満足度★★★
ミッキーに会いに
なかなか見ごたえあり。
ネタバレBOX
「おばけの市」…FXアドヴァイザーの枚方(藤原慎祐)が、気弱そうな広告代理店営業・高槻(西尾友樹)を顧客に囲おうと、ヴァーチャルFXを始めると高槻も熱くなり…。
よくわからないので近づきにくいんだけど、カネの魔力で途端に敷居が低くなる。そんな怖さ? でも、こうしてる間に何百万も稼いでいる人も沢山いるんだろうなと。
「わたしの値段」…SEX後、女に金を渡そうとするコウスケ(首藤健祐)だったが、女・ユミ(志水衿子)はそれを拒否する…。
わかったようなわからんような理論展開だけど、妙な魅力に溢れる。カネの存在と心の在りようを提示して、ラストのキスで柔らかく締める快作。あと、志水の太ももがエロい。
「この世にうたがあるかぎり」…自称詩人でバイトも碌に続けられないヒモなケンタ(西山宏幸)とその彼女・ヨウコ(外山弥生)の、愛情を描く。
とかく、ケンタのグズっぷりが目も当てられない程上手い。詩は苦手。
「崖から飛び降りる」…電気代0円で生活するリク(石田迪子)は、反原発デモに参加している。デモを表参道で見かけたヨウコは一人参加する。そんな二人のデモ開始前の会話。
反原発で反現代人的なリクに困惑し、同時に惹かれるヨウコが一般現代人の代表者のよう。セリフにもあった「崖から飛び降りれば羽がはえる」ってのはなかなかできないし、身がもたないなと。けど憧れる。
満足度★★★
表現=人
のるては色々かわいい。
ネタバレBOX
非実在青少年規制条例が提出され表現の自由が脅かされそうになる中、漫画の神から遣わされた魔法少女・冷泉のるて(伊集院聖羅)は、魔法の力が使えない状態でなんとかそれを阻止しようとする…。
討論会などの会話が主軸の舞台で、ストーリーは二の次という感じ。規制派の高校教師・津川(田中浩之)が、不当逮捕された教え子を守るために反旗を返すとか、全体的にキャラは立ってるけど人の描写が弱いと思った。それでいい舞台なんだろうけど。
とはいえ十分楽しめるし、興味深いテーマを扱ってそれを提示するいい作品だと感じた。話の内容も国会で実際にあったことで、それを二時間で要点を抽出してみせるという意味で付加価値のついた公演だった。一見、規制派が頭おかしいように(反対派は冷静に)描かれるけど、かなり突飛な規制なんだろうということは伝わってきた。
『本を焼く国ではいつか人をも焼くようになる』 ハイネ
『ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき~
ナチスはついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した。
――しかし、それは遅すぎた』 マルティン・ニーメラー
『大衆は女のようなものだ。
口では自由が欲しいと言いながら、強い者に支配されたがっている』 ヒトラー
が印象に残った名言。
満足度★★★★
フレンチトーストのつくり方
面白い。雰囲気的にバー公演みたいにお酒片手に観たい舞台だった。
ネタバレBOX
二重の入れ子構造。潔癖で前の嫁の名前を飼い犬(西岡裕子)につける旦那・ジョー(近藤貴久)を殺害したシュガー(片山誠子)がパハップス刑事(斉藤コータ)の推理で逮捕されるという映画?を観てた、主婦・佐藤まり子(西岡)も、旦那を殺しそれを真似ようとする…。
真似といっても、旦那は鼻くそほじるのが趣味みたいなエロ小説家(青木直敬)で、そのいい加減さがうまい。ここらへん古典落語的な感じ。真似しようとしてうまくいかないおかしさみたいな。
