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「軽い重箱」

「軽い重箱」

殿様ランチ

駅前劇場(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/06/28 (土) 13:00

かつての短編集シリーズから選りすぐった6編のリミックス版だが「あのマンション」を中心とした地域で相次いで起きた出来事のように再構成して1本にまとめているのが巧み。
そしてその締め括りが「あーワカる♪(笑)」な夫婦ネタなのも粋と言おうか何と言おうか。
また、かつて新宿眼科画廊での上演を観ていた身として当時の雰囲気を継承しながらも微妙に広くした舞台美術にも感心。
当時のシリーズを観ていると、より楽しめる公演だったのではあるまいか。(もちろん今回初見でも十分楽しめるだろうが)
シリーズ新作ははたしてあるのか?

音楽劇 金鶏 二番花

音楽劇 金鶏 二番花

あやめ十八番

座・高円寺1(東京都)

2025/07/07 (月) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すんばらしかった。今年のベスト5には入れたい作品。
昭和25年、日本初のテレビ実験放送が始まった日本放送機構を舞台に2人のアナウンサーを中心に描いた群像劇で、登場人物のすべてに思いを馳せずにはいられない。
中野亜美さんは役名からしてテレビ草創期から今も活躍するあのお方を思わせる役で、劇中でアプレゲールと称される通り、新しい時代の希望そのもので太陽のような存在だった(ちなみに舞台上にも大きな太陽があり、これの使い方も面白い)。
キャストは本当に全員よくてお一人お一人名前を挙げたいぐらいだけど、中でも結核を患うアナウンサー役の浜端ヨウヘイさんは声もよくて歌もうまくて一際印象に残った。本業はシンガーソングライターだそうで納得。
吉田能さんによる音楽もとてもよく、ミュージカルだったらここで拍手が起きるのにと思うこともしばしば。ミュージシャンが役者としても登場するのもあやめ十八番の音楽劇ならでは。アンサンブル的立場の役者さんたちも粒揃い。
本作は13日までの上演だけど既に土日は前売完売。残すは平日の6ステ(木曜は休演日)。予約は急がれたし。あ、配信もあるでよ。

9月に東京芸術劇場シアターイースト(お久しぶりね〜)で上演される草創記『金鶏 一番花』も今から楽しみ。

ひとくず

ひとくず

映像劇団テンアンツ

本多劇場(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2回目観劇。
通常版(?)の公演は これが最後とのこと。7月8日(19時)は短縮版、9日(14時)はエピソードが挿入され さらに長尺(千秋楽スペシャル)になるらしい。

既に 内容は知っているが、それでも笑い 泣ける。また1回目の時にアドリブか判然としなかった台詞は、台本通りということも分かった。そして キャストが変わることで情況も違ったような印象を受けた。特に、北村鞠と金田匡朗の母 佳代が、それぞれ御園紬サンと徳竹未夏サンへ。やはり「舞台は生もの」、同じ内容でも違った感情が動いた。
(上演時間3時間35分 途中休憩10分)【バニラ チーム】

ネタバレBOX

カーテンコールで、徳竹サンが 今日 那覇(宮古島チャリティー国際映画祭のMC)から 本多劇場へ、ゲネもないし不安だったと話していたが、迫真の演技で観入った(もちろん全ての役者に言えることだが)。
初日は 入場時に混乱があり、開演が30分遅れ。また舞台上では、電柱が倒れかけ キャストが慌てて支えるなどアクシデントがあったが、今日は(観客から見て)何事もなく良かった。

公演はシングルキャストはもちろん、変則キャスト、ダブルキャストを含め多くの俳優陣で上演されている。コメディ‐リリーフとして笑わせ、テーマである児童虐待で泣かせる、そして考えさせる場面の数々。匡朗の母 佳代、鞠の母 凛、その母の千鶴は男なしでは生きていけないといった弱い面を、同時に子の愛し方を知らない寂しさも描く。母の観点を強調することでネグレクトに潜む怖さが観える。佳代、凛という要(カナメ)の母をテンアンツの徳竹未夏サン、古川藍サンが熱演。理屈では語れない、その難しさを舞台で表現する。「平凡な幸せ」「普通の家族になる」ことの難しさを改めて知る。

