満足度★★★
水をめぐる2
チケットプレゼントにて鑑賞。仮チラシの漫画のラフさが土着な感じ。
ネタバレBOX
夫の遺灰を箱に入れ、海へ蒔こうとする女・清(あべゆう)は、海を知らない。道行く人に海がどこにあるか尋ね、歩く。清を尾ける漣(かみもと千春)は、清の夫と不倫関係にあったが、結局清が選ばれたことに不満を漏らし、遺灰を寄こせと迫る…。
作演が事前に説明していた、独特の歩行が印象的。背負うような前かがみの姿勢で大きな足音を踏み鳴らし、一歩一歩前進する。話のスローさや音楽、衣装と相まって、昔話な空気感を醸す。実際、登場人物は幽霊だったり曰くありげな坊主だったり、浮世離れした世界観なので、それが一層引き立つ効果があった。
あと、清の妻として、女としてのいじらしさが良かった。
ただ、昔話(神話?)な雰囲気と話にすんなりとけ込めなくて、中盤眠くなった。会場も暑かったし。
満足度★★★
男の逃避行
西原と上松コナンの演技が気に入った。
ネタバレBOX
なんか厭になって逃げ出す男2人。東西南北を駆け巡り、北のカフェで酒を飲む…。
神経質そうな住田(芳賀晶)は、南の地で出会った人妻・叶子(市村美恵)の夫を崖から突き落として逃避行し、結果、自分から叶子に別れを告げる。楽天的な戸越(西原誠吾)は、彼女・飯干(林田麻里)とのズレを抱え、北のカフェで偶然出会うも、やはり暗に別れる。
現代に生きるサラリーマンの圧迫感から逃れる2人が、最後まで逃げ切ったようなさっぱり感。荷物もなしに(金も途中でなくなるけど)身軽に旅する二人を若干羨ましくも思った。
叶子との駆け落ちを決め、叶子が夫(松尾マリヲ)とケジメをつけると決意した時、住田と叶子の「逃げる」の温度差にハッとなる。単純に体の移動だけじゃ、「逃げる」にならないんだなと。「逃げる」にもプラスの逃げとマイナスの逃げがあるんだなと。多分、ラストの二人はプラスのほうに逃げられたんだなと。
話の展開自体はややさっぱり過ぎる気がした。つまらなくないけど、心にひっかかるところが少ない。笑いももう一歩な感じ。笑えるとこもちゃんとあったけど。民族資料館とか好き。
満足度★★★★
教室の悪魔
初本谷有希子。面白い台本。
ネタバレBOX
空き教室に追いやられた、中学2年を受け持つ先生4人と保護者1人。保護者の息子は飛び降り自殺未遂をして意識不明らしい。その息子は、担任の美波に手紙を渡したらしいが美波がそれを無視したせいで飛び降りたんだと、保護者の片桐はいりから美波は責められている…。
実際に手紙で相談を受けていた菅原永二(女教師)は、中学時代の自称トラウマから手紙を無視し、公にならないよう他の先生の弱みを握ろうとネタをでっち上げようとする。マドンナ先生の美波もまた、生徒からの告白を黙っていたし、松井周と片桐は不倫にしけこむ。友人の自殺を止められなかったことを菅原からつけ込まれた佐津川愛美は、菅原の悪事に悩む。
とある女生徒の件や「先生」の来訪の件で混乱する菅原は、皆の前で手紙の無視と言い切り、中学時代の2階からの飛び降りを告白する。そこからの佐津川以外の混乱がおかしくて、またちょっとズキっとする。「みんな自分が好きなんだ」という菅原の言葉の通り、保身に走る人間をどことなくユーモラスに鋭く描く。ここらへんシビレた。
んで、生徒の意識が戻り、菅原のトラウマを消滅させるシーン。チャイムの音をかぶせてキレイにしめる。トラウマはなくならないと吐き捨てる菅原は、独り部屋の中で深々と雪の降る中、魔法?のお菓子を食べる…。
ラストの暗転して、菅原がハケて雪が激しく舞う演出は好み。
