
『THE DUMB WAITER』
劇団スポーツ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2026/08/20 (木) ~ 2026/08/24 (月)公演終了
実演鑑賞
劇団スポーツによる実験上演シリーズの第二弾。戯曲はハロルド・ピンターの初期作だそうです。僕は初見でした。タイトルは「料理昇降機」。執筆が1957年とのことで、この名称にピンと来ない人も多いはず。二階建て以上の飲食店で、厨房からフロアへ料理を運ぶエレベーターのような機械を指します。完全に余談ですが、千駄ヶ谷にあるホープ軒(ラーメン屋さん)で見た記憶があります。とにかく、その料理昇降機が作品タイトルで、劇中のギミックとして登場。ワンシチュエーションものの二人芝居です。

木ノ下歌舞伎「心中天の網島」アクセシビリティ版
一般財団法人松本市芸術文化振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2026/08/05 (水) ~ 2026/08/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2015年初演、2017年再演を経て、2026年が三度目の上演となった本作。今回は「アクセシビリティ版」と銘打ち、字幕、手話通訳、音声ガイドなど、多くの鑑賞サポートが導入されています。元々木ノ下歌舞伎は、古典の名作を現代の人々へどのように伝えるか? に注力してきた団体なので、アクセシビリティへの積極姿勢は容易に理解できます。
個人的に三度目の観劇になりますが、とても素晴らしい上演でした。全編を通して、各シーンの解像度が高く、ここで何を表現し、どう物語が紡がれていくのか? が客席へ明確に伝わってきます。現代口語、歌舞伎で使われる言葉、糸井さんが作詞した歌詞など、複数の言語で上演台本が構成され、いま思うと、全編リズミカルに流れていく心地良さ、緩急なども非常に効果的でした。俳優たちも素晴らしく、初演から「おさん」役で出演する伊東沙保さんが特に素晴らしかったです。遊女との恋愛にのめり込む夫・治兵衛への態度や対応など、価値観の異なる現代人に観てもらうのに、とても苦労しそうな役どころを、奇跡的なバランスで好演していました。
終盤のラスト15分ほどは、自然に涙が出てきました。テーマ曲も、ラストへ向けた演出も素晴らしかった。「清濁併せ吞む」という言葉がありますが、人間の存在を、懸命に許容・肯定しようとする名作だと思います。

it’s too late.
終のすみか
カフェムリウイ「屋上劇場」(東京都)
2026/07/18 (土) ~ 2026/07/31 (金)公演終了
実演鑑賞
公演期間が短縮され、台本の再構成などを経て上演に至った今作。作り手たちが元々想定していた形と異なる形で上演されたことは事実だが、それが「どの程度変わったか?」「どこが変わり、どこか変わらなかったか?」などは分からない。実際に上演された作品を観て、その変化について、推察できる部分もあるし、推察した上で「やはり分からない」部分もある。演劇が生き物であることを再認識すると同時に、こういう諸事情も許容する形で、演劇文化が続いていくことを望みたい。それでも「今」を上演する。その結論に至った団体を、僕は評価したい。

朗読劇『紫苑のもみじ』
AOI Pro. サンライズプロモーション東京
日本青年館ホール(東京都)
2026/07/17 (金) ~ 2026/07/19 (日)公演終了
実演鑑賞
「他界した大切な人の声が聞こえる」というSF要素を取り入れた朗読劇。人気声優を多く起用した座組なので、声を重視した物語性も理解できます。それに加えて、生演奏を取り入れたり、映像演出を多用したりと、声で魅せることから更に一歩、二歩進んだ創作を目指しているように感じられました。登場人物たちも、それぞれの関係性や背景を丁寧に描いており、細部にも感情移入できる物語に仕上がっていました。

