満足度★★★★★
不思議な図書館
面白い。好きな色合いだった。
ネタバレBOX
不思議な図書館。自分の本で過去や未来が読める。そこの本に載ってる6つの話を、断片的に提示していく。
「青の記憶」
治験に来た連中を襲う不思議な地震。死んだ彼らの前に現れる男(西山聖了)からのサインを断り、地球に戻ることを決意する…。
東日本大震災の津波を暗示するトーン。
「輪廻TM」
前世や来世を視感できるタイムマシーン。古橋(安井順平)が最後みた65億年後とは…。
「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」
社の金8,000万を使い込み、人を殺し、自殺しようとする神崎(岩本幸子)の前に不思議な男が2人現れる。すったもんだの末、神崎は殺した男として生きることになる…。
岩本幸子が面白かわいい。
「賽の河原で踊りまくる亡霊」
3人の亡者と鬼(安井順平)と奪衣婆(伊勢佳世)の話…。
鬼の辛さを訴える鬼のおかしさと、奪衣婆のなんとも言えない表情のバランスが上手い。
「東の海の笑わない帝王」
感情を出せない夫(浜田信也)とそれが不満な妻(菊池明明)の話…。
弱点を克服した二人にただただ拍手。
「いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ」
万引きの美学を掲げる万引き男(安井順平)と彼が惚れた懸賞女(伊勢佳世)の話…。
証券マンにふられた懸賞女が面白い。万引き男と懸賞女のやり取りが面白い。万引き男が万引きGメンで金を稼ぎ、飯に誘うってとこがニクい。
満足度★★★
白くま
期待ほどでなく残念。
ネタバレBOX
岡田(青木直敬)が、知り合いとか知り合いの知り合いとかを集めて行う、「注文の多い料理店」のリーディング公演。を宮沢賢治と思われる男(ひら凌一)が、突っ込んだりする。
岡田…青井(永津真奈)の恋人で、内田川(西岡裕子)の元夫。
青井…窪(大塚宣幸)のカウンセリングをうける。
窪…困った青井を見るのが生きがい。台本を忘れる。
内田川…青井への嫉妬から整体師の藤(浅雛拓)へ色目を使う。
藤…内田川からのアタックに困ってるけど、仕事のため受け入れようとする。
玉置(近藤貴久)…末広(高橋幸子)の夫でマザコン。
末広…姑らの束縛から逃げるように岡田に恋する。
武井(二宮瑠美)…カラオケ店員。好かれたいけど嫌われるようなことをする。
リーディングと、過去回想を組み合わせて展開する舞台。Aのキャラの回想シーンで、Aが心の声、BがAを演じるという、一風変わった趣向。
この手法はいいけど、各キャラの心のぶつかり合いとか自己問答といった揺れ動きの表現が散慢な印象で、イマイチ入り込めない。
単純なコメディとしては、笑いのポイントが多いわりに笑えない。
岡田がモテすぎ…なのはいいけど。
100分飽きなかったけども、次回に期待。
満足度★★★★
私、ダンサーになるの
面白い。
ネタバレBOX
二時間半の前半と休憩後、客席を舞台にして黒田育世のソロダンス。
グリーンの舞台に、ダンサーの熱演が光る。具体的でも抽象的でもなく、趣向を凝らした振りと演出で、飽きはしない。その加減具合が気に入った。
開演前、植木美奈子が延々やってた、「私、ダンサーになるの!」「あなたの願い叶えてあげましょー!」の声と表情が素敵。
満足度★★★
噺と血
まずまず。
ネタバレBOX
真打昇進公演で、師匠の圓生(谷仲恵輔)に自分の演目を先にやられるという嫌がらせを受けた圓朝(新井幹久)は、真景累ヶ淵を創り人気を博す。浮世絵師の師匠が死に、絶縁をつきつけた圓生も病気になる。そんな幕末から維新への過渡期に生きる、圓朝と浮世絵師・芳年(岡田昌也)を描く。
終盤の圓朝と芳年の語り。芳年の描いた血なまぐさい浮世絵とともに、荒れた時代への悲哀と生を物語る。ここらへん見ごたえあった。
