最新の観てきた!クチコミ一覧

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憫笑姫 -Binshouki-

憫笑姫 -Binshouki-

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/08/25 (金) ~ 2017/08/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

五彩の神楽のはじまり、憫笑姫。
前作の独鬼で言葉の無い殺陣のみのお芝居に心動かされ、期待大で見に行ったのだが、期待を超えられた。
姉である主人公が妹のために剣を振るう。ストーリーは単純明快。決して強くはない姉が妹を想う様子が、主人公の動き、周囲の人々、照明、音響、ひとつひとつから非常に丁寧に紡がれていく。言葉を使わないが故に、少しでも情報を得ようと目を凝らす、その度アクションモブ達の表情や動きにまた心動かされる。勘弁してくれよ、こっちはもう胸いっぱいなんだよ。
劇作家である末満健一さんの威圧感やNMB久代梨奈さんの華やかさがまた良い。ストーリーに説得力を与えている。主演である西分綾香さんだけでなく、客演、他の劇団員、アクションモブたち、どこも外せないバランスの良い舞台だと感じた。

ななめライン急行

ななめライン急行

ホナガヨウコ企画

吉祥寺シアター(東京都)

2017/12/01 (金) ~ 2017/12/10 (日)公演終了

満足度★★★★

ダンス+演劇、みたいな公演は意外とよくある。
舞踏+演劇、なんていうのも珍しくない。
(余談ではあるが、ダンス+演劇(的要素)のカンパニーであれば、ミクニヤナイハラプロジェクトが最強ではないかと思う)

この作品もダンス+演劇(さらに+音楽もあるが、まあ音楽はダンス公演では欠かせないのだが)であり、つまり「ダンス+演劇」が斬新だ! とは言えないぐらいの、それだけでは「売り」にはならない中での公演。

まずはダンスである。
とにかく4人のダンサーが素晴らしい! 
彼らのダンスはいつまでも観ていられる。
出演者全員がハイレベルな感じはなかなかない。

ホナガヨウコさんはダンサーであり、振り付け師でもある。
NHKの『シャキーン』とかMVなどの振り付けもやっていたと思う。
だから(こちらの思い込みか)「振り付けされたダンス」の印象が強い。それぞれのダンサーから溢れてきたダンスというよりは。
振り付けをきちんと踊っている、という感じ。
でも上手い。惹き付けられる。

中でも杉山恵里香さんのしなやかさにキレがあるダンスがカッコいい。特にさよならポニーテールの曲のときの。
上田創さんの武道的なカタもきまっていた。
ただ1人ダンサーではない新谷真弓さんのキャスティングもナイス!

さよならポニーテールの曲の振り付け&ダンスもさすがだ!
MVを観ているようで、楽しい。

残念ながら演劇パートがもうひとつ。演出次第でもっと面白くなりそう。
ストーリーは単純だが、悪くはないのだから(上からの偉そうなコメント? 笑)。

神々の黄昏

神々の黄昏

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2017/10/01 (日) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★

『ニーベルングの指環』の3日目にあたる作品。
上演時間5時間55分(!)

さすがにお腹いっぱい! かと思っていたら、そうでもなく楽しめた。
非常にわかりやすいのは、演出の力なのだ、と納得。

「槍」を象徴的にイメージした装置類。中央に刺さるような槍の穂先が、場面に効いてくる。
抽象的でシンプルなセットなのだが、もう少し何かあってもよかったのかな、とも思う。

ジークフリートは、英雄というよりも、ぽっちゃりの体型と、落ち着きがなかったりする演出のためか、やんちゃな暴れ者というイメージ。
ブリュンヒルデが上手い。

読響の演奏はとても良かった。

『ゴールデンバット』『セブンスター』

『ゴールデンバット』『セブンスター』

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2017/11/29 (水) ~ 2017/12/09 (土)公演終了

満足度★★★★

『ゴールデンバット』

地下アイドルが主人公の1人芝居。
面白い!!

