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炎炎ノ消防隊

炎炎ノ消防隊

DMM STAGE

天王洲 銀河劇場(東京都)

2023/03/29 (水) ~ 2023/04/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/04/01 (土) 18:00

大阪で幕を開けた炎炎ノ消防隊、東京千穐楽の前日。
開演30分前、普段なら1階ロビーも2階ロビーも劇場内も観客でいっぱいの銀河劇場なのに駅から劇場までの道も空いてればロビーもガラガラ。劇場を間違えたかと不安になるくらい。スカスカの物販でパンフを買って、いざ客席に入って愕然とした。前半分くらいしか埋まっていない客席なんて銀劇での観劇経験のなかで初めてだった。いつだって1階席は満員だった。…もしかして、評判が悪い?一切情報を入れずに来ちゃったけど今作ハズレなのか?こんなスカスカの客席で前楽を迎えるのか?こんな客席を役者さんたちに見せていいのか?頭の中をぐるぐるそんな思いがうずまいて、嫌な意味でドキドキしながら幕が上がった。

結論からいうと、めちゃくちゃ最高の舞台だった。熱量も高いし脚本も良かったチームワークもいい、全体的によくまとまってて全く飽きたりダレたりする瞬間がなかった。こんなに最高の仕上がりなのになんで客席埋まってないのかわからない!悔しい!
前作から見始めたけど、前作も今作もキャス変多数。1作目から続けて出てるキャストもいるけど大半は途中参加。今回からの新キャラもいる。でも、その差は全く感じなかった。アニメを履修できてない部分に入ってしまったから原作再現率がいかほどかはわからないけど、舞台として無理なく違和感なくまとまっていたからきっと原作再現度も高いに違いない。

前作が初主演初座長だった凌雅くん。役者としてもまだ未熟で、台詞を言う時の癖や体に力が入りすぎて足音が煩かったり色々気になるところがあった。座長として皆をまとめて引っ張っていくというよりは、周りが座長を支えることでまとまっているという感じだった。それが、今回、舞台上での存在感が桁違いに上がっていた。座長として先頭に立って作品を引っ張っていた。その背中を見て皆がついてきてる感じがした。感覚としては皆で肩組んで横並びって感じだとは思うんだけど、一座としてのまとまりや座長としての在り方が全然違ってた。たくさんの舞台に出て、いろんな先輩たちと共演して、そのひとつひとつが凌雅くんの力になってるんだなって感じられて、推しの成長を感じて私はとても幸せでした。凌雅くんの芝居で情緒をぐちゃぐちゃにされたかったから、着実にそうなっていっているのが嬉しい。

前回より肉弾戦のアクションが増えていてみんなかっこよかった。カロンとのバトルすごかったなぁ…身体能力をフルに使ってる感じ。マキさんも最高だった。

前回はアドリブで遊ぶシーンが多かったけど今回は控えめで、それが逆に作品としてまとまってたので良かったと思う。

新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX

新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX

『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』製作委員会

IHIステージアラウンド東京(東京都)

2023/03/04 (土) ~ 2023/04/12 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/03/16 (木) 12:00

オオアカ屋の前説、ゲームとゲームファンへのリスペクトに溢れてて泣いてしまった。
まんちゃん、素敵だよ。

舞台の間口はあまり開けずにここぞ!という場面で広く使ってる。奥行があるので5列目でも「遠いな」と感じることがあった。

第78回「a・la・ALA・Live」

第78回「a・la・ALA・Live」

a・la・ALA・Live

阿波おどりホール(座・高円寺内) (東京都)

2023/12/25 (月) ~ 2023/12/25 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

感想遅くなりました。何回か拝見している皆さんですが、いろいろなパフォーマンスが拝見できて良かったです。それぞれに味があっていい催しだと思います。楽しい時間を過ごせました

ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜

ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜

劇団☆新感線

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/03/10 (金) ~ 2023/03/28 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/03/10 (金) 17:30

寺西くん。何者なんだこの子。初めましてなんだけど、歌えて踊れて芝居もうまい。初演のインテリヤクザとはまた少し違ったインテリヤクザで、振り切って芝居する若手大好きだから一瞬で好きになってしまった。

劇団女優陣無双。聖子さんは言わずもがな、カナコさとみエマの御三方もめちゃくちゃ良い役。オセロって純粋で愚かな男のどうしようもない物語だと思ってたけど、これは女達の物語だった。よしこ姐さんのボンテージもたまらん。似合いすぎる。

じゅんさんの初演版ではゲストが演じてた役を今回はほとんど劇団員が担ってる。たまらん。物語を進めていくのは劇団員、ゲストの3人がどんな芝居をしてもまわりの劇団員が全部おいしくまとめてくれる。聖子さんがシリアスも笑いも全部背負ってくれてる。

2階から見下ろしてると舞台上にシートが貼ってあるのが見えて「あ、なにかこぼすんだな」ってわかる。ワクワクしちゃう。牛乳と血。

河野さんが最初から最後まで頼れる兄貴でかっこいいんですけど?!モリを使った殺陣もかっこよかったよ!

蜘蛛巣城

蜘蛛巣城

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/25 (土) 14:00

マクベス。私にとってのマクベスといえば「メタルマクベス」なので、頭の中であの人はこの人で...と変換しながら観ていた。
百姓から腕一本でのし上がった鷲津武時。夫を愛しすぎるが故に「こんなものではない」と出世を望む妻。この夫婦が特別野心家だったわけじゃない、たまたま、選ばれてしまっただけ。鷲津は妻を心から愛し、優しく、そして弱かった。

マクベス夫妻の「相手がどんなに惨めになろうとも、たとえ壊れてしまっても、絶対に見捨てることは無い」という最期まで添い遂げようとする様が美しく悲しく大好き。

ネタバレBOX

春に予言を受け、夏をすぎ、秋に子を失い妻は壊れ、冬に命を止める。最期まで武時は妻を守ろうとする。死に様は壮絶なようであっけなく静か。
泥水を啜って這いつくばって生きていた百姓時代。その生活から抜け出すために必死の思いで侍になって、主を殺し友を殺してまで城主になったのに、名も無き百姓が生き生きとして侍が苦しみ命を散らす...なんて皮肉なんだろう。
「空が綺麗だ」と呟いた笑顔が、憑き物が落ちたような顔で、一の砦の主だった頃みたいな、あの頃に戻って静かにこと切れる。壊れてしまった奥方にはなにもわからない。ただ、雲雀を求めて空を見渡す。
美しく、悲しい最期。

