住み込みの女の観てきた!クチコミ一覧

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木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』

木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/31 (水)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

木ノ下歌舞伎の『東海道四谷怪談』を観劇。

今作は鶴屋南北のオリジナルに沿って、抜粋版ではなく、通し上演で、公演時間は6時間だ。
初演時は、「忠臣蔵」と「四谷怪談」を2日間かけて、1日目に両作品の前半部分、2日目に両作品の後半部分、そしてラストは討ち入りという展開で、表の忠臣蔵、裏の四谷怪談になっているのがミソで、両作品を観る事によって、吉良上野介に復讐を誓う武士たちと、その武家社会に翻弄されながらも、生きていかなければいけない市井の人間模様が描かれている。
「忠臣蔵」を観ることは出来ないが、今作では、浅野内匠頭の藩が、お家断絶になってしまい、それによって生きてく事すら困難な状態になったの武士と庶民たちの話である。

今作は、内容は一切変えずに、セリフは現代口語、背景も現代の様である。歌舞伎として描いておらず、あくまでも現代演劇として描いている。
伊藤喜兵衛にそそのかされて、孫のお梅と夫婦になってしまう伊右衛門、そしてその策略の生贄になったのはお岩で、彼女が呪ったのは伊右衛門ではなく伊藤喜兵衛、惚れた女欲しさに人を殺めたのが、それは以前に世話になった方の子息、そしてやっと手に入れた女は実の妹で、近親相関になってしまう有様、そして病で、討ち入りに参加出来ずにいる又之丞に、命をかけてまで、薬を手に入れようとそる小仏子平などなど、庶民は社会と関係を持たずには生きてはいけないにせよ、それを得るにはあまりにも代償が大きすぎて、生きる事さえ命がけだ。
そんな彼らの生き様を現代演劇という手法で、描ききっているからか、鶴屋南北の書いた当時のテーマが、現代でもいとも簡単に掴み取れるのが、今作の面白さであろう。
そして6時間という長尺ながら、飽きもせず、退屈もせず、疲れもせず、まだまだ観れるぞ!という気分にさせてくれる良作に出合うのは、今の現代では稀有である。
天の敵

天の敵

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/05/16 (火) ~ 2017/06/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

イキウメの『天の敵』を観劇。

ジャーナリストの寺泊は、若手で人気の菜食料理研究家・橋本に取材を申し込む。寺泊は自分が、持病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症しているからか、このような食事での健康療法や長生きに対しては、疑いの念があるようだ。
そして寺泊は、戦前に食餌療法を研究していた長谷川卯太郎に橋本がそっくりなので、同じ家系か、もしくは孫ではないかと問いただすと、実はその長谷川卯太郎は自分で、現在122歳だという。
唖然とする寺泊だが、橋本(長谷川卯太郎)にインタビューしていくうちに、驚愕の真実が語られていくのである…….。

若返りや長生きの研究、不老不死などの世間の健康ブームに警告が鳴らした作品である。
戦時中から現在に至る食餌療法の研究を、歴史を通して紐解いていき、それを化学的に分析し、それを仮説の物語として展開して、その仮説で立てた物語に、我々は「本当かも?」と思わずのめり込んでしまうのである。
疑いもせず、一瞬でも信じた観客のみが、この世界の虜になってしまうのだ。
その辺りは、代表作『関数ドミノ』に似ているのだが、観客をちょっとした隙間から、架空の世界に誘う戯曲の技は、毎度の事ながら冴えているのである。
そして真実を知ったジャーナリストの寺泊の苦悩を感じる取る事が、今作の面白さを更に堪能させてくれるようだ。
TTTTT『人柱が炎上』『景観の邪魔』『非公式な恋人』

TTTTT『人柱が炎上』『景観の邪魔』『非公式な恋人』

キュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2017/05/04 (木) ~ 2017/05/14 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

