
焼肉ドラゴン
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2025/10/07 (火) ~ 2025/10/27 (月)公演終了

埋められた子供
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
Pit昴公演の見ものと言えばやり過ぎ舞台美術と小道具、狂気すら感じる。今作では本物の土塊や砂がステージを覆っている。設定は普通の民家の居間なのに。登場する奴等は安いB級ホラー、スプラッター映画の馴染の連中。映画なら皆惨殺されるだろうが今作はそういうものではない。ヘロインでダウナー状態のデイヴィッド・リンチが朦朧として書き殴った覚書みたい。例えるならトビー・フーパーの撮ったエクスプロイテーション(低俗搾取)映画をタランティーノがプロデュースしてリメイク、監督にデイヴィッド・リンチを起用。『悪魔のいけにえ』のようなメジャーなものではなく、あえて『悪魔の沼』のような作品を選択するセンス。70年代ホラーの空気感とマジックリアリズムのハイブリッド。
深夜、土砂降りの大雨、長いドライブ。知り合ったばかりのヴィンスが6年振りに故郷に帰るのに付き合うあばずれのシェリー。寂れた田舎町、荒れ果てた農場、崩れ掛かった古い家。主演のシェリーには映画なら若い頃のジュリー・デルピーかロザンナ・アークエットでどうだろう。家に入るとそこに居る連中は誰一人孫であるヴィンスのことを覚えていない。どうにも噛み合わない会話。シェリーはその異様な雰囲気に帰りたくてたまらなくなる。老人に頼まれて酒を買いに行くヴィンス。シェリーは独り残される。悪い予感。
MVPはシェリーを演った髙橋慧さん。マルシア似。人参の皮を削ぐシーンが良い。
家の老主人ドッジ役金尾哲夫氏は津川雅彦みたいでカッコイイ。病気持ちで酒を止められている、
その妻、ハリー役、一柳(ひとつやなぎ)みるさんの声が冒頭二階からキンキン頭に響く。
ニューメキシコ州から実家に戻って来た長男ティルデンに佐藤洋杜氏。トウモロコシが本物なのかフェイクなのか判別つかず。
左脚が義足の次男、ブラッドリーに中西陽介氏。
ハリーと親密な関係の神父、ファーザー・デュイスに宮島岳史氏。
ドッジの孫でありティルデンの息子、ヴィンスに赤江隼平氏。藤井尚之似。
去年、名取事務所がやった『メイジー・ダガンの遺骸』に近い感触。現代のある意味ステレオタイプの家族像を過剰なまでに描き込み無意識の底をひたすらに掘り下げると集合的無意識に行き着く。誰もが何故か共有する感覚。辻褄の合わない正解の出ない物語にこそ普遍的な強度が宿るのだろう。妙な面白さに充ちていた。隠し持ったスキットルで一杯飲りたい気分。
是非観に行って頂きたい。『ツイン・ピークス』や『ロスト・ハイウェイ』好きにも。

ひのないところに
青春事情
駅前劇場(東京都)
2025/09/24 (水) ~ 2025/09/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/09/25 (木) 15:00
とある町の消防出張所の日常。
制服のまま自販機で飲料を買っていただの訓練で笑顔になっていただの理不尽な市民からの苦情などから役所の担当者と摩擦が生じ、祭りでの事故から衝突に至るのがクライマックスだが互いに相手を理解して和解するのが何とも爽やか。
また、沢山のファイルなどがあり(おそらくは)リアルに再現された執務室をメインに下手奥にソファを置いたスペースを作り署員の自宅やスナックとして使う他に舞台前面の左右に非常ランプがある柱を設置し、その中ほどに消防車などのミニカー(←劇中の台詞にも出てくる)を置いたりする舞台美術も見事。
25周年を迎えたベテランならではのワザか?

ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス
公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/13 (月)公演終了

いえないアメイジングファミリー
sitcomLab
ザ・ポケット(東京都)
2025/10/01 (水) ~ 2025/10/12 (日)公演終了

埋められた子供
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
プログラムに書かれていたが、作者のサム・シェパードはベケットに傾倒した時期があったらしい。不条理で、暗くギスギスした、ショッキングな作品。
なんだか変で独特な登場人物たちを演じる俳優たちの演技は優れており、この作品のグロテスクな雰囲気を上手く伝えている。特に父親役は凄い。演出も独特で、家の中であるはずの舞台上には砂が敷きつめられ、その上で時に激しい演技をするので砂埃が舞い上がり、俳優たちは砂まみれになる。床が砂で埋まっている不自然さが汚らわしさや不気味さを高める。意図されたことと思うが、狙いどおりなのではないか。

誠實浴池 せいじつよくじょう
庭劇団ペニノ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
庭劇団ペニノと、台湾の団体「Shakespeare's Wild Sisters Group」による合同公演。初演は2024年に台湾にて、今年2025年に豊岡、富山、そして東京とツアーを行ってきました。タイトルを日本語で表記するのなら『誠実浴場』でしょう。浴場又は欲情。あるいは浴場で欲情。かもしれません。ホームページには、「夜毎、大衆浴場に戦死した男たちがやってきて、残してきた女を想い〈プレイ=演劇〉する─。」との記載があり、これも的確なコピーだと感じます。スタッフクレジットを見ると、その大部分が台湾の方々。にも関わらず、僕の記憶にあるペニノの様相や世界観を強く想起させられたことが驚きでした。平たく言えば「すごくペニノっぽい」と感じつつ、合同創作であることは間違いないため、とても相性の良い二団体による合同公演だと思います。

いえないアメイジングファミリー
sitcomLab
ザ・ポケット(東京都)
2025/10/01 (水) ~ 2025/10/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台全体をとおして感じたのは役者をはじめ劇団全体に余裕を感じました。お客をいじるのも空気をつくるのもうまいなと思いました。今回は役者がシャッフルされた回のようで役者さんのなかには1日でセリフを覚えた人もいるとかほんと考えられません。役者さんの脳みそどうなっているのかと…です。

Jeanne d’Arc -ジャンヌ・ダルク-
劇団ミュ
ウッディシアター中目黒(東京都)
2025/10/02 (木) ~ 2025/10/13 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「シノン」を観劇
「ジャンヌ異聞」とでもいうものかと思っていたら、正統的な「ジャンヌ物語」であった。
この「観てきた!」ではここまで満点ばかり。ミュージカル好きの私は期待して出かけてみたのだが、少しハードルを上げすぎてしまったようだ。
もちろん訓練された歌うまな方がほとんどなのだが残念な方々もいらして、<…ああだ…こうだ…>と悪口を連ねてみたのだがこちらの気も下がってしまったのでとりあえずはボツ。
ポジティブなことを書くと、一番の収穫は常川藍里さん。ホームページのやさしい好青年風の写真とはまるで違った切れの良い悪役ぶりは舞台の中盤を支配していた。もちろん歌も一級品だ。
とはいえ歌のうまさは松原剛志さんが圧倒的。レベルが違いすぎて浮いてしまうくらいだ。
ところで、わが日本の高市ジャンヌは本物なのだろうか。最初の戦いで倒れてしまうような偽物なのだろうか。私は結構期待しているのだが。

「ニュー御釜怪奇譚」(にゅーおかまかいきたん)
レティクル座
萬劇場(東京都)
2025/10/01 (水) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/03 (金) 19:00
東北地方、宮城・山形両県にまたがる〝蔵王山〟という語り口から始まるあらすじから、比較的真面目で実在する場所、実際にあったことを題材にしたドキュメンタリー風な廃村地域活性化、笑いあり、人情あり、涙ありの村興し喜劇かと思った。
だがしかし、あらすじを読み進めていくとそうではないことが分かってくる。その頂上に広がる火口湖「御釜」の底から、突如ゾンビが甦った!
ゾンビたちは山麓の村を襲い始めたが、そこは日本一の限界集落「釜底村」
すでに滅びかけていたところに、パンデミックなど起こるはずがなかった‥‥。
無害化されたゾンビたちは村おこしに利用され、看護ゾンビ、農作ゾンビ、そば職人ゾンビに姿を変え、次々と村に就職してゆく!
――蘇るのは、死者か、村か。
かつてのように、村に活気は戻るのか‥‥?
と言ったようにあらすじが続いており、そういう風にあらすじが展開しているところから、村興し話と最初に捉えた部分は間違っていなかったようだが、ゾンビが出てきたり、その余り一般的には良いイメージがないゾンビを、逆転の発想で寧ろ村興しに徹底的に活用しようというような奇想天外な展開になっていく可能性が高いあらすじに、ごっちゃ煮的で、何でもありで、下らなくて、しょうもなくて、御釜とオカマを掛けているんじゃないかと言うような、どうでも良い疑念を抱かせる辺り、前にも横浜市県立青少年センター内の『HIKARI』というところで中編、短編劇の休憩なしの連続上演を観たことがあるレティクル座らしさを感じる劇だと思えた。

