土反の観てきた!クチコミ一覧

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jazzzzzzzzzzz-danceジャズズダンス

jazzzzzzzzzzz-danceジャズズダンス

黒沢美香

同發新館ホール(神奈川県)

2014/11/13 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

ジャズセッションのようなダンス
中華街にある古風なホールで大勢のダンサーが踊り、独特の迫力を感じました。

シンプルな動きを何度も繰り返す内に興奮が高まってばらけて行くシークエンスが続くストイックな構成で、ジャズセッションのユニゾンによるテーマ演奏からそれぞれのアドリブソロへの流れを思わせました。ムーブメント自体はジャズダンス的なヴォキャブラリーも用いられていましたが、そうではないタイプのコミカルな物も多く、それで笑いを取ろうとする感じではなく、淡々としていたのが良かったです。
ダンサーは技術的には様々なレベルの人がいて動きや形は揃ってはいないものの、どこかまとまりがあって迫力を感じました。

女性ダンサーの衣装はそれぞれ少しずつデザインが異なる、前が赤、後ろが黒のワンピースで、体の向きを変えると舞台上の色彩が大きく変化するのが印象的でした。
会場の同發新館ホールは昭和の雰囲気が色濃く残っていて、けばけばしいメイクのダンサー達のビジュアルと相俟って異世界的な情緒を生み出していました。

アイナダマール<涙の泉>

アイナダマール<涙の泉>

日生劇場

日生劇場(東京都)

2014/11/15 (土) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

ロルカの最期
スペインの詩人・劇作家、フェデリコ・ガルシア・ロルカを描いたオペラと、その前に上演されたプロローグ的役割の短い芝居による2部構成でした。

第1部は田尾下哲さんの構成による、ロルカの伝記を書いているジャーナリストがロルカの生涯を詩の朗読を交えて語る体裁の30分程度の芝居でした。駆け足過ぎて物足りなく感じたので、1時間くらい掛けるか、あるいはオペラ上演のみでも良いと思いました。

第2部の『アイナダマール』は、ロルカの劇作品『マリアナ・ピネーダ』に出演中の女優マルガリータ・シルグが楽屋でロルカとの過去を回顧する形で展開する物語で、ロルカとマリアナ・ピネーダが重なるように描かれた作品でした(女性歌手がロルカを演じていました)。
終盤でロルカが処刑された後に男性ダンサー達が倒れては起き上がる動きを繰り返し、生命の力強さを感じさせました。

美しい映像と男性群舞を用いた、過不足の無い分かり易い演出で物語の世界に引き込まれましたが、舞台上空に吊られた戦争を象徴する刃物のような形状のオブジェが出たり引っ込んだりするのは少々煩く感じました。

小編成のオーケストラにスパニッシュギターとカホン、手拍子が加わりフラメンコやマンボといったラテン情緒溢れるエモーショナルな音楽が魅力的でした。
録音の声や効果音を用いたり、一部で歌声にエフェクトを掛けたりと、クラシックのしきたりに囚われないテクノロジーの使用がドラマ性を高めていましたが、音響バランスが悪い部分も所々にあり、部分的なPA使用の難しさを感じました。

ヴォイツェク

ヴォイツェク

演劇ユニットハイブリッド

ART THEATER かもめ座(東京都)

2014/11/11 (火) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

白い空間
様々な演出で上演されている作品で、この演出ではいくつかの場面を繰り返す構成となっていて、シンプルな美術が印象に残りました。

見世物小屋の場面から始まり、その後は一般的な順番で物語が展開しました。本来は終盤に語られる、孤独な子供の寓話が大きくフィーチャーされていて何度も登場するのですが、くどくて逆に印象が薄まってしまったように感じました。前半のテンポ感に比べて後半はもったいぶった間が多くて長く感じました。
池に入っていく描写や妻の亡骸の表現等が削ぎ落としたものとなっていて新鮮でした。