(以下はネタバレboxへ)

ネタバレBOX

地下アイドルが観客に語りかけるという設定なので、一人芝居であることに無理がなく、物語に入りやすい。

菊池佳南さんの熱演&昭和歌謡&フォークの熱唱で、主人公がどんどん魅力的になっていく。
そういう中で、彼女の生きる力の強さも同時に感じる。
「生きる力の強さ」というのは、「彼女ならば、この先もなんとかやっていけるだろう」と思わせるような、そんな感じのことである。

さらに年齢が彼女の2倍ぐらい上の、かつて歌手を目指していた瑛子の人生と、徐々に重なり合い、ラストのカーペンターズの『Yesterday Once More』で2人が交差するラストは感動的。
なんていい選曲なんだろう。

主人公は何度か設定を変えている地下アイドルなのだが、現在は喪服の似合う未亡人アイドルという設定になっている。
これって、彼女を捨てた元彼への当てつけなんだろうか(笑)。
『ゴールデンバット』『セブンスター』

『ゴールデンバット』『セブンスター』

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2017/11/29 (水) ~ 2017/12/09 (土)公演終了

満足度★★

『セブンスター』

一人芝居って、面白くするのが難しい。
役者の力量がモロに出てしまうし(相当なレベルが必要)、演出も複数の役者が出てくるものとは、気の使い方が異なると思う。

(以下ネタバレboxへ)

ネタバレBOX

いい感じ系の話だが、兄に対する憧れ度というか、兄の魅力自体がわからないのと、小6ならば種子島がどこにあるのかぐらいわかるだろう! という突っ込みでストーリーに乗れず。

この話は、「弟と兄」の関係を軸に、弟から見た話に集中すべきではなかったのか。
それがテーマになっていくのだから。

「兄のしてくれた話を友だちに(学校で?)話す」なんて台詞があったのだから、弟が塾で仲良くなった女の子を家に呼んで、宇宙の話をするときに、そんな感じが出るべきであろうし、言葉の端々に「兄」のこと「兄自慢」みたいなことが出てもよいのではないか。
最初のガレージ(?)をスペースシャトル内に見立てたシーンの台詞にも「兄」が出てくるべきではないかと思う。「兄の作ったこのスペースシャトルで…」みたいな。

兄のほうは中学でタバコを吸っているし、途中で学校にも行かなくなっている。せっかくそんな展開があるのだから、弟の兄に対する憧れも嫌悪に変わってもいいのではないか。そしてまた「誇れる兄」になっていき、現在に至るという心の変化も出せたはずだ。

小学校6年生ぐらいであれば、種子島がどこにあるかぐらいは(ロケット打ち上げを知っているのであれば、ニュースなのか兄からなのか、そのソースはわからないが)わかって当然な気もする。

さらに小学校高学年になるとスポーツタイプの自転車を買ってもらうことが多くなり、友だちと遠出をすることも始まる。そのときには、ます違いなく地図で行き先の道順を確認する。実際、自分たちもそうして、サイクリングをした。そうしなければ、家からどう行くのか方角もわからないからだ。したがって、何も考えずに海に沿って、みたいなことはあり得ないなあ、と思いつつ観ていた。小学校低学年ならばあり得るけど。

せめて演出か演技にキレがあって勢いで見せてくれれば…。
シーンの切り替えとか、もう少しどうにかならなかったのかなあ。

劇場の壁を黒板のように使っていて、チョークで絵を描くのだが、それがそれほど効果的ではない。せっかく黒板あるのにホワイトボード使う必要があった? 
むしろ黒板を使ったほうが、他の絵と混ざって効果的だったと思うのだが。
アテネのタイモン

アテネのタイモン

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2017/12/15 (金) ~ 2017/12/29 (金)公演終了

満足度★★★★

気合いの入った渾身の作品。見応えあり。

そこまで人を呪うかというタイモン・吉田鋼太郎さんの熱演。
将軍役・柿澤勇人さんの、客席での一人舞台のようなシーンに迫力あり。

観客はスタンディングオベーションで、蜷川幸雄さんから引き継いだ、吉田鋼太郎さんの新しい「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の開幕を祝った。

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

荒人神 -Arabitokami-【2018年6-7月wordless殺陣芝居シリーズで東名阪ツアー決定!】

壱劇屋

HEP HALL(大阪府)

2017/12/22 (金) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

チラシが気になって休みの日に観に行ったんですが心の底から行ってよかったって思いました!殺陣がかっこよすぎて冒頭で思わず泣いちゃいました(笑)

