園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

MAO WORKS

インディペンデントシアターOji(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

脚本・演出・出演を兼ねるのが、このユニットの主宰・田村真央さんで、劇の構成やコンセプト的に「主演」と解釈して差し支えないと思います。劇中には、韻を踏むように単語を繋げる「言葉遊び」的な台詞も多く、また、マイクを持って歌うラップシーンの挿入も多数あり、この作者特有の、作風へのこだわりを感じます。団体コンセプトとしても「主宰のやりたい表現を追求する」団体だそうです。

ネタバレBOX

王子小劇場の長方形の空間に円形舞台を作っていて、客席はそれを囲むようにL字型に配列されています。また、僕は初見の団体で、以前の作品のことは分からないのですが、割と物語要素が薄く観念的な内容で、観劇後はやや脳が疲れてクラクラしました。個人的には量子力学の話かな? と感じましたが、全然違ったらすみません。劇中の核とも言える概念として「わたくしの世界(に入ること)」が念入りに描かれますが、僕個人は「その世界の有り様」というか、その世界の具体的な特徴をあまり感じとることができず、その点が残念でした。
川影と半月に、

川影と半月に、

つぁつぁ

おぐセンター2階(東京都)

2026/03/20 (金) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初見の団体でしたが、僕はとても好きな作品でした。会場はおぐセンター2F。古民家をリノベーションした建物で、1Fは食堂兼コミュニティスペース、2Fがアトリエ利用可のスペースになっています(多分)。上演時間約1時間。出演者4名。窓の外は心地良い天気で、観劇環境も良好でした。

ネタバレBOX

登場人物は4人の女性。うち3名は20代前半(おそらく大学生)、1名は70代後半。各々が各々の事情を抱えていて、特に行くべき場所もなく、偶然も重なり、同じ時間を過ごすようになる。70代の女性「まきちゃん」は、普段は面倒見の良い朗らかな女性だが、時折軽度の認知症の症状が見受けられるようになっていた。一緒にお茶を飲んだり、ゆっくりお喋りをしたり、穏やかな時間を過ごす女性たち。だが、あるシーンを境にまきちゃんの姿は登場しなくなり、3人はまきちゃんの故郷を一目見ようと、ヒッチハイクで長崎へ向かうのだがーー。

タイトルにも含まれている「川」が重要なモチーフになっており、忙しい日常や他者とのすれ違い、葛藤、孤独など、私たちの生活・時間の象徴になっている(と思う)。全編を通して、丁寧かつ等身大の表現が多く、作り手たちの日常を感じさせつつ、上手くフィクションに昇華している印象を受けました。僕は、自分たちの小さな日常と正対し、等身大の感情や問題意識を提示してくれる、当人たちの「大切なこと」が丁寧に描かれた作品が大好物で、この作品に感じたのは、まさにそういう感想。そうそう、東京には意外と川が多く、川を見たくなったり、川岸に座り込みたくなったりするよね、などと考えたり。また、僕の父親(故人)も認知症でとても苦しんだので、そういう想いも重ね合わせて観劇しました。

4人の出演俳優は皆さん良い表情をしていて、それをコンパクトなアトリエ空間で観られたことも良かったです。おぐセンターの空間にマッチする存在感でした。

また、団体主宰のときちとせさんが当パンに書かれていたことに深く共感できるので、色々な苦労があるのだろうと想像しつつ、ぜひ創作活動を継続して欲しいと感じています。シンプルに応援したくなる団体や俳優と出会えた機会に感謝。
墓場、女子高生

墓場、女子高生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

テアトルBONBON(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

今更ながら「初演はいつだっけ?」と思い調べてみると、2010年のようです。ENBUゼミの公演であることは覚えていたけれど、上演年は誤認していました(震災以降だと思っていました)。そうか、2010年か〜…。その後、作者の福原さん自ら再演を手掛け、以降も様々な形で再演されています。今回は石澤希代子さんプロデュースによる上演。石澤さん本人も出演しています。

ネタバレBOX

福原充則脚本の感想を書く際はいつも似たようなことを書いてしまうのですが、やはり、言語チョイスの繊細さ&美しさがとても好きです。美辞麗句で飾り立てるのではなく、市井の言葉で飾るスタイル。劇の中盤以降から終盤にかけての物語展開、特に「再度死因を決め直す」シーンなども美しく、福原脚本独特の美学に魅了されました。
ミッキーアイランド

