『ハンザキ』
演劇組織KIMYO
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/02/27 (木) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
うん、流石は初演/再演東京公演と磨いてきた作品。エンタメとして卒なくカッチリ仕上がって、洗練されてきているのが分かる。動きを見ているだけでも充足感アリ。
お話でグッと来るところの印象は初演とほとんど同じでブレて無いね。終盤でスパイスとなる新平のエピソードは、このご時世ではもっと膨らましても良いぐらいには感じた。一方で山彦が開花していく一連の苦闘は、初演よりも印象が強くなった気がするなぁ、好みの盛り上がりと役者の味でした。
3妖怪の振る舞いも益々磨きが掛かって言うことなし、ホント好きだなぁ。
蒲実里 卒業できる公演
名城大学劇団「獅子」
PICO2(愛知県)
2020/02/28 (金) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
12月の… 前代未聞「卒業できない公演」の向こうを張って、「私は卒業できるぞ~」と蒲実里(カバミノリ)嬢が息巻く晴れ舞台。大変な状況下ではありましたが観れて良かった。何気に「獅子」も卒公2度開催の偉業を成し遂げた(笑)
あとはネタバレBOXへ
ネタバレBOX
■■■「かわいい馬鹿ほどみんな呪い殺すリターンズ」■■■
獅子メンの間でなら本当にありそうな登場人物の奇行の数々。その日常(?)を眺めてクスクス笑うだけでも一興だが、その中に潜んでいるさり気ない違和感のピースにオノウチハルカ戯曲らしさがある。
あれ?ここで終わりか~い… と心の内で…ツッコミを入れた第1部が〆となり、次の「たとえば君も〜」が始まってしまう。しかし、更にその先で「かわいい馬鹿の〜」の裏の顔が姿を現し、とても意表を突かれた。第2部の「たとえば君も〜」も終えた後の公演全体のエピローグ的な位置付けとして流れてくるシーンのことだ。第1部の「かわいい馬鹿の〜」で仄めかされていた世界線… 違和感の意味が より鮮明に映し出される。その一部は第1部のシーンのリフレインでもあり、同じ振る舞いに別のことを想起されられる新鮮さ。唐突だった「死なないで」の意味が腑に落ちる。
買った台本を読むと、この部分は「かわいい馬鹿の〜」の"リターンズ"抜きのタイトルとなっており、第1部がリメイクで…最後のシーンが初演版だったのかもしれない。でも今回の構成はすごくハマった。間に丸々1本入れているのが絶妙だ… 不意に涙腺が緩む瞬間。電子の海はそのまま人が生きていた証にもなっていた。
ところで「かわいい馬鹿ほどみんな呪い殺す」という謎のタイトル。これにも色々と想像させられてしまうが、…もはや老いることのない「かの愛おしい彼女」を巡る周りの人たちの切ない振る舞いを「呪われている」状態に準えているのかなぁ… などと妄想しました。
■■■「たとえば君もわたしのこと好きならば」■■■
こちらは2年前の尾内橋本研究室… 通称オノハシ研公演の再演になりますが、メンヘラビッチに哲学的な理屈っぽさを纏わせた奇怪な展開は、むしろ「かわいい馬鹿の〜」よりもオノウチハルカ作品らしさがある。
基本的な解釈面では当時の上演と変わるところはありませんが…最終的に至る… カウンセラー斎藤が社会に出る過程で失ったモノの尊さを踏まえて話を眺めると、一見して奇行に映る女性たちの振る舞いの向こうに、人生における「大事なこと」が見えてくる気がします。あるべきミライだけでなく…メンヘラビッチの諸々の中にすら、暗喩として置き換えられる何かを想像したくなる(笑)
ときめく医学と運命的なアイデア
匿名劇壇
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/29 (土)公演終了
満足度★★★