『部屋に流れる時間の旅』東京公演

『部屋に流れる時間の旅』東京公演

チェルフィッチュ

シアタートラム(東京都)

2017/06/16 (金) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

満足度★★★★

これは能だ。
それも夢幻能。
名乗りから始まり、亡霊(幽霊)が登場するところなど。
チカチカする照明や何かわからないが、回る白いものや石。
それは「能」で言うところの「囃子方」にも見えてきた。

(後はネタバレboxへ)

ネタバレBOX

冒頭で「目を閉じてくれ」ということを役者が言う。
舞台の上を暗転させたり、幕を下ろしたりする(トラムに幕が下りるかどうかは別として)のではなく、「目を閉じさせる」(従わせる)ということに意味があるのだ。
そう言われたから観客のほとんど(たぶん全員)は「開けていい」と言われるまで目を閉じていた。

観客は特に何も考えずに指示に従う。
(舞台上の)部屋に流れる時間は、過去と現在と、過去から見た未来とが交わる。
演劇では別に特殊なことではないが、過去の現在が「幽霊」として存在する。

観客は「目を閉じて」「目を開けて」、部屋に流れる時間の中に連れてこられた。

私たちは過去になってしまったもの(コト)をいつまで覚えていることができるのだろうか。

幽霊になった妻は、いったい誰が見ている(見せている)のだろうか。
思い出す夫が「見せている」のか。
あるいは「思い出さない」夫の「過去」から幽霊は現れることで呼びかけているのか。

椅子に座り、ゆらゆら揺れる男の足が、どの時間軸に「足」を置くこともできずにいるのだろうか。

あの「ゆらゆらする足」にとても不安を感じてしまう。
「過去からの呼びかけ」に気づくことなく、ゆらゆらしているのだから。
マンスリープロジェクト・リーディング公演「やとわれ仕事」

マンスリープロジェクト・リーディング公演「やとわれ仕事」

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2017/11/19 (日) ~ 2017/11/21 (火)公演終了

満足度★★★★

現代カナダ戯曲のリーディング公演。
演出は、新国立劇場芸術監督でもある宮田慶子さん。

それぞれが自分の気持ちに忠実であろうとすることで、すれ違い、ぶつかり合ってしまう。

いい戯曲で、役者もいいので、情景が目に浮かぶようなリーディング公演だった。

この公演、無料なのに空席があったのがもったいない。

ネタバレBOX

ラストは悲劇的かと思っていたら、予想外(笑)のハッピーエンド。「老い」がテーマであり、それを見守る温かく救いのある話だった。
夢一夜

夢一夜

加藤健一事務所

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/12/06 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

カトケンらしいウェルメイドな作品。

ニューヨーク州バッファローのモーテルが舞台。
女装の男たちとアーミッシュの人々が吹雪の中、一緒のモーテルに泊まることになる。

ネタバレBOX

フライヤーの写真から、ひょっとしたらシビアな内容なのかとも思ったが、カトケン楽しいほうの舞台で、笑いとペーソスがある作品だった。ドタバタにもならずに。
こういう作品ではカトケン事務所は確実に楽しませてくれる。

女装の男たちとアーミッシュという、異端とも思われる人たちを通して(こがポイントではなく)、働くこと、生活すること、そして生き方について描いていたと思う。
家族、友人、親子なんていう関係を踏まえつつ。

バービーを演じる横堀悦夫さんがやはり上手い。この方の公演は青年座でも拝見するが、どんな役を演じても上手いな、と思う。
私の観た日、カトケンさんはお疲れなのか、なんとなく迫力に欠けた。

ラストは誰もが思うとおりに収まって、その収まり方もカトケンの舞台らしい。

加藤健一事務所の公演は、観客の年齢が高い。そのためか夜の公演は空席が目立つときがある。余計なお世話かもしれないが、次の観客を育てるためにも、夜公演は若い観客(30代ぐらいまで)の料金を思い切って下げることをしてみてどうだろうかと思う。
〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

アガリスクエンターテイメント

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

狂気の大回収!

