
一九一一年
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
大逆事件からはすでの百年以上たっている。日本が近代国家としてようやく成立したばかりのころに起きた事件が、今なお、観客の心をうつのは事件がこの国の構造に深く根付いているからだ。その構造の上部構造にも下部構造にも触れた優れた社会劇である。
この国土に生きる観客は、現代の愚昧な政府の権力志向とちっとも変っていないなぁ、という悲しい詠嘆を超えて、心を打たれ、考えさせられる。
二十世紀初頭の社会主義思想の平民への衝撃は、近代国家ではそれぞれに受け止められていて、アメリカでは「赤狩り」が、ヨーロッパでは「ロシア革命」がしばしば芝居の素材になる。日本でも戦後大逆事件が解禁になってからは、いくつもの作品があるが、今回の作品はそれらとかなり趣を異にしている。世俗的な事件の経緯に沿ってはいるが、近代国家で生きるという事を、集団を率いる権力と、個人の生きる自由の対立に絞っている。そこがいい。
舞台は、東京地裁の予審判事、田原(西尾友樹)と潮(佐藤弘幸)が大逆事件を裁く大審院の予審判事として呼び出されるところから始まる。山縣有朋(谷仲恵輔)によって仕組まれ検察によって実行された政府転覆の事件への嫌疑で当時生まれたばかりの平民社関連の人びとがとらえられ、当時の法律でもせいぜい数年の禁固刑が最高の被疑者たちが死刑台に送られる。爆裂弾とか判決後の天皇による恩赦とか、劇場性もしっかり組み込まれたこの専制国家確立のためのドラマの一翼を担ぐことになる。ドラマは国民平等の近代法と、専制国家の政治の論理のはざまで、職として判事の務めを果たそうとする予審判事に対し、被告として唯一登場する菅野須賀子(堀奈津美)は毅然として人間の生きる自由を主張する。
2時間20分余り、休憩なしの舞台の前半は、国家が仕組んだ国家権力のドラマに巻き込まれていく平民の予審判事の苦悩が描かれ、後半は人間は自由に生きるという原点から全くブレない菅野須賀子との取り調べになる。これらの事件の素材や対立軸は現代の観客にも通じるようによく吟味されていて、全く飽きない(よくある時代物のように、メロドラマに媚びていない、ここもいい)。
ことに、菅野須賀子を演じる堀奈津美が自分の信念を鼻っ柱の強さで表現していて、今までに見たさまざまの菅野須賀子のなかでは異色の面白い出来であった。
今年のチョコレートケーキはコロナ禍でも大活躍で、今年の春の「帰還不能点」に続く日本の権力構造についての優れた舞台であった。権力をその中から見るというのは新しい視点で、そこに新しい日本観もあって、大いに評価できるが、観客としては、かつて「80’エレジー」のような、市民のなかに巣くっている権力ドラマもぜひ見てみたいと思う。
このコロナ禍でも、特に動員したとは見えない老若さまざまに入り乱れた観客でトラムは9分の入り。これからもっと混んでくるかもしれないが、芝居を見たという充足感のある舞台である。

一九一一年
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/13 (火) 19:00
大逆事件を題材にした、真摯で迫力ある群像劇。いいものを見せてもらった。
10年前に上演されたものの再演だそうだが、初演は観てない。大逆事件が検察・判事たちによって、いかにしてでっち上げられたかを扱う作品で、実在の人物がいっぱい出て来るが、物語はフィクションという、いつもの同劇団の作り方が冴える。トラムという舞台の広さと高さを活かした美術が見事だし、言うまでもなく、同劇団に慣れた役者陣の熱演で、なんとも言えない「気持ち悪さ」(誉めています)に溢れた舞台だった。管野須賀子を演じた堀奈津美は5年ぶりの舞台だそうだが、紅一点ということもあって抜群の存在感だった。

一九一一年
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

愛、あるいは哀、それは相。
TOKYOハンバーグ
座・高円寺1(東京都)
2021/06/13 (日) ~ 2021/06/20 (日)公演終了
実演鑑賞
昨年の前作で出演した劇団で、座・高円寺の劇作家プログラムでの作品。震災がテーマで、同じ日本人でも地域によって気質だけでなく受け止め方が大分違うのだと感じた。

猫を探す
このしたやみ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/06/25 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
■約85分■
●大学事務員の地味なアラ還男にもあった、女性がらみの蹉跌。それを可笑しみを滲ませながら丹念に描いていて、同じく若くはない男の一人としてしみじみ見入った。

