KAEの観てきた!クチコミ一覧

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パラサイトパラダイス

パラサイトパラダイス

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★

やや隔世の感あり
エンジェルにもなっているくらいですので、この劇団の昔からのファンです。

この芝居の初演は、13年前とのことで、大変面白くはあったのですが、やや時代遅れな雰囲気を感じました。

パラサイトはパラサイトでも、今はもっと深刻で、切実な気がしてしまいます。

コメディとしては上出来な舞台ですが、もし問題提起の側面があるのなら、この作品のこの時期の上演には、やや違和感を感じてしまいました。

ネタバレBOX

今は、本当に格差社会が深刻化していて、この芝居で描かれているような、言わば、お気楽なパラサイト家族は、存在しないかもしれないと思いました。

最後に、夫婦二人だけになる展開を、この日のアフタートークのゲストの学者さんは、ハッピーエンドと捉えられたようですが、ここは、いわゆる、今あちこちで実践されている、減築になりそうな予感がします。

取り残された夫婦のこれからの関係性にも不安を感じて、私は、新たなストレスネタがこの家庭に湧いたように感じられました。

あの年齢の夫婦の、別寝床を、親世代が心配するという設定にも、やや違和感を感じました。新婚夫婦でもあるまいに、中年の息子の性生活に気を回す親はいなさそうに思うのです。

「今日は七夕」とか言ってくれればとかいう台詞や、グリム童話の例え話は、芝居の流れとしては、面白く拝見しましたが…。

役者さんの安定した演技力は、言わずもがなです。

次回は、古城さんの、「今」を描いた新作を期待しています。
Tell Me on a Sunday サヨナラは日曜日に

Tell Me on a Sunday サヨナラは日曜日に

ホリプロ

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

素敵な一人ミュージカル
演技力のある役者さんの一人芝居は最高!

シンプルな舞台、映像やイラストをうまく使って、とても洗練された小粋なミュージカルでした。

ほとんど歌だけなのに、エマの心象風景を見事に体現する濱田さんの演技力には、恐れ入りました。

できれば、もう一度観たくなる素敵な作品でした。

演出の市川さんにも、今後大注目したくなりました。

ただ、一つ残念なのは、覇気のないバックコーラスは、ちょっと余計な気がしたこと。せっかくの濱田さんの名演をぶち壊した気がします。

ネタバレBOX

舞台には、トランクが6つとエマが旅行に使うスーツケースが一つだけ。

これを濱田さんご自身が動かして、時にはベットになったり、椅子になったり。

他の人物は、イラストを使って、背景のスクリーンに投影した風景で、その場所を観客に知らせるという、小気味良い演出。

ロイドウエバーの楽曲は、華麗で、濱田さんがその折々のエマの心情を的確に歌に乗せて表現する様は、圧巻でした。

子供の頃から大好きだった「スイートチヤリテイ」を彷彿とさせる、エマの可愛らしさに、ぞっこんになりました。

最後の恋愛は、最近話題のベッキーさんを想起したら、濱田さんも同じだったらしく、アフタートークで、名前こそ出さなかったけれど、彼女の気持ちを想像したと話されていました。

たくさんの恋愛に傷ついて、やっと、自分を見つめ直して、前に進もうとするエマの姿に、共感します。
還暦過ぎた私も、もう一度、人生をやり直してみたくなりました。(笑い)
渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾 「四谷怪談」

渋谷・コクーン歌舞伎 第十五弾 「四谷怪談」

松竹/Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/06/06 (月) ~ 2016/06/29 (水)公演終了