お得意の「屁理屈会議・シットコム」の展開で、「ん? 回収?」「回収って何?」と思っていたら、ラストへなだれ込む回収の大嵐!
面白すぎ。

もう「屁理屈」を超え、「狂気」と言っていいレベル。
会議&狂気・シットコムの誕生か!?

ハッピーエンド・チェイサー

ハッピーエンド・チェイサー

7thシアトリカル

テアトルBONBON(東京都)

2017/12/20 (水) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★

最近の流行りかな。こういう作品が多い。
登場人物達に感情移入出来なかった。

通し狂言 霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)

通し狂言 霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)

国立劇場

国立劇場 大劇場(東京都)

2017/10/03 (火) ~ 2017/10/27 (金)公演終了

満足度★★★★

『霊験亀山鉾』は、鶴屋南北が実際に起こった仇討ちをベースにして書き上げた作品。

(後はネタバレboxへ)

ネタバレBOX

「仇討ち」の話であると書いたが、このストーリーがかなり変わっている。
なにより、仇討ちが「返り討ち」にあう話だからだ。しかも2度も(!)。
2度とも返り討ちとなり、仇討ちする側が命を落としてしまう。

片岡仁左衛門さんは、この仇(藤田水右衛門)と、さらに瓜二つな(二役ですから・笑)小悪党・八郎兵衛の2役を演じる。
仁左衛門さんが演じるので、ニヒルで冷酷、しかも二枚目、という悪党に見事になる。

しかし、藤田水右衛門が主人公のピカレスク的な物語にならないのは、水右衛門が卑怯すぎるからではないか。
2度の返り討ちは、1度めは毒を盛る、2度めは偽情報でおびき出し、落とし穴に落として(手下にやらして自分は止めだけ刺す)相手を仕留める。

ただし、仇を討つ側にも観客は入れ込みづらい感じはある。それは、メインの話に登場する男が、子をなした女性(妻ではない)があるにもかかわらず、さらにいい仲になった女性がいたりするからだ。

とはいえ、歌舞伎らしい趣向もある。
水右衛門は敵討ちから逃げるために棺桶に入って運ばれるのだが(黒澤の『用心棒』にもあった、そんなシーン)、本当の棺桶と入れ替わってしまい、水右衛門は火葬されそうになってしまう。
その燃えさかる棺桶から水右衛門が飛び出すのが、見せ場のひとつでもある。炎などの派手さはないのだが。

また、最後に水右衛門を討つ子どもは、足腰が立たない病気だが、それを直すには「人の肝臓の生き血を飲む」という方法しかないという設定となっている。
こんな奇想天外な設定は歌舞伎ならでは。

歌舞伎の面白さは、こんな奇想天外な発想と、意外な展開が、考え抜かれた見せ場で繰り広げられるというところにある。
役者も皆上手いし、「何をどう見せると面白いか」に心血を注いでいるので、歌舞伎は面白いのだ。
ジ・アース

ジ・アース

十七戦地

ギャラリーLE DECO(東京都)

2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了

満足度★★

期待していた分だけ今回は?と思える作品でした。

白蟻の巣

白蟻の巣

新国立劇場

兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)

2017/04/04 (火) ~ 2017/04/05 (水)公演終了

満足度★★★

三島由紀夫の初の長編戯曲。
この作品、初めて観た。

ネタバレBOX

夫の視線で妻が語られていくが、実はその裏もあるのではないか。
どうして妻がそうなったのか、が。

後半の予定調和を大きく壊す展開には驚かされる。
笑っていいのか、迷う。
主人が運転手の妻の胸をいきなり揉みながらの展開だ。

旅行先での商売女との関係も、実は意外でもなんでもなかった。
これが、「妻を破滅」させる真因なのでは。

面白いとは思うが、なぜこの戯曲が「絶版」のままなのか、またあまり上演されていないのか、なんとなくわかる気がする。
ボス村松の竜退治

ボス村松の竜退治

劇団鋼鉄村松

レンタルスペース+カフェ 兎亭(東京都)

2017/06/03 (土) ~ 2017/06/30 (金)公演終了

満足度★★★★★

今回は(笑)脚本も演出も、きちんとボスのアンダーコントロールにあり、すげー面白い!