全体的にゆるい感覚。もっとシリアスな色調のほうが胸に迫ったかなと思う。いやらしい圓生を谷仲が上手く演じてたので、その周りの演技との温度差を感じたからかな。
満足度★★★
水を一杯
面白い。
ネタバレBOX
山梨のテーマパークのショーで、200回以上銀行強盗した兄・一正(喜安浩平)を、弟・陽司(富岡晃一郎)が探す…。
全体的にコミカルな雰囲気で楽しめる。武田信玄がワイヤーで吊られたり、軽自動車が突っ込んだり、視覚的にも面白い。陽司の変ちくりんなキャラもいい。宮崎駿やラピュタロボのくだりは大いに笑えた。
話的に面白かったのは、過去に関係のあったと思われる、うどん屋の店長(山本亨)と売春婦・麻子(野口かおる)のカラミ。BGMと照明の印象も変わり、作品の中核のように見えた。台詞もいい。人間関係には想像力が大切です。
前半がややダルい。ただ、中盤から後半は非常に面白い。
山本亨がいい。そして、野口かおるのキャラの立ち具合がいい。
満足度★★★
王子の狐
開演前のワクワク感があった。
ネタバレBOX
狐が憑く家庭?の双子、リコとメエ。母から子へ狐が憑いていく。双子につく先生と仲良くする二人だったが、次第に先生を独占しようとし、片方を殺す。残ったほうも狐がついたように狂う。助けようとした先生に、母は子を産ませれば狐はその子に憑くという。
30分という短い公演時間だったので、掴みがしっかりあってほしかった。一気に客の興味をひくような。
リコとメエの取っ組み合いのシーンのように、舞台前方で床に寝るような演技は観にくい。いいトコなのに、何してるのかわからなかった。なんとなくわかるけど。
もっと、おどろおどろしくなっても良かったかな。薄気味悪さというか。リコとメエの先生を求めるとことか。
30分だらけることなく観ていられた。
満足度★★★
死刑
雑多な面白い。
ネタバレBOX
僕(ムラマツベス)が秋葉原で無差別殺人して、とある工事現場のギロチンで処刑される…。
序盤、妙な舞台だななんて思ったけど、次第に馴染んでいく不思議な舞台。どーでもいいエッセンスがどんどん注入されていく中に、死刑制度の話がポツポツ出てきて、雑多な印象。けど、うるさくなくて見入ってしまう。
演者は味のある演技をする人が何人もいた。舞台上の役者が多いのに綺麗にまとまってた。そしてたまに笑える。
ぐるぐる眼鏡ちゃん(後藤和)がとてもかわいい。センパイ(山本タカ)から「狙いすぎ」と評されてたけど、あの魅力的な雰囲気はなんなのか。公明党へ投票したくなったくらい。
満足度★★★★★
傷だらけのアイドル
面白い。
ネタバレBOX
Mステで鼻血を放った矢衾愛弓(深谷由梨香)は、アイドルクラッシャーな番組「電波ガールズ」に出演することになる。ゴキブリ最中を喰おうと、4mの穴に落ちようとも、スーパーアイドルの矢衾は、番組Pの太刀花(葉丸あすか)の悪意をものともしない。そして、刃物がたっぷり仕込まれたサスケに挑み、自身の傷ズを見せつける。それは、矢衾がレイプ&殺人未遂の被害にあった際のものだった…。
父のスキャンダルからアイドルを引退せざるを得なかった、元アイドル太刀花や、その元マネージャーで現・矢衾のジャーマネである官兵衛(永島敬三)、その太刀花の番組で死んだ、官兵衛の彼女でC級アイドルなど、人物のバックも富んでて見ごたえある。
話自体は、矢衾と太刀花の鎖鎌対決で矢衾が勝ち、太刀花と和解(&太刀花の死)ってなるが、突如、矢衾がC級アイドルということになり、(レイプ犯を殺した件で)連れて行かれるという展開。
矢衾というスーパーアイドルは、C級アイドルが作り上げた幻想なのかハッキリしないが、まさに「アイドル」ということか。
「いい加減じゃなきゃやってられない」?ってMAXのミーナも言ってたとか、ニヤっとする笑いとか、妙ちくりんなアクションやしゃべり、怪しげな照明やコミカルな効果音を、80分の舞台に放り込んだ快作。