満足度★★★

如何にも串田ワールド
これは、私の想像に過ぎませんが、勘三郎さんが亡くなって以降、コクーン歌舞伎は、全て、串田さんの意のままで、上演されている気がします。

だから、どんどん歌舞伎色が薄まって、串田ワールド色が色濃くなっている感じがします。

これからは、本来の歌舞伎ファンには、敬遠されがちなコクーン歌舞伎になりそうな予感。それが、吉と出るか凶と出るかは、まだ私にはわかりません。

ネタバレBOX

最初のシーンが、蜷川さんご存命でしたっけ?という雰囲気。

黒子や通行人が、背広姿の現代人だったり、如何にも串田さん風だし、所々は、別役さんも思い出したり…。

だから、原作も大胆にアレンジしてあるのかと思いきや、意外とそうでもなくて、ちょっと肩透かし。

もっと、直助とお袖の二人に絞って、全く新しい「四谷怪談」番外編にすればよかったのにと思います。もう南北の著作権はないんだから…。

三角屋敷の場をメーンに据えて、串田さんの手を加えた、新四谷怪談を期待していたせいか、どうも、作品が散漫になった感が否めませんでした。

国生君の小仏小平にちょっと感動!ついこの間生まれたばかりの気がするのに。(笑)
天一坊十六番

天一坊十六番

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/20 (月)公演終了

満足度★★★

脚本に難ありの感
始まって間もなく、しまった!私、矢代さんは苦手だったと思い出しました。

このところ、ヒット作連作だった青年座ですが、残念ながら、今回は、あまり面白くありませんでした。

役者さんにも、腑に落ちていない演技をしている方が数名。特に、女流劇作家役の津田さんには、終始迷いながら演じている様子を如実に感じました。

長台詞が多く、時々眠くなりもしました。

ただ、若い金澤さんの演出力には、驚嘆します。
彼女の大学時代の恩師達が、スタッフとして助力されたようで、きっと、誰もが、彼女の才能に心的投資をされているのだろうなと感じました。

近藤さんの振付、日高さんの音楽、加納さんの衣装、どれも、ポップで、楽しかったのが救いでした。

神田陽子さんの講談は、良いお口直しになりました。

アフタートークの司会の方が、声が通らず、喋りも明瞭でなく、ちょっとじれったくなりました。青年座は、マイクを使わず、声が通る数少ない劇団なので、できれば、司会も、声が届く方に依頼して頂きたく思います。

ネタバレBOX

女流作家と、イワンイワノビッチとやらの関係性がよくわかりません。

イワンが、劇中の天一坊と被り、その上、キリストを彷彿とさせる人物で…。

何だか、作者が、本当に、この作品を、誰かに訴えたくて書いたという気概が感じられない芝居でした。アイデアで押し切って書いた風を感じて、途中から、集中して観ようという意識が殺がれました。

ただ、金澤さんの演出は、意欲的だし、青年座の役者さんの結束力は、観ていて、大変気持ちの良いものでした。
山路さん、横堀さん、安藤さん、松熊さん、小林さん…、実に生き生きと魅力的です。
このメンバーで、もっと、実のある作品を観たかったと、ちょっと残念に思いました。
天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~

天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~

東宝

帝国劇場(東京都)

2016/05/22 (日) ~ 2016/06/20 (月)公演終了

満足度★★★

開演前のイベントは不要
初演は楽しかったので、映画版ファンの友人を誘って観劇。

友人は、帝劇初体験で、開演前の売店見学なども楽しみにしていましたが、市のアマチュアゴスペルグループのパフォーマンス準備のために階段の通行が規制されて、彼女の期待は潰えました。

始まってみれば、アマチュアの歌はやはりそれほどのものではなく、途中で、通りにくい反対側の階段を苦労して、移動し、誰もいない喫茶室に入りました。

行政の無料イベントではないのだから、開演前のイベントは、あくまでも、高いチケット代を支払って、舞台以外の楽しみも加えて足を運ぶ観客スタンスで、企画してほしいものだと強く思いました。

舞台の方は、初演の村井神父が素晴らしかったので、ちょっと、期待外れな点も…。
でも、カテコでの一体感は文句なく楽しかったです。

ネタバレBOX

少し、フャ―ストシーンのドタバタが端折られた感がありました。

この作品は、疾走感が大事な要素なので、その意味では、ちょっともたついた進行の印象が否めませんでした。

石井さんと、宮澤さんは、安定感あり。シスターズの合唱シーンは、相変わらず愉快でした。

石川さんの方で観ましたが、この役は、大澄さんの方が適任かもしれません。
8月の家族たち August:Osage County

8月の家族たち August:Osage County

Bunkamura/キューブ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/05/07 (土) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

迫力が凄かった
何しろ最前列でしたので、家族バトルの迫力が凄かった!

