最新の観てきた!クチコミ一覧

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ご町内デュエル

ご町内デュエル

sitcomLab

ザ・ポケット(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

佐野瑞樹が演出のLeftチームの方を選んだが、今日観た回に関していえば、なんだか空回りしていた印象。もっと笑いが起きてもいいホンなのに。

フロイス

フロイス

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2025/03/08 (土) ~ 2025/03/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/03/12 (水) 13:00

座席1階

見応えのある舞台だった。井上ひさしがラジオドラマ用に執筆したという台本「わが友フロイス」を長田育恵が新たに戯曲化。織田信長の信任を得たというイエズス会の宣教師フロイスの半生を生き生きと描いた。フロイスを演じた風間俊介が秀逸だった。

説き起こしは、フロイスが子ども時代に体験したユダヤ人の処刑。これが最初にあることで、ラストシーンの問いかけが強烈に浮き上がってくる。現代の戦争、当時のいくさ。この残虐性に宗教がどう立ち向かっていけるのかを、長田の脚本は問いかけている。考え抜かれた秀作であると思う。
栗山民也の演出もシンプルかつ重厚で、宗教自体が持つ残虐性に十分な光を当てている。光と影をうまく使って脚本のポイントを浮き上がらせたのは見事だった。

こんなことを書いては失礼だが、どことなく優しげな雰囲気があると思っていた風間俊介がこれほど印象深く鋭い存在感を発揮するとは思わなかった。年齢を得てベテランの力が増していったのだろうと思う。長せりふにも臆することなく、堂々と舞台の中心に鎮座した。こまつ座は初出演とのことだが、次の登場が待たれる。

アナタがピンクの似合う子だから

アナタがピンクの似合う子だから

怪奇月蝕キヲテラエ

新宿眼科画廊(東京都)

2025/02/14 (金) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/02/15 (土) 13:00

17年前に人気を博したアニメ(←架空)の舞台(ミュージカル)化の「舞台裏」を描いた80分。
主演オファーに躊躇する主人公の様子から始まり、「舞台で役を生きる」とは?な演技論/演出論や「自己中心」という単語の掘り下げ(大いに納得)なども経てコロナ禍が始まった頃の演劇界の動揺をも描いて鮮やか。
このテの「内幕もの」は本当に巧い。

極道シアターカンパニー

極道シアターカンパニー

スズキプロジェクトバージョンファイブ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2025/03/01 (土) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台慣れしていない自分でも非常に楽しめた。
テンポ感よく、笑いがあり落ち着くとこをはきちんと落ち着き、起承転結も綺麗で見終わったらあとは気持ちがスッキリとし笑い疲れてる。口角が暫く上がったままになるような作品。
面白い場面の反面落ち着くところの些細な演技。
目や眉の動きがとても際立ったように思えた。
日替わりネタも面白く次の公演を早く観たくなった。
スズプロさんの作品 と言うだけで観劇の理由が充分に立つような、これからもスズプロさんを応援したくなるような作品でした。
次作は11月らしいので観に行かせていただきます。

素敵な気持ちにさせて下さりありがとうございました。

昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中

研音/梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2025/02/28 (金) ~ 2025/03/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

シアターオーブは何回か行きましたが、3階席は初めてでした。いやー、こんなところにまでお席があるんですね。双眼鏡必須です。(追記予定)

Lovely wife

Lovely wife

劇団青年座

本多劇場(東京都)

2025/03/06 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かったです。久しぶりに笑って見る事ができた舞台でした。
舞台美術も「へー、こんなのでいいんだ」と言う感じで面白かった。

ネタバレBOX

一昔(ふた昔?)前なら作家が授賞式に妻への感謝の言葉を読み上げたりしたら、お涙頂戴で幕になるのでしょうね。
クロスモーダル

クロスモーダル

名古屋市立大学演劇部劇団鈍-NORO-

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2025/03/07 (金) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2025/03/07 (金) 18:00

う~ん、市大祭の無茶ぶりがまた見れると
期待して行ったわりにはイマイチだったかな?
6つの小作品によるオムニバス形式だったけれど
それが繋がっているのかいないのか
話が飛び過ぎてよくわからず。
笑っている観客もいたにはいたんだけれど
自分は、ただその場の状況を理解しようとするだけで精一杯でした。

