園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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I Want To Hold Your Hand

I Want To Hold Your Hand

ROCKSTAR有限会社

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2026/04/11 (土) ~ 2026/04/12 (日)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★★

コンドルズ × ハンドルズ による合同コラボ公演も今年で3回目。僕は全3回観ていて、毎年良い刺激をもらっています。障がい者&健常者がひとつのステージで舞い、それをある程度客観的に見た時に、普通に違和感を感じないことが、とてもコンドルズらしい。車椅子の方もいるし、それぞれ不自由な箇所も異なるので、身体の動きは不揃いですが、それがまるで気にならず、妙な統一感やまとまりがあるのです。そこには「支援活動」のような雰囲気はなく、ダンス公演としてのダイナミズムや情熱が渦巻いていました。近藤良平やコンドルズメンバーだからこそ、これだけ垣根のないフラットなステージが創れるのだろうなぁと思うと、本当に、奇跡のような出会い・組み合わせと言えるでしょう。コンドルズの「人を巻き込む力」に魅了された公演でした。

The Closet Revue

The Closet Revue

EPOCH MAN〈エポックマン〉

ザ・スズナリ(東京都)

2026/04/04 (土) ~ 2026/05/04 (月)上演中

実演鑑賞

下北沢のスズナリで一ヶ月のロングラン公演。観劇前は単純に「凄いなぁ」と思っていましたが、観劇後には、小沢さんの覚悟、そして強い思い、それらの現れのように感じました。ロングラン公演を行うことで、じわじわと口コミが広がっていき、テーマに共感する人が観に行ったり、逆に共感できない人が観に行くこともあるでしょう。より多くの人へ、より多様な人へ、作品を届けたいという強い思いがあるからこそ、スズナリでのロングランだと、想像しました。

ネタバレBOX

舞台美術で特徴的なのは、中央位置にある円形状の小さなステージ。タイトルに「revue」が含まれるので、ショー上演のためのステージと捉えられます。その周囲に同じく円形状にワイヤーが吊られ、カーテンのような状態になっています。そのワイヤーに様々な衣装が吊られており、シーン状況によってそれらを用いながら物語が進んで行きます。

テーマは、性自認や性的嗜好に関するカミングアウト。子どもの頃からその不確かさを実感する登場人物が、いじめや自認について悩み、揺らぎ、紆余曲折しながら、自身の心と向き合っていく。社会の中で生きづらさを強く実感し、辿り着いた場所が「秘密を告白できる場所」の The Closet Revue だった。

同じ苦悩や葛藤を持つ者が集い、胸の内を告白できる場所を描いた物語なので、明るいレビューシーンやユーモアを感じ取れるシーンもあるものの、全編を通して見ると、内容は非常にシリアス。後半からラストシーンにかけて、自分たちの生き方やカミングアウトについてなど、真剣な問答や独白がある。その真面目な姿勢、真面目な演出が、真っ直ぐかつ力強い。そして、それらのシーンを、作・演出・出演の小沢さんは、役柄上の「傍観者」として見守り続ける。客席から見ていると、舞台中央に登場人物たち、そこから少し後ろに(役柄としてそこにいる)小沢さん、という構図が、とても印象的でした。祈り、そして慈愛の眼差しを向ける傍観者のように感じました。
GOTTANI!!2026

GOTTANI!!2026

CHAiroiPLIN

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2026/04/04 (土) ~ 2026/04/05 (日)公演終了

実演鑑賞

2025年11月にニューヨークで上演された、踊る小説『橋づくし~The Seven Bridges~』(作・三島由紀夫)の凱旋上演、そして新作となる、踊る詩集『こだまでしょうか』(作・金子みすゞ)の二本立て。力強い群舞シーンが印象的なカンパニーですが、この二作はどちらも10名以下のダンサーで構成され、身体性や人間性により重きを置いたように感じられました。

