yozの観てきた!クチコミ一覧

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Butterflies in my stomach

Butterflies in my stomach

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2019/12/08 (日) ~ 2019/12/17 (火)公演終了

満足度★★★

10年刻みで描かれる女性の一生。「10年刻み」と聞いて7つの愛のエピソードを描いたFUKAIPRODUCE羽衣「サロメvsヨカナーン」を思い浮かべたが、どちらかというと、ままごと「あゆみ」の軽やかさのほうに手触りが近かった。

蝉の鳴き声やサイダーの泡、風が通り抜ける気配、波しぶきなどを擬音を用いて合唱することで瞬時に風景を立ち上げる手法は見事。手前と奥で相手と向き合わずに会話するシーンは、心の距離や時間の流れを表わすようで物語自体の奥行を感じさせた。

ネタバレBOX

主人公は自己愛が強い割に常に受け身で他者への興味が薄いため、亡くなった元カレも家族の元を離れた父親も言葉少なな夫も一体何を考え生きていたのかが皆目掴めない。生涯に渡って想いを募らすほどの愛着を持った元カレは、なぜ亡くなってしまったのか?父親が家族から離れざるを得なかった葛藤や苦しみは?長年連れ添い言葉少なに妻を見守る夫の気持ちは?彼らは(というか、このお芝居に登場する男は皆)主人公の感情を反射させるための装置程度にしか描かれないため、まるで書き割りや借景のように薄っぺらく見えてしまう。

恋をしたり、結婚したり、妊娠・出産・子育てなど歳を重ねて女性としてのライフステージは相応に変化してていくものの、生涯にわたり自分の人生を自分で切り開くために逆境に立ち向かうことはしない。「言葉が分かる」ほどの猫すらも自分が選んだわけではなく夫が連れて帰ってきて飼い始めたもの。成り行きまかせの人生をそれなりに謳歌している様に首をかしげてしまう。ラストでは「あんたの人生、それでいいの?マジでか??」と思ってしまった。

「隣の家のバーベキューの煙がうちまで届いて腹立たしい」とか「いつも愛想のいいコンビニ店員の手首にリスカ跡がビッシリあってギョッとした」とか、そんな些末なことも人生の一部だし、それらを濃厚に描くことでも人生は語れるのではないか。恋愛や結婚もそりゃ大事だろうけど、人生そればっかじゃないし。女性誌に書かれていない人生の在り様こそを私は観たい。
獣唄

獣唄

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2019/12/03 (火) ~ 2019/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★

今回もずっしりとした見応え。大人向けの日本昔話のようでとても好み。ラストは予想のはるか上をいって「そう来たか!」とびっくりした。

ネタバレBOX

なぜあの騒動のなかで長女の目に棒状のものが刺さったのか、そこだけはしっくりこなかった。掴み合いになった際に怪我するくらいならわかるけど、棒が目に刺さったりするかな?何となく「物語を推進させるための不幸」のように見えてしまった。後に2人が雪山で息絶えてしまう原因にもなる重要な要素なので余計に気になった。
ツマガリク〜ン

ツマガリク〜ン

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2019/11/28 (木) ~ 2019/12/08 (日)公演終了

満足度★★★★

役者さんがやたらと上手から下手、下手から上手へとスタスタと歩くシーンが多く、何だかコンテンポラリーダンスみたいだなぁ、と思いつつ観覧。

中小企業の電材店で働く人々の群像劇で、人間模様を一歩引いて描いているため淡々としがちなところを、役者陣の達者な演技によって地方で働く人々の息遣いが感じられるお芝居になっていた。

斉藤マッチュさん、「20歳の国」でポケットに手を突っ込みながらオラついている印象が強かったけど、今回は役に厚みがあって好感を持った。
宮崎弁の台詞は独特の圧があって、特に主宰の松本さんが怒り気味に発する宮崎弁は客席で聞いていても「ビクッ!」としてしまう迫力があった。
iaku「あつい胸さわぎ」での無神経な上司の演技が記憶に残る瓜生和成さん、今回の苦悩する支店長役もハマっていた。
特筆すべきは山田百次さんの演技。「普通にこういう人、存在しているよね」って思わせてくれる佇まいや表情、仕草など素晴らしかった。
お芝居としては、もう少し出演者数を減らして、瓜生さんと荻野さんの関係など、ひとつひとつのエピソードの深堀りをしてくれたほうが個人的には良かったけど、これくらいで描いたほうが余韻が残り観客の想像力を喚起する、という部分もあるのかもしれない。