キチガイアイドルを演じた深谷の破天荒さが素敵。服装はアイドルだけど、中身はソルジャーだなと。あと、葉丸あすかもいい演技だった。コミカル以外の演技もなかなかいい。
満足度★★★★
教頭の夢
チケットプレゼントにて鑑賞。
「コミュニケーション記号体系」が一番。
合間の映像がかっこいい。特に皆で走ってるの。曲も良かった。
ネタバレBOX
「僕から見れば僕が正しい」
父にああああと名前を付けられた英雄(黒岩)は、泡姫と親から名付けられた女(金魚)と、同じ時間で親を殺し、一緒に逃げる約束をする。父を殺した後、父の日記から事情(英雄は父の子ではない)を知り、後悔する英雄。そして、警察から、その時間の殺人はほかになかったと告げられる…。
「会議は踊る」
消臭剤のネーミングを話し合う。ドタバタしたとこで、社長登場…。
楽しいけど展開の捻りがほしかった。「女子高生の匂い」は通販なら売れるっぽい。
「帰宅部全国大会出場」
帰宅部に誤って入部した小宮山(横田)は、部員から中居くんと呼ばれる。そして、皆でロマンチックランドのオーナー(小林)に会うため、ロマンチックな告白をする…。
オーナーの登場あたりは面白かった。
「コミュニケーション記号体系」
弟(黒岩)へ金を返すため、弟になりすまし、教員となる兄(水越)だったが、学校では変なボディランゲージを教えることに…。
面白い。南(金魚)との恋愛や教頭(小林)の下衆な策略、兄・初郎の焦りと一生懸命など、色んな要素があって。特に、大使との挨拶前日の南との会話(ファイト!)みたいな、ドタバタとの落差があるシーンがあって良かった。ここらへんの、水越の決心と金魚の清楚な可愛さが最高。んで、挨拶で真実を告白すると。
ストーリー性がしっかりしてて、動きやしゃべりに勢いがあって、満足の一品。
「君から見れば君が正しい」
「僕から~」の続編。泡姫がなぜ約束を守らなかったのかが判明する…。
ちょっとしゃべりが多い気がした。
早口のシーンで聞き取りにくい箇所があったけども、概ね大丈夫だった。勢いとストーリー性をバランスよくミックスさせた舞台のが好み。
満足度★★★
仮想
面白い。
ネタバレBOX
柳田家の蜷川みほは、18年前中学校の教師をやっていて、いじめを見過ごし、教え子の死を止められなかった。結婚し子をもうけ、離婚し、時は流れ、とあるヴァーチャル体験ができる商品にふれ、バーチャルな世界の理想な家族に浸る…。
柳田家、みほの義父・ジジぶうが社長をつとめるYANAGI企画、商品をつくった脳外科・佐野功、みほの三男・小林優斗が通う学校、商品の中毒性を見抜き販売を止めようとする警察等、舞台上で多発的に繰り広げられるシーンに、130分集中がと切れなかった。
商品が現実世界に混乱をもたらし、さらにヴァーチャルな世界に逃げる人々。過去の自分や夫の失踪、家庭内のゴタゴタに疲弊する、母みほ。終盤、佐野功が教え子の死に関わっていたと判明し、佐野から自分勝手な人と断罪される。弱く、落ちていく人間の、どうにもならないサマが怖い。
ヴァーチャルな世界に溺れない長男・小西耕一が、正常人のような描き方をされ、他の者の狂気を映す。そんなトコも怖い。
正直、観ていて気分のいいものでない。でも、家族を神格化することもないんだろうなと。ラスト、暗転する中、蜷川みほの表情に吸い込まれるようだった。
満足度★★★★
あの記憶の記録
面白い。チラシデザイン思い出してウッってなる。
ネタバレBOX
ポーランド出身のイツハク(岡本篤)と兄アロン(根津茂尚)は、アウシュビッツ収容所にて、ユダヤ人の死体から髪を剃ったり金歯を抜いたり、その処理や、騙してガス室に送ったりした過去を持つ。終戦後イスラエルに移り、体験を打ち明けず家庭をそれぞれ持つも、アロンはそれを忘れようとし、イツハクはSS(ナチス親衛隊)ビルクナー(浅井伸治)の亡霊に悩まされていた。25年間ずっと…。