他者の国

他者の国

タカハ劇団

本多劇場(東京都)

2025/02/20 (木) ~ 2025/02/23 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

配信で観劇
最初は11人いる!を想像して観てました
後半からはいつもの怖いタカハワールドでした
良かったです
映像が明るく役者の表情が見れて助かりました

ただやはりカット割りされる映像の限界
ずっと主人公の一挙手一投足は観てたかったです

板橋本町の昔の地名
板橋岩の坂の事知りませんでした

ライフワーク

ライフワーク

ながめくらしつ

シアタートラム(東京都)

2025/03/07 (金) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「内省と解放」

 漆黒の舞台で目黒陽介がひとりパフォーマンスをする公演である。ピアノ伴奏は長年創作をともにしてきたイーガルが担当した千穐楽の回を鑑賞した。

ネタバレBOX

 開演時間になると男(目黒陽介)がひとり舞台に寝そべって小さな弾力のある白い球と戯れはじめる。片手であげた球をもう片方の手で受けとめ、肩や頭に乗せたりしてからそれが二つ、三つと増えていって、少しずつ動きが激しくなってゆく。しかし静謐なピアノ伴奏も相まってどことなく沈鬱な面持ちに見える。

 つぎに男は舞台奥の壁に手をかけ、上の方に登っては途中で止まってまだ下りを繰り返す。そのうち壁の端に手や足、膝を掛けてぶら下がる。男は壁と遊んでいるのか、あるいは壁を越えようとしてためらっているのか。ここでも身体の躍動よりも全体を包む内省さが先行する。心の動きのようにも時事的な話題を捉えているかのようにも見える一場であった。

 10個ほどの白い輪っかのジャグリングはここまで以上の冷めた情熱を感じさせるものである。投げる輪の数は一つまた一つと増えていって、腕や首にかけては上空に投げ受け止めを繰り返していく。黒い舞台空間に一段と輪の白さが映える。

 最後は冒頭よりもひとまわり大きい球体を男が操る。ワルツの演奏に合わせたこの最終場は、溜め込んできた鬱屈を開放するかのような明るさが感じられて一番の見応えがした。
三月大歌舞伎

三月大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2025/03/04 (火) ~ 2025/03/27 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「当代と次代のエースによる『七段目』」

 3月歌舞伎座は12年ぶりとなる忠臣蔵の通しである。夜の部Bプログラムでは、仁左衛門の由良之助に松也の平右衛門、七之助のお軽兄妹が顔を揃える新旧世代による豪華な七段目が出た。

ネタバレBOX

 祇園一力茶屋で周囲の目をくらますために本心を偽り放蕩にふけっている大星由良之助(仁左衛門)のもとへ、血気盛んな寺岡平右衛門(松也)が志士に加えてくれと頼みにくるが、由良之助は取り合おうとしない。その後一子力弥(左近)がやってきて宿敵高師直の様子を記した密書を読む由良之助だったが、縁の下からスパイとなった斧九太夫(亀蔵)が、そして隣の部屋から遊女お軽(七之助)が覗き見ている。異変を悟った由良之助はお軽を身請けしようと言い残し奥へ入るが、そこに戻ってきた平右衛門は、真実を知った妹のお軽が由良之助の手にかかることを悟りーー

 仁左衛門の由良之助は一力の奥から女中たちに「手の鳴るほうへ」で出てきて目隠しを外されたときの顔に艶があり、平右衛門をいさめるところにその貫目をみせる。遊び疲れて床に就き、程なくしてやってきた力弥とのやり取りで見せる緊迫さ、この二重性こそ由良之助の性根を思わせる鮮やかな切り替えである。二度目の出で床下の九太夫を手にかけ、これまで四十七士が重ねてきた辛苦を語るところは一番の聞かせどころであった。