「ときめく医学」編と「運命的なアイデア」編を同日連続で観ました。ともに前回公演「大暴力」に引き続きのフラッシュフィクション構成でしたね。「大暴力」は文字通り「様々な暴力の形」にフォーカスして、テーマにかなり求心力があって深く考えさせる力がありましたが、今回は2作共通で「様々な恋愛の形」がテーマかなぁ… よりバラエティさに富んでいて、何となく人間の滑稽さと愛らしさを色々と見せてもらった感じ。フラッシュフィクションらしい、ムードの起伏の激しさにお得感アリでしたよ。
第5回全国学生演劇祭
全国学生演劇祭実行委員会
名古屋市中村文化小劇場(愛知県)
2020/02/20 (木) ~ 2020/02/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
12作も観れる演劇祭なので、細かい感想は省きますが、
特に…
でいどり。(福岡)の「ありふれた白にいたるまでの青」
と
睡眠時間(京都)の「◎(わ)」
…が出色の出来でしたね。
443.75km
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
ナビロフト(愛知県)
2020/02/21 (金) ~ 2020/02/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
まずこの舞台世界を掴むまでの敷居の高さがむしろ魅力の荒井戯曲。予習で公開戯曲を読んでいる段階から幾らでも湧いてくる妄想の嵐を楽しみましたが、そういったものを役者さん方が見える形にしていって、自分の想像を超えるものを感じるのもまたとても楽しい時間でした。
そして、窓辺とリップス「消えた明日に代わって」で片鱗を見せた「独特な舞台美術の運用」は、また更に磨きが掛かり、それが最終的に戯曲の意味にも喰い込んでくる終盤の演出が堪らなかった。
『煙草とguyについて』『どうせなにもみえない』
演り人知らズ
AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
2作の45分の中編が観れる公演。
「どうせなにもみえない」は、役者を1人増やしてのリメイクで、前作と重ねてみると、解釈が深まって面白い。
「煙草とguyについて」は新作だが、コミカルで理屈っぽい出だしから、次第に極めてシニカルで男の身には耳の痛い切り口が満載。ダンサーでもある役者の登用で生まれる… ヤバいシーンのある演出にも面白みがあった。
ともに、以降の感想をネタバレBOXに。
ネタバレBOX
■■■「どうせなにもみえない」■■■
子供が大人になる過程で厳然と立ち塞がる "(学校で教わる)あるべき筈だった理想" と "自覚なき差別に侵食される現実社会" とのギャップ。ただ辿れば良いと教わった線(道筋)の外には無数の現実があり、意識せず…悪意なく…数多の意識の中に生まれる境界線が自分の内にも外にも蔓延り…不意に我に返って自らをも傷つける。目を閉じ、暗部を塗り潰した…そのカサブタを剥がしていく物語。
2019秋ver.二人芝居から1人増しての新演出。キーとなる登場人物が元々3人(たばちゃん、なっちゃん、ゆうちゃん)なので納まりはぐっと良くなった。二人芝居版以来のそもそも2度目の観劇だからかもしれないが、観やすくなった印象はとても強い。
しかし元々の特徴として、役者は1人の人物に固定されず、3人以外の人物(例えば先生)のみならず… 主要3人の中ですら役をスイッチすることがあった様な気がして… 実態の掴み難さ…不思議な感覚は残っている。しかしそれは難点ではない。
何となく醸される客観視… 主観や感情から少し距離を置いた微妙なニュアンス。感情に基づくリアルの声というよりは… 詠うような言葉の連なりとリフレイン。
音楽畑のいちろーさんらしい演出とも解釈できるがでもそれを超えて何か敢えての意味があるのだろうと思索を巡らした。