地のはてから
もかずきっちん
シアター風姿花伝(東京都)
2025/10/02 (木) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/02 (木) 19:00
価格4,000円
10月2日〈木〉19時公演
観劇に先立って、乃南アサ著『地のはてから』を読みました。
自分としては今まで知らない作家・作品でした。
そして、物語の魅力に一気に取り憑かれました。
明治時代、国策として蝦夷地に送り込まれた開拓移民たち・・・
知床の過酷な自然。戦争に突き進む大日本帝国。
そして抗えない家族の運命に翻弄されながらも、
前を向いて必死に生き抜く女性の物語でした。
待ちに待った演劇の当日がやってきました。
上下2巻にまたがるこの作品を、舞台装置も音響も使わず、
3人の女性役者が演じていました。
役者さんたちの熱のこもった演技。
小説の魅力を少しでも伝えたいという想い…
それが、ものすごい迫力となって、観客を圧倒しました。
すばらしかったです。
帰宅後、小説をぱらぱらめくりながら、心地よい脱力感に浸っています。
いつか近いうちに岩尾別に行ってみたいと思います。
ありがとうございました。

コントライブ『30ら』
品川親不知
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/10/02 (木) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/04 (土) 14:00
価格2,500円
友人のすすめで3年ほど前に品川親不知を知り、それからほぼ毎回行っています。今回も行ってよかったです。
面白いコントは世の中にたくさんありますが、ただ面白いだけでないのが、本当にすごいです。
時に不真面目に、でもだいたい真面目に生きてると思うんですよ、ここを読んでしまうような人は。私もそうなんですけど。それで、真面目に生きていたら、なんかちょっと視野が狭くなっていて、気づいたら何もない部屋の壁に向かって歩いてるようなことってありませんか。そういうズレを、ちょいちょいっと叩いてくれるような、それでいて、あたたかくもある。そういうものを作れる人たちは他にいないと思います。
しかも、頭をたくさん使わなくても、スッと心に入ってくるという。難しいことを難しく喋ることはできるけど、難しいことを簡単に説明できる人は頭いいし、面白く伝えられる人は真に頭いい、というのが、私の持論のご説明でした。
具体的な感想は、ネタバレboxの欄に書いておこうと思います。「これからご覧になる方のために、ネタバレ(公演内容に過剰に触れること)は下の『ネタバレBOX』へご記入下さい。」って書いてあるので。もう公演終わってしまったから意味ないかもしれないけど。
とにかく、品川親不知のメッセージ?というか存在?を社会は待ってると思います。いや、「こういうのが欲しいな」と認識できて待っている人はまだ多くないし、芸術ってそういうところに立たされがちなのかもしれませんが、海くらいの深さに潜ったところではみんな待ってると思います。待ってるべきです。そうじゃなかったら、どうして希望を持って生きていけるのでしょうか。なので、団員の皆様とスタッフの皆様は大変なことと楽しいことがあるかもしれないけど、末永く続けて欲しいし、これからの益々のご活躍とご健勝をお祈りしていきたいです。片道2時間半かかったし、最寄りのスタバは混んでいて入れなかったけど、観に行って本当に良かったです。
あと今までミニマリストになるために台本を買わなかったけど、今回初めて買ったら、台本とエッセイを読めて、帰宅後まで楽しさが持続しました。それに、好きな時にいつでも読めるのです。なんで今まで買わなかったの、私。

D.S.T.P (Don`t stop the play) 〜芝居を止めないで〜
A.R.P
小劇場B1(東京都)
2025/10/01 (水) ~ 2025/10/08 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/05 (日) 13:05
出ている役者も男女問わず、違う劇団のジャンルもSF、ファンタジー、アドベンチャー、幻想怪奇エログロナンセンス、タイムスリップもの、実験劇など全然違った作品に出ているのを何度か見かけて、特徴的で見覚えのある役者たちが今回の劇に出ており、安心感があり、それでいて他の劇団の劇で観た時と演技パターンが似通っておらず、マンネリ化もしておらず、流石はプロの役者、このような小規模でこじんまりとした比較的分かりやすい喜劇であっても、一切妥協せず演技して、また新たな可能性を引き出せていることに、感激してしまった。

