ハムレットマシーン 公演情報 OM-2「ハムレットマシーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「難解な公演」という一言。もう少し具体的に記すと、物語(展開)は在るのか無いのか理解するのが難しい。演出の奇抜さ、演技の迫力、舞台美術の大胆さを思わせる。特異な心象表現とある種の幻想表現による独特な美的感覚は自分を圧倒したが…。
    当日配布されたプリントにも「『ハムレット』を下敷きにし、従来の対話を主としたドラマ形式を解体し再構築した前衛劇で、内容も難解な」と書かれている。

    (上演時間1時間30分、上演前は2時間とアナウンスされたが)

    ネタバレBOX

    客席は1階と2階部があり、円形舞台の周りを囲うように椅子が置かれ、さらにその外周に鉄骨櫓を組んでいる。舞台真ん中を巨大パネルで仕切り2分割にしている。パネルには冒頭に映像描写が行われる。出入り口から奥の半円に男性、出入り口側の半円に女性がいる。さて半円のどちら側に座るか迷うところであるが、かろうじて両方が観られる半円と半円の境目の席に座り、Scene1と2を観ることができた。このパネルは立場・性別等の違い(差別)を表現していたのだろうか?なお、パネルは少し後に吊り上げられる。

    物語は先のプリントによれば、Scene1~5迄ありサブタイトルが付けられている。
    Scene1・2は「家族のアルバム」と「女のヨーロッパ」、scene3「スケルツォ」、Scene4「ブタペスト グリーンランドをめぐる闘い」、Scene5「激しく待ち焦がれながら/恐ろしい甲冑を身にまとって/数千年世紀」というサブタイトルらしきものがある。
    そして出演者役柄にマシーン1、2がいるらしい。それらの展開はそれぞれ独立した、いわばオムニバスのようであるが、ハムレットが機械になって、その視点から眺めたらどうだろう。原作「ハムレット」は王室という権力側に身を置き民衆とは立場が違う。そして同時に男性社会である。Scene1.2の男と女は、ハムレットだった男1とオフィーリア1が登場することになっているが、王室(権威)対民衆または男性対女性という性差別をも意図しているようだ。本公演をサブタイトに準えて観ると、原作「ハムレット」の世界観が違った観点で浮かんでくるような気も…。

    さて、シェイクスピア劇では物事を多角・多様に見ることが描かれている。例えば「オセロー」では自分を正直者に見せかけているが、実は悪党であることを明かす「私は私ではない」と言ったり、「ヴェニスの商人」では主人公が妻を迎えるために「箱選び」という試験を行い、質素な鉛の箱を選ぶ…物事は見方によって違って見える。外見に惑わされて大切な心を見失ってはいけないらしい。

    最後に、シェイクスピア劇の底流にある重要なのは”心”、心の目で物事の真価を見定める必要がある。本公演でマシーンになったハムレットは、心の目がどんどん閉じられ、目先の利益といった外見だけに惑わされる人が増えてきた昨今、本当に大切なことを心の目(心眼)で見て問い直すことを伝えたいように思う。
    そう考えた時、生身の人間から機械(マシーン)になって物事の見方、正しいと思う観点を変えてみることも重要なのでは…そんなことを示唆しているところがこの脚本の真骨頂かもしれない。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/03/24 12:00

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