三鷹の化け物
ろりえ
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/09/30 (金) ~ 2011/10/10 (月)公演終了
満足度★★★★
あれ、すご過ぎっっ
予測不能のバカバカ大ワールド。三鷹のでかい劇場だから出来ることを小劇場の気鋭のキャストでぶっ飛ばしまくり、途中休憩ありで2時間半以上も上演時間あるのに、全然飽きないで笑いっ放しの快作。そしてあらゆる事が起こったはずなのに終演後には、何一つ頭に残らない清々しさ。これぞエンタメ。
ネタバレBOX
すげーなー、お母さん。でかかったっっ。あれ、見るだけでも行って良かった。
『DAIKAIJU EIGA』『Rosa, seulement』
青年団国際演劇交流プロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/30 (金) ~ 2011/10/05 (水)公演終了
満足度★★★★★
両方見た
どちらの作品も唯一無二。言葉がわからなくても十分楽しめる仕掛けになっているのが何より嬉しい。本公演を見なかったら、外国の演出家の作品なんて一生触れる機会が無かったかもしれないから、貴重な体現出来て良かった。多分、僕は作品の表象しか捉えられてないんだろうし、ローザルクセンブルクも作品観るまで知らなかった位だけど。でも、こうして日仏の交流の架け橋となる企画は今後も是非やって欲しいと思った。
『Rosa, seulement』不撓不屈の革命家の行進。世界は変わると訴え続ける。なんて力強い言葉の数々。1シーン1シーンが胸に響く。例えどんな困難があろうと立ち向かい続ける役者の動きも美しい。字幕があるから言葉がわからなくても十分楽しめた。
『DAIKAIJU EIGA』外国から見ると、日本はこんなに不思議なのか。ギュギュっと濃縮された、日本と大怪獣についての一時間足らず。わかりやすいが、奥深い。二ヶ国語で台詞が喋られるので、言葉がわからなくても楽しめた。僕は観劇後は表象しか理解できてなかったが、ロングアフタートーク(何と1時間以上も!!同時通訳ではなく、通訳の方が間を取り持つ形だったので、通訳の方は本当大変だったと思う)で作品の奥深さを知って感激。見れて良かった。
ネタバレBOX
『DAIKAIJU EIGA』のアフタートークの覚え書き。メモを取りながら聞いていた訳ではないので(まさか1時間以上も話を聞けると思ってなかったので)うろ覚えです。
特撮映画「ゴジラ」は日本が第二次大戦の敗戦し、僅か10年後に作られた映画。今見るとちゃちく見えるが、でも復興途中でまだ経済が回復しきってない当時を考えるとすごいことだ。(加藤教授)
ゴジラ、ではなくゴジラの映画という位置づけ。つまりスクリーンが無ければゴジラはいないんだということだ。転じてそれは、本作はスクリーンなしで言葉でゴジラを見せるという作品に仕上がっている。(加藤教授)
映画「ゴジラ」シリーズで描かれるのは日本人は被害者であるということ。ゴジラのテーマは大きく2つあって、「対外的(日本国外)な敵」と「自衛隊(国内)の暴走」の二つがあり、どちらのテーマにも核の脅威がほぼ例外無く関係している。(クリストフ・フィアット)
日本は、憲法の成り立ちや自衛隊や米軍基地をとってみても不思議な国だ。また、実際に来日してみて自然環境に大きく左右される風土なのに平然としているようにも見えて不思議さを感じた。(クリストフ・フィアット)
ヨーロッパにはゴジラみたいな、モンスターはいない。敵でありながら国民に受け入れられている。それは、国民は被害者でありながら核や自衛隊の矛盾を受け入れているような姿。「核の脅威よりもゴジラを受け入れる方を選ぶ」というニュアンスについて、過激な表現であることはわかっている。でも、被害者でありながらゴジラがいることを日本人は受け入れているように感じた。「ゴジラがいる」ことが日本の歴史の前提のような存在であるような感じ。(クリストフ・フィアット)
この物語は、ゴジラについて語る日本人女性の成り立ちの話のつもりだ。役者が名前を名乗った所から徐々にその役が人格を持ち出し、言葉に関しても紙に書いたものを読み、目を離してよみ、紙を捨てて話す。その3回の行為で徐々に役が浮かび上がって行く。もちろん、核の脅威や311を踏まえた、寓話にしているが。作者自身の日本に感じる不思議な感じを体現したかった。(クリストフ・フィアット)
ヤングフォーエバー
壁ノ花団
王子小劇場(東京都)