誠實浴池 せいじつよくじょう
庭劇団ペニノ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
やっとぺ二ノさん初体験出来ました
このところなんだかなと言うものばかり見ていたせいか?
舞台とか作品と呼べる繊細な演劇を拝見出来て大変満足です
片桐はいりさん、テレビのドラマでしか拝見したことありませんでしたが
とても自然な演技でありながら見応えある素晴らしい女優さんでした
私の中で見たベスト3に入る秀作になりました
みなさんありがとう

I, Daniel Blake ―わたしは、ダニエル・ブレイク
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
紀伊國屋ホール(東京都)
2025/09/26 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
よく見ると本作はケン・ローチ監督の映画が原作。多作ではなく自分も2,3本しか観てないが、彼は炭鉱労働者や社会の周縁にある人々に焦点を当て、苦境にあっても力強く生きる姿を描く「イギリス映画の良心」と言われる(に相応しい)映画監督。
今回の舞台も英国のとある地方都市で「生きづらさ」に直面する人々を描いた物語。主人公ダニエル・ブレイクは老境に差し掛かった、どうやら一人暮らしの男。心臓病の診断を受け仕事を止められるが、役所では就労可能と判断され、手当てを受けるためには就職活動をする必要があると指示される。この役所とのやり取り(闘い)が延々と続く事になるが、その役所での最初の場面で、彼はある母娘が役所の窓口と掛け合う光景を目にする。
母は約束の時間に遅れた事を詫び、今日この町に来て、散々探してやっとここへ辿り着いた事、支給が無ければ万事休すである事を訴えたが、役人は「時間に遅れたため今月の支給は無し、来月来なさい」と回答し、曲げない。母は食い下がる。「自分だけなら何とかする、だが娘が居る、明日から娘は学校に行く。財布の中は、今これだけしかない、見て下さいホラ(と財布を開いて見せる)・・」。言葉がきつくなると役人は「穏やかでない言葉使いは貴方のためになりませんよ」と恫喝する(この台詞は後の場面にも聞かされる。誰がキレさせているのか!・・と観客である自分も頭に血が上る台詞だが、役人には罪意識がない)。
ダニエルは見かねて声を掛ける。役人は悪びれもせず規則だけに従って市民の処理に当る。そして食い下がれば「言う事を聞かない不逞分子」として警察が呼ばれる。
折々に、貧困に関するケン・ローチの言葉や過去吐かれた政治家のコメントが字幕に映される。社会に問題は起きていない、とする言説と、その言説に抗う言説の両方。
かつてイギリス病という言われ方が低迷から脱せない英国経済を言う言葉としてあったが、画期となったのがサッチャー首相であり、米国大統領レーガンと相伴い新自由主義への大胆な転換が図られた、とされる。炭鉱労働者を切り捨て、貧困層と格差を生み出したが、これらに対し新自由主義は冷たかった。その大義名分は「改革」。忍耐の末には改革された社会が待っている・・。
この芝居に描かれた役人の態度は非情で、怒りをかき立てるが、日本のそれとは異なると見えながら本質は同じかも知れない。
なぜ規則を作り、これを厳しく適用するのか(手当て支給の間口を狭めるのか)、と言えば、お金を余計に出したくないから。これは彼らの非情な態度を裏付け正当化する理屈だ。
