
憫笑姫 -Binshouki-
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
五彩の神楽のはじまり、憫笑姫。
前作の独鬼で言葉の無い殺陣のみのお芝居に心動かされ、期待大で見に行ったのだが、期待を超えられた。
姉である主人公が妹のために剣を振るう。ストーリーは単純明快。決して強くはない姉が妹を想う様子が、主人公の動き、周囲の人々、照明、音響、ひとつひとつから非常に丁寧に紡がれていく。言葉を使わないが故に、少しでも情報を得ようと目を凝らす、その度アクションモブ達の表情や動きにまた心動かされる。勘弁してくれよ、こっちはもう胸いっぱいなんだよ。
劇作家である末満健一さんの威圧感やNMB久代梨奈さんの華やかさがまた良い。ストーリーに説得力を与えている。主演である西分綾香さんだけでなく、客演、他の劇団員、アクションモブたち、どこも外せないバランスの良い舞台だと感じた。

ななめライン急行
ホナガヨウコ企画
吉祥寺シアター(東京都)
2017/12/01 (金) ~ 2017/12/10 (日)公演終了
満足度★★★★
ダンス+演劇、みたいな公演は意外とよくある。
舞踏+演劇、なんていうのも珍しくない。
(余談ではあるが、ダンス+演劇(的要素)のカンパニーであれば、ミクニヤナイハラプロジェクトが最強ではないかと思う)
この作品もダンス+演劇(さらに+音楽もあるが、まあ音楽はダンス公演では欠かせないのだが)であり、つまり「ダンス+演劇」が斬新だ! とは言えないぐらいの、それだけでは「売り」にはならない中での公演。
まずはダンスである。
とにかく4人のダンサーが素晴らしい!
彼らのダンスはいつまでも観ていられる。
出演者全員がハイレベルな感じはなかなかない。
ホナガヨウコさんはダンサーであり、振り付け師でもある。
NHKの『シャキーン』とかMVなどの振り付けもやっていたと思う。
だから(こちらの思い込みか)「振り付けされたダンス」の印象が強い。それぞれのダンサーから溢れてきたダンスというよりは。
振り付けをきちんと踊っている、という感じ。
でも上手い。惹き付けられる。
中でも杉山恵里香さんのしなやかさにキレがあるダンスがカッコいい。特にさよならポニーテールの曲のときの。
上田創さんの武道的なカタもきまっていた。
ただ1人ダンサーではない新谷真弓さんのキャスティングもナイス!
さよならポニーテールの曲の振り付け&ダンスもさすがだ!
MVを観ているようで、楽しい。
残念ながら演劇パートがもうひとつ。演出次第でもっと面白くなりそう。
ストーリーは単純だが、悪くはないのだから(上からの偉そうなコメント? 笑)。

神々の黄昏
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2017/10/01 (日) ~ 2017/10/17 (火)公演終了
満足度★★★★
『ニーベルングの指環』の3日目にあたる作品。
上演時間5時間55分(!)
さすがにお腹いっぱい! かと思っていたら、そうでもなく楽しめた。
非常にわかりやすいのは、演出の力なのだ、と納得。
「槍」を象徴的にイメージした装置類。中央に刺さるような槍の穂先が、場面に効いてくる。
抽象的でシンプルなセットなのだが、もう少し何かあってもよかったのかな、とも思う。
ジークフリートは、英雄というよりも、ぽっちゃりの体型と、落ち着きがなかったりする演出のためか、やんちゃな暴れ者というイメージ。
ブリュンヒルデが上手い。
読響の演奏はとても良かった。

『ゴールデンバット』『セブンスター』
うさぎストライプ
アトリエ春風舎(東京都)
2017/11/29 (水) ~ 2017/12/09 (土)公演終了

『ゴールデンバット』『セブンスター』
うさぎストライプ
アトリエ春風舎(東京都)
2017/11/29 (水) ~ 2017/12/09 (土)公演終了
満足度★★
『セブンスター』
一人芝居って、面白くするのが難しい。
役者の力量がモロに出てしまうし(相当なレベルが必要)、演出も複数の役者が出てくるものとは、気の使い方が異なると思う。
(以下ネタバレboxへ)