シュガーもまり子も元小説家で結婚を機に専業となった経緯があり、生活への不満も手伝ってか小説を書くということが自己の拠り所となっている。逮捕されても自分の小説が認められたことに喜びを感じるシュガーを観たまり子は、旦那の自殺認定がおりた後、自分の小説を認めて貰おうと病的に躍起になるのが笑えもするし笑えない面白さがある。まり子の友人の鑑札・研二(ひら凌一)がもうひと波乱起こすけども、中心はシュガーとまり子の2人の女性の抑圧された自尊心だろうか。まり子の殺人の際にシュガーらがアドヴァイスを出すとか演劇的な要素も入って、見やすくわかりやすい構図がうれしい。
「ハイヤーズハイ」のように、笑えてグっと舞台が締まるシーンを挿入するスタイルで楽しめた。少人数で小道具もオシャレなスタイリッシュ作品。気に入った。
西岡と片山の女性だけでなく、男性陣もいい演技だった。片山の猫演技もうまく舞台にからんでた。西岡の目つきが素敵。
満足度★★★
トラックメロウ
いい感じだけど、周りほど笑えなかった。70分。
ネタバレBOX
添乗員(中尾)がガイドする飛騨高山ツアー。運転手(平塚)や客たちの自分勝手な発言に右往左往の添乗員。バスが事故り、通りかかったトラックに乗せてもらおうとするも…。
トラックを脚立で表現するとか、広い舞台を目一杯使っての視覚的バス表現とか、面白い。ただ、会話の面白さがもうちょっとほしい。
トラックメロウ(山田)が登場して、添乗員がメロウを崇拝し、客3を排除して、みんなが荷台に乗り込んでからの、タイムマシーン展開は良い加減で好き。
序盤からイライラする会話(発言)が続き、心の通わない面々(ツアーって赤の他人が集う設定がいい)だったが、一言のしゃべらないメロウを楔にして、ヘンテコな一体感が生まれるおかしさがあった。しゃべってもつながれない人間らと、コミュニケーションをとらないことで人と人をつなぐメロウとの妙な舞台だった。
ATの渡辺えりさんのトークは興味深く、流石と感心した。人の責任して謝らない話とか、緊張が高まって劇場が火事にならないかと願う話とか。舞台人。
客5の空沢しんかの声がいい声だった。
満足度★★★★
進化
タイトルの「みなしていいでしょう」ってとこがいいニュアンス。
ネタバレBOX
父を殺されて感動がなくなった秋男(奥田ワレタ)が、ニセ村上春樹(久保貫太郎)のアドヴァイスで小説を書く話。毒ガスを撒いた犯罪者・沖田九六(花戸)とそれを匿う女・一花(佐藤みゆき)が大家・新堂(武子)から逃げる話。無感動な刑事・草壁(森下亮)と中條(幸田尚子)を従える強引に事件を解決する後藤田(手塚けだま)とその被害者・麦山(小林)の話。精神疾患で頭の中で後藤田らが事件を解決しているという二木弓(とかげ)となんちゃって精神科医・鶉女(金沢)の話。
秋男のフィクションと思わせて、リアルとフィクションが交差する構成が自然。音響と照明も上手くからんでたし、舞台上の目隠し?を使ったアクションもまとまりがあった。
ラストのダンス(というか拳法)からかぶりもの→剥いで開放感のある表情って一連の流れは○。進化=克服というところかしら。もっと大きなものも感じるけど。
場面転換の振りがおとなしめだったけど、最後の力強さはやはり惹かれるものがある。
キャラは、心に傷を負ったふうな刑事・草壁と中條が好き。イントネーションのおかさしさと嘘つき、空気読めないといったわかりやすくてツボを抑えた要素で、舞台でも冴えてた。あと、後藤田もいい。銃をぶっぱなした草壁に、冷静に「裁判とかあるだろ」とつっこむとことかね。いいトリオだった。