ミッキーアイランド

滋企画

アトリエ春風舎(東京都)

2026/03/09 (月) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

終演後に「滋企画の次回公演は来年3月に『ガラスの動物園』を再演いたします」というアナウンスを聞き、思わずニヤリとしてしまいました。今作『ミッキーアイランド』から『ガラスの動物園』まで、団体が取り扱う作品の幅がとても広い。これもまた、団体や主宰・佐藤滋の特性のひとつなのかも。

外部から糸井幸之介を招き、アトリエ春風舎で上演される妙ージカル(妙なミュージカル)。期待が高まります。

ネタバレBOX

公演チラシに記載されているあらすじどおり、もうすぐ古希を迎える男性ロッカーがライブハウスで腰を痛め、自室のベッドで横になったまま動けず過ごす…という物語。幼少期の母親との思い出、離婚した元妻と出会った思い出など、男の過去エピソードも複数挿入され、男の現在と過去がゆっくり浮かび上がる。中盤に挿入された、長尺の台詞のないシーン(クラシック音楽に合わせて俳優たちが乱舞するようなシーン)や、エンディング的に上演されるテーマ曲『ミッキーアイランド』など、台詞以外で魅せるシーンが多かったことも、糸井作品ならでは。物語の表層的には、愛するロックを追い求めて自由に生きた男の晩年(?)を明るく愛嬌たっぷりに描いているが、その裏側には悲哀や絶望も潜んでいるはず。個人的には「ダメを肯定する」ことも、小劇場演劇の魅力のひとつと考えます。経済力も社会的地位もないが、周囲の人々から愛され、つつましく命を全うしようとする男の生き様に、独自の哲学を見た気がしました。
ガラパゴス

ガラパゴス

キルハトッテ

水性(東京都)

2026/03/10 (火) ~ 2026/03/15 (日)公演終了

実演鑑賞

公演資料を読むと、一本芯がしっかり通っている作品であることが伝わってきます。創作意図もテーマも理解できるし、合理的でありながら、見易さや受け取り易さも意識している。公式情報に載っているためネタバレにはならない…と思いつつ、以降は下のboxに書きます。

ネタバレBOX

タイトルが『ガラパゴス』で、ガラパゴスだからイグアナなのでしょう。いわゆる「ガラパゴス化」の意味合いでこのタイトルだと解釈しています。女性の基本的人権をテーマにしているため、シーン各所や台詞の数々で「自分で決められる権利、そして、その重要性」に触れられています。作品が放つメッセージが点として散りばめられ、それらを頭の中で反芻し繋げていくと、やはり一本芯が通った上演に感じられます。ただ、お話の中盤以降で、シチュエーションやエピソードの数が増えてしまい、やや散漫になってしまった印象も。公演全体の骨格やテーマはしっかりしているため、演劇的な膨らませ方に時間や労力を割くと、よりバリエーションが生まれそう。個人的に、この団体が持つコラージュセンスに魅力を感じているので、今後の創作にも期待しています。
繊維葬失

繊維葬失

人文借景

早稲田大学某所(東京都)

2026/03/13 (金) ~ 2026/03/13 (金)公演終了

実演鑑賞

早稲田大学の敷地内で上演された企画公演。架空のオートクチュールデザイナーをモチーフに、それにまつわる作品や資料の展示会と、演劇の上演会がセットになっています。企画の中心にいるのが架空の人物のため、基本的にフィクションであり、意図的に創作された内容で構成されています。展示会には、人物の年表、肖像、作品などが置かれ、上演会は、同じ会場内で行われ、出演者がその展示会を訪れた設定で進行します。

ネタバレBOX

公演資料を読んだ時に、その企画性に惹かれました。演劇公演の見せ方として新鮮に感じたし、演劇は「いない人の話をする」ことに向いています。アイディアの広げ方にも複数の可能性があると思いました。展示会の中を覗くと、笑いにウエイトを置いた内容に見え、コメディ要素が強い印象を受けました。後半の上演会では、その展示会を訪れた大学生が「分からないこと」をテーマに短編を上演します。この内容も、いわゆる「あるあるネタ」のような雰囲気で、やはり笑いにウエイトを置いており、展示会を含めて全体的に笑いが強めかなぁ…と思わせつつ、最後の最後に「分からないことこそ面白い・惹きつけられる」というシリアスなシーンで締めていました。公演趣旨や企画性も理に適っており、本人たちがやりたいことの輪郭もはっきりしていて、そこへ等身大の問題意識を投影し、コミカルでありながら、それ一辺倒ではない作品。全編を通して、そんな印象を持ちました。
よそほひ