2011/09/29 (木) ~ 2011/10/02 (日)公演終了
満足度★★★
世界を動かすのは誰か
おとぎ話のような世界と、ロボットダンスのような機械的な動きで見える、独特な空間。小さい頃大人に読んでもらった童話には教訓がつまっていた。でも、本作には乾いた笑いと共に、抗えない世界に飲み込まれた人間しかいない。はじまる。与えられた使命を全うするために役者は演じる。そして終わる。不思議〜。
ネタバレBOX
ブロックで覆われた床以外は暗幕に囲まれたシンプルな舞台。5人の男優の配役は確かにコロコロ変わる。機械的で、余計な動きを排除したような役者の動きと喋り方は、美しい舞台空間を生んでいた。
あるところに1人の男がいた。真っ黒なけむくじゃらの髪の男は、40歳を優に超えてるはずなのに、喋り方も見た目も子どものよう。男は、おばあちゃんがやっていた洗濯屋を手伝っていたが、洗濯の依頼がなくなって、村に増えていた猫を洗濯して減らす仕事をしだす。猫がいなくなると、ネズミが増えてきた。今度はネズミを減らす。ネズミがいなくなると人間が増えて来た。今度は、人間を減らす事にした。そうしたら村には誰もいなくなった。おばあちゃんも死んで村に長い事1人で住んでいた。そして、公演の説明文章へと物語は進んで行く。
何故そうなのか、どうしてそう思うのかなどはほとんど語られない。男はまるで年を取らない、王様が消える、戦勝を祈念した塔が倒れる、夏を待つ、全ては見えざる手によって誘われた世界の法則のようだった。
継ぎはぎChopperギャングスタ★
オッセルズ
シアター711(東京都)
2011/09/28 (水) ~ 2011/10/03 (月)公演終了
満足度★★
短・長
一瞬一瞬は楽しい、ベタベタなショートコントの連続。どのコントも早い段階で笑い所を提示され、でもその先を探るかの様に役者が追い込まれ追い込まれ。個々のコントのアイデアの妙を楽しむには発想が単純過ぎて冗長だし、その長さを突きつけられて困惑した役者が生み出す独特な空気間を楽しむには短すぎる。好みの問題ですがボケっ放しで、突っ込みがないので生きない笑いが多くて勿体ないなぁと要所で思いました。
雑音
オイスターズ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/24 (土) ~ 2011/09/27 (火)公演終了
満足度★★★
That's on nonsense
面白いけど意味がわからなかった。でも、意味がわからないならナイロン100℃みたいなもっと突き抜けたものを期待してしまった。好き嫌いが分かれる、観る人を選ぶ芝居なのかな、って思った。オイスターズ初観劇だったので、1回だけでは何とも判断つかないです。機会があれば、別の作品も見てみたい。
ネタバレBOX
名古屋観光しながら、劇場へと向かう入れ子構造のチラシ。作品の内容も然り。デジカメで風景を撮影すると必ず自分の妹の水着姿が一緒に映ってしまうと悩む男。僕はこの男を主人公だと考え観劇していました。
男に呼び出され相談を受ける友人や、死にそうな気がするコックや、コックの幼馴染の店長や、事知り風のおしゃべりなタクシー運転手や、妹と同じバイト先のパン屋の男などを巻き込んで迷走するも、何故そんな写真が写るかはわからないまま終わる。終始、自分の妹が写真に写ることを気に病む男は「順序だてて説明させてくれ」と自分のペースで周囲を振り回す。物語を必死に牽引しようとするも、物語は遅々として進まない。そんな姿を傍観し続け、都度登場する女は言い続ける「ここからが面白いんですよね」。
演劇を疑うというか、物語を語ることと観ることを疑ってかかるような公演でしたが、何故雑音なのかとか、作者の意図はよくわからなかったです。かといって頭空っぽで笑える作品でもなく、つかみどころのない作品でした。
普天間
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
神奈川県立青少年センター(神奈川県)
2011/09/23 (金) ~ 2011/09/23 (金)公演終了
満足度★★
悶々と眠れない…
