ペンギンアートの観てきた!クチコミ一覧

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新・ワーグナー家の女

新・ワーグナー家の女

Brave Step 

アトリエ第Q藝術(東京都)

2023/08/30 (水) ~ 2023/09/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/08/31 (木) 14:00

価格5,000円

ジークフリート・ワーグナーの妻であるヴィ二フレッド・ワーグナー。
彼女の証言を聞くため、バイロイトで開かれた委員会。
そこには証言台に立つ娘のマウジ(フリーデリント・ワーグナー)と再会し、
当時ヒトラーのナチス政権、ユダヤ人迫害などの真実を独自の視点で物語る。
ピアノの生演奏とR.ワーグナーの楽曲が散りばめられた、クラシックファンにも嬉しい世界観が広がります。上演時間は休憩なしの2時間ちょい…少し長かったかな。

ネタバレBOX

今作品は自身もクラシック音楽をしている影響からか、
主演女優2人(ワーグナー家)の長ゼリフも心地良く感じました。
独白に関しては台詞の古典的な言いまわし。この台本が好きですね。
滑舌の良さもさることながら、テンポ感が良い。
観世さんの品のある低声域と新澤さんの少し鋭った強めの発語が舞台全体を引き締めます。

特に良かったのは、小劇場の狭さを感じさせない照明の使い方。
ピアノの音響効果とリンクして、非常に繊細な光の魅せ方なんです。
場転から最後のシーンまで、効果的にキャストの配置や当てるポイントを工夫されています。
細部にこだわった視点から、例えばトスカニーニとフルトヴェングラーの序盤の登場ですが、
照明時に指揮を振りながら登場するのであれば、ピアニストと呼吸を合わせて
アイコンタクトやテンポ感をもっと同調させるように演じるともっと良かったかな。
のちにフルトヴェングラーの指揮も相まって、
ライバル達の指揮とピアノから、周りのキャスト陣のパフォーマンスを更に広げて…と言うのも、
舞台に拡がりが出来てくるように思う。
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 14:00

エンタメ系のお笑い作品だと思って観始めましたが、
サチ子さんの第一声がとても良い声で、芝居にグッと引き込まれました。
声圧のある落ち着いた通る声。劇団の大黒柱ですね。

作品内容はとてもシンプル。説明欄にも記載されているように、
亡くなってしまったサチ子が夫の治の前にロボットとして現れる。
死んでからさせたかった100のコトをミッション形式にして、1つずつ家族や仲間たちと
協力して叶えて行く。それが治のためにもなっていき…あとは乞うご期待!

ネタバレBOX

オープ二ングでは、ダンスときらびやかな照明が物語の期待感を高める。
治とサチ子のテンポ感も観ていて飽きないが、特にサチ子さんの笑かすところ。落とすところ。泣かせるところ。
ロボットだけに表現が入っても役の土台がブレず、常に劇団員たちの中軸として機能している。
夫婦だけで成立して行けそうな濃さに、更にアクの強い脇たちが物語を固めます。
小劇場で比較的響きやすい会場に、若手俳優の張った声が少々ミスマッチだったかな。
張るところがあるのは勿論良いのですが、配役作りが殆ど同じように感じました。ノリが似ているというか。
サブキャストも誰が演じても同じようにならない繊細さが、芝居の中でもう少し感じられるともっと良いです。

最後にこの日は、主題歌を歌っている相澤香純さんのミニライブも入るラッキーデーでした。
相澤さんのことも初めて知りましたが、話し声は結構強い胸声なのに、歌声は頭声多めの柔らかい声質。
笑って泣いて、ほっこりしたてんこ盛りの内容だったので、5つ星付けさせて頂きます。
ギラギラの月

ギラギラの月

プレオム劇

ザ・スズナリ(東京都)

2024/04/03 (水) ~ 2024/04/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/04/04 (木) 19:00

