R老人の終末の御予定
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
相変わらず、アバンギャルドだったり、ギャグっぽかったり...前半がかなりはっちゃけると後半は思い切りウエットになることがある吹原作品の特徴を考えまして、ハンカチを握りしめてましたが...今回は涙腺崩壊とまでは行かなかった...(ふう)。構成が良いので安心してみていられる感じ。あまりこじんまりせず、思い切り枠を破壊する作風を、引き続き期待しています!
ネタバレBOX
フッキー氏って、タモリにちょっと似ていたかも?でした。岸さん、チケットありがとうございました。ご活躍をお祈り申し上げております!
レバア
西瓜糖
テアトルBONBON(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
もう何回目になりますか、西瓜糖。寺十濃厚演出とともに、昭和の世界をたっぷり描きます。昭和を全く知らない世代がずいぶん増えてきている今日この頃。ノスタルジックな雰囲気がいつも楽しみです。
美愁
The Vanity's
APOCシアター(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/28 (土)公演終了
満足度★★★★★
まるで絵本から抜け出してきたかのような、幻想的な世界観。素晴らしいお芝居に胸がいっぱいになりました。もう一度観に行くことを決めました。
R老人の終末の御予定
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
続きはウェブで・・・はネタバレに
手作り感のある家電(ギターは家電?)たちがとてもかわいかったです。なんだか分からなくなりそうなところ、洗剤を載っけたことで一目瞭然(?)の洗濯機が「この中にスパイがいる」と言われてドキッと震え出すところが脱水音で笑えました。ほかにも笑えるネタが満載で楽しかったのに、深いです。
ネタバレBOX
素朴な疑問・・・人間は絶滅し、人型ロボットもいなくなってしまったこの時代にこれらの家電は誰が使うのでしょう?
あれ?人型ロボットがいなくなってしまった経緯って語られてましたっけ?と思ってパンフレットの脚本を読もうと思ったのでしたが、文字の色が読みにくいです。
華
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/04/23 (月) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★
アクションコメディとあったのでもっとハチャメチャなものを想像して行ったのでしたが、笑えるところもあるものの、舞台セットからもうかがえるように、もっとしっとりとした感じの時代物でした。お千代さんのような方ばっかりだったらコメディだけになってしまうところ、いろんなタイプの女性が登場して、もし私が○○の立場だったらなんて考えてしまったり。史実と脚色と微妙なところもあるのでしょうが、歴史のおさらいもできたかな。
更地14
大森カンパニー
ザ・スズナリ(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
終始爆笑。とちっても、トラブっても、ご愛嬌。
小道具も少ないので、演技とその場のノリとアドリブ(と衣装)で勝負してるのがすごい。
美愁
The Vanity's
APOCシアター(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/28 (土)公演終了
満足度★★★★★
脚本の完成度の高さ、演出の上手さ、歌の上手さに踊りの切れが加わり、更にエレクトーンと二胡の生演奏の響き、悲劇の色調を耽美なまでに表現してくれた。見事である。終演後には、ゲストとThe Vanity’sメンバー3名のうち今回は出演していない1名を除く2名が歌を披露してくれるおまけつき。こちらも聴くべし! (追記2018.4.27 02:40)
ネタバレBOX
