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ハムレットマシーン

ハムレットマシーン

OM-2

日暮里サニーホール(東京都)

2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了

満足度★★★★

「難解な公演」という一言。もう少し具体的に記すと、物語(展開)は在るのか無いのか理解するのが難しい。演出の奇抜さ、演技の迫力、舞台美術の大胆さを思わせる。特異な心象表現とある種の幻想表現による独特な美的感覚は自分を圧倒したが…。
当日配布されたプリントにも「『ハムレット』を下敷きにし、従来の対話を主としたドラマ形式を解体し再構築した前衛劇で、内容も難解な」と書かれている。

(上演時間1時間30分、上演前は2時間とアナウンスされたが)

ネタバレBOX

客席は1階と2階部があり、円形舞台の周りを囲うように椅子が置かれ、さらにその外周に鉄骨櫓を組んでいる。舞台真ん中を巨大パネルで仕切り2分割にしている。パネルには冒頭に映像描写が行われる。出入り口から奥の半円に男性、出入り口側の半円に女性がいる。さて半円のどちら側に座るか迷うところであるが、かろうじて両方が観られる半円と半円の境目の席に座り、Scene1と2を観ることができた。このパネルは立場・性別等の違い(差別)を表現していたのだろうか?なお、パネルは少し後に吊り上げられる。

物語は先のプリントによれば、Scene1~5迄ありサブタイトルが付けられている。
Scene1・2は「家族のアルバム」と「女のヨーロッパ」、scene3「スケルツォ」、Scene4「ブタペスト グリーンランドをめぐる闘い」、Scene5「激しく待ち焦がれながら/恐ろしい甲冑を身にまとって/数千年世紀」というサブタイトルらしきものがある。
そして出演者役柄にマシーン1、2がいるらしい。それらの展開はそれぞれ独立した、いわばオムニバスのようであるが、ハムレットが機械になって、その視点から眺めたらどうだろう。原作「ハムレット」は王室という権力側に身を置き民衆とは立場が違う。そして同時に男性社会である。Scene1.2の男と女は、ハムレットだった男1とオフィーリア1が登場することになっているが、王室(権威)対民衆または男性対女性という性差別をも意図しているようだ。本公演をサブタイトに準えて観ると、原作「ハムレット」の世界観が違った観点で浮かんでくるような気も…。

さて、シェイクスピア劇では物事を多角・多様に見ることが描かれている。例えば「オセロー」では自分を正直者に見せかけているが、実は悪党であることを明かす「私は私ではない」と言ったり、「ヴェニスの商人」では主人公が妻を迎えるために「箱選び」という試験を行い、質素な鉛の箱を選ぶ…物事は見方によって違って見える。外見に惑わされて大切な心を見失ってはいけないらしい。

最後に、シェイクスピア劇の底流にある重要なのは”心”、心の目で物事の真価を見定める必要がある。本公演でマシーンになったハムレットは、心の目がどんどん閉じられ、目先の利益といった外見だけに惑わされる人が増えてきた昨今、本当に大切なことを心の目(心眼)で見て問い直すことを伝えたいように思う。
そう考えた時、生身の人間から機械(マシーン)になって物事の見方、正しいと思う観点を変えてみることも重要なのでは…そんなことを示唆しているところがこの脚本の真骨頂かもしれない。

次回公演も楽しみにしております。
Yellow Fever

Yellow Fever

劇団俳小

d-倉庫(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

本公演、政治的に解決できない結末ではないが、その背景には当時のことばかりではなく、現代においても根深い課題であろう。
物語が感覚的に楽しめるのは、舞台美術の丁寧な造りだからである。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

全体的に立体感のある造作で、上手側に飲食店内のカウンターやBoxシート、やや下手側少し高くした探偵事務所内の机・本棚、このメイン舞台を囲むように舞台と客席の間のスペースを街路に見立てる。スラム街を思わせるようなドラム缶、木箱が置かれている。