期待しすぎた。でも、坂手洋二で、青年劇場で、普天間なら期待してしかるべきでしょう。予習して、「沖縄三部作」読んで臨んだんだってば。何年も前の作品だけど「GALF」観て感動したんだってば。だから、期待はめっさ高かったんだけど……。上演時間、休憩込みで3時間強。圧倒的な取材力と情報量は魅力的だが、散漫な印象しか残らない残念な公演。沖縄戦の歴史・米兵の起こす事件の実態・国際大学への米軍機墜落・少女暴行事件から発展した大規模な県民大集会・基地で働く従業員・沖縄の経済情勢・普天間基地移転について、、、などなど。そして3/11の以降の原発事故についてまで、多様に触れる。でも物語らしい物語はない。確かに、沖縄の基地を巡る問題を紋切り型には語れないが、盛り込みすぎてはいないだろうか。この内容なら、演劇である必要はないと思う。同じ内容で、「普天間基地と沖縄」という内容のシンポジウムを聞きに行ったのなら、☆4~5でもおかしくない内容だと思うが、演劇である必要性をまるで感じない。逆に演劇であることを邪魔に感じてしまった。
OUTFLOWS
大橋可也&ダンサーズ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/17 (土) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
敗北
確かなスキルを持ってる(であろう)ダンサーとスタッフ陣の作るコンテンポラリーダンス(だと思う)。括弧つきの感想になってしまうのは、ダンスを見慣れてないので、これがダンスかコンテンポラリーか判別がつかないのです。ただただ、ポカーンと観てしまいました。「わからない」「難しい」は、作品を作って訴えてる人の意思から逃げるようで悔しいので出来るだけ使いたくないのですが……悔しいです。
1つ、思ったのは、「こんなに観客に喰らいつくような、鬼気迫るパフォーマンス」を目の前で演じられても観客と演者には見えない壁があるのだなって事。
悩殺ハムレット
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2011/09/16 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
最高のシェイクスピア劇
女優だけでシェークスピア。物語や解釈はさておき、とにかく女優を見に行く公演なのです。とにかく女優陣の魅力がパネー。もとい、半端じゃねぇです。1時間半で、こんなに濃密なシェークスピア体験が出来たのは初めてです。原作に忠実でありながら、独特な脚本・演出で見たことない世界が体感できる、ガチで神…もとい本当に最高の観劇体験でした。ハムレットをまともに見たこと無い自分でも充分過ぎるほど楽しんで見ることが出来たので、是非とも多くの方に観て欲しい作品です。
ネタバレBOX
一言で言えばチャライ、シェイクスピア。ありえない状況も「きもい」の一言で一蹴する豪快さ。ただし、女優陣の能力の高さと脚本演出の妙で、キレキレの芸術的な仕上がり。親しみやすい超現代口語の多様で魅せる登場人物への親近感、あぁシェークスピアの登場人物だって時代や国が違うだけで同じ人間なんだなって体感できるほどの完成度の高さ。瞬間、瞬間も全て美しく感じてしまう位アゲアゲです。場転だって美しい。「生きてる系か、死んでる系かそれが問題じゃね?」って言われても、そのスピード感が逆に、しっくりくる爽快さ。シェークスピアの原作を愛する劇作家の中屋敷さんが作るからこその持ち味、本当にたまらないです。途中で新良さんのライブがあろうが、消臭力の歌を歌いながら死んでも、人間の生き様を見せる本質は変わらないんだなという発見もありつつ。おそらく、この後色々な劇評家の方の評論があるので浅学な自分は、自分の未熟さが露呈しない内に閉口します。でも、絶対に観て後悔しない作品だと思います。
毎回、公演後のアフタートークも楽しみの一つ。初日は、作演出の中屋敷さんとコロさんのトークパフォーマンスでした。ネタバレがてら、覚え書き。完全にネタバレです。
「中屋敷さん自身男性より、女性を演出した方が評判が良いと意識している。」
「中屋敷さん自身、男らしさみたいなことに抵抗がある。」
「お客さんの反応が悪かろうがシェイクスピア大好きな中屋敷さんは、来年4月「絶頂マクベス」を計画中」
「男だけでふんどしでギリシャ悲劇ってどうだろう??」
「色々な演劇プランがあるが本作は、戯曲主義演出主義ではなく俳優主義、役者に課す不自由と自由の柵のバランスが良いから女優の魅力が増しているのでは。」
「公演の稽古期間は、プレで個々の役者との4日の稽古と3週間の制作で完成」
「シェイクスピアのイメージは夜と酒ではないか。だからこそチャライ言語がぴったり合うのでは。何より、言葉自身より、役者の言い方や演技がチャラさを産むのだ。」
「シェイクスピアの登場人物は悩んで殺すから悩殺」
めろす
チェリーブロッサムハイスクール