上演中の喫煙シーンに関して事前に何度もアナウンスと注意喚起が行われる。「・・とはいえそれほどでもないんでしょ?」などと侮っていたけど、実際に上演が始まると喫煙所が舞台なので皆さん吸うわ吸うわ。むしろタバコを吸ってないシーンのほうが少ないくらい。客席からは副流煙を吸い込んでしまったのか時折咳き込む音がちらほら聞こえたりもしたので気管支が敏感な人はぜったいに奥の席をお勧めします(私は2列目で観たので途中ちょっとだけ咳き込んでしまった)。

ゆうめい『姿』

ゆうめい『姿』

ゆうめい

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2019/10/04 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★

昔観た、ゆうめいの「弟兄」は、個人的にその年のベスト作品だった。今回の「姿」は、アザーサイドオブ「弟兄」というか、主宰の父親がゆうめいの演劇に出演した「あか」に「弟兄」の世界を足した感じ。
ハードなイジメを描いた「弟兄」の世界からようやく家に帰ったら家庭でもハードコアな夫婦喧嘩が行わているという、ちょっとした地獄の世界。

ネタバレBOX

いじめを受けたり夫婦喧嘩が絶えなかったりというのは私自身の中高校生時代とも重なり、お母さん役の人の無神経な圧と怒鳴り声があまりにも迫真だったため、観劇中に胸が苦しくなったり劇場の外に出たくなったりした。
リアルと演劇の狭間を上手に縫い上げた素晴らしい作品だったとは思うけど、過去にいじめや両親の喧嘩を何度も見せられたことがあり、共感性の高い人には結構辛いお芝居かもしれない。
「弟兄」に比べ、今回は自殺した友達のことがさらっと描かれていたので、より一層、亡くなった友達のことや友を失った高校生の苦悩に想いを馳せた。
あつい胸さわぎ

あつい胸さわぎ

iaku

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/09/13 (金) ~ 2019/09/23 (月)公演終了

満足度★★★★★

流暢な関西弁によるセリフ運びやリズミカルな間とテンポが見事。どこにでもあるような、可笑しくてやがてシリアスな日常が丁寧に描かれて惹き込まれる。

たまたま腕時計をつけ忘れたまま観劇したけど、演技に見入っているうち時間を忘れ、気付いたらあっという間に2時間弱が過ぎていた。

登場人物は皆、誰かの期待を裏切ったり裏切られたりもするけど、その移り行く心情に無理がなくて理解できるし「生きてりゃそんな事もあるよなー」と納得してしまう。人間の心情が美しく、時に切なくハーモニーを奏でる。

登場人物同士の言葉のやり取りや血縁、想い、関係性(あと母親の勤務先の刺繍糸)を暗示し具現化したような赤い糸と木の柱の舞台美術も素晴らしかった。しかし、なぜ柱は登場人物の数である5本ではなく1本多い6本だったのだろう?残り1本が示す不在の人物が誰を指すのか分からなかった。

さなぎの教室

さなぎの教室

オフィスコットーネ

駅前劇場(東京都)

2019/08/29 (木) ~ 2019/09/09 (月)公演終了

満足度★★★★

主演の女優さんが降板となり、作・演出の松本さんが代役を務めることに。立派な体躯で顔も男っぽい松本さんのゴリゴリの女装に最初はドン引きしたけど、お芝居が進行していくうち徐々に馴染んでいき、中盤以降は「むしろこれでよかったんじゃないか」という印象に変化した。