梗概…時は1973年3月7日から3月15日は場所はカナダ・バンクーバーのダウンタウン。そこで日系二世のサム・シカゼは私立探偵を行っている。ある日、食堂で帽子の中に、何者かによって命を狙うという脅迫文が入れられた。同じく友人の中国系カナダ人弁護士のチャックから日系カナダ人の祭り「桜まつり」で「桜の女王」に選ばれた日系人クドーの娘が誘拐された事を知らされる。サムは脅迫文と誘拐事件の捜査を開始するが、徐々に驚愕の事実が明らかになっていく。その脅迫文…”迷い満月の夜”というシェイクスピアの一節が記されているという謎(怪)文が…。

「Yellow Fever -黄熱病」は、人種差別の象徴として”黄色”人種を指す。移民は第二次世界大戦時は彼の地で辛苦(日系人の退去、強制収容所への収監等)を味わった。それが戦後も続き”欧”熱病という西欧至上主義_西欧文明防衛隊なる組織が絡んでくる。表層的にはハードボイルドサスペンス劇としての娯楽性、一方当時の世相を切り取った社会派劇という深みも観せる。劇中では人種差別がクローズアップされるが、エリート、労働者という階層差別、その他色々なアイデンティティを持った人々を捉えた広がりがある。その多くの人によって街が形成されていることを示唆している。その象徴が食堂_生の象徴である食事処かもしれない。何しろメニューにお茶漬け、月見うどん等が見える。

演出は硬質になったり、コミカルになったり硬軟自在に操り、物語に引き込まれる。先の人種差別の問題は物語の面白さの中に垣間見せるが、その問題を先鋭化して取り上げていない。むしろ直接的な糾弾よりは効果的・印象的な観せ方にしている。
次回公演も楽しみにしております。
ロミオとジュリエット=断罪

ロミオとジュリエット=断罪

クリム=カルム

スタジオ空洞(東京都)

2018/03/20 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★

恋愛の代表的な演劇…シェイクスピア「ロミオとジュリエット」はあまりに有名。多くの劇団、劇場で上演され、映画化もされており多くの人が物語の内容を知っている。そんな劇を独特な潤色・演出することは難しいかもしれないが、それでも観点を変え観(魅)せようと試みている。どの公演でもそうだと思うが、本公演でも原作に独自の新解釈を行い演出・表現をしようとしており、逆にそうすることによってどのような多様性にも耐えられるシェイクスピア劇の奥深さを感じさせてくれた。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

舞台を挟んだ客席。セットは中央舞台に客席に向かって横4列、縦(奥)3列の電球が上半身に当たる高さまで吊るされている。舞台の周り(客席との間も含め)を赤い厚布地が敷かれており、そのスペースでも役者は演技する。セットはシンプルであるが、内容は「イタリア・ヴェローナの対立する名家の若い男・女が熱き恋に落ちる悲しい物語」として有名であり、素舞台に近い状態であっても、その情景をイメージすることは出来る。本公演は観客のイマジネーションに負うところが大きいと言えよう。

物語は原作を下敷きに、それでもロミオを巡り、親友同士のジュリエットとロザラインが三角関係になる。ロミオは当初ロザラインに恋したが、ロザラインには恋人がいたためロミオは失恋した。その後ロミオがジュリエットと恋仲になり、ロザラインはロミオの本当の人柄を知るに至り恋焦がれるようになる。ロザラインの前恋人がロミオの友人という混線するような人間関係を作り出す。また司祭が女性であることも特別の意味合いを持たせている。

純愛というよりは嫉妬に狂った男と女の愛憎劇。もちろん結末も変えているが、それでも両家の争いに終止符を打つことになり、この公演(脚本・潤色)の巧みさをうかがい知ることができる。

全体的に抒情性が感じられる観せ方、具体的にはライトの点滅による陰影が幻想的な視覚効果を生み、印象付けするところは上手い。一方、演技は役者がその人物像なりに十分成りきれていないのが残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
Yellow Fever

Yellow Fever

劇団俳小

d-倉庫(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

‪昨晩のソワレを観劇。‬‪誘拐事件に挑む私立探偵の奮闘を描いた明快なストーリーでとても面白かったです!コメディタッチな作風ながら、日系人の受難の時代を知るにも良い機会。どこか懐かしさを感じさせるレトロな舞台セットも好みでした。‬
‪25日まで日暮里d-倉庫にて!‬

『天国と地獄』

『天国と地獄』

遠吠え

王子スタジオ1(東京都)

2018/03/20 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

全力の女子演劇部のお話
それぞれのキャラクターも良し
掛け合いと間の楽しさも堪能出来ます

夏への扉

夏への扉

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2018/03/14 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

今回も原作を読めないままで観に行きましたが、前回観たときよりも腑に落ちた感じがしました。あの時はまだ気が動転したままだったのかもしれません・・・。それでもなお残る疑問。もう一度観に行くのでそこで解消されるのか?原作を読んでみないと分からないのでしょうか?