価格5,000円

19年前に書かれた故中島淳彦氏の脚本。
劇団も脚本も初見での観劇となりましたが、昭和観あふれる舞台の上で本当に生活しているかのような女優たちの自然な演技。スッと大泉サロンの世界に入り込んでしまいました。
その役の個性や人物描写が色濃く描かれるだけで、他人の心は温かくなったり、興味関心がどんどん湧いてくる。それを見事なクオリティで上手く魅せている作品です。

ネタバレBOX

指定席が舞台の目の前の席…幸運でした。
暗転時は三日月に照明を照らし、畳に陰影をつける演出が良いですね。
大泉サロンの各部屋にも小さな三日月模様がついていて、本作品のタイトルにマッチングさせている様子が見て取れます。この二階の部屋から階段・廊下のスペースで出はけを円滑にしていて、視覚的にも見やすかったように思います。

そして、ハートランドからプレオム劇時代を築いた役者たちの歴史の様な、重みを感じます。
良い環境で芝居が出来るってこういう事なんだろうな…と帰路につく間考えました。
Strange Island

Strange Island

Nakatsuru Boulevard Tokyo

サンモールスタジオ(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/20 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/18 (月) 19:00

価格5,500円

新宿のサンモールスタジオ。今年もお世話になりました♪
今日の公演はお客さんの数か、座った位置なのか、舞台セットなのか…いつもよりこじんまりとした印象を受けました(ストレンジ現象なのか)。
このストレンジアイランド…確かに表町と裏町に住む奇妙な住民のいざこざ社会に巻き込まれる政治コメディなのですが、2時間半の長編作を配役独自の視点で違和感なく作り上げらえています。世界観はファンタジーだけど、根幹は政治政策。格差社会を生きる人々が現市長を引きずり下ろすために、この世界を生き抜くために闘う物語です。

ネタバレBOX

『どんどん』先が気になってしまう…これは、登場人物の持っている正義と悪。
役の印象が見方・捉え方によって、物語が進む毎に変化していくという点。そして観客側も共感するであろう現代社会にも挙げられる「税金」「心の貧困」「ルッキズム」など、タイムリーな話題。こうした身近な話題を演出意図に組み込んでいる所に関心します。
役者陣も癖の強いキャストから正統派女優までバラエティに富んでいてバランスが良く、魅せ方が上手です。小劇場ならではの強弱をつけた声量・台詞の抑揚やトーン。こういった役者たちの中で揉まれていくと若手も『どんどん』上手くなるだろうなぁ。
チョビ

チョビ

ここ風

シアター711(東京都)

2023/07/05 (水) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/06 (木) 14:00

価格4,000円

主人公チョビを中心に繰り広げる「夏のひと夜」
舞台設定、配役、脚本・演出など総合してレベルが高いです。
他の舞台と何が違うのだろう…やはり台本と演出の流れが「自然」だからではないかな。
配役にも無理がなく、チョビの日常に各々の役たちが生きている風景を私たちが垣間見ている。
この世界観が「自然」だからこそ、徐々に感情移入して、最後は心がじんわり温かくなる。
今年の夏は良いスタートをきれました!

ネタバレBOX

シアター711の古典的な劇場と相まって、和室の舞台が映えますね。
カエルの泣く声、洗濯機の音、物語が始まりが本当に自然で映画の1シーンの様。
チョビの脚本は、話を強引に引っ張っていない所に品性を感じます。
例えば兄弟ではなく、養護施設で育った仲間たちであること。
施設が経営不振で、チョビ本人がなんとかお金を作ろうと里親の所へ養子縁組に入ったこと。
後に母親が経営していたレストランがどうなっていくか。川でおぼれた真意など。
場転の切り替えも現在と過去が分かりやすく自然なんです。よく練られた脚本だと思います。
鹿鳴館

鹿鳴館

日本大学芸術学部演劇学科 令和4年度劇場実習

日本大学藝術学部 江古田校舎北棟中ホール(東京都)