これだけの、名優揃いで、舞台を堪能したのも、久しぶりな気がします。

村井さんの出番が少ないのが、ちょっと残念!

常盤さんの美しさに魅了されました。

未見の映画を、是非観てみたくなりました。

ネタバレBOX

セットは、いつぞや観た、ケラさんの何かの舞台に酷似していました。

長い舞台なので、休憩が2回あったのは幸いでした。

女優陣もさることながら、木場さん、生瀬さん達、男優陣の連携プレイも堪能しました。

元宝ジェンヌさんの口から、あんな台詞が出るなんて、宝塚ファンの方はさぞ驚かれたのでは?音月さんは、退団後に初見の女優さんですが、最初から、あの劇団の色を抜いて演じていらして、楽しみな女優さんだと、いつも感心します。

麻実さんと、秋山さんのバトルは、舞台ならではの迫力で、お見事でした。

バトルの際に、家族が座っている、ダイニングセットがギシギシ移動するのは、ちょっと、せっかくのリアルな空気が薄れ、どうなんだろうと思いましたが、後は、これが舞台だと忘れるぐらい、この家族のバトルにどっぷりと浸れ、こちらも、かなり力が入って、疲れました。

孫役の女優さん、まだお若いのに、これだけの演技を、観客の前で、臆せず表現されて、感服しました。
橋本さんと、マリファナの煙を口移しで吸う場面なんて、仰け反りそうになりました。

最後に、秘密を知らされたアイビーの心情が気の毒でなりません。

家政婦役の女優さんの好演も光りました。

かなり深刻な内容ではあるものの、如何にも、アメリカな家族劇なので、あまり自分に、引き寄せて観ないので、その点でも、気が楽な観劇になって良かったように思います。
1789 -バスティーユの恋人たち-

1789 -バスティーユの恋人たち-

東宝

帝国劇場(東京都)

2016/04/09 (土) ~ 2016/05/15 (日)公演終了

満足度★★★★

小池、神田、花總、東京楽日
約一か月振りの観劇。神田オランプは初見でした。

神田さんの父方の祖母である旭輝子さんに可愛がって頂いた過去があるので、ずっと、神田さんの活躍を楽しみにしていて、彼女が、立派に主役を務められる女優さんになられたことが嬉しくてなりませんでした。

小池さんは、ずいぶん、歌唱力が向上されたと感じます。

小池さんと、神田さんの声の相性が良く、二人のデュエットは、聴きごたえがありました。

それにても、このカンパニーのダンス力には、惚れ惚れします。

フェルゼン役の広瀬さんの成長も著しく、花總アントワネットとの格の差がなくなり、二人の恋情を信じられるようになったので、物語の深みが増した気がしました。

もう少し、ストーリーを骨太にして、是非また再演してほしいと思います。

ネタバレBOX

小池さんのロナンは、本当に、アニメの世界から抜け出して来たような趣で、主役として光っているのですが、惜しむらくは、ダンスシーンで、アンサンブルメンバーよりも小柄なために、一人、懸命に踊っている感がまだ抜けないところでしょうか。

彼には、「三銃士」のダルタニアン役の方が、適任ではとちょっと思ってしまいました。

3人の東京楽日でしたが、神田さんのよどみのないコメントに、感心してしまいました。

是非また何かの作品で、小池、神田の共演舞台が観たいものです。
翼とクチバシもください

翼とクチバシもください

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/05/11 (水) ~ 2016/05/22 (日)公演終了

満足度★★★★

いつもより、大人でシュールなクロムでした
いつもは、もっと毒があり、ハャメチャで、毒の強い疾走感が、魅力的な劇団ですが、今回は、やや落ち着いて、大人の雰囲気のクロムでした。