ネタバレBOX

四つ首の竜の設定が、ナポリ王国の物語に見事に絡む。
いつながらの台詞の濃さもとてもいい。
ボスさんは実に楽しそうに浪々と台詞を発していた。
やっぱり鋼鉄村松はこうでなくっちゃ! 

ボス村松のぐたぐた感がお好きな人にはお勧めできないかも(笑)。
ぐたぐたも、それはそれで面白いのだけど……。
(「いやいやいや、十分にぐだぐだしているじゃないか」という方はボスの本当のグダグダを知らないのだ・笑)
くるみ割り人形

くるみ割り人形

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2017/10/28 (土) ~ 2017/11/05 (日)公演終了

満足度★★★★

「少女の憧れが夢の中で…」の新演出が素晴らしい。
「呪い」なんかはなく、わかりやすいし楽しいしのだ。
今まで観たことのない『くるみ割り人形』だった。

(後はネタバレboxへ)

ネタバレBOX

少女クララは子役で、夢の中では大人になり、憧れの人と過ごすことができる。

くるみ割り人形と王子様の2役を1人がこなしたり、ドロッセルマイヤーおじさんが、現実のシーンでは手品を見せ、夢の中では魔法使いという設定だったりするのもわかりやすい。

ネズミたちは化け物のようだったが(笑)。

邸宅の外のシーンが入ることで広がりも出た。
セットも美しいし、夢がある。

クララの小野絢子さんの動きが優雅で美しい。
雪の精のシーンもとてもよかった。

「バレエを一度観てみたい」と思っている方が、最初に体験するバレエ公演として、今回のこの公演はいいのではないだろうか。きっとバレエが好きになるに違いない。
Dancing PLANETS

Dancing PLANETS

大駱駝艦

大駱駝艦・壺中天(東京都)

2017/06/30 (金) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

Jeff Millsのアナウンスから始まり、彼の音楽に合わせて繰り広げられる「水金地火木土天海冥」。
そして、惑星探査機ボイジャー。

ユーモアを交えながら宇宙への旅が舞台の上に広がる。
シンプルなセットで肉体を魅せる。
「水金地火木土天海冥」の行列が楽しい。

壺中天の花道設定は初めて見た。
これにより舞台の左右にプラスして前後の動きも出るし、本当にすぐ真横で踊る姿も観ることができる。
壺中天自体が小さな会場で舞台との距離は近いが、それがさらに近いのだ。

踊り手が手や足を伸ばしていくと、観客の頭の上をぎりぎりに通ることもあるが、踊り手が微妙に「すみません」という表情を見せたりするのもなかなか面白い。
近いだけに舞台の上でぐるぐる回す、大きな金属リングだけは少し怖い。

「標〜shirube〜」

「標〜shirube〜」

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2017/12/12 (火) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

楽日前のステージを観劇。公演期間終盤に足を運んだのは初桟敷の「海獣」以来だろうか。開演前から役者(会場案内に出張る)の熱が伝わってくる。それは芝居の中で情念の渦となり回転する独楽のようにぶつかって火花を散らしていた。
「体夢」以降、私は桟敷童子の「模索」の時と(勝手に)認識しているが、「蝉の詩」そして今作と、何にも囚われない桟敷童子らしさが追求され磨かれた舞台が現前したように思った。
お話は戦争末期、不遇の女たち(夫を戦争にとられた)七人が海に近い場所に集落を作り、幸福(夫)を海の向こうから呼び起こすための儀式を行うべく、古文書にある通り「人柱」となる者を探している所、自殺の名所でもあるその場所を脱走兵3人が訪れ、行き場を失って死のうとするがそこに立てられた看板の奇妙な文字「条件により相談にのります」に疑問が湧き、そうする内に七人衆に取り囲まれ、彼女らの不幸な身の上を聞いて「一度死のうとした身」、儀式に必要な生け贄となる事を約する(一人は消極的)。このあたりの展開、「自死」する羽目になった自らの境遇とまだ若くエネルギッシュな様子とのギャップも手伝い、笑える場面にもなっているが、その後、彼女らを良く思わない村人たち、また(海に落ちたのを見棄たので死んだと思っていた)彼らの上官、七人衆それぞれの事情も絡んで螺旋状にドラマが展開し、思いもつかない進み方をする。通常ドラマの葛藤は対立する二つの要素の相克に収斂されるところ、今作では登場人物が新たな要素を持ち込み、焦点そのものが遷移して行く。
役者としては、今回は客演に朴ろ美(漢字がない)と円の男優、朴は元娼婦の女リーダー役を(鬼龍院花子の夏目雅子ばりに)気を張って演じていたが「力み」を周到に桟敷女優らが中和、最後にはその力みも違和感なく人物らしく見え、総じた所の劇団の俳優の底力と、書き手の更なる成熟をみてホクホクと帰路についた。

