
カモメに飛ぶことを教えた猫
劇団四季
自由劇場(東京都)
2025/07/26 (土) ~ 2025/08/29 (金)公演終了

WAR BRIDE -アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン-
TBS/読売新聞社/TBSラジオ
よみうり大手町ホール(東京都)
2025/08/05 (火) ~ 2025/08/27 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チョコレートケーキの商業演劇登場である。副題に「アメリカと日本の架け橋桂子・ハーン」とあるから、主宰のマスメディアらしい終戦・実録ものの夏興行である。チョコレートケーキの作・演出が大劇場興行でどう戦うかも見どころである。
題材はチョコッレートケーキでは手慣れた戦時国境ものである。既にこの劇団は初期に「その頬熱二焼かれ」という原爆被爆少女たちの米国での整形を扱った再演を重ねた注目作作品がある。大手町の読売新聞のホールでの公演は、いつもの下北沢の百人規模の作品とは違って当然である。もともとはTBSの実録番組だが、今回は国際協調・和解に絞っていて、話は学校公演にありがちのウンザリするお説教に終わりがちだが、さすが、チョコレートケーキ、その中で人間和解への道を見せようと大健闘である。内容は「次世代に届けたい、戦争を乗り越えた真実の姿」という1行の表向きのキャプションを出ることはないが、そのなかで、まず、いいところ。
こういう話では、責めても意味のない敵役が出てくるものだが、そういう安い敵役が1幕はじめに出る主人公の同僚兵士以外、出てこない。それなのに、類型的でない戦後の空気を今の時代に通じるように作っている。ことに主人公の擁護派の父母の置き方が、この時代にも確かにいた戦中良識派の実感をきちんと表現していて上手い。テレビの朝ドラになりかねないところを救っている。アメリカの地方の差別は、行ってみれば呆れるほどのものだが、そこは普遍化しにくいので、苦労している。ここは少しわかりにくいが、そこはやむを得ない。現実は姉妹都市などになってみても解決しない、問題の核心である。
ということで、大衆劇という条件はあるにせよ大劇場、ノーセット階段風裸舞台で場内泣かせる技はたいしたものである。(終戦直後に見せられたアメリカ映画の味がする。観客が安心して泣ける)。
チョコレートらしからぬと感じたのは。第1幕(75分)はいいとしても(それでも5分は長い)。後半の90分は長過ぎる。2幕後半は落とし所を探っているようでもあり、話が行きつ戻りつしている。枠の現代記者たちはもう少し使い方があった(現代の視点)のではないだろうかと思う。ここは、商業演劇なのだから、そういうのは諦めて菊田一夫ばりに直球泣かせで行ったほうが良かったかとも思う。そこで照れても仕方がない。俳優、好演。ほぼ満席。

七つ数えて
AOI Pro.
新宿シアタートップス(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
10年とちょっと先の歌舞伎町が舞台。現状より悪化した状態は、妙にリアルに感じます。あまり救いはないのですね。いろいろ考えさせられます。

32軍壕へ メンソーレ
沖縄俳優部
劇場MOMO(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/10 (日)公演終了

寺山修司生誕90年記念認定事業「盲人書簡◉上海篇」
PSYCHOSIS
ザムザ阿佐谷(東京都)
2025/07/24 (木) ~ 2025/07/30 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/28 (月) 14:00
寺山修司による江戸川乱歩「少年探偵団」の二次創作を軸とした奇妙なキャラ大行進な幻想譚。半世紀も前のクラシカルな作品をイマの演出でという温故知新的コンセプトは庵野秀明・樋口真嗣による一連の「シン・○○」に通じ「シン・アングラ」なのではあるまいか?(真顔)
で、改装前の Gallery LE DECO 4階を想起させるイントレの装置や、開演前の観客誘導などこの会場を知り尽くした使い方は特筆もの。
なお、天井桟敷による初演(1973年)は暗闇の中で演者が渡したマッチを観客が擦って観る演出だったそうだが、かつてサブテレニアンで観たアムリタ「死に至る眼、光る(2015年)」の「観客がペンライトで照らす」演出は本作を知ってのことだったのか?という疑問を抱いた。
あと、別役実「マッチ売りの少女(1966年)」との関係とか。