ネタバレBOX

個人的に印象深いのは『こだまでしょうか』。詩集がダンス作品になる新鮮な驚きもありますし、頭の中で、文字そのものが踊り手に変換されたイメージも浮かびました。創作の幅の広がりを感じますし、ストイックな創作姿勢も健在。ダンスカンパニー として、他に替えの効かない存在だと改めて思います。
日米交流「異文化ダンス記憶の出会い」

日米交流「異文化ダンス記憶の出会い」

セッションハウス

神楽坂セッションハウス(東京都)

2026/03/28 (土) ~ 2026/03/29 (日)公演終了

映像鑑賞

セッションハウスによる、異文化交流・共生プログラム「ダンスブリッジ」シリーズの最新作。今回は配信映像で拝見しました。マドモアゼル・シネマ、近藤良平、米国のダンスカンパニー 「サンディエゴダンスシアター」による3演目。三者三様の差異も興味深いけれど、物語性を重視した表現、という意味ではひと繋がりの印象もあり、統一感があるように感じられました。

ネタバレBOX

上演内容とは直接関係のない余談かもしれませんが、「初見であり、おそらく一度しか観られない」団体や演目、そして、「何度も観ているし、今後も観る機会がある」団体や演目では、主観的な見方が変わってくるなぁ…と考えました。比較対象がある、ないという話でもあるし、その一期一会の演目と向き合う際の、観客の覚悟や集中力の話でもあります。「一度きり」だと、どうしても派手さや見易さに影響を受けがちですが、サンディエゴダンスカンパニーの上演は、もっと骨太な、本質的な表現に感じられました。
天照と倭姫命

天照と倭姫命

人間の条件

高田馬場ラビネスト(東京都)

2026/04/01 (水) ~ 2026/04/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この団体が事前に提示してくれる公演コンセプトやあらすじなどは、とても丁寧で、かつ観劇の参考になるので、興味のある方は公演概要をご覧ください。公演チラシには「本作で挑むのは、神道を切り口とした、日本人のアイデンティティの再定義」とあります。これだけ読むと難解な印象が残りますが、実際の上演には、観客への配慮と見易さへの工夫が多く見受けられます。特に、シーンの意図と表現方法の因果関係が明確で、「いま何が表現されているか?」を想像しやすく、自分の意思で思考を巡らせることの多い、価値のある観劇体験ができました。

ネタバレBOX

舞台構造や演出などに能へのリスペクトを感じ取ることができます。モチーフとの相性もあり、その試みは上手く機能していると感じられました。物語はある種ロードムービー(移動する物語)的な側面があり、天照大神を祀る土地を探す旅に出て、その先々で様々な登場人物たちと出会います。彼らは土地それぞれの神々を信仰しており、天照や大和の国に対して抱く感情も様々。人々がその土地で生きること、そして、その信仰や生活が略奪されたり、服従を強いられることなど、同化や異化、あるいは共生などの諸問題が描かれます。

時代設定は大体2100年くらい前の日本だが、現代に創作され、上演され、現代の観客が観ることで、いまの日本社会が抱える問題をいくつも連想することができます。多くの創作意図が背景にあり、結果としてそうなっていることは理解しつつ、それでも、現代を写す鏡としてしっかり機能していることに感銘を受けました。学びの多い観劇体験に感謝。
第2回KO-KO-KOENJI演劇けんきゅー大会

第2回KO-KO-KOENJI演劇けんきゅー大会

徳島県立小松島高等学校放送・演劇部

座・高円寺2(東京都)

2026/03/23 (月) ~ 2026/03/25 (水)公演終了

実演鑑賞

高校演劇の現役生と卒業生が垣根を越えて参加できるショーケース形式の企画公演。上演すること、鑑賞されること、対話すること、などを経て「高校演劇を楽しく研究しよう!」という意図があるそうです。特に、演劇部を卒業した生徒たちが、その後の人生でも演劇と関わり続けるためには? という問題意識を大事にされています。東京・高円寺で徳島県の高校演劇が観られる機会は貴重ですし、個人的に初見の学校や団体も多く、良い経験となりました。