物語は、架空の国のある裕福な商人の家。落雷の轟音と共に赤子の泣き声で幕を開ける。この演出が、先ず巧みである。観客をビックリさせて虚を突き劇空間に引き込む手段であるが、これが効果的であると同時に生まれて来た子の将来を暗示して見せている訳だ。商家とはいえ、名高い家の長女の誕生は呪われていた。顔の左反面に引き攣れを伴った大きな痣があったのである。龍家の主人・龍仁は、すぐさま我が子を無き者にせよ、と妻・美羽に申し付ける。然し、妻はそれを望まない。そこへ妻の姉・鈴が助け舟を出す。要は龍家の子ではなく赤の他人として育てれば問題は無い、と。鈴は龍仁を説得し、この家にあって使われていなかった離れでこの子・呉葉を育てることになった。将来、健康な子を授かった暁には、この子が御付の者として仕えるようにしようというのである。19年が経った。呉葉は利発で真っ直ぐな乙女に育ったが、龍仁は家格を重んじ一切の肉親の情を与えなかった。一方生みの母・美羽は、内心自らの罪の意識に苛まれていた。というのも娘にこのような酷い痣が出来たのは、己が若い頃から使用していた禁断の麻薬が災いしたからと知っていたからであった。己の咎ゆえに娘を不幸にし而もその罪の証が、今、新たに生まれこの家の娘として育てられている柚杞の御付の者として不幸な暮らしを余儀なくされ、いつも罪の源泉たる自分の前に居るのだから耐えられない。この状況は、麻薬を続けることの理由になった。例え見付かれば死罪に処せられようと。
一方、柚杞には国の武官を代々勤める楊家から縁談の話が持ち込まれていた。父も乗り気である。話はとんとん拍子に運んで愈々、輿入れの儀式が行われようという頃、柚杞が結婚すれば、彼女について嫁入り先で仕えよ、との父の命を受けて遠方へ旅立つ前にどうしても実の母の目を真っ直ぐ見、抱きしめて欲しいとの望みを持つ呉葉は愛される条件として母の言った痣の無い顔を手に入れようと禁断の地・水仙の森に住むという魔女の下を訊ね、痣を消す代わりに、人を殺すことを命じられれる。半信半疑で呪いの札を受け取った呉葉は、其の札を鈴に渡す。これがもとで鈴は命を落とすが、本当に呉葉を愛し、彼女の為を思って色々と面倒をみてくれた命の恩人を呉葉は自らの手で殺してしまった。
更に嫁に行く柚杞は、美羽の娘ではなく、本当は、鈴と龍仁との間に出来た子であった。エピローグ。己の狭い了見の故に命の恩人であり、育ての親でもある鈴を殺してしまった呉葉は、10歳の時美羽に貰った、母に愛された証である簪を返し、自分は魔女と交わした皆から忘れ去られる寂しさと苦悩を受け入れ、遂に麻薬エキスを用いて自死。以上が物語の顛末。この救いの無さにこそ、自分は、救済を見た。何故ならそこに無意味の意味が見えるような気がするからであり、ニヒリズムの肯定を見るからである。人類は矢張り意味が無かったことの文化的例証を一つ新たな形で観たことの安心感とでもいうか。最早、ヒトという生き物の愚かさ故に滅ぶしかない地球上のあらゆる生命の末路だけは、予めレクイエムとして謳うことが出来たかも知れぬという下らない自惚れを最後の自嘲として。
失楽園 前編・後編
Performing Arts Theater Company GEKI-kisyuryuri
KISYURYURI THEATER(東京都)
2018/04/24 (火) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
無対象演技や表情がとても素敵でした。別の公演も観てみたいです。
レインメーカー(大阪公演)
劇団ショウダウン
TORII HALL(大阪府)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
ホールが小さく客席と舞台が一体化していたよう、まるで物語の中に自分も居るような感覚で観劇出来ました。舞台も凝った作りで好みでしたし、役者さん達がみんなキラキラ輝く演技をされてたので観に行けて本当に良かったです!テオとミラはカッコいいし、スヴィはすごく美味しそうに食べるし、エリアスは少年そのものでした。セルカの村にまた行きたいです。
嗚呼いま、だから愛。
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
三部作の1本目、前回初演はすごい作品だったのは確かで見終わった時の印象は重苦しさと激しさだった気がしていたが、今回の再演は同じ役者さんで演出も同じはずなのだが、コミカルな要素がふんだんに散りばめられている(ただ単に忘れていただけかも、そうかこんな作品だった)気がして新鮮で素晴らしかった。さあこれからがモダンスイマーズの原点、三部作の始まりを楽しみたい。
ERROR
CHAiroiPLIN
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2018/04/21 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★
この団体らしく陰惨にならないところがいい。観易いのは正面席、一番奥の席は間近に奈落を見ることができる。
歌姫、ネバーダイ!