これはこれで好きですが、個人的には、もう少し、毒気が強い方が、クロムらしさを感じられて、良かったのにと、やや消化不良な部分もありました。

でも、今回は、役者さんに力不足の方が皆無なので、心静かに、舞台に集中することができて、大満足でした。

とかげさんが、とても魅力的で、同性ながら、うっとりしてしまいました。

あの台詞、皆さん、どうやって覚えたのかと、この劇団の役者陣の力量に、ただただ脱帽します。

ネタバレBOX

最初に登場する、刑務所の監視役の役者さん、後半で、実は、医師だと判明しますが、その役作りが、素晴らしくて、感服しました。

衣裳が変わるだけではなく、一瞬にして、表情や仕草に医師らしさを体現されて、実に、演技力の優れた役者さんだなあと、感嘆してしまいました。

今回は、全員の役者さんが、強者揃いで、舞台表現力に、力量の差がなかったので、終始、青木さんの描く不思議な世界に、没頭して、身を置くことができました。

最後の方の展開には、昔のフランス映画のような趣もあり、新しいクロムの魅力を、感じることができて、幸せでした。

それにしても、あの意味を成さないような言語を、皆さんが、声を揃えて、諳んじる様は、圧巻でした。

またしても、この劇団の役者さん達の、プロ根性に、感動されられました。

たまには、こういう、しっとり系の作品もいいですね。
「乳房」~天上の花となった君へ~

「乳房」~天上の花となった君へ~

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

俳優座劇場(東京都)

2016/05/07 (土) ~ 2016/05/15 (日)公演終了

満足度★★★★

波瑠さんが適役過ぎ!
言わずと知れた、あのお二人のご夫婦だった時の闘病記。

作家である、夫の視点で、描かれているので、妻である女優さんのファンであった私にとっては、複雑な心境で、観る場面も多々ありました。

波瑠さんは、以前ドラマも、この女優役を演じていましたが、本当に、今、彼女の役を演じられるのは、波瑠さんを置いて、他に思い当たらない程、適役でした。

ネタバレBOX

波瑠さんが、夏目雅子の透明感を、見事なまでに、舞台上に再現して下さり、感無量でした。

結局は、伊集院静さんの、弁明のような気もする、作品の造りでしたが、夏目雅子さんは、愛する人と、結ばれて、幸せな人生だったのかも、いえ、そうでなければ、彼女のファンとしては、浮かばれないという気持ちになりました。

内野さんの夫役も、適任でしたが、大事な箇所で、台詞を噛まれたのは、ちょっと残念に思いました。
たとえば野に咲く花のように

たとえば野に咲く花のように

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★

戦争の愚と、庶民のバイタリテ―
鄭さんの舞台は、ずいぶん久しぶりに拝見しました。

馬木也さん観たさに行きましたが、昔は、苦手だった、ともさかさんと、小飯塚さんが、いつの間にか、素晴らしい演技力を備えた女優さんになられていて、ビックリ!

康雄の婚約者あかねのキャラクターにどうも納得が行かない部分はあったものの、朝鮮戦争当時の、社会事情も、丁寧に描いて、見応えのある舞台でした。

ネタバレBOX

終幕の、腹ぼて3人組の明るさに、救われる作品でした。

池谷さんは、演技は申し分ない役作りなのですが、時折、台詞が流れて、聞き取りにくいのは残念でした。

康雄にふられたあかねが、いつまで経っても、心を成長させることがなく、康雄に痛い目を見せてという、一点張りなのには、どうにも閉口しました。

これは、演じ手の問題ではなく、あくまでも、劇作家の、人物造型の不手際のせいだと思います。

そう言えば、昔も、この作者の、人物造型に、不快な思いを感じたことを思い出しました。
フォーカード

フォーカード

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2016/04/15 (金) ~ 2016/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇作力と、演技力の見事なコラボ
久々の鈴木聡さん作の青年座の芝居。楽しみにしていた反面、正義感の強い自分には、不向きな作品ではと、内心危惧していましたが、杞憂でした。

面白いの何の!

それに、うまい具合に人情喜劇になっていて、改めて、鈴木聡さんの劇作力脱帽!

昔、映画の「スティング」にワクワクした自分を思い出しました。

時事ネタもうまく織り込み、それが、この芝居の裏テーマにもなっているおつな趣向。

役者さんは、新劇の養成所出身のフォーカード役の4人は、もちろんのこと、喫茶店に集う客全員が、パーフェクトの演技で、またしても、青年座は凄い!を実感しました。

ネタバレBOX

詐欺を働く、4人の、養成所卒業生の、ペテンの稽古がとにかく愉快!