子の徴兵と学校の教師・サラ(川田希)の件で、過去を告白するイツハク。ナチスの暴虐だけでなく、自分らの振る舞いも赤裸々にするが、やはり現れる亡霊のビルクナーは、イハツクの「罪」を問う。そしてアロンはイツハクが、ビルクナーを残虐なSSだという記憶へ書き換えていることを指摘。隠れていろと助言するビルクナーを絞め殺した事実を受け止めるイツハク…。
単なるナチスの虐殺話に終わらない点が良い。家族に会いたかったビルクナー(の亡霊)からのメッセージで、妻・デボラ(竹田りさ)に「助けて」とかすかに言うラスト。憎しみの溢れる世界で、「家族」が美しく輝く瞬間だった。
上の亡霊がイツハクの妄想であれば、憎しみは世界にあるものと言ったビルクナーの憎しみは、その家族の憎しみは、やはりまだこの世界に存在しているのだろうか。それとも誰かが癒したのだろうか。そうならいいなと。
無くせないのなら分け合え、そして生きろ、という人間賛歌だった。
満足度★★★
石棺
人間が怖いのか、放射能が怖いのか。
ネタバレBOX
モスクワの放射能研究室(兼病室?)では、被曝者のベスメルトヌイ(奥山隆仁)の研究・治療をしている。そこにインターンの女性3人がやってきた日、原発事故が起こり、被曝者たちが運ばれてくる…。
一幕は、乳牛や鶏を気にかけるおばちゃんのクラーワ(竹村叔子)が死ぬまでを描く。二幕、やはり被曝者が死ぬ中、査問官(宮本充)やアメリカの研究者・カイル(宮島岳史)が訪問。ベスメルトヌイが、被曝した所長(山口嘉三)へのドナーを申し出る。
一幕前に舞台設定の説明や二幕が一幕のラストから始まるって親切設計。
舞台で「システムがシステムを止めた」ってあったのが印象的。原発関係者の被曝者が告白する自分の責任は果たしたってのが、折り重なって起きた事故なのか。そして、舞台には現れない責人者たちも。人が責任取れるレベルではないシロモノで、(原因究明に意味はあるけどそれとは別に)そら恐ろしい存在ってのは伝わった。
ベスメルトヌイがドナーとなり、所長を生き続けさせようとする視線が痛い。そして、動物を想うクラーワのあっけない死が痛い。
台詞が覚束無いような印象。1~10号室のセットと照明は良かった。
満足度★★★★
大人な昔話
初カムカムミニキーナ。
ネタバレBOX
妹のベル(広澤草)と関係を持った領主・黒土(八嶋智人)との間にできた子を堕ろした?ベル、国王・蔵王(松村武)の親友・青鐘との間に子・鳴雉(若松力)をもうけた女王・浪座(藤田記子)、蔵王と浪座の子として生まれるも、片輪として海に捨てられたえびす、蔵王の子の3兄弟、親を探すヒル(中島栄治郎)、魂を慰めるため泣く海魔女・アガサ(田畑玲実)らの、どこか昔話な神話な感じで人間の業を描く。
導入部はやや退屈にも感じたが、えびすの登場あたりから面白さが増した。突飛なような話だけども、舞台としての一体感があって、客を置いてきぼりにしない。
前時代な舞台で、子を捨てるは、復讐だは、堕胎だは、策略だは、近親相姦だは、材料自体かなり重い。善悪の向こう側にある人間を、ファンタジー要素で彩り浮き上がらせる。ラストの泣きシーン良かった。前半ラストのえびすに飲まれる(海にのまれる)演出もいい。観劇中はさほど思わなかったけど、恐ろい舞台だった。
満足度★★★
偶像崇拝
90分飽きないけども、もう一声ほしい。
ネタバレBOX
富士山の頂上から深い穴を堀り、地熱発電所をつくるプロジェクト。6つの会社が各セクションで競合しつつ、同じ職場で働いている。会社的には撤退したミツカネ産業(湯浅崇)は、皆からその親切さが重いとダメだしされ、ファンタジーワールドをつくる。そんな中、噴火を知らせるランプが灯り、掘削人らがエレベータに閉じ込められたと連絡が入る…。
救出のための人間ドラマあり、ファンタジーなミツカネ産業を先頭に笑いありの作品であったが、やや物足りないと思った。