人のクズーカネマサ(上西雄大サン)、母の男を 凛の恋人をそれぞれ刺殺。その男が一人の少女 鞠のために…昔から知っている(元)刑事 桑島(剣持直明サン)との邂逅が味わい深い。桑島のカネマサを思う気持ち、その真情を受け入れるカネマサ。そして 鞠の誕生祝いを目前に逮捕されるが、桑島の温情で 彼の同僚にプレゼントを託し別れの言葉を交わす。舞台から客席へ下り(連行され)る姿に、啜り泣きの声。
何度見ても泣けてくる場面だ。次回公演も楽しみにしております。
ここに在る不在

ここに在る不在

舞台芸術ユニットPINO

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/07 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/07/07 (月) 16:00

110分。休憩なし。

ひとくず

ひとくず

映像劇団テンアンツ

本多劇場(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
児童虐待の実態を描きつつ、その先を見つめる心優しき感動作。「鳴り止まないアンコールの声に」という謳い文句に納得。何とも心が押しつぶされそうな内容だが、現実にある話。それを基に 一晩で「ひとくず」の脚本を書き上げたという。

物語は説明通り、少女 鞠を地獄から救ったのは人間のくずだった。しかし、救われたのは少女だけではなく、救った金田匡朗(通称:カネマサ)も精神的に救われたのだ と思う。鞠の境遇とカネマサの心の成長が共振・共鳴し大きな感動を呼ぶ。

感動シーンには、必ず音楽と照明の相乗効果で印象付ける。その心憎い演出が物語を一層切なく そして優しく包み込むよう。泣き笑いといった感情の揺さぶりが凄い。
(上演時間3時間40分 途中休憩10分) 【チョコ チーム】

ネタバレBOX

セットは 後景に観覧車(ライトアップすると<ひとくず>の文字が浮かび上がる)、中央は北村凜、鞠 母娘の部屋と金田匡朗の部屋の回転舞台。上手/下手はそれぞれの場景に応じて簡易セットを搬入/搬出する。それによって、テンアンツらしく分り易く テンポよく展開していく。物語は、成人した鞠の回想として紡いでいく。

鞠が、十蟻刑務所へカネマサを迎えに行くが、入れ違いになり会えなかったシーンから始まる。小学生の頃 鞠は、母 凜の恋人に虐待され、電気もつかない暗い部屋で食事もなく一人置き去りにされていた。そこへ空き巣に入った金田。金田も母 佳代の男から虐待を といった同じ境遇で育った。部屋はゴミで溢れ、水を飲み 空になったマーガリンを舐める鞠、その姿は髪はボサボサで…。銭湯へ連れていき、手の根性焼きや胸にアイロン焼きの痕に繋がる といったように次々に場景が連関していく。

鞠とカネマサの育った境遇は似ており、二人の幼い頃の様子を交差するように描く。そこに児童虐待の惨さを見せ、さらに教師や児童相談所といった第三者(行政も含め)が介入し難い もどかしさを浮き彫りにする。さらに、凛も母 千鶴から虐待を受けていた過去が明らかになる。娘の愛し方が分からない悲しみ。鞠とカネマサが、ラーメンや焼き肉を食べ といった平凡な日常が描かれているが、そんな当たり前が2人にとっては幸せ。カネマサにとって鞠の存在は絶対であり、約束は必ず守る。常習窃盗者から生活のために就職しようとする。そこに鞠という存在がカネマサを精神的に成長させているような。