中盤でみせた、音楽にのせてのバトルシーンも好み。ちょこちょこいいとことがあるのが嬉しい。
満足度★★★
看板女優
ナカゴーらしいノリなんだなと。パワフル。
ネタバレBOX
黛さん(佐々木幸子)ら4人が、カムヰヤッセンの元看板女優のストーカー被害を慮って訪問する。カムヰヤッセンの現看板女優(甘粕阿紗子)や壇れい(菊池明明)も加わったところで、元看板女優の心の傷が痛み出し…。
女の会話のおかしさに始まり、壇れいの破天荒で舞台を沸かし、墨井鯨子のトンカチ乱舞でドッタバッタ、んで元看板女優から黛妹の思い出を追い出すため民族儀式なパフォーマンス…クドいってくらいの展開も楽しめて良かった。
黒衣(飯田こうこ)良かったよ。
満足度★★
物語とは
よくわからん。チラシデザインは好きだけど。
ネタバレBOX
言葉がこっちに届いてこない感じ。
月光の際の構図が面白い。
満足度★★★
一人サッカー
チケットプレゼントにて鑑賞。後半いい感じになった。
ネタバレBOX
地球から「次世界」へ多くの移民を乗せ、「宇宙船地球号」が出発する。地球号を管理しているのは、マザーマリア(竹村千穂)だが、マリアが侵入者からのウィルスを受けるところから船内が混乱し始める…。
侵入者らの話から、この船の人間は一人しか次世界へ行けないことがわかる。地球号は移民船でなく、選民船ということか。結果は、ヤマオキがマリアの子・卵子(原嶋あかり)と一緒になり?、次世界という現世界に似た世界で、マリアと謎の男(郷本直也)と似た夫婦の子として生まれる…という話。移民の話が地球の環境汚染等、人類を原因とする問題からの逃走でしかないとすれば、人類をそのまま移動させても繰り返しになる…という発想を人類の上層部がしたのかマリア等のコンピュータがしたのかわからないが、とにかく人類の再生を目論んだ計画なのだろうなと。ラスト、子として生まれたヤマオキの周りに、人類の普通の生活が溢れている描写がとても良いと思った。
観客を地球号の乗客に模し、公演案内や渡航ガイドなどの配布をするのもOKだが、若干クドいし、時間を取りすぎな気がした。程度の問題だけど、本編が始まるまででちょっとダレてしまいそうになる。
ドリームシアター(あなたの夢を叶えます)みたいな、コントも嫌いじゃないけど、話の進行に織り交ぜてやってくれると嬉しい。ちなみに笑いの箇所は、もっと調整をして質を上げてほしい。演者の力量って問題もあるけど笑いにくい。ネタが若干上の世代向けだったからかしら。ついでに、物販の案内もほどほどでお願いしたい。
こんな感じの前半を整理して、後半の混乱やメモリボールのくだりを厚くしてくれる方が好み。(てか、子として生まれたヤマオキはメモリボールをどうしたのかしら)
あと、早口だと聞き取りにくい場合があったのも、頑張って欲しいところ。
満足度★★★
赤
チケットプレゼントにて鑑賞。
入口から見て左手の座席(舞台に向かって側面?)は観にくくてストレス。
ネタバレBOX
就職を前に学生闘争だかに目覚めたリーダー(加藤岳史)とそれを慕う友人らだったが、リーダーの死や愛情のもつれから、佐伯さん(金子優子)を中心に意味のないままごとを続けている。そんな佐伯さんを心配する家族らは、自営の警察を組織し、家に連れ戻そうとする。一方、地獄に落ちたリーダーは、地獄でも共産主義を掲げ、餓鬼らを先導し革命を狙おうとする…。