砂塵のニケ

砂塵のニケ

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2018/03/23 (金) ~ 2018/03/31 (土)公演終了

満足度★★★★

絵画の修復と言うので100年とか200年前の絵のことかと思いましたがそうではないのですね。と言うことは・・・。お金持ちのお嬢様の出自がと言う少女漫画みたいな設定(最近の少女漫画は全然知りませんが)と思いましたが、その謎を解いていくような展開に引きつけられて、全然長さを感じませんでした。

ネタバレBOX

理沙(主人公)が修復をする画家のクロッキー帳に残るデッサンを見るのですが、そのモデルが誰か気づかない。終演後作者の方にどうして気づかないのですかとお聞きしたところ、この画家はジャコメッテイの思想のもとに絵を描く人なので(見たままを描くのではなく感じたように描く・・・みたいな説明でした。違ってたらごめんなさい)デッサンを見ても分からないのだと言うことでした。でも、理沙が修復しようとしている絵は写実的なものでしたから、私はデッサンだってそうだったのだろうと思ってしまった訳です。さらに言えば、本物の画家とか美術商とか絵画修復家の方とかも観に来ているかもしれませんが、私のようなごく一般人からしたら、ピカソやルノアールならともかくいきなりジャコメッテイと言われても「ああ、そんな人もいたな」くらいしか思い出せません。せめて画家のデッサンを一度でもいいから見せてほしかったと思いました。ミドル英二さんが二時間ドラマのようと書いていらっしゃいましたが、二時間ドラマならきっともっと分かりやすかっただろうと思いました。
青のマクベス

青のマクベス

無名劇団

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2018/03/23 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

この劇団では久々のエンターテイメント。客演も多く、総勢15名で、いつもの倍近い俳優陣。凝った位置の舞台づくり。あの陰鬱なマクベス劇が絢爛豪華、人間の欲望に彩られ、一挙春を越えて、夏そして奈落の秋を駆け巡る。

衣装が独特で、いかにも豪華。一人一人凝っている。それぞれの役者に考えさせたのだろうか、見ているだけで面白く、いつもの劇鑑賞とはちと違う視点から見ている自分に気づく。

展開としては、いかにもマクベス劇なのだが、悲劇に見せないところがユニークで、よくぞこれほど人間の悪を面白、おかしく、楽しく見せてくれたことよ。

今までの無名劇団の抑え込んできたところを一挙解放し、拡散させた喜びさえこちらに伝わってくる。

役者としては男になり切っていて楽しく演技していたマクベスの島原さん始め、マクベス夫人となる今井さんの妖気漂う色香、そして父を殺され愛するマクベスを敵とする難しい演技を見事こなした東田さん、夫に裏切られながらも愛して、そして憎むマクダフ夫人の中谷さん、それぞれ見事でした。

いつも狂気を見せてくれる泉さんがアッという間に出番がなくなり、ちょっともったいなかった。それと、例のあの3人の魔女たち。ある意味この劇の主人公たちでもありますね。この劇のエンタメ盛り上げ隊でありました。

いやあ、とにかく楽しい無名劇団。みんな、みんな花開いていました。

歌姫

歌姫

Theater Project Koa

HEP HALL(大阪府)

2018/02/11 (日) ~ 2018/02/12 (月)公演終了

満足度★★★★

Bチーム観劇。

戦争で記憶なくした太郎。
太郎を10年間慕い続ける鈴。
結ばれる筈の二人…
太郎が記憶を取り戻す時…
畳み掛ける怒濤のクライマックス。
(でも、とても見せ方が難しい気もした。)

太郎と鈴の不器用な愛、欠かさざるべき相手感、好き。

下品な演技も、麻里奈さん綺麗すぎてスマートに見えた。
綺麗すぎ!