ライオン・パーマ
上野ストアハウス(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしい!
本当、感動をありがとう!
R老人の終末の御予定
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/04/18 (水) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/19 (木) 14:00
価格4,000円
そんなものも!?なものまで擬人化するナンセンスさとギャグ満載な一方、哲学的だったり心温まったりなテーマも謳うのはPMC野郎の得意とするところだが本作はその真骨頂にしてロボットSFに挑戦。よってそちら方面の知識があるとより楽しめるし深読み・誤読の余地もたっぷり。
もちろん衣装(貴ぐるみ?)の完成度やギャグのクオリティも高く、現時点での最高傑作かも。
ネタバレBOX
まずは自分の死後に相手が落胆しないよう老夫婦が互いに自分そっくりのロボットを……というところにO・ヘンリー「賢者の贈りもの」を連想。
他に観ながら連想したのは以下の作品。
・シェイクスピア「ロミオとジュリエット」:対立した2つの派閥に所属する男女の愛
・チャペック「R.U.R.」:人間が極端に減りロボットを修理できる人材がみつからない
・超時空要塞マクロス:初めて音楽というものに接して感動する
・鉄腕アトム「青騎士の巻」、虚飾集団廻天百眼「死ぬ機械」:ロボット三原則に反して人間を傷つけるロボット
ロボットに感情は宿るか?という時点からずっと進み、どうにも修理ができなくなって迎える「死」の後を考えていよいよ修理できなくなったら何が残るか?何かを残せるか?を語るロボ夫婦という発想は斬新であり、昨年秋ごろに複数あった「死後も人間の記憶をICチップなどを使って残したり他者に移植したりする」ネタの芝居の裏返しか?とも思った。
さらに、被弾して修理の見込みがない妻を破壊してから自分も破壊するロボット、というのは「ロボットの安楽死」であり、いろいろと考えさせられる。
弟の遺体を食べることで生き残った兄から弟の霊視を依頼された心優しき霊能力者のエピソードなど、独立した短編にできそうな話を惜しげもなく使うのはゼイタクだなぁ。
あと、いろいろヤバくて(笑)ひたすらナンセンスな開演前パフォーマンスが実は本編とリンクしているのはまんまと一本取られた感覚。
華
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/04/23 (月) ~ 2018/04/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
素晴らしかったです!
ネタバレBOX
太閤が死んだ日から豊臣家滅亡までを、武将の妻たちの視点で描いた話。
登場人物も役者も女性のみの公演でした。自ら歴史を動かそうとする茶々、夫の背中を押すタイプの山内一豊の妻千代、夫の人形であり続ける細川ガラシャ、次第に方向性が固まる秀吉の正妻おねたちを通して、そして、史実が的確に織り込まれていたことから、歴史の流れが良く理解できました。
おなご会という女子会、楽しそうでした。ただ、いろは歌を歌うだけでミュージカルを標榜するのは少し言い過ぎかなと思いました。
千代のコミカルさは素晴らしかったです。
タバコの害について/たばこのがいについて
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/24 (火)公演終了
満足度★★★★
オリジナル作品1篇とチェーホフの「タバコの害について」の2本立て公演である。(華4つ☆)
ネタバレBOX
オリジナルは、表現活動をする男とその男の世話をし続けて5年になるが、妻にもしてもらえないことを嘆きつつもその生活資金も食事などの世話も止められずに暮らす女の関係を描いたものだが、女は男を浴槽で飼っているピラニヤに擬え、臆病な癖に強がるとからかう。
男は、嫌いな食べ物が多く、女が一所懸命ヘビースモーカーである彼の健康を考え、何とか食事で健康を回復させようと考えて作った食事を食べずに過ごすことも多く、そればかりか、女が男の為に断念した表現者の道の後輩をたらし込んで浮気をしている。女はこれを詰るが、男は、女が未だ手垢のついた自分の革命的な生き方に憧れてついて来ていることを知悉している為、革命的論理によってこれをいなしつつ、自由になること、縛り付けられずに脱出することばかり考えている。無論、女は、反対に好きな男を自分から逃さず管理下に置くことを今日も、明日も考えている。今作は、革命は兎も角、この男女相互の普遍的な関係を描いた秀作である。
チェーホフの「タバコの害について」である。モーパッサンの「une vie」ならぬ「男の一生」とでも名付けたい内容の作品である。確か日本の落語にも下げで「おんな」が「かんな」になるものがあったように思うが、今作は、当にこれではあるまいか?
