満足度★★★
老いと死
老いや死、孤独といったテーマを少々ブラックなユーモアで描いた作品で、2人芝居としては独特の構成が新鮮でした。
叔母から死期が近いとの手紙を受け取った甥が40年ぶりに会いに行き看病生活を送る様子を描いていて、第1幕は特別大きな事件は起こらずに淡々とエピソードを重ねて行き、第2幕で意外な方向へ話が動き出す物語でした。途中まではコミカルな雰囲気で、終盤ではハートウォーミングな雰囲気となって盛り上がるのですが、個人的にはブラックなテイストのまま終わって欲しかったです。
甥だけが喋り続けて叔母はほとんど喋らないという台詞の扱い方が大胆で、台詞自体も死にまつわるシニカルなものが散りばめられていて、くすっと笑える感じが楽しかったです。第1幕だけで20場以上ある小刻みな場の構成が、2人の生活をスナップ写真や日記風に見せていて印象的でした。
温水洋一さんは人付き合いの苦手な冴えない中年男らしさが出ていて良かったです。台詞の文体のせいなのか、演技が少々道化じみているように感じたのですが、後半の展開でそれが腑に落ちました。江波杏子さんは台詞も動きもほとんど無い中、表情やちょっとした動きで様々な感情を表現していて、少女のような可愛らしさも感じられて魅力的でした。