この名作をこの価格で拝見できて、とても幸せ♪

スケッチブック・ボイジャー

スケッチブック・ボイジャー

演劇空間WEAVE CUBE

十三Black Boxx(劇団そとばこまちアトリエ)(兵庫県)

2018/02/11 (日) ~ 2018/02/12 (月)公演終了

満足度★★★★

「漫画家・のはらの描く『流星ナイト』が、いよいよ最終回」 の筈が、白紙の原稿、〆切まで後1日。

原稿〆切と、物語最終回が同時進行するドタバタが楽しい。

ラストも意外性あるのだが… 成る程な感じ。
サッカー愛が半端無く、サッカー好きにオススメ♪

ひとり語り芝居『土神ときつね』

ひとり語り芝居『土神ときつね』

お茶祭り企画

Cafe Slow Osaka(大阪府)

2018/02/09 (金) ~ 2018/02/11 (日)公演終了

満足度★★★★

賢治の高校時代から、ミーハーぶり、女性観、大学の専攻、映画まで、 ピアノ生演奏と物語を織り混ぜながら紹介頂いた。
とても楽しかった。

そして『土神ときつね』愛憎の物語。
本当に愛は強欲で、神様でも業に流されてしまう。

賢治の新しい一面拝見。

Yellow Fever

Yellow Fever

劇団俳小

d-倉庫(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

演劇は作品の出来とは関係なしに、好き嫌いがあります。『刑事コロンボ』のパロディというのは、やはり古い。興味を持つのは、やはりお年寄りでしょう。サスペンス。エンタテインメント性はあるのですが、どんでん返しが起こる山場の場面で、リアリティが無いようにの思えたのは私だけでしょうか。

Ten Commandments

Ten Commandments

ミナモザ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/31 (土)公演終了

満足度★★★

「真摯と誠実」
真摯に向き合えすぎれば辛くなる。
しかし「モノを創る人」である以上真摯に向き合わなくてはならないこともある。
「十戒」に瀬戸山美咲さんが触れたときに、この作品で語られる感覚がわき起こったのではないだろうか。

(以下ネタバレBOXにいろいろと…)

ネタバレBOX

『Ten Commandments』=『十戒』。凄いタイトルだ。
それは主人公=作・演出の瀬戸山美咲さんを縛る言葉でもあったのではないか。

モノを創り出す人にとって、自分だけではどうしようもないことに真摯に向き合おうとすることはとても苦しくて辛いことではないかと思う。
私はモノを創る人ではないが、そこにはとても共感する。自分で自分の逃げ道を塞いでしまっているのだろう。わかっているが真摯であればあるほど逃げることはできずに、自分の中に入り込んでしまう。

レオ・シラードの「十戒」に瀬戸山美咲さんが触れたときに、この感覚がわき起こったのではないだろうか。
「原子力」の問題等々を考えるときには、原爆についても頭に入れなくてはならない。
それらに向き合おうとしたときに「十戒」に出会い、戸惑ったのではないかと思う。

その戸惑いがこの作品を生み出したと思うのだ。

主人公の女性は、「原子力」に端を発する諸々に向き合いすぎて、言葉を発するのがイヤになってしまう(言葉を発することができなくなってしまう)。
この女性(劇作家であった)と作・演出の瀬戸山美咲さんは重なってくる。
「言葉にする」ということは「伝える」ということであり、伝えるのは「自分の考え」である。
したがって、自分の中できちんとまとまっていないことを迂闊には言えない気分になってくる。特に原子力問題は、大きすぎて。

発言することの「責任」という意味もあろうかと思うが、その責任は「社会へ」というよりはまず「自分へ」ということではないか。
劇作家という言葉を仕事にする人にとっての「発する言葉」「伝える言葉」を(自分自身で)考えると、とても大きな重圧を感じてしまうのだろう。
それは(何度も繰り返すが)「真摯」に向き合っているからではないか。

例えば「原子力」についての言葉を発することを止めてしまうと、それにまつわる「日常生活」に関する言葉も止まっていまう。
つまり、この主人公(=瀬戸山美咲さん)には「原子力」(とその問題)は「日常」と直結していることがわかる。「直結して考えたい」ということが根底にあるから、さらに向き合いすぎて苦しくなってしまう。