銀粉蝶さんが、さすがすぎる。人では無いモノ。あの世界を「マクベス」にしてるのは間違いなく銀粉蝶さん。意味は分からないけどゾッとさせられるのは、その言の葉に確かに意味がのせられているから。ただ発しているのではなく、銀粉蝶さんの中に正解があるから。

殺陣のSE、小さく聞こえたような気もしたし、無かったような気もする...大きく音が出てはいなかったと思う。
太一さんの太刀筋は重たくて、人を斬ってる感じがして、良いなぁ。義妹と甥を斬った部下を鯰切りにする時の襟首からグリグリ突き刺していくヤツ、最高。太一さんが刀を振ると血の匂いがする。

代表作、て言われるような作品になればいいなぁ。

場転の時に舞台奥と上下の森が照らされているの「森が見ている」感じあって不気味だった。綺麗なのに、不気味。

武人の荒々しさを表現するためかガラガラした低めの発声で、すこし台詞が聴き取りにくい。太一さんだけじゃなく他のキャストも。もしかしたら集音マイクの設定?マクベスの筋は知ってるから台詞が聞き取れなくても展開はわかるけど、はっきり聞き取れた方がストレスは無い。

誰よりも舞が上手いのに舞えない設定の太一さん。雑炊が美味かった、初めて白い米を食べたと嬉しそうに語る武時に米好き太一さんがどうしても重なる(笑)
キングダム

キングダム

東宝

帝国劇場(東京都)

2023/02/05 (日) ~ 2023/02/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/19 (日) 13:00

原作は未履修。実写映画を流し見した程度。
オープニングの王と王毅2人だけのシーンで完全に掴まれてしまった。なんだろう、漫画もアニメも未履修なのに「本物だ」て思ったんだよ。本当にそこに浮き出してきたような。お二方とも板の上での存在感がありすぎる。あんなに広い舞台なのに全く感じさせなかった。
子役の動きが凄い。え、子供…え?は?ガッツリ動ける子を起用してるのかな。体操とかやってそう。子役同士の打ち合いがあんなバチバチだなんて思わなかったので大変驚きました。
子役に限らず、出演者全員バチバチに動ける人ばっかりだ。ダンスが凄かったり、身体能力オバケだったり。
高野くんはダンスも殺陣も動きが綺麗だから、舞台上での躍動感がよかったなぁ。我武者羅に前だけ見ている。小関くんの落ち着いてるけどアツイ演技と高野くんの全力な感じが心地いい。
声優である梶さんのお芝居は初めて見た。舞台上からエレンの声がする。良い役を、良い芝居で魅せていたなぁ。これは有澤くんと全然違うんだろうな、というのが容易に想像出来る。タイプが違いすぎるもの。
河了貂、可愛い。声がまず可愛い。なんだあの可愛い生き物は。映画の環奈も可愛かったけど、舞台河了貂まったく負けてない。

.5俳優の帝劇0番だから観たい、というのと同じくらい、ゆっくんが帝劇に立つから観たい、ていうのがあった。ゆっくん、役的に仕方ないけど出番少ない。でも、出てくると戦うから誰よりも美しく剣を扱う姿は観客の印象に残ると思う。低い声で静かに話す左慈、台詞大丈夫なのかって心配してたけど(だいぶ失礼)ちゃんとしっかり聞き取れた。薔薇サム後半で若干崩れてたから、何言ってるか分からないってなってなくて良かった。「剣とは力、剣とは速さ」て言ってて、確かにこの台詞を言って説得力があるのはゆっくんかもしれないけど、それは速さに関してだけなのでは…私の目には剣がとても軽く見えた。激強だから獲物を軽々と扱うことで凄さを感じさせる、という演出もあるかもだけど、やっぱり剣の重さが見えないのは物足りない。他のキャラクターの剣に力がこもっているから、すごく左慈が異質に見える。…そういう演出なのか?ビジュアルは100点満点です。ひらみ最高。ひっつめお団子最高。

盆があるようには見えなかったけど、セットがぐるぐる回ってて大変良い。舞台に奥行があるので場面転換時に暗い舞台奥からぬーっと次のセットが出てくるの最高。山の王の間で高さのあるセットがわーっと出てきたのはゾクゾクしたなぁ。映画で見たやつだー!ってなった。
上から見ると舞台一面にバミリがあって、点だけでなく線のバミリもあった。セットに階段が多いからまるで星空みたいにちっちゃいバミリがたっくさん光ってて、暗転のある舞台はそれも楽しいよなぁ。

カテコで王毅が出てきた時、一瞬で「場を支配」していた。カテコまで圧倒された。

禺伝 矛盾源氏物語

禺伝 矛盾源氏物語

舞台『刀剣乱舞』製作委員会

TOKYO DOME CITY HALL(東京都)

2023/02/04 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/09 (木) 14:00

舞台上から舞台下まで垂れ下がった源氏物語が書かれているであろう巻物。いつもの前口上はない、この物語はあの本丸の物語では無いから。1人ずつの名乗りも、静かで、なにか違和感がある。ほんの少しのひっかかり。
.5俳優と同じくらい、宝塚の役者は“原作物”を再現するのが上手い。立ち姿がまったくもってそのもの。
最初は声を聞き分けるのが難しく誰が喋ってるかわからなくなったけど、そのうち慣れた。
光源氏が刀剣男士以上にイケメン。
姫鶴の気怠さとめちゃくちゃヤンキーなところと「かぁいいね」にやられまくり。南泉がとても可愛い。光源氏の一言一言にツッコミをいれるところ最高。
OPで扇を持ってくれてありがとう。ヅカOGが男士になると決まった時から期待していた。やっぱり日舞基礎のある人達が持つ扇は美しい。ふんわりやわらかく手におさまった扇がひらひらとしなやかにひらめく。作品のための稽古や練習だとここまでは使いこなせない。これが、観たかったんだ。そして、揃うことに慣れた人達だから個性も感じるのに角度やスピードに乱れがない。もっとキャラクター固有のものが見えてもいいけど、揃っているダンスは単純に美しいし圧巻。あの宝塚に血のにじむような努力をして入った人達だから、踊るという点において当たり前に段違い。歌舞伎同様、どんな役を演じても役者としての品の良さが見えなきゃいけない世界だと思うので、刀剣の付喪神を演じるというのはピッタリなんだと思う。