パール食堂のマリア
青☆組
吉祥寺シアター(東京都)
2026/07/17 (金) ~ 2026/07/20 (月)公演終了
実演鑑賞
冒頭数分ほどのシーンで、物語の舞台となる街に住む人々が次々と登場し、「これから群像劇が始まるぞ…!」という期待感・高揚感が一気に高まります。と同時に、この作品の主役は「街そのもの」というメッセージが発せられているような気がして、僕の中で、この作品との向き合い方がしっかり定まりました。僕固有の捉え方かもしれませんが、今作における冒頭数分は、とても意味深いものでした。
初演から15年の月日が流れて、今もなお同じ役を担い、青☆組作品をしっかり支える劇団員の藤川さん、福寿さんが、とても頼もしい存在に見えました。そして、同じく劇団員の大西さんが演じられた、一人息子と暮らすシングルマザーの役が、全体の世界観を支える重要なキャラになっており、この大西さんも素晴らしかった。土屋さん、箕輪さんも、それぞれ鍵となるキャラを好演していて、今回が劇団化15周年記念公演ということもあり、劇団の総合力・団結力を一層感じられる上演でした。

ここはすべての夜明けまえ
きよらか
新宿眼科画廊(東京都)
2026/07/03 (金) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
俳優・谷川清夏のソロ演劇プロジェクト「きよらか」の旗揚げ公演。団体名もダブル、トリプルミーニングになっていそうで良さげ。演目は、谷川さんが敬愛するSF小説を原作に、一人芝居として再構成したもの。
団体の旗揚げなども含め、全体的に「若手演劇人が意気揚々と挑む新たな船出」のような雰囲気が漂っており、その前向きな挑戦は素直に応援したくなります。約80分強の上演時間で、俳優がずっと語り続けるような構成のため、その台詞量も甚大。公演を無事やり終えたことも、成果のひとつと捉えて良いと感じました。

遠くから見ていたのに見えない。2
モモンガ・コンプレックス
吉祥寺シアター(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/29 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2017年初演の演目を、異なる劇場で同じテーマに挑んだ一作。初演は横浜だったそうで、今回は吉祥寺。会場に入ると、空間の中央に大きな舞台美術がありました。おそらく厚紙のような素材でできているそれは、天井から吊ってあり、テントのような、オブジェのような状態で、そこにありました。その四方を囲むように客席が設置され、観客は座る席を選ぶことができます。四方にはそれぞれ趣向の異なるエリアがあり、上演中にお喋りをしても良いエリアや、字幕モニターやダンス実況が聞こえるエリアなどがありました。
中央の美術に視界を遮られているが、その向こう側では笑い声が起こるなど、どの席に座るか?で作品の見え方が変わってきます。それは、どのエリアに座っても同じで、字幕モニターやダンス実況を通じて作品と触れ合う人たち、感想をささやきながら作品と触れ合う親子など、多様な鑑賞スタイルがひとつの劇空間をシェアする形に。その様子を間近で体験でき、そのこと自体が感動的、かつ刺激的でした。

ある港
some ports
SCOOL(東京都)
2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了
実演鑑賞
公演資料によると、2018年まで演劇ユニット「mimimal」の代表として活動していたミミマルが、新たに発足した演劇団体の旗揚げ公演、とのこと。団体のコンセプト、旗揚げ作品のあらすじなどを読む限り、しっかり準備され、練り込まれた内容に感じられます。ある意味でリスタートのような公演だと思いますし、作り手側も意気揚々と試行錯誤をしている(←変な日本語ですが、そう感じました)印象を受けました。

シャープさんフラットさん
キューブ
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2026/06/19 (金) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初演は2008年。ナイロン100℃の15周年公演として、ブラック・ホワイトの2チームに分け、更に台本も書き分けて上演されました。今回はふたつの上演台本をミックスした「ハイブリッド版」とも言えます。
元々すごく好きな一作ですが、18年ぶりに観て、忘れていたシーンが多かったことも事実(すみません)。また、初演の出演者の「影」が見えず、今回のキャスト陣による良さや、初演とは異なる空気感が感じられたことも印象に残りました。

