禺伝 矛盾源氏物語 公演情報 舞台『刀剣乱舞』製作委員会「禺伝 矛盾源氏物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/02/09 (木) 14:00

    舞台上から舞台下まで垂れ下がった源氏物語が書かれているであろう巻物。いつもの前口上はない、この物語はあの本丸の物語では無いから。1人ずつの名乗りも、静かで、なにか違和感がある。ほんの少しのひっかかり。
    .5俳優と同じくらい、宝塚の役者は“原作物”を再現するのが上手い。立ち姿がまったくもってそのもの。
    最初は声を聞き分けるのが難しく誰が喋ってるかわからなくなったけど、そのうち慣れた。
    光源氏が刀剣男士以上にイケメン。
    姫鶴の気怠さとめちゃくちゃヤンキーなところと「かぁいいね」にやられまくり。南泉がとても可愛い。光源氏の一言一言にツッコミをいれるところ最高。
    OPで扇を持ってくれてありがとう。ヅカOGが男士になると決まった時から期待していた。やっぱり日舞基礎のある人達が持つ扇は美しい。ふんわりやわらかく手におさまった扇がひらひらとしなやかにひらめく。作品のための稽古や練習だとここまでは使いこなせない。これが、観たかったんだ。そして、揃うことに慣れた人達だから個性も感じるのに角度やスピードに乱れがない。もっとキャラクター固有のものが見えてもいいけど、揃っているダンスは単純に美しいし圧巻。あの宝塚に血のにじむような努力をして入った人達だから、踊るという点において当たり前に段違い。歌舞伎同様、どんな役を演じても役者としての品の良さが見えなきゃいけない世界だと思うので、刀剣の付喪神を演じるというのはピッタリなんだと思う。

    ネタバレBOX

    一幕後半、歌仙の口から「元主、細川ガラシャの物語」、大倶利伽羅から「徳川家の物語」という台詞が飛び出て、驚いたというか衝撃だった。同時に、だから、七海ひろきさんなんだと納得出来た。綺伝でガラシャを演じた七海さんが、細川ガラシャの刀という物語を付与された歌仙兼定を演じる。スクリーンに映るガラシャと同じ顔をした歌仙兼定。綺伝の後だからいきてくる設定。政府によって本来持つはずのない逸話を付与されて顕現した試験本丸の刀たち。他の男士達とは違う物語を持つ彼ら。その違和感。末満、とんでもねぇ。そして「政府による試験本丸」という存在。その実験による目的の先には三日月宗近がいる(完璧にひろちかシルエット再現されてた)一文字の刀たちにも同じように逸話が付与されていて、聞きなれた「嗅ぎなれた匂い、血の匂い、戦場の匂い」をちょもさんが言い出した時は驚いた。
    敵が二転三転するの、マジ末満。
    紫式部の生きた世界で読者が暴走して源氏物語の世界が実体化した、だと思わせておいて、実はその紫式部の生きる世界すらも物語の一部、源氏供養だったという驚きの設定。
    光源氏として死にたかった彼を殺せない物語の女性たち。若紫が無垢な心で殺そうとするの、ハラハラした。本当にこんな子供に殺させるのか、そこまで人の心がない本を書いたのか末満!と思っていたら歌仙くんが代わりに殺してくれました。ありがとう歌仙兼定。雅じゃないもんね。
    死んだ彼の亡骸は持ち去られてしまったけれど…これも今後の展開に繋がっていくのだろうか。この試験本丸もそれなりに普通の本丸として稼働しているようで演練とかするんだね。その演練でステ本丸と1度手合わせして、その時にステ山姥切に出会っている(このシルエットも完璧に荒牧国広だった)己の物語とは別の強い物語を持っているという…それは、極めてるのとは違うのだろうか…あの本丸において例えば円環を巡る三日月宗近を斬った物語なのか、彌助と2度まみえた物語なのか、ステ本丸そのものの物語なのか。次回の山姥切単騎出陣に繋がる匂わせ。
    全員女性キャスト、故に、殺陣の迫力はやはり普段の刀ステと比べれば劣る…が、かつて観たヅカの殺陣が重心高くて苦手だなーって感じた私でも「こんだけ戦えれば上上吉」という感想。特に、七海さん。綺伝の時はまだ重心が高かったのに、どうですか、歌仙を演じるにあたってぐっと低くなったと思う。他キャスト同様、振り回す感じはまだあるけど、隊長として物語の中心として練度の高さを感じた。
    物語を破綻させるために主要人物を殺す、というものすごく単純で力技な作戦を実行させる所が歌仙だなぁという感じ。あ、でもこの歌仙は細川忠興からガラシャに贈られた刀…でも三十六歌仙のお手打ち設定はさすがに残ってるから、やっぱ変わらずゴリラなのか。
    歌仙と大倶利伽羅の回想で「田舎刀」みたいな雅じゃない的なアレがあったからもっと険悪かと思ったけど、付与された物語が違うから伊達の物語を持たない大倶利伽羅は田舎の刀ではないんだな。だから歌仙も必要以上につっかからない。
    自分の物語を思い出すところが少々唐突に感じたけど、でも、大倶利伽羅の口から伊達政宗の名前が出てきた時と、なにより歌仙兼定の「三斎様」にものすごく感動したのよ。ガラシャの物だと思っていた歌仙の足元には綺伝の時にも使われた桔梗の花の照明が当たっていて、細川忠興の物であった本来の物語を思い出すとその花のまわりに小さな丸い照明が集まって細川家の紋のようになる。にくい、にくすぎる演出。
    所詮物語は嘘、だから誰の心にも響くことは無い、みたいな台詞が出てくるけど、物語に関してのマイナスな言葉を御前がことごとく否定して「たとえ嘘の物語でも、その死に心を寄せる者がいれば、その死は誠になる」みたいなことを言ってくれて、なんかこう、はっきりとした史実をもたない物語によって生み出された御前が、演劇や創作を否定するような台詞を全て「そんなことはないさ」と言ってくれるのが嬉しかった。というか、御前の前でそんなこと言わんでくれ、頼むから。
    御前に「誉をあげろ!」て言われるとめちゃくちゃ滾るなぁ。
    歴史上人物、というか、今回は物語上人物か、の皆様もひとりひとりとても輝いていた。本編と行間、物語中の役柄と史実での役柄、その演じ分けがわかりやすく、素敵だった。お声が皆さん素敵で、やわらかく品があって優しくて、耳が幸せ。でもしっかりした強い声も出せる。
    歌仙が光源氏の設定をうけて物語に飲み込まれていくところ、床に広げられた布をぐるぐると巻き付ける演出上から観ててとても良かった。良い使い方。素敵。
    物語世界の外側からなんとかしようとする南泉、え、壁のマイムうま…‎( ꒪⌓꒪)
    光源氏の設定をうけて完全キャラ崩壊おこした大倶利伽羅、伊達双騎や三百年では大倶利伽羅のままだったけど設定に飲み込まれてる大倶利伽羅は完全に光源氏を演じさせられてるから絶対言わない台詞も言うし馴れ合う(笑)なんとも言えない気持ちで見てたけど、行間で貴族なのに刀抜いて斬りかかる「だいぶ大倶利伽羅の残った光る君」は笑ったわ。血の気の多い光る君。

    0

    2024/01/02 17:08

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大