そんな彼女は現在だけでなく、過去に遡り自分を縛り上げる。すでに死んでいるアインシュタインやレオ・シラードに手紙を書く。
あるいは、過去の自分に対する他人の声が聞こえてくる。実際には本人には聞こえなくても(そんなことを言っていたのかどうかも不明だが)まるで「マイクで拡声した」ように響いてしまう状況にさえなってくる。

この物語は「書簡」の朗読がメインなのだが、「やり取り」ではなく、一方通行の送ることのない届かない手紙を書いている。「対話」であればこの迷宮から抜け出すこともできたのかもしれない。
「書く」ことが自分の考えの整理になるからだろうか。劇作家の彼女にとっては会話ではなく「筆記」がその手助けだったのか。であれば、「演劇」はさらにその手助けになるような気がするのだが、そこまでの道のりは遠いだろうし、演劇は彼女1人の考えだけで創ることができるものではないからでもあろう。

現実(アゴラでの公演)に戻ってみるとこの作品は、主人公の女性=瀬戸山美咲さんであるように思えるのだから、実際には「演劇」のところまで彼女はやってきているのだろう。
瀬戸山美咲さんはどう生活を取り戻していったのだろうか。やはり主人公と同じだったのだろうか。
あるいはまだ取り戻す途上なのか。

主人公の彼女をそうした世界から救い出してくれそうなのは、日常であり愛なのだろう。
ラストにそれが示される。それが彼女の求めている「答え」ではないのだが。
このラストは(あえて言えば)とても「普通」なのだが、それしかないと感じる。
その「普通」をきちんと示したことは、誠実であったと思う。「真摯と誠実」。これがこの作品で感じられた。

主人公を演じた占部房子さんが適役すぎて、痛々しくって、観ていてツラくなった。それだけ良かったのだ。

福島がフクシマとなった3.11以降に原子力を学ぼうとする人たちの技術者倫理の授業にこの作品は端を発しているらしいので、その授業では、たぶんレオ・シラードの「十戒」に触れられていて、瀬戸山美咲さんもそこに自分の想いが重なったのではないかと思うのだが。

この作品で描かれたより「もう一歩先」も是非観てみたい!
嗤うカナブン

嗤うカナブン

劇団東京乾電池

ザ・スズナリ(東京都)

2018/02/07 (水) ~ 2018/02/14 (水)公演終了

満足度★★★

この2つの劇団のコラボということで期待大。

セットのセンスがいい。
オープニングの映画っぽい感じもカッコいい。
……のだが……。

ネタバレBOX

映画風のオープニングから4人のジャズメンたちが後ろ姿で演奏し、カナブンが飛んできて「銀行強盗をやるか」の台詞まではスタイリッシュ。わくわくする。

しかしその後がどうにも、面白くなりかけてはそうなっていかない。
模白い台詞が繰り出される会話劇なのだが、もっとテンポ良く会話したほうが台詞も活きてきたように思う。ポンポンと。

俳優たちにヘンな屈伸や帽子や座る位置の入れ替えなどをさせるのだが、それが面白くならない。とぼけた面白さになるはずなのだが、単になる手順にしか見えない。

柄本明さんの演出は、自分がやると(入ると)面白くなる演出ではないかと思う。
柄本さんには、ちょっとしたことでも無理矢理にでも面白くしてしまう魔力があるから。
東京乾電池は、独特の「間」の面白さで舞台を面白くするし、笑わせもする。
対する唐組はそんな感じではなく、逆に熱っぽさがある。

なので、組の方たち柄本さんの東京乾電池的手法にうまくはまらなかった(演出がはめることができなかった)のではないか。
唐組の俳優さんたちの演技の良さが活かされず残念。

何か、物語を「牽引する力」が欲しかった。軸になるような人をうまく立てられなかったようにも思う。

もし再演があり、柄本さんが演出するならば、柄本さん本人に、東京乾電池のベンガルさん、綾田さん、角替さん(!)の4人で演ってほしい。柄本さんの演出の意図がストレートに伝わるだろうから。