イデオロギーは特に関係なく、家族愛とか内向きな話。ちょっと青臭い内容なので、スピーディな展開だと嬉しかった。山場は終盤の佐伯さんとポリスたちとのやり取りだと思うけど、グっとこなかったのは残念。再婚のネタとかうわっすべりな感じだった。んで、餓鬼・鬼江(木下幸太郎)の父が再婚の父(松澤くれは)で二人抱擁ってのも、その前に活きた要素を置いておいてほしかった(単純に笑いを狙ったのかしれんけど)。
月が落ちてくるってのは浅間山荘の鉄球と絡めたのかと思ったが、肺がんのネタはわからなかった。
満足度★★★★
良作品群
自然にグっときた。
ネタバレBOX
『物語のはじまり。』…書けすぎて困る小説家(中田)
組曲「回廊」1…ゆうじ(鶴町)に飴をあげるミズキ(武藤)
『物語のすすめ。』…引きこもりな高校生(櫻井)と小説家と女子高生(民本)
カミングスーン…忘れた
組曲「回廊」2…中高生くらいのゆうじはミズキに告白する
1%ラブレター…メールから1%の愛を汲み取る女(川田)の突飛さと真剣さが眩しい。結構きた。
暗闇に手を伸ばせ…彼氏(和知)から呼び出されだ女(小玉)の、ドアの前での不安と期待をコミカルに濃縮した秀作。
滅びの呪文…図書館職員(詩人?)と取調官(狩野)。話の中に呪いの言葉を入れ込むホラーな展開がいい空気。
「真夜中のゲーム」…玄人っぽい様相のギャンブラー(鶴町)と若い女性(清水那保)との対決。ラストはトンカチ。欲をいえばもうひとひねりほしい。
ファミレス・リベンジ…母の仇(狩野)と戦うウェイトレス(川田)。コミカルで肩の力を抜いてくれる。
ファミレス・ジェノサイド…ウェイトレスの闘い。意外と動きがかっこいい。キマッてた。
組曲「回廊」3…ゆうじ(和知)とミズキの時間が逆行していることがわかる。
ロミジュリ・オーヴァードライヴ…時間を戻しても変えられない運命。運命(4人)を視覚化したのが面白い。
バーテンダー…バーテン(鶴町)と常連客の女性(小玉)がカクテルを通して会話する。心を掬えなかったバーテンの失恋に、笑えない面白さがある。
組曲「回廊」4…過去(ミズキの未来)を知っているゆうじとミズキの関係性が面白い。
『物語のてほどき。』…離婚した男女の大人なようなやりとりと、男(中田)のどこか落ち着かない様子がいい。
『物語のおわり。からのはじまり。』…おじさんになったゆうじ(中田)は幼女のミズキに飴をあげる。んでミズキの物語が始まる…。
組曲「回廊」の時間の逆行性を生かした描き方が上手い。1でミズキが幼いゆうじに言った「忘れないで」という言葉がシンプルでグっとくる。
満足度★★★
萌え
コレドは初めて。ちょうどいい雰囲気の会場で気分良かった。駅から近いし。
公演時間80分弱もちょうどいい。値段も手頃で平日夜公演にぴったり。
ネタバレBOX
女にふられた反動でゲイの道に入り込んだ、マイナーな漫画家・室田(古屋敷悠)の漫画キャラを、同人作家のミカエル(大久保ちか)がBL本に扱い、キレる室田だったが、意に反してBL本はヒットする。そんなBL本を無視できず作品を見失う室田は、逆にミカエルからネタを取ろうとする…。
オタク(腐女子)であるミカエルとか尾山先輩(両角葉)とかが、イメージするオタクとちょっと違うような印象。セリフがオタクっぽいのに、雰囲気がオタクっぽくなくちょっと気になる。序盤はそんな感じでちょっとタルいけども、室田vsミカエル・尾山あたりから面白くなった。
室田をフった過去の女に似ているという、ミカエルの妹で非オタクの結花(鈴木由里)との終盤のやりとりは見ごたえあった。心に傷をもつ室田を見抜き、「同属嫌悪」で「無視もできない子供」と一刀両断。ここらへんいい空気だった。