でっち上げのトラウマが、菅原の生きる原動力、存在の根幹で、それを守るため、理由にするため右往左往する姿が哀れ&怖い。でも、ギリギリの精神状態で生きている菅原をみると、一生懸命なんだなとも思った。まあ近くにいたくない人間だけども。
突飛な人物像だけど、自分の中に心当たりのある性質を上手く描いた作品。ただ、演技的には普通に見えた。また、黒沢あすかverが見れなくて残念。
満足度★★★
犬マークがかわいい
確かにナンセンス・アイドル集団だった。
ネタバレBOX
豪傑で強引で馬力のある業田猛死(佐藤拓之)の強者の理論が先行する考えを受け継ぐ三兄弟と、そんな業田家のやり方を良く思わないマイノリティらの闘い…のようなもの。
六法辞書を携え法で悪人を裁こうとする魔法少女のデッパ(鈴木アメリ)や、まっとうな笑いを目指すピン芸人のマゴコロ(岸晃太郎)など、不遇な対応をうけ報われない自分を嘆く。昔の遊び部に所属する服部(満間昴平)は、女子から冷笑される存在だけど、友達の翼(石黒淳士)のアドヴァイスで忍者になる。
業田を支持する大衆は次第に服部の思想(赦し)へ転換し、服部はクズ山を業田のゴルフ場建設計画かあら守るため、イベントを開催する…。
業田ismに対して嫌悪感を抱かせつつ、マイノリティとの力関係を逆転させ、今度は服部ismへの嫌悪感を抱かせる、という右に左に揺れ動く作品。んでラストは一色に染まる。
ナンバーワンでもオンリーワンでもどっちでもかまわん、ということかなと。むしろ左右に揺れる不確かな「大衆」ってのが敵なのかなと。
藤尾姦太郎の陰毛は見えた。
満足度★★★★
出前を待って
けっこうさっぱり味。好み。
ネタバレBOX
離婚調停中の美術教師・安田(村上航)に、生徒の岬(小園茉奈)が処女を捨てたいと迫る。岬がなんとなく付き合っている柔道特待生の岡山田(岡山誠)とはそいう雰囲気になれない、別れたい、けど関係をなくしたくない…って理論で処女でなくなれば上手く別れられるかなと目論んだとのこと。それとは別件で、岬の体育着が盗まれるという相談も受ける安田だったが…。
思春期の不定形な心を持つ岬と、離婚の寂しさから女装に走り、さらに岬の体操服を着用し続ける安田の、見ようによってはハートウォーミングな話。
盗品を隠して安田の注意をひこうとする生徒(茂木(杉木隆幸)の推測)とか相談カードっていかにもな材料でいじめの存在をチラつかせるなど、60分ちょいの中に色々なモノが入ってて楽しめる。
あと、岡山田の、いかにも柔道特待生ですって風貌が面白い。あの実直な行動力とか、茂木に入れ知恵されたHのハードルとか。うまい。
中盤の、岬と安田の噛み合わない独白シーンが好き。最終盤の安田が体操着のことを告げ、岬が後ろを見ずに「写メ撮って個展をするよう脅す」ってとこも好き。
恋愛ともちょっと違う、近い存在に寄りかかろうとする、けどやっぱり自分を中心に持ってきちゃう、そんな二人の奇妙な距離感と立ち位置が面白い。そして、そんな二人を結ぶのが、岬をモデルにした一枚の絵画。二人の心の焦点みたいなものかなと。
安田の個展を希望する岬の言葉で、安田の心に安心が生まれたんじゃないかなと思った。変化球だけど、やっぱりハートウォーミングな話なんだと思った。
満足度★★★★
トラ爺がかわいい
中盤ダレたけど面白かった。
ネタバレBOX