ネタバレBOX

高校生4演目、卒業生3演目、計7演目を観劇しました。部員の少ない学校は二人芝居を上演したり、部員の多い学校は群像劇や集団パフォーマンスを披露したり、各学校・団体の状況に応じた内容でした。良い意味で、自分の内側で顕在化したのは「これらの上演を高校演劇の文脈で観るべきか?」という問題意識。全体的に「演劇活動とは?」「演劇部とは?」「高校演劇とは?」という、作り手たちの内省的な視点が見える作品が多く、客席に座る大人たちも「高校演劇を研究する」場に参加することができました。
ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

MAO WORKS

インディペンデントシアターOji(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

脚本・演出・出演を兼ねるのが、このユニットの主宰・田村真央さんで、劇の構成やコンセプト的に「主演」と解釈して差し支えないと思います。劇中には、韻を踏むように単語を繋げる「言葉遊び」的な台詞も多く、また、マイクを持って歌うラップシーンの挿入も多数あり、この作者特有の、作風へのこだわりを感じます。団体コンセプトとしても「主宰のやりたい表現を追求する」団体だそうです。

ネタバレBOX

王子小劇場の長方形の空間に円形舞台を作っていて、客席はそれを囲むようにL字型に配列されています。また、僕は初見の団体で、以前の作品のことは分からないのですが、割と物語要素が薄く観念的な内容で、観劇後はやや脳が疲れてクラクラしました。個人的には量子力学の話かな? と感じましたが、全然違ったらすみません。劇中の核とも言える概念として「わたくしの世界(に入ること)」が念入りに描かれますが、僕個人は「その世界の有り様」というか、その世界の具体的な特徴をあまり感じとることができず、その点が残念でした。
川影と半月に、

川影と半月に、

つぁつぁ

おぐセンター2階(東京都)

2026/03/20 (金) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初見の団体でしたが、僕はとても好きな作品でした。会場はおぐセンター2F。古民家をリノベーションした建物で、1Fは食堂兼コミュニティスペース、2Fがアトリエ利用可のスペースになっています(多分)。上演時間約1時間。出演者4名。窓の外は心地良い天気で、観劇環境も良好でした。

ネタバレBOX

登場人物は4人の女性。うち3名は20代前半(おそらく大学生)、1名は70代後半。各々が各々の事情を抱えていて、特に行くべき場所もなく、偶然も重なり、同じ時間を過ごすようになる。70代の女性「まきちゃん」は、普段は面倒見の良い朗らかな女性だが、時折軽度の認知症の症状が見受けられるようになっていた。一緒にお茶を飲んだり、ゆっくりお喋りをしたり、穏やかな時間を過ごす女性たち。だが、あるシーンを境にまきちゃんの姿は登場しなくなり、3人はまきちゃんの故郷を一目見ようと、ヒッチハイクで長崎へ向かうのだがーー。

タイトルにも含まれている「川」が重要なモチーフになっており、忙しい日常や他者とのすれ違い、葛藤、孤独など、私たちの生活・時間の象徴になっている(と思う)。全編を通して、丁寧かつ等身大の表現が多く、作り手たちの日常を感じさせつつ、上手くフィクションに昇華している印象を受けました。僕は、自分たちの小さな日常と正対し、等身大の感情や問題意識を提示してくれる、当人たちの「大切なこと」が丁寧に描かれた作品が大好物で、この作品に感じたのは、まさにそういう感想。そうそう、東京には意外と川が多く、川を見たくなったり、川岸に座り込みたくなったりするよね、などと考えたり。また、僕の父親(故人)も認知症でとても苦しんだので、そういう想いも重ね合わせて観劇しました。

4人の出演俳優は皆さん良い表情をしていて、それをコンパクトなアトリエ空間で観られたことも良かったです。おぐセンターの空間にマッチする存在感でした。

また、団体主宰のときちとせさんが当パンに書かれていたことに深く共感できるので、色々な苦労があるのだろうと想像しつつ、ぜひ創作活動を継続して欲しいと感じています。シンプルに応援したくなる団体や俳優と出会えた機会に感謝。
墓場、女子高生