白い床と両サイドに雁行して立つ白い壁に数脚の箱状の椅子数脚だけという抽象的な舞台の中、照明の変化で次々と展開する場面を描き分けていました。壁が光を通す素材で出来ていて、影絵を用いて狭い舞台の中に奥行きを生み出していたのが印象的でした。
ワイヤーを編み込んで作ったロバや猫の美術の造形が美しかったものの、全体の中で異質で浮いている感じがありました。

それぞれの役に役者が合っていてヴォイツェクが荒んで行く様子にリアリティ—が感じられて良かったです。

巨人伝説

巨人伝説

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

日本人の姿
戦中から戦後にかけての物語ですが、戦争の悲惨さを訴えるのではなく、人の欲望や無責任さが描かれていて、現代にも通じる内容でした。

とある東北の村を舞台に1945年と1960年が並行して描かれ、戦場に出ている息子が戦死したら結婚しようと約束している男女を中心に展開し、ある同様の出来事で2つの時代がクロスする物語でした。
前半は展開が緩慢で退屈感を少々覚えましたが、休憩を挟んだ後の後半は中心となる男女それぞれが息子との関係で大きなジレンマを抱えるシーンが続いて緊迫感があり引き込まれました。
緊張感の高まる場面でも時折笑えるやりとりが行われ、シニカルな雰囲気があったのが良かったです。

舞台全面に打たれる映像(プロジェクションマッピングも行っていました)がほとんど色を使わず、控え目な表現だったのが良かったです。
アンサンブルによる少々長めの身体表現のシークエンスが数回ありましたが、雪の中を進むシーン以外は中途半端に感じられました。
電子音と弦楽器による曲自体は良かったのですが、音楽を多用し過ぎているように思いました。音楽で盛り上げなくても演技だけで十分伝わると思いました。カーテンコール時の曲には違和感を覚えました。

バンジャマン・ミルピエ L.A.Dance Project

バンジャマン・ミルピエ L.A.Dance Project

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2014/11/08 (土) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★

コンテンポラリーバレエ
パリオペラ座バレエ団の芸術監督に就任したばかりのバンジャマン・ミルピエさんが率いるダンスカンパニーの初来日公演で、地味ながら実力を感じさせるプログラミングでした。

『リフレクションズ』(バンジャマン・ミルピエ振付)
数分のショートピースがいくつか繋がる作品で、バレエのムーブメントを用いながらも日常性が感じられました。しなやかな動きは美しかったものの印象に残りませんでした。
赤い壁と床に白い大きな文字が描かれた美術が迫力がありました。ミニマルなピアノ音楽が単調で、もう少しメリハリが欲しかったです。

『モーガンズ・ラスト・チャグ』(エマニュエル・ガット振付)
素舞台で照明の変化も無いシンプルな設えの中、6人のダンサーがバラバラに踊っているかと思うと密集してポーズを取る、乾いたユーモアが感じられる作品でした。バッハやパーセルの曲のシリアスな雰囲気とは裏腹にチャーミングな動きが多用されていて、シュールな浮遊感がありました。『クラップ最後のテープ』(サミュエル・ベケット)の録音が流れるのも不思議な雰囲気を生み出していました。

『クインテット』(ウィリアム・フォーサイス振付)
浮浪者が歌っていたのを録音した30秒弱のループに次第にオーケストラが重なる『イエスの血は決して私を見捨てたことはない』(ギャビン・ブライヤーズ作曲)に乗せて、古典的なバレエのスピードや動きの範囲を拡張したような切れのあるムーブメントが繰り広げられる作品で、殊更に感情表現をしていない、体操的とも言える振付とエモーショナルな音楽が組み合わさって、孤独の不安感や慎ましい幸福感が同時に表現されていて心を動かされました。

水の戯れ

水の戯れ

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

不器用な大人達
通俗的メロドラマのような内容でありながら、リアリティーのある演技によって煮えきれない大人の男女関係が魅力的に描かれていました。

仕立て屋の家の三男と結婚したものの早くも夫を亡くしてしまった女と、義理の兄にあたる次男との無器用な恋愛模様を中心に、店に出入りする周囲の人を描いた物語で、なかなか本音を言わない2人と中国人の女や若い女のストレートな発言の対比が印象的でした。終盤の劇的な展開になるまでは淡々とした雰囲気が支配的ですが、ちょっとした言葉や動きにおかしみがあり、程良く笑えました。
終わり方がいかにもな感じで、エピローグが続くと思わせながら、そのまま終わってしまうのが逆に意外に感じました。
タイトルについて直接的言及は無いものの、様々な場面で水/液体の要素が登場するのが印象的でした。