当然、先述の特徴は二人芝居の時の方が色濃く、当時 私はたばちゃんとなっちゃんは実は1人…同一人物ではないか…というところまで妄想していた。
今回、秋版DVDも販売されたので、改めてコレもじっくり見返しました。結果として、役のスイッチを切り離してテキストを聞けば、 この一連の事件で関わりを持つ3人の少女は「別々に存在している」と考えるのが、やはり筋が通るだろうとの見解に立ち戻った。
ただし、この3人の他にこれを眺める超然とした存在として観察者がいる気がする… この社会を眺める「観察者」が。
元々、当時の同一人物説は… 今のたばちゃんが居る場所を「格子窓」から独房と連想して、2人で居れる筈がないと思ったところがキッカケでしたが、そもそもあの空間にいる人物そのものが、単純にたばちゃん&なっちゃんと思えない温度を発する時がある。そこら辺が "不思議" の根幹であり、DVDでよく見返すと、シームレスに繋げたかにみえるシーンにも、仄かに役者の温度が変わる瞬間がありました。
見かけ上、当人の様に見えて… もっと別のモノの空気を纏う時間がある。それを「観察者」と言い表してみました。
この観察者… 何となくこの年頃の人達、あるいはそれを経て思い悩む人達を一般化した思念の様にも思える。その思念がこの事件を振り返り、俯瞰することで、この想いを特定の事件の特定個人のモノから、若者が抱えるモヤモヤっとした
共通の苦悩みたいなモノに拡げて感じさせている… そんな機能を果たしている様な気がしています。
役者が時に主観になったり、時に客観になったり、役を入れ替えてみたりすることで、「個人の特殊な感情」から「若者の意識の集合体」への昇華を促しているとでも言えば良いでしょうか。とりあえず、今はそこを解釈の落しどころとしてみます。
■■■「煙草とguyについて」■■■
タイトルからはチェーホフの「タバコの害について」を想起していましたが、全く異質だったので… 関わりがあったとしても単に言葉遊び的なパロディかな。
まぁでも実際の内容はズバリ「guyの害について」だった訳で、駄洒落テイストに反して内容は極めてシニカルだ。良い意味で。
一方、シチュエーションからはイヨネスコの「授業」を連想しますが、決して模倣ではなく、中身にはしっかりとした現代の男女関係への観察や批評性があって、舞台表現としてオリジナリティ溢れる。そして多分に耳が痛い(;^_^A…
さて本作はセンセー(先生[男])とガクセー(学生[女])の講義とも口論ともハラスメントとも人生相談ともとれる2人芝居。
ガクセーの口調は何となく幼児性を漂わせ… たどたどしいが理屈っぽいというギャップと、一見 斜め上に飛んでいく論理の飛躍っぷりは面白くて魅力的だ。具体性を伴わずに一気に主張を一般化して語るところに、何か理に叶ってそうだけど全然腑に落ちてこない論調の滑稽味も楽しい。
センセーもガクセーの語る紅一点の辛さや赤裸々な男女関係を聞き… 困った様にでも穏やかに…でもツッコミ鋭く諭す序盤の姿は非常に円満な師弟関係を思わせた… あくまで序盤は。
しかし、中盤の換気シーン辺りから急激に様相を変えてくる。
次第に姿を見せるセンセーのダークサイド。外光を入れるのが売りのAHAアトリエ・ギャラリーに生まれた意外な密室… 社会性から遮断される空間の恐怖。
「私は今から守られないんですね」というガクセーの呟きが印象的に響いた。
そこからは怒濤の攻防だ。現実とも話の内容の具現化ともとれるイメージ世界。
男の乱暴を正面から捉えながらダンス表現で昇華してみせたり、独特な性表現を小道具で実現してみせたり、性器をモチーフにしたパペット劇(?)も斬新だった。
口論にも男の理屈、男の自己正当化、男の言い訳が様々に表現されるが、女性の脚本であるのに… それを一方的に糾弾するのでなく… 反論しきれず取り込まれそうになる部分も描かれて、それが返って現実社会での彼女の悔しさを滲ませている気もした。