場転換は多いが手際よく それだけテンポよく展開する。飽きさせるどころか、舞台から目が離せない。感情を揺さぶるシーンは、効果的な音楽を流し、照明は白銀色系で人物が映えるようなもの。一方、カネマサが凛の恋人を刺殺するシーンは 暗転の中で音響のみ。トリガーアラートに配慮したかのような演出である。脚本はもちろん演出が実に巧い。
次回公演も楽しみにしております。
劇団Ugly duckling コラージュ・リーディング

劇団Ugly duckling コラージュ・リーディング

PLANT M

AI・HALL(兵庫県)

2025/07/05 (土) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

二部目も拝見
これも過去にこの作者の演劇を見ないと・・・
一部よりも理解できたが・・・ むなしい時間が過ぎた感じ

劇団Ugly duckling コラージュ・リーディング

劇団Ugly duckling コラージュ・リーディング

PLANT M

AI・HALL(兵庫県)

2025/07/05 (土) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

二部構成 早割りで拝見
一部は過去にこの作者の演劇を見ていないと全く分からないと思います
ちんぷんかんぷんでした・・・

くじらのいびき リーディング

くじらのいびき リーディング

よるべ

ウイングフィールド(大阪府)

2025/07/06 (日) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇場でも拝見しましたが、リーディングも最高です 演劇では多様化される死ですが、とても考えさせられました

グッジョブ

グッジョブ

や印企画

シアター711(東京都)

2025/07/01 (火) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

祝旗揚げ公演。超満員の千秋楽に観劇。期待以上の面白さでした。中小企業のオフィスを舞台にした、ファンタジックなコメディだけど、妙にリアルで、思いっきり感情移入してしまいました。

ひとくず

ひとくず

映像劇団テンアンツ

本多劇場(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

祝本多劇場進出。開演遅延も尺の長さもなんのその。めっちゃ泣ける舞台ですね。ぐっときました。

7月か8月

7月か8月

劇団ノックステージ

SCOOL(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この劇団初めての観劇。癖のあるキャラが次々に現れての会話劇、スタイリッシュで、妙にリアルに感じて、期待以上の面白さでした。

いつだって窓際であたしたち

いつだって窓際であたしたち

ロロ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2025/06/17 (火) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

2015年から2021年にかけて創作された高校を舞台とした連作群像劇シリーズ。10作になったのを機会に改めてキャストを一新し上演する公演。シリーズの最初となる今作は2025年・2018年に上演しての三演めですが、ワタシは初見です。6月22日まで武蔵野芸能劇場小劇場。高校演劇のフォーマットどおり、舞台のセッティングと本編含め60分。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/07/post-30dddb.html

いつだって窓際であたしたち

いつだって窓際であたしたち

ロロ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2025/06/17 (火) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

もちろん、そのまま再現するのが演劇じゃないのだけど。
いったい、目の前にある一場面は何なんだって思いが終始あった。
昼休みの学校?教室?時間軸もなんだか良くわからず。
若手の演者たちも、不思議と高校生には見えなかったんだよね。
演技が悪いとかじゃないのですが。

世代が違い、青春の時期も遠い昔になってしまって、自分の感性がついていけないのかもしれないし。
もっとステージが小さく、客席との距離が近い劇場だったら、臨場感があがって面白かったのかもしれないなって印象を持ちました。

花がこがれる

花がこがれる

アユカプロジェクト

シアター風姿花伝(東京都)

2025/07/03 (木) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

時間と場所を自在に操った幻想劇。この世界観に浸れるかどうかが肝。謳いにある「香りを演出に加えた」は、会場入り口で お香を焚き 優雅な匂いを漂わすが、物語に直接影響しているかどうかは判らない。

舞台美術や人物の名前が 物語の世界観を表しているが、それに早く気が付くか。救いか冒涜か、人の心の奥底にある願望、それを現代では別の形で…。
(上演時間1時間45分 休憩なし)【Bチーム】

ネタバレBOX

舞台美術は中央奥にゴシック建築にみられる尖塔型窓3つ、その下に祭壇飾り。上手/下手に多くの花が活けてある。特に下手は、大木の枝が中央方向へ曲がり葉が茂っている。手前に横長テーブル2つ。全体の雰囲気は妖しげ。キャストは客席通路を使うが、それによって別空間があることを表す。