リアルな広間のセット、派手な演出を用いない照明、暗転時のみ流れる音楽と、地味ながら的確なスタッフワークがドラマに深みを与えていたと思います。

未亡人を演じた菊池亜希子さんの表面的には清楚でありながら陰の部分を抱えている感じが良かったです。
長男役の池田成志さんが今まで演じてきたタイプと異なる役で新たな魅力を感じました。

「ご臨終」Vigil

「ご臨終」Vigil

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/11/05 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★

老いと死
老いや死、孤独といったテーマを少々ブラックなユーモアで描いた作品で、2人芝居としては独特の構成が新鮮でした。

叔母から死期が近いとの手紙を受け取った甥が40年ぶりに会いに行き看病生活を送る様子を描いていて、第1幕は特別大きな事件は起こらずに淡々とエピソードを重ねて行き、第2幕で意外な方向へ話が動き出す物語でした。途中まではコミカルな雰囲気で、終盤ではハートウォーミングな雰囲気となって盛り上がるのですが、個人的にはブラックなテイストのまま終わって欲しかったです。

甥だけが喋り続けて叔母はほとんど喋らないという台詞の扱い方が大胆で、台詞自体も死にまつわるシニカルなものが散りばめられていて、くすっと笑える感じが楽しかったです。第1幕だけで20場以上ある小刻みな場の構成が、2人の生活をスナップ写真や日記風に見せていて印象的でした。

温水洋一さんは人付き合いの苦手な冴えない中年男らしさが出ていて良かったです。台詞の文体のせいなのか、演技が少々道化じみているように感じたのですが、後半の展開でそれが腑に落ちました。江波杏子さんは台詞も動きもほとんど無い中、表情やちょっとした動きで様々な感情を表現していて、少女のような可愛らしさも感じられて魅力的でした。

狂言劇場その八 

狂言劇場その八 

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/08 (土)公演終了

満足度★★★★

Aプログラム鑑賞
通常狂言が上演される能楽堂ではなく、近代的な設備が整った劇場での公演で、それに合わせた照明演出や空間構成が施されていて新鮮な雰囲気が感じられました。

『萩大名』
無知な大名と機知に富んだ太郎冠者のやりとりにいかにも狂言的なほのぼのとしたユーモアが漂っていて楽しかったです。大名を演じた野村万作さんの台詞の間や表情がチャーミングでした。

『鏡冠者』
いとうせいこうさんによる新作狂言で、古典には無い不条理劇的センスが印象的でした。主人の言いつけを守らずに酒を盗み飲みするという典型的な始まりから、鏡に向かって踊る様子を2人で対称に動くことによって表すという様式の中での新たな表現を見せ、終盤では照明や空間を巧みに用いて奇妙な孤独感が生み出されていて、とても現代的でした。

『越後聟 祝言之式』
能楽囃子(能楽堂で聞くよりも大鼓がドライな響きで印象的でした)に続いて、獅子に扮した舞が演じられました。橋掛りの欄干を跨ぐ跳躍や三点倒立といった、一般的な能・狂言のイメージには無く、また歌舞伎の舞踊とも異なる動きが新鮮でした。

本舞台に左右と中央奥から橋掛りが設けられ、手前の2本の柱は膝下程度の高さしか無く、鏡板は演目によって異なる絵のパネルが吊り下げられるといった、通常の能楽堂とは異なる空間が美しく、音楽ホールや劇場で能楽を上演する時の仮設舞台の安っぽい感じが無いのが良かったです。

7 Fingers『TRACES』

7 Fingers『TRACES』

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/10/31 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★

ドキュメンタリー的サーカス
シルク・ドゥ・ソレイユ出身の7人による身体能力を活かしたパフォーマンスで、手に汗握るエキサイティングな技には引き込まれましたが、舞台作品としてはまとまりが無く感じられました。

