満足度★★★★
ネタばれ
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庭劇団ペニノの『地獄谷温泉 無明ノ宿』を観劇。
岸田戯曲賞作品。
雪深い東北地方の地元の人しか通わない寂れた湯治宿に、人形公演の依頼を頼まれた小人の父と息子。
だがそこでは公演を披露する場所すらなく、依頼主は不在のようだ。
そして数人の客が、親子を奇異な目で見つつ、不思議な世界を体験していくのである。
誰もが感じた事のある不思議な体験や奇妙な経験。
しかしそれは多分に個人の想像力からきている事が多く、あえて望んでいる節もある。昔からの伝説が残っている場所は特にそうだ。
今作は、密かに望んでいる秘め事を我々から引き出し、劇場で体験出来るというのがミソで、伝説を求めて、わざわざ遠い田舎などに行かなくても良いのである。
こんな体験を出来るは芝居は他の劇団にはなく、とても貴重な作品である。
しかし、近いとはいえ劇場の神奈川KAATは遠い。
満足度★★★★
ネタばれ
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イキウメの『散歩する侵略者』を観劇。
地球侵略の為にやってきた宇宙人は、人間の言葉の概念を奪い取り、侵略を試みようとする。
そして全ての概念を奪い取り、「さぁ、侵略開始だ」という時の直前に奪った『愛』という言葉の概念に戸惑ってしまうのである。
宇宙人が地球を侵略するのに、領地の搾取、人間虐殺などをせずに、言葉の概念を奪ってから、侵略するという設定にリアリティを感じてしまうのは、この劇団の得意技である、現実の隙間から異世界に入りこませる手法に今回も嵌められしまったようである。
しかし出来の良い映画版を先に観てしまったからか、今作は感激度数は薄かったが、ラストシーンは、演劇的で、やはりオリジナル強し!という感じになっていたので満足である。
満足度★★★★
ネタばれ
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野田秀樹の『表に出ろいっ!』の英語版を観劇。
日本語版は、中村勘三郎と野田秀樹の共演で、『キャラクター』のスッピンオフ的な要素を含んでいた。
今作は設定、内容などは変わらず、セリフは英語で、イギリス人俳優、そしてタイトルが『One Green Bottle』に変わっている事だ。
実はそこが今作の大きな重要な点で、明らかに英語圏向けの人たちに見せる芝居になっていて、日本の小劇場ファン向けにはなっていないのである。
そして『表に出ろいっ!』と『One Green Bottle』
設定、内容が同じなのに何故、こんなにタイトルが違うのだろうか?
という疑問が今作を更に面白く見れるポイントでもある。
満足度★★★
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羽衣の『瞬間光年』を観劇。
変なミュージカルを作る劇団と言われていて、妙ジーカル劇団とも言われている。
今回は公演数が長期な割には、一日一回しか公演しないのは何故だ?とどうでもよい疑問を持ちつつ、観劇をする。
市井の人々をミュージカルナンバーで描き、人生の哀愁を漂わせてくれるのがこの劇団の特徴でもあるのだが、どうやら今作はあえてそれを封印していた様だ。
人物の描き方は変わらないのだが、背景音楽は歌ではなく、リフレインする音ので、ミュージカルを封印して、芝居をメインにしている。
キャラクター達が歌を唄い、踊りながら、人生を語り、そこで観客が哀愁を感じさせてくれるのがこの劇団の持ち味なのに「一体全体、どうしちまったんだ?」と叫ばずにはいられなかった。
が、しかし……、
最後にくるのである。
とんでもないことを彼らはやらかすのである。
そして観劇前の疑問を解消してくれるのである。
何時ものミュージカルナンバーが少ないので、初見の方は観るべきではないと思うが、常連は行くべき!