室田と恋人のような関係にあるマスター(吉岡そんれい)が、室田の心変わりからミカエルらを敵視し、暴行を加え店に戻ってきたところを室田から指摘され幕が降りるのだけど、ちょっと味気ない感じがした。コミケ出店もなくなり、ミカエルは男と逃げ、室田も結花もマスターも傷つく、アンパッピーな話なので合っているのだけど。
オタク要素での表面的な笑いに終始せず、オタクの性質を掘り下げたり、人のつながりを描いたりと面白い台本だった。スパイスの効いたセリフもあったし。
満足度★★★★
ぬくもり
面白いけど、ちょっとしゃべり過ぎな印象。
ネタバレBOX
ヒモで無職のダメ男・イタル(泉雅宏)に孕まされた女子高生・ミツコ(あやか)から生まれた二卵性双生児のタオとタオ。一人(松本みゆき)はミツコが、一人(名嘉友美)はイタルと11年付き合ってたアヤ(木村キリコ)が育てることに。タオ・松本は交際のあった元担任・ハヤシ(林剛央)とズルズル会っている。交際経験なく作家を目指しているタオ・名嘉に自分と同じものを感じたフミオ(満間昴平)は、自分の兄(横手慎太郎)から逃げるようにタオ・名嘉の家に入り浸っている…。
タイトルの通り、教育されるタオ。結局、タオ・松本の傍にはソノヤ(中田麦平)が、タオ・名嘉の傍にはフミオが残り、ハッピーエンドのように見える。タオ・松本を好きなソノヤのまっすぐな人間性に照らされ、また偽ソノヤのヨシダ(村上佳久)の鋭い指摘で、タオ・松本はなんとなくいい方向に伸びそうな予感をさせる。タオ・名嘉も兄の呪縛(というか相互依存?)から 抜けたフミオと明るい方角へ進めそうな気にさせる。
タオに限らず人が人を育てるってもので、特に恋愛は一人じゃできない故人によってのみ形作られるってシンプルな話と受け取った。あと、好きってことが怖くも感じた。今回、突出して病的な人間はいないのだけど、それが逆にね。
満足度★★★★
とてもいい作品
面白い。もう10分ほど短ければなお良い。
客を受け入れる体勢もよかった。
ネタバレBOX
枚方の創世記。そこの団地に暮らす人々を命を描く。
松下幸之助と阪急電鉄?の2大神により生み出されたとする序章からして掴まれた。古事記にも名が記されるとする枚方と神話をからませる着眼点が素晴らしい。また、役者を「語り部」と表記するとか○。
障害児の大和タケル(澤村喜一郎)が、昏睡する中、幼い頃亡くなった母に会いにいく話の恐ろしさ。生まれんとする自分をみて、「やめろ、産むな!」と叫ぶタケル。神話のおどろおどろしさと、苦しさがマッチした良い場面だった。(見る人がみたらクレーム入りそうだけど) タケル死亡後、再婚相手の子を殺してしまいそうとタケルの妹・ミコ(市川愛里)は転居を提案し、枚方との決別を決める。
孤独な少年(高原綾子)は尿神さまを祭り小便をかけることで、心の安心を得る。あることで狂いだす少年だったが、タケルを亡くしたミコと尿神さまを供養することで区切りをつける。
不妊に悩む夫婦が古代魚を飼う話とサカナ(藤田かもめ)とトレンチコート(門脇俊輔)のミックスも面白い。神話と現在の混在というか。沢村かづえ(藤田)を見殺しにした睦夫(織田圭佑)が原因で魚を殺す妙子(市川)だったが、睦夫の愛情で平穏を取り戻す。そして、サカナは川に流され自由となる。
舞台には様々な小道具があって、役者も動き回り、楽器とダンボールとか身体音で空気をつくり、照明も効果的に使われていて、ラウンド型の客席でも十分に楽しめた。
神話という大きな地点から個々人に焦点をあて、人の命という根源的なイメージを想起させる手腕が素敵。ラスト、枚方に灯る電飾が、人の命の点在にみえた。