エアリアル・ストラップ、ポールダンス、シアウィール、ディアボロ、シーソージャンプといった定番の演目にダンス的なアクロバットや芝居を織り混ぜたスタイルでした。パフォーマー達は普段着のような衣装で、サーカスにありがちなエキゾチシズムやファンタジー性を打ち出さずに現代の若者として舞台に立っていました。
プロフィールを自己紹介したり(日本語でした)、幼少期の写真が映し出されたりと、タイトルのトレースの通り、各パフォーマーの足跡を思わせる演出が盛り込まれていましたが、テーマを描くという程には力点が置かれていなくて中途半端に感じられました。

舞台の真上から撮った映像を背後の壁に映したり、舞台上でのインタビューにテレビ番組風にテロップを付けたり、舞台の外に出ていったパフォーマーの様子をライブ中継したりと、映像の使い方が興味深かったです。

撮影可、途中退出可、飲食可と説明する開演前のアナウンスもユーモアがあって楽しかったです(KAATのアーティスティック・スーパーバイザーである白井晃さんによるものでした)。

クラッシュ

クラッシュ

東葛スポーツ

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2014/10/15 (水) ~ 2014/10/31 (金)公演終了

満足度★★★

ヒップホップ演劇
ただ台詞をラップするだけではなくヒップホップ的な態度がはっきり打ち出されていて、内容としては支離滅裂でありながらも感情に訴える強度がありました。

『1Q84』(村上春樹)、『クラッシュ』(ジェームズ・グレアム・バラード/デヴィッド・クローネンバーグ)、『パルプ・フィクション』(クエンティン・タランティーノ)、『東京ノート』(青年団)、『三月の5日間』(チェルフィッチュ)、『あゆみ』(ままごと)、フェルメールの絵画とそのドキュメンタリー番組、といった様々な映像や演技の引用が「1994年」と「衝突」というモチーフを媒介に強引にマッシュアップされた作品で、過去に使ったネタも所々にあったものの、その繋げ方が楽しかったです。
終盤の各出演者による自己紹介的ラップのマイクリレーや板橋駿谷さんのフリースタイルのラップは東葛スポーツではあまり感じることの無かった、ストレートな格好良さがあって印象的でした。

今までの作品は音楽で台詞が聞き取り難いかったり、マイクがハレーション気味だったりとテクニカルの面で少々ストレスを感じていたのですが、今回は聴覚的にクリアになっていて心地良く観ることが出来ました。
映像をわざと壁に対して斜めに打ち、歪んだ四角形にしていたのも、フェルメールのエピソードの時に出てきたカメラ・オブスキュラとの関連を感じさせて良かったです。

第41回 NHK古典芸能鑑賞会

第41回 NHK古典芸能鑑賞会

NHKプロモーション 

NHKホール(東京都)

2014/10/28 (火) ~ 2014/10/28 (火)公演終了

満足度★★★

伝統芸能3本立て
毎年恒例の公演で、今回は箏曲・舞踊・歌舞伎の3本立てでした。

『根曳の松』
箏、三絃、尺八による地唄三絃曲で、手事(間奏部分)の華やかな技巧が楽しかったです。テンポの変化する部分、特に急から緩に移行する時の音の響き方に味わいがありました。

『連獅子』
祖父と孫によって親子の獅子が舞われ、紅白の彩りが鮮やかでした。狂言師左近と仔獅子の精を踊った花柳芳次郎さんの若さ溢れるバネの効いた動きが印象的で、谷に落とされる場面ではブレイクダンスのように見えたのが興味深かったです。長唄の歌詞が字幕で表示されていて、歌詞と動きの関係が分かって良かったです。

『傾城反魂香』
数ヶ月前に国立劇場でも上演されたばかりの演目ですが、出演者が異なり演技の違いを楽しめました。悲痛な調子から最後に晴れやかな雰囲気に変わる様が印象的でした。
又平を演じた中村吉右衛門さんの嘆きと喜びの表現が際立っていました。又平の妻、おとくを演じた中村芝雀さんの台詞回しが心地良かったです。
大向こうが変なタイミングで入ることが多く、興を削がれたのが残念でした。