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/10 (土) ~ 2011/09/14 (水)公演終了
満足度★★★★
激ど
走る、行為へのバリエーションの豊かさに見とれてしまう。どスピードなエンタメ作品。僕は、どメロスに感じましたが、物語よりも、テーマよりも、ど疾走する役者を五感で感じる一時間半。
女がつらいよ
MCR
王子小劇場(東京都)
2011/09/07 (水) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★
でも、笑う
バカバカしさの中に愛があるなぁ。最後まで素直に笑えて、楽しかった。物語の核となる場面だろうがシリアスになりそうだろうがずっと絶妙な間で笑いがあって。ありえねー、の連続。でも、すごく居心地が良いから不思議。作品と役者の力なんだなぁ。感情的でへ理屈でシニカルだけどナイーブで、人間味溢れる主人公のあずきちゃんが魅力的だった。
ネタバレBOX
口論しながらも相手を思い合う主人公二人はとても愛しい。その一言につきる。女がつらいのではなく、あずきちゃんがつらいのだ。でも、それでいいのだ、と思った。
古川さんと櫻井さんの「この世界」は、アドリブだったのだろうか。すごく不思議な寸劇だった。ゾンビにかまれた古川さんと一緒にいた櫻井さんの会話の風景。噛まれる直前、とっさに櫻井さんが「後ろ(にゾンビ来てる)」って言ったけどそうじゃなかったわ、掛けるべき言葉は違ったわ〜って言いつつ、俺がゾンビになる前に殺してくれって言うけど、武器がつめきりとライターしかないとか、実は櫻井さんが好きだとか、じゃあツメ切ってくれないとか、そんな感じ。マンガの「アイアイムアヒーロー」をちょっと思わせる、この世界だった。別の回では、全然違う話なのだろうか??
I'm ボカン
クリタマキ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/06 (火) ~ 2011/09/07 (水)公演終了
満足度★★★
一人立つ
一途に思いを伝えたいと踊る、まっすぐな公演だった。梶井作品に、近づき、飲み込み、体現して見せようとする。ダンスというより素の動きがまじり、どこか不統一でぎこちなさが生々しさをかもし出す。そしてそして、とっっにかく魅力的な過剰な顔の表情の豊かさ!この動きと表情でクリタマキ自身が見えて、それがとても良かった。ただ一人、見られ続けるという事。始まって終わるまで舞台に在り続ける事。一人舞台に立つというその特異性を、何だか改めて考えてしまいました。
ダンスを見慣れてない者としては、テーマや内容が明示された上で、ダンサーの存在感を感じれたのが嬉しく楽しかったです。
前向き!タイモン
ミクニヤナイハラプロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/01 (木) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★
ぐるぐる
意味はわからなかったけど、見れて面白かった。家に帰って、ウィキペディアで「シェイクスピアのアテネのタイモン」で検索。ふーん、なるほど。難解で解釈には今も議論が続いているのか。観劇後の脳内自己対話が止まらない。それは、やっぱり強く訴えかけられたからだと思う。言葉を捨てて訴えるということの体感、この公演との出会いは良かった。
ネタバレBOX
脳内自己対話
「いやー圧倒されたね」
/「圧倒?」
「目の前の世界が自分に侵食する感じ」
/「何それ?」
「高速で繰り広げられる台詞に飲み込まれて、理解することを放棄してしまう感じ」
/「それ、わかんないってこと?」
「高速で喋り・高速で動く事が、自分の本性の原始的な所に訴えてきてる感じ」
/「それって理解してる振り?」
「振りというかマヒ。自分をマヒさせる事で見える世界だったよ」
/「ようするに?」
「圧倒だよ」
/「あなたの圧倒と私の圧倒は違う」
「まぁ、主観だから」
…ぐるぐる回る。
夏も
ロロ
SNAC(東京都)
2011/08/31 (水) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★
こんとん
脳みそがフワフワする。物語を理解しようとし過ぎると迷子になる。僕はなりました。単純に、目の前で繰り広げられる魅力的なカオス感を楽しめば良かったんだなぁ。ラストは圧巻。ドトーのエネルギーハドーホー!!