発生学的にみても、雌雄がある生物のプロトタイプは♀である。それは、種を残す性が雌だから当然のことなのだろう。鯛などは、総て雌として生まれるし、人間の男も母体の中で男になるのであって、最初から男として形成されている訳ではない。今では差別用語とされるかも知れないが、色盲なども発現率は女子の方が低い。生物学的には母体の中で一種のオペを受けて♂になる生命体より♀の方が強いのである。
一方セクハラ等、男の横暴が話題になる昨今だが、こんな言動は、自民党議員など下劣を旨とする下司がやることであって、一般男性の多くは寧ろ女性に奉仕することで一生を終える者の方が多かろう。蟷螂は、生殖行為後、♂は♀に食われて生涯を終える。つまり♂は、♀に奉仕するだけ奉仕させられ、絞り尽くされてその生涯を終えるのが、生物としての宿命なのである。
人間社会が男性優位社会という形を採ってきたのは、戦争を含めた生存競争の結果かも知れないが、実は、生物学的に弱い♂が、♀に甘える為のシステムであるかも知れない。医者でもあったチェーホフは男女のこのような生物学的関わりをその本質に於いて知っていたのではなかろうか? 実に深い作品である。
作レ家
法政大学Ⅰ部演劇研究会
法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎 多目的室2番(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★
作家の作業を良い家を作る作業に例えて創られた脚本は、恰も露伴の「五重塔」の構成を思わせる、しっかりした太い柱が全体の構成を合理的且つ論理的なものとし、ブレのない考えさせる作品になっている。(華4つ☆)
ネタバレBOX
板部分は手前が広い台形になっており、奥中央、左右の辺中ほどに出捌け口が作られ、役者の動きもスムースである。床面は、寄木細工の文様を施し、雰囲気を醸し出す。奥壁の両コーナーに掛かったカーテンは、閉じると、スクリーンとして利用できるなど極めて合理的な作りである。主人公が作家なので、板中央には、机と椅子が置かれ、作家の仕事机としても、家族の用いる居間としても用いられる。
さて、物語の内容であるが、表現する者としてその仕事に特化する生き方(いわば芸術至上主義或いは仕事中心主義)と生活(特に家族関係の親疎)の切実な問題を描いて、ホントに考えさせられる内容であった。
演技には、序盤若干硬い感じが観られることもあったが、中盤からはそれもほぐれて自然な感じになり合格点。小道具の使い方と小道具自体も洒落たものが使われている。殊に家の模型が、家族崩壊の危機を表現する場で用いられるのだがとてもセンスの良い色・形の模型を用い、照明の適確な技術もあって頗る美的に映った。
スタッフの対応もいつも通り、非常に感じの良いものであった。
アラクネの恋
劇団もっきりや
ART THEATER かもめ座(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了
満足度★★★★
見えない「神(正義)」という名の落とし穴、自分に素直に生きる難しさを突き付ける。からっぽな情景に濃密な気配と閃光。心の奥深くに語りかけるような奇妙な世界に誘われ、段々と孤独な心だけが観せられる。いつしか他人との関係は表面的になり、煩わしい事には関わらないという傍観者へ…。
(上演時間1時間30分)
ネタバレBOX
セットは、中央に小さなテーブル・椅子3脚。上手・下手に衝立風の幕が2つずつ掛け、下手側に2階段が置かれている。場面に応じて色彩ある毛糸が中央奥に放射状に張られたり、また入院ベットが運び込まれる。