ベテランの妙技をリーズナブルな価格で楽しめるのはありがたいのですが、やはりNHKホールは残響や客席の広さが伝統芸能には向いていないと思いました。

ドラゴンタクシー第9支部

ドラゴンタクシー第9支部

Fantasy Pocket

RAFT(東京都)

2014/10/23 (木) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★

旗揚げ公演
漫画的な分かり易い物語や人物設定に旗揚げ公演ならではの若々しい勢いと未熟さを感じる作品でした。

ドラゴンが実在する架空の国が舞台で、営業実績が芳しくない支店にポジティヴで無鉄砲な新入社員がやって来ることによって、支店の閉鎖を免れるという物語で、敵対関係が解消されて行き、希望を持たせる終わり方が爽やかでした。

展開も場面転換の入れ方もオーソドックスだったので、どこかに意外性のある趣向を盛り込んで欲しかったです。
ヒロインのがむしゃらな性格付けの為に同じようなやりとりを何度も繰り返していましたが、くどく感じられてあまり良い印象を持てませんでした。
前半ではもったいぶった短い沈黙が多く、誰かが言う台詞に一言突っ込みを入れるパターンが全編に渡って多用されていて、漫画的に感じられました。会話のやりとりに起伏のある流れが感じられず、単調に感じました。

少額投資家制を取っていて、他の劇場でチラシの折り込みをせず、チケットは完全予約制で、当日パンフレットや他劇団のチラシ折り込みも無く、終演後は出演者が名札を下げて観客とコミュニケーションを取るといった試みをしていましたが、あまりそれが上手く行っているようには思えず、閉鎖性を感じました。

悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』

悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』

悪い芝居

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/10/21 (火) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

虚業
虚構性をモチーフに、癖の強い人物達がエネルギッシュに描かれていて、猥雑な雰囲気が印象的でした。

売れないテレビタレントの女が頭にパトランプを乗せた怪しい男に出会うことから新たな価値観を得て行く物語で、3時間弱という長い上演時間でだれることの無い求心力がありました。
開演前から音響や照明、座席に置かれたチラシの束に仕掛けが施されていて、開演冒頭のいかにも典型的な臭い芝居の演技・演出がフィクション性を強調して、その後の展開を期待させましたが、それ以降は物語内での虚構性が中心となって意外と普通の内容となり、ステージと客席の間に存在する演劇という形式が持っている虚構性を意識させる仕掛けがあまり無かったのが残念でした。

ハイテンションに叫ぶような台詞回しや大音量の音楽(生演奏もありました)、下ネタを含めた笑いを多用するエンターテインメント性に富んだ熱い演出・演技で、個人的に苦手なタイプの作風だったので、世界観に入り込み難かったです。

大きな舞台美術を役者達自身で動かして場面転換するのがスピード感があって良かったです。

Dans La Maison

Dans La Maison

The Bambiest

恵比寿 TRAUMARIS(東京都)

2014/10/16 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★★

ファッショナブルに描く女の1日
ある女(達)の朝から翌日の朝を象徴的かつスタイリッシュに描いた作品で、コケティッシュなエロティシズムが印象的でした。

いくつかの白い鉢に植えられた植物と椅子が置かれた空間の中、開演前から2人のダンサーファッションモデルのようにポーズを取っていて(開演前は撮影可)、パフォーマンスが始まると1日の時間の流れに沿ってピンクのトップスにロープ柄の白のスカートから赤いワンピース、そしてベージュのビスチェに水色のパジャマと衣装を替えて行きながら踊り、視覚的に楽しかったです。
ダンサー達が同じような格好をしているので、別の人物というより、抽象化された1人の人物を多面的に表現しているように感じました。
途中から登場する、色とりどりの花のブーケを仮面のように被り、白いレースのワンピースを着たダンサーが、時が止まったかのような異質の雰囲気を醸し出していました。