富士山噴火の逼迫した空気が薄いかなと。築山メタリック(川添公二)のX10と職人への想いとか、山下重機(田所草子)のアネゴ肌の感じはよかったけど、ハラハラできないというか。あと、大同電力(松木賢三)のササキさんへの気持ちとか移入しにくい。ちなみに、シード工業(田中美甫)へ嫌がらせをしてたのは、山下重機ってことだったけど、理由はあれども、あんなしょぼいこと継続的にやるかなと。ちょっとしっくりこなかった。
極限状態→苦難に立ち向かうってところに、もう少しメリハリあると入りやすい。序盤の人間関係とかはピリピリ感がほしい。
途中から独りファンタジーの世界に入るミツカネ産業が、富士山のジオラマ?をかぶりヒーローになるところから、X10がダンボールの山を崩すって展開は良かった。ここも、人間関係のピリピリが際立てば、ミツカネ産業の存在がもっと輝く気がする。
神棚に3拍手する面々が、X10(科学とか職人の想い?)を崇拝し、それを信じるって要素は面白い。自然と科学と経済と人間が入り混じった構成はバランス良かった。
満足度★★★
らくだに揺られて
つまらなくないけど、停滞感が大きい。
ネタバレBOX
幼い頃生き別れた母(中里順子)を探すため旅を続ける3人兄弟の話。親族を辿り、三男は指を切断し、母にたどり着く。母は3人の記憶をなくしてて、3人は家路につく。その後のニュースで母が新興宗教詐欺でつかまり、獄中で自殺したことを知る。
ラストのオチがハッピーエンドでないのがいい。道中の旅が、内容的に変わっているのにインパクトがないのは狙っているような感じだけど、ちょっと退屈。いい方にも悪いほうにも引っかからないというか。
長男(大森創)とノブオの子(中川慎太郎)のシーンの、微妙な空気は良かった。
売り子(八木あがた)を自分探しの旅に行こうと決心させた3人の、後半の疲れ具合が、いい皮肉。
満足度★★★★
魔都と娼婦
エロスな面白い。
ネタバレBOX
黒蜥蜴(毬谷友子)が経営する上海の娼館に、富豪ステファンの婚約者・桜(今井美乃)がやってくる。ステファンへの愛を証明するため娼婦になるという。娼婦になった桜は、中国の役人(水嶋カンナ)を客にとる。革命軍の策略で死んだと思った役人は再度桜の前に姿を現し、桜の愛を受け死ぬ…。
全体的に怪しげな空気を保ち、役人の登場でさらに濃くなる。照明が特に良くて、舞台を後押ししてた。
桜が役人への愛を示し、役人に死を与えるが、桜は役人の寂しさに惹かれたのか。女心は難しい。
冒頭のダンスや途中途中の歌もうざくなくていい。上海DOLLS(黒色すみれ)による演奏と歌が気に入った。あと、切り抜き(市川梢)の不思議な台詞もいい。今村美乃と尾崎桃子はかわいい。蘭妖子は、存在感たっぷり。
満足度★★★★
いつもいっしょに
面白い。
ネタバレBOX
二人の会話劇から、一人がはけて一人やってきて、また会話して…ってスタイル。相変わらず屈折した人間のオンパレード。屈折する人間にさらに屈折する人間を当てると、一方が真人間に見える不思議。
井上(善積元)…母を亡くし、その妄想にふける。京子(黒木絵美花)のDV相談を受けたり、田中(飯田一期)から無心される。チンコ切除。
田中…粘着質な性格で京子からフラれる。また、ひかり(野津あおい)からダメだしされる。チンコが小さい。
ひかり…本当の関係を模索するも見つけられない。智子(申瑞季)の血の繋がってない妹。田中をデブと罵る。
京子…ダメ男を惹きつける力を持つ。セックス(の回数)が精神的支柱。
智子…井上の血の繋がった姉だけど覚えてもらってない。元夫の子(と思われる)を育てる。
洋子(川隅奈保子)は当初、井上の死んだ母として登場するが、終盤(7場以降)、皆の妄想存在のような描かれ方をする。それどころか、洋子の世界に皆が逃げてくるという感じで、こっちの感覚がぐにゃっとなる。