墓場、女子高生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

テアトルBONBON(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

今更ながら「初演はいつだっけ?」と思い調べてみると、2010年のようです。ENBUゼミの公演であることは覚えていたけれど、上演年は誤認していました(震災以降だと思っていました)。そうか、2010年か〜…。その後、作者の福原さん自ら再演を手掛け、以降も様々な形で再演されています。今回は石澤希代子さんプロデュースによる上演。石澤さん本人も出演しています。

ネタバレBOX

福原充則脚本の感想を書く際はいつも似たようなことを書いてしまうのですが、やはり、言語チョイスの繊細さ&美しさがとても好きです。美辞麗句で飾り立てるのではなく、市井の言葉で飾るスタイル。劇の中盤以降から終盤にかけての物語展開、特に「再度死因を決め直す」シーンなども美しく、福原脚本独特の美学に魅了されました。
ミッキーアイランド

ミッキーアイランド

滋企画

アトリエ春風舎(東京都)

2026/03/09 (月) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

終演後に「滋企画の次回公演は来年3月に『ガラスの動物園』を再演いたします」というアナウンスを聞き、思わずニヤリとしてしまいました。今作『ミッキーアイランド』から『ガラスの動物園』まで、団体が取り扱う作品の幅がとても広い。これもまた、団体や主宰・佐藤滋の特性のひとつなのかも。

外部から糸井幸之介を招き、アトリエ春風舎で上演される妙ージカル(妙なミュージカル)。期待が高まります。

ネタバレBOX

公演チラシに記載されているあらすじどおり、もうすぐ古希を迎える男性ロッカーがライブハウスで腰を痛め、自室のベッドで横になったまま動けず過ごす…という物語。幼少期の母親との思い出、離婚した元妻と出会った思い出など、男の過去エピソードも複数挿入され、男の現在と過去がゆっくり浮かび上がる。中盤に挿入された、長尺の台詞のないシーン(クラシック音楽に合わせて俳優たちが乱舞するようなシーン)や、エンディング的に上演されるテーマ曲『ミッキーアイランド』など、台詞以外で魅せるシーンが多かったことも、糸井作品ならでは。物語の表層的には、愛するロックを追い求めて自由に生きた男の晩年(?)を明るく愛嬌たっぷりに描いているが、その裏側には悲哀や絶望も潜んでいるはず。個人的には「ダメを肯定する」ことも、小劇場演劇の魅力のひとつと考えます。経済力も社会的地位もないが、周囲の人々から愛され、つつましく命を全うしようとする男の生き様に、独自の哲学を見た気がしました。
ガラパゴス

ガラパゴス

キルハトッテ

水性(東京都)

2026/03/10 (火) ~ 2026/03/15 (日)公演終了

実演鑑賞

公演資料を読むと、一本芯がしっかり通っている作品であることが伝わってきます。創作意図もテーマも理解できるし、合理的でありながら、見易さや受け取り易さも意識している。公式情報に載っているためネタバレにはならない…と思いつつ、以降は下のboxに書きます。

ネタバレBOX

タイトルが『ガラパゴス』で、ガラパゴスだからイグアナなのでしょう。いわゆる「ガラパゴス化」の意味合いでこのタイトルだと解釈しています。女性の基本的人権をテーマにしているため、シーン各所や台詞の数々で「自分で決められる権利、そして、その重要性」に触れられています。作品が放つメッセージが点として散りばめられ、それらを頭の中で反芻し繋げていくと、やはり一本芯が通った上演に感じられます。ただ、お話の中盤以降で、シチュエーションやエピソードの数が増えてしまい、やや散漫になってしまった印象も。公演全体の骨格やテーマはしっかりしているため、演劇的な膨らませ方に時間や労力を割くと、よりバリエーションが生まれそう。個人的に、この団体が持つコラージュセンスに魅力を感じているので、今後の創作にも期待しています。
繊維葬失

繊維葬失

人文借景

早稲田大学某所(東京都)

