タバコの害について/たばこのがいについて 公演情報 劇団夢現舎「タバコの害について/たばこのがいについて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★


     オリジナル作品1篇とチェーホフの「タバコの害について」の2本立て公演である。(華4つ☆)

    ネタバレBOX


    オリジナルは、表現活動をする男とその男の世話をし続けて5年になるが、妻にもしてもらえないことを嘆きつつもその生活資金も食事などの世話も止められずに暮らす女の関係を描いたものだが、女は男を浴槽で飼っているピラニヤに擬え、臆病な癖に強がるとからかう。
     男は、嫌いな食べ物が多く、女が一所懸命ヘビースモーカーである彼の健康を考え、何とか食事で健康を回復させようと考えて作った食事を食べずに過ごすことも多く、そればかりか、女が男の為に断念した表現者の道の後輩をたらし込んで浮気をしている。女はこれを詰るが、男は、女が未だ手垢のついた自分の革命的な生き方に憧れてついて来ていることを知悉している為、革命的論理によってこれをいなしつつ、自由になること、縛り付けられずに脱出することばかり考えている。無論、女は、反対に好きな男を自分から逃さず管理下に置くことを今日も、明日も考えている。今作は、革命は兎も角、この男女相互の普遍的な関係を描いた秀作である。

     チェーホフの「タバコの害について」である。モーパッサンの「une vie」ならぬ「男の一生」とでも名付けたい内容の作品である。確か日本の落語にも下げで「おんな」が「かんな」になるものがあったように思うが、今作は、当にこれではあるまいか? 
     発生学的にみても、雌雄がある生物のプロトタイプは♀である。それは、種を残す性が雌だから当然のことなのだろう。鯛などは、総て雌として生まれるし、人間の男も母体の中で男になるのであって、最初から男として形成されている訳ではない。今では差別用語とされるかも知れないが、色盲なども発現率は女子の方が低い。生物学的には母体の中で一種のオペを受けて♂になる生命体より♀の方が強いのである。
     一方セクハラ等、男の横暴が話題になる昨今だが、こんな言動は、自民党議員など下劣を旨とする下司がやることであって、一般男性の多くは寧ろ女性に奉仕することで一生を終える者の方が多かろう。蟷螂は、生殖行為後、♂は♀に食われて生涯を終える。つまり♂は、♀に奉仕するだけ奉仕させられ、絞り尽くされてその生涯を終えるのが、生物としての宿命なのである。
     人間社会が男性優位社会という形を採ってきたのは、戦争を含めた生存競争の結果かも知れないが、実は、生物学的に弱い♂が、♀に甘える為のシステムであるかも知れない。医者でもあったチェーホフは男女のこのような生物学的関わりをその本質に於いて知っていたのではなかろうか? 実に深い作品である。

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    2018/04/24 14:41

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