ネタバレBOX

一幕後半、歌仙の口から「元主、細川ガラシャの物語」、大倶利伽羅から「徳川家の物語」という台詞が飛び出て、驚いたというか衝撃だった。同時に、だから、七海ひろきさんなんだと納得出来た。綺伝でガラシャを演じた七海さんが、細川ガラシャの刀という物語を付与された歌仙兼定を演じる。スクリーンに映るガラシャと同じ顔をした歌仙兼定。綺伝の後だからいきてくる設定。政府によって本来持つはずのない逸話を付与されて顕現した試験本丸の刀たち。他の男士達とは違う物語を持つ彼ら。その違和感。末満、とんでもねぇ。そして「政府による試験本丸」という存在。その実験による目的の先には三日月宗近がいる(完璧にひろちかシルエット再現されてた)一文字の刀たちにも同じように逸話が付与されていて、聞きなれた「嗅ぎなれた匂い、血の匂い、戦場の匂い」をちょもさんが言い出した時は驚いた。
敵が二転三転するの、マジ末満。
紫式部の生きた世界で読者が暴走して源氏物語の世界が実体化した、だと思わせておいて、実はその紫式部の生きる世界すらも物語の一部、源氏供養だったという驚きの設定。
光源氏として死にたかった彼を殺せない物語の女性たち。若紫が無垢な心で殺そうとするの、ハラハラした。本当にこんな子供に殺させるのか、そこまで人の心がない本を書いたのか末満!と思っていたら歌仙くんが代わりに殺してくれました。ありがとう歌仙兼定。雅じゃないもんね。
死んだ彼の亡骸は持ち去られてしまったけれど…これも今後の展開に繋がっていくのだろうか。この試験本丸もそれなりに普通の本丸として稼働しているようで演練とかするんだね。その演練でステ本丸と1度手合わせして、その時にステ山姥切に出会っている(このシルエットも完璧に荒牧国広だった)己の物語とは別の強い物語を持っているという…それは、極めてるのとは違うのだろうか…あの本丸において例えば円環を巡る三日月宗近を斬った物語なのか、彌助と2度まみえた物語なのか、ステ本丸そのものの物語なのか。次回の山姥切単騎出陣に繋がる匂わせ。
全員女性キャスト、故に、殺陣の迫力はやはり普段の刀ステと比べれば劣る…が、かつて観たヅカの殺陣が重心高くて苦手だなーって感じた私でも「こんだけ戦えれば上上吉」という感想。特に、七海さん。綺伝の時はまだ重心が高かったのに、どうですか、歌仙を演じるにあたってぐっと低くなったと思う。他キャスト同様、振り回す感じはまだあるけど、隊長として物語の中心として練度の高さを感じた。
物語を破綻させるために主要人物を殺す、というものすごく単純で力技な作戦を実行させる所が歌仙だなぁという感じ。あ、でもこの歌仙は細川忠興からガラシャに贈られた刀…でも三十六歌仙のお手打ち設定はさすがに残ってるから、やっぱ変わらずゴリラなのか。
歌仙と大倶利伽羅の回想で「田舎刀」みたいな雅じゃない的なアレがあったからもっと険悪かと思ったけど、付与された物語が違うから伊達の物語を持たない大倶利伽羅は田舎の刀ではないんだな。だから歌仙も必要以上につっかからない。
自分の物語を思い出すところが少々唐突に感じたけど、でも、大倶利伽羅の口から伊達政宗の名前が出てきた時と、なにより歌仙兼定の「三斎様」にものすごく感動したのよ。ガラシャの物だと思っていた歌仙の足元には綺伝の時にも使われた桔梗の花の照明が当たっていて、細川忠興の物であった本来の物語を思い出すとその花のまわりに小さな丸い照明が集まって細川家の紋のようになる。にくい、にくすぎる演出。
所詮物語は嘘、だから誰の心にも響くことは無い、みたいな台詞が出てくるけど、物語に関してのマイナスな言葉を御前がことごとく否定して「たとえ嘘の物語でも、その死に心を寄せる者がいれば、その死は誠になる」みたいなことを言ってくれて、なんかこう、はっきりとした史実をもたない物語によって生み出された御前が、演劇や創作を否定するような台詞を全て「そんなことはないさ」と言ってくれるのが嬉しかった。というか、御前の前でそんなこと言わんでくれ、頼むから。
御前に「誉をあげろ!」て言われるとめちゃくちゃ滾るなぁ。
歴史上人物、というか、今回は物語上人物か、の皆様もひとりひとりとても輝いていた。本編と行間、物語中の役柄と史実での役柄、その演じ分けがわかりやすく、素敵だった。お声が皆さん素敵で、やわらかく品があって優しくて、耳が幸せ。でもしっかりした強い声も出せる。
歌仙が光源氏の設定をうけて物語に飲み込まれていくところ、床に広げられた布をぐるぐると巻き付ける演出上から観ててとても良かった。良い使い方。素敵。
物語世界の外側からなんとかしようとする南泉、え、壁のマイムうま…‎( ꒪⌓꒪)
光源氏の設定をうけて完全キャラ崩壊おこした大倶利伽羅、伊達双騎や三百年では大倶利伽羅のままだったけど設定に飲み込まれてる大倶利伽羅は完全に光源氏を演じさせられてるから絶対言わない台詞も言うし馴れ合う(笑)なんとも言えない気持ちで見てたけど、行間で貴族なのに刀抜いて斬りかかる「だいぶ大倶利伽羅の残った光る君」は笑ったわ。血の気の多い光る君。
『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)

『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)