サザエさんバリに愉快で楽しい家庭。そんな現状に違和感をもつきな子(浅野千鶴)。きな子の息子・ちゃー坊(佐々木千恵)の担任・吉永先生(阿久澤菜々)が家庭訪問にやってきて、きな子の家に疑問を投げかけ、「ヨーゼフK」という人物ときな子の夫・めめ男(武田諭)のことに言及し、気にかけるきな子。電気屋になりすましたヨーゼフK(猪股和麿)は、この家のドタバタを動画でみて、自分らは救われたときな子に話し、さらに動転するきな子だった…。
きな子らの世界は月にあって、実際のめめ男は地球にいる。めめ男はきな子らの世界と人間を作ったが、ここらで話を終わらせようとするって、確かに「少し不思議」な話。
序盤のTV騒動と遺書の話で爆笑をかっ攫い、めめ男に消される吉永先生(腕すっぽ抜けて砂)とかいい感じだったが、中盤がやや冗長に感じた。正直、設定を飲み込めてないとこもあるが、きな子の暖かな今の家庭(やダンナ)を思う気持ちは、終盤の仮装カラオケシーンの後ろ姿でも伝わってきた。そして、そのあとの決意した表情もいい。一秒も満たないくらいだったけど、確かに意思が篭ってた。
ラストの二人のオブジェと砂の演出も、いいシーンだった。ヨーゼフKの乗ってきた舟で地球に行けたが、きな子は月で終わること選び、月のめめ男と永遠に結ばれたのか。
満足度★★★★
妊婦の聖域
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。
チラシ裏を見るに、過去の公演のほうが舞台が広かったのかな。ジャングルジム無かったし。
ネタバレBOX
三人のワケあり妊婦の話。
愛子(菜摘あかね)…アパートの借主。さとみとえりこと同居する。正社員。不倫の結果妊娠。ひとりで生きるというが、生きていけないし寂しいことを理解している。
さとみ(のしろゆう子)…若干チンピラ気質の妊婦。無職。DV夫から逃げてきた。
えりこ(柴田知佳)…手癖の悪い妊婦。アルバイト。誰が父かわからん子を妊娠するbicchiでちんちくりん。男を見る目がないのか、無職の隣人・杉田(加藤智之)に惹かれる。
三人とも問題を抱えた妊婦で、貧困とともに社会的弱者である。そんな三人が文句いいながらも安心を得ようと、自尊心を支えようと、壁の薄いアパートの一室に身を寄せる。そこに踏み込む男性(社会)の図。立場が悪くなると出ていってと排除しようとする愛子。杉田の告白で、どうしようもない現実を見つめる三人。その時、ご飯が炊き上がり、4人で卓を囲み白米を食し、未来への活力を見出す…そんな話。
理解されない寂しさと今の自分らの状況は自分らだけのせいではないという逃げを暗に発する妊婦らは、自分のせいだという杉田の発言でちょっと変わったかなと思わせる。ただ、愛子は、ラストの踊り後、一人舞台に残りやはり独りなんだという印象を持たせた。
弱者やマイノリティを一室に集め、社会の一端を俎上にあげ、社会の歪みとか、貧すれば鈍するって人間の性質を上手く魅せてくれた。
ちなみに、DV夫はもうひと波乱起こすかなと思ってた。また、妊婦を材料にしたわりに母性を感じさせないのはあえてなのか。「妊婦」というより「女」という意識が強かった。
満足度★★★
納豆の是非
初キノコ。女性な作品。
ネタバレBOX
カラフルな舞台美術と衣装でやわらかい印象。
梶原未由にスポットをあてたダンスがいい。あと、篠崎芽美にスポットをあてたダンスも好き。儀式のような沸き立つような振りがハマる。
かたつむりの話とかぼちゃスープに納豆を投入する話とかのガールズトークなシーンも嫌いじゃない。美術とダンスで飽きのこない作品だった。インパクトのあるシーンがもうちょいあるとさらに良かったけど。
満足度★★★★
鳴る
面白い。
ネタバレBOX
3人組の友人関係とその人生をシャウトする。