 七之助のお軽はその美しさ、平右衛門があまりの変わりように驚くところで見せる恥じらいが特に印象に残る。福助のお軽を思い出した。松也の平右衛門とそこまで年齢差がないため勘平の近況を聞き出そうとやっきになるやり取りには実感があるが、平右衛門がお軽を手に掛けようとするくだりは今ひとつ盛り上がらない。むしろ平右衛門から父が死に、最愛の勘平が切腹した事実を打ち明けられたところで見せた意気消沈するくだりに、お軽という女の辿ってきた流転が伝わってきた。

 幕間を挟み討入のを描く十一段目は一通りである。最後に花水橋にやってきたで四十七士たちを菊五郎の服部逸郎が、若々しく音吐朗々とした台詞まわしと大きさで激励している様子を観て溜飲が下がった。

R老人の終末の御予定

R老人の終末の御予定

ポップンマッシュルームチキン野郎

すみだパークシアター倉(東京都)

2025/03/06 (木) ~ 2025/03/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演と同じく簡素な舞台構成ではあるし(でもあの足場結構お高いとも聞く)舞台上にはポットだのエレキだのしゃもじなど家電(一部除く)に扮した役者さんが並びゆるゆる面白芝居っぽさを全面に押し出し油断させるが内容はゴリッゴリのSFヒューマンドラマ。やはりいい台本。もちろんいい役者んも揃えて照明音響も派手さは抑えているが違和感なく過不足なくシーンに厚みを加えていてとても良い感じで。不満はなくもないがこの台本の公演をまた見られて良かった。

ネタバレBOX

初演の時のネタバレ感想に
「ある夫婦の互いを思いやる気持ちに友人が答えたことで偶然生まれたロボットの夫婦(第1世代)奇病により繁殖出来なくなった人類をサポートするために第1世代が自らのコピーとして作成した第2世代、その第2世代が同じくコピーとして生み出した第3世代、増加するロボットへの反動からロボット排斥の機運が高まりロボットたちは絶滅しかけるが、第1世代が人への攻撃を可能とするプログラムの書き換えを行なったことにより、反攻に転じたロボットにより絶滅へ追い込まれる。(第2世代以降は自らプログラミングできない、模倣のみである)人類に勝利したロボットもロボットの殺害を可能とするプログラムの書き換えが行われたことによりロボット同士の殺し合いにより壊滅、人類の時代より徐々に進化を遂げてきた家電搭載の人工知能にその座を明け渡すことになる。家電たちの現状を見る限りロボット殺しのプログラムは受け継がれており、その発展にはロボットたちの関与が感じられるが両者とも自分を破壊するプログラムは実装されていない様子。これはラストの描写に矛盾する。また第2世代、第3世代はともに第1世代のコピーであるはずなのにパーツの互換性がない(割と単純なパーツっぽい)これは何故なのか」と、今回観て爺さんと婆さんは共に息子を作れたのに自分たちを治せないのは解せないとも思ったが思い返すと探し回ったのは息子に諦めてもらうためで実は出来るけどしなかったのでは無いかロボにも寿命を与えたのでは無いかとも思える。そのほか細かいところは今回変わっているかもしれないし置いといて「終末の御予定」について何も書いてないな自分と思った。今回観て「終末」は結局どうなった?と観終わって反芻して思い至ったのはご夫婦は神になったのではないかという結論。ロボットへ破滅へのトリガーとして同族殺しのプログラムを施しつつロボット側にも人間側にも道具としてしか観られていなかった家電AIのネットワークに自分と奥さんの記憶(魂を)アップロードして家電AIの進化を促進して見守ってきたのでは無いだろうか。自分的にはかなり腑に落ちた。真相はさておき人とは何か心とは、魂とはという壮大なお話であることは違わないので最高に好きな作品、また見られて幸せ
『BORDER〜罪の道〜』

『BORDER〜罪の道〜』

五反田タイガー

六行会ホール(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

コミカルな感じかと思いきや後半にかけて結構ハードな展開でどんどんのめり込んで観ていた。
役者としては秋田知里さんがひと際映えていた。歌も芝居もダンスも彼女の動きから目が離せなかった。
他の役者陣もそれぞれ良さが出ていて面白かった。

やなぎにツバメは

やなぎにツバメは

シス・カンパニー

紀伊國屋ホール(東京都)

2025/03/07 (金) ~ 2025/03/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/03/09 (日) 13:00