発表せよ!大本営!
アガリスクエンターテイメント
シアターサンモール(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「大本営発表」の粉飾の始まりはどのようなものであったのか。戦果と発表内容は史実に基づき、そのギャップが生まれた過程をagarisk流に推理(?)したコメディである。快調なテンポでいつものドタバタが疾走して行く。
この芝居にはちょい役というものがない。いつものメンバーとゲストたち、誰もが精一杯自己主張をしている。カーテンコールで並んだ顔を見るとき全員の演技が目に浮かぶ。創る人も演じる人も本当にうまいものだと感心する。
ところで甘味処のエピソードは私の頭の中ではどうにも納まり具合が悪い。単なる刺身のツマなのかそれとも深い意味があるのか悩み中だ。
今回の劇場はいつもより大き目で集客に苦労している。まだまだ空席があるので皆さんどうぞとのこと。

帰還の虹
タカハ劇団
座・高円寺1(東京都)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
以前一度だけ観たタカハ劇団はやはり「戦争」に関わる題材を扱ったタイムリープ物であったが、リアルに難あり(タイムリープそれ自体よりも人間関係や行動の動機等に)。ストレスな観劇であったが、本作では人物の口から自然に出てくる台詞によりリアルが積み上がっていた。
舞台は都心から離れた田畑の広がる郊外に移り住んだ画家・藤澤の家屋。正に戦時中の「当局」を意識する画家たちの姿や、夫を召集された女とその弟ら地元の者たちを通して、時局の肌感覚にある程度迫れており、物語世界に入りドラマを堪能する事ができた。主役の藤澤はフランス帰りの著名画家で戦争画の製作に勤しみ、妻キヨ子のヒスにも悩まされている。藤田嗣治がモデルに違いないが、二人の画家仲間、その一人が連れて来る見込みのある弟子(乞われて書生として住まわせる事になる)、時折アトリエを訪れる軍人により、架空の物語が進行、兵役を逃れている高等遊民の階層特有の空気感がある一方、地元の女性が女中に雇われ(夫は出征中)、その弟も力仕事で出入りし庶民の空気も行き交っている。途中若者同士(女中の弟と書生)の会話がまるで現代日本の都会の一角で(否舞台の上で)聴けそうな会話で、笑わせ所を作っていたが、この部分はじっと過ぎ去るのを耐えた。
幾つかの軸がある。戦争協力をしてでも画家は絵を描くべきと主張する藤澤と、それに耐えられず離脱していく画家内山(吉田亮)、むしろ軍人に取り入るのに汲々とする画家熊本(津村知与支)、その狭間でもう一人の主人公である書生貞本(田中亨)は揺らぐ。彼を揺るがすもう一人が藤澤の妻キヨ子であるが、彼女は「自分だけを書いていたパリ時代の彼」を最も彼らしい姿とし、戦争画を憎んでいる。もう一つは弟孝則に赤紙が来た事で爆発する女中ちづの訴え・・彼は一度出征して手を負傷して銃の引き金も引けない。貴方がたは偉い方たちと懇意にされているのでしょう、そうやって兵役を逃れて自適に暮らしているのに、自分らは暮らしもままならず、召集も二度かけられる。どうか行かないで済むように頼んで下さい。ダメなら貴方が息子の代わりに徴兵されて下さい・・!
そして劇の山場を作る軸・・終盤になるにつれ藤澤が不審な挙動を示し、いつも出掛けてばかりいるが、何度かアトリエを訪れたあの軍人とつるんでいるらしいとの噂。彼が作製中の大判のキャンバスは開幕以来、ずっと布が掛けられたままアトリエの隅に置かれているが、ある夜藤澤は書生の貞本にこれを見せる。それは件の軍人がかつて味わった屈辱的で凄惨な敗北に終ったノモンハン事件で観た光景であり、藤澤は秘密裏にこれを描いていた。すなわち「本当の戦争とは何か・・」のテーマ。公式の歴史から排除されたその事実を刻み、残したい願望をその軍人は抑えられないと語る。これは画家が持つ「絵を描く」本質的な欲求に通じてもいる。
このことは現実には、真実を伏せ美談で釣って若者を戦場に駆り出している構図に連結するが、その罪深さについて語るのは軍人ではなく、「赤」との接触をしていた画家・内山。彼は憲兵からの暴行で腫れあがった顔で、熊本に連れられてアトリエへ逃れて来るが、程なく例の軍人が現われ、逃亡は不可能である事、仲間が全て検挙された事でお前を拷問にかける必要が無くなった事が告げられる。教え子(書生の貞本)に最後の言葉を掛けると、彼は炭鉱へと連れ去られる。
終章、赤紙が届いたことを知らせる母から手紙を書生は受け取り、最後の時を与えられる。ようやく彼は(物資不足で絵具がなく暫く描かなかった)油絵を、僅かに残されたその時に描こうとする。師匠藤澤が依頼され描いていた地獄絵図の大キャンバス(舞台上では額縁のみ。中は繰りぬかれている)に、絵ごてを当て、暗転となる。
ストーリー上回収され切れてないものは幾つかあるが、胸に迫る幾つかのシーンの欠片が残る。