物語は老いた元高校美術教師・サクタ先生(石渡孝サン)が教え子・ヒナドリ(作・演出:杉浦久幸サン)から恨み憎まれ口を言われるところから始まる。元教師は美術部の顧問をしており、ヒナドリともう1人女子生徒・ねえさん(門岡瞳サン)(部員は2人だけ)を指導していた。ヒナドリの作は絵画コンクールで絶賛されたが、いつの間にか評価されなくなり、逆に不遜絵画のような扱いに変わる。同時に教師も教え子を庇わなくなり、悲観した教え子は自殺する。教師も含めた3人の関係は、ねえさんの教師への思慕、ヒナドリのねえさんに対する恋心という表面的には三角関係を描いているが…。
タイトルの「アラクネ」はギリシャ神話の人物で”神”と機織で腕比べをし、果ては蜘蛛の化身に変えられた娘の名。チラシの説明にその件…傍観者たることが書かれており、本公演ではそれをテーマに据えているらしい。物語は過去の出来事を心の奥深くに閉じ込め、忘却しようとしていたが、いつの間にか想いを巡らせ真実に近づこうとしていた。
冒頭の淡々とした描写から滲み出る喪失感と哀愁、人生における記憶の断裂と忘却を描いていたが、段々と現実とシュールな異界が共存する不可思議な空間・雰囲気に変わる。物語の”肝”は”神”であるが、物語には登場しないし正体も明かさない。
記憶と悔悟のような会話から呼び出される現実、過去に囚われ行き惑った男、魂が彷徨する教え子・ヒナドリが世の不条理に立ち向かう。全部さらけ出すのが誠実か、記録されたものだけで判断する。そんな問い掛けを感じる。
登場しない”神”は多数を占める意見、事柄のことであろうか。物事を決める上で多数意見等は重要であるが、一方少数の意見にも耳を傾けることの大切さ。例えば現代のインターネットの世界では瞬時に大量の情報収集が可能だが、内容は混合玉石でもある。世間という”神(風評)”に惑わされ、臆することの怖ろしさも感じる。
脚本的には正体を明かさない”神”をどう観客にイメージさせるか、その点が弱いような気がした。演出ではアラクネに因んだカラフルな毛糸を使用するところは観せ方として面白い。
次回公演を楽しみにしております。
逃げぬれて、夜
くちびるの会
調布市せんがわ劇場(東京都)
2018/04/19 (木) ~ 2018/04/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
「2017年 せんがわ劇場演劇コンクール オーディエンス賞」受賞団体の記念公演。
夢・希望と焦燥の挟間で生きる衝撃的な青春物語。社会・地域の澱んだ日常の中で、爆発寸前の不穏な何かを膨らませている。諦念と再生にちょっと冷たいが、希望の光が射し込むような…。
(上演時間2時間)
ネタバレBOX
セットは衝立のような仕切りを可動させ、アパートの一室、スーパーやコンビニの控え室を出現させる。その情景・状況を観せ、またラストにはブルーシートを利用し多摩川河川敷、川の氾濫というダイナミックな演出は巧み。場面に応じた舞台転換は観客を飽きさせず、物語に集中させていた。
物語は、ある雨の日に少し怪しげな女性が古いアパートの一室を訪れ、「あなたは今、幸せですか?」と問うところから始まる。部屋にいた女性・幸子(橘花梨サン)は少し考え、身近なものを説明した。絵本作家であるが売れずスーパーのアルバイトをして生計を立てている。生活圏内はアパート-スーパーの徒歩15分の往復で、世間から取り残されている。一方、新聞配達をしている伸夫(佐藤修作サン)は、世の中で起きている悲惨な事件(テロ・紛争等)が書かれている新聞を配るだけ。自分は何もしない・出来ないという忸怩たる思いを抱いていた(ロボット化し動けない)。ある日、幸子が捨てた絵本を伸夫が拾い、2人は絵本交換日記のようなことを始める。それぞれの職場で起こる不条理のような出来事、その愚痴ともつかぬことを書き綴り…。