横山拓也が初のシス・カンパニー。達者な役者陣を得て、笑いの後味に切なさを残す巧みな舞台。(3分押し)103分。
 とある元カラオケスナックのママが亡くなり、葬儀の後に集まるママの娘・美栄子(大竹しのぶ)と常連たち洋輝(段田安則)・佑美(木野花)と、美栄子の娘・花恋(松岡茉優)と洋輝の息子・修斗(林謙都)、そして美栄子の元夫・賢吾(浅野和之)。そこで起こる数々のエピソードと、過去の回想は、思わぬ方向に向かって…、という物語。笑いの多い舞台だが、横山らしく最後はどうしようもなく切ないエンディングに向かう。アラ古稀の4人も勿論見事だが、それに伍して若手の2人の活躍も目覚ましい。特に松岡のキャラが印象に残る。それにしても巧い話だ。

わたしの「銀河鉄道の夜」

わたしの「銀河鉄道の夜」

劇団こふく劇場

山小屋シアター(広島県)

2025/03/08 (土) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

五体と五感を使って働いてきた実感のある言葉が
より一層伝わってきている。

ネタバレBOX

より一層生活のにおいがぷんぷんしているから生には死、影には光、嘘には真実、
男には女、というスパイスが程よくまぶされた銀河鉄道の夜だった。
ハンガーパイプが仕切る壁になり、開く扉にもなっている。
そして生チェロの音色がなにか懐かしい。
女子と算数

女子と算数

NICE STALKER

ザ・スズナリ(東京都)

2024/12/25 (水) ~ 2024/12/29 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

配信を鑑賞。公演序盤の観劇予定がワヤになり結局行けなかったのだが、延期が重なり2日のみの公演だったとは。そして「段ボール彼氏」ver.とは欠員を補うための策から付いたネーミングだったのか..。Aniversary公演とは言っても通常営業、と思っていたが思いの強い過去作のリバイバルであったようで。確かに..その思いが迫って来る作品ではあった。不完全を補うべく奮闘する役者が前面にどっかと存在する中で物語が(というかそのスピリッツのようなものが)揺ら揺らと立ち上がって来る。一人の鈍感な(と一応されている)男を巡る恋愛譚で吐かれる恋心、打算、愛を滲ませる台詞に、突如数式が割り込み、板書されて授業モード、ギャグで落とすがその解にしっかりオチが仕込まれている。この数式という「非感情的なるもの」と恋愛に不可避な激情が絶妙に絡む。イキウメを持ち出すのも何だが、淡白な数字(世界の真理)が人間存在に冷徹な法則以上に有機的に関与していた発見の驚き、に通じる所の感動の要素である。これを総員挙げて具現しようとする熱がこの舞台を覆うのが映像からも認められ、思わず手が拍手をしていた。

境目

境目

ギムレットには早すぎる

パピオビールーム・大練習室(福岡県)

2025/03/08 (土) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/03/09 (日) 16:00

座席1階1列2番

価格2,500円

 キビるフェス、二本目。
 「ギムレットには早すぎる」は福岡の劇団。創設されてまだ間がなく、よく言えば「若さ」、悪く言えば「青臭さ」が目立つが、芝居自体の印象は決して悪いものではない。
 芝居そのものには概ね満足はしているのに、どうしても「青臭さ」を感じてしまうのは、やはり劇団名と芝居内容との間にギャップが生じているせいだろう。ハードボイルドを気取るのはちょっと背伸びし過ぎてる感じなんだよねえ(説明は不要かもしれないが、「ギムレットには早すぎる」というのはレイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』中の有名な台詞だ)。
 とは言え、劇団の名前に気恥ずかしさを感じるのは、こちらがすっかり歳を取ってしまっているからだ。旗揚げしたばかりの劇団名なんてどこも似たりよったりの痛々しさを持っているもので、まあ背伸びしてみせるのも若者の特権だからなあと、生暖かい目で見守ってあげることもできなくはない。
 とは言え、貶すのも可哀想だと批評に“手加減”を加えたり、過剰に甘やかして称賛したりすることは、かえって若い劇団のせっかくの伸びしろを摘んでしまうことになる。いわゆる「褒め殺し」ってやつだ。「概ね満足」とは書いたが、細部において幾分の物足りなさを覚えたことも事実。そこは客観的に指摘しなければならないことだろう。