2023/03/16 (木) ~ 2023/03/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/03/18 (土) 14:00

日芸の演劇学科による実習公演。三島由紀夫の戯曲を全幕。
北棟の中ホールは凄い劇場。舞台の奥行きが広くて客席からも観やすい。
しかもこの席、手前からテーブルを出す事も出来る贅沢さ。
舞台美術、照明、音響、衣装も学生演劇とは思えないクオリティ。
芝居と言うよりオペラを見ている様な気分になりました。

鹿鳴館の中で行われる夜会で繰り広げられる政治と愛。
愛憎と陰謀が錯綜する男女の物語では、これぞ「俳優芸術」と言わんばかりの
長ゼリが、演劇学科の学生にとって大変に難しい課題となったのではないだろうか。
演劇を学問として修めるに相応しい作品だなと伝わってきた。

ネタバレBOX

舞台演出…緞帳・袖幕を使わずオンとオフを使い分ける魅せ方。学びになった。
開演時の役者の第一声は、もっと声が飛ぶと良かった。始まりを認識させる意味で重要と感じる。
閉幕時の伯爵と朝子。舞台装置が飛ばされ、最後は中央スポットと踊る2人だけが残るシーンは
ラストに相応しい高揚感を感じたものの、音響が消えてから下手に捌けるのは違和感があった。
音響の小節終わりと共に、二人が舞台中央に残りつつ…暗転または、その後キャストが上下に寄る方が個人的には綺麗な終わり方かなと感じた。
親の顔が見たい

親の顔が見たい

劇団昴

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/08/30 (水) ~ 2023/09/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/08/31 (木) 19:00

価格5,500円

「いじめ」から考え得ることの大切さを痛感させられる秀作。
テーマは重いのですが、話の筋はとても分かりやすい。
自殺した中学生の残した手紙(遺書)には、当時の仲間達が名指して書いてある。
そこで学校側は事情を聞くために、急遽会議室へと集められた親たち。
それぞれが自分の子どもを擁護し、保身に走る余り様々な行動を見せ始める。
いじめ→自殺→そこから見えた親たちの本当の顔とは…まさに親の顔が見たいよ!

ネタバレBOX

東京芸術劇場で公演とは、観る側も演る側も気合が入りますよね。
そんなシアターウエスト公演ですが、舞台装置は学校を再現したパネルのみ。
今回の作品の規模を比較すると、必ずしも適切な会場だったかどうかは疑問です。
もう少し小さな舞台でも見応えがあって充分かなと思いました。

劇団昴の団員ですが、
ベテラン勢の自然な演技から思わず魅入ってしまう均整のとれた配役。
演技っぽくない演技。これがリアルで心情にスッと入って来るような品性を感じます。
台詞のテンポ感や相手との間も耳馴染みのする良い芝居なのですが、
やはり舞台の影響か、控えめな台詞の立ち合いでは聞き取りにくかったです。
そこは恐らくこう言ってるんだろうと想像の中で処理していましたが、
後ろの席からは少々ご不満の声が聞こえたり・聞こえなかったり。。

音響には信号機や車の音など、自然音を上手く使った表現も良かったと思います。
こういった社会的テーマを盛り込んだ舞台は、是非是非現役の中高生に観てもらいたい。
そんな風に思える作品でした。
ロリコンとうさん

ロリコンとうさん

NICE STALKER

ザ・スズナリ(東京都)

2023/08/30 (水) ~ 2023/09/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/09/02 (土) 19:00

価格3,900円

小児性愛=ロリコンをひた隠しするも、世間の認識や偏見てこういうもの。
世の中のロリコンはロリコン当人にしか分からないもの。
そんな僕らが、この社会でどう他人を愛して行けば良いのか。
少数派のセクシュアルな意見を、明るくポジティブに捉えて観客に訴えかける。
ポップなネーミングだけではない奥深さに、思わず良い意味で期待を裏切られる…そんな名作の誕生です。