りすん 2025 edition
ナビロフト
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
没後一年。KAATで初めて天野天街ワールドが開陳となる。2025年バージョン、と銘打っている事が希望。「劇的」を追求した天野天街と少年王者錧の仕事を、何らかの形で継承し今後も我々の目を喜ばせてくれるのでは・・と。
この舞台に関しては出演者3名と(少年王者錧を念頭に置くと)異色なので同列の比較は意味がないが、なぞった感はなく、「古さ」が組み込まれている世界ゆえか、ここ暫くの間(あと三十年位は?)古くなる事はないだろう「今」躍動する劇世界に魅入った。

帰還の虹
タカハ劇団
座・高円寺1(東京都)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/12 (火) 19:00
戦争画を扱った秀作。重い題材で迫力ある舞台になっていた。(2分押し)113分。
2014年に下北沢駅前劇場で初演された作品の再演で、初演も観てるがよく覚えていなかった。1944年を舞台に藤田嗣治(劇中では藤澤元善・古河耕史)を取り巻く、戦争画に関わる人々のあれこれ。笑いを誘う熊本(津村知与支)という存在はあるものの、題材は重く特に終盤はシリアス。絵画(さらに芸術)と戦争の関わりについては、登場人物それぞれの正しさがあり、どれも頷けるものだし、どれが正しいと言えない面がある。役者陣も素晴らしかったという前提で、高羽の脚本がいい。