三本の中で、ワワフラミンゴが群を抜いて面白かった。
まるで今作の作家が、この劇団の為にわざわざ書いた様で、ワワフラミンゴの過去の中でも最高傑作に入るくらいだ。
そして自分で書かなくとも、自分の作品にしてしまう演出家の実力には恐れ入った。
毎作、何と説明して良いか分からないワワフラミンゴの世界観に、社会性を加えると、こんな怖い世界が構築されてしまうとは.....。
これこそがワワフラミンゴの本質なのであろう。
傑作である。

黒木絵美花が一皮剥けて、かなり良い。

60'sエレジー

60'sエレジー

劇団チョコレートケーキ

サンモールスタジオ(東京都)

2017/05/03 (水) ~ 2017/05/21 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

劇団チョコレートケーキの『60’エレジー』を観劇。

東京オリンピックの開催が決定して、日本は好景気に向かっている。そんな中、先祖代々で蚊帳を作っている小林蚊帳店も繁盛の為、集団就職者を雇い入れるのである。だが時代と共に蚊帳は必要なくなり、店の経営は悪化し、家族当然で暮らしていた職人たちも離職していき、店は世の中繁栄と共に消えていくのである。

時代の波に取り残された人、それを頑なに守ろうとする人、
時代に上手く立ち回って生きていく人、国を変えようとする人、急成長していく時代を背景に、家族の生き方が描かれていくのだが、その中で人は選択を迫られ、それによって失うものと得るものとは?を問いている。
『三丁目の夕日』的な牧歌的ではない、現実である。
そして今作と同じ様な状況が、2020年・東京オリンピックに向かって、迫ってきている。
そこで感じるのである.....。
我々は登場人物を同じ様な状況に投げ出されている今、彼らと同じ様な轍を踏んでしまうのかと?
そして今作では、疑問を投げかけるだけではなく、その轍を踏んできた登場人物の末路が描かれ、終演を迎えるのである。

お勧めである。
南島俘虜記

南島俘虜記

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/15 (土) 14:00

ネタばれ

ネタバレBOX

平田オリザの【南島俘虜記】を観劇。

再演である。

近未来の日本は、戦争中である。
そしてここ何処かの南島では、捕虜になった日本人が数名いる。敵国の監視も厳しくなく、十分な食料が与えられ、適度な労働を課せられているが、さぼってもお咎めなしだ。
そして同じ捕虜同士で、公認のセックスが行われている。
そしてたまに入ってくる戦況は、日本はせん滅状態、天皇陛下の亡命という情報が入ってきている。だがそんな状況でも捕虜たちは、何もする事がなく、ただぐだぐだと退屈な日々を送っているのである。

気の抜けた捕虜たちの無駄話が、永遠と続く芝居である。
そこには敵国を倒す計画をする訳でもなく、脱走を試みる事さえしない。今度は何が食べたい?ハングライダーに乗ってみたい?など、現在の戦況の切迫感などが一切ない。
そして我々は何も起こる気配すらない、退屈な捕虜達の日常を、90分も我慢して、観続けなければいけないのである。
物語の形すらない、高揚感もない、観賞した感じすらなく、劇場を後にした我々は、どうすれば良いのだろうか?
つまらなかったねぇ~?で終わってしまうのであろうか。
そんな事を考え始め、改めてこの捕虜たちの退屈な日々を思い出す行為をした観客のみが、今作の面白さと高揚感を感じ始めていくのである.....。
平田オリザ作品は、観賞後の尾の引き方は半端なく、未だに引きっぱなしだ。

今作は初期の傑作群ではあるが、退屈な時間を過ごす勇気があるなら、お勧めである。
リーディング公演「ふたり」

リーディング公演「ふたり」

制作「山口ちはる」プロデュース

レンタルスペース+カフェ 兎亭(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/02 (日) 13:00