喫茶店に集う、カップルや、親子、友人関係の描写がこれまたお見事!

最近の文春ネタを、ただ盛り込むだけではなく、そのネタを通して、主人公の4人以外にも、きちんと、ストーリーを肉付けできる、鈴木さんの劇作家の才に、呻りました。

千鶴が、ペテンに、昔の同期生を誘った理由も、現代の問題を照射していて、随所に、作者の問題提議がほの見える塩梅も、素敵!

最後のどんでん返しも巧妙だし、終幕の、喫茶店の店主と、老婆の会話も、味があって、青年座の芝居を、世のたくさんの演劇ファン全員に観てほしかったと強く思いました。

青年座の芝居は、なかなか映像に残らないのが、とても残念でなりません。
明治座 四月花形歌舞伎

明治座 四月花形歌舞伎

明治座

明治座(東京都)

2016/04/02 (土) ~ 2016/04/26 (火)公演終了

満足度★★★★

浮かれ難い「浮かれ心中」と幽玄美の舞踊
夜の部、観劇。

「浮かれ心中」は、今でも、勘三郎さんと三津五郎さんが、如何にも楽しげに演じていた舞台が、昨日のことのように、鮮やかに思い出されます。

息子さんの勘九郎さんが、どれだけ、お父上の愛した演目を軽妙洒脱に演じて下さるかと、期待しましたが、残念ながら、持ち前の生真面目さが邪魔をして、まだ懸命に、演じている様子が見えてしまって、舞台を弾けさせるだけの芸の余裕が感じられませんでした。

一方、舞踊の「二人椀久」の方は、幽玄美と、優美さを如実に、表出した、傑作舞踊に、しばしの憂いを忘れて、堪能させて頂きました。

菊之助さんと七之助さんのコンビの舞台は、今後もどんどん上演してほしいと思いました。

ネタバレBOX

「浮かれ心中」の、ある有名人の不倫ネタは、市井の反感を考えると、ちょっと、この場には相応しくない気がしました。

「浮かれ心中」の、宙乗りならぬ、チュウ乗りは、とても楽しく、絵になります。

勘九郎さんが、いづれ、この役を我物にされた時の舞台を楽しみに待ちたいと思いました。

菊之助さんと七之助さんの、饗宴舞踊の見目麗しさは、しばらく、脳裏に留まるに違いないと思います。
芝居心のある方の踊りは、本当に、極上の芸で、魅了してくださるなあと、感嘆しました。
ミュージカル「グランドホテル」

ミュージカル「グランドホテル」

梅田芸術劇場

赤坂ACTシアター(東京都)

2016/04/09 (土) ~ 2016/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★

グリーンチーム観劇
中川さんの方が観たくて、グリーンチームを観劇しました。

シナリオの書き方で、「グランドホテル」形式というネーミングがあるくらい、群像劇として、有名な物語で、各人の事情がうまくシナリオに表現されているストーリー構成はさすがです。

以前観た舞台より、演出が的確だった気がしました。

男爵役の俳優さんが、もっと演技派でいらしたら、更に感動的な舞台になったろうとその点が残念でした。

ネタバレBOX

誰が主役というわけではない群像劇なので、意外と、中川さんの出番が少ないのが残念でした。

妻の出産にヤキモキしながら、ホテルで深夜の仕事に従事するホテルマン役の藤岡さん、女優に憧れて、秘書の仕事で、お金を稼ごうとする若き女性役の昆さん、往年の人気が衰え、バレリーナとしての自信が揺らぐ心情を見事に体現した安寿さんなどの好演が光りました。

ソンハさんのチームの方も観たかったのですが、時既に遅しでした。
1789 -バスティーユの恋人たち-

1789 -バスティーユの恋人たち-

東宝

帝国劇場(東京都)