松居大悟…安藤聖のマネージャーを勤める。ドラマ事件の際ダメ出しされショックを受ける。大学時、安藤をホテルへ連れ込みキスの責任を取ろうとするも、安い女じゃないとfuck youされる。
尾上寛之…高校時、片思いの安藤に自作のlove songを歌うがスルーされる。実家の寿司屋を継ぎ、結婚する。
安藤聖…淋しがりではないが、誰かと繋がっていたいと女優を目指す。ドラマ出演時にカットされたショックで失踪。栃木で死体が発見される。
三人の物語とそれの製作話の二重構造。三人の話は、夢と現実の狭間、友情と愛情を描く。安藤の墓参り時、安藤の笑顔と三人の過去がクロスするシーンがいい。過去の話に浸る二人に対して、つまらない話だと一蹴する安藤の存在とその死の混在がいい。また、love songを歌うシーンの安藤と尾上のやりとりの空気が上手い。
ラストのライヴの表情がやはりいい。ここは両方の話の中間に位置するのかなと思う。ニコニコ顔の安藤と真剣で一生懸命な松居と尾上。苦しさを乗り越えるパワーが見えた。うん、パワーがあった。
三人のキャラクターが好きだけど、一番は松居。その小ささが気に入った。キスシーンの割愛もいい判断だと思った。
満足度★★★★
funfare
音感はよくないほうだけど楽しかった。
劇中歌「雨が唄えば」が好き。
ネタバレBOX
ファとレの音しか歌えないファーレの人生を、歌とパフォーマンスで華やかに彩る。
一幕
ファーレ(名児耶ゆり)はレッサーパンダ先生(重岡佐都子)のような歌い手になりたいと願い、歌のレッスンに励む。先生から自分の出自をきいたファーレは両親を探すため旅立つ。
二幕
劇場裏に住み、仲間のbable(bable)とあしのうらみょうが(北川結)と音泥棒をしては人生(今井尋也)に追われる、満たされない毎日を送る、若干不良なファーレ。劇場で行われるオーディションに仲間や人生の協力をえて参加する。
~休憩15分~
三幕
オーディションで才能を見せつけたファーレだったが、ファとレしか音が出せないため、オーディション2位地引網(清水久美子)のマネージャーになる。カレーライスのラジオ番組?「カレーレディオ」出演のチャンスを得た地引網だったが、ファーレの才能を認めその役を譲る。ファーレの歌を聴いたカレーライスは、兄(本当のカレーライス)が歌っていた歌と同じことからファーレと兄の関係を見抜き、ファーレに父と母が死んだこと(と自分がハヤシライスということ)を告げる。目標を見失ったファーレだったが、「ン」しか言えないけどやさしく微笑む友人のポリ夫(大柿友哉)との「会話」から、歌い前向きに生きていくことを決意する。そしてアロンアルハ(西尾大介)と結婚する。
話はシンプルではあるが、音楽と動きの演出で楽しい舞台になっている。そのバランス感覚が上手い。出演者も色んな畑の人(舞台人ではあるけど)がいて、その配置がいい。とはいえ、歌を本業でやっている人と違う人ではその差がでるけど、さほど気にならないかな。それも味と思えるように仕上げたのかもしれない。
一幕ファーレは、子どものかわいさと両親不在のストレス感を上手く表現できてたと思う。二幕ファーレが一番好み。笑顔がいい。音を盗むって発想と演出が面白い。三幕ファーレは華やかなラストを彩る魅力がもっとほしい。ただ、ダイアモンドが降ってくるって歌(雨が唄えば)は聞き入ってしまった。
bableは動きもいいし、なにげに声もいい。今井尋也もいい声だったし、バランスとってた。清水久美子は綺麗な足のラインしてた。