「TABOO」
TEAM空想笑年
インディペンデントシアターOji(東京都)
2021/06/23 (水) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

hedge 1-2-3
serial number(風琴工房改め)
あうるすぽっと(東京都)
2021/07/08 (木) ~ 2021/07/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/13 (火) 18:00
久しぶりに見た全員男の骨太演劇。
金融を舞台にしながら描かれているのは男の友情と裏切り。

いのちの花
劇団銅鑼
練馬文化センター(東京都)
2021/07/13 (火) ~ 2021/07/15 (木)公演終了

反応工程
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/07/12 (月) ~ 2021/07/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/12 (月) 19:00
戦争のもたらす理不尽と不自由を描く秀逸な作品。観るべし。
宮本研の1958年の作品で、九州の軍需工場を舞台にしたベテラン職工から動員学徒までさまざまな人々の群像劇。2幕5場が昭和20年8月7日から始まり、2幕1場で8月10日まで行ったところで、非常に美しい場面転換で昭和21年3月5日で終わる。時期の設定が見事で、広島に原爆が落ちた日の翌日から始まることで冒頭から原爆が話題になる。敗戦後7ヵ月を経た最終場では、みんなのその後、的な展開となり、呆然とするエンディングへと繋がる。
本来は昨年4月に上演する予定だったものを、同じスタッフ・キャストで1年3か月後に上演されるというのは凄い。単に、個々の人々の苦悩を描くだけでなく、戦争の末期でも企業は設けを考えている、という指摘など、強烈なメッセージを持った戯曲である。初日だったけど、役者陣も充実した演技で、見事な芝居になっていた。
1幕1場30分、2場20分、3場35分、休憩20分の後に、2幕1場40分、2場20分、で2時間45分の長丁場だが、全く飽きない。

春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉
ENGISYA THEATER COMPANY
シアター風姿花伝(東京都)
2021/07/06 (火) ~ 2021/07/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
女優たちが生き生きと舞台上で語り、動き回る姿は観ていてそれだけで楽しいものだが、物語としては響いてくるものがなかった。群像劇では間々あることだが、人物紹介から各人にまつわるエピソードなども盛り込んでいくと肝心の作品のテーマが描き切れずに終わってしまうことがある。今作もシェアハウスにおける老女たちの友情はほのぼのするが、死生観がどれだけ伝わったかは疑問として残る。セットにブランコを取り入れたことやBGMとして流れるクラシックの名曲の数々は印象的。

森 フォレ
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/07/06 (火) ~ 2021/07/24 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ベルリンの壁崩壊の年に不本意な妊娠をしたエメ(栗田桃子)から始まり、その娘、現代のモントリオールのルー(瀧本美織)が、古生物学者(考古学者ではない)ダグラス(成河)と、独仏国境地帯のストラスブールにおもむき、自分のルーツをさぐっていく。ルーに最初の手がかりを与える、疎遠だった祖母リュスを演じた麻実れいが素晴らしかった。赤ん坊のときフランスからカナダにつれてこられたあと、「約束」通り母親が来るのを待ち続けた苦しさ、結局かなわなかった悲しさ、そして母のことを伝えに来たサラ(前田亜季)との邂逅。ルーとのもあわせて、二人芝居の密度の高い語り、感情の動きがすばらしい
ココまでが1幕。全3幕。1871年に始まるケレール一族の愛憎劇は、近親相姦と父殺しの話で、ドイツ神話に取材したワーグナーの「ニーベルングの指環」のよう。当主の子(双子)を身ごもって、その息子と結婚するオデットの「あなたの子は代々呪われる」という言葉は呪いのようだ。一族を逃げた息子一家が閉鎖的に暮らすアルデンヌの森は、シェークスピアのアーデンの森とは違い、血なまぐさい惨劇の数々でいろどられる。こうした展開は、レバノン生まれの作者のヨーロッパ文明批判があるのかと思われた。欲望と血とエゴイズムの文明。神はいない
「岸 リトラル」の衝撃は忘れられないが、「森」は全く別の鋭角、作りの芝居であった。通常の芝居の2.5作分くらいの物語の錯綜が一つに込められている。