ムシラセ

駅前劇場(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

ムシラセの『つやつやのやつ』は演劇祭での短編、初演、再演と全て観て来ましたが、何度観ても新たな気持ちで面白さを発見でき、配信では細かい演技やニュアンスも確認できました。
『ファン・ファン・ファンファーレ!』もオタクの気持ちが身につまされて、痛いほど分かる。
観劇初心者の方でもすんなり観られる作品だと思います。

桜姫東文章

桜姫東文章

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/02 (木) 18:00

タイル張りで段差のあるセット、客席に対して斜め向き、くすんだ色のカーテン(定式幕的な使い方だったけど浅葱幕っぽかった)、開演5分前アナウンス後、演者たち自ら細々としたセッティングをしに出てくる。
近くの人が「昔のお風呂みたい」と言っていたけど、このセットはたぶんプールじゃないかな。大きな窓、青を基調にしたタイル、大きな浴槽のような部分から突き出た鉄の手摺...これはプールに入る時に使うあの梯子に違いない。室内プールだと思う。朽ちてボロボロになった。
衣装はクラブにいそうな、渋谷系やお兄系。高貴な身分の桜姫と僧侶たちはファーを身に纏う。お付の局はしっかりしたロングコート。庶民になるにつれスカジャンやダメージジーンズ、柄シャツなどになっていく。侍は革ジャン。

木ノ下歌舞伎は初めてなもので、毎回こういう感じなのか今回だけなのかわからないけど、あえてテンポ感を外した間をたっぷり使う演出。今何待ちですか?みたいな時間がちょいちょいあるけど、それが次第に気にならなくなっていくしその間が心地よくすらなっていく。台詞もあまり感情的にはならず一本調子、棒読みともとれるような「演じている感」がない。全員がほぼ出ずっぱり、袖に入っても裏を通ってすぐ出てくる、そして各自次の出番を待ちながら端っこや舞台ツラに寝転がって屋号を呼んだり時には笑ったりしながら演じる仲間を見ている。稽古場のようにも感じた。開演もシームレスなら演じている時とそうでない時の境もシームレス。

ネタバレBOX

舞台奥に「発端」「序幕」といった文字が浮かぶ。それだけじゃなく、その幕のあらすじ、なんなら結末まで説明しちゃう。簡潔な言葉で事実だけが書かれた文は内容知ってても不思議と驚きをもたらしてくれて時々クスリと笑えてしまう...特に清玄ね。無実の罪はきせられるは川に落ちるわ落ちぶれるわ殺されて生き返ったのに恋敵の掘った自分用の墓穴に落ちて死んで、死んでもなお桜姫にとりついて惨めな醜態を晒す、白菊を独り死なせた報いでとにかくボコボコにされてて可哀想なんだけど出てくる度に「桜姫に迫り川に落ちる」とか「桜姫に迫り穴に落ちて死ぬ」とか展開が突き抜けてて面白くなっちゃう。「穴に落ちて死ぬ」はかなり客席から笑い起きてた。そして死んだらあんなスクリーム顔の風船になるなんて思わないじゃん(笑)風の音がうるせえ(笑)2回目出てきた時は本当に清玄として命が(死んでるけど)宿ってるみたいに見えたの不思議。桜姫の言葉に反応してるように見えた。それ見てめちゃくちゃ楽しそうに肩震わせて笑ってる成河さん可愛い。
屋号も個性的でさぁ、桜姫の紅<べに>屋はまぁ綺麗で良いと思う、成河さんもなんかそれっぽい感じで、問題なのはダルメシアン、シルバニア、ポメラニアンだよ(笑)なんだそれ可愛いな!あと「御両人」じゃなく「ニコイチ」てかけるのもズルい(笑)なるほど!って思ったけど面白すぎるだろ!
中村橋吾さんが所作指導ではいってるから立ち回りはしっかり歌舞伎的な動きがついてた。キッパリしてた。
ただ、それ以外は無表情無感動、視線が明後日の方や舞台に立っていないまわりの演者に向いてる、変な動きで、これはたぶん、歌舞伎ならではのあれこれを誇張してるのかな?って思った。あまり大きく表情を動かさない、台詞に独特の調子がある、客席からそう見えればいいから役者同士は目が合ってない、驚きや怒りやキャラ付けまで大きく誇張した観せる動きをする。役によって特定の動きをしていたから、キャラ付け的な部分が大きいのかも。背伸びするとか中腰で腕をぶらんとするとかゆらゆらするとか。
歌舞伎版の言葉も使いつつ現代語訳も交えつつ、前半そこまで桜姫の言葉遣い古典こてんしてなかったと思ったけど後半権助と再開した時にはめちゃくちゃ姫言葉だったの、あれは後々言葉遣いがはすっぱになる部分をわかりやすくするためなのかな?前半「自らは」とか言ってなかったよね?
壁にたてかけられた姿見が舞台装置にもなり、早替え用の化粧前にもなり、端に置かれたベンチも控え場と見せかけて突然本舞台になる。セットの転換も小道具の準備も衣装替えも決して急いでる様子は無い(清玄権助の早替えだけ急いでる感じあった)出番の直前まで座ってて役名を呼ばれてから立って刀さして出ていくみたいな余裕があった。なんというか、とても不思議な空間だったな。あれを成立させられてるのがすごいよ、普通成立しないよ、なにこれってなっちゃうよ、でも成立してる。成河さんがメルマガで言ってたのはこういうことだったのかもな。
非人に寺の使いが百両持ってきた時の箱がAmazonだった。
発端の清玄と白菊を探すそれぞれの捜索隊が少し離れた場所からぽつりぽつりと声をかけあうシーン、なんだかすごく異様だった。普通に芝居したら1分かからないようなやり取りなのに一言ごとに奇妙な間があって、それが彼らの戸惑いを表してるようでもあったしなんだかぐにゃりと捻れた回想のようにも思えた。清玄と白菊の会話も一本調子で、それなのに不思議と惹き付けられる。ゆっくり、ゆっくりと崖へ向かっていく2人のじりじりとした足取りやしっかりと互いを掴んだ手から緊迫感が伝わる。そこから白菊だけ落ちた時の「あ、」という清玄の間の抜けた声や「南無阿弥陀仏」の白々しさにギャップがあっておもしろい。
権助と桜姫の出会いの場面で、桜姫の「捨てて」「来て」というお嬢様らしい上に立って人に命じることに慣れている言葉遣いが最高に痺れる。腕の刺青もっとよく見たい、歌舞伎のわかりやすい釣鐘と桜じゃないのよ、でも台詞では「釣鐘に桜の入れ黒子」って言ってるからなにか関係している図柄なのだろう思ってるんだけど...半月っぽい形の下にミミズののたくったような線が描かれてて、一体あれはなんなのか。歌舞伎の女性は積極的、というのを権助に大人しく組み敷かれるだけじゃなく自分から着物を脱いで乗っかっていくという演出で表現していた。かっこええ。
歌舞伎版桜姫を前半しか観ていないもので後半の物語は完全初見だったのだけど、あんな可哀想な男女が出てくるなんて聞いてない!小雛ちゃん可哀想すぎるよ!お父さんも途中で気付いたんだな、身代わりだって、だから娘の首を斬った。台詞にもあったけど歌舞伎ヤバいよね(笑)ヤバいとは言ってなかったけど、こういう身代わりで首斬るとかえげつないことよくやるよな歌舞伎って、みたいな台詞だった。三人吉三もだけど、ほんと身代わりの2人はいい迷惑だよね。なんなら三人吉三の2人は畜生道に堕ちたのを兄が救ったという見方もできるけど、桜姫の2人はなにもしてないのに難癖つけられて殺されて本当に可哀想。しかもこの身代わりは失敗するし。奴ここで死んでたのか...残念だ。
青トカゲの毒を飲ませる、ていうのはどっかで見たことある気がする。別の芝居にも出てくるのかな?
可哀想な人ではあるんだけど、清玄煩悩まみれであんまり同情できないんだよなぁ(笑)やらせてくれ、じゃなきゃ死んでくれってほんとどうかしてるのよ。
桜姫の子供が巡り巡って結局桜姫のところに帰ってきちゃうのも歌舞伎だなー!って感じした。お十さん、我が子を失った悲しみから引き取ったはいいけど、生活苦なのかなぁ、捨てるとか酷い。
寄り合いに行きたがらない権助「今日はなだ万の弁当が出るぞ」と言われてすっ飛んで行った🍱
最後の最後、きっとあのラストシーンは歌舞伎版とは違うんだと思う。歌舞伎っぽくなかったから。権助と我が子を家族の御家の敵として殺すところまでは原作通りなのかなって思ったけど...殺したあとに家宝の都鳥をぽいっと投げ捨てる(きれいにプールの中へ落ちてった)のは現代的だなと感じたから。歌舞伎なら間違いなく家宝は家に持ち帰るはずだし、身を隠してる弟と再会も有り得る。投げ捨てた瞬間の桜姫の吹っ切れた表情と舞台奥から投げられた「ハレルヤ!」で不思議とスッキリした気持ちになった。開放感。
ロミオ&ジュリエット