満足度★★★
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税理士事務所での話。
特に大きな事が起きる訳ではなく、仕事とというより、恋愛事情で話は回っている。青年団の俳優が出演していて、見慣れた顔ぶればかりからか、狭い世界での出来事が更に狭く見えるのは良さか?悪さか?。
鄭亜美の存在が大きく、彼女がいなかったらどうなっていたの?という不安も拭えなくもないが、それほどまでにあっさりしすぎている芝居である。
観客としては刺激が欲しいのである。
ただ意外に心地良いのは確かである。
この様な作品を永遠作り続けるのであるならば、観客からそっぽを向かれるのは確かだが、次回作が気になる作家であるのは間違いない。
満足度★★
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シャンプーハットの『鳥の名前』を観劇。
一度だけ観た事ある劇団で、巷ではそこそこ実力派と言われているが、どうも僕の中では引っかかってこなかったで、興味はなかったのだが…….。
東京の郊外の下町をやや感じられる昭和の風景の中で、生活している市井の話。
アパートの大家、自転車経営者、場末のスナックの雇われママ、独身美女の一人暮らし、力士になれなかったお相撲さん、中国人ヤクザなどが入り乱れている。
そこで描かれる世界は、身近な生活を垣間見る事が出来、何でもない日々が、ちょっとした隙間から変わっていく様を描いている。狂気と喜劇が常に回転していると言っても良いのであろうか。
だが今作は、リアリティの描き方の無さからか、観客自身が描く妄想が劇空間に無く、面白さを何処に持って行って良いのか分からず、迷走してしまったほどだ。
ただ迷走がこの劇団の面白さ?とも取れるかもしれないが、僕は、ただの迷子になってしまったようだ。
やはり長い期間、この劇団に引っかからなかったのはそこではないかと思う。
次回作は観るかどうかは迷うところだ。
大好きな遠藤瑠奈が出演していないのが残念でならないが、村岡希美の怪演は、何処の劇団で観ても惚れ惚れする。
満足度★★★
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劇)ヤリナゲの『預言者Q太郎の一生』を観劇。
初見の劇団。
30年以上前に始まった小劇場ブームの勢いが、そのまま戻って来た感覚に陥ってしまった作品である。
物語は、神の子供と崇められたQ太郎とみちるとの成長の物語で、察する事に、Q太郎を軸に進んで行くと思いきや、みちるの波乱万丈の人生を軸に進んでいく。
タイトルと出だしから予想してた物語の展開に裏切られていくのだが、それ以上にみちるの人生にやきもきしながら見入ってしまうのである。
決してシリアスではなく、軽いタッチで、ドタバタで、派手な演技と熱量。
そして半径3メートル以内の身近な出来事から、少しづつ広げていき、社会情勢を物語に上手く乗せているからか、世界観を大きく感じさせ、終始飽きさせないのである。
そして75分の短さながら、それ以上に長く感じさせるのは密度の濃さの現れである。
これこそが小劇場ブームで沸いた面白さであるのだが、今では平田オリザの影響で、今作の様な面白さはなかなかないだろう。
とても貴重な作品である。
ただこのチラシから、今作の良さを感じられないのは大損である。
満足度★★★★
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こまつ座の『イヌの仇討』を観劇。
江戸の上・松の廊下での刃傷事件後、浅野内匠頭の切腹、吉良上野介にはお咎めなし、という結果に、吉良家の評判は悪くなるばかりだ。そして世間では、いつ大石内蔵助らが吉良家への討ち入りを果たすのか?などの賭け事すら行われている有様である。
そして赤穂浪士らに屋敷に踏み込まれ、秘密の隠れ家にいる吉良上野介と家来たちの密室劇である。
今作では、吉良上野介の視点で描かれた忠臣蔵である。
この吉良の視点というのが重要で、隠れている最中「何故、大石が自分に復讐をするのか?」という疑問を解いていく中で、事件の顛末、お上のイヌとも言われている風評、世間での立ち位置、情報の独り歩き、そしてお上の策略などを鑑みていくうちに何かが分かり始めてくるのである。それによって彼は何を選択し、これからどんな人生を歩もうとするのか?