満足度★★★
黒檀のような黒髪
チケットプレゼントにて鑑賞。
ネタバレBOX
『白雪姫』を下敷きに、王子(渡辺望)と白雪姫(渡辺実希)を殺害する「コビト」(加藤晃子)の話。
7人のコビトでなく、引っ込み思案な「コビト」が6つの人格を作り上げ、白雪姫への想いが歪み(表現できなくて)、二人を殺す…って現代的な軸を通した作品。7人の人格を演じた加藤はよかったけど、欲をいえばさらに鬱屈した演技があって良かった。話のキモでもあるし。
渡辺実希は、純真無邪気な白雪姫像(母への愛情とか)をいい感じに演技できてたと思えたので、やはりコビトの歪んだ愛情との落差がもう少し欲しかったかな。話も読めなくもないし。
白雪姫メイクは大変良い。料理もできるとか無敵だなと。
演出はより一層世界観に引きずり込むような手法で攻めても良かった。ちょっと変わった舞台だし。
衣装に手作り感がちょっとみえてしまったのが残念。
満足度★★★★★
FC
安くて面白い。
ネタバレBOX
小学生の吾郎(荒川良々)が「たけしの挑戦状」を買いに行くとゲーム屋で「ミシシッピー殺人事件」を不当に買わされる…。
荒川の小学生演技が上手い。最初知的障害入ってるのかななんて思ったけど、息子にダメだしされるちゃらんぽらんな父(岩瀬亮)とのバランスがいい。母を演じた安藤聖も吾郎への愛情とか父への愛想尽かした感とか、劇団の橋本(岩井秀人)への軽蔑した視線とかうまかった。ゲーム屋からファミコン自体を巻き上げる図太さとかも良い。父にかましたグーパン(グーでのチョップ?)は大いに笑えた。
友人の欽一(平原テツ)の家でお漏らししたこととか、「ミシシッピー殺人事件」の件とか、子どもらしい友情の動きの描き方がやはり上手い。笑えるのだけど、なんか昔の自分を見ているようでチクチクされているみたい。ラスト、欽一が吾郎宅でお漏らしして友情を回復させるのとか、いい〆方だと思う。素直にできない男心というのか。
ツーコンマイクでのアナウンスとか、小ネタも○。欽一宅での吾郎の体育座りに少年時代を感じた。
満足度★★★
頑張っているのはわかりました
チケットプレゼントにて鑑賞。先にきた客を奥から座らせるのはやめてほしい。
ネタバレBOX
左手で人に触れると、その人の本音を言わせることのできる悪魔と、色んな人間たちと、悪魔から人間になった女性の話。
演技は置いといて、わかりやすい舞台を心がけていてその点良かった。ただ、話自体に面白さが薄い。悪魔の能力と悪魔から人になったメイム・星奈の能力の違いとか、いい材料なんて思ったけど、舞台の魅力につながってないような気がした。
好みの話だけど、音響SEが大げさというか過剰に感じた。また、暗転とか場面転換が多くてややダレた。いらないシーンとか人物とか思い切って削ってほしい。
主宰の帰り際の挨拶に誠意を感じた。
満足度★★★★
ブラピに憧れ
チケットプレゼントにて鑑賞。なんか面白い。
ネタバレBOX
妄想好きの夏菜(菊池美里)のバイト先の面々や夏菜の姉で×4の明菜(小林さやか)などが、独特の調子で会話したりドタバタしたりバク転したりの100分…。
話的には群像劇か。地味な夏菜を中心に一風変わった人間らが織り成す会話が面白い。キャラもたってる。宇都宮(農塚誓志)のマイペース気質とか、荒井(珠乃/舘智子)のめんどくさくって病的な女キャラとか、クララの小話ネタとか、単純に楽しめる。終盤のトンデモ展開とか、なんだコレって感じだけど笑ってしまった。頼朝のバク転とか、突如として意味ないと思うけど、なんか面白い。作演の感性がいいのかしら。
