり言ってしまえば、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、同じ神様を崇めている宗教であるはずだが、すでにまったく別の宗教のようになっている。キリスト教の中でさえ、宗派がいくつもあり、互いが相容れない状況にある。
これって、本来中身が「日本人」である「はくにん」と「こくにん」の関係に似てはいないだろうか。
バブルムラマツさんの脚本は、単純に「宗教」のようなもので、例えば、「オセロ」好きと「将棋」好きなんていう区別ではなく、まるで「肌の色」の違いのように見せることで、観客に考えさせるためのワンクッションを置いたのではないか。単純に「宗教的」なものにしてしまえば、内容は薄っぺらくなってしまうし、「肌の違い」にしてしまえば、さらに薄っぺらい。
「朝塗るファンデーション」は、すでに生活の一部であり、「こくにん」たちが「はくにん」に虐げられていても、簡単には変えることができない、というところが脚本として優れている。
ボス村松さん演じるキングが実は、もと「こくにん」だったという設定が効いてくる。江戸時代のキリスト教徒であれば、「転んだ」というところで、そんなことは大声で他人に話すことはできない。そして、グレートニュームラマツさん演じるサンボに「オセロの試合にこれからも出たければ、はくにんになれ」と囁く。つまり「転べ」と。
朝塗るファンデーションという、あまりにもバカバカしい設定なのだが、このあたりは重い。
「はくにん」と「こくにん」が生まれた、バカバカしい理由を後で知ることになっただけに重さは増す。
後で知った理由から、さらに遡れば、高校生だった吉田覚丸さん演じる村松と林有実さん演じる高島の確執がおおもとにあることが明らかになってくるあたりの、ストーリーの被せ方もナイスである。
しかし、村松と高島の2人は、実は確執があったわけでないというラストに、そこまで全編を覆ってきた「人は、この世に現れてきたときから、争うものであり、それは絶対に避けることができない」という命題に、「そうでもないかもしれないという」わずかな光明を差させるのだ。市長や次の市長たちが、この争いに終止符を打つことを諦めてきたことにだ。
「塗っているファンデーションを取ってしまえば、いいんじゃないの」という考えは、実は宗教に無頓着な「日本人的発想」であったことに気づかされる。
「しょせん宗教じゃないの」とか「同じ人間なのに」「同じ民族なのに」「元は同じでしょ」とか思ってしまう、多くの日本人にとっての宗教観である。
「塗っている人たち」にとっては、そんなに簡単なことではないということは、頭ではわかっていても、昔も今も起こっている戦争や紛争を見るたびに思ってしまうことであり、本当のところは理解できていないということなのだ。
作品の中では、「死傷者を最小限にするため」「“こくにん”の銃所持を制限する」という苦渋の選択を新しい市長が行う。バカバカしい大団円になると思っていただけに、この選択は意外であった。
バカバカしい中にあって、リアルな選択であり、明確な「答え」は「ない」ということなのだ。
この物語のテーマは、私たち日本人が感じている「宗教観」を気づかせ、「やっぱりわかんねーな」ということを通して、「でも、ひょっとしたら」という、結論に導く作品であり、意外と安易な「答え」を見せないところが上手いのではないかと思う。
ラスト、暗転のほんのわずかなタイミングで見せた、村松の「なーんちゃって」の感じがとっても好きだ。
村松がガックリうな垂れて死ぬ的な展開じゃないところがだ。
その感じが、全体の「救い」になっているように思えた。
今回は、キャラが粒ぞろいだ。
どのキャラもぴたりとはまっていて、気持ちがいい。
いつもは覇気のない青年を演じているグレートニュームラマツさんが、したたかな役を演じていて、これからが楽しみになってきた。
あいかわらず、小山まりあさん(もう、マリー・ムラマツとか村松コヤマリでいいんじゃないかな)がいい。彼女が出ると、全体がぐっと前向きになり、視線を集める。
村松と高島を演じた、吉田覚丸さんと林有実さんのバランスが抜群だ。オープニングの2人のやり取りで面白くなる予感がした。
ボスさんは、やっぱりボスさんで、楽しそうに演じていた。
市長を演じた村山新さんのような人が脇にいるから物語がきちんとして見えた。
劇団鋼鉄村松にとり、絶対的主人公だったムラマツベスさんが休団した今、作・演を互いに競い合っているボスさんとバブルさんにとって、安全パイはなく、どうしていくかずっと悩み続けていることと思う。その答えのひとつをバブルさんの『MARK (x)』で観たし、ボスさんの『ミハエルとアイルトンとチュウカドン』(あまりにも雑味が多すぎた怪作!)で観たような気がした。
今後も2人は悩み続けて、どう変化していくのかが楽しみである。
……やっぱりボスさんの「将棋こだわり」に対するのが「オセロ」だった?
桜花と風の追憶
空想嬉劇団イナヅマコネコ
上野ストアハウス(東京都)
2017/02/02 (木) ~ 2017/02/06 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/02/04 (土)
座席1階B列10番
価格3,800円
王道と呼ぶに相応しい展開。やはり王道を超えるものは無い。
脚本も小ネタが効いているし、テンポも良い。
久しぶりに舞台を見たという感想が持てる舞台でした。
陥没
Bunkamura/キューブ
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2017/02/04 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
ケラさんの舞台は初めて観劇しました。「陥没」てなんだろう。なんだったのだろうずっと考えています。
たわけ者の血潮
TRASHMASTERS
座・高円寺1(東京都)
2017/02/02 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
いつもと変わらぬトラッシュマスターである。今回のテーマはかなり複雑で基本的には表現の自由と、具体的には大麻の容認が大筋になっているが、議論の基礎として、日本語と言う言葉の特性とか、憲法と諸法制との整合性とか、演劇の舞台では即断できない問題を扱っているので、いつものように爽快に時代を斬るというわけにはいかない。2時間45分、いつもながら長いが、ひかかる議論とそれを明確にしようとする定義づけが輻輳して疲れる。劇中でも触れられるが、俳優も台詞が肉体化しているかと言うと、いささか疑問。戯曲としてももう少し整理したほうがいいのではないか。
ネタバレBOX
演劇批評の(いかにも頼りない現在の演劇ジャーナリズムを体現していて笑ってしまった)女性評論家と同僚記者の話とか、上演が終わったばかりの芝居の話など端折ってもよかったのでは。憲法はどの国のものでも、理想は高くお経のような努力目標で、そこへ向かって現実に進むというのは、不可能だから、最後に憲法で裁くのはどんなものだろう。練られた憲法の言葉で感動する観客もいるだろうが、一方でこの解決では空々しいと感じてしまう観客もいる。座高円寺の椅子で3時間近いのはつらい観客もすくなくないだろう。現在珍しい正当な社会派演劇だが、かなり空席があったのは役者の力量にもよる。
キャンプ荼毘
ひとりぼっちのみんな
STスポット(神奈川県)
2017/02/02 (木) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
渾身の脚本に、ありったけの表現力で応えるキャスト。
ラップで、ダンスで、歌で。
培ってきた演技力があるから出来る媚びのない舞台。
潔くてスピード感があって、兎に角最高だった。
再演を希望します。