自然光が差し込む窓やアクティングエリアの横にあるエレベーターを活用していて、この会場の空間ならではの演出となっていたのが良かったです。しかし、空間のサイズに対してダンサー7人は窮屈さを感じました。

Dance Performance ~ロンド・カノン形式による創作表現~

Dance Performance ~ロンド・カノン形式による創作表現~

日本大学藝術学部演劇学科

日本大学藝術学部 江古田キャンパス(東京都)

2014/10/17 (金) ~ 2014/10/18 (土)公演終了

満足度★★

振付における形式性
日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース3年生14人の短編の上演で、色々なタイプの作品があって楽しかったです。

ロンドかカノンの形式を用いて作品を構成する課題とのことでしたが、その形式性を中心にした作品は無くて、他のテーマを表現する要素の一部としてその形式を用いていました。どちらの形式を用いているのか分からないものも多かったです。
カノン形式に関しては同じ振付をずらして踊るだけのことが多く、フレーズの途中でそのフレーズの冒頭が重なってくることによって生じるハーモニーというカノン形式特有の面白さを表現している作品がほとんどありませんでした。
個人的には形式性を活かしたムーブメントやシーンの構成的な面白さを感じさせる作品を観たかったです。

作品としては伊藤優布子さんの『ZZZ』、細川雷太さんの『Black & White』、安岡あこさんの『壁』が印象に残りました。

自作を作りつつ、他の人の作品にも出演していて時間が限られていたとは思いますが、次々に異なるスタイルで踊る能力と体力に若さと可能性を感じました。

女神の略奪

女神の略奪

セルバンテス文化センター東京

セルバンテス文化センター東京(東京都)

2014/10/16 (木) ~ 2014/10/16 (木)公演終了

満足度★★

官能的な詩とダンス
絵画や写真が展示されているギャラリーでのスタンディング公演で、官能性の高いパフォーマンスでした。

パンツだけ穿いて全身にテープを巻いた上に白塗りをした女性ダンサーが台座の上に彫刻のように静止していて、男性が天井から吊された詩の断片を読んだり、観客に読ませたりしている内に女性ダンサーがテープを剥がし結っていた髪をほどいて台座から降りて、若い男性ダンサーと愛撫するように踊る展開で、はっきりした物語は無いものの詩の内容に沿ったダンスで分かり易かったです。
男性ダンサーも最終的にはパンツだけになりましたが、エロティックな表現が下品になってないのが良かったです。

運営があまり上手く行ってなくて、パフォーマンスの質を下げてしまっているように感じました。
上演中にスマートフォンで写真を撮る人が多くて、画面の明るさやダンサーや観客の邪魔となる位置に立っているのが気になり、撮影禁止にするべきだと思いました。
映像を壁面に投影するシーンでもプロジェクターを遮っていることに気付いていない観客がいて、影にならないように誘導すべきだと思いました。

まつろわぬ民

まつろわぬ民

風煉ダンス

調布市せんがわ劇場(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/19 (日)公演終了

満足度★★

服従しない人々
権力に排除された人々が抗う姿が猥雑で熱気のある物語の中に描かれていましたが、個人的な好みと異なるテイストだったので世界観に入り込めませんでした。

老女が1人で暮らすゴミ屋敷のゴミを撤去することになり、多くの人が家に乗り込むとゴミの姿をした鬼達がいて、撤去作業員の1人が鬼の王と勘違いされて展開する物語で、前半は緩い雰囲気だったのが次第にシリアスな要素が強まり、後半はアクションシーンや熱い演技が繰り広げられました。

個人的に得意ではない和物ファンタジー系な物語だったので乗れなくて、ジャンプネタを中心としたギャグも元ネタは分かるものの笑えませんでした。
東北を舞台にしているので3.11絡みの表現があるのは予想していましたが、ストレート過ぎかつ唐突に感じられました。中央批判的な表現はもっとアイロニーを感じさせて欲しかったです。