昔、劇団、本谷有希子「遭難、」でも降板した女優の代役として急遽男優が女役をつとめ、むしろ評判がよかったことがあったけど、今回も「災い転じて福となす」パターンなような気がした。松本さん演じる圧が強めのイヤーな感じの看護婦さんがすごくマッチしてた。小松台東「仮面」で演じていた空気を読まない男の役を思い出した。

残念だったのは、パイプ椅子の座席が窮屈で隣の人が腕を動かす度に私に当たって気が散ったのと、上演中に空調を停止したためか私が座ったD列がとにかく暑くて下着にじんわりと汗がにじむほどだったこと。そのせいで一瞬ウトウトしてしまったのはもったいなかった。おそらく空調の音が上演の妨げにならないようにという配慮だったのだろうけど、むしろ暑さのほうが観劇の妨げになっていたので、多少音がしても空調は入れておいてほしいと思った。

2020年以降の夏

2020年以降の夏

くによし組

王子小劇場(東京都)

2019/08/21 (水) ~ 2019/08/28 (水)公演終了

満足度★★

登場人物にリアリティを感じることができず、ストーリー自体にも魅力を感じることができず、しょうじき退屈でした。私の座席の隣のご婦人は終盤、目頭をハンカチで拭っていたので、私の嗜好に合わなかったのだと思う。

堕落ビト

堕落ビト

劇団桟敷童子

サンモールスタジオ(東京都)

2019/08/23 (金) ~ 2019/09/01 (日)公演終了

満足度★★★★★


受付や入場時に役者さんやスタッフが元気な声と笑顔で案内や誘導をしてくれ、とても心地のよい応対。上演開始を待つ間にお芝居に対する期待も自然と高まる。観劇は受付からすでに始まってると思うので、こういうオペレーションを構築してくれてるの、とても大切だと思うしありがたい。

いろんなピースが組み合わさった結果、悲劇に向かわざるを得なくなるの、すごく説得力あった。すみだパークと比べ役者さんとの距離も近くすごい迫力。

ネタバレBOX

被害者の女教師を聖的に描くだけでなく、俗で醜い欲望も併せて描くことで女教師の姿が立体的に表現されていた。女教師役を演じた女優さんがその辺りをとてもうまく演じていて惹きこまれた。
ナイゲン(2019年版)

ナイゲン(2019年版)

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2019/08/22 (木) ~ 2019/09/01 (日)公演終了

満足度★★★★

様々な団体が本演目の上演をしており、その評判の高さはかねてから耳にしていたものの、私は今回が初の観劇。
「12人の怒れる男」のような"法廷もの"を彷彿させるスリリングな展開だけど、内容が文化祭のクラス代表者会議(内容限定会議)だから、そこまで切羽詰まってなくてむしろコミカルな場面が多い。

矢継ぎ早な議論によるシーソーゲームが繰り広げられる場面ではテンポが非常に重要になるものの、初日という事もあってか役者さんの仕上がり具合にばらつきがあり、つっかえたりトチったりしてせっかくのテンポを損なってしまう場面も見受けられたのは残念だった。

他のクラスをねじ伏せるためのディベートに説得力が欠ける内容もちらほらあったりもしたけれど、演者の方々の熱い演技にいい意味で押し切られ、興味を持続しつつ見続けることができた。あと何回か上演を重ねれば、全体のテンポやトーンも醸成され、よりいっそう上質な公演になるんじゃないだろうか。

若い役者さんと演目が共に育っていく様を観るために何度も観に行く、という楽しみ方もあるように感じました。

本当の旅

本当の旅

劇団、本谷有希子

Vacant(東京都)

2019/08/08 (木) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

原作自体、本谷さんらしいイヤ〜な内容で好きだったので、どんなお芝居になっているのか楽しみだったけど、一層イヤらし成分マシマシになってた。
役者さんの身振りにほんのりチェルフィッチュぽさを感じつつ、一人の役を複数の役者が演じるところにゆうめい「あか」を思い出したり、モノローグの場面では小田尚稔の演劇などを思い出したり。最近の小劇場のトレンドなども押さえつつ、本谷さんらしいポップさと毒が混ざった感じ。