ビタっとハマったという感はあまりないが、多分、今後の調整で色々変えるんだろうなと。3,000円で満足の舞台だった。
満足度★★★
A
面白かった。
ネタバレBOX
暗殺者(実際は農民)の父から悪の教育を受けたキヨミズ(真嶋一歌)と双子のサイワイ(渡辺実希)を堀り出したドロミズ(芹沢統人)は、手に持ったスコップでさらに記憶を堀り続ける…。
愛することは殺意って父の言葉のとおり、サイワイを殺すキヨミズ。さらに、詩人(しにん)アイドルのカノ代(佐藤睦)をも手にかけるドロミズ…がカノ代は生きていたと。
言葉遊びなセリフからも、グっと迫るものがあった。そんな逆転した話。
ノミで純朴の果て(森脇洋平)を造型する演出は、音響効果とダンスが相まって、印象深いシーン。真嶋一歌は、なかなかいい演技してた。あと、須田拓也のコミカル感もいい。佐藤睦はとても美人に見えた。
満足度★★★★
和装ジュリエット
笑えた。公演前のアナウンスもしっかりしてた。
ネタバレBOX
劇団のハコ入り日。シェイクスピアのロミジュリ公演なのに、装置は「土俵」。奥さんの出産を間近に控えた劇作家・三谷(岡田一博)はその光景にショックを受けるも、なんとか公演を行おうと、台本を角界にちなんだ、部屋と部屋の争いに書き換えることでリハーサルを決行する…。
基本笑える。装置設計図の陰謀論のくだりとかガラスの仮面ネタとか最高。単に、ふんどし姿の男で笑いをとるでなく、きちんと計算された笑いが嬉しい。テンポもいいし。
一転、話的には、劇団の過去回想を挟んでしっとりとしたテイストも味あわせてくれた(挟み込みチラシに劇中劇団のチラシを挟む小ワザも○)。
バランスとしては、しっとりした箇所にもうちょい重心を移動させてもよかったと感じた。回想が説明的に使われていたような印象なので、それと今の心情のつながりが薄いというか、人物の心をじっくり描いても良いんじゃないかというか。
照明・音響やアクション、安定したエンタメ要素ふんだんで楽しい舞台だった。
満足度★★★★
規約
面白い。秀作。
ネタバレBOX
高校の文化祭の出し物で1クラスのを削る会議。感情や個人的な思惑に流れる様とドタバタの一体感が上手い。学校と文化祭を愛する3年塩原俊之の頑固で確固たる意思とルールを熟知した振る舞いが、単なるエンタメに終わらせず上手い。「飼い慣らされてる」って塩原に対して、エコエコアザラシを受け入れた3年矢吹ジャンプの「こんなナイゲンがやりたかった」ってやりとりで、キレイに終演する。
序盤の浅越岳人の榎並夕起を攻める論理→下級生と上級生の対立という苦々しい雰囲気から、齋藤コータと鹿島ゆきこの浮気トラブルで客席も爆笑、一気にコメディな空気に。こんなとこ齋藤コータは色々とても上手い。てか、モテすぎだろ。あと、笑いで言えば、ストーカーチックな長谷川一樹も面白かった。そもそも議題が蹴落とすクラスを1つ選ぶってところにあるので、かなりシビアな内容になるわけだけど、ここまで笑わせることができるのが素晴らしい。
榎並以外は、20オーバーなんだけど高校生に見えたのはちょっと素敵。現実の高校での会議はここまで話がまとまるかは知らないけども、かなり移入できる造りになってて、いい舞台と思った。
終盤の議長・甲田のしゃべりが雑だなとも思ったが、リアルタイムな進行だったせいなのかな。
満足度★★★
ミナト
チケットプレゼントにて鑑賞。ちょっと長い。
ネタバレBOX