核・ヒバク・人間
非戦を選ぶ演劇人の会
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2011/08/27 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
言葉の力
人々が話し、書いた言葉の引用で構成された朗読劇。そんなシンプルな行為で見える、言葉の力。原発の歴史や、ヒバクの実態、世界の原子力の現場の実態などなど…。膨大な情報が訴えるのは極めて単純な「平和利用しても原子力は人間の手に余るエネルギー」という事実。
思想とか政治とか関係なく見れるところが良いなと思う。フツー、「核兵器」とか「原発」に対して異を唱えると政治とか思想とかがうざったいほど絡んでくるものだけれど。引用した言葉で紡がれるからこそ、客観性が強まるのかな。
「交通事故に遭って怪我した人を見て、道路や車を問題にする前に、治療をすべき」な様に。福島で今も戦っている人達を置き去りにして、あーだこーだ言うべきかと言われると胸が痛い。でも、今回の原発事故を受けて冷静でいられる人は少ないと思う。怖いと思いながらも、知ろうとするか、耳をふさぐかの違いはあるけれど。東京に住んでいても、風に乗ってくる放射性物質が気になるし、食品の放射線量も気になる。ヒバクが怖くて仕方ない。それでも、日本で生きていく以上、客観的な事実を知った上で、自分が何が出来るか考えて行動するしかないのだ。生きていくために。
第1部の公演終盤、たくさんの著名人の訴える「脱原発」の提言には心底勇気づけられる。不安だろうが、被曝しようが、それでも生きていくしかない。問題はどういう社会を望むか、そのためにどう生きるかということだ。
二部の飯館村の酪農家の方の話も聞けて良かった。被災地の現地にいて、風評被害や、同じ被災地の方からも批判されながら、自身の立場から決断して、先陣をきって周囲とつながり続ける姿に頭が下がる。なかなか聞けない話を聞けて、貴重な体験でした。
この公演を見て、自分は何が出来るか。浅学な自分は、まずはパンフレットに載ってる引用された文献を読んで理解を深める所からかなぁ…。何かしたいけど自分の力は余りにも小さい。でも、観る事も一つの行動だと信じて、今後も本団体は応援していきたい。
クレイジーハニー
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2011/08/05 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
ヘンキョウで大嫌いと叫ぶ
魂を削るような快作。まるで狂ったような感情の激しいうねり。怒っていたかと思うと、次の瞬間笑い、泣き、ふさぎ込み、叫ぶ。2時間強の間、一体どこに着地するんだと思うくらい、主人公ひろみの感情はグルグルと回り続ける。今作も期待以上、やっぱり早くからチケット取って見に行った甲斐があるなぁって思う公演でした。
本谷有希子の描く人間は、人間らしすぎる人間が魅力だと思う。独特で生きた言葉。肥大しすぎる自意識からくる妄暴走。普通を疑う姿勢からくる自由すぎる自由。人生にそんなに簡単に答えなんか出ないんだというスタンス。エンタメとしての公演の構成。簡単に答えが欲しいと思ってしまうと、本谷作品はどこか冗長に感じてしまうが、こんなに生き方を楽にしてくれて、どうしようもない人間の愛おしさを感じてくれる作家は、僕はまだ知らない。
ネタバレBOX
携帯小説家としてデビューし、今は若くして落ち目の女流作家ひろみ結城。トークショーに、親友でゲイの甘田と出演するも観客は少ない。トークショーの企画を立てた編集者は、この場から新たな企画を考えていた。それは、集まったひとみのファンに自由に質問させて、その赤裸々なトークを本にしようとするものだったが…。
本谷さんの小説「ぜつぼう」にどこか類似を感じつつも、そこから飛躍して深化したなぁという印象の本作品。小説家としてファンが作り出す勝手な理想像と、実像とのギャップ。流行の一過性で、もてはやされたかと思うと突き放される。その構造は、物語としてとても面白い。「私の小説読んで生きる希望をもらったのなら返してよ」とか捨て台詞も秀逸。
何より、魅力的に感じたのはひろみ(長澤まさみ)と甘田(リリーフフランキー)の葛藤。人とつながりたい、でもつながれない。期待して裏切られてまた期待して。〈人は簡単につながれる〉、ってどうして言えるのだろうか?〈人間はいくらでもやりなおしが出来る〉、ってどうして言えるのだろうか?世の中がみんなそうやって生きてるんだから普通出来るでしょうと迫ることに対して疑ってかかる。「人とつながることは暴力です。(つながろうとする)あなた達はモンスターです。」でも思いつめながらも、途中何度かありのままの自分を受け入れようとする。「人とつながることは大事です。つながることを否定することは悲しい人間です。」が、しかし。またすぐに落ち込んでしまう。勿論、現実でも物語でも1夜にして劇的に悩みが解消する訳がなく、答えも出ないのだけれど。その七転八倒する葛藤が魅力的だった。過去、何作品か見ているが、いつも暴走するのは主人公一人だった。でも今回は味方がいる。それはとても新鮮だと思った。普通の人の言葉は、主人公の人達には届かない。自意識にしろ、客観的にしろ、〈ぜつぼう〉を共有した仲間とだから分かり合える喜び。そして、その仲間とすら分かり合えない悲しみ。喜怒哀楽なんて区分けでは出せない感情を呼び起こされて、とても共感する。