 「境目」というタイトルに象徴された視点は極めて興味深い。演劇的かつ、世界を俯瞰する視点だと言える。
 彼我の間、私と貴方、自己と他者、個人と世界、日常と非日常、現実と虚構、生と死と、全ての「関係性」の間に「境目」は存在する。「境界論」を語ることは「宇宙論」にもなり得る。
 我々がどこから来て、どこへ行くのか、人間の実存の根源論にも「境目」が存在しているのだ。
 『境目』の脚本家がどこまで境界論を敷衍させて戯曲を構成したのかは分からない。しかし少なくともそこにある「境目」を何らかの方法によって突破することができなければ、世界の「関係性」を構築することは不可能であるとは認識していたように思える。
 別役実が指摘していた通り、演劇が「中景の芸術」であるのならば、当然、演劇空間にも「境目」は存在する。例えば、舞台と客席の間の「境目」は、いわゆる「第三の壁」と呼ばれる「見えない壁」だ。そのことに自覚的な近代演劇においては、「第三の壁」が破られることは珍しいことでも何でもない。
 今回の舞台でも、冒頭から登場人物たちが観客に関わって、最初から第三の壁を破ることから物語が始められている。ああ、タイトルの「境目」って、そういうことなのね、と観客に分かりやすく示してくれる。説明的でなく、具体的な演技で観客に感得させてくれるのは、いかにも「演劇的」だ。

 しかし、演劇が突破すべき壁は「第三の壁」のみではない。先述した通り、この世界の全てにおいて「境目」は存在している。何かの「境界」をモチーフにして演劇を構築するなら、その想定し得るあらゆる「境目」にコミットするようなドラマを設定しなければ、舞台空間は成立し得ないのではないか。
 安部公房『壁』では、作者は「壁」を具体的に現出させながら、その「概念」は読者の想像の自由に委ねられていた。それゆえに壁は千変万化し、森羅万象を象徴する存在として、我々の内と外の双方に立ち現れることになった。
 抽象的な物言いになって申し訳ないが、今回の舞台での一番の不満は、我々を取り巻いているであろう無限の「境目」が、私たちにとってどんな意味を持つのか、快楽か幸福か、はたまた不安や恐怖か、想像の翼を広げるには至らなかった点にあるのである。
 惜しいところまでは辿り着いてたんだけどね。

ネタバレBOX

 主人公は「ミドリムシ」くんという少年。物語は彼の日常を淡々と追う形で展開するが、特に大きなドラマはない。
 ミドリくんの部屋に誰や彼やが訪ねてきて賑やかになるが、やがて誰もいなくなる。ミドリくんたちは居酒屋で忙しくアルバイトに勤しむが、それも一段落すると、彼らは自然に別れる。自分の部屋に帰ってきたミドリくんは、一人、自分の「境目」らしき「箱」を突き破る。
 筋があるようでない、曖昧でアンチドラマな物語だが、それは構わない。恐らく、私たちにとって最も重要な「境目」は、平凡で代わり映えのしない日常の合間に、脈絡なく現れる。何もおかしなことが起こらないから「ひずみ」は生じるようになる。澱か゚溜まるように、塵が積もるように。そういうものだろう。

 ミドリくんは明らかに「自分の体の使い方を間違えている」。自分の意志と、自分の体の動きとがいつもチグハグだ。多分、彼の「境目」は彼自身の皮膚に張り付いている。彼は自分の言葉が微妙にズレて相手に届かず、自分の仕草が歪つで相手を戸惑わせていることに気づかない。「境目」はミドリくん自身を覆っているか゚、それを剥ぎ落とすことができずに、ミドリくんは、いつも戸惑っている。
 でもミドリくんだけが特殊なわけではないだろう。ミドリくんは相当「おかしい」が、人間は大なり小なり、どこか歪つで「おかしい」のだ。
 「境目」は明らかにミドリくんを蝕んでいる。ミドリムシだからかな(苦笑)。物足りなさを覚えたのは、劇中のミドリくんが、蝕まれるままになっているからだ。不安や恐怖、あるいは憎悪がミドリくんを闇落ちさせているのに、ミドリくんは何の抵抗も見せない。
 「境目」の向こうに行こうよ、行かなきゃなんだろう? そう何度も問いかけたくなるが、ミドリくんは何の変哲もない日常に翻弄されるばかりである。