塔の上の
くによし組
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2026/06/18 (木) ~ 2026/06/21 (日)公演終了
実演鑑賞
公演チラシなどから「寓話的な作品?」と思いつつ観劇しました。とある田舎町にある正体不明の高い塔と、その塔に住む謎の人物、そして、田舎町に住む人々にまつわる、少し可笑しくて、少し不思議な物語。中盤から、観客に「…おや?」と思わせるトリッキーな台詞やシーンが含まれ、終盤にそれらを伏線回収する展開。こういう過剰すぎない工夫や見せ方から、國吉さんの演劇創作経験の豊富さを感じます。大小の劇場、劇団公演、外部公演への参加など、様々な作品で作・演出を手掛ける國吉さんらしい一作でした。

どっか行け!クソたいぎい我が人生
ぱぷりか
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2026/05/30 (土) ~ 2026/06/07 (日)公演終了
実演鑑賞
50代目前の母、大学生の娘、母の弟、弟の妻、母の職場の同僚、の出演者5名で紡がれる会話劇。劇中で用いられる方言は広島弁だそうです。母娘の関係性が物語の大半を占め、とりわけ母の心の闇や独善的な行動が色濃く描かれる。シングルマザーである母、一人娘である娘の共依存……と書けばその通りなのだが、そのこと以上に、現代的なモンスター性をここぞとばかりに発散する母親の狂気が強く印象に残った。戯画的な狂気でも、非日常的な狂気でもなく、マンションの上の階から響く怒号のような、現代人の日常の、すぐそばに潜んでいる狂気のように思えた。

THE GAME OF POLYAMORY LIFE
趣向
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2026/05/30 (土) ~ 2026/06/07 (日)公演終了
実演鑑賞
合意のもとで複数のパートナーと深く親密な恋愛関係を築くライフスタイル「ポリアモリー」をモチーフにした一作。初演は2016年とのことで、10年振りの再演になります。僕は初見でした。10年前の客席の反応と、現在の客席の反応に差異があるのか? など、一定時間を置いて上演することに意味がある戯曲だと思います。もし2036年に上演したら……という未来も気になりつつ。
観客各々が、この「ポリアモリー」という概念とどう向き合うか? という、自身への問いかけ、あるいは自身への問題提起に終始してしまうと、やや勿体ない作品に感じました。僕自身も、ついそれについて考えてしまうのですが、上演を観る限り、ポリアモリーはあくまでモチーフであり、本質は「人間は他者とどう親愛を分け合うか?」という、コミュニケーションの根源を見つめる一作に感じられました。

A Perfect Family
果報プロデュース
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了
実演鑑賞
俳優の山本沙羅さんによるユニット「果報プロデュース」の第三弾公演。これまでの二回は既成台本(おそらく山本さんが思い入れのある作品)を上演していましたが、今回はユニット発信となる新作台本の上演でした。観劇後にSNS等で他の方の感想を読みましたが、とにかく観た方の話を聞きたくなる一作でした。

居場所・ドラマの基礎と応用(2プログラム)
中野成樹+フランケンズ
シアター711(東京都)
2026/05/19 (火) ~ 2026/05/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ナカフラによる演劇作品集。様々な短編〜中編を複数集め、2プログラムにパッケージされている。近年のナカフラ公演によく見られる形式で、僕の中では音楽ライブの「セットリスト」のように捉えています。多彩なレパートリーと多様な活動経験を誇るナカフラならではのスタイルと言えるかも。
今回は、公募した「1分間の戯曲」で構成された『ランダム1・2』や、1947年に執筆された秋元松代のデビュー作『軽塵』、ナカフラの代名詞とも言える「誤意訳」としてテネシー・ウィリアムズの短編2作が上演された。

裏緑特技悲喜話(うらみどりとくぎひきばなし)
爍綽と
浅草九劇(東京都)
2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)公演終了
実演鑑賞
俳優・佐久間麻由さんの団体「爍綽と」の第3回公演。外部から作・演出家を招聘するスタイルで、今回はTHE ROB CARLTONの村角太洋さんが作・演出を担います。キャスティングやアフタートークゲストなどから察するに、演劇ファンとお笑いファンを上手に融合させたい、という意図を感じます。実際、客席の反応も上々で、舞台上と客席による良い相乗効果が起きている印象でした。