ネタバレBOX

一人の役を複数の役者が演じることで、演じられた人格が幾重にも拡張されたような感じになり、その拡張が観客をも捕らえ、観る側に「あなただって彼らと同じなんじゃないの?」とデカめのクエスチョンを容赦なく突きつけてくる。対面式の客席にも「舞台上の人物もそれを見ている客も同じ様なもんじゃないの?」みたいな本谷さんの意地悪な意図のようなものを感じて嬉しくもあり腹立たしくもあり。

また、舞台自体が、いつもなら階段があるところの上部に木製のパネルでこしらえているので、上演中に底が抜けたり割れたりしたら…と考えるとゾッとした。「彼らの行為は全て砂上の楼閣」だと舞台の構造からも訴えていたのだろうか?それなら凄いな・・。

公演終了後、受付付近でお芝居に出てきたカツドックを役者さん方が笑顔で売られていたけど、これを喜んで食べること自体が演劇の虚構にとらわれてしまうんじゃないか・・と疑心暗鬼になり、流石に食べる気にはならなかった。また、お洒落なVACANTでやった事すら悪意あるんじゃないかと勘ぐってしまう。

・・と、ネガティブなことばかり書いたようだけど、久しぶりに悪意全開の本谷さんのお芝居が観れたのは、とてもうれしかった!
ビビを見た!

ビビを見た!

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2019/07/04 (木) ~ 2019/07/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

私は昔からの大海先生ファンだったので、今回の舞台化に大きな期待と共に一抹の不安があった。
「内容的に松井さんよりロロ三浦さんのほうが合ってるんじゃ?」とか「巨大なワカオをどう表現するの?」とか「ビビ役の女優さん、相当魅力ないとキツくない?」とか思ってたのだが、ほぼ杞憂だった。むしろ「松井さんで良かった。ありがとう!」と言いたい。当日のパンフレットにも「子供の頃から大好きだった」という松井さんの言葉が書かれていて、作品に対する敬意と愛情を感じた。特急コガラシ号や巨大なワカオ、街が破壊されるシーンなどがうまく表現されていて、観客の想像力を信じて作られていたのが嬉しい。

ホタル役の岡山天音さん、透明感のある佇まいと無垢な声色がとても合っていて感心。師岡さんの存在も作品に膨らみや可笑しみを与えていた。ビビ役の石橋さんも確かに奮闘されてはいたけど、ここだけは少々残念な気持ちに。
石橋さん演じるビビは「ワガママな女の子」から跳躍が足りないような気がした。なんたって「空を飛べて巨大なワカオを従えホタルが最後に見た『世界でいちばんきれいなもの』」なのだから。もっともっと魅力的でいて欲しかった。

ネタバレBOX

冒頭と終盤が真っ暗闇になるのは本と全く同じ(本は黒ベタの白抜き文字)表現。これにより観客とホタルが一体化し、ホタルの光や色のない世界を実体験することで作品に没入することができた。素晴らしい演出だった。
山兄妹の夢

山兄妹の夢

桃尻犬

シアター711(東京都)

2019/06/26 (水) ~ 2019/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

面白かったです!!

ネタバレBOX

最初のほうは、舞台上の中心人物が次々と入れ替わってはその心情をお芝居で描くので、途中で誰のことを言っているのか観ているこちらが混乱してしまい、置いてけぼりをくらってしまう箇所があった。

過去の人物と今の人物が同じレイヤーで話したり、さらには死者とも「あの時はああだったんだよ」と日常のように話していたり、過去と今、死者と現実という「あちら」と「こちら」がフラットに話せる構造がユニークで、ある意味うらやましい世界だな、と思った。ただ、そうやって話し合ったところで互いが納得できるわけでも得心できるわけでもなく「分かり合えやしないってことだけを分かり合う」ところが滑稽で切なくもあった。

終盤、役者全員での「LEMON」の熱唱は爆発力があって大いに笑わせてもらった。
ピロートーキングブルース

ピロートーキングブルース

FUKAIPRODUCE羽衣

本多劇場(東京都)