物語は 説明にある通りで、魔女の家を花屋と間違えて来た迷い子が、魔女に「夢を終わらせにきました」と。時間と場所は、中世or近世ヨーロッパの魔女の家(スナック魔女 カガミ)と現代の花屋。この2つの時間軸を行き来するが、さらに迷子の女性 アイリスが生死の狭間にいる魂、という二重の仕掛け。ここは何処 といったミステリアスな雰囲気、その中で紡がれる不思議な話がどう展開していくのか、その関心と興味を惹く巧さ。

魔女の家には多くの人々が集まり賑やか。いつも同じ話の繰り返しで盛り上がるが、その先の進展がない。今見ているのは夢の世界。そして集まっているのは死者、しかも不遇な亡くなり方である。魔女は死者を蘇らせようと研究(日本では反魂〈香〉?)をしており、冒頭 試験管とピペットを持った姿がそれを表している。この行為により異端審問となり、宗教裁判にかけられる。勿論 魔女狩りであり、花の魔女 カガミ、星の魔女 プラネを指す。一方、現代の世界では 意識不明のアイリスが入院しているが…。ちなみに現代の蘇りはAIで?

アイリス(花)は、その香りに効能があること。花言葉は「希望」や「信じる心」だという。物語に込めた意は、アイリスという女性そのもの。魔女の家(中世or近世)と花屋(現代)のシーンは、照明光を微妙に諧調させ 明るさが違うような。それによって雰囲気が違い、同じセットでも異空間といった感じ。ただ 登場人物が違っているにもかかわらず、世界観の違いが鮮明にならないのが惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
みんな鳥になって

みんな鳥になって

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/06/28 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

第一幕105分休憩20分第二幕85分。

今年No.1の作品かも知れない。間違いなく見逃したら後悔する。今、この世界状況で今作を日本で上演することは偶然ではなく必然。運命的なものを感じた。
ワジディ・ムアワッドが2016年に発表した作品。レバノン・ベイルートに生まれ内戦を逃れて8歳の時、一家でフランスに亡命。元々レバノンはフランスの統治下だった為、フランス語圏。だが15の時、滞在を拒否されカナダのケベック州へ一家で移住。ケベックの公用語もフランス語。カナダ国立演劇学校を卒業後、劇団を設立。2007年、国立劇場の芸術監督に就任。到頭2016年、自分達を追い出したフランス・パリの国立劇場の芸術監督に就任。その一作目である今作は彼にとって最大のヒット作となった。「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」にて『空を飛べたなら』のタイトルで公演予定だったがコロナにより中止。到頭本邦初公開。原題は『tous des oiseaux』(全ての鳥)、英訳では『Birds of a Kind』(ある種の鳥)、今回の日本語タイトルは『みんな鳥になって』。

照明が神懸かっている。ちょっと並のレヴェルではない。

現代の『ロミオとジュリエット』。ニューヨークの大学図書館、遺伝学・量子論・統計学を学ぶドイツ系ユダヤ人エイタン(中島裕翔〈ゆうと〉氏)はイブン・ハリカンによって書かれた「ワファヤット・アル・アヤン」(13世紀イスラムの人物辞典)を座ろうとしたテーブルに見付ける。偶然とは思えない程、この図書館に一冊しかないその本は彼が訪れる度待ち受けている。そしてそれを使って博士論文を書いているアラブ系アメリカ人美女ワヒダ(岡本玲さん)。そのどうしようもない美しさに理性が吹っ飛び思わず話し掛けてしまう。もう自分でも何を言っているのか解らないが本能的に必死になって。それを黙って眺めていたワヒダはくすくす笑い出す。何処か踊れる場所に行かない?