赤薔薇一族と黒薔薇一族の政権争いが続く王国。「うらん」の発掘地域だった「ミナト」は汚染地域として差別され壁で封鎖され、王国は「ミヤコ」地区でのみ発展する。障害を持って生まれた黒薔薇最澄(八木岳)は、暗殺と策略を重ね王に上りつめる。そんな最澄と幼い頃からの友人であり、現在は人気の盗賊・石川五右衛門(加藤大輔)は、大陸からやってきた宋(有栖川ソワレ)から、最澄が盗んだツボを盗んでほしいと頼まれる…。
政争の黒い部分は上手く描けてた。
しゃべりが聞き取りにくいのが気になった。早口とか大声すぎるとか、逆に音響で聞こえなかったりとか。また、初日でもないのに詰まるような箇所もちょっと多い。細かいとこは聞こえなくても筋はわかるからいいけども、あえて聞こえにくくしてるワケでもないと思うし、あんまり続くと聞く気が失せてしまう。
政争の部分(最澄の孤独)と、「ミナト」への迫害、それを結ぶ五右衛門の3点がポイントかなと思うけど、「ミナト」と五右衛門(とその仲間)の描写にドラマが足りない気がした。ちょくちょく入る回想シーンであんまり心掴まれなかったのが残念。また、最澄のワナに対して五右衛門の方が一枚上手だったってのも、あまりピンとこなかった。逆に、赤薔薇と黒薔薇の関係とか最澄の苦悩は丁寧だった。
「ミナト」への迫害がきちんと描かれないからか、ラスト(うらんで壁を爆破→ミナト住民がミヤコへ受け入れられる)の感動がやはりピンとこない。ミナト住民で五右衛門と縁のある紫香楽(大山チカ)や十三郎(吉山博海)や余命短い明日香(なかがわあつこ)等、いい材料が揃ってたのでここら辺厚く描いてほしかった。
途中に挿入されるコント的なシーンは、流れを止めるし必要とも思わなかった。公演時間も休憩込みで150分は長い。テンポ良く構成して、二時間以内が嬉しい。
満足度★★★★★
うるせェー
面白い。パンフの作・演挨拶文も面白い。
ネタバレBOX
30超えてレンタルビデオ屋バイトの時田光(森啓一郎)と他のバイトや店長の話と、図書館員が読書することが「貸出」となる不思議な図書館の話。
職場の人間関係のイライラを、リアリティとユーモアをもって上手に描く。バイトに責任を押し付ける店長・佐渡(猪俣三四郎)や媚びがちな河辺絵理(柴田薫)のお気にの靴を隠す小田知世(大田景子)や磯村彩(田島冴香)、社長息子・金子(近藤フク)と調子のいい中村(遠藤弘章)の同性愛、店長含めヤル気のない面々が醸す負の雰囲気がいい。
こんな状態の中、磯村の友人・涼子(島野温枝)の水着セクハラ騒動や時田の妹・栄(中島佳子)からのプレッシャーなど重なって、時田の心が爆発する。うるせぇと。
不思議な図書館では、名前などは意味のないもの、個々のやりとりも意味のないものとなっている。そんな状況がいいと順応する時田(中島佳子)と、馴染めずその世界から離脱する江川(萩原美智子)。図書館の世界は、レンタルバイト時田の頭の中の妄想か、願いか、無意識かはっきりしないけど、ざわつく現実からの逃避って世界になっている。
店長を刺殺したレンタルバイト時田と図書館員時田が会話を交わす終盤。「人生の疲弊」をぼやく、レンタルバイト時田の乾いた諦観がズシっとくる。
「鉄の纏足」ってタイトルのとおり、締め上げられた心の描き方が上手い。タイトルとそのリード文から考えるに、男も女も同じだけど男のほうが他者にそのストレスが向きやすいということなのかな。
満足度★★★
来ちゃった
チケットプレゼントにて鑑賞。楽しめた。
ネタバレBOX
美里(カネコサチエ)の転居準備中、AIチップが見つかる。美里が大学時代に所属していたサークルで作ろうとしていたアンドロイドのチップだった。アンドロイド完成のため、集結する当時の仲間たち。転居前に完成させたい美里をよそに、今の生活を優先させがちな面々。そして、美里と付き合っていたサークルリーダーの長谷部(免出知之)は連絡がつかなかった…。