正直、男の立場としては、そればかりでは無いよとも言い返したくなるが、一方で意識せずとも相手を傷つける危うさと… 感情が表出した時に意図せずとも相手に与える恐怖がある… 自分の内に凶器足りえるモノがあることは自覚せねばならないのだろう。端々にグッと刺される瞬間があった。
さて… 実のところ、センセーの行為を単にそのまんまセクハラ&パワハラと取るのか、リスクヘッジへの高度な導きと取るのかも… なかなか判断が難しい。最後の「いい線いってるね」は言葉通りの評価なのか、はたまた負け惜しみなのか。
さて、表現の激しさの一方で、極めて弁の立つ芝居で、ところどころに真剣に汲み取りたいロジックが多々あって… 例えば「社会システムの失敗が文化になる」って言ってたかな…興味深い。惜しむらくは… 嵐の様に通り過ぎてしまって捉えきれなかった。台本で読み返したいなぁ。
本作は今後のシーズンで女優を変えた再演がある様で、自身による出演で得たものを踏まえて、どう演出を変えてくるのかにも興味が尽きない。
劇王2020
日本劇作家協会東海支部
長久手市文化の家 風のホール(愛知県)
2020/02/08 (土) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
決勝に残った
「残像」
「死ぬ時に思い出さない今日という一日」
「天国と地獄」
…はいずれも極めて秀逸で、かなり趣味にも合いました。
『ツアー』+『タワー』
ままごと
長久手市文化の家 森のホール(愛知県)
2020/01/25 (土) ~ 2020/01/26 (日)公演終了
満足度★★★
(2作別にネタバレBOXに書きました。)
ネタバレBOX
「ツアー」
ツアー×タワー実質2本立てのうち、この「ツアー」は ままごとの今までの制作手法(標準的な演出家主導)での集大成(?)的作品だそうな。
愛息喪失による失意の中で… 日常とは少し離れた異文化コミュニケーションから生まれていく…彼女の踏み出す 次の一歩までの物語。
名詞と動詞だけで構成する独特のカタコト言語表現は、冒頭のドライブを不思議にポップに彩ったり、拙い外国語会話を如実に再現してみせたりと、意外にオシャレとコミカルさを兼ね備える汎用性があって興味深い。
ナビ本体の擬人化表現や、その機能のアナログ的描写もほっこりしていて好ましい癒し空間が拡がっていく。そこからの展開… ちょっとした冒険譚が彼女の心をほぐしていく感覚にとても心温まる感触でした。ところが実は…終盤の旅人に対する「お前はダメだ」というミュージシャンの拒絶のセリフにモヤモヤする感覚が湧いて… なぜ盛り上がりの最中にざわざわそんな描写が要るのだろうと… 観た直後は後味が悪かった。
んで、暫く感想を呟けなかったんだけど、意図を汲もうと思索を巡らした。で、やはり旅人がナビの化身的な位置づけになっていることに繋がるのだろう…という結論に辿り着いた。彼女はいつまでもナビゲーターに手を取って貰っていてはいけないのだろう。彼女が再び自力で歩きだすことの暗喩かな…と。それにしても このナビ優秀すぎ。心療診断機能まであるんか笑。
「タワー」
もう一方の「タワー」は演出家一個人の資質に囚われぬ… ままごとという「集団」から生み出されるモノを模索する新たな制作手法に取り組む実験作らしい。
その意向は何となく理解できる。しかし今回そこから生まれたモノには色々と疑問を呈さずにはいられない。
難解というよりは… まだまだチグハグな印象でした。
堆く積まれた高層の構造物。地上で蠢く者どもの不思議な挙動… 上と下とで生きる者たちの隔絶と奇妙なコミュニケーション。何となく物質文明の果てのディストピアを想像させ、前半の雰囲気はバツグンでしたが… 全体としては… フライヤー記載のあらすじのイメージは汲めてないです。
しかし一転、中盤のパフォーマンスやインプロ的なシーンは… 冒頭からのイメージを膨らますには些か余興的でバラエティ番組でも観ている様な場違い感が湧いた。 勿論そういうモノの面白味というものはあるのだけど、 何と言うか…「今じゃない」って感じでした。