おーい、 救けてくれ!
鈴木製作所
雑遊(東京都)
2025/07/30 (水) ~ 2025/08/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
1時間弱の芝居。米国のとある州のとある留置所にぶち込まれた男が、「おーい、救けてくれ」と叫んでいる。夜の明り。彼は今なぜ自分がここにいるのか分からない、といった風にも見えるが、ただ人を呼びたい、あるいは逃げ出す契機を掴もうとしてる・・想定は自由な感じである。どうやら鍵をかけて警官(看守?)は帰宅。誰もいないかと思いきや、予想外にも女の声が、それに答える。壁の向こうにいるのか・・。見えない相手との会話が始まり、窓から漏れる月明かりの下、男は相手をきっと素敵な人だ、と言い、女は恥かしそうに応答する。君を一目見たい、と思いが高ぶる男。でも、と臆する女。その応答が暫く続いた後、通路から本当に女が姿を現わす。
この二人がメイン・キャストで、組み合わせが数組ある。この日は男が川口龍(この名を知っていたので観に行ったというのもある)。途中数人の不良連中が登場するが、配役名としては出ていない。
さて、実は世話係の女が残り仕事で帰りそびれていたのであったが、女の全身姿を見た男は一瞬固まり、言葉を失う。が、すぐさま「素敵だ」と言う。リップサービスなのか本心(実は小太りが好み)なのか不明。話をしようと男は持ちかける。女は次第に男に気を許し、先走って行く(リレー競争で追い抜いて行くあの感じね)。完全に台上に乗り切った女を見て男は一瞬目が淀む。利用してやろうという目だ。
だがその後、男は女に「ここを出て、サンフランシスコへ行こう」と言う。女は今の家庭の状況であれば、未練はない、と思い切る。サンフランシスコへ・・が、二人の合言葉となる。牢屋を出ない事にはどうにもならないのだが、なお男は女にそれを言い含める所にドラマの不思議がある。男は何を目論んでいるのか、あるいは男の中で何が生じているのか・・・。
出奔の準備のため女が一旦帰宅した後、静寂の中に車のタイヤ音が響く。どうやら男はある男の女房を寝取り、夫と悶着の末、相手を伸したため監獄に入れられたらしいと分かる。今日その日のことだ。
その夫婦と仲間らしい男二人がどやどやと、ケリをつけにやって来る。
実は男はその浮気女に迫られたのであり、状況が危ういと悟った女は現場を出て大声を出した、という顛末だったのだが、檻の格子を挟んだ険悪なやり取りの後、夫以外の者が外へ出て、一対一で話す事となる。相手は自分の妻が実はそうした事を悟っている。だが体面上許す事はできない、という。本心を明かす夫に、男は「少し勇気を持てばいい」と相手の良心に訴える。が、形成を変えるに至らず、再びどやどやと入って来た男たちの手で、男は殺される。
虫の息で床に腰かける男のもとへ、女が戻って来る。
男は女に告げる。先に行っててくれ。後から俺も行く。サンフランシスコだ・・。
その後の流れがどうだったか、女の目の前で男が息絶えたのか、女が疑う事なく牢屋を後にした後、また戻って来て気づくのか・・女はその場で佇み、小さく「おーーーい」と言う。
出会って数時間で別れが訪れた男女の物語。恋愛の本質を抉ってもおり、普遍性がある。胸に植え付けられた疼きを撫でつつ、帰路につく。

水星とレトログラード
劇団道学先生
ザ・スズナリ(東京都)
2025/08/02 (土) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
大人の風格?を見せた先般のOFFOFFでの4人芝居から、保坂萌女史の「らしい」着想が出たと思ったのが、「お婆さんとタイムリープ」。自分の口でこれを言ったら「認知症」が連想され、見事な親和性である。SFなのかリアリズムなのか、という二つのシーソーはリアリズムによる解明へと流れる所、不思議寄りの現象やダンスシーン等の舞台効果により五感に働きかけて左右に揺らし、中々の長丁場を乗り切ってフィナーレへ見事に着地させていた。
SFは設定が命、と幾度となく書いたが、本作の弱点は「一人がループしている」事であり、やがてそれは「一人だけループを自覚している」との説明で切り抜けるも、お婆さん(かんのひとみ)はリープのループ(水曜に始まって火曜の夜に終わる)を自覚するがゆえに自分は様々な対応をしており、一日に起きる幾つかの出来事さえ繰り返せばループしている事になっているというどこかいい加減な現象だ(だがいい加減だな、と思わせてもいけない)。そしてお婆さんがそろそろ抜け出したいと考え出す事から、身内のまず孫に「あたしはタイムリープしてる」と告げる。これをきっかけに母の面倒誰が見るか問題、息子家族や娘家族が抱える問題が炙り出され、一方お気楽なお向かいさん(田中真弓)夫婦と、孫の先輩、もう一人の孫娘の親友という存在が第三者として飄々と介入する。そして孫たち若者らがお婆さんをリープからの脱出を自らの使命とし、動き始める。つまり、何度も繰り返された時間(お婆さんは同じ一週間を51回繰り返して来たと言うが、後で分かった事にはその自覚以前から500回も繰り返していた)の、最後の一回となる一週間を描いたお話、という事になる。
(続く)