ロミオ&ジュリエット

ロミオ&ジュリエット製作委員会

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2023/01/28 (土) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2023/01/28 (土) 18:00

上手側がごそっと見えない見切れ席。A席だから仕方ない。舞台ツラセンターあたりから舞台奥袖幕あたりまで斜めに見切れ。

初日ソワレ。配信のためカメラ入ってる。
客入れの音楽は無し、自然音?に混ざって戦闘機っぽい音がしている気がする。 子供たちの声と教会の鐘。

ネタバレBOX

一幕。
舞台の3分の1しか観えていないのでほとんどの芝居を耳だけで。オープニングの映像を使った人物紹介良き。初めての人にも両家それぞれの関係がわかりやすそう。
大公とばあやが出てくると安心して観れる、台詞もかなりしっかり聞こえる。ほかのキャストは台詞が少し速いように思う。速いだけなら気にならないけど滑舌が...台詞の中でボリュームに波があるから何言ってるかわからないところ沢山。
一幕は決闘とその判決まで。
決闘シーンは緊迫感があるように感じた、ほとんど見えてないけど。凌雅くんの一番の見せ場はたぶんこの辺り。中尾くんも台詞聞きやすい。ハキハキしてるし声も大きい。声量が安定してる。
肝心のロミオは真っ直ぐな芝居が素敵なんだけど、芝居の経験値がまだまだなのか台詞のボリュームにムラがあってスピードも速くて聞き取りにくい。魅せ方はさすがで、どうすればカッコイイのか、どうすれば色っぽいのかってのは心得てる感じがする。

二幕。ジュリエットの両親がキャラクターとして嫌な奴すぎる。娘の気持ちを確かめないまま結婚を決めた父親に何か言いたげな顔をしてた母親も、家父長制なのか恋人がロミオだったからなのか酷いことを言うし、極めつけはばあや。何があってもジュリエットの味方でいてくれると思ってたのにあんな裏切り(本人はジュリエットの為を思ってる)そりゃジュリエットが思い詰めるのも無理ない。
結婚初夜、布でベッドのシーツを連想させてるんだろうなー綺麗だなーと思って見てた(なお人物は全く見えていない)
ジュリエットの気持ちを確認しないままの婚約に一瞬戸惑った表情を見せたパリス、本当にジュリエットを愛しく思ってたんだろうな。でも娘は父親の決めた人と結婚するものだからそのまま飲み込んだ。葬儀の後で霊廟に忍んでいくほど恋をしていた、せめて一晩夫婦として一緒に過ごしたかったんだろうなぁ...息絶える刹那、ジュリエットの傍に寝かせてくれとロミオに頼む声の切ないこと。パリスは完全に巻き込まれ事故。まぁ、ロミオの話を聞かずに最初から喧嘩腰だったのも悪いと思うけど。
とにかく全員人の話を気かなすぎるし突っ走りすぎで誰にも共感できない、いらいらするー(笑)

ロミオに急ぎの手紙を送って、その確認を電話でする演出の矛盾。その電話でロミオのとこにはかけれないの?住所知ってるなら電話番号もわかんだろーよ。
ロミオが毒を飲むところも、ジュリエットが銃で自殺するところも、ずっと下手で静かに眠るパリスを見てた。パリスしか見えなかったもので。