何だろう… 屋外パフォーマンスや演劇フェスの一角で… 観客とのコミュニケーションを楽しむタイプとしてなら呑み込める中盤だったけど、前半からの"思索を阻む異物"としての存在感が私には強かったです。色々考えてはみたのだけど、この中盤あってこその「何か」を見出せなかった。現代アート好きの性分としては無念だけど。
まだ実験作やし、このタイプは…回を重ねて作り手の表現も変わり、観る側も観方を心得てくると解釈も変わってくるかなと今後に期待。エポックメイキングも磨き上げられる時間が要るのだと信じて。
警部と探偵、その助手と殺人鬼
劇団芝居屋かいとうらんま
瑞穂市総合センターサンシャインホール(岐阜県)
2020/01/18 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★
お馴染みジュリアーノ警部の舞台に、BLANK BLANK BRAINの迷探偵コンビ蘭子&珠理が殴り込み… ツッコミ不在でボケの3乗、舞台上で留まることなくボケ倒す。かいとうらんま不動の定番キャラの存在感に… 遂に拮抗できるキャラを、しかも若手から生み出した価値は非常に大きい。本公演での客の評判の高さに対応して… まさしく機を見るに敏なり!の投入は大成功でしたね。
ネタバレBOX
割と強引に終わらしたけど、結構な謎と含みを残した後味だったよねぇ。しかも… かなり怖くてヤバい要素を曖昧なまま終わらした… リアルな部分と突飛なフィクション両方で。
そもそもの「イジメ」については、当人も出ないんでフォーカスこそされなかったけど、あの「悪意なきイジメ」は、イジメる側への切り口として昨今の潮流に準じた感じで、どうしょうも無くシビア。
「ゲームさえ与えておけば大丈夫」と…ノリの為に他人を蔑ろにすることに最後まで罪悪感を持たなかった描写は… 他人の痛みを想像する気力すらない程の無関心を窺わせ、悲しい現実味と諦観を想い浮かばせた。
一方、大事な人を犯人だと思い込み…庇う為に捜査を混乱させたり、自分が犯人だと自供してみせたりしたことがクローズアップされたが…その反面で真犯人が誰か、その動機が何なのかが敢えてなのかボンヤリしていて、庇い合うエモさでカモフラージュしながら、結構な勢いで結末に畳み掛けてくる。キョトンとしている間に終わっちゃう感覚だ。
結局、犯人は実際にあの中の誰かだったのか(動機は?)、あるいは最後の露美男が全部殺っちゃってたことになるのか、それとも全ては教団の人体実験に絡んだ犠牲者なのか…分かったような分からないような感じだけど、一つはっきり感じられたのは、誰が殺していても、誰が殺されていても…何も湧いてこない感情の希薄さ、ゲームの様な軽さ…何かそこに本作の「裏」を想像してしまうのですよ。
勿論 この作品の主体がコメディとエンタメなのは間違いないです。私もそう楽しんだ。しかし この楽しさの裏のモヤモヤする観後感を生む作品構造に意味が無い訳はないと思って…ただ辻褄を合わせるだけ…ただドラマを作るだけなら、後藤さん程の手練れが違和感を消すことは容易な筈で、だから「そうしなかった意味」がきっと何かある。
初日の感想ツイートの中にあった『私に笑えないところで皆が笑う』という趣旨のモノも思索のキッカケ。… で、思ったんです。
この楽しさの「裏の闇」は…今の世相をそのまま写す鏡ではないかと。
「自分に危害のないところから 然したる悪意も罪悪感も無しに 生贄の様に他人を攻撃して楽しむ」…薄っすら透けるそんな地獄絵図を鏡写しに見せて、自分の行為に気づきを得て欲しかったのでは…と。
しかもそれがただ非難する為の説教ではなく、だからこそ最後に「どんな状況でも、悔い改めるのに遅いという事はない」という趣旨のセリフに繋がっていく。そこが後藤さんの味かなぁと勝手に妄想しました(;^_^A