不可能の限りにおいて
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
Aチーム
世界中の紛争地帯、戦場、難民キャンプ···。ニュース映像で見るそこで医療に従事する人々。国連の難民支援機関のイメージが強かったがもっと民間のNGO団体が多いようだ。リアルタイムで働いている人間の生の声を真空パック。肌感覚でその体験が伝わる。作者はポルトガル人のティアゴ・ロドリゲス、父はジャーナリスト、母は医師。オリジナルでは黒澤明の『羅生門』を皆で鑑賞し、事実というものの多面性を確認した上、役者達と稽古に入ったという。
小林春世さんの挨拶からスタート。彼女と山本圭祐氏の印象が残るプロローグ。
(0)国際赤十字社と国境なき医師団の約30人の職員へのインタビューを再構成。舞台上に集められたメンバーはこれから制作される演劇作品の為に自分達の経験談を語る。「こんなエピソードはどうかしら?」「こういうのじゃ伝わらないわね。」「献身的な英雄なんかじゃあない。ただの仕事だ。」「私、演劇嫌いなのよね。退屈だから!」「録音を止めろ!もうここからは記録するな!」皆が望んでいるような話は出て来ない。出て来るものといえば···。
不可能=法制度(ルール)が機能せず無法状態にある紛争地帯。そこに正義とされるものはない。不条理な暴力への恐怖に怯えながら任務を遂行す。
可能=共有する法律やモラルがあり、安全に安心して生活が営める。論理が通用する。
アルコールを禁止されている地域も多い為、最高の気分転換、最高の娯楽はSEX。SEXをこんなに肯定的に謳歌している共同体だったとは。ウッドストックか!?
オリジナルでは4名の出演者を14名に変えていてそれがかなり功を奏している。話によって皆バラバラに立ち位置を移動し、椅子と譜面台を様々な場所にセットする。視覚的な演出で朗読劇の印象は薄い。『コーラスライン』のオーディション風景みたいに作品をメタ的重層的に見せる工夫。
客層は岡本圭人氏目当てが多かった印象。
破裂した水道管を時間稼ぎに手で押さえる作業。修理業者が来るまでの繋ぎだ。だが修理業者がやって来る保証は何一つない。何という虚しさ。何という無力感。だが目の前の水道管を押さえずにはいられない。
素晴らしい内容。こういう作品をこそもっと演るべき。出来ればニュース映像をたっぷり使用して、作品の抽象性を具象的にアジテートしたい。世界中に聳え立つリアルタイムの現実と私的共同体で鎖国した日本との対比。政治的な発言はスポンサー的にNGの“夢の国”、日本。公的機関がこんな状況だから皆ネットで騙されちまうんだ。ぬるいことやってないでもっとラディカルに演劇を活用してくれ。公安が隠しカメラで来場者の身元をチェックするぐらいに。思想犯演劇をこそ望む。昔はこういう情報だけで重信房子達はパレスチナに渡った。

『残響』
白狐舎、下北澤姉妹社、演劇実験室∴紅王国
シアター711(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/12 (火)公演終了
実演鑑賞
演劇実験室∴紅王国の野中友博が闘病中に温めていた企画を没後に白狐舎の三井快が引き継いでの公演。110分、8月12日までシアター711。
https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/08/post-f4ec6a.html