アテネのタイモン
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2017/12/15 (金) ~ 2017/12/29 (金)公演終了
満足度★★★★
気合いの入った渾身の作品。見応えあり。
そこまで人を呪うかというタイモン・吉田鋼太郎さんの熱演。
将軍役・柿澤勇人さんの、客席での一人舞台のようなシーンに迫力あり。
観客はスタンディングオベーションで、蜷川幸雄さんから引き継いだ、吉田鋼太郎さんの新しい「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の開幕を祝った。

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】
壱劇屋
HEP HALL(大阪府)
2017/12/22 (金) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
チラシが気になって休みの日に観に行ったんですが心の底から行ってよかったって思いました!殺陣がかっこよすぎて冒頭で思わず泣いちゃいました(笑)

『部屋に流れる時間の旅』東京公演
チェルフィッチュ
シアタートラム(東京都)
2017/06/16 (金) ~ 2017/06/25 (日)公演終了
満足度★★★★
これは能だ。
それも夢幻能。
名乗りから始まり、亡霊(幽霊)が登場するところなど。
チカチカする照明や何かわからないが、回る白いものや石。
それは「能」で言うところの「囃子方」にも見えてきた。
(後はネタバレboxへ)

マンスリープロジェクト・リーディング公演「やとわれ仕事」
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2017/11/19 (日) ~ 2017/11/21 (火)公演終了
満足度★★★★
現代カナダ戯曲のリーディング公演。
演出は、新国立劇場芸術監督でもある宮田慶子さん。
それぞれが自分の気持ちに忠実であろうとすることで、すれ違い、ぶつかり合ってしまう。
いい戯曲で、役者もいいので、情景が目に浮かぶようなリーディング公演だった。
この公演、無料なのに空席があったのがもったいない。

夢一夜
加藤健一事務所
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2017/12/06 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
カトケンらしいウェルメイドな作品。
ニューヨーク州バッファローのモーテルが舞台。
女装の男たちとアーミッシュの人々が吹雪の中、一緒のモーテルに泊まることになる。

〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』
アガリスクエンターテイメント
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
狂気の大回収!
お得意の「屁理屈会議・シットコム」の展開で、「ん? 回収?」「回収って何?」と思っていたら、ラストへなだれ込む回収の大嵐!
面白すぎ。
もう「屁理屈」を超え、「狂気」と言っていいレベル。
会議&狂気・シットコムの誕生か!?

ハッピーエンド・チェイサー
7thシアトリカル
テアトルBONBON(東京都)
2017/12/20 (水) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

通し狂言 霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)
国立劇場
国立劇場 大劇場(東京都)
2017/10/03 (火) ~ 2017/10/27 (金)公演終了

ジ・アース
十七戦地
ギャラリーLE DECO(東京都)
2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

白蟻の巣
新国立劇場
兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)
2017/04/04 (火) ~ 2017/04/05 (水)公演終了

ボス村松の竜退治
劇団鋼鉄村松
レンタルスペース+カフェ 兎亭(東京都)
2017/06/03 (土) ~ 2017/06/30 (金)公演終了

くるみ割り人形
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2017/10/28 (土) ~ 2017/11/05 (日)公演終了
満足度★★★★
「少女の憧れが夢の中で…」の新演出が素晴らしい。
「呪い」なんかはなく、わかりやすいし楽しいしのだ。
今まで観たことのない『くるみ割り人形』だった。
(後はネタバレboxへ)