大いにネタばれ

ネタバレBOX

リーディング公演『ふたり』を観劇。

四作品あり、目当ては倉本朋幸の『千に晴れる』

姉妹の幼い頃から、現在までの家庭環境と母親喪失までを、姉を中心に描いている。
俳優を目指し、東京で自分の好きな事をして生きているバツイチの姉と、一人暮らしの母親の面倒を兼ねて、地元・大阪で暮らしている妹。
そんな二人だが、母親を病気で失ってしまう。
常々母親に、感謝の思いを伝えたいのに、性格の為か、素直になれなかった姉だが、母親を失ってみて初めて気付く喪失感を、リーディングを通して感じる事が出来るのである。
誰もが感じるであろう心情を、演技をしていないにも関わらず、姉を演じた亜矢乃から発せられる感情の高ぶりに、ただ言葉を聴いている以上に我々は興奮してしまうのである。
明らかに彼女の独壇場でもあったようだ。
そしてその感情の高ぶりで、舞台は終わり、暗転明けから、彼女からの舞台の裏話しが始めるのだが、どうやら舞台においての不手際、不満などをブチまけていくのである。
「もしかしてまだ芝居が続いているの?」と疑ってしまうくらい、今作の裏話しのような真実味があり、見ていておぞましいくらいのエネルギーの爆発する瞬間を目撃する事が出来るのである。
そして本当に舞台が終わって、彼女が役者紹介をしていくのだが、芝居のテンションが冷めていないからか、表情から察するに「どう見てもさっきのは真実ではないか?」と最後まで疑ってしまったのである。
キャラクターを己の者にする俳優は沢山いるが、リーディングという環境の中で、
あそこまで出来るのはなかなかである。
思い出す処では「百物語」の白石加代子だけだろう。

『千に晴れる』の亜矢乃バージョンは、お勧めである。

短編映画『キム・タク」 舞台「いつかひーろーに」「ガーデン」とまだ僅かしか亜矢乃の演技は観た事はないが、どうやらとんでもない俳優になった様である。
私はだれでしょう

私はだれでしょう

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/03/05 (日) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/24 (金)

ネタばれ

ネタバレBOX

こまつ座の【私はだれでしょう】を観劇。
 
 敗戦後の日本では、日本放送協会のラジオ番組「尋ね人」で、家族を失った人探しの番組を行っている。
 その番組は、米国CIE・フランク馬場の管理下に行われていて、原発投下で、家族を失った人達の人探しをさせない為でもある。
 そんな状況下の中でも、そこで働く職員達は、身を粉にして、毎日人探しをしているのである。
 そしてそこに記憶を失ったサイパン帰りの兵士の家族を探しを始める事になるのだが....。
 
 放送室内で、終戦後の混乱状況をラジオ職員の目を通して描いていきながら、日本生まれだが、アメリカ育ちという二重国籍を持っているフランク馬場の苦悩も通して、占領している側とされている側の状態が見えてくる。その彼の立場から感じとれる「己とは誰なのか?」という疑問を我々が一緒に感じる事によって、このドラマの奥深さを感じ取るが出来るようだ。
 そして記憶を失った兵士は、実は陸軍中野学校出身で、スパイ活動をして、記憶が戻って初めて、己の今までの行為を悔やむのだが、そこでもまた「己とは?」と疑問を感じ始めるのである。
 そして同じ様な疑問を感じ始める登場人物たちは、正しい事と正しくない事の見極めをし始め、危険を冒してまで、更なる行動をしていくという展開になっている。
 そして自らを省みない行動に出た登場人物の勇気に対して、「明日からの我々の行いはどのようにすべきであるか?」と己に疑問を投げた瞬間から、今作の面白さを享受出来るのである。
 ちょっぴりミュージカル、ちょっぴりコメディー、とやや軽調なのだが、描かれている事は非常に重いのである。
K.テンペスト2017

K.テンペスト2017

まつもと市民芸術館

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2017/03/11 (土) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/12 (日)