貴子はそれを愛と呼ぶ
株式会社テッコウショ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
48歳独身女性、堅実ながらどうにもパッとしない現状
どこにでも存在しそうな女性の日常を彼女自身の見識と併せて観進めるカタチになるのだけれど、これが滅茶苦茶面白い!
湧いて出たようなロマンスも大方の検討はついているのに、どうにもならない高揚感をもって見入ってしまう
やっぱり恋愛の威力って凄いね
自分だけでなく会場全体で固唾を飲んでいた様に思う
ヒロインというにはめっちゃ一般人、でもそれが肝になって立派なエンターテイメントになってしまうというのが本当に巧いと思う
イケてる風な元同級生との対比がさり気なく効いているし、職場仲間や家族関連の存在感も間違いなく貢献していて、振り返ればかなりの高等テクニックだったと思うのだけれど、そんな難しい事は抜きにして、ただただ味わい深く面白かったです

貴子はそれを愛と呼ぶ
株式会社テッコウショ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いや~これはめちゃ面白く、切ない話ですね。社会的な問題を多々取り入れて、下ネタも結構あって、笑って、実に考えさせられます。

vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2025/07/25 (金) ~ 2025/08/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
三好十郎『廃墟』。戦後の混沌を描いたはずの芝居なのに、私の心が揺さぶられたのは何故だろう。
明日食べる物もない中、色恋も絡み、家族が「負け戦」をめぐって互いを罵り合う。誰の言葉にも「そうかも」と思ってしまう私は、まるで正しさを見失っていくようだった。
パン泥棒が、疲れ果てた家族と客席に向けて静かに頭を下げる。その姿に怒りも反感も感じない自分はいったい何なのだろう。
三好十郎の芝居は、もっと観念的で、非現実 的な台詞劇だろうと身構えていた。目の前で繰り広げられたのは〈感情のぶつかり合い〉だった。思想を武器に家族とぶつかる姿に、自分がどこかで避けてきた“古い情熱”の膿が引き出されたようで、終演後は付き物が落ちたような気がした。
俳優陣も鮮烈だった。 長男・誠(長谷川景)は、生真面目すぎて怖い。共産党的な理想論が、なぜか目の前の現実よりも切実に感じられた。
次男・欣二(倉貫匡弘)は、舞台でもロビーでも昭和のイケメンそのまま。
せい子(川崎初夏)は、DV男と甲斐性なしの間で揺れる哀しみが胸を打つ。
「理想なんて捨てて生きろ」と言われても、簡単には捨てられない人がいる。
そんな人こそ、いま、時代に一番必要なのかもと思った。
—終演後の私は肺の中のモヤモヤが晴れたようで、「明日からのことを考えよう」と思った。
観に来てよかったと思う。

帰還の虹
タカハ劇団
座・高円寺1(東京都)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
高羽彩の旧作である。最初は旧作とは知らなかったが、10年も前にこれだけのものを書いているのに、去年だかに見たヒトラーの出てくる作品は、まぁもう二度と見たくない作品だった。波があるのは仕方がないが、これは人物設定も、時代設定も面白く出来ていて二時間あまり面白く見られた。
物語は太平洋戦争の末期。芸術家として、徴兵を免れた画家が四人、満州開拓で空き家になった農村の空き家に憲兵大佐の見張りのもと住んでいる この四人の組合わせが、図式的といえばその通りなのだがドラマ設定としては上手い.まずフランス帰りの戦争画の大家。絵に関しては何を書かせても上手い、今は時局便乗。次ぎに共産党崩れ。さらに自らの限界を知っている現実派。大家のモデルだった時局達観型の女(護あさな)。家に付いている家政婦とその家族。
戦争時の芸術家の生き方をそれぞれに託している。
幕開きから、メインの場面になる大家のアトリエに白布をかぶったおおきなカンバスが置かれていて、何かというと、そこへ観客の目が向くように作ってある。その謎を最後までひっぱっていく。これが、戦争と芸術家の葛藤というところに落としていくのはいいとしても、結局は個人の思いになっているところが弱い。(まぁこれでもいいのだが、これでは娯楽作になってしまう。そこがこの作品の焦点だろう。折角冒頭から画家たちや地元農民・市民、憲兵など、戦後生まれの本の知識だけで書いているにしてはかなりうまく出来ているのに、もっと、戦争と芸術というテーマに直面した芸術家、市民というものに迫らなければ、三好十郎に勝てない。これからは知らないものの強みで戦わなければならないが、アフタートークで出てきた戦争記録の映像作家の作品共々、これではまるで実感が出ていない。色つき立体映像と復元再生音声だけで再現が可能で、演劇に勝てると思っているところも同じで、人間のない面を舞台で見せなければただの面白いお話の絵解き絵本で風化していくだけだ。そこは前に見たヒトラーの話と同じ安易さである。)
と悪口に落ちていくが、いいところは、小劇場でよく見る役者たちがガラも生かして、画家四人など、小劇場らしい面白さも出している。高羽の演出については、そのつもりで見ていなかったが、演出の方がいいのかもしれない。女優も始めて見る人だが、男どもを押さえてタカラヅカばりにちゃんと演じきっている。