2026/03/13 (金) ~ 2026/03/13 (金)公演終了

実演鑑賞

早稲田大学の敷地内で上演された企画公演。架空のオートクチュールデザイナーをモチーフに、それにまつわる作品や資料の展示会と、演劇の上演会がセットになっています。企画の中心にいるのが架空の人物のため、基本的にフィクションであり、意図的に創作された内容で構成されています。展示会には、人物の年表、肖像、作品などが置かれ、上演会は、同じ会場内で行われ、出演者がその展示会を訪れた設定で進行します。

ネタバレBOX

公演資料を読んだ時に、その企画性に惹かれました。演劇公演の見せ方として新鮮に感じたし、演劇は「いない人の話をする」ことに向いています。アイディアの広げ方にも複数の可能性があると思いました。展示会の中を覗くと、笑いにウエイトを置いた内容に見え、コメディ要素が強い印象を受けました。後半の上演会では、その展示会を訪れた大学生が「分からないこと」をテーマに短編を上演します。この内容も、いわゆる「あるあるネタ」のような雰囲気で、やはり笑いにウエイトを置いており、展示会を含めて全体的に笑いが強めかなぁ…と思わせつつ、最後の最後に「分からないことこそ面白い・惹きつけられる」というシリアスなシーンで締めていました。公演趣旨や企画性も理に適っており、本人たちがやりたいことの輪郭もはっきりしていて、そこへ等身大の問題意識を投影し、コミカルでありながら、それ一辺倒ではない作品。全編を通して、そんな印象を持ちました。
よそほひ

よそほひ

安住の地

元映画館(東京都)

2026/02/11 (水) ~ 2026/02/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「装うこと」あるいは「化粧」をモチーフにした二人芝居。登場人物は二人以上いるので、二人の俳優が複数の役を演じたり、同じ役を二人で担ったりします。40分、休憩10分、45分という構成で、一幕は江戸末期から明治初期にかけての装い(眉剃りとお歯黒など)、二幕は現代の装い(メイクなど)を描いています。どちらの幕も、装うことをモチーフにした人間ドラマで、一幕は時代背景、当時の人々の価値観、心情などを丁寧に描いており、二幕は現代的な家族ドラマ、老いなどを描いています。上演時間はコンパクトに圧縮されていながら、伝えるべき言葉をしっかり台詞に起こし、堅実に客席へ届ける俳優たちの所作に魅了されました。個人的にとても満足度の高い上演でした。

ネタバレBOX

化粧・装いという行為が、時代によって異なる意味を有していたことに改めて気付かされました。これは装いに限らず、時代と共に意味が変化した文化・風習などがたくさんあることの一例でもあります。時間を重ねていくことの意味、継承していくことを改めて考える契機になりました。出演俳優は二人とも非常に説得力があり、至近距離で鑑賞できたことに価値を感じます。一幕のラスト、母親が娘に「とにかく丁寧に、日々を積み重ねていきなさい」という趣旨の台詞を言うのですが、装いという事象を超えて、たくさんの気付きや示唆を得られる、非常に多義的な台詞として胸に響きました。
Cigarettes & Alcohol シガレッツ・アンド・アルコール

Cigarettes & Alcohol シガレッツ・アンド・アルコール

コンドルズ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2026/02/21 (土) ~ 2026/02/23 (月)公演終了

実演鑑賞

コンドルズが本編内に「ラジオ」を導入した公演を何本か観て、更に今作も観て、このスタイルがカンパニーの定番になる必然をひしひしと実感しました。それほど相性の良い、カチッとハマるピースを手に入れたと言えます。コンドルズは元々ダンスだけにとどまらず、コント、映像、音楽、人形劇、等々を組み合わせる、構成要素の多い公演を行っていました。そこへラジオをひとつの軸として加えることで更に流れがスムーズになり、ひとつの番組(プログラム)らしい印象が生まれます。このラジオDJ役をトークスキルの高い勝山さんが担うことで、更にバランスが取れてしまう…という効果が。コンドルズ本編の上演前に、若手カンパニーによるオープニングアクトを上演するなど、「ダンスフェス」として既に完成しているようにも見えるし、まだまだ可能性を秘めているようにも見えます。この公演スタイルをもっと観たいし、今後の進化の様子も楽しみです。