ネタばれ

ネタバレBOX

串田和美の【 K.TEMPEST(テンペスト)】を観劇。

争いの絶えない世に対して、世の至る所で上演されているシェイクスピア。
演出家の戯曲の解釈や舞台背景の如何によっては、作品そのものが大きく変わって見えてくるのが、シェイクスピアを観劇する上での楽しみと辛さであるのは、観客が誰もが知っている。それだけ日本の演劇界に根付いているのは間違いないようだ。
そして昨年のコクーン歌舞伎【四谷怪談】での戯曲の解釈には誰もが驚いた?いや煙に巻いた?串田和美がどのように表現してくるのが今作の見どころである。

劇場に入ると、そこは舞台と客席が一体となっていて、客席の中で、俳優が演じる設定になっている。
そして開演前から俳優は客との世間話しに高じ、劇場という垣根を取っ払ってしまうのである。
所謂、観客は知らない間に、プロぺスローが住んでいる島の住人、いや森や草の背景にされてしまったのである。
そしてプロペスローと娘のミランダ、その島に嵐で漂着してしまったアントーニオとアロンゾーたちとの骨肉の争いが再び始まるのだが、そこで見えてくるのは、森や砂浜の美しい風景や音色である。その美しい場所で、何故このような悲劇が永遠と続くのか?と疑問に思わずにいられないのである。
そして夢の島の出来事かと思いきや、突然俳優たちが、内容とは関係ない現在の身近な世間話をしてくるので、観客は現在と過去を否が応にも行き来させられてしまうのである。
島の住人にされてしまいながら、現代と過去を行き来させられる我々は、この描かれた世界を必然的に冷静的に見つめ始めるのである。
そしてその瞬間を感じ始めると同時に、タイトルのテンペストのKの世界に吸い込まれていくのである......。

このような演劇体験は中々出来ないのでお勧めなのだが、昨日で終わってしまったので、何時かの再演を待つのみである。
いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/03/07 (火)

ネタばれ

ネタバレBOX

ロロの【いつ高シリーズ 】を観劇。

全部で四話があり、各一時間の中編である。
今作は一話と二話を観劇。

一話は昼休みの教室が舞台で、二話は深夜の教室が舞台。

校内で幽霊が現れる?という噂で持ち上がっている生徒の将門、朝、楽の三人は、肝試しに深夜の教室に忍び込んでいく。
するとそこには学校には登校出来ない病的な女生徒が、教室に仕掛けた盗聴器を聞きながら、昼間の学校の様子を楽しんでいる。
そして在学中に亡くなった女生徒も、幽霊になって現れてくるのである。
こんな状況で展開していくのだが、展開らしい展開はなく、三人の生徒と病的な少女、幽霊になった少女のちょっとした束の間の時を描いている。
その束の間を、皆で夢中で音楽を聞いていたり、誰それが好きだ嫌いだという噂話しをしたりと、青春を謳歌している爽やかな姿を見る事が出来るのである。
そこには同世代の男女にしか味わえない甘い時は、誰にも平等に存在し、学校というのは人生の中で、一番楽しい瞬間を過ごさせてくれる場所ではなかったのだろうか?
と少しだけ郷愁を感じさせてくれる内容であった。
いつかモンゴリと眠る

いつかモンゴリと眠る

東京ELECTROCK STAIRS

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/02/15 (水) ~ 2017/02/22 (水)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/02/15 (水)

東京ELECTROCK STAIRSの【いつかモンゴリと眠る】を観劇。

ダンスなので感想は言えそうで?言えないのが実情だが、物語らしきものを込めて構成をしているので、妙な中だるみを感じてしまうのが難点ではあったが、
かといって70分も踊りっぱなしは無理だろう。
何時もながら気分を良くさせてくれる踊りには満足。
3人で踊っているのだが、大好きなダンサーの高橋萌登だけを見ているのは問題か?