パビリオンをください
電動夏子安置システム
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/07/25 (金) ~ 2025/07/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/27 (日) 13:00
「しょーもないこと」を理路整然としたと言おうか論理的なと言おうか(理屈っぽいとも言う)な会話で笑わせるパターンはいつもながら、今回はある部分について「ナンセンス度」が高かった気がする(笑)。ま、半世紀以上先のことだしそんなこともあるかも……なワケあるかい(爆)。
で、あれこれ真逆ではあるが前々日に観た avenir'e「#VALUE!」と一脈通ずる感があってビックリ!(私見)
あと、葛西甚の衣装(背中のアレ)と、それをネタにした終わり方がまた好みだった♪

『意味なしサチコ、三度目の朝』再演
かるがも団地
吉祥寺シアター(東京都)
2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/11 (月) 14:00
お気に入り劇団が初めての再演。笑って切なく希望もある。とても良い。(2分押し)113分。
2021年に初演された作品を再演で、初演も観ている。元地下アイドルで現派遣社員の幸恵(波多野伶奈)は、田舎の能代市の団地が取り壊されるので荷物の片付けに帰るが…、の物語。幼馴染みの何人かと久々に会い、親友のサチコ(村上弦)の事を思い出し、子どもの頃のことや、アイドルに憧れて東京に出てからのことなど、回想と現在を取り交ぜて、失ったものや成長したもののアレコレを思いつつ、最後は前を向く。初演から特に変えているところはないのだろうが、時が経って感触は変わった。初演の感想で「物足りない」と書いたエンディングがとても良く感じる。タイトルもとても良いのに気づいたりもした。初演と全く同じ役者陣で上演するという偉業をなしとげているが、劇場のサイズが変わって舞台美術や照明等も進化してて、とても良い舞台だった。都合で千秋楽しか観られなかったのだが、できれば3回くらい観たい作品だった。
初演を観て、劇団「かるがも団地」を知り、その後の全作品を観ているのだが、10本に1本くらいしか星5を出さない私が7作品連続で星5という驚異的な気に入り方の劇団になった。また、波多野伶奈という希有な女優を知ったことや、抜群のコメディエンヌにして優秀な制作である宮野風紗音を知る等、思い出深い作品が蘇り、なんだかいい気持ちで帰路に就いた。

もしも生殺与奪の権を私が握ったら
演人の夜
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても楽しかった!
初演は45分とのことでしたが、初演がむしろどうなっていたのか気になる本。
105分の中で絶えず笑いが連発され、普通にやるとシリアスなシーンすらも笑いに変える金子作品の恐ろしさ…
最高でした!!
1度しか行けなかったのが悔やまれるくらいもっと見たいと思う公演。
Xでみんなが盛り上がっていたのも納得の大作。
素敵な時間をありがとうございました!