ネタバレBOX

作品名から、実は全く期待していなかった私ですw
会話のテンポ。特にキャストが本当にロリコンなんじゃないかという生々しさに驚き。
主役・脇役関わらず平等で強い個性。
何故、小学生役がおじさんの配役をしているかという終盤での伏線の拾い方。
実際のロリコンの方に会って取材したという情報の強みも相まって、単なるロリコン好き作品ではない
一本筋の通ったイトウシンタロウ氏の劇作品です。想像より斜め45度を行ったかな。
所々のキャッチ―な台詞・不意に来る笑いのエッセンスも、作り手の性格がよく出ているように思う。
キャスティングも粒ぞろいで楽しく観劇させて頂きました。ブラボー♪
磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/13 (月) 19:00

警視庁生活安全課で起こるドラマ演劇。
「磁界」とは何だったのか…なるほど、最後に繋がる台詞で妙に納得。
物語の終着地はどこで落ち着くのか…
筋道立てた2時間の芝居に途中で間延びするかと思いきや、そこは役者の力。
キャスト陣も含め、写実的な要素が役と舞台とも相まって良い色合いを醸し出していた。
代表曰く「会話劇」ということで、小劇場でなければこの世界観は出ないように思う。
作品の終わり方、個人的にあまり好きじゃなかったのですが「良作」である事に違いありません。

龍昇企画 父と暮せば

龍昇企画 父と暮せば

ストアハウス

上野ストアハウス(東京都)

2023/01/25 (水) ~ 2023/01/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/01/26 (木) 19:00

小劇場の2人芝居から、スケールの大きな作品へと仕上がりました。
上演時間が1時間以上あるが、場転が少なく観客の集中力を途切れさせない
演出&演技はプロフェッショナルだと思います。
舞台となる広島弁はとても流暢だが、時折捲し立てるようなセリフが少々聞き取りにくい。
けれど、それを感じさせない場の空気間が、会場で観る最高のエッセンスにも感じられるのだ。

ナイゲン(にーらぼ版)

ナイゲン(にーらぼ版)

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2023/04/06 (木) ~ 2023/04/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/04/11 (火) 14:00

国府台高校の学園祭実行委員による内容限定会議、略して「ナイゲン」
実話を基にした作品とのことで、鴻陵祭の学校演劇など巡ってみたい気持ちに。

文化祭の出し物を変更しなくてはならない中、各クラスの代表者が押し付け、蹴落とし合う。
とてもシンプルな筋書きの中に、個性的な人間関係や台詞の伏線回収で妙に納得し、
クスッと笑いがこみあげてしまう、軽快なリズムのやり取りは面白かった。
何度も観ると印象も変わってくるかもしれないが、今回は単純に芝居が長く感じました。
会議の中で役者たちが盛り上がって行くところ。大騒ぎした後、また振り出しに戻り冷静に話し合うところ。
初見ながら後半の予想が出来てしまい、クライマックスへの期待感が薄れてしまった。
2時間を超える作品なので、トイレに行きたくなるのも、この会議を終わらせたいのも登場人物と同じく。
自分も13人の役者たちに混ざって騒ぎたい!そんなシチュエーションドラマでした。

キッズオペラ「ふたりのももたろう」

キッズオペラ「ふたりのももたろう」

若い演奏家の為のプロジェクト

なかのZERO(東京都)

2023/04/04 (火) ~ 2023/04/04 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/04/04 (火) 19:00

実は学生時代の後輩が出演しているキッズオペラ。
子どもも楽しめる「ふたりのももたろう」。原作の絵本があるんですね(会場で販売してました)。
オペラを生で聴くこと。子ども達もなかなか体験しない事なので、取り組みとしては良かったかなと。
中野ZERO小ホールは見やすく、聴きやすく、座りやすくて良いですね。
最後に写真OKということで、会場内を撮影出来たのも良かったと思います。
以下、具体的な感想を書きました。