2016/04/09 (土) ~ 2016/05/15 (日)公演終了

満足度★★★

群舞が主役のミュージカル
小池ロナン、夢咲オランプ、花總アントワネットを観劇。

どうも、フランス産ミュージカルって、いつも人間ドラマの掘り下げがイマイチな印象ですが、今回の作品も、同様でした。

ロナンとオランプが惹かれ合う必然性があまり感じられないのが残念でした。

楽曲も、それ程、耳に残るメロディでもないし、ストーリーの深みがないので、各登場人物に、役が立つだけの造形がないのも惜しい作品でした。

でも、アンサンブルの群舞は圧倒的!アンサンブルこそ、ダブルキャストにしてあげたらと思う程、このミュージカルの根幹を成していて、見事でした。

ダンスは、きっと加藤ロナンの方が見せるのでしょうけれど、小池さんのあの輝く瞳は、類稀な宝物。こんな、漫画の星の瞳のような輝く目で、主役を張れる役者さんは思い浮かびません。
身長の低さを払拭するだけの、舞台役者としての存在感に、嬉しくなりました。

ネタバレBOX

宝塚の娘役時代から、清楚な美しさで、群を抜いていた、夢咲さんのオランプが、可憐で実に魅力的でした。

花總さんのマリーアントワネットは、その美しさに圧倒されます。

宝塚の、「ベルサイユの薔薇」を彷彿とさせる場面がふんだんにあり、往年のフアンを歓喜させるサービスが満載でした。

吉野さんは、このところ、悪役づいていますが、その存在感に更に磨きが掛かって、初期からのフアンとして、大変嬉しく思いました。

反面、岡さんのペイロールの配役は、ちょっと残念。存在感のある役者さんなので、もっと重要な役を演じて頂ければと、もったいない思いがしました。
エドウィン・ドルードの謎

エドウィン・ドルードの謎

東宝

シアタークリエ(東京都)

2016/04/04 (月) ~ 2016/04/25 (月)公演終了

満足度★★★

ルパート・ホームズファンとして
昔昔、毎晩、ルパート・ホームズのアルバムを聴いて、眠りに誘われていた私。彼のコンサートに行って、そのアルバムジャケットにサインして頂いた時の感激は今も忘れません。大きな手で、握手もして頂きました。

そんなわけで、彼が手掛けたミュージカルがあると聞いて、ずっと、この目で観たいものだと思っていましたが、念願叶い、ラッキー!

内容は、だから何だ!と言った感じでしたが、とにかく、客席を巻き込むエンタメ性が、娯楽の楽しみを実感させて頂けて、大変居心地の良い、観劇タイムでした。

瀬戸カトリーヌさんのハッチャケ振りが愉快でした。

最近暗く不安なニュースばかりだから、たまにはこういう、ただ愉快な観劇タイムは、必要かもしれないと思いました。

期待のルパート・ホームズの楽曲は、アンサンブルの男の子が歌う歌が、意外と名曲でした。

ネタバレBOX

2幕で、犯人を投票する客席参加型の舞台進行が、文句なく楽しめます。

その日の犯人と、探偵の二役を演じる役者と、ハッピーエンドにするための、その日のカップルを、客席の投票や拍手で、決めるので、結末は、288通りなのだとか。

内容なんて、どうでも良くて、後半は、その参加型の、娯楽に、身を任せて楽しんでいる自分が、嬉しくなってしまいました。

平野綾さんの、アニメ声からの、美声の歌唱にも、聞き惚れてしまいました。
どなたか、好きな役者さんが出演されている方には、必見のエンタメ作品かと思います。
二人だけの芝居―クレアとフェリース―

二人だけの芝居―クレアとフェリース―

劇団民藝

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/04/04 (月) ~ 2016/04/21 (木)公演終了

満足度★★★★

テネシーウイリアムズらしい芝居
「ガラスの動物園」や「欲望という名の電車」などで、知られるテネシーウイリアムズに、こんな戯曲があることを、今まで知りませんでしたが、奈良岡さんと岡本さんの二人芝居に興味をそそられ、観に行きました。