2019/06/20 (木) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★

序盤、照明が比較的暗く、まったりしたムードで進行していったため「このままだと台詞をピロートーク代わりにして寝落ちしてしまうかも…」と危惧したけれど、ベッドアイランドブルースあたりからぐっと遠心力が増して、以降はお芝居に集中することができた。

内容はこれまでと変わらず「人間の愚かさや切なさや喜び、すべてひっくるめた上での生命賛歌」だったけど、今回は劇団も役者も年齢を重ねた上で、若さだけでは突っ走れない恋や人生のままならなさを描いていたように思う。特に鯉和さんの優しさと残酷に惹かれた。また、新部さんやキムユスさんの演技が推進力になる場面にも目を見張った。

円熟味や安定感が増し、盤石の演技と音楽で十分楽しませてもらったのは確かだけど、「イトイーランド」以降、徐々にシフトチェンジしたような、「よるべナイター」や「サロメVSヨカナーン」の頃のような勢いが失われてしまったような気がして、少々寂しいような物足りないような気にもなってしまったのは確か。

愛鯛

愛鯛

鯛プロジェクト

OFF OFFシアター(東京都)

2019/06/13 (木) ~ 2019/06/18 (火)公演終了

満足度★★★★

3本のオムニバス。そのうちの1本、オパンポン創造社「サンセット」が秀逸。関西弁で交わされる高速こんにゃく問答や、不毛なやり取りが全て「目を背けるための笑い」に還元されていく様が滑稽でありながらも痛切。

一見愉快なお芝居でありながら、その裏にある事実を考えるとゾッとしたりもし、「笑いとはなにか」という根源的なテーマを提示されたような気持になった。

大笑いしながら背筋が寒くなるというところが、ずいぶんと昔の大人計画で味わったような感触にも似ているような気がした。

ビューティフルワールド

ビューティフルワールド

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/06/07 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

モダンスイマーズはこれまで一度も「つまらなかった」と思ったことがなく、常に質の高いお芝居をみせてくれるので、今回もそれなりに期待しつつ観劇するも、軽々と期待値を超える面白さと痛々しさ。笑ったりゾッとしたりお芝居の醍醐味をしっかり味あわせて貰った。

家庭や職場でどうしようもなく生まれる「強者と弱者」。強者側の無神経な振る舞いと弱者側の辛さ切なさ。そして弱者の間でもまた「強者と弱者」が生まれる構造に「弱い者たちが夕暮れさらに弱いものをたたく/その音が響き渡ればブルースは加速してゆく」という歌が脳裏に流れる。

その力関係がふとした瞬間に崩れ、強者と弱者が反転する時の驚きと滑稽さに惹かれる。特に2部はその崩れ方が見事で、人間の愚かさと可笑しみに会場全体が笑いに包まれるシーンも。

「周りの人間がいつのまにか強者として振る舞うようになるのは結局自分のせいなのかも…」という疑念と絶望プラス憤怒に強く共感。私も何度それで悩んだことか。こういう感情をこんな風にお芝居で観たのは今回が初めてかもしれない。

劇団結成20周年にふさわしい傑作。このクオリティでチケット代が3千円というのも非常にありがたく、またその努力に頭が下がる。

骨ノ憂鬱

骨ノ憂鬱

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2019/05/21 (火) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

開場時、元気いっぱいの居酒屋のような掛け声に若干戸惑いつつも丁寧な対応に好感を抱く。

開演直後は役者さんが皆、速射砲のように台詞をいうので早すぎて最初は耳がついていかず聞き取れない時があったけど、原田さんが登場したあたりでスピードが落ち着き以降は聞き取りやすくなった。

原田さんが演じる「過去の栄光を引きずる頭の固い高齢者」、私自身が仕事でそのようなタイプの人に日々振り回されてるので3兄弟がウンザリする気持ちが良くわかる。

後半のドミノ倒しのような鬱展開も、人間の愚かさとどうしようもなさを描いていて心に迫る。セットも見事で存分に堪能させてもらった。

善悪のむこうがわ

善悪のむこうがわ

小田尚稔の演劇

ボルボスタジオ青山(東京都)

