Caesiumberry Jam 公演情報 DULL-COLORED POP「Caesiumberry Jam」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    すっげー、芸術的っっ
    きちんと調べて、まとめ、作り込まれた芸術的な脚本。登場人物になりきって観客を舞台にのめり込ませる確かな役者陣。同時多発的に風景が演じられそれが一つの画として魅せる、緻密で壮大な世界を浮かびあがらせる演出。圧倒された。自分の感性に響く、凄まじい公演だった。刺激的。美しい。でもわかりやすい。見れて良かった。良い芝居を見るとシビレル。

    ネタバレBOX

    チェルノブイリ原発事故現場から30キロほど離れた村の事故前から2005年までの風景。一人の日本人カメラマンは、その暗くて重い灰色な村で明るく過ごす村人達の風景を切り取り、話を聞いていく。年を経て村を度々訪れる内に他人事とは思えなくなってのめり込んでいく。村人達はある者は死に、ある者は去り、ある者は残り続ける。

    驚くことに物語の終盤まで、放射能やチェルノブイリという言葉は出てこない。今でこそ当たり前に知ってるセシウムは、初演時はほとんど浸透していなかった。でも非言語的に、または言葉の端から伝わってくるただならぬ空気。これを5年前の初演時に作ったのがすごいし、今やるのもすごい。

    「3・11」を知った我々の目の前に繰り広げられるのは、明日の我が身かもしれない登場人物たちだ。同じ状況におかれたその時、私達はあの楽観的に最後まで自分達の故郷で生きようとし続けた村人のように笑えるのだろうか。ノンキにこの芝居を見ることは今の自分にはとてもできない。

    チェルノブイリ事故当時ですら、風に乗ってセシウムは日本にまで運ばれてきている。いわんや、「3・11」以降、日本は現在進行形の非常時だ。でも、テレビで「人体にただちに影響はありません」と繰り返され安心してしまう周囲の人たち。あんなに毎日四六時中流されていた福島の原発の現状は、もうテレビではほとんど報道されないのに。東京で被爆することを恐怖する自分は、考えすぎだと笑われる。でも、怖いのだ。だから、作品に登場する人達の、無理矢理にでも明るく振舞う様子を見て、その生々しさに、どうかみんな逃げて、生き延びてくれと、切に願ってしまう。そんな事を思わせるほどリアルだった。

    「朽ちていった命」という本で、被爆するとどんなに苦しいか読んだ。作品中にも、終盤、事故当時に苦しみながら亡くなった消防士が描かれるが、苦しみを想像すると息苦しい。願わくば「3・11」前にこの作品を見たかった。今、見ると、衝撃が大きすぎる。

    カラーパンフレットを買った。どうしても、自分は「原発」と「自分の現実」と重ねてしか作品を見ることは出来なかったが、世界を限定せずに、感性で捉える事で広がる演劇を信じる作家の魅力から、芸術の力を感じた。活動再開したDULL-COLORED POPからは今後も目が離せない。

    0

    2011/08/29 21:45

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大