なるほど!彼の作品には、脆い精神の姉がよく登場しますが、この作品も、同様でした。

年齢差や芸歴の差を物ともせず、奈良岡さんと岡本さんのコンビネーションは、抜群で、やや難解な進行も全く苦にはなりませんでした。

また、このお二人で、何か二人芝居を上演して頂けたらと、次回共演を大いに期待します。

ネタバレBOX

弟のフェリースが書いた芝居を、女優の姉クレアと二人で、田舎の寂れた劇場で上演するために、稽古をする二人。

聞けば、スタッフは、皆逃げて、もはやこの劇場には、二人きりが取り残されている模様。

稽古を重ね、実際に、芝居を上演しているかに見えて、実は、二人の心象風景なのかもしれない、舞台進行は、やや難解ながらも、目が離せません。

台詞を忘れたり、省略したくなると、クレアが合図として、鳴らすピアノの音が、愉快なアクセントになり、深刻そうな舞台設定に、笑いを醸し出すのが、さすがの脚本です。

二人が、飛ばす、シャボン玉が、美しく、切なく、後方に広がる、朽ち果てた、向日葵の花が、「ガラスの動物園」のガラス細工にも似て、哀れでした。

ラストシーンの二人の抱擁が、哀切で、胸が締め付けられるようでした。
ETERNAL CHIKAMATSU

ETERNAL CHIKAMATSU

梅田芸術劇場

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2016/03/10 (木) ~ 2016/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★

小春とハルの対比
ルボーの作品に出演する七之助さんを観たくて、劇場に伺いました。

七之助さん、なかなか登場しません。(笑い)

でも、登場されるやいなや、見事に、舞台世界が進化しました。

七之助さんの演技に奥行きの深さを感じ、嬉しくなりました。

できれば、もう少し、七之助さんの小春をメインにしてほしかった気がします。

会場は、立ち見も出る満席で、久々に、劇場の熱気を感じることができました。

ネタバレBOX

深津さん演じる、現代の娼婦、ハルと、江戸時代の「心中天の網島」の小春。

家族のために、身を売った二人の薄幸の女の、時代を超えた心の交流が主軸になる舞台でした。

冒頭のハルと、思い人の兄とのやり取りが、やや表層的に感じましたが、七之助さんの小春の時代になると、一気に、舞台の流れに引き込まれました。
好きな人の女房であるおさんとの、女同士の、思いの理解が、胸をつきました。

最後、蜆川の橋のたもとに、ハルの亡き夫(七之助の二役)が現れ、ハルが解き放たれる瞬間の描写が美しく、胸に沁みました。

やはり、ルボーの、古典への造詣の深さには、感嘆します。
同じ夢

同じ夢

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2016/02/05 (金) ~ 2016/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

現実の細やかな不条理の連鎖
現実の細やかな不条理に折り合いをつけて、生きる人々の日常の一コマ。

何も打開策があるわけでもなく、人生が激変するわけでもない。

捉え方次第では、事件化するような事項や、鬱になりそうな懸案が山積みな人達。

案外、どこの家族や隣人達も、似たり寄ったりの生活をしているような気がします。

結局は、ほとんど何も起こらない、2時間を、何故か、卑近に感じて、見入ってしまう観客が、多数いるように感じました。

やはり、日常を描かせたら、赤堀さんの右に出る人は、そうは見当たりません。

映像の世界では、いつも魅力を放っている麻生久美子さんは、舞台でも、輝いていました。

ネタバレBOX

庭の隅に、うず高く、積もった落ち葉。一日何度も、上空を行き交う自衛隊の飛行機。

煙草を、健康に悪いと知りながら、換気扇の下で、遠慮がちに吸い、缶ビールや発泡酒で、喉を潤し、コンビニのおつまみで、何度注文しても来ない鮨を待つ間に、腹ごしらえを余儀なくされる人々。

それぞれ、結構ハードな日常を、打開策もないままに、過ごしていて、トイレさえ、自由に入れない、本当に、思い通りに生きられない、市井の人々。

唯一元に戻るものと言えば、掃除機のコードだけだし、解決したことは、食堂の主人の、片方の靴下がみつかったことぐらい。

夢を語り合えるような若さも、自由も失った、中年男達は、換気扇の下で、遠慮がちに煙草を燻らせながら、共に、「いつでも夢を」を歌うしか、為すすべはないのです。

それが、この芝居のタイトルの所以なのでしょう。
ある意味、非常に切ない、日常のリアルさに、観客の私も、共に、諦観して観てしまい、心がかなり、疲労しました。
俺の酒が呑めない