舞台演劇に求めるものが「圧倒的な芝居の熱で思い切りぶん殴ってぐちゃぐちゃにしてほしい」なので、その点を満たしてくれたのが松村さんだけだった。出番がすくねぇのよ...3回?でも存在感がすごい。
あとはそうだなぁ、乳母の野口さんとモンタギューの鈴木さんが好きなお芝居してた。
若手チームも健闘してたけど、どうしても怒鳴り合うシーンが多くて台詞が潰れがちなのと、シェイクスピアの言葉が馴染んでないのか「台詞を言ってる感」が拭いきれない。中尾さんが声量十分台詞明瞭で良かった。テクニカルな部分以外ではそれぞれが役割をしっかりと演じていて良かったと思う。マキューシオってあんな危うい感じの子なんだ。夢を語るシーンといい決闘のシーンといい、彼の中の闇は一体なんなんだろう。ベンヴォーリオは友達思いの普通の子って印象。普通の良い子すぎてモブにまぎれちゃわないか心配になるくらい。

長谷川くんファンの感想は「たくさんの台詞を覚えられてすごい」とか「ロミオだった」とかばっかりなので、主役としてそれは当たり前だしぶっちゃけ台詞を覚えることは基本で特別なことではないので褒めるところじゃないのよ、という気持ち。でも、そんな感想が多くなるくらい芝居経験が少ないってことなんだろうな。ほぼゼロスタートでロミオを演じてるとしたら、とても素敵なロミオだったと思う。舞台上にすっと立ってるだけで、視線を引き寄せる引力がある。真っ直ぐで等身大のロミオ。
ミュージカル「進撃の巨人」

ミュージカル「進撃の巨人」

「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会

⽇本⻘年館ホール(東京都)

2023/01/14 (土) ~ 2023/01/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/01/23 (月) 18:00

初めての青年館ホール。
1階後方列だったけど前の人の頭が邪魔になることなく観やすい、近い、良い。

開演前に巨人の足音が聞こえてるのドキドキする。何分前って決まってるんだろうなぁ。開演直前のひときわデカイ地響き、興奮した。隣のお姉さんは本気でビクゥッてなってた。

ネタバレBOX

幕開けの奇行種の群れ、どんな気持ちで観てたらいいんだって最初思ったけどすぐ慣れた。だってレベルが高い。1人リアル奇行種な動きしてる人いた。

アニメは履修してるけど、ほぼリアタイで見てたからかなり前。それでも「ここは外せない」ってシーンの詰め合わせだったから懐かしさと舞台ならではの観せ方で涙腺緩みっぱなしほっぺたガビガビ惹き付けられたぁ。

役柄的にしかたないんだけど、唐橋さんの出番が少ない。お父さんと神父様やってた。足りない、もっとくれ。

アンサンブルが魅せるシーンも多いし歌での掛け合いもあってダンスで表現された“通過儀礼”のシーンとても良かった。ウォールマリア陥落の場面で人々が潰され喰われていくのをあえて静かな曲と美しい旋律、美しい歌で表現するのがもう…なんか…しんどかった。
っていうかアンサンブルのレベルが高すぎる。し、アンサンブルの活躍がすごい。もちろんメインキャストの皆さんもすごいんだけど、歌って踊って走り回って合間で着替えてって…アンサンブルすごい。

メインキャストの皆様の再現度と解像度がえげつない。松田凌はやっぱすげぇや。語尾のちょっとした癖みたいなところがものすごくアニメのリヴァイだった。立体機動使わない方が松田リヴァイは人間離れした動きができるけど、ぐるんぐるん動く映像に合わせて飛ぶ姿、かっこよかった。ミカサもそう。一声発した瞬間からミカサ以外の何者でもなかったし、ガス切れで落ちて満を持して歌うのズルい。それまではエレンとアルミンや仲間が歌ってるのを見守ったり外から眺めてるけど、エレンが死んだと聞かされて冷静さを欠いたミカサの心が初めて激しく揺れているのを歌うことで表現してるのかなーって思った。

ダンスがすごいことだけ知っていた福澤くん。全員レベル高いのに、その中にあってもレベチな動きしてた。訓練兵卒業の宴会は完全にLIVE。その中にまじるサシャがキレッキレなのよ。かっこいいなぁ、サシャ。じゃがいものくだり、変に笑いを狙わずめちゃくちゃ真剣にやり取りしてるのが可笑しい。とてもメリハリのあるお芝居をされてたなー。お名前だけは見かけたことある気がする。星波さん。

舞台はマンパワーなのが好きだから、超大型巨人も鋼鉄の巨人もエレンの巨人もアンサンブルが操ってたの最高に興奮した。
スクリーンの映像とタイミングを合わせて戦うのも絶対大変だよ。映像のタイミングをある程度調節できるのか、完全に映像合わせで動いてるのか気になる。打撃エフェクトが別なんだとしてもめちゃくちゃ稽古したことは想像に難くない。

ラストの全員ダンス、リヴァイ兵長がリヴァイ兵長として踊ってて、そういうの大好きだから滾った。役のまま踊れる役者、最高。
新春浅草歌舞伎

新春浅草歌舞伎

松竹

浅草公会堂(東京都)

2023/01/02 (月) ~ 2023/01/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/10 (火) 15:00

「吃又」
吉右衛門さんの芸を引き継いで、歌昇種之助兄弟の又平夫婦。歌昇さんの台詞や表情に吉右衛門さんを感じる。芸は生きている。
種之助くんの女房が絵を見つけた所、歌舞伎座で観た勘九郎猿之助夫婦の時よりあっさりめに感じた。お家の違い?
死ぬと決めて絵を描ききった又平の魂が抜けてしまった感じ、ゾクゾクするし、そんな亭主を支えて「よう描けました。御苦労でござんした」と声をかけ続ける女房の様子や、キツく筆を握りしめた指を1本ずつ外してあげて、その手をさすりながら泣く様子は胸が締め付けられる。種之助くんの控えめなすすり泣き、良い。
苗字が許されてからのハッピーな空気が前半と打って変わって晴れやかな気持ちにさせてくれる。
松也さんおいしいお役でさすがの存在感。下半身の安定感。莟玉くんも良かったなぁ。前髪の美少年、しっかりとした芯があって又平に対しても同門の兄弟弟子としての思いを感じる。
「連獅子」
微笑みを浮かべながらの子獅子なんて初めて見た!動きのひとつひとつが綺麗なのと、親子で動きのシンクロ率が高くて、お互いがお互いに合わせてるのが見てて気持ちいい。音のとり方も似てるのかも。
毛の回しかたは2人ともイマイチかなぁ…なんか物足りなくて、いまいち気持ちが入らなくて拍手は出来なかった。ガンガン回せばいいってもんでもないし、回数やスピードより大きく美しく回してほしい。