試験管ベビーの勧進帳と身替座禅

試験管ベビーの勧進帳と身替座禅

試験管ベビー

G/Pit(愛知県)

2017/08/17 (木) ~ 2017/08/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

歌舞伎を原作に脚色…というよりは、「歌舞伎見物」という行為自体をモチーフしたエンタメ。
「歌舞伎」と「現代人(特に若者)の率直な感覚」を率直に結び付ける着想に好感を持ちます。いずれも超初心者向け手取り足取りな見事な掴みで、…講談師の役割は大きいですねぇ。

歌舞伎からのスピンオフというと近頃は木ノ下歌舞伎が旬ですが、ここまで徹底したコメディ脚色ともなると試験管ベビーの他に類を見ない。試験管ベビーの歴史的一歩となるか。ともに能や狂言からの…いわば2次創作の歌舞伎演目というのも象徴的で、あるべき文化の継承と言えるかもしれませんねぇ。

レパートリーとして、他の演目にもチャレンジして欲しい。
そしていつか御園座とコラボ…(勝手な妄想)

以降はネタバレboxへ

ネタバレBOX

【勧進帳】
「歌舞伎見物モチーフ」というのは、こちらに強く感じました。今回のお客様参加システムは…歌舞伎でいうところの「大向こうの掛け声」。本来のものは割と決まり事があって、歴史の中で形式ができてしまっているが…、何せ試験管ベビーですから遠慮は無用(笑)
劇場であんなに大声出したの初めてです、楽し~。そして、どんどん砕けて跡形も無くなっていく「屋号?」の数々(笑)
更に良かったのは、その屋号を受けて繰り広げられるコント?…花火は良かったなぁ。丸山さんの飄々としたとこウケる…義経・新イメージ(笑)
…そして不意に素に戻るメタ的展開のボケとツッコミ…奥村さんの魂の叫びは、舞台と観客を繋げる…歌舞伎との距離感を0にする好演出。
勿論、奥村さんの長口上も見事で(何を言っているかは分からないけど笑)、勧進帳本来の見せ場もしっかりみせてくれました。
なお、事前に勉強したら、〆の「飛び六方」ってのも見せ場らしく、G/Pitにしては大きく開かれていた会場の入口は「花道」に使うのでは…と期待していましたが、流れ的にそれは無かったですね。
試験管ベビー流の六方は今後の期待にしましょう。

【身替座禅】
かこさんの作風にえらくマッチする驚きの原作。パンフで既に目を疑うキャスティングでしたが、情報として知るのと実物を見る衝撃の差はやはり別格。「百聞は一見に如かず」とはまさにこのこと。音響照明の効果を背負って、奥方かこ様の迫力は凄まじかったです。
それに対する三芳さん。情けない男の演技では右に出る者無しの好演でした。ホント、好きなんだよねぇ。
この両者対峙するシーンでは…
「いつも三芳さんは、演出かこさんにこんな風にダメ出しされているのかなぁ…」
って、想像が膨らんで楽しかったです。
なんかいつもコンビを組んでいる印象のある…今回のキレイどころ佐川さん・高橋さんコンビは、本来だったら肩入れする必要の無い右京を大目に見てあげている…不思議な母性的位置づけが妙に可笑しくて、いい呼吸で場を盛り上げてましたね。

そして、クライマックス。前説から謎を秘めていた「灰皿」が遂に脚光を浴びる…
いやぁ、もうトラウマっちゃって、ドンキホーテには怖くてもう入れませんね​(°_°)
あの音楽を聴いたら、なんか背後から飛んできそうな気がしてなりません(笑)

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