それが『イヌの仇討ち』というタイトルに引っかかってくるのだが、それ故に身を乗り出してしまうほど劇に没頭してしまい、まるで歴史上の真実であるかのように思えてしまうのである。もうこの面白さには唸るしかないのである。
演出、俳優の上手さは勿論だが、戯曲の素晴らしさには目を見張るばかりである。
とんでもなく面白く、兎に角お勧めである。
満足度★★★★
ネタばれ
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玉田企画の『今が、オールタイムベスト』を観劇。
人が生きて行く上での、他人との関係性に注目していくドラマ。
社会人になると誰もが世の中を上手に渡ろうと気遣いや、空気を読んだりして、事を進めていくのが世の常だろうが、今作はそんな世で生きる大人たちと、まだそんな社会を知らない、自我のみを通す少年の葛藤のドラマである。
新しい継母を迎え、明日には結婚式を迎える父と継母だが、それに反発してか、息子は意固地になっている。それを丸く収めようとする父や継母の友人、結婚式の司会者、プランナーなどが、それをきっかけに己の秘め事が暴露されそうになりてんやわんやである。
そこで描かれる己と他者との関係性の距離の取り方が毎回のテーマで、相手の懐に入れるけど入ろうとしない、普段の我々の生き方を垣間見る事が出来る。
玉田企画の作風は、「日本人論」と受け止めながら観てしまいそうだが、『そんな事を考えるのが観劇中は無駄だな?』と思ってしまうほど、作劇に夢中になってしまうのである、
これほどまでに、毎回毎回面白い劇団はなかなか無い。
お勧めである。
満足度★★★★
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平田オリザの『さよならだけが人生か』を観劇。
とある住居建築現場の宿舎では、現場から遺跡が発掘された事で、工事発注者の責任者とその部下、現場作業員、その現場班長の娘とフィアンセ、お手伝いさん、警備員、考古学者、考古学を研究している大学生たち、国の偉い人などが集まっている。そこで何か特別な事が起こる訳ではなく、永遠とムダ話をし続けている人たちの話である。
今作も何時ものように話の起点も終点もなく、勿論、起承転結すらなく、話のどこかの部分を一部切り取っただけの展開になっている。
何時もなら、僅かながら背景は感じさせて、そこから面白さを掴んでいくのだが、その肝心の背景には触れない、いや背景はないのである。
それは平田オリザが西洋演劇を否定して生まれた独自の演劇で、これを面白いと見るかどうかは、個人の裁量次第だ。
演劇界のトップランナーの野田秀樹が表なら、平田オリザは裏のトップランナーである。
描き方は対極ながら、共通しているのは言葉をコントロールしている事だ。
そんな表と裏のどちらが好きで、どちらが刺激的かって?
そりゃ今は、平田オリザである。
お勧めである。
満足度★★★★
ネタばれ
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木ノ下歌舞伎の『東海道四谷怪談』を観劇。
今作は鶴屋南北のオリジナルに沿って、抜粋版ではなく、通し上演で、公演時間は6時間だ。
初演時は、「忠臣蔵」と「四谷怪談」を2日間かけて、1日目に両作品の前半部分、2日目に両作品の後半部分、そしてラストは討ち入りという展開で、表の忠臣蔵、裏の四谷怪談になっているのがミソで、両作品を観る事によって、吉良上野介に復讐を誓う武士たちと、その武家社会に翻弄されながらも、生きていかなければいけない市井の人間模様が描かれている。
「忠臣蔵」を観ることは出来ないが、今作では、浅野内匠頭の藩が、お家断絶になってしまい、それによって生きてく事すら困難な状態になったの武士と庶民たちの話である。
今作は、内容は一切変えずに、セリフは現代口語、背景も現代の様である。歌舞伎として描いておらず、あくまでも現代演劇として描いている。
伊藤喜兵衛にそそのかされて、孫のお梅と夫婦になってしまう伊右衛門、そしてその策略の生贄になったのはお岩で、彼女が呪ったのは伊右衛門ではなく伊藤喜兵衛、惚れた女欲しさに人を殺めたのが、それは以前に世話になった方の子息、そしてやっと手に入れた女は実の妹で、近親相関になってしまう有様、そして病で、討ち入りに参加出来ずにいる又之丞に、命をかけてまで、薬を手に入れようとそる小仏子平などなど、庶民は社会と関係を持たずには生きてはいけないにせよ、それを得るにはあまりにも代償が大きすぎて、生きる事さえ命がけだ。
そんな彼らの生き様を現代演劇という手法で、描ききっているからか、鶴屋南北の書いた当時のテーマが、現代でもいとも簡単に掴み取れるのが、今作の面白さであろう。
そして6時間という長尺ながら、飽きもせず、退屈もせず、疲れもせず、まだまだ観れるぞ!という気分にさせてくれる良作に出合うのは、今の現代では稀有である。