そして重めの話とはまた別の視点で…
… あの教団の暗躍(死体を使っての実験、…手から放つ謎の雷光兵器、何となく人の心理や記憶を操っている様な謎めく仕掛け…等々)には、もの凄い裏設定を妄想させられたけど、結局 一切回収してこなかったよね?、むっちゃ気になるんですけど(笑)
『ムンク l 幽霊 l イプセン』 劇場パフォーマンス
第七劇場
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/01/10 (金) ~ 2020/01/10 (金)公演終了
満足度★★★★★
因習による呪縛の辛み、そこからはみ出す精神の苦しみ、マイノリティの足掻きが空気感として迫ってくる。あぁ…やっぱり鳴海さんの演出って好きだなぁ。特に今回は環境音と暗がりの効果に痺れまくった。美術館パフォーマンス(ムンク作「イプセン『幽霊』からの一場面」の実物を前にしての演劇)もセットの企画で面白い取り組みでした。)
私たちは何も知らない
ニ兎社
三重県文化会館(三重県)
2020/01/10 (金) ~ 2020/01/10 (金)公演終了
満足度★★★
日本の女性解放活動の思想的礎の一つとなった雑誌「青鞜」編集部を舞台に、平塚らいてうを核にした一癖も二癖もある女性達が口角泡を飛ばす議論を重ねる。
史実の人物たちの原文を大事にしてなのか、硬い語調ながらも その風体は現代に寄せているところにギャップとしての面白さがある一方で、昔から変わらぬ問題を今と重ね合わせようとしている感触があった。
シンプルながら多彩な顔を見せ 尚且つ多機能な舞台装置も強い印象を残し、特殊な照明効果(?)による遠くの霞んだ空気感の演出には感動すら覚えた。音楽も含めて思いの他 ポップな味わいもありましたね。
青鞜編集部員達は相互に批評精神に溢れ… ある種 硬派な言葉を交わしながらも、その一方でゴシップ好きの井戸端会議的な趣きも重なる描写なところは ある意味で意外だったが、そういうモノなのか… そこに作り手の意図の有りや無しや。
基本、史実を追っている感覚で小気味良いテンポだが… 何となくやや単調?…何となく距離感があって観ていて中に入り込めない感触もあったが、それは私が男だからなのかも。
一方で、終盤の話運びの処理は上手いなと思った。仄かに今が重なっていくのが いかにも永井愛作品の佇まい。意外に奔放であったり、何のかんの何より自分本位な人物像も印象的だったし、その晒された環境として「女の敵は女」って思わせる瞬間が多かったのも納得感を生んだ。
女性に限らず… 虐げられた者が何かを変えようとする時、その足を最も引っ張り傷を負わせる障害は「虐げた者」ではなく、同じ環境にありながら「その環境に順応して上手く世渡りした者」… もっと始末が悪いのは「それに耐えて、自己肯定的にそこに価値を見出してしてしまった者(自分が耐えたのを誤りとされるのが許せないパターン)」…という現実。
庇った身体を背中から撃たれる光景は、今なお続く日常に思えた。
Dear...私様
グワィニャオン
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
とにかく脚本が素晴らしい。笑いあり涙ありの、充実した内容だった。
そしてアクションも派手ですごい。
役者さん一人一人が魅力的で、これほど面白い公演は久々に見た。
ネタバレBOX
秀生の過去が明らかになるシーンは、大号泣してしまった。なぜ秀生が心を閉ざしてしまったのか。なぜ忘れやすくなってしまったのか。単純に老いによるものかと最初は思っていたが、秀生の幼少期の記憶が大きく関係していた。
過去との結びつけかたや全体的な脚本の素晴らしさに、西村さんにはとにかく脱帽だった。
三国志〜たった二人の赤壁の戦い〜
国産本マグロ
高田馬場ラビネスト(東京都)
2021/01/02 (土) ~ 2021/01/04 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