新春浅草歌舞伎

新春浅草歌舞伎

松竹

浅草公会堂(東京都)

2023/01/02 (月) ~ 2023/01/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/01/10 (火) 11:00

「双蝶々曲輪日記 引窓」
橋之助くんの濡髪は大きさはまだまだ感じないけれど、一生懸命に全力なのは伝わる。そのまま真っ直ぐつとめてほしい。はーちゃんがめちゃくちゃ良かったんだけど、なんだ、どうしたんだ、これが成長ってやつなのか?仕事用のキリッとした所と、本来の性分であろうほんわかした優しい感じ、その演じ分けがとても良かった。客席からの拍手も「お決まりだから」じゃなく自然とおこっていように感じた。
「男女道成寺」
この演目は引きで見るのが正解だなって思う。白拍子姿のみっくん、独特の美しさ。雰囲気がある。もっとあの姿で踊ってるのが見たかったなあ。
新悟ちゃんのスッとした清廉な白拍子姿。見た目より激しく息もきれるだろうに、それを感じさせない涼やかな表情。すらりと伸びた細く長い指がひらひらと柔らかくひるがえる様が美しすぎる。
常盤津や長唄お囃子の皆様と役者の作り出す空気感、1番盛り上がったところで幕が閉まる所が憎いよなぁ。

日本演劇総理大臣賞

日本演劇総理大臣賞

ロデオ★座★ヘヴン

駅前劇場(東京都)

2023/12/27 (水) ~ 2023/12/30 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

総理大臣名義の演劇賞というタイトルから勝手に演劇人の自虐、皮肉を読み取り、作者柳井氏の新境地?とシニカル系コメディを想像して「余話」を観に行った所が、もろシリアス劇。一体どんな本編が?と前振りにまんまと乗せられ足を運んだ。
とある劇団の芝居の稽古場面と、日本演劇総理大臣賞の選考会議の場面が交互に描かれる(最後にはその関連が分る)。
稽古場では演出家の病欠のため作家(澤口渉)が駆り出され、三人芝居の場面稽古を進めているが、「演出はこうは言わなかった」「じゃ俺に聞くな」等のやり取り。そこへ大きな咳払いをし口を挟んでくる者がある。刑事である。「色恋の気配は好ましくない」等と難癖をつけ、「検閲で引っ掛かる」「検閲で言われたら直す」「私が検閲官に申し入れても良いのだぞ」が作家と刑事の毎度のやり取りとなる。俳優の一人桑山(鶴町憲)は「聞く必要はない」と強気だが、劇団主宰で女優の雪子(百花亜希)は制止する。
一方選考会議は開始早々、「12人の怒れる・・」のフォーマットが現われる。選考会議の趣旨にそぐわぬ進行だが「12人」が下敷きだと分ると飲み込める、ただしパロディ、逆転劇という娯楽性に引っ張られるリスク。だが選考に残った二作品の内容が観客に推測でき、討議の帰趨(勝ち負け)より「内容」へ集中できる具合にはなっていた。

選考委員の約全員が推したのが「紙吹雪」、一人だけが「残り火」を推した。
「紙吹雪」を推した委員の面々とは、まず委員長である日本演劇界の重鎮・岸(榊陽介/当人至って真面目な性質)、彼を「先生」と持ち上げ高慢に振舞う若手評論家・諸星(伊藤俊輔/「12人」では最後まで容疑者を犯人と決めつけている役に相当)、女流劇作家小谷栢楊(ハクヨウ/島口綾/場違いな所に来たと及び腰で付和雷同)、今一人の女性劇作家・宮古(小口ふみか/堂々と自説を語り自立心が強い)、演劇雑誌発行人をする古橋(高野絹也/かつてプロレタリア演劇に傾倒した)。
一人「残り火」を推したのが、演出家・羽田(ハタ/音野暁)。評論家諸星は彼を詰って「残り火のどこが良いのだ」と迫るが、議事によりまずは「紙吹雪」を推す弁を聴く事となる。
この話の筋は聴いていると岸田國士作「紙風船」そのまま。だが最後は隣家の庭から紙風船でなく、紙吹雪が飛んで来て、夫婦の倦怠に嫌気がさした妻が家を出て行く、となる。
一方の「残り火」は、実は劇団が稽古をしているその作品だ。選考会議で「紙吹雪」の優れた点が挙げられて行く中、「残り火」にもそれがある事、さらに時代と切り結ぶ批評性において「残り火」が先んじているとの評価に辿り着くのだが、稽古シーンで芝居が掘り下げられて行く(そこに刑事が持ち込む難題も絡んでいる)プロセスと、選考会での議論がシンクロして行くのが終盤である。
劇団のシーンの進行の過程では、演劇人の一斉検挙といった事件もある。そして最も割かれる議論は、プロレタリア演劇への弾圧から「転向」した彼らが再び公権力に屈する屈辱に抗おうとする中、「制約を飲んででも優れた芝居を世に出すこと」が出来るのか、であり、その可能性を信じ、見出す姿勢へと劇団は変化を刻む。女座長は刑事と二人になった時、検閲に掛かるだろう箇所を事細かに指摘し続けてくれた労に感謝を述べるシーンがある。刑事の顔に表情が微かによぎる。劇の終盤で作家が召集令状を受け、三日後の出発だと団員に告げた時、この刑事が頭を垂れている(台詞はなく、見過ごされて不思議でない)。
作家は戦死し、「残り火」は土壇場で上演不許可となる。
選考会で「残り火」を推した演出家とは劇団での演出であり、時間的には選考会が暫く後の事、作家の弔い合戦であったと分る。選考会議では最後の一人(頑なな評論家)が私的事情(妻との離婚)を暴露され票を変える所で結論が出るが、同席した役人である嵯峨野は平然と「総理は「紙吹雪」を殊のほか気に入られている」と最初に言ったはずです」と、暗にそれに沿って会議を進めるべきであったと岸を難じ、相応しい議事を設えて提出するように、と言いおいて席を立つ。