俺の酒が呑めない

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2016/01/22 (金) ~ 2016/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇作家を観る目の確かさに感服
このところの青年座は、他で活躍される劇作家の選択眼が素晴らしいと常々感じていますが、今度は、箱庭の古川さん。

この座組が発表された途端に、素敵な舞台を観られるに違いないと確信しましたが、当たっていました。

元々才能ある劇作家の作品が、青年座という、全てベテラン勢揃いの劇団で、より作家としての花を咲かせる様を見るのは、観劇人間にとっての醍醐味でもあります。

セットの、細部に亘る崇高さにも、惚れ惚れしました。

芝居を観ただけで、日本酒の知識もたくさん増え、何だかホッコリ、得した気分になれるお芝居でした。

ネタバレBOX

古川さんお得意の家族のお話。

洋物、和物、時代劇、現代劇、都会物、地方物、…、とにかく何でもござれの青年座という居場所を得て、いつにも増して、古川さんの芝居が、光輝いたような舞台でした。

どうしてこうも、役者揃いなの?と信じ難いくらい、誰も彼も秀逸な存在感。特に、中盤まで、話にしか出てこない「忠さん」が登場した時は「、待ってました、津嘉山!」と声を掛けたいくらいでした。

内容的には、さして目新しさはないのに、古川さんの描く、各人物の造形が細やかで、、作者の造詣の深さも醸し出す出色の芝居を生み出していて、お見事でした。

そして、その芝居のリアル感を増長するセットの巧みさ!!

人物が出入りするドアの奥までも、本当に感嘆するリアルさに、心が躍りました。

舞台の後方上部に吊るされた杉玉が、驚くほど効果的。この杉玉が、季節感を醸し出しながら、更には、この酒屋のストーリーを象徴する役目も果たし、もう一人の登場人物のようでした。これが、アニメなら、杉玉にも台詞があっただろうなと思うような存在感でした。
熱海殺人事件

熱海殺人事件

ホリプロ

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★★

原型演出に感謝
物心ついた時から、招待券で演劇を観る幸運に恵まれていた私が、生まれて初めて、プレイガイドに並んで、お小遣いで買って観た芝居が、紀伊国屋ホールで上演した「熱海殺人事件」でした。

当時は、消防法がうるさくなかったから、通路に座って、観劇しました。

あの時の興奮が忘れられず、その後再演される度に、観ていましたが、時代と共に変容して行く「熱海」に付いて行けず、いつか、私にとっては思い出の中の作品になっていました。

それが、つか信奉者のいのうえさんによる演出、あの風間さんと平田さんが同じ役を演じて下さり、ハナ子役は、つかさんのお嬢さん。

これを期待せずに何を期待したらいいの?という感じで、待っていました。

あの当時の原型を留めた演出に、とにかく感無量でした。

ただ、できることなら、金太郎は、加藤さんで観たかったなあ。

ネタバレBOX

やはり、お二人とも、年齢的に、当時のようなバヅーカ台詞には、やや無理がありました。

でも、役者としての年輪を重ねられた、魅力が、木村伝兵衛にも、熊田留吉にも備わっていて、素敵でした。

当時の演出では、金太郎は、座席中央最前列に座っていて、突如脚光を浴びて登場する場合が多かったのですが、中尾金太郎は、客席後方から、歌を歌いながら現われました。その歌詞がほとんど聞き取れないのは、やや残念でした。

心配した、若い中尾さんも、独自色を出し、新たな金太郎像を懸命に形作って、それはそれでお見事でしたが、欲を言えば、加藤健一さんの金太郎で観たかったのは本音です。

愛原さんは、宝塚ご出身ということもあり、動作がしなやかで、魅力的なハナ子でした。

伝兵衛の理想とする犯人像を構築するために、ハナ子の協力を得て、熱海の海岸での殺人を再現する、中尾さんと愛原さんのシーンは、見た目にも美しく幻想的で、歌舞伎の心中シーンを観るかのようでした。
当時も、この場面に衝撃を受けたことを鮮明に思い出して、懐かしさで、目頭が熱くなりました。

是非、これを機に、時々、つか芝居の同窓会的な上演が続いたらいいのにと思いました。

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