 物語のクライマックスは、居酒屋でのドタバタ。
 料理を作れるのは店長だけらしい。ミドリくんと友達(名前忘れた)は配膳しか出来ないが、次から次へと任される料理に右往左往させられる。
 料理はもちろん本物ではなくて、ゴム棒みたいなのを見立ててるんだが、どう見てもカツオやマグロを丸ごと渡してるようにしか見えない。
 その狂騒ぶりは楽しくはあるけれども、さて、ミドリくんは果たして「境目」の向こうを覗き見ることは出来たのかどうか。どうもこの狂騒が、何か現実を突破したようには見えないこと、「世界を革命するまでには至らなかったこと」が残念に思えてならない。
 映画『家族ゲーム』のラストで、松田優作かが「家族の偽善」だけでなく、映画そのものを破壊してしまったような破天荒さ、カタストロフィーを期待するのは筋違いだったろうか。

 居酒屋シーンに「音」がなかったことも、イマイチ盛り上がらねえなあ、って感じた原因だったと思う。
 コメディのクライマックスには、それがどんなに悲劇的であろうと、たいてい、能天気な音楽がかかるものだ。『吾輩はカモである』の戦争勃発シーンでは『私を野球に連れてって』が、『モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン』の磔シーンには『いつも人生の明るい方を見ようよ』が、『博士の異常な愛情』の核戦争シーンには『また会いましょう』が暢気に流れているのである。
 こういう「喜劇センス」ってのは「経験値」でしか鍛えられないからね。次作以降、「もっと面白くできるはずだ」って姿勢で取り組んでいけば、常に「今作ってる作品が最高傑作」になっていくと思う。
 期待はしていいんじゃないかな、この若い劇団には。
七人の墓友

七人の墓友

diamond-Z

荏原文化センター(東京都)

2025/02/27 (木) ~ 2025/03/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

誰でも考える事柄です。面白ろかったです。

『BORDER〜罪の道〜』

『BORDER〜罪の道〜』

五反田タイガー

六行会ホール(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

軽犯罪者が多い女子刑務所に重罪凶悪犯たちが移送されてきて起こる事件とその顛末を描く休憩無し2時間10分、罪とそれに対する罰あるいは赦しがテーマゆえ基本は深刻な内容ながら歌ありダンスありそしてコメディ色もあっていろいろな楽しみ方ができます。主役が可愛いかったです。

セツコの朋友

セツコの朋友

セツコの豪遊

中野スタジオあくとれ(東京都)

2025/03/08 (土) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

十周年ですか。素晴らしいですね。いま30歳ぐらい?百歳までやるとして、80周年ぐらいまでできそうですね。70年後、ぼくはもう生きてはいないだろうから、80周年を目撃することは叶いそうにはありませんが。
カレーはいいですよね。ターメリックなどの摂取は健康にもいいそうで。毎日カレー食べてせいぜい長生きして、20周年ぐらいは目撃したいもの。

ネタバレBOX

「子自記」は始まったとたん既視感が。二年半前に見たやつとおんなじ感じでした。きっと細部は違うのだろうけど。三本ラインの黒のジャージがかっこよかった。
三人の芝居は、早送りの動作が面白かったけど、最後に最初の場面に戻るということはきっと巻き戻しもあったんですよね?時間が進んでるのか戻ってるのかよくわからなくて、混乱しました。
実際に胃袋が目の前に現れたとしたら、胃袋はもっと優しく接してくれるのではないのかな~とふと思った。
ま、胃袋の性格なんて人それぞれでしょうけどね。
『BORDER〜罪の道〜』

『BORDER〜罪の道〜』

五反田タイガー

六行会ホール(東京都)

2025/03/05 (水) ~ 2025/03/09 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

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