遺伝子の入れ物である46本の染色体、血族から受け継いだDNAに書き込まれている設計図。先祖から受け継ぐ情報は生物学的なものだけ。記憶や経験が遺伝する訳じゃない。最先端の科学を学び、遺伝情報を理解したインテリジェンスな若者達は旧来の迷信や因習など打破できる。民族の歴史など乗り越えられる。もうそんな時代じゃないんだ。

エイタンはワヒダを紹介する為、ドイツから敬虔なユダヤ教一家である家族を呼ぶ。ユダヤ教にとって重要な儀式、「過ぎ越しの祭り」。そこで待っていたのは絶望的なまでの家族からの罵倒。怒りに打ち震えるエイタンは科学的にこの不条理を分析し解明しようと決める。

ワジディ・ムアワッド作品は『森 フォレ』しか観ていないが、その時感じた手塚治虫感を今作でも強く感じた。とにかくストーリーが面白い。
まさに日本を代表する役者陣が世界の芯を握り締めたトップ現代作家の作品と格闘。今こそ観るべき作品。イスラエルとアラブ(パレスチナ)の憎悪の歴史に正しい解答はあるのか?この作品の中にその答があるのか?今作は映画化して世界中の人に観せるべきだと思う。
必見。

ネタバレBOX

世田谷パブリックシアターだと当り前のように前田亜季さんが出ているものだと思っていた。今回いないことに驚く。

第一幕終了時点では最後まで観たらこの問題の解決策に辿り着ける気がして興奮した。一体それはどんな答なのか?

エイタンは家族に対して不信を感じ、密かに全員のDNA鑑定をする。(このあくまでも科学的に分析するスタンスが素晴らしい)。父母との親子関係は証明されたが祖父とは血縁関係がないことが判明。80年代に離婚して一人イスラエルに暮らす会ったこともない祖母に自分のルーツを問い質そうとワヒダとイスラエルに向かう。ヨルダン国境のアレンビー橋(キング・フセイン橋)を越えてイスラエルの国境検問所へ。世界一厳しいとされる入国審査で足止めを食うワヒダ。先に抜けてバスに乗ったエイタンはパレスチナ人による自爆テロに遭い昏睡状態に陥る。遠い異国で一人ワヒダはエイタンの祖母やドイツの家族に連絡を取る。

エイタンの父、ダヴィッド(岡本健一氏)が物語の中心人物。凄まじい役作り。ぐうの音も出ない。

エイタンの母、ノラ(那須佐代子さん)。ユダヤ人メイク、髪型、眉毛、着こなし、徹底している。よく研究しているなあ。「私はただの雌犬よ!!」

イスラエル女兵士エデンが松岡依都美さんだと気付いた時の衝撃。凄い配役。

アル=ワッザーン(ワザーン)は伊達暁氏。「火の鳥」のように時空を超えて人間達の営みを俯瞰しているよう。

エイタンの祖母、レア(麻実れいさん)は『ガラスの仮面』の月影先生。劇薬。

エイタンの祖父、エトガール(相島一之氏)はクライマックスの独白の迫力。口から勝手に言葉が迸るような怒涛の告解。

まるで岡本玲さんの通過儀礼のように化物役者陣との対決が続く。この中で生き抜くのは凄まじい。リアル『ガラスの仮面』だ。ワヒダはファム・ファタール(運命の女)。出逢う者出逢う者の人生に対し劇的に火を点ける。エイタンとの別れのシーンは『もののけ姫』だ。

Hey! Say! JUMPの中島裕翔(ゆうと)氏は『ウェンディ&ピーターパン』が印象深い。このメンバーに組み込まれるのは相当キツかった筈。よくやった。ラストに繰り返される台詞の意味。作家のこの問題に対する決意表明だと思った。「決して慰めたりはしない」。この問題に対して感傷的なものなど必要ない。慰めの言葉も要らないしこちらからかけることもない。有るのはこの地獄と向き合う人間の覚悟だけ。この地獄と自覚的に向き合う強い気持ちだけ。人類は憎悪を乗り越えることができるのか?きっと無理だろう。だがしかし、だがしかし···。