満足度★★★★
ネタばれ
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イキウメの『天の敵』を観劇。
ジャーナリストの寺泊は、若手で人気の菜食料理研究家・橋本に取材を申し込む。寺泊は自分が、持病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症しているからか、このような食事での健康療法や長生きに対しては、疑いの念があるようだ。
そして寺泊は、戦前に食餌療法を研究していた長谷川卯太郎に橋本がそっくりなので、同じ家系か、もしくは孫ではないかと問いただすと、実はその長谷川卯太郎は自分で、現在122歳だという。
唖然とする寺泊だが、橋本(長谷川卯太郎)にインタビューしていくうちに、驚愕の真実が語られていくのである…….。
若返りや長生きの研究、不老不死などの世間の健康ブームに警告が鳴らした作品である。
戦時中から現在に至る食餌療法の研究を、歴史を通して紐解いていき、それを化学的に分析し、それを仮説の物語として展開して、その仮説で立てた物語に、我々は「本当かも?」と思わずのめり込んでしまうのである。
疑いもせず、一瞬でも信じた観客のみが、この世界の虜になってしまうのだ。
その辺りは、代表作『関数ドミノ』に似ているのだが、観客をちょっとした隙間から、架空の世界に誘う戯曲の技は、毎度の事ながら冴えているのである。
そして真実を知ったジャーナリストの寺泊の苦悩を感じる取る事が、今作の面白さを更に堪能させてくれるようだ。
満足度★★★★
ネタばれ
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三本の中で、ワワフラミンゴが群を抜いて面白かった。
まるで今作の作家が、この劇団の為にわざわざ書いた様で、ワワフラミンゴの過去の中でも最高傑作に入るくらいだ。
そして自分で書かなくとも、自分の作品にしてしまう演出家の実力には恐れ入った。
毎作、何と説明して良いか分からないワワフラミンゴの世界観に、社会性を加えると、こんな怖い世界が構築されてしまうとは.....。
これこそがワワフラミンゴの本質なのであろう。
傑作である。
黒木絵美花が一皮剥けて、かなり良い。
満足度★★★★
ネタばれ
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劇団チョコレートケーキの『60’エレジー』を観劇。
東京オリンピックの開催が決定して、日本は好景気に向かっている。そんな中、先祖代々で蚊帳を作っている小林蚊帳店も繁盛の為、集団就職者を雇い入れるのである。だが時代と共に蚊帳は必要なくなり、店の経営は悪化し、家族当然で暮らしていた職人たちも離職していき、店は世の中繁栄と共に消えていくのである。
時代の波に取り残された人、それを頑なに守ろうとする人、
時代に上手く立ち回って生きていく人、国を変えようとする人、急成長していく時代を背景に、家族の生き方が描かれていくのだが、その中で人は選択を迫られ、それによって失うものと得るものとは?を問いている。
『三丁目の夕日』的な牧歌的ではない、現実である。
そして今作と同じ様な状況が、2020年・東京オリンピックに向かって、迫ってきている。
そこで感じるのである.....。
我々は登場人物を同じ様な状況に投げ出されている今、彼らと同じ様な轍を踏んでしまうのかと?
そして今作では、疑問を投げかけるだけではなく、その轍を踏んできた登場人物の末路が描かれ、終演を迎えるのである。
お勧めである。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタバレBOX
平田オリザの【南島俘虜記】を観劇。
再演である。
近未来の日本は、戦争中である。
そしてここ何処かの南島では、捕虜になった日本人が数名いる。敵国の監視も厳しくなく、十分な食料が与えられ、適度な労働を課せられているが、さぼってもお咎めなしだ。
そして同じ捕虜同士で、公認のセックスが行われている。
そしてたまに入ってくる戦況は、日本はせん滅状態、天皇陛下の亡命という情報が入ってきている。だがそんな状況でも捕虜たちは、何もする事がなく、ただぐだぐだと退屈な日々を送っているのである。
気の抜けた捕虜たちの無駄話が、永遠と続く芝居である。
そこには敵国を倒す計画をする訳でもなく、脱走を試みる事さえしない。今度は何が食べたい?ハングライダーに乗ってみたい?など、現在の戦況の切迫感などが一切ない。
そして我々は何も起こる気配すらない、退屈な捕虜達の日常を、90分も我慢して、観続けなければいけないのである。
物語の形すらない、高揚感もない、観賞した感じすらなく、劇場を後にした我々は、どうすれば良いのだろうか?