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/01/18 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ

ネタバレBOX

野田秀樹の【足跡姫】を観劇。

故・中村勘三郎との思いを全面に出した作品である。

母との思いを胸に、女形歌舞伎を続けている姉と弟。
だが世間はそれを許さず、役人が取り締まっているようだ。
そこでそれを打破するために、枕営業の傍ら、姉弟は新しい物語で変えようと試みるのだが、肝心の話を書く事が出来ない。そこに殺された由井正雪が生き霊となって、ゴーストライターとして書き始め、世の中は少しずつ動き始めて行くのである.....。

歌舞伎の始まりである出雲の女形歌舞伎と幕府転覆を狙う由井正雪の史実を下に進んでいく。
ただ史実はあくまでも背景だけで、そこで描かれるのは社会の矛盾だ。
それは歌舞伎が現在に至るまでの様々な矛盾、社会を変えようと試みる者たちが感じた矛盾、そして生きる事への矛盾などだ。
それを感じた人々が、こごの立場で世の中をどのように変革していくか?
それが今作の大きなテーマであろう。
だがそんな大事な事も、言葉遊び、見立てる、妄想、二重構造な展開に思考したりする時間すらないほど早い展開で進んでいく。
またある時は内容に転化しない事も常々だが、そんな事はどうでも良いのである。全てが最後に集約していくのが野田秀樹の面白さなのである。
だが残念な事に、今作はテーマを逸らしてしまい、中村勘三郎への弔いだからか、故人へのメッセージへ転化した事は間違っているのである。
だから余計にセンチメンタルになり過ぎた感は否めなく、最後の弟の独演は、説教臭く感じた観客もいただろう。

野田ファンにとっては不満な今作である。
ダークマスター東京公演

ダークマスター東京公演

庭劇団ペニノ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/02/01 (水) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/02/02 (木)

ネタばれ

ネタバレBOX

庭劇団ペニノの【ダークマスター】を観劇。

以前に一度だけ観た劇団で、ここ最近、岸田戯曲賞を取っている。

大阪のさびれた街で、夢も希望もない30歳過ぎのバックパッカーが洋食屋で食事をしている。
そこの店主は無愛想で、人生にくたびれた様子なのだが、作る料理はすこぶる美味しいようだ。
そしてそこの店主の勧めで、彼が代わりとして働く事になるのだが、料理を作れない彼に、店主は彼の耳の中に極小マイクロチップを埋めて、遠隔操作をして、全てを任せていくのである。

料理を作った事のない青年が遠隔操作でどのように作っていくのか?
そこが今回の見せ場でもあるのだが、これは演劇としては初めての試みではないかと?と思うほど手が込んでいて、遠隔操作をされている青年と同じ条件で、我々が体感出来る仕掛けがなされている。
そして郷愁を感じさせる古びた店内、目の前で作られる料理の数々、その匂いが充満している劇場内、視覚、聴覚、嗅覚を同時に感じながら演劇を観賞していくという状態だ。ただそんな設定は、あくまでも青年と同じ位置に我々を置いただけで、描かれるのは青年の人生観だ。
そして将来に展望を感じた青年がどのようになっていくのか?
ラストのオチとその背景で一瞬に行われる行為は、捉え方次第で拒絶するかもしれないが、そこでどのように感じられるかが今作の面白だ。
達観か?虚しさか?

かなりのお勧めである。

もし今作を観るのであるならば、舞台正面の真ん中から下手の席に座る事をお勧めします。
隅田川/娘道成寺

隅田川/娘道成寺

木ノ下歌舞伎

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/01/13 (金) ~ 2017/01/22 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/13 (金)

ネバばれ

ネタバレBOX

木ノ下歌舞伎の【隅田川】と【娘道成寺】を観劇。

二本立てで、両作品とも単独の舞踊である。

【隅田川】は、人買いにさらわれた息子(梅若丸)を探す母親の苦悩。
白神ももこ(振付・演出)なのだが、共同演出で、杉原邦生が入っているからか、母親の苦しみを舞踊だけではなく、背景をぼんやりと見せてくるか、更に母親の悲しみを感じながら、共感してしまう。
彼の演出と構成力は、毎作品ごと記憶に残る作品になっている。