Dancing PLANETS
大駱駝艦
大駱駝艦・壺中天(東京都)
2017/06/30 (金) ~ 2017/07/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
Jeff Millsのアナウンスから始まり、彼の音楽に合わせて繰り広げられる「水金地火木土天海冥」。
そして、惑星探査機ボイジャー。
ユーモアを交えながら宇宙への旅が舞台の上に広がる。
シンプルなセットで肉体を魅せる。
「水金地火木土天海冥」の行列が楽しい。
壺中天の花道設定は初めて見た。
これにより舞台の左右にプラスして前後の動きも出るし、本当にすぐ真横で踊る姿も観ることができる。
壺中天自体が小さな会場で舞台との距離は近いが、それがさらに近いのだ。
踊り手が手や足を伸ばしていくと、観客の頭の上をぎりぎりに通ることもあるが、踊り手が微妙に「すみません」という表情を見せたりするのもなかなか面白い。
近いだけに舞台の上でぐるぐる回す、大きな金属リングだけは少し怖い。

「標〜shirube〜」
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
楽日前のステージを観劇。公演期間終盤に足を運んだのは初桟敷の「海獣」以来だろうか。開演前から役者(会場案内に出張る)の熱が伝わってくる。それは芝居の中で情念の渦となり回転する独楽のようにぶつかって火花を散らしていた。
「体夢」以降、私は桟敷童子の「模索」の時と(勝手に)認識しているが、「蝉の詩」そして今作と、何にも囚われない桟敷童子らしさが追求され磨かれた舞台が現前したように思った。
お話は戦争末期、不遇の女たち(夫を戦争にとられた)七人が海に近い場所に集落を作り、幸福(夫)を海の向こうから呼び起こすための儀式を行うべく、古文書にある通り「人柱」となる者を探している所、自殺の名所でもあるその場所を脱走兵3人が訪れ、行き場を失って死のうとするがそこに立てられた看板の奇妙な文字「条件により相談にのります」に疑問が湧き、そうする内に七人衆に取り囲まれ、彼女らの不幸な身の上を聞いて「一度死のうとした身」、儀式に必要な生け贄となる事を約する(一人は消極的)。このあたりの展開、「自死」する羽目になった自らの境遇とまだ若くエネルギッシュな様子とのギャップも手伝い、笑える場面にもなっているが、その後、彼女らを良く思わない村人たち、また(海に落ちたのを見棄たので死んだと思っていた)彼らの上官、七人衆それぞれの事情も絡んで螺旋状にドラマが展開し、思いもつかない進み方をする。通常ドラマの葛藤は対立する二つの要素の相克に収斂されるところ、今作では登場人物が新たな要素を持ち込み、焦点そのものが遷移して行く。
役者としては、今回は客演に朴ろ美(漢字がない)と円の男優、朴は元娼婦の女リーダー役を(鬼龍院花子の夏目雅子ばりに)気を張って演じていたが「力み」を周到に桟敷女優らが中和、最後にはその力みも違和感なく人物らしく見え、総じた所の劇団の俳優の底力と、書き手の更なる成熟をみてホクホクと帰路についた。

試験管ベビーの勧進帳と身替座禅
試験管ベビー
G/Pit(愛知県)
2017/08/17 (木) ~ 2017/08/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
歌舞伎を原作に脚色…というよりは、「歌舞伎見物」という行為自体をモチーフしたエンタメ。
「歌舞伎」と「現代人(特に若者)の率直な感覚」を率直に結び付ける着想に好感を持ちます。いずれも超初心者向け手取り足取りな見事な掴みで、…講談師の役割は大きいですねぇ。
歌舞伎からのスピンオフというと近頃は木ノ下歌舞伎が旬ですが、ここまで徹底したコメディ脚色ともなると試験管ベビーの他に類を見ない。試験管ベビーの歴史的一歩となるか。ともに能や狂言からの…いわば2次創作の歌舞伎演目というのも象徴的で、あるべき文化の継承と言えるかもしれませんねぇ。
レパートリーとして、他の演目にもチャレンジして欲しい。
そしていつか御園座とコラボ…(勝手な妄想)
以降はネタバレboxへ