ダニエルは「ハンコを押せば済む話じゃないか。今彼女の申請書にハンコを押し、彼女は金を受けとる。なぜその単純な事がやれないのか」と言う。だが母親はそれをとどめ、「事を荒立てたくないから」とダニエルの親切を拒む。役人の決定は覆らず、母子共々追い払われる事になる。借りたアパートの鍵だけ預かっているがその場所も判らないという彼女らに、ダニエルは道案内を買って出、これも母は固辞するが結局受け入れ、アパートに入るや、ゴミ溜めのような状態に唖然とする。電気は課金する金がないため通せない。全ては今日の支給を当てにしての算段で、娘には先に新しい学校で恥ずかしくない服を購入し、すっからかんである。僅かな希望にすがり、安い公共住宅にやっと当って遠方へ越して来たらこの有様、萎える母親に、ダニエルは捨てたもんじゃないさとゴミを片づけ始める。この日から母子とダニエルの付き合いが始まる。
一方ダニエルの住む住宅には中国人の男がいて、中国本国で製造している靴の直接輸入で美味しい商売が出来ると息巻き、その最初の売り声、軌道に乗っているというエピソードがある。ゴミ捨てをダニエルに任せるような男だが、彼が困っている様子を見ると心配気に声を掛けて来る。この悪意のない隣人はイギリスの平均的庶民の空気を伝える。ダニエルは不服申し立てという手段に出る。申し立ての機会は担当する相手からの「電話」に応えるという形でしか遂げられず、電話はいつまで経っても掛かってこないと役所で訴えるも聞き入れられない。仕事を探す面接を幾つかやったと報告するが、その証拠は?と訊かれる。「今まで俺がこの口で言った事以外の証拠を出させられた事などない」と答える。
母子を訪ねたダニエルが目にする断片にも、一つずつ変遷が見られる。心配になって訪ねるダニエルだが、母はダニエルの素朴な愛を「自分の惨めさ」ゆえに拒む。子供は学校で臭いの事を指摘され、変な服だと囃し立てられているようである。母はある慈善グループの会合で出会ったある人から「商売」の知恵を授かるのだが、ダニエルが訪ねた時、シュミーズ姿でベッド脇に座る母の姿を目の当たりにする。
訪ねてこなくなったダニエルの家の玄関に、娘が座っている。利発な彼女は、私たちは友達、だから訪ねて来るのよ、と言う。
厳しい現実の代わりに再び、新たに友情を手にした彼ら。ダニエルが切れるきっかけは、面接に訪れたある店の店長から「貴方を採用したい」と言われ、「実は自分は心臓を患っていて働けないのだ」と言うと、「お前はそういう連中の一人だったんだな。周りを見てみろ、皆自分の体を使って働いている。誇りを持ってる。お前らのような公金をくすねようとする狡い奴らが居るからこの国はダメなんだ」と罵られる。自分で選んだ訳じゃない。しかも、手当ては支給されない。その後の役所での女性の対応(面接の証拠がない、面接をしていないで手当てを申請するのは規則違反、違反には罰則が適用される事を覚えておいて下さい、等の説明)に「もうや~めた!」とダニエルは言い、役所の外の壁にスプレーで落書きをする。「私は、ダニエル・ブレイク。」
ついに「不服申し立て」が認められ、証言を明日に控えた日、ダニエルは母にメモを渡す。明日読み上げよう思っている事を書いた。今日帰って目を通してチェックしてほしい。その夜、心臓発作で亡くなるダニエルブレイクは、声なき人々の手によって、静かに葬られる・・という冒頭見せたムーブが繰り返される。芝居はそこに辿り着いたのだ。そして母はダニエルが書いたその読まれる事のなかったメモを、読んで聞かせる。静かに暗転。