三国志は学生時代に読んだ。公演の前説では横山光輝氏の「三国志」(漫画)を紹介していたが…。映画「レッドクリフ」(partⅠ、partⅡ)も観ているから、内容の面白さは十分理解しているつもりだ。2人だけで三国志の主要人物を演じ、特に「赤壁の戦い」はその中でも有名な人物が登場し、よく知られた8場面を持って分かり易く展開していく。2人だけと記したが、正確には案内役2人と舞い手(ダンサー)2人がおり、物語を立体的に構成していく。芝居だけではなくコント的要素も取り入れ笑いを誘い、観客を飽きさせない工夫もある。なにより2人だけで三国志という時代絵巻の壮大なスケール感を出そうと試みているところが魅力的だ。
(上演時間2時間 途中 換気の休憩あり)
ネタバレBOX
セットは可動式の衝立2つ、箱馬2つというシンプルなもの。もっとも合戦劇であるからアクションスペースを確保する必要があるため理に適っている。物語は西暦180年~280年頃の中国ということで、中国歴史に詳しい人でなければ背景・状況が理解し難い。その分かり難さを補うために案内役(雰囲気ある衣装と髪型)が適宜登場し、上手・下手側にそれぞれ立ち第1場から第8場を要領よく説明していく。
またダンサー2人が合戦時における雑兵役を担うが、赤壁に因んだのだろうか、真っ赤な衣装を纏っている。そして音響はもちろん照明も凝らしている。例えば第3場で諸葛孔明が曹操軍から闇夜に10万本の矢を奪うシーンでは暗転しレーザービームライトで矢を射ているような効果で観(魅)せる。
基本的には2人だけで演じるから現在の会話劇にならざるを得ないが、身体を回転させることで人物が変わったイメージを持たせる。オーソドックスな方法であるが、そこに人物風貌を面白可笑しく加え説明することで取りあえず物語を進める。物語に登場する人物はもちろん、本公演の副題ーたった2人の赤壁の戦いーというキャッチコピーからすると、役者2人もアヴァンギャルドな漢(おとこ)という印象を持った。
最後に、物語を知っているか否かで観客の興味・理解度合いも異なると思うが、時々に入るコント的な妙味とダンスパフォーマンスが公演を盛り上げる。新年早々とても面白い「三国志」を観ることが出来た。
次回公演も楽しみにしております。
刹那的な暮らしと丸腰の新選組
グワィニャオン
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2020/11/26 (木) ~ 2020/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
幕末の頃のドラマとして、このような人間模様が実際にあったような気がするリアルな会話に引き込まれました。
誰か一人主人公にというのではなく、それぞれの人物像に感情移入してしまう不思議な舞台でした。
脳ミソぐちゃぐちゃの、あわわわーで、褐色の汁が垂れる。
オフィス上の空
シアタートラム(東京都)
2020/09/17 (木) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/19 (土) 13:00
座席H列8番
価格7,500円
従来作品にはよくあった時制の移動などのトリッキーな部分はほとんどなく(あるにはあるが一般的に使われがちなもの程度)まるでど真ん中の豪速球のような恋愛譚。
物語の中心は普遍的で目新しさなど微塵もなく、かつ恋愛経験者の大半に共感を得そうな話であるが、そこに「翳さすもの」が昭和なら先進的すぎ、平成前半でもマニアックと誹られた気がする。
まさしく温故知新、オーソドックスなものをイマに即して仕立て直した「机上の空論流の恋愛物語」ではあるまいか。
ネタバレBOX
終盤の壁を壊す場面で「GTO」を思い出したのはσ(^-^)だけではあるまい。(笑)
いや、むしろ狙ったのかな?