よそほひ

安住の地

元映画館(東京都)

2026/02/11 (水) ~ 2026/02/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「装うこと」あるいは「化粧」をモチーフにした二人芝居。登場人物は二人以上いるので、二人の俳優が複数の役を演じたり、同じ役を二人で担ったりします。40分、休憩10分、45分という構成で、一幕は江戸末期から明治初期にかけての装い(眉剃りとお歯黒など)、二幕は現代の装い(メイクなど)を描いています。どちらの幕も、装うことをモチーフにした人間ドラマで、一幕は時代背景、当時の人々の価値観、心情などを丁寧に描いており、二幕は現代的な家族ドラマ、老いなどを描いています。上演時間はコンパクトに圧縮されていながら、伝えるべき言葉をしっかり台詞に起こし、堅実に客席へ届ける俳優たちの所作に魅了されました。個人的にとても満足度の高い上演でした。

ネタバレBOX

化粧・装いという行為が、時代によって異なる意味を有していたことに改めて気付かされました。これは装いに限らず、時代と共に意味が変化した文化・風習などがたくさんあることの一例でもあります。時間を重ねていくことの意味、継承していくことを改めて考える契機になりました。出演俳優は二人とも非常に説得力があり、至近距離で鑑賞できたことに価値を感じます。一幕のラスト、母親が娘に「とにかく丁寧に、日々を積み重ねていきなさい」という趣旨の台詞を言うのですが、装いという事象を超えて、たくさんの気付きや示唆を得られる、非常に多義的な台詞として胸に響きました。
Cigarettes & Alcohol シガレッツ・アンド・アルコール

Cigarettes & Alcohol シガレッツ・アンド・アルコール

コンドルズ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2026/02/21 (土) ~ 2026/02/23 (月)公演終了

実演鑑賞

コンドルズが本編内に「ラジオ」を導入した公演を何本か観て、更に今作も観て、このスタイルがカンパニーの定番になる必然をひしひしと実感しました。それほど相性の良い、カチッとハマるピースを手に入れたと言えます。コンドルズは元々ダンスだけにとどまらず、コント、映像、音楽、人形劇、等々を組み合わせる、構成要素の多い公演を行っていました。そこへラジオをひとつの軸として加えることで更に流れがスムーズになり、ひとつの番組(プログラム)らしい印象が生まれます。このラジオDJ役をトークスキルの高い勝山さんが担うことで、更にバランスが取れてしまう…という効果が。コンドルズ本編の上演前に、若手カンパニーによるオープニングアクトを上演するなど、「ダンスフェス」として既に完成しているようにも見えるし、まだまだ可能性を秘めているようにも見えます。この公演スタイルをもっと観たいし、今後の進化の様子も楽しみです。

ネタバレBOX

今回のクローズアップは橋爪さん。バーのマスターやマジックなど、分かり易い個性を有している橋爪さんですが、やや意外な一面も見えたりして、なかなか興味深かったです。
#13『惑星Bb◉忘れた凡ての時間たち』

#13『惑星Bb◉忘れた凡ての時間たち』

劇団スポーツ

駅前劇場(東京都)

2026/02/13 (金) ~ 2026/02/16 (月)公演終了

実演鑑賞

劇団の近作を何本か観ています。印象として「コメディ要素を徐々に強めつつある青春群像劇で、公演を重ねるごとに観客の反応も上々になってきている」と感じていました。今作も、観客の反応は良く、適所でしっかり笑いも取れており、青春群像劇である、と言えるのですが、全編に流れるトーンは近作数本と異なり、やや内省的になっています。十年前に事故で亡くなった演劇仲間が幽霊となって再来する…という物語なので、友人の死を取り扱うが故のトーンとも言えますし、劇団が元々やりたいことが、コメディよりもこちらにあるのでは? と推察することもできます。僕自身、否定的に捉えているのではなく、笑いを取り入れつつ多様なドラマにチャレンジできる団体だと思っていて、今後の活動にも注目したいです。ここ数作で団体が取り組んできた、「やり直しを繰り返して、いつか正解に辿り着くコメディ」の延長線上、あるいは発展系にある一作に感じられました。