つまらなかったねぇ~?で終わってしまうのであろうか。
そんな事を考え始め、改めてこの捕虜たちの退屈な日々を思い出す行為をした観客のみが、今作の面白さと高揚感を感じ始めていくのである.....。
平田オリザ作品は、観賞後の尾の引き方は半端なく、未だに引きっぱなしだ。
今作は初期の傑作群ではあるが、退屈な時間を過ごす勇気があるなら、お勧めである。
満足度★★★★
大いにネタばれ
ネタバレBOX
リーディング公演『ふたり』を観劇。
四作品あり、目当ては倉本朋幸の『千に晴れる』
姉妹の幼い頃から、現在までの家庭環境と母親喪失までを、姉を中心に描いている。
俳優を目指し、東京で自分の好きな事をして生きているバツイチの姉と、一人暮らしの母親の面倒を兼ねて、地元・大阪で暮らしている妹。
そんな二人だが、母親を病気で失ってしまう。
常々母親に、感謝の思いを伝えたいのに、性格の為か、素直になれなかった姉だが、母親を失ってみて初めて気付く喪失感を、リーディングを通して感じる事が出来るのである。
誰もが感じるであろう心情を、演技をしていないにも関わらず、姉を演じた亜矢乃から発せられる感情の高ぶりに、ただ言葉を聴いている以上に我々は興奮してしまうのである。
明らかに彼女の独壇場でもあったようだ。
そしてその感情の高ぶりで、舞台は終わり、暗転明けから、彼女からの舞台の裏話しが始めるのだが、どうやら舞台においての不手際、不満などをブチまけていくのである。
「もしかしてまだ芝居が続いているの?」と疑ってしまうくらい、今作の裏話しのような真実味があり、見ていておぞましいくらいのエネルギーの爆発する瞬間を目撃する事が出来るのである。
そして本当に舞台が終わって、彼女が役者紹介をしていくのだが、芝居のテンションが冷めていないからか、表情から察するに「どう見てもさっきのは真実ではないか?」と最後まで疑ってしまったのである。
キャラクターを己の者にする俳優は沢山いるが、リーディングという環境の中で、
あそこまで出来るのはなかなかである。
思い出す処では「百物語」の白石加代子だけだろう。
『千に晴れる』の亜矢乃バージョンは、お勧めである。
短編映画『キム・タク」 舞台「いつかひーろーに」「ガーデン」とまだ僅かしか亜矢乃の演技は観た事はないが、どうやらとんでもない俳優になった様である。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタバレBOX
こまつ座の【私はだれでしょう】を観劇。
敗戦後の日本では、日本放送協会のラジオ番組「尋ね人」で、家族を失った人探しの番組を行っている。
その番組は、米国CIE・フランク馬場の管理下に行われていて、原発投下で、家族を失った人達の人探しをさせない為でもある。
そんな状況下の中でも、そこで働く職員達は、身を粉にして、毎日人探しをしているのである。
そしてそこに記憶を失ったサイパン帰りの兵士の家族を探しを始める事になるのだが....。
放送室内で、終戦後の混乱状況をラジオ職員の目を通して描いていきながら、日本生まれだが、アメリカ育ちという二重国籍を持っているフランク馬場の苦悩も通して、占領している側とされている側の状態が見えてくる。その彼の立場から感じとれる「己とは誰なのか?」という疑問を我々が一緒に感じる事によって、このドラマの奥深さを感じ取るが出来るようだ。
そして記憶を失った兵士は、実は陸軍中野学校出身で、スパイ活動をして、記憶が戻って初めて、己の今までの行為を悔やむのだが、そこでもまた「己とは?」と疑問を感じ始めるのである。
そして同じ様な疑問を感じ始める登場人物たちは、正しい事と正しくない事の見極めをし始め、危険を冒してまで、更なる行動をしていくという展開になっている。