【娘道成寺】は、好きになった安珍に裏切られた清姫の話である。
ついつい苦手な舞踊は、背景になる物語をなぞって見てしまい、踊りと物語の整合性を考えてしまいがちだ(男性観客に概ね多い)。
だが、そんな事は如何に無駄か?という事を感じてしまった作品であったようだ。
清姫がどれだけ安珍を愛していたか?
そしてその愛の重さゆえに安珍が逃げてしまったのか?
この踊りは、清姫の傲慢で、一方的な求愛を描いているのだが、その思いが狂気をはらんでしまえばしまうほど、嫌悪感と愛好感のバランスが取れてくるのが不思議である。
最初は女性らしい清らかな紅い衣装を身にまとった踊りから、情念の度合いが増せば増す程、紅い衣装が剥ぎ取られ、狂気をはらんだ姿と踊りと表情に変っていく。そしてこの過程を得ていきながら、清姫が行き着いた先は、非常に美しい幕切れになっていく。
今作は清姫の愛の過程、心情の変化の具合を踊りを通して感じる事が出来るのが一番の面白さでもあるのだが、それ以上に清姫が出した最後の答えを、どのように受け入れられるかで、己の愛の遍歴が垣間見えてしまうのである。

踊りだけで言うと、シルヴィ・ギエムの【ボレロ】以来の感動である。

とんでもない傑作である!
高校演劇サミット2016

高校演劇サミット2016

高校演劇サミット

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/01/07 (土) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/01/08 (日)

ネタばれ

ネタバレBOX

【高校生演劇サミット2016】を観劇。

全国の中で実力がある高校の演劇祭。

選ばれた三校の選考理由は分からないが、かなりの実力を持っている高校で、戯曲はオリジナルで、演出は顧問が行っているようだ。
新劇なんかぶっ飛ばせ!という勢いで、1980年代の演劇シーンを彷彿させるような描き方は刺激的で、その時代を生きた顧問の影響が大いに感じられる。
演出もさることながら、演じているアマチュア高校生俳優たちが演じている素の芝居が、唐十郎の特権的肉体論の見本の様にも感じられる。
まさしく人前で演じるとは?俳優とは?という疑問の答えを導き出しているようでもある。
たまにはこんな芝居も良い物である。
コーラないんですけど

コーラないんですけど

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/12/30 (金) ~ 2017/01/02 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/12/31 (土)

ネタばれ

ネタバレBOX

渡辺源四郎商店の【コーラないんですけど】を観劇。

青森を中心に活動している劇団。

母子家庭で、子育てに上手く言っていない母親。
息子の為にと、ピアノ、ヴァイオリン、水泳などのお稽古事を習わせるが、無理強いさせているからか、ことごとく拒否されてしまう。そんな息子も成長と共に引きこもりになってしまい、ネットゲーム三昧だ。
そして将来を案じて、親戚に頼んで仕事の面倒を見てもらうのだが、それが紛争地域での派遣活動だったのだ.....。

日本が紛争地域で行っている派遣活動を描いている作品で、それに残された家族を描いている。
母子家庭ながら、母と息子が過ごした楽しかった時間、自立する息子、母との別れ、そして【瞼の母】という流れにはせず、母と息子が過ごした辛い時間、引きこもり、自立すら出来ない息子、そして親子関係すら破綻してしまうという負の出来事だけをあえて描く事によって、母と息子との何十年ぶりの再会には心を揺さぶられてしまう。
では何故?、あえて楽しい思い出ではなく、負の出来事だけを描いた後に、家族を離れ離れにして、悲劇に落して行くのか?
そんな疑問を考えながら観ていくと、作家の意図が思う存分伝わってくる作品になっている。

傑作である。
車窓から、世界の

車窓から、世界の

iaku

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

iakuの【車窓から、世界の】を観劇。

関西の劇団で、今回は初見だ。

とある小さな駅で、人身事故の為、待ちぼうけをくらっている人達がいる。その人達は、地元の中学生が自殺をした為に、お別れ会に行くつもりである。
そして長い待ち時間の間に「何故、少女たちは自殺をしたのか?」という討論を駅構内で始めるのである。