ネタバレBOX

今回のクローズアップは橋爪さん。バーのマスターやマジックなど、分かり易い個性を有している橋爪さんですが、やや意外な一面も見えたりして、なかなか興味深かったです。
#13『惑星Bb◉忘れた凡ての時間たち』

#13『惑星Bb◉忘れた凡ての時間たち』

劇団スポーツ

駅前劇場(東京都)

2026/02/13 (金) ~ 2026/02/16 (月)公演終了

実演鑑賞

劇団の近作を何本か観ています。印象として「コメディ要素を徐々に強めつつある青春群像劇で、公演を重ねるごとに観客の反応も上々になってきている」と感じていました。今作も、観客の反応は良く、適所でしっかり笑いも取れており、青春群像劇である、と言えるのですが、全編に流れるトーンは近作数本と異なり、やや内省的になっています。十年前に事故で亡くなった演劇仲間が幽霊となって再来する…という物語なので、友人の死を取り扱うが故のトーンとも言えますし、劇団が元々やりたいことが、コメディよりもこちらにあるのでは? と推察することもできます。僕自身、否定的に捉えているのではなく、笑いを取り入れつつ多様なドラマにチャレンジできる団体だと思っていて、今後の活動にも注目したいです。ここ数作で団体が取り組んできた、「やり直しを繰り返して、いつか正解に辿り着くコメディ」の延長線上、あるいは発展系にある一作に感じられました。

ヘカベ/ドゥロイケティス

ヘカベ/ドゥロイケティス

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2026/02/12 (木) ~ 2026/02/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観劇後に、原作『ヘカベ』のニュアンスってどんな感じだったっけ? と思い、ネット検索してみると、いま観た上演作品の印象とそれなりに剥離した「悲劇のあらすじ」が表示され、心の中で思わず「……おおお」と唸りました。おそらくAIによる要約なのですが、検索結果として出てきたあらすじは、極めて端的に、かつ要所を押さえた「とても悲劇的な物語」だったのです。ですが、この上演を観ると、AI要約のような分かり易い悲劇では全くなく、むしろ多面的、傍観的、そして複雑に入り組んだ繊細な物語に感じられます。戦争は悲惨だ、悲劇的だ。これを否定する人類はほぼいないでしょう。ですが、それが分かっているにも関わらず、人類は戦争を起こし続け、選択を誤り続けている訳で、そこには相応のメカニズムや因果、背景があるはずです。この上演は、人間同士の争い事や戦争について、多角的な視点から解釈することができます。おそらく観客は自分なりの解釈で作品を紐解き、そこから教訓や論点を導き出すはず。その論点の多さが、議論そのものを不成立にするほど、多くの視点から語ることができます。ひとつの物語として観ても引き込まれ、特定の視点にとどまらず多角的な解釈を導き出し、俳優たちの息遣いにも魅了される。古代のテキストを用いて現代演劇へと接続する、演出家や劇団の功績は見事。シンプルな小道具を組み合わせて空間を形成し、小さな会場を演劇空間として満たす、小劇場演劇の醍醐味を実感できた公演でした。

黒百合

黒百合

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2026/02/04 (水) ~ 2026/02/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

泉鏡花の小説『黒百合』を原作に、脚本は元カクスコの藤本有紀、演出は杉原邦生のタッグで初舞台化。僕は原作小説は未読ですが、脚本を読む限り、泉鏡花のファンタジックなエンタメ心を強く感じました。しっかりした冒険譚で、ラブロマンスやピカレスクロマンの要素も含まれています。一方で「…これ、どうやって舞台化(具現化・可視化)するのだろう?」とも思っていました。どちらかというとアニメ化やCGムービー化に向いているような幻想的な世界観と言えます。