そして自らを省みない行動に出た登場人物の勇気に対して、「明日からの我々の行いはどのようにすべきであるか?」と己に疑問を投げた瞬間から、今作の面白さを享受出来るのである。
ちょっぴりミュージカル、ちょっぴりコメディー、とやや軽調なのだが、描かれている事は非常に重いのである。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタバレBOX
串田和美の【 K.TEMPEST(テンペスト)】を観劇。
争いの絶えない世に対して、世の至る所で上演されているシェイクスピア。
演出家の戯曲の解釈や舞台背景の如何によっては、作品そのものが大きく変わって見えてくるのが、シェイクスピアを観劇する上での楽しみと辛さであるのは、観客が誰もが知っている。それだけ日本の演劇界に根付いているのは間違いないようだ。
そして昨年のコクーン歌舞伎【四谷怪談】での戯曲の解釈には誰もが驚いた?いや煙に巻いた?串田和美がどのように表現してくるのが今作の見どころである。
劇場に入ると、そこは舞台と客席が一体となっていて、客席の中で、俳優が演じる設定になっている。
そして開演前から俳優は客との世間話しに高じ、劇場という垣根を取っ払ってしまうのである。
所謂、観客は知らない間に、プロぺスローが住んでいる島の住人、いや森や草の背景にされてしまったのである。
そしてプロペスローと娘のミランダ、その島に嵐で漂着してしまったアントーニオとアロンゾーたちとの骨肉の争いが再び始まるのだが、そこで見えてくるのは、森や砂浜の美しい風景や音色である。その美しい場所で、何故このような悲劇が永遠と続くのか?と疑問に思わずにいられないのである。
そして夢の島の出来事かと思いきや、突然俳優たちが、内容とは関係ない現在の身近な世間話をしてくるので、観客は現在と過去を否が応にも行き来させられてしまうのである。
島の住人にされてしまいながら、現代と過去を行き来させられる我々は、この描かれた世界を必然的に冷静的に見つめ始めるのである。
そしてその瞬間を感じ始めると同時に、タイトルのテンペストのKの世界に吸い込まれていくのである......。
このような演劇体験は中々出来ないのでお勧めなのだが、昨日で終わってしまったので、何時かの再演を待つのみである。
満足度★★★
ネタばれ
ネタバレBOX
ロロの【いつ高シリーズ 】を観劇。
全部で四話があり、各一時間の中編である。
今作は一話と二話を観劇。
一話は昼休みの教室が舞台で、二話は深夜の教室が舞台。
校内で幽霊が現れる?という噂で持ち上がっている生徒の将門、朝、楽の三人は、肝試しに深夜の教室に忍び込んでいく。
するとそこには学校には登校出来ない病的な女生徒が、教室に仕掛けた盗聴器を聞きながら、昼間の学校の様子を楽しんでいる。
そして在学中に亡くなった女生徒も、幽霊になって現れてくるのである。
こんな状況で展開していくのだが、展開らしい展開はなく、三人の生徒と病的な少女、幽霊になった少女のちょっとした束の間の時を描いている。
その束の間を、皆で夢中で音楽を聞いていたり、誰それが好きだ嫌いだという噂話しをしたりと、青春を謳歌している爽やかな姿を見る事が出来るのである。
そこには同世代の男女にしか味わえない甘い時は、誰にも平等に存在し、学校というのは人生の中で、一番楽しい瞬間を過ごさせてくれる場所ではなかったのだろうか?
と少しだけ郷愁を感じさせてくれる内容であった。
満足度★★★
東京ELECTROCK STAIRSの【いつかモンゴリと眠る】を観劇。
ダンスなので感想は言えそうで?言えないのが実情だが、物語らしきものを込めて構成をしているので、妙な中だるみを感じてしまうのが難点ではあったが、
かといって70分も踊りっぱなしは無理だろう。
何時もながら気分を良くさせてくれる踊りには満足。
3人で踊っているのだが、大好きなダンサーの高橋萌登だけを見ているのは問題か?