ネタバレBOX

舞台構成ですが、指揮者に対してピアノとパーカッションでの構成。
オペラのような楽曲ではあるものの、正直楽器編成が残念でした。
アリアでレガートに歌い上げる場面で、ポップなビートを刻まれると気が散ります。
「様式的に」といった声楽分野から離れてしまうので、弦楽器があった方が良いです。
チェロとヴァイオリンが一本ずつでも入ると、また違ったオペラティックなバランスになると思います。

子供向けのオペラとしては歌手のレベルが高くて聴き応えあり。アンサンブルの方が良い声です。
一番若手のプリモは、オラトリオ的な発声で上までアペルトで出すので高音が薄く聴こえました。
女声はどうしても上の音を日本で発音する際、倍音の影響で発語が聞き取りにくいです。
一部は歌詞があっても良いのかなと感じました。役者とオペラ歌手のコラボでしたが、それほど違和感なくまとまっていたと思います。
No Robot

No Robot

One Bill Bandit

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/05 (日) 17:00

価格1,000円

THE・エンタメ演劇。
2時間近い舞台でしたが、中だるみせず最後まで集中出来ました。
作品の内容が濃い…とは言えませんが、テンポ感・楽しませ方はよく考えられてます。
手間のかかったであろう台本と演出には、当然チケット代1000円という対価には見合わないが、
お客さまへの「もてなしの精神」が、満席を呼ぶ力になっていると感じました。

「モモ」

「モモ」

人形劇団ひとみ座

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2023/03/23 (木) ~ 2023/03/29 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/03/28 (火) 19:00

75周年記念プレ公演という事で初観劇。
「モモ」は何となく物語を知っている程度でしたが、
人形劇は全くの初心者なので、楽しみにしておりました。
殺伐とした感じが全然ないのは、恐らくスタッフさん含め長い歴史の中で
皆さんが家族みたいになっているのかなと。仲の良さが伺える芝居です。

初見としては、主役の「モモ」「ジジ」の2トップの掛け合いやセリフ回しが
快活で、アニメのアフレコを舞台で聴いている様な心地よさがありました。
音楽と歌もPOPで可愛い。暖かく、まとまりがあって良い歌なのです。

自分の座席が真ん中よりも後ろだった為、舞台を見下ろすような形で観劇しましたが
欲を言えばもっと前側の席から、人形だけが映えるように観たかったかな。
席が狭く、お隣と結構密着しながら…と言うのも少し気を使いました。
総じて心が温まる公演であったことは違いありません。

或る女

或る女

演劇企画集団THE・ガジラ

シアター風姿花伝(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/06 (木) 18:30

大正時代の長編小説をお芝居にした内容です。
初見でしたが、3時間にも及ぶ超大作。休憩挟むけど長いね。
まるでオペラのような2幕編成ですが、音楽や歌唱の代わりに怒号や発狂。
舞台装置を叩く音やたばこの煙が臭い立つ、悍ましい世界観がそこにある。
主演を演じた早月葉子役は殆ど出っ放し。倉地三吉との掛け合いも凄いパワーを感じる作品でした。

ネタバレBOX

開場してから暗闇の中で少女がじっと佇んでいる。
止まない赤子の泣き声と、ぼんやり映る照明…ここは地獄だろうか。
早月葉子の狂った世界観がよく出ていたと思います。

芝居の内容はWikiで検索して頂くとして、
見事に原作を3時間でまとめ、重く抽出した癖の強い舞台でした。
薄暗い中での掛け合いなので、動きは多い様に見えて簡潔。
→煙草を吹かす。マッチでろうそくに火を付ける。お酒を飲む。
この3つの動きがやたらと多く、特に火をつけるシーンは観客の目線が明るい方向へ向くので
毎度毎度、少しくどい様にも感じます。