卒業後、それぞれの道を歩み、社長秘書になったり専業主夫やってたりアメリカの頭いい大学の教授やってたりする昔の仲間がひとつになって、昔の輝きをひと時でも取り戻す、青春話。美里とその年下の彼・鉄郎(寺山武志)の恋愛話も程よくからんでた。
白石(安田惣一)と赤堀真理子(佐々木いつか)のお弁当痴話喧嘩とかいいエピソード挟んでたのは良いけど、ほかの面々の卒業後の生活がもうちょい描いて良かったかなと思う。終盤の種子島行きの仮病電話シーンはいかにもだけど良かった。
茶ノ水博士(吉田拓郎)と長谷部のライバルって設定と、長谷部が落ちぶれてたとこに、アメリカからやってくる博士のシーンは地味に好き。博士がさらっと帰ったほうがジーンときたが。また、美里と長谷部のからみが逆にさらっとしすぎな気もした。テンポ良かったからいいかなと思うけど。
完成したアンドロイドの安藤ロイ子(渡辺ありさ)の思考は当時のメンバーの思考が集めたって設定も良かったが、ここのとこもっと厚く描いても良かった。メンバーの想いが大きく打ち上げられる爽快感みたいなね。
笑えるとこもちょこちょこあって、気楽に楽しめたのはとてもいい。キャラ造型はもう一歩踏み込んでもいいかな。全体的にバランスのいい舞台だった。
満足度★★★
彼岸花
チケットプレゼントにて鑑賞。120分。
ネタバレBOX
糸子(夏樹陽子)が義理の娘・千代子(高森ゆり子)に殺されてから1年。糸子の息子で千代子の夫の芳雄(片岡暁孝)は精神に異常をきたし、千代子の妹で芳雄を愛する美代子(松永京子)が世話を焼く。千代子もまたショックから精神病院に入院してしまった。そこに糸子の妹・コトコ(夏樹陽子)がやってくる…。
序盤から中盤のやりとりがちょっとタルい。というか、人が多くて演技力が全体的に微妙という感じ。少人数でも良かったと思う。
貴族階級な家の愛憎劇という骨子はいい。糸子と芳雄の近親愛、芳雄への一方的な愛に浸る美代子、美代子へを屈折した愛を抱く千代子。終盤のシーンとか、お面を使用した演出も良かった。ただ、「愛憎」の粘っこさがもっとあった方が好み。話はドロっとしてるんだけど、感覚的にそれがあんまなかった。
主演の夏樹は日本人な美しさがあった。
満足度★★★★★
蔑
面白い。77分。
玉置玲央はホールでの挨拶もしっかりしてて印象がいい。
ネタバレBOX
忌み人として蔑まれ、赤犬殺しを生業とする狗吉(玉置玲央)やその妹・狗子(七味まゆ味)ら人と山の神々と狗子を母と慕う赤犬・人之子(葉丸あすか)らの神話。
狗吉…人(日本人)と認められたくて大楠古多万(大村わたる)の枝を持ち帰った後、戦地へ。天皇が神から人になったことで神がいなくなったとし、狗子と国を産もうと交わる。
狗子…穢れないよう狗吉から教育され、狗吉が殺した狗の子(人之子)を育てる。穢をしらないため神々の声が聞こえる。被曝により蔑まれる。
人之子…狗子からの言いつけで、舞を踊れる真徳丸(永島敬三)を連れ帰る。狗子が大穴に落とされ、自分を食べてとその身を大穴に投じる。
日不見姫神(深谷由梨香)…盲目で手がない片輪のモグラ。モグラ達に抱かれることで大楠古多万を殺し山の神になる。色々子供っぽい。真徳丸の舞に感動し惚れるが、そのせいで神でいられなくなる。
大楠古多万…神の座を失し、狗吉に枝を切断され、体にキノコが生えてきてしまう。
天神様(中屋敷法仁)…元人間。妬みのチカラで神に。