ワヒダが博士論文のテーマに選んだのはアル=ワッザーン(ワザーン)。
ハッサン・アル=ワッザーンはスペインのイスラム教徒の家に生まれモロッコで育ち外交官となる。1518年頃、旅の途中で海賊に襲われ奴隷としてローマに拉致、教皇レオ10世に献上される。洗礼を受けキリスト教に改宗、翻訳や辞書作成、北アフリカ全域を旅した経験を「アフリカ誌」として著した。
ワッザーンの好んだ話に「税を免れる鳥」がある。鳥の王に税を要求された鳥が海に逃げ魚と暮らす。今度は魚の王が税を要求するとまた空に戻っていく。まるでイソップ寓話の「鳥と獣とコウモリ」のような話だ。

レアがエトガールとダヴィッドとの別れを決めた事件。
1982年9月、レバノンで起きたサブラー・シャティーラ事件。イスラエルが隣国レバノンに侵攻し、親イスラエル政権としてバシール・ジェマイエル大統領を誕生させるもすぐに暗殺されてしまう。その報復として民間人しかいないパレスチナ難民キャンプに突入、二日間で三千人以上を無差別に虐殺した。こんな事をやっている国でダヴィッドを育ててはいけない。

「過ぎ越しの祭り」に隠したアフィコーメンを子供達に探させ、見付け出すとプレゼントが貰える儀式がある。マッツァー(小麦で作られたクラッカー)を割り、布で包んで家の何処かに隠す。それをアフィコーメンと呼ぶ。ダヴィッドはどうしてもそれを見付けられなかった。

どれだけ科学が発達し全てをデータで分析することができてもそれだけでは切り離せないカルマのようなものがある。ワヒダもエイタンも理性や知性では否定した筈の“それ”に抗えないことを知る。どれだけ頭で考えても心がついていかないのか。

※ここから余談。
紀元前586年、ユダ王国が新バビロニア帝国によって滅ぼされ、それ以来ユダヤ人が独立した国を持つことはなかった。西暦135年、ローマ帝国の支配下にあったユダヤ属州が大規模な反乱を起こすも本拠地であったエルサレムが陥落し凄惨な敗戦。ユダヤ教の根絶を考えたローマ帝国はユダヤ人をこの地から追放=ディアスポラ(離散)。住む土地を失ったユダヤ人達は地中海世界や中東、欧州各地に散らばり共同体を形成。だがキリスト教社会では「キリストを十字架に掛けた連中」とユダヤ人は差別され続けた。土地を所有することも許されず就く職業にも制限。キリスト教では禁じられ侮蔑されていた金融業(金貸し)を営むことに。各地のユダヤ人同士で築かれた信頼関係から、離れた地の取引でも信用が置け重宝された。ユダヤ人金融ネットワークは外国為替業務や証券の発明など現代の金融業務の礎を築くこととなる。18世紀、フランス革命後、徐々にユダヤ人も欧州各地で一般市民と認められるように。

第一次世界大戦に敗れたドイツは巨額の賠償金を支払わねばならず、経済はハイパーインフレ、世界恐慌と相まって失業率40%、治安は悪化、社会不安は増大。アドルフ・ヒトラー率いるナチス党は戦争に敗れた理由をユダヤ人と社会主義者の裏切りによるものだと喧伝。「背後からの一突き」だと。国民の全ての不満や怒りをユダヤ人への憎悪に転換させた策略は当たり、1933年に政権を握る。
1935年ナチス・ドイツがニュルンベルク人種法を制定。ユダヤ人との結婚を禁止し全ての公職から追放、公民権を奪う。そこから迫害は加速し「ユダヤ人問題の最終的解決」として強制収容所に送り込み大量処刑、ユダヤ人の絶滅を計画。1945年5月連合国に敗れるまでに600万人のユダヤ人を虐殺=ホロコースト。