あるいは唐組主体で。
汚れた空をかいくぐり

汚れた空をかいくぐり

劇団みなみ

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/03/23 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

 かなりトートロジカルな手法で書かれた脚本だが、

ネタバレBOX

この原因はデュアリズムと、敵とされているAIが、実は反対勢力幹部には、実体化されていないということではないだろうか? というのも、ここで話されているのは、確定した事実を根拠にした話ではなく、あくまで“~だそうだ”という伝聞をベースにした論理である。而もそれが、話者の立ち位置を各々のベクトルとしたデュアリズムなのではあるまいか? 一見、複雑そうに見える論理は、その根底が根拠づけられていないように思う。一所懸命演じているのだが、真に論理的である為には、根拠づけなければならないし、真に敵対する各々の項があるのであれば、その2項を裁定する視座は最低なければならない。デカルトは二元論を定式化した哲学者であろうが、キチンと定式化する為の目を持っていた。(方法序説でそれを為したと自分は考えている)
 論理が疑似的であるが故に、結論が決意性一般という非論理的なものになってしまうのではあるまいか? 若い人ばかりのグループのようだし、これからいくらでも勉強はできるだろう。たくさん勉強をし、自分の頭で考え大きく育って欲しい。期待している。
ハムレットマシーン

ハムレットマシーン

OM-2

日暮里サニーホール(東京都)

2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了

満足度★★★★

「戸惑う」という感覚を大いに刺激されました。
舞台をグルッと1周取り囲む客席。
その一つに着席して観劇しているうち、自分が歪んだ時間を刻む時計盤上で、目盛のひとつに配されている様な感覚に。

具体的な確信に手が届かないもどかしさはありましたが、精神世界として捉えるにはあまりにも激しく且つ生々しい光景。
彼はかつて「ハムレット」だった男なのか、それとも「ハムレット」に憑りつかれた男なのか、とにかく神経をフル稼働しているうち、重圧・逃避・倒錯・・・混沌さがみるみる加速。
「目の前はこんな状況、それなのに空気が無臭で普通に美味しいのが不思議」何故かそんな事を思ったり・・・

「ハムレット」といえば藤原竜也がまず頭に浮ぶ私にとって本作を観終わった後、「なれの果て」という言葉がポッカリ浮かんでいました。

ヤシの木

ヤシの木

トリコロールケーキ

北とぴあ カナリアホール(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

発想に脱帽。よくこういうひらめきが出たものだ。

未開の議場〜北区民版2018〜

未開の議場〜北区民版2018〜

北区民と演劇を作るプロジェクト

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

2時間たっぷりの討論、疲れつつも引き込まれた。地域住民参加型としては大作すぎない?

Yellow Fever

Yellow Fever

劇団俳小

d-倉庫(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

貴重な高齢者向けエンターテインメント。
シリアスな戦争ものでなくこういうのをどんどんやってほしい。
まあこれも戦争が背景にあるのだが、表看板はあくまでハードボイルドである。

おおむね満足なのだが、コートだけは別のものに替えてほしい。
1サイズ大きなコート、ジャケットは冴えない感じを出すためなのだろうが、ちょっとやりすぎで最初の登場シーンでは子供が大人の服を着たようでがっかりした。

追記:開演直前の曲の名前が思い出せないでいたのだが
アルバート・ハモンド「落ち葉のコンチェルト 」
だと丸二日たって突然閃いた。内容には関係ないけどターゲットの世代が分かる。

うみべのクロノス

うみべのクロノス

人間機械

遊空間がざびぃ(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★

好きなタイプの話かと言われれば決してそうではなく、個人的にはどうしてこういうお話を書きたいのかなあと思ってしまうような、よく言えば重たいテーマ、早く言えば嫌な話ですが、スペースを上手く使った配置などは面白かったです。椅子席は2列ありますが、上段の席は照明等に頭をぶつけやすいのでご注意を。

ネタバレBOX

開演前の案内で、物販は上演前と終演後にとのことでしたが、終演後は皆さんお友達と話すのに忙しいのか、物販のテーブルには誰もいませんでしたね(笑)。アンケートも誰に渡せばいいのか分からず、テーブルの上に置いて引き上げました。

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