「十二人の怒れる男」のような議論づくしの作品ではないのだが、各々の感情を通じて、論じていく展開になっている。
それも最初は己の社会的立場、道徳的な意見ばかりが目立つのだが、それぞれが論じていく内に、「少女たちは何を考えていたのか?」という当事者たちの視点から原因を探り始めていく流れになっていく。
ただ原因追求の作品ではなく、相手の立場になって考える事の大事さをメッセージとして感じられる。
そして観客も作家も決して戻る事が出来ない、多感な十代の頃に立ち帰ろうとあくせくしながら、観賞する事が出来る宝物の様な作品である。

お勧めである。
自己紹介読本

自己紹介読本

城山羊の会

小劇場B1(東京都)

2016/12/01 (木) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

城山羊の会の【自己紹介読本】を観劇。

ここ最近、ずっと観続けている劇団。

【トロワグロ】でやっと岸田戯曲賞を取ったにも関わらず、受賞が遅すぎたのか?
受賞の前後作がかなり迷走しているようだったが、前作の青年団と組んだ【ザ・レジスタンス 抵抗】では、過去の最高傑作【あの山の稜線が崩れていく】以来の傑作を作ってしまったようだ。
それだけに今作は非常に楽しみであった。

さてその新作だが、全くに見ず知らずの女性にいきなり「自己紹介させて下さい!」という勝手な男の行動から物語は始まっていく。
そして互いに待ち合わせてしていた友人が集まり、関係をしていくという流れになっていく。
その展開模様は、本人の勝手な思い込み、自己チューから生じて、会話のズレが物語を大きくしていくのだが、それは何時も通りのパターンでもあり、観客も待ってました!というところである。
ただ今作が何時も違うところは、のっけから「自己紹介させて下さい!」という言葉を男が発した瞬間から、怒涛の如く物語が始まっていく点である。何時もはある程度の状況がそろってから、ゆっくりと大きくなっていくのだが、今作のような展開は初めてであり、観客は一気に引きこまれていく。
ただ実際起こっている出来事は、どうでも良い事である。
まぁ、そのどうでも良いところを観客自身が勝手に脳内で妄想する事が、この劇団を見る上での本来の楽しみでもある。
初見の方は当然面白いと思うのだが、何度も観ている観客は、この作家が毎作品ごとにどれだけ変わっているかを感じ取らなければいけないと思う。

お勧めである。
マクベス

マクベス

新宿梁山泊

芝居砦・満天星(東京都)

2016/11/18 (金) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★

ネタばれなし
「私、出番が少ないのよぉ~」
とカウンター越しにひとりの女性は囁くのであった。
無名な俳優が本物の女優になった貴重な芝居。

外道の絆

外道の絆

水素74%

アトリエ春風舎(東京都)

2016/11/10 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★

ネタバレなし
設定も面白いし、それを不条理として扱う辺りは良いのだが、それだけだと物語は成立しないな。
でも黒木絵美花が出演しているのは救いだな。

はたらくおとこ

はたらくおとこ

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2016/11/03 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

満足度★★★★

ネタばれ
ネタばれ

ネタバレBOX

阿佐ヶ谷スパイダースの【はたらくおとこ】を観劇。

借金を抱えたりんご農園の従業員たちが、魔法の液体の手にした瞬間から、
やむにやまれず暴走してしまうおとこたちの話である。

二転三転する先の読めない展開、小劇場界代表の男優陣、そして笑いと恐怖がいとも簡単に融合してしまう会話術、
そして物語に込められたメッセージを、肌で感じ取る事が出来てしまう演劇体験。
どうやら久しぶりに生涯演劇鑑賞ベストテンに食い込んでくる作品に出合ってしまったようだ。
初演は2004年なのだが、その当時からするとあまりにも早く作り過ぎた感は否めないかもしれないが、今回の再演は見事なまでにタイムリーである。

昨年末の【ツインズ】に続いて、怒れる劇作家・長塚圭史の大傑作である。

お勧めである。

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