舞台の土のオブジェ?のように乾燥している皆の心に、いつもいっしょと微笑む洋子とその空間。疲れた人間らのオアシスだなと。母は海というかね。
野津あおいの手のひら返しっぷりが素敵。田中にデブって連呼するのとか最高。
満足度★★★★
女
面白い。
ネタバレBOX
原案「人間失格」未読。
原案を現代にもってきた感じ。幼少期と青年期、入水自殺後~マダム(百花亜希)と作家(コン・テユ)の会話で締める。
コロ演じる葉蔵と、その内面のヨウゾウを塚越健一が演じるという手法。葉蔵が関係をもった女らが、作家のインラビューに答えるところの、ヨウゾウの土下座が印象的。でも、女らは、葉蔵を愛しているという…。
葉蔵の人生の恥ってなんだろうかと。現代を生きてる中で、恥ってのがよくわからなくなってるのか、葉蔵の人生の恥って何だろうと思った。しょーもないグータラ男ではあるけど、女の口から愛してると言わせた葉蔵はちょっと上等な気がした。
葉蔵を引き取ったヒラメ(西郷豊)が、葉蔵にどうしたいと迫るシーンが表現するように、人間ってなんなんってとこが見ごたえあった。非合理的で感情的で。動物のほうがよっぽど合理的だなと。で、そんな人間の集合体である「世間」ってのはもっと非合理的だなと。「草枕」の冒頭からもってきたセリフ「人の世より人でなしの国のほうが住みやすい」は、グッときた。
ヨウゾウを演じた塚越が良かった。マダムを演じた百花亜希がかわいい。東谷英人の警官シーンは笑った。
満足度★★★★
田舎の「進歩と調和」
楽しめた。
ネタバレBOX
宮崎の大場家。昼は定食屋、夜は連れ込み旅館と、一家を支えた母が死んだ。その通夜には、母に縁がある人もない人も集まってきた…。
康夫(多根周作)の浮気話、千代子(福寿奈央)と元夫・山下(川本昭彦)の話、珠子(井端珠里)の文通話、峰山(紺野相龍)と宝田(木下藤次郎)の同性愛など、エピソードが豊富でバランスもいい。
母が生前申し込んだ大阪万博へのツアー。最終盤、TVをつけると舞台に万博の映像が映され、5人の万博を楽しむシーンになる。ここの登場と最後の〆具合が秀逸。
田舎世界を舞台に非合理に生きる人々。だけど正直で人間くさくて、暖かな作品。そんなゆっくりな人らにちょっと癒される。
満足度★★★
ネコかわいい
1階の写真展、子供の手をひく女性の写真が目を惹いた。
ネタバレBOX
遺産(10億円と作品)はゲームに勝った者にすべて相続するという、作家の遺書に従い、作家に関係する女性4人が作家の創作した、「たけくらべ」を下敷きにしたボードゲームで競じる。
あけび(真嶋一歌)…作家の娘。色好みな父のせいで母も死んだと思っている。その復讐のため、作品もすべて燃やすと豪語する。
マリコ(椎谷万里江)…作家の内弟子。作家とも関係をもち、作品創作にも深く関わった。最後の作品を手に入れ、仕上げたいと思っている。
かなえ(内海詩野)…中学生で作家の愛人になった。今は銀行マンの夫を持つ。けっこう明るめ。
ユイ(朝倉亮子)…サクラ。田舎のスナックに勤める、シングルマザー。子供のためカネを得るため、参加した。
ゲームの進行に、女性たちの内面を混ぜ合わせ、また、ゲームの物語と「たけくらべ」の物語を混ぜ合わせ、110分飽きない舞台だった。「たけくらべ」は未読。そのせいか、女性な作品だなと。
ゲーム部分はあまり注意しなくて良いのかな。あけびが3人を助けるシーンも劇的でなかったし。やはり、4人の心に焦点があってそれが楽しい舞台だった。終盤の、遺産を受け継いだあけびが、貸金庫の鍵をテラスから投げ捨てて中指たてるシーンが、ストレートで開放感があって気に入った。
キーパー役のゆかり(石井舞)は、やはり作家の関係する女性であったんだろうけど、たけくらべの住人でもあったってことなのか。あけびも、美登里(安田友加)の子ってポジションでもあったわけで。そんな「女性な」作品だった。