段ボールと黒いゴミ袋というチープな素材で作られたセットや可動式の衣装が良く出来ていて、終盤で見せる変化は圧巻でした。

3人のミュージシャンの生演奏による音楽は様々なジャンルがミックスされていて楽しかったです。

光のない。

光のない。

地点

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

色褪せない言葉
2012年の初演時(その時の感想→http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=167446)は3.11からまだ日が浅く、冷静に観ることの出来ない部分がありましたが、それから2年経った今でも、その特異な言葉や表現にさらに説得力が増しているように感じられ、ドラマ性の無い抽象的・前衛的で不安感・緊張感がみなぎる作品であるにも関わらず、エモーショナルな訴え掛けが伝わってきて、心を打たれました。

初演時と何点か大きく異なる部分がありました。
防護服を思わせるレインコートを着た男性が冒頭と最後で現れることによって、この作品の重要なモチーフである「当事者性」に新たな位相が加わったように感じました。
東京芸術劇場では金属製の防火シャッターが客席とステージを区切っていたのに対して、今回は普通の黒い幕になっていたのが、会場設備の都合で仕方がないとは言え、残念に思いました。
ウェットスーツを着た男が激しく動き回るシーンで『海行かば』を歌うことが追加されていて、とりとめのない言葉の流れの中で突如現れる分かり易い言葉に強烈なインパクトがありました。

当日パンフレットに日本における演劇受容について述べた三浦基さんの文章が載せてあり、とても興味深い内容で読み応えがあって良かったです。

わが父、ジャコメッティ

わが父、ジャコメッティ

悪魔のしるし

KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)

2014/10/11 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★

ドキュメンタリーとフィクション
ドキュメンタリーのフィクション化とフィクションのドキュメンタリー化が折り重なる不思議な雰囲気の作品でした。

ジャコメッティについて書いた矢内原伊作の日記と、同じくパリ在住中に書かれた木口敬三さん(危口統之さんの父親)の日記によるエピソードと出演者自身についての話がごちゃ混ぜに展開し、芸術における「完成」とは何かという問いが、演じている感じの無い、素の状態(に見える演技?)の緩い雰囲気の中で描かれていました。
親子でたどたどしくピアノ連弾をするシーンや、絵を描いている内に道具やキャンバスが撤去されて何も無い空間に向かって手を動かし続けるシーンが美しくて印象的でした。
コンセプトや雰囲気は興味深かったものの、全般的にあまり掘り下げられずに淡々と進む印象があり、少々物足りなさを感じました。

お手伝い役の大谷ひかるさんも自身としての台詞がほとんどで、冒頭に予告していた通りミュージカル調に踊り歌うシーンがあり、父・息子の関係に対しての異物としてチャーミングな存在感を放っていました。

英語・日本語のテロップが手作業のスライドで映し出されていて、味わいがありました。

図案

図案

イデビアン・クルー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/10/10 (金) ~ 2014/10/12 (日)公演終了

満足度★★★★

劇場空間を活かしたダンス
格好良さとユーモアが両立したダンスと、劇場空間や照明を巧みに用いた演出が組み合わされた魅力的な作品でした。

左右袖と天井と舞台奥に暗幕が垂らされているだけの素舞台でゆっくり歩く女性ダンサーと、舞台の袖から反対側の袖へ駆け足で通り過ぎる静かなシークエンスから始まり、少しずつダンサーが現れビートに合わせて体を左右に揺らす所から次第にダイナミックな動きとなり、その後も静/動、コミカル/シリアスの対比がバランスよく展開し引き込まれました。

途中で幕が全て上がり、ステージをコの字型に囲む1階分高いバックヤードの空間が現れ、そことステージで同時並行で踊る、奥行き感のある空間演出が印象的でした。ステージ上のエリアを様々に区切ったり、バックヤードの設備配管を照らしたりする照明がスタイリッシュで良かったです。

賑やかな群舞も魅力的でしたが、舞台奥に横1列に並んだり、列になって歩くといったシンプルな表現が強く印象に残りました。

それぞれのダンサーに役柄とまでは行かないもののキャラクターの設定がされていて、様々な人間関係のやりとりがユーモラスに表現されていて楽しかったです。
70〜80年代的な雰囲気の、少しレトロな衣装がチャーミングでした。

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