音響と舞台装置の使い方ですが、急な衝撃音・音量の大きさに最初ドキリとしました。
演出効果かなと容認するも、後々になって地下の扉を何回も開け閉めする音が気になってくる。
船の出入り口や、自宅の収納、移動通路など使い勝手が良いのは分かるけれど…繊細さに欠けるように感じた。
讃美歌の音量も気になります。何回も同じパターンで来られるとガサツに感じます。
何パターンかの入りは、弱めから入っても良いんじゃないかな。

あと私の個人的なところですが、1シーンくらいは明るい照明で役者たちの顔を観たかったです。
丹下左膳'23

丹下左膳'23

椿組

新宿花園神社境内特設ステージ(東京都)

2023/07/11 (火) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/11 (火) 19:00

「姓は丹下、名は左膳」お決まりの科白が終演後も耳に残る。
真夏の夜、花園神社の野外劇・舞台初日にて約3時間の椿組公演を観ました。
近くに座っていたお客さんが「お祭りみたいで楽しいね」と一言。
そう、夏祭りには欠かせない太鼓と笛の音、キンキンに冷えた缶ビールとお茶が販売されて
劇団員からも直接買うことが出来ます。うちわで仰いでもやっぱり熱い!熱中症対策にお気を付けください。
以下、本公演の感想です。

ネタバレBOX

丹下左膳は大衆文学や時代劇などに登場する、左腕一本の架空の剣士。
時代劇を観るのは今回初めてだったが、想像以上に手が込んでいる舞台装置。
客席から役者がロープで降りて来たかと思えば、組み木の橋が崩れ落ちて龍蛇が現れるシーンは圧巻。
芝居はセリフ回しが古典的で、アンサンブル(乞食や一座)が一同に発すると言葉が聞き取りにくい。
(斉唱はむしろ音程がまばらな方が雰囲気があって良かった)
殺陣の演技が爽快で、皆が剣を持ち戦う場面は観ていて気持ちが良かった。
初演の1981年から42年、当時とは気温差もかなり大きいとは思うが
夏が来るたびに思い出せるような、季節を感じる1作品となった。
La Vita é Bella ──とある優等生と壊れた世界

La Vita é Bella ──とある優等生と壊れた世界

劇団東京座

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2023/06/01 (木) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/01 (木) 18:30

「La vita è bella」これは「Life is beautiful」のイタリア語。
「人生は美しい」と言う直訳の副題には「とある優等生と壊れた世界」
一筋縄ではいかない人生には、自分の思い通りにならない事が沢山ある。
思春期ならではの葛藤、自己同一性、両価的感情、恋愛感など
想像以上に生々しい描写が舞台上で表現される。シンプルだが奥深い。
イタリアオペラの持つ、知的でずる賢いイタリア人女性と詩的で情熱的なイタリア人男性。
これを田舎の青年たちに照らし合わせて観てみると、より良作に感じられると思います。

ネタバレBOX

一見、日本の田舎話と西洋音楽の組み合わせはミスマッチかと思いきや
青春群像劇をオペラ作品の音響と合わせたのは心が揺れました。良かったです。
段々と観客側が登場人物の世界に没入して行けるような作品かと思います。

「気になったこと」
冒頭部で声楽曲を音響効果に使うのは、ちょっと無いかな。
音量を下げても、オペラ歌手の声が役者よりも気になります。ドミンゴかな?デルモナコかな?
聡介くんの声と敵対してしまうので、発声がより映えるような選曲をすべきと思いました。

涼子さんの不倫時に入るQuando me'n voだったかな。
あの演出はマッチしていてエロい。脳に刻まれるシーンです。

何度か出てくる聡介くんの弾き語り。
コードが合ってないフレーズが何か所かあって、個人的に気になりました。
せっかく泣ける所なのに成立してないコードで歌が入るとざわざわします。
声楽曲やクラシック音楽をモチーフにしているので、劇中曲も合唱曲のような
選曲にした方が統一感が出るのかなとも感じました。
雨の世界