焦らない、闘わない、無理をしないから生きられる。しかし、ある雨の日を境に覚悟を決めて一歩を踏み出す。人間心理のパラドックス。伸夫が乗っている自転車を”リンリン丸”と名付け、理不尽な社会へ警鐘を鳴らすため、「予言新聞」(場内で配布)を発行することにした。しかし大風呂敷的発想は、2人の経済的な破綻を招くようで…大空から鳥の目のように俯瞰すること、地を這いずり回る虫の目で見ることの大切さを知ることになる。少し長く、途中で終わりかと思わせるシーンもあったが、自分は”俯瞰”と”目先(近)”の両方を描きたいためと受け止めた。
舞台転換の巧みさ、タイトルの「逃げぬれて、夜」にある通り雨に象徴される水の音が印象的であった。また強調、余韻付けとしての照明もスポットライトの照射が効果的。どこにでも居そうな等身大の人物の心情を心憎いまでに映し出す。重く湿った雰囲気の内容であるが、演技は多少コミカルにし魅力的に見せ、人物像を引き寄せている。
”せんがわ”という場所を意識した地域設定も微笑ましく、先に記したコンクール オーディエンス賞への謝意が感じられる。
次回公演を楽しみにしております。
タバコの害について/たばこのがいについて
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2018/04/20 (金) ~ 2018/04/24 (火)公演終了
満足度★★★★
会場ではアントン・パヴロヴィッチ・チェーホフの名にちなんで「行灯パブろびっち」を開店。
受付でドリンクを注文し、小さなおつまみと共に頂きながら開演を待つ。
休憩をはさんで30分のオリジナル作品と60分の「タバコの害について」の二本立て構成。
“キャリアウーマンの妻と生活力のない偏食男”の攻防が始まる。
ネタバレBOX
2016年の公演ではチェーホフの人物像を楽しく見せてくれた後、本編となった。
今回はまず夫妻の日頃のやり取りが再現される。
客席近くに舟形の白い物体、「パブろびっち」の行灯がいくつか吊るされている。
好き嫌いの多いチェーホフと、健康のために野菜を摂らせようとする妻の闘い。
人参・ブロッコリー・ピーマン・ゴボウ、それにキノコが大嫌いなチェーホフに
妻は毎日それらの入ったメニューを出し続ける。
そして次第に若かりし頃のチェーホフと現在の情けない有様を比較して嘆く。
白いバスタブで飼っているピラニアの野生を、夫はとうに喪っている。
そして学校を経営するやり手の妻に命じられて“社会に有益な講演”をすることになった彼は
「タバコの害について」と題して語り始めるのだが・・・。
30年間の結婚生活を嘆く“結婚ぶっちゃけ話”に終始する講演、
これに説得力を持たせる前半の“夫婦の日常”という構成が面白い。
悪妻VS大作家、に見えるが、30年も一緒にいて7人の娘がいるという現実に
“それなりに幸せな男のぼやき”ともとれる。
久しぶりに観る益田さんは以前よりさらに緩急自在、
この誇張された初老の男の嘆きを余裕をもって演じているように見える。
金にならない作品を書き続けていられるのはこの妻のおかげ、
野菜を食べなさいと口うるさい妻の言い分ももっともなことで、
子どもの喧嘩みたいな夫婦のやり取りも愛情の裏返しと見ることが出来る。
講演会場に怖ろし気な妻の人形を持ち込んだのには笑った。
逃げ出したいんです、何もかも放り出して逃げ出したいんです・・・というのは
夫に限らず、妻も密かに夢見る普遍的な野生の夢ということか。
妻役の三輪さん、ろびっち店主の高橋さん、何だかとても洗練された印象。
久しぶりの夢現舎はおもてなしも行き届いていて、
この世界観はやっぱり特別な劇団だ。
二ツ巴-Futatsudomoe-<舞台写真公開中!>
壱劇屋
ABCホール (大阪府)
2018/04/06 (金) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
今回 子供達には内容が難しいと思い観劇はしなかったのですが
もし再演したら観劇させてあげたいと思った作品でした