「3・11」と関連させる意図は感じなかったけれど。でも、「つながろう日本」に息苦しさを感じてしまう人は少なからずいるはずだ。「つながりたい、でもつながれない」。考えれば考えるほど、真面目であるが故に答えの出ない実像探しにグルグルと迷いこんでしまうのだ。それでも生きていくしかない。でも、考えずに考えずにただ逃げ出すことを許さない〈普通の世間〉の息苦しさと戦って生きていくことはどうしてこんなにしんどいんだろうか。
な~んて。好き勝手書いてる僕も、当然浮ついた1本谷ファンに過ぎないんです。勝手に作品に惚れ込んですみません。…って謝ってもダメならどうしたらいいんだ~。とりあえず、今後の活動にも期待っっ!!
Caesiumberry Jam
DULL-COLORED POP
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/08/20 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
すっげー、芸術的っっ
きちんと調べて、まとめ、作り込まれた芸術的な脚本。登場人物になりきって観客を舞台にのめり込ませる確かな役者陣。同時多発的に風景が演じられそれが一つの画として魅せる、緻密で壮大な世界を浮かびあがらせる演出。圧倒された。自分の感性に響く、凄まじい公演だった。刺激的。美しい。でもわかりやすい。見れて良かった。良い芝居を見るとシビレル。
ネタバレBOX
チェルノブイリ原発事故現場から30キロほど離れた村の事故前から2005年までの風景。一人の日本人カメラマンは、その暗くて重い灰色な村で明るく過ごす村人達の風景を切り取り、話を聞いていく。年を経て村を度々訪れる内に他人事とは思えなくなってのめり込んでいく。村人達はある者は死に、ある者は去り、ある者は残り続ける。
驚くことに物語の終盤まで、放射能やチェルノブイリという言葉は出てこない。今でこそ当たり前に知ってるセシウムは、初演時はほとんど浸透していなかった。でも非言語的に、または言葉の端から伝わってくるただならぬ空気。これを5年前の初演時に作ったのがすごいし、今やるのもすごい。
「3・11」を知った我々の目の前に繰り広げられるのは、明日の我が身かもしれない登場人物たちだ。同じ状況におかれたその時、私達はあの楽観的に最後まで自分達の故郷で生きようとし続けた村人のように笑えるのだろうか。ノンキにこの芝居を見ることは今の自分にはとてもできない。
チェルノブイリ事故当時ですら、風に乗ってセシウムは日本にまで運ばれてきている。いわんや、「3・11」以降、日本は現在進行形の非常時だ。でも、テレビで「人体にただちに影響はありません」と繰り返され安心してしまう周囲の人たち。あんなに毎日四六時中流されていた福島の原発の現状は、もうテレビではほとんど報道されないのに。東京で被爆することを恐怖する自分は、考えすぎだと笑われる。でも、怖いのだ。だから、作品に登場する人達の、無理矢理にでも明るく振舞う様子を見て、その生々しさに、どうかみんな逃げて、生き延びてくれと、切に願ってしまう。そんな事を思わせるほどリアルだった。
「朽ちていった命」という本で、被爆するとどんなに苦しいか読んだ。作品中にも、終盤、事故当時に苦しみながら亡くなった消防士が描かれるが、苦しみを想像すると息苦しい。願わくば「3・11」前にこの作品を見たかった。今、見ると、衝撃が大きすぎる。
カラーパンフレットを買った。どうしても、自分は「原発」と「自分の現実」と重ねてしか作品を見ることは出来なかったが、世界を限定せずに、感性で捉える事で広がる演劇を信じる作家の魅力から、芸術の力を感じた。活動再開したDULL-COLORED POPからは今後も目が離せない。
なにもない/なにもしない
二番目の庭
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/26 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★
汎フォーマンス
見始めたら、ひきこまれた。物語を見たい人にはむかないが、パフォーマンスとしては面白かったです。
ネタバレBOX