母と暮せば
こまつ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/14 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしい芝居だった。畑澤聖吾の戯曲は、笑いのを振りまきながら、涙なしには見られない生と死の葛藤へ。井上ひさしを超えたかも、と思った。そして富田靖子が。これほど迫力のある女優だったとは。「アイコ15歳」でデビューしたのがついこの前のように思えるが、女優としての成長に目を見張った。エアーおにぎりのばめんのほほえましさ、原爆症が現れてきて、もう生きていたくないという鬼気迫る嘆き、振り幅大きく圧巻だった。もう一度希望を持つラストも、富田の存在感で説得力があった。
一方の松下洸平も、死んでいるのに出てきてすまないというようなハニカミが最初あり、でも、最後は去らざるを得ない。死者らしい抑制した存在ぶりがよかった。かっこよくて現代青年らしいところはご愛嬌。
初演のときは祈りの場面がいくつかあったのを、今回は栗山民也の「今は怒りのときだ」と削ったらしい。気づかなかったが、たしかにクリスチャンの家なのに、「陰膳」など日本的風習はあっても、キリスト教的仕草はなかった。コウちゃんがヤソだと子供の頃バカにされたという話はあるが。小学校の先生に頭をものさしで叩かれてハゲができたが、その先生はヤソとバカにしなかったから、5年まで受け持ってもらってよかった、というエピソードも人間の多面性を示していた。

浦安鉄筋家族~子ども大戦争~
劇団TEAM-ODAC
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
原作は読んだことがなく、テレビ版しか知らないけど、舞台版の世界観もイイですね。不条理なギャグが満載ですが、実はほろっとさせる話でありました。

罧原の乱
劇団そとばこまち
劇団そとばこまちアトリエ 十三 BlackBoxx(大阪府)
2021/07/09 (金) ~ 2021/07/12 (月)公演終了
満足度★★★★
吉本感満載で、アドリブも凄い❗予定時間を大きくオーバーし、満足感たっぷり。内容も申し分なく、老舗劇団の威力を感じました。

タイホしたい!/ホームレスホーム
試験管ベビー
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2021/07/09 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/11 (日) 13:00
今回は恒例の観客参加型がコロナのせいかひかえめ!?
内容があまりないとか言ってましたが、みんなの息があっているところなど、面白かったです。

タイホしたい!/ホームレスホーム
試験管ベビー
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2021/07/09 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/11 (日) 13:00
今回は会場が芸術劇場だったから、応募にはずれたかと思ったけど、見事当選!!
久々に試験管ベビーさんの舞台を観てきました。
張り込みのコートの中のパンと牛乳のポケット、笑えました。
ある意味いい発想かも!?
観客参加型は、コロナ禍ということもあり控えめだったけど、開演前にある人たちが書いた懺悔的な行為もこれまた笑えました。
今回の内容は薄かったかもしれないけど、ところどころ笑えて楽しめましたよ。
やっぱお気に入りの劇団ですね。

タイホしたい!/ホームレスホーム
試験管ベビー
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2021/07/09 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/11 (日) 13:00
緩急でいったら急、セリフの量が半端ない、その中にクスリと笑えるエッセンスが絶妙に散りばめられているのでダレルことなく観ることができる。
客席参加型のシステム、今回はコロナ化ということもありかなりあっさり目。
でもその内容には大拍手、本当に面白かったです。

ロミオ&ジュリエット
ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場
梅田芸術劇場メインホール(大阪府)
2021/07/03 (土) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
大阪千穐楽公演に遠征してきました。
宝塚版と東京公演をライブ中継で観てましたが、今回は劇場で観ることができてよかったです。俯瞰でみれる席で自分目線で楽しめました。

21 1/2 世紀の少女
アートプロジェクト集団「鞦韆舘」
藝術工場◉カナリヤ条約(大阪府)
2021/06/20 (日) ~ 2021/07/03 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第二章「忘却」初日観劇
死や老いを遠ざけ、セックスも不要の近未来。
22歳の繭は恋人への想いに悩み「精神の排泄」に取り組むが…
演者さんのレベルが高く、見応えのある内容。
精神世界の抽象度が高く、少し難解だが、演出含め愉しかった。

21 1/2 世紀の少女
アートプロジェクト集団「鞦韆舘」
藝術工場◉カナリヤ条約(大阪府)
2021/06/20 (日) ~ 2021/07/03 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第一章「喪失」Bチーム初日観劇
以前、演~en~でも拝見したので、この演目2度目の観劇と言う事もあり、前回より、更に濃く拝見する事ができた。
原因不明の「キョム」に罹患した繭へ、AI治療を試みるが…
精神内面を描く近未来SF、面白かった!