雨の世界

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/15 (木) 19:30

オフ日でしたので、この時期にぴったりのテーマ作品を2本観てきました。
下北の「劇」小劇場。歴史を感じるローカルっぽい雰囲気が良いですね。
「雨の世界」は、星組を鑑賞。大嵐の中、訪ねた男とその館に住む雨男のお話。
何故、雨男が住んでいるのか。雨男とは何なのか。如何にして雨男になったのか。
ちょっぴりファンタジーで個人的にはこの不条理っぽい世界観、好きです。

ネタバレBOX

意外と嬉しいのが客席に置かれたエコバッグ。
舞台を観たぞって思い出せるし、プレゼント感があって良い案だと感じます。

小劇場ながら、イス→ドア→机→まっさら等、場転を台詞と共に上手に差替える手法は演出家の腕。
そして常時薄明り状態だった舞台に「最後の希望の光」とも言えるような、窓から指す光には
今までの物語って何だったんだろう…って笑ってしまう位の、感動がありました。
雨男の話自体に、面白くもそそられもしないけど、最初と最後の掴みが強烈だからこそ!
良い作品だったなって思ってしまう魔法があると思います。演出を称えるべき劇作。
マギーの博物館

マギーの博物館

劇団俳小

サンモールスタジオ(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/03/11 (土) 19:00

炭鉱労働者の苦難を描いたラブストーリー。
低賃金で働かされながらも生活の為に身を投じるもの。
生きる望みを失わず、愛するものの為に責務を果たそうとするもの。
いずれも彼ら・彼女たちの自尊心【プライド】が、個性的なキャスト陣を色濃く象徴した作品。
舞台演出、美術、演技面では学術的な原理や応用をきちんと汲み上げて創られている様に感じた。

私はこのマギーの世界観とても好き。細かな小道具や古木のフローリング。特徴的なドア。
良い舞台なのですが、強いて言えばどの役者にしても、あの会場であの発声は適切だったかどうか。
歌う。叫ぶ。怒る。笑う。咽び泣く。どれもバンと強い声で、バグパイプのように張り上げている様に聞こえる。
今回の小屋では、もっと繊細な声の色・ニュアンス、間が伝わると豊かな声の意味合いも変わって来るのではないか。
そんな風に観ていて感じました。

引き結び

引き結び

ViStar PRODUCE

テアトルBONBON(東京都)

2023/05/31 (水) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/06/03 (土) 19:00

悪天候の後、交通機関の遅延などが心配されましたが
無事に上演時間に間に合いました。今回は「引き結び」の紬チームを観劇。
紬ぎ結ぶは命の糸…自分たちが今この場に居られるのは、遠い遠い血縁者のおかげ。
人間に生まれる確率が1400兆分の1から辿り辿って…と、コンセプトは壮大です。
開場から暖かい雰囲気で、前説あり物販ありの盛り上がりが熱いです!

以下、公演について

ネタバレBOX

主人公の一輝が、初めて出来た彼女(香澄)を妊娠させてしまう。
出産を覚悟した2人が互いの家族、友達、同居人の幽霊もろもろの絡みが
笑い・涙を織り成すコミカル作品。

そもそも少年漫画のような設定で、キャストの関係性と筋道を
ハッキリと認識出来る感覚になるまで時間がかかった。
個性派役者たちの、よく分からない新喜劇を見せられているような状態。
台本に統一感がなく、シンプルな物語に色んなネタを肉付けしている印象でした。
大衆的なエンターテインメントに近いかな。

役者陣は、総じて声を前に張ろうとする意識が強いです。
大きな小屋ではないのですが、音響は結構大きめ。そのせいもあるかもしれませんが
連日キャストの役者は喉を傷めやすいだろうと心配になりました。
若さ溢れるパワーに押されたせいか、終幕では生まれてきたかった命や
幽霊の正体とお別れのシーンに、切なく涙をさそわれました。癖強めの劇団です。

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