かいころく
安住の地
WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)
2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
蚕(かいこ)にまつわるお話を同時上演する企画公演。2026年現在でレパートリーが三作あり、この先演目が増える可能性もありそう。当パンによると「元養蚕農家で上演する作品」を依頼されたことがきっかけだとか。これらの演目を養蚕と縁のある土地で上演するとか、想像しただけで激アツだなぁ。
上演前に作・演出の私道かぴさんによる「蚕に関する前説」があり、これも良かった。私道さんが「蚕にあまり馴染みのない方もいらっしゃると思うので、少し解説を」と仰っていたが、上演作品と観客の間に、こういう丁寧なコミュニケーションを挟んでくれるのはとても有難い。

優しい劇団の大恋愛 Volume10『夕焼け色のダイダラボッチ』
優しい劇団
吉祥寺シアター(東京都)
2026/05/09 (土) ~ 2026/05/09 (土)公演終了
実演鑑賞
名古屋が活動拠点の団体で、僕は初見でした。この「大恋愛」シリーズは、事前に出演者へ台本を郵送し、個別稽古を重ねてもらった上で、上演当日の朝から、顔合わせ、稽古、本番、撤収を一日で行う企画だそうです。実質的な拘束日は一日になるのかな…? 小劇場で演劇公演を主催するハードルが徐々に高まりつつある昨今、実現可能かつ持続可能なフォーマットや企画性を模索する姿勢には共感できます。実際に色々な劇団・演劇人が、それぞれの特徴を活かすやり方を模索しているなか、優しい劇団が選んだ選択肢が「この企画」だったのでは。過去には河川敷で上演したこともあるそうで、コロナの影響でしょうけれど、もしこの企画を河川敷で観たら全く違う印象になりそうだなぁ……と想像。

牧神の午後 Version.1
東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2026/05/04 (月) ~ 2026/05/05 (火)公演終了
実演鑑賞
特徴がはっきりしているのに、どこか不思議な感覚に陥る。そんな二律背反に似た感想を抱きました。スーパーやコンビニなどのレジ袋にハサミを入れて形を作り、人形のようなものを作ります。次に、円状に並べた数台の扇風機(送風機)で上昇気流を作り、レジ袋人形を空中に舞わせます。人間、あるいは妖精のように見えるたくさんのレジ袋人形たちが舞う様子を、観客たちがじっと見守る……という流れ。フォルムが人型なこともあり、気流になびくレジ袋人形たちがそれぞれ個別の動きをするので、その様子には命の存在を感じます。個人的に興味深かったのは、その様子を「人間が、自身より小さい生物を観察する」のか、「人間より大きな生物が、人間を観察する」のか、その見方で印象が大きく異なるのでは?という点。どう見えたか?はまさに観客次第なので、感想の幅も広いでしょう。環境を整えさえすれば再現性は高いのに、逆に環境を整えないと絶対に再現できないという意味でも、ひとときの幻想のような不思議な体験ができました。

ファソラシどすこい!タコどすこい!
東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2026/05/04 (月) ~ 2026/05/05 (火)公演終了
実演鑑賞
企画コンセプトに惹かれて、関心を持ちました。観劇前は「相撲甚句に寄っているのかな?」と想像しましたが、そんなこともなく、声楽や合唱など、色々な文化がミックスされ、かつ大人と子どもが一緒に楽しめる「音楽と相撲のイベント」になっていたと思います。特に「お子さんに飽きさせない」工夫は随所に見られ、そういう点も好印象でした。GW、そしてこどもの日の上演なので、来場したお子さんたちが、休み明けの学校で友達や先生にどんな話をするのだろう?と想像すると、ちょっと可笑しい。「劇場で四股を踏みました」とか言うのかな…?

『サボテンの微笑み』
キューブ
シアタートラム(東京都)
2026/03/29 (日) ~ 2026/04/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
登場人物7名が織りなす、静かで、情感豊かな、群像会話劇。ある兄妹を軸に、決して広いとは言えないささやかな人間相関が描かれ、人々の心の機微が丁寧に紡がれていく。上演時間は途中休憩を含む3時間強。派手さで魅せる物語ではないが、全く飽きることなく前のめりで観劇できた。