2019/05/15 (水) ~ 2019/05/17 (金)公演終了

満足度★★★★

ドストエフスキーとニーチェが青山で松崎しげるとさだまさしに出会うお話(ではない)。時系列が頻繁に前後するものの、登場人物が少ないので頭が混乱することもなくスムーズに追うことができた。また、これまでのモノローグ中心のお芝居から会話シーンが増えたのもあり、物語に一層の深みが出た印象。

これまで新宿眼科画廊やRAFT、SCOOLなどこじんまりしたところで地味にやっていたのに、今回は246沿いのラグジュアリーな空間での公演ということで、その高低差が面白い。

しかし、よくあの内容でボルボ側がOKしたなーと感心。日本のディーラーだったらぜったいNGだっただろうに。

ネタバレBOX

交通事故を起こした加害者の男性が被害者の妻に賠償金を払い続けるという内容の、さだまさしの「償い」、ドライブの楽しさを顧客に謳うディーラーにとっては不吉な歌であり、店内で語られるには相応しくないにも関わらず、OKを下したボルボにむしろ好感を持った。
Shelter in the Shelf

Shelter in the Shelf

ポーラは嘘をついた―Paralyzed Paula―

銀座 奥野ビル306号室(東京都)

2019/04/28 (日) ~ 2019/05/02 (木)公演終了

満足度★★★★

B.人形の家とC.変身を観劇。
令和のはじまりとGWに沸き立つ銀座の喧騒の中、時の流れからぽつんと取り残されたようなレトロな奥野ビルの一室で演じられる慎ましやかで少し不思議(SF)な物語。B.Cともにワンピース姿の女優さんが見目麗しく、色っぽい後ろ姿に思わずゾクっとした。すぐ近くで発せられる役者の声が生々しく、幾分突飛な物語に奇妙なリアリティを付与していたように思う。
B.人形の家は17時からの回を観たのですが、ちょうど窓から射す日差しが陰っていく時間帯で、自然の照明効果がお芝居に深みをもたらしていた。
チラシのデザイン自体が本作品のクリエイションの一つとして機能しているところにも美意識を感じさせた。1作品につき20分で500円という価格も大変良心的。こんなふうにカフェでコーヒー1杯を飲む位の時間とお金で観れるお芝居が、もっと増えてくれればと願う。

『のぞまれずさずかれずあるもの』  東京2012/宮城1973

『のぞまれずさずかれずあるもの』 東京2012/宮城1973

TOKYOハンバーグ

サンモールスタジオ(東京都)

2019/04/11 (木) ~ 2019/04/21 (日)公演終了

満足度★★★

宮城1973を観劇。望まれず生まれてくる赤ちゃんを産婦人科医が救おうとする話でズッシリと重く見応え十分。法律や世間体の向こうにある「命とは?」という本質的な問いかけに、様々な立場の人が向き合う姿が印象に残った。

ネタバレBOX

ただ、肝心要の医師役の俳優氏が、時折言葉を詰まらせたり妙な間が空いたり、台詞が飛んだのか意味が繋がらないことを口にしたりしていて、どうも気になってストーリーに没入できなかった。難しい台詞回しが多いのでやむを得ないのかもしれないけど、他の俳優さんはそんなことなかったので、余計に目立ってしまっていたように思う。良質なお芝居だったのでもったいなかった。
かえるバード

かえるバード

玉田企画

小劇場B1(東京都)

2019/04/04 (木) ~ 2019/04/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

観客の笑いのツボを的確に突きつつも、不意にその笑顔を引き攣らせ、自問自答させられる場面がいくつも。男女間や友達同士、あるいは風俗の客と業者など、お互いが発する言葉のやりとりによってパワーバランスがあっちにいったりこっちにいったりするのがスリリングで惹きつけられる。
これまで何本か玉田企画のお芝居を観てきましたが、1,2を競うくらい好きかも。傑作といって過言ではないと思う。あと、山科さん演じる関西弁の偉そうな男、毎回ムカつく!(褒めてます)

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