『コントロールオフィサー』+『百メートル』二本立て公演
青年団
アトリエ春風舎(東京都)
2020/12/31 (木) ~ 2021/01/10 (日)公演終了
満足度★★★★
スポーツに関する30分弱の短篇を2作上演するが、2作とも短篇という特徴を活かした巧妙な作品で、面白かった。
『コントロールオフィサー』は旧作。水泳選手の競技会の後の、ドーピング検査場での会話。4人の選手同士の関係が徐々に分かる会話の積み上げも巧みだが、それぞれに付く4人のドーピング検査員(コントロールオフィサー)という「異質」な存在がいることで生じる微妙な感触の違いが特に面白く、客席からの苦笑が絶えなかった(時に爆笑)。さすが平田オリザだと思った。
『百メートル』は陸上競技の控室での扱った新作。こちらも、4人の競技者と2人のコーチの関係などが徐々に明らかになる展開が巧みだが、1人だけ場を認識していない存在がいて、その人の気づかなさ具合が面白い。
両作とも、スポーツ選手がそのような会話をするのか、という疑問はあるが、いや、するかもしれない、という微妙な線を巧く作り上げている。新年最初の観劇として、いいものを観せてもらった。観て損はない。30分弱-休憩10分-30分弱。
BLACK OUT
東京夜光
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2020/08/21 (金) ~ 2020/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/08/26 (水) 14:00
価格3,000円
演出助手の目を通して描いた商業系プロデュース公演の製作過程。
事前に目にした感想に「演劇人として刺さる/痛い」というものがあったが、専業観客(?)の立場としては「演劇あるある」ならぬ「演劇聞く聞く」満載でシニカル、自虐的、コミカルに理想や希望も加味した疑似ドキュメントとして大変「面白い」。
……ではありながら、終盤のある場面ではそれまで観客側として「察する」ことしかできなかった「その時」の当事者の心情を目の当たりにするようで胸に迫るものがあった。
そして「実体験に基づいたフィクション」としてどこまでが事実でどこまでが創作なのか境界が曖昧で、さらには演者の中には実際に似た体験をされた方もいらっしゃるのでは?などと思うともう「第四の壁」がとろけてなくなるようで、それがまたタマラン。
さらに漠然と思い描く程度であった演出助手、舞台監督などの担当職務を改めて認識できて観劇マニアとして有益だった。
スノー・ドロップ
感情7号線
劇場HOPE(東京都)
2020/01/11 (土) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/01/16 (木) 15:00
座席F列4番
価格3,300円
16日昼にAチーム、17日昼にBチームを観劇。
事前に伝わっていた情報通り、切ないと言うかビターと言うか、オトナの味わいのパラレルワールドもの。
梶尾真治の「クロノス・ジョウンターの伝説」を舞台化していた頃の演劇集団キャラメルボックスに通ずるモノもあったような。
同じ時間を繰り返してハッピーエンドに辿り着く時間ものがお好きな方はこれを観ると盲点を突かれると言うか新たな発想に眼からウロコが落ちるのではないか? 少なくともσ(^-^)は「そう来たかぁ!」と膝を打った。
ネタバレBOX
桃花という赤鬼の命を救うために青鬼・真白がサークルのメンバーたちに背を向けるが、桃花は真白の不在を悲しむ「泣いた赤鬼」説。何かを得るためには何らかの犠牲を払わなければならないという深い話。
「真白が思う桃花の幸せ」と「桃花自身が思う幸せ」は異なる。それどころか真白の独りよがりの価値観でやり直した世界では純一もニノも元の世界より不幸になっているのが皮肉というか何というか。
死ヌ事典
壱人前企画
ザ・ポケット(東京都)
2020/11/10 (火) ~ 2020/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
リアリティのある脚本
オムニバスで様々な人々の死について感じる事ができました。感慨深い作品。
はら、はらり
咲匂-SAKO-
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2020/12/18 (金) ~ 2020/12/23 (水)公演終了
撫子に続き牡丹チーム観劇。
定右衛門とお慶が重要な役柄だった