劇場にに入ると舞台中央に服が山積み。それを囲むように半円形に客席が並んでいる。特筆するのはその位。シンプルな舞台。役者さんが、自分に合う服を探すように、着ては脱ぎ、着てみてその服に合う役を探しながら、衣装に着替えていく。その作業に目を取られていると、いつのまにか服の代わりに舞台中央に置かれているのは可動式の箱(大)と箱(小)。床には白い砂利で大き目の四角くが囲まれ、箱を中心とした白い四角、四角の外、舞台上に2つの空間が出来上がる。四角の外には、たくさんの投げ捨てられた服と服にまぎれて置かれた小道具。
四角に入ると役が与えられ、他の役者は四角の中の登場人物の心情を表したり、風景となったりする。時には心の声が出たりする。描かれるのは、日常の風景。演出と言うか見せ方が面白いなという印象。
クライマックスで初めて、登場人物の一人の女性が自分の幸せについて独白するシーンで自分には「なにもない」、でも自分は「/なにもしない」と語り、メッセージ的なものを感じたりもするが、観劇後はあまり残るものはない。見れて楽しかったな~、だけって感じ。
CRUSH THE TYMKS単独公演「星の降らない夜明け前」
CRUSH THE TYMKS
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/23 (火) ~ 2011/08/24 (水)公演終了
満足度★★★★
ニチジョーを踊る
ダンスって楽しいなぁ。等身大の女性を観て感じるって作品。チョーパワフルっっ!!すっごい激しいダンス、とにかく3人ともきまってて、でも楽しい。
ネタバレBOX
冒頭からラストにかけて繰り返される、反復された動きから見える日常感。寝て、また起きる。宙を見上げる。まるで明日の活力になるだろう、夜空の星を探すように。動作の混じったようなコミカルで激しいダンスで日常を楽しく表現する。それなのに、、、合間に見えるそんな日常に抗うかのような激しく踊り跳び跳ねる衝動?情熱?青春?葛藤。その力強さ。
不識の塔
劇団野の上
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
オトコはつらいよ?
なんといっても津軽弁が魅力的。聞き馴染みのない単語やリズムを楽しむ喜び。それは、意味はわからないけど音韻で味わう楽しさだけど、一方で全然津軽弁を知らない人にも物語が理解出来るよう計算されてもいて秀逸だ。そして言葉に力強さを感じた。それは公用語の統制に負けない土着の言語の力強さなのかなと思う。そんな青森パワー満載の舞台に、置いていかれないよう自然と身も心も前のめりになる感じが心地よい。
話の中身も人間らしい悲喜劇で、役者さんの好演も相まって手触りが新しく見たことないものが見れたな、でも方言や人の葛藤、今までもそこにあったものをきちんと魅せてもらったなという感じです。
ネタバレBOX
生娘にこだわる男のしょうもない性だったり、最後死ぬのではなく胎内回帰したいという無駄なあがきだったり。そういう、無様だけど、人間らしい生き様を、ほぼ全編寝たきりで演じ抜いた山田さんの立ち位置は大きいなと思った。
でも何より大きいのは酒樽。やられた。
INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR
インディペンデントシアタープロデュース
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/04 (木) ~ 2011/08/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
演劇の夏フェスっっ
一人芝居のこの力強さ。エネルギー。生きざま。30分×10団体。一日で満喫してきました。熱いっっ!次回は、5年後??毎年見れないのが、悔しい。…大阪まで行ければ良いんだけど。すっかりはまりきってしまいました。
ネタバレBOX
a101人ねぇちゃん
100人の女と同時に付き合う男が、新たに出会った最高の女と付き合うために100人全員を振る話。舞台中央に置かれた、101と書かれためくり。めくる度に数字が段々減っていく。減っていくのは男の事を好きな女の数。男はどんどん、付き合ってる女性を振っていく。ラストの馬鹿馬鹿しくも最高のオチで彼の愛の爆走はまだまだ続く。ドタバタコメディで最高。
bマラソロ
やりたいから始まる恋は意外と清純なんじゃないか。幼なじみの女子中学生への突っ走った一方通行な思いが暴走する童貞哀歌。観客が見ていてひくぐらい、相手とうまく距離がとれなくて、向き合って触れて解ろうとすることを飛び越えてしまう性春。わかるわかる。過激な演出に応える男優さんの演技も見事にはまってた、ラップも良かった。
c1041≒3088
男性の家を渡り歩きながら女は食べる食べる食べる話。食べる女性は何だかエロイ。普段まじまじと見る事のない、食べる行為とは、本能的な欲求で、そんな人間の営みを見続けるのは、何か不思議な体験だ。また、出演の女優さんがとても美味しそうに、食べるんだ。劇中、「私美味しそうに食べてる、それとも不味そうに食べてる?」の質問に『食べなければならないように食べる』って答えが出されて、あ~良い言葉だなと思いました。
dスクラップベイビィ!