19世紀末から20世紀初頭にかけてロシア帝国でのユダヤ人虐殺=ポグロム(ロシア語で破滅の意味)が多数発生。自分達を守ってくれない国家体制に絶望したロシア系ユダヤ人達はパレスチナに移住を始める。現在のイスラエル建国の礎に。
当時イギリスが統治していたパレスチナ。1918年の調査ではアラブ人(=パレスチナ人)70万人、ユダヤ人5万6千人が居住。ユダヤ人の大規模な移民が始まるとアラブ人(=パレスチナ人)との間に何度も武力衝突が起きた。
イギリスが統治を終了し新国家を作ることに。1947年国際連合は「パレスチナ分割決議」を採択。パレスチナを二つの民族による二つの国家に分けることに。だがかなりユダヤ人側に有利な土地分割だった為、内戦に突入。1948年イスラエル建国宣言。それを認めない周囲のアラブ連盟5ヶ国は即宣戦布告、第一次中東戦争に。アラブ側15万人、ユダヤ側3万人という圧倒的不利の中、イスラエルは勝利。国連決議より広大な地域を占領した。その後第四次まで戦争が繰り返されるが米英の軍事的援助を受けたイスラエルは全てに勝利、国土を広げ続けた。

イスラエルにはアメリカの利権が絡んでいる。アメリカにとって中東で安定して石油を確保する為にもイスラエルの存在は大きい。かつてアメリカの国務長官は「中東に家を構えたアメリカの分家」とイスラエルを呼んだ。

ユダヤ人の物語はこの世の仕組みが暴力でしかないことを知った者達の話。暴力によってローマ帝国から住む土地を奪われ、暴力によって差別迫害され強制収容所に入れられ虐殺された。絶滅から自分達を救い出したものは連合国側による暴力だけであった。ノルマンディー上陸作戦など現実的な暴力だけがナチス・ドイツを打ち倒した。決して対話や祈りなど平和的なものではない。この世界で生きていくには暴力で勝つ以外に方法はない、と追い込まれたユダヤ人はひたすらその道を突き進む。世界中から嫌われ憎まれ罵られても、もうこの道を引き返すことはできない。ロシアと同じく暴力で敗北するか核爆弾を使用して道連れにするかまで追い詰められている。もう善悪などそこにはない。ここまでやってしまったのだ。世界と和解など不可能だろう。

観劇後、BLANKEY JET CITYの「不良の森」を聴いているような気分。

静かな森の奥で壁にもたれて
揺れる草を見ている少女もいつかは知ってしまう
都会を流れゆく濁った水のように汚れた心があることを
でもそれは美しいことなのか ことなのか
花がこがれる

花がこがれる

アユカプロジェクト

シアター風姿花伝(東京都)

2025/07/03 (木) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

Aチームを観劇しました。
劇場入口から癒される香りが漂い、花が溢れるセットも素敵でした。
ファンタジックで意外性もあるストーリーで、面白かったです。
不思議な雰囲気に、役者さん達の熱演も加わり、夢の世界に入り込んだ感覚になりました。
素敵な時間を過ごしました。

はぐらかしたり、もてなしたり

はぐらかしたり、もてなしたり

iaku

シアタートラム(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

7/5観劇

MY TYPE~早乙女琴子の場合

MY TYPE~早乙女琴子の場合

東京夜間飛行

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2025/06/28 (土) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想遅くなりました。印象としては良くできたお芝居でした。とても面白かったです。語りもエピソードもうんうんという感じで拝見でした。楽しい時間ありがとうございました。

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

近鉄アート館

SPACE9(大阪府)

2025/07/01 (火) ~ 2025/07/24 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

桂かい枝さんが良かったです☆

しおり記念日

しおり記念日

いきるひ

SPACE9(大阪府)

2025/07/05 (土) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前半だれたけど、後半盛り返しが素晴らしい!
流行りのLGBT系だけど、とても上手く表現出来ていたと思いました!

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