誠實浴池 せいじつよくじょう
庭劇団ペニノ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
台湾の劇団とのコラボという事で何を見せられるか全く未知の状態で観劇。既視感があったのはペニノが以前やった「蛸入道」だったかのパフォーマンスで、これは最初から最後まで形式に則った儀式を延々と見せられるという際物だった。楽器を鳴らしたり拍子を打ったり、観客も鳴り物を持たせられた。各所で炭火が焚かれ、演者は汗だくになって儀式をやり切るのであった。
本作では海沿いの寂れた場所にある廃業した浴場の中で、日没と共に何らかの商売の営業が開始するのだが、この着想と、これをやり切る執念に脱帽する。異様な光景が、伏線も回収の気配もなく晒され、まごついてる間に、この見せ物は見事に完結を迎えているのであった。片桐はいりという俳優無しにこの世界観を出せただろうか?とも考えた。

砂漠のノーマ・ジーン
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2025/09/26 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
オーストラリアが舞台の一風変った二人芝居は、森尾舞と西尾友樹という頼もしいタッグにより、また個人的に全幅の信頼を置く演出により約束されたような物、とは言いじょう、作者だけは(日本人なのに)ネットで幾ら探しても素性を知るに至らず、さて何が飛び出すか不安と期待に胸躍らせて劇場の席に収まった。
エッジの効いた脚本の書き手は「滅び行く言語」への大きな関心をパンフで述べている。世界には数千もの言語があり、という事はその大部分が極少数の人間が使用する言語であり、その大部分が絶滅の危機にあると言う。初耳であった。合衆国には数百の、中国にも二百近くの、台湾やチベットにも数十の言語があると言う。国土や人口には比例しない。歴史上国境が幾度も塗り変わったり支配国が幾度も変った(台湾もその一つ)国には、領土の周辺へ追われた「先住民族」が居た訳である。日本における少数言語はアイヌと沖縄地方の数言語であり、それ以外はない。
本作では、二十数年前に「最後の話者が居なくなった」はずの言語を喋る者が警察に保護され、言語の研究者である男が捜査協力を請われてやって来た、という形で言語が取り扱われる。鍵の掛けられた一室にいる女に、マイクを通じて男が喋り掛ける。英語で話す男の声(録音か?)が聞こえるのは冒頭だけかと思いきや、どこかで聞いた声。西尾氏の声である。流暢な英語を話す男の声色は、捜査を担う男のそれではなく、絶望視されていた現存の研究対象を見出した歓喜と興奮のそれである。実にうまい。

MY TYPE~OL早乙女琴子の場合
東京夜間飛行
下北沢ハーフムーンホール(東京都)
2025/10/02 (木) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★
3人の登場人物をおひとりで演じるという演目でしたが、
メインキャストは「永遠のアラフォー」という設定でしたが、ちょっと「今」のアラフォー独身OLとずれがあるのかな、と感じました。
3人ともちょっとまあ、いるかも?という感じでしたが、個人的には肌に合いませんでした。
途中、ちょっと見ているのがつらい感じでした。
ピアノとヴァイオリンの生演奏がもったいないなぁ、とも思いました。
お客様はちょっと年配の方多め?で、たぶん常連さんか知り合いの方なんだろうという雰囲気でした。

小さな王子さま/夏の夜の夢
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2025/08/30 (土) ~ 2025/10/11 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「夏の夜の夢」
これは傑作だと思う。この手の芝居でこんなに子供達に受けているのは余り観ない。岩崎う大氏の上演台本にも感心した。65分で「夏の夜の夢」で子供達にも楽しめる娯楽作として成立。演出のシライケイタ氏にも感服。テンポがいい。何役もこなす役者の着替えは上手下手でやっていて全て観客の見てる前。舞台美術・青山健一氏がまた凄い。巨大な発泡スチロールを不均等な多角形の球体として黄色基調の様々な色で塗りたくる。その月が空に昇っていく。月を多面体にしたセンスが図抜けている。色とりどりな段ボールの箱がカラフル。更に衣装・摩耶さん。電球を帽子や服に仕込んで光らせるアイディア。花や蝶や果物をイメージした妖精の衣装。鈴木光介氏作曲の歌もいい。ララランランランランララン。
跳ねないように工夫されたプラスチック?の小さなゴムボール。赤青黄緑紫が1000個程ステージに撒き散らされる。このアイディアが抜群で役者が歩き回るたんびにザザザザザとそこら中に転がりステージ外へ落ちたりする。時には怒りの表現として拾ってコミカルにぶつけ合う。
手話表現者・西脇将伍氏は生まれつき耳が全く聴こえないろう者。彼は妖精パックとして台詞を手話で伝える。その際、同時音声通訳として上手端や下手端でマイクを持った役者(武田知久氏、峰一作氏)が代わりに声を出す。無音の世界で生き生きと見事に踊る姿に驚く。何処でタイミングを合わせているのか。
西脇将伍氏はさかなクンっぽい。
峰一作氏は深沢邦之っぽい。
滝本圭氏は佐野史郎っぽい。
坂本夏帆さん、木ノ下藤吉氏、武田知久氏、何役も見事にこなす。
山﨑薫さんはヘレナを眼鏡で猫背で劣等感丸出しの喪女として表出。その自嘲気味な話し方など子供達に大受け。分かり易さで笑いを取る。その後、別の役は別のアプローチで演じ分け、その意図が子供達にも伝わっているのは流石。空気で笑いを掴む勘の良さ。
かなりの完成度。来年もやるだろうから観た方がいい。

『新幹線も弾く毛布と愛おしい明け方〜空からモグラの穴まで空虚』 『小鳥。名前はコネリ。』 『あたたたかな北上』 3本立て
コトリ会議
ウイングフィールド(大阪府)
2025/10/03 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
うーん🤔
過去作品3本オムニバス
金曜日のサラリーマンには…
なんとなく分からないようで、こう言いたいんだろうな~と…
いつもそんな作品だけど