ストリートチルドレンの二人が助け合い生きていく話。正反対の性格の2人が、助け合いながらお互いをわかりあっていくコテコテにショーアップされたファンタジー。入れ替わり激しく二つのキャラクターが演じ分けられ、少年ジャンプのマンガみたいな純粋にワクワクドキドキできるポップで、でも悲しい寓話でした。
eはやぶさ
今話題の(同じテーマで映画にもなるんですよね)人工衛星はやぶさを擬人化して一人芝居で体現する。壮大な宇宙の中での人工衛星の孤独と希望。宇宙規模のこんなにでかい世界を一人でやる、その挑戦が凄まじくパワフル。
fいまさらキスシーン
猛進して盲進する女子高生の世界は一人、世界は私を中心に回ってるという自意識。大好きな柿食う客の世界観で満足。あっという間の高校三年間を満喫せねばと東大と駅伝と恋で全て成果をあげようとするが…何故かラストには頭から血を流し、口の中は胃酸まみれで、片手に千円札を握りながら、オトコマエダ先輩にキスをしてもらいにひた走る。何でそ~なるんだぁぁ!!とにかく怒濤のセリフ、そして想像もつかない位の圧倒的妄想。背筋ピーン、として女子高生は走り続けるんだなぁ。
g頼むから静かに聞いて
夫を刺してしまった女の裁判に立つ、幼馴染のオカマと女の兄。『あなたとわたしは違う』幼なじみのオカマが性別を越えても女と一緒でありたい気持ちと、実の兄貴が一緒でないからわかりたいという気持ちが告げられ、3人の思いが浮かび上がる。男女オカマ3役の演じ分けも秀逸。
h赤猫ロック
放火が趣味の父と、父が趣味の母と、優秀な兄の4人家族で笑い合う風景が理想だと語る女は、ウェディングドレスで走り続ける。75調で歌うようにセリフをしゃべりながらずっと走り続ける女優さんの演技に圧倒される。家族という病に取りつかれて自分が人形となって燃え尽きないよう、まるで逃げるかのように走り続ける。『偉い人も火葬場では平等に焼かれるんだ』ってセリフが印象的でした。
i或るめぐらの話
青森弁は想像以上にわからない。わからないけど、面白い。発される言葉の数々が、メチルアルコールでめくらになった一人の男の生き方を、臭い立つように現す。空気感が楽しくて、今度の劇団野の上の公演も楽しみっっ。
j暗くなるまで待てない!
盲目の女が見る世界はいつも暗闇か。見えないものを観客として見てるつもりが、ラストには盲目の女にしか見えてない世界を見せつけられる。こうきたか~、と、やられた。幼少期に自分の母親は宗教団体の教組で、自分が失明しても治してもらえず自分を未来を予言する奇跡の子として育てる。そうして大きくなった女は盲目の占い師として働くも、教団を再建するを口実に金を奪おうとする男、隣の家に住むDVを受けてて親を殺してしまった中学生、スケベな大家などに囲まれ惨劇に巻き込まれる。そんな中起こる、奇跡。