ネタバレBOX

上演を拝見すると、俳優や小道具・大道具のアナログ感を活かしつつ、見立てや想像力を駆使した、文字通り幻想的な世界観を立ち上げられていると感じました。演出を担当した杉原さんが歌舞伎演出に長けていることもあり、観客の想像力を刺激する技法が巧みに用いられています。加えて、独特の艶を持つ俳優がずらりと揃ったキャスティングも見事で、キャスト、あるいは登場人物たちを観ているだけで、物語が客席へ語りかけてくるような臨場感がありました。中心的な登場人物たちはそれぞれ華があり、主役とも言える滝太郎を演じた木村達成さんの色気は特に印象的。僕の個人的な満足度は高く、改めて演出家としての杉原さんの才に魅了された公演でした。
明後日探偵

明後日探偵

岡本セキユ☆シングル芝居

水性(東京都)

2026/02/07 (土) ~ 2026/02/10 (火)公演終了

実演鑑賞

公演チラシに「自作自演シングル芝居」というフレーズがあり、そのメリットを享受した公演、と感じました。自分で書き、自分で演じることのできる人間の特権であり、かつ、その時の表現者の思考・興味・関心・心境などを最小限の時差で作品に注入できる。集団創作であることの多い「演劇」において、自分一人で舵取りできる強みと向き合った日々の末に誕生した作品では…?と想像しました。当事者の岡本セキユさんは優れたパフォーマーでもあるので、彼のハイパフォーマンスを小さめのアトリエ空間で浴びることができるのも、今作の魅力のひとつと言えるでしょう。

記憶の質屋 ほの灯り堂

記憶の質屋 ほの灯り堂

ムケイチョウコク×カンフェティ

神楽坂周辺(東京都)

2026/02/04 (水) ~ 2026/05/03 (日)上演中

実演鑑賞

Locatone(ロケトーン)というGPSの位置情報を活用した音声アプリが導入された野外劇。一定のルートを辿りながら街を歩き、特定のスポットで流れる音声を聴きながら観劇する。かなり手の込んだ仕様になっており、その点でも新鮮な体験でした。ロケトーンというアプリの可能性を感じつつ、演劇とどう組み合わせるか?の前例がないだけに、新しい表現に意欲的な企画公演と言えます。ただ、せっかく街を散策するスタイルなのに、観客が受け身でも体験できてしまう親切設計が、やや勿体ないとも感じました。街中を自由に散策できれば観客の自由度は上がりますが、交通安全面のリスクなども生じてしまうため、その辺のバランス調整が難しいのかも。劇場観劇と馴染みの薄いご新規さん獲得の可能性もある企画なので、今後の動向にも注目したいです。

ガリレオ~ENDLESS TURN~

ガリレオ~ENDLESS TURN~

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2026/01/18 (日) ~ 2026/03/07 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

原作は地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの半生を描いたブレヒトによる戯曲。台本・演出は多田淳之介。漫画&アニメの『チ。』がヒットしたタイミングでもあり、観客にとって興味を持ちやすい、身近に捉えやすい好機の上演と言えるでしょう。静岡県による中高生鑑賞事業の対象プログラムでもあり、若い観客が観劇体験できる機会になったことも好印象でした。

ネタバレBOX

物語は人類の黎明期から始まり、四足歩行から二足歩行へ、道具を用い、火を活かし、徐々に進化する様子を描く。地球や人類、文明などの歴史を俯瞰し、中盤から本題であるガリレオの半生も挿入され、天体や宇宙、そして人々の思想や生活など、多方面から覗き見る人類史に立ち会えた気分に。終盤には、AIの劇的進化による2026年以降の未来の描写もあり、壮大な時間旅行が幕を閉じる。創作にAIを活用し、人類のパラダイム・シフトを俯瞰的に描くなど、モチーフへの興味と観客自身の現実がリンクする内容になっていたと感じます。中高生へ向けた公演の意義を実感できる、適度な咀嚼や楽しい空間づくりなど、随所に愛のある工夫を感じました。

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