日本演劇総理大臣賞、という賞が実際にあったのかも?と観ながら思ってしまったが、それは無いようである。
本作では選考会議が「評価」を為さねばならない作品が二つ登場するが、史実に基づかないフィクションにおいて難しいのはこういう所で、「選考に残る作品」は実際に戯曲の中には具体的な形で存在させる事ができない(劇作家の中である程度の想定はできるだろうが)。選考会議での議論の描出に厳密なリアリティを持たせる事はその意味で困難。作者が念頭におく「演劇作品の評価軸」を語る材料として辛うじて存在し得るにすぎない。従って、結論ありきの議論となり、穴は沢山ある。
が、その疵を凌駕するものがある。
「残り火」の主人公の女流歌人は、著名な歌人の有力な弟子(既に売れてもいる)でありながら袂を分かたざるを得ず、歌人の道を諦めて山奥にいる従兄の下に身を寄せていたが、その彼女の下に弟弟子に当たる青年が訪ねて来る。姉弟子の変わらぬ意志の前に身を引くしかない青年は、去り際に、自分が作った句の評価を求める。酷評を受けるが、ふと彼女はこう直せばいい、と直しを提案する。一つの印象的な句が出来上がる。恐らくは彼女を慕っていたのだろう弟弟子を見送る、姉弟子の中に、新たな生の活力が宿る。(そんな感じのラスト)
師匠に破門された身で句作を、それを世に問う道を諦めた彼女は、師匠に従わなかった事を以て意志を貫徹した自立の人であった、が、弟子は彼女に俳句を作ってほしいと懇願しに山奥を訪ね、彼女が頑なに閉じていた句作への扉を静かに開く。
選考会では、「紙吹雪」が持つ現代性、批評性、観客との対話といった評価軸が、「残り火」にもある読みへと導かれ、表現を巡る息苦しい世相の中におかれた演劇の現在に、「残り火」の女歌人は重ね合わせる事ができる、優れて現代的な作品、という理想的な結末に至るのだが、時代の大きな力の前では雑草の茎を折るようにあえなく潰される。架空の演劇賞選考会議であるが、仮にそうしたものがあったとして、そうした運命にあるだろう。2020年からのコロナ禍の下で味わった演劇製作者の無力感が、反映しているように私には思えたが、日本社会が芸術を不要不急とした事の疵は深い。コロナ下の中でも棲息できた芸術文化は勿論あるが、私という人間にとっては(芸術が不要不急ではない人間にとっては)大きなダメージだった。芸術文化「以外」の人間の営みの「尊さ」を思い出させる場面が、果してあったろうか。むしろ逆ではなかった。
時代が窮迫の状況を迎えたとしても、この芝居の演劇人たちのように劇作りにこだわり、芝居を作り続けようとする営みを、今の演劇人たちも続けようとするのか・・という問いを私は読み取る。同時に、彼らの営みを私たちは応援するのか、その勇気を持ち続けられるのか・・も問うている。

長い正月

長い正月

20歳の国

こまばアゴラ劇場(東京都)

2023/12/29 (金) ~ 2024/01/08 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/31 (日) 13:00

約100年という時間を2家族の大晦日という「超」定点観測で表現。見事。数年前までは中途半端にヤンキーな高校生の熱い姿を描く群像劇が得意な劇団でしたが、主宰の竜司さん、いい具合にオジサンになってきたなあ。今後、どういう作品を作っていくのか、なおさら楽しみになりました。

大晦日の昼公演でやったステージ上ツアーも楽しかったです。照明って熱いんですね。初体験でした。

天使の群像

天使の群像

鵺的(ぬえてき)

ザ・スズナリ(東京都)

2023/12/21 (木) ~ 2023/12/29 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/26 (火)

まず劇場に入り舞台美術に目が釘付け!いったい何が始まるのだろうか!??と。
そして始まると…。そのための客席前方の空きだったのか!
後方で前の席に大きな方が、なので三分の一ほど視界が削られてしまったけれど、舞台に鏡が使われていて、それに映る世界もまた良かった。
現実味があるだけに恐ろしく、今後どうしてゆけば良いのかも託される終わり方で、とても楽しめました。

仮名手本忠臣蔵

仮名手本忠臣蔵

花組芝居

小劇場B1(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/24 (土) 13:30

こんなスタイリッシュな忠臣蔵があるのか。

黒一色の素舞台で揃いの紋付袴の男たちが演じる悲劇はときに重厚、ときに軽やかにテンポよく進む。

古めかしい台詞に血肉を通わせる抑揚や表情。紅ひとつささずに義士と女房を演じ分ける演技力。

義と人情が今もこんなにカッコいい。

当然の結末

当然の結末

シベリア少女鉄道

俳優座劇場(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/17 (土) 18:30

2022年の『アイ・アム・ア・ストーリー』でこの団体の公演を初めて観て、台詞と舞台上で繰り広げられる物語の齟齬に強烈なインパクトを受けた。
で、気になってこの作品も予約した。
2度目となると多少は作風への理解も進み、なるほど!と思いつつ、やはり笑ってしまう。よくこんなことを考えつくものだ。

『SUMMER FREESIA EXPRESSION』

『SUMMER FREESIA EXPRESSION』

パピプロデュース

萬劇場(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/17 (土) 13:00

魅力的な舞台だった。青春群像劇に止まらない戯曲の仕掛けも高校時代と18年後をつなぐ演出も物語を活かす12人の役柄とキャストそれぞれの持ち味も。
観ながら、笑ったり手拍子したり時に涙をこぼしたり。
言葉にならない思いもしみる。

死んだら流石に愛しく思え

死んだら流石に愛しく思え

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2023/05/26 (金) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/03 (土) 18:00

MCRの作品はいつも、好きか嫌いかの二元論では語り切れない。やるせない饒舌さとヒリヒリするような切実さ、そして痛みにも似た面白さがクセになりそうで、返って観に行くのをためらってしまう。それでも今日この舞台を観てきてよかった。

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