満足度★★★★★
モダンスイマーズはこれまで一度も「つまらなかった」と思ったことがなく、常に質の高いお芝居をみせてくれるので、今回もそれなりに期待しつつ観劇するも、軽々と期待値を超える面白さと痛々しさ。笑ったりゾッとしたりお芝居の醍醐味をしっかり味あわせて貰った。
家庭や職場でどうしようもなく生まれる「強者と弱者」。強者側の無神経な振る舞いと弱者側の辛さ切なさ。そして弱者の間でもまた「強者と弱者」が生まれる構造に「弱い者たちが夕暮れさらに弱いものをたたく/その音が響き渡ればブルースは加速してゆく」という歌が脳裏に流れる。
その力関係がふとした瞬間に崩れ、強者と弱者が反転する時の驚きと滑稽さに惹かれる。特に2部はその崩れ方が見事で、人間の愚かさと可笑しみに会場全体が笑いに包まれるシーンも。
「周りの人間がいつのまにか強者として振る舞うようになるのは結局自分のせいなのかも…」という疑念と絶望プラス憤怒に強く共感。私も何度それで悩んだことか。こういう感情をこんな風にお芝居で観たのは今回が初めてかもしれない。
劇団結成20周年にふさわしい傑作。このクオリティでチケット代が3千円というのも非常にありがたく、またその努力に頭が下がる。