細かいクスッとできるとこも結構あって、気楽に観劇できるのがとてもうれしい。
最後、夏菜とクララの前向きメッセージで気が楽になるよう。んで、妄想の男に似たリーマンからバラの花束…一見安直のような気もしたけど、あたたかい舞台に素直な気持ちで楽しめた。
妄想のブラピ役・立浪伸一がかっこいい。若社長役の上松コナンが上手かった。
満足度★★★
じわじわ
人生の断片をみせてくれる。
ネタバレBOX
由美(松田弘子)を中心にした家族(両親含め)の話や由美の義理の妹・好恵(能島瑞穂)の苦悩、過去に関係があった木下(小林智)と芸大生の脇田(荻野友里)の再会など、欧州で戦争が起こっている近未来の日本の美術館を舞台に人と人を描く。
美術館ロビーのゆったりした静かな空気が、戦争と距離をおいている日本を描くよう。ただ、描かれない暗いような部分が(その人にとっては)戦争に匹敵するような激しさがあるのかななんて思った。みな色々隠して(見えないように)生きてるもんなんだなと思った。
学芸員・平山を演じた兵藤公美も、能島も良かった。
満足度★★★
宇宙と主婦
初燐光群。面白い。ただ、場内が暑いのがつらい。
ネタバレBOX
「宇宙みそ汁」
主婦・愛子(円城寺あや)と4人の愛子を中心にして、アパート住人や息子(宗像祥子)との関係を描く。変わるのはみそ汁の具だけってセリフがあったが、主婦の活動する世界のこまやかな動きと主婦の心情を掬いあげ、面白い舞台作品に仕上がっていた。
複数人がセリフをつなぐ演出(もしくは声を合わせてしゃべるの)は好きな方でないのだが、声の感触やリズムがよいのかかなり心地よい出来だった。
変にタイトルに引っ張られない内容だったのも好印象。主婦のカラフルな衣装も素敵。
「利き水」
ミユキ(田中結佳)は、単身赴任の夫?の家の水道水の利き水をマスター(猪熊恒和)に依頼する…。ストレートは話を挟んでくれて助かった。原発事故による水の変化を静かに印象づける作品。
「じらいくじら」
浜辺に上がった長生きの巨大くじらに、兵士が地雷(鴨川てんし)を埋める。村の少年(宗像祥子)が犠牲になり、くじらは海へ戻り、深海(海溝?)で、地雷とともにひっそりと待ち続ける…。大人な童話って感じ。地雷の存在は待つことってことを鴨川が冷静に話すところがミソか。一度生まれた存在を忌み嫌うでもなく、内包するくじらはなにを思ったのだろうか。いい作品。
満足度★★★★
この瞬間
面白い。値段も安いし。麦茶付きだし。80分って時間も良い。
ネタバレBOX
ロックバンド「ジョーブ博士と下部構造」がフェスに参加するとか、女の子の過去の記憶とか、おじいちゃん家の思い出とか、それらが過去から未来へ流れたり、戻ったりする。
脚本(肥田知浩)が良い。新巻鮭とかラジオとかうどんを楽器にするってところからしていい感じのフィクションだし、女の子の妄想の具現化と具現対象の逆転とか、隔てた空間と時間の相互作用とつながりとか、魅力がいっぱい。
庭先、縁側も効果的に使われて、ゆうどの空間にとても馴染んでて、夏の田舎の不思議な話って感じが、臨場感を煽る。
実際、場面は、電車内だったりとある家の一室だったりするし、時間も急に未来に飛んだりするのだけど、照明や音響効果なしでもすっと切り替わる演出(と演技)は見事だと思った。
1000/πを演じた用松亮の「この瞬間だぜ」ってダサカッコイイ言葉が印象的。バンド演奏も絵的に秀逸だったし。コトネ役の野津あおいも優しげでかわいらしい女性演技がうまかった。