真徳丸…盲目。その人の命(を受けて)舞をまう。人でないものがみえる。
神と人が混在してた時代。そこから戦争を経て、原爆の投下、終戦、戦後の日本。世界も変わり人も変わり、神も変わる。結局、そんな中でも、昔も今も人は一生懸命に生きる。
ラスト、大穴に落とされた狗吉と狗子の国を生むってのも、生きるってことになるだろうし。モグラなのに手のない日不見姫神も、何度も抱かれて生をもぎ取ったわけだし。狗吉は手榴弾での自爆ができなかったし。そこに、神も人も獣も差別はないということかと思った。そんな美学というか願い、かな。
今より生死が身近な世界を通して、生きることの恐ろしさを描いた舞台。セットも中央の鉄棒を組み合わせたモノクロな色彩でずっしりしてる。役者がそれをスイスイ登って上から見下ろす絵がサマになってた。かっこいい。スーツってのがいいチョイスだったのかも。
役者は、葉丸あすか、玉置玲央が良かった。
満足度★★★
モンスター
チケットプレゼントにて鑑賞。
ネタバレBOX
新潟と長野の県境にあるヒロコ(前彩子)の実家に、婚約者で小説家のミシマユキオ(内田龍)とヒロコがやってくるが、その晩は「モンスター」といわれる悪天候で荒れていた…。
ミシマの元恋人で死亡したサオリ(妹尾果奈)とヒロコの元恋人で今ノっているロックミュージシャン・サブロー(野田孝之輔)はヒロコとミシマの大学の友人。その嫉妬と愛情を、ミシマの幻覚?という視点で時間と空間が圧縮されたような舞台が展開する。
終盤で、その地方のナラワシ(土地の人間以外の男と結ばれるためには村長と寝なくてはいけない)が明らかになる。ヒロコの妹エリコ(富岡英里子)が引きこもったのは、自分が父の子でなかったこと?のショックだったこともわかる。そして、ヒロコが身を呈してこのナラワシを告発したことで物語が終わる。
ミシマの小説の中の話なのかなんなのか、ちょっと判断できないけども、不気味な演出に、人間の心の中の混乱を見ることができた。
あと、鵜沼ユカの犬演技が良かった。いい声してた。
満足度★★★★
クライシス
面白い。
ネタバレBOX
町医者・治五郎(加藤敦)の弟・六郎(山崎雅志)は出所するも、ホスト・竜(齋藤陽介)とともに警察の策略にハマってしまう…。
竜とホステス・マヤ子(神戸アキコ)の色恋沙汰や一年署長になった主婦タテル(ザンヨウコ)とその夫の警官・波風(松本理史)の痴話喧嘩や八城組組長・霞(村上直子)のBG・マシロ(小玉久仁子)と双子の姉クロエ(小玉久仁子)との再会など、エピソードがふんだんにぶっ込まれて、かつテンポも良くて110分飽きることがない。
治五郎と六郎(+竜)の兄弟愛を中心に、登場人物らも個性的で魅力的。何だかんだ言って面倒見がよくて、弟のピンチに登場する治五郎がかっこいい。六郎も弟の意地とアニキへの憧れを抱えた2.5枚目な男っぷりがかっこいい。治五郎に恋するデコナース天地(齋藤美和子)は見た目も頭の中もかわいい。また、六郎に恋する匂いを気にするマシロがかわいい。霞はなんやかや街を守る心意気をもった傑女で、一年署長でミステリー好きで黒幕なタテルも、ライトな悪役とプリティな主婦を両立してた。ザンヨウコはここのさじ加減がとてもうまい。ついでに、あたし達団(ホステス)らと兼任した主婦達の底力が単純にすごい。そして怖い。あと、マヤ子演じた神戸アキコは、笑いもとれるししっとりした演技もできる器用さが素敵。
あったかくて笑えてじんわりくる作品。演技も本も良い。ラストの「めんどくせぇなァ~」の満足した笑顔であたたかに終演する流れもいい。いい劇団と思う。