ヘカベ/ドゥロイケティス

ヘカベ/ドゥロイケティス

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2026/02/12 (木) ~ 2026/02/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観劇後に、原作『ヘカベ』のニュアンスってどんな感じだったっけ? と思い、ネット検索してみると、いま観た上演作品の印象とそれなりに剥離した「悲劇のあらすじ」が表示され、心の中で思わず「……おおお」と唸りました。おそらくAIによる要約なのですが、検索結果として出てきたあらすじは、極めて端的に、かつ要所を押さえた「とても悲劇的な物語」だったのです。ですが、この上演を観ると、AI要約のような分かり易い悲劇では全くなく、むしろ多面的、傍観的、そして複雑に入り組んだ繊細な物語に感じられます。戦争は悲惨だ、悲劇的だ。これを否定する人類はほぼいないでしょう。ですが、それが分かっているにも関わらず、人類は戦争を起こし続け、選択を誤り続けている訳で、そこには相応のメカニズムや因果、背景があるはずです。この上演は、人間同士の争い事や戦争について、多角的な視点から解釈することができます。おそらく観客は自分なりの解釈で作品を紐解き、そこから教訓や論点を導き出すはず。その論点の多さが、議論そのものを不成立にするほど、多くの視点から語ることができます。ひとつの物語として観ても引き込まれ、特定の視点にとどまらず多角的な解釈を導き出し、俳優たちの息遣いにも魅了される。古代のテキストを用いて現代演劇へと接続する、演出家や劇団の功績は見事。シンプルな小道具を組み合わせて空間を形成し、小さな会場を演劇空間として満たす、小劇場演劇の醍醐味を実感できた公演でした。

黒百合

黒百合

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2026/02/04 (水) ~ 2026/02/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

泉鏡花の小説『黒百合』を原作に、脚本は元カクスコの藤本有紀、演出は杉原邦生のタッグで初舞台化。僕は原作小説は未読ですが、脚本を読む限り、泉鏡花のファンタジックなエンタメ心を強く感じました。しっかりした冒険譚で、ラブロマンスやピカレスクロマンの要素も含まれています。一方で「…これ、どうやって舞台化(具現化・可視化)するのだろう?」とも思っていました。どちらかというとアニメ化やCGムービー化に向いているような幻想的な世界観と言えます。

ネタバレBOX

上演を拝見すると、俳優や小道具・大道具のアナログ感を活かしつつ、見立てや想像力を駆使した、文字通り幻想的な世界観を立ち上げられていると感じました。演出を担当した杉原さんが歌舞伎演出に長けていることもあり、観客の想像力を刺激する技法が巧みに用いられています。加えて、独特の艶を持つ俳優がずらりと揃ったキャスティングも見事で、キャスト、あるいは登場人物たちを観ているだけで、物語が客席へ語りかけてくるような臨場感がありました。中心的な登場人物たちはそれぞれ華があり、主役とも言える滝太郎を演じた木村達成さんの色気は特に印象的。僕の個人的な満足度は高く、改めて演出家としての杉原さんの才に魅了された公演でした。
明後日探偵

明後日探偵

岡本セキユ☆シングル芝居

水性(東京都)

2026/02/07 (土) ~ 2026/02/10 (火)公演終了

実演鑑賞

公演チラシに「自作自演シングル芝居」というフレーズがあり、そのメリットを享受した公演、と感じました。自分で書き、自分で演じることのできる人間の特権であり、かつ、その時の表現者の思考・興味・関心・心境などを最小限の時差で作品に注入できる。集団創作であることの多い「演劇」において、自分一人で舵取りできる強みと向き合った日々の末に誕生した作品では…?と想像しました。当事者の岡本セキユさんは優れたパフォーマーでもあるので、彼のハイパフォーマンスを小さめのアトリエ空間で浴びることができるのも、今作の魅力のひとつと言えるでしょう。

記憶の質屋 ほの灯り堂

記憶の質屋 ほの灯り堂

ムケイチョウコク×カンフェティ

神楽坂周辺(東京都)

2026/02/04 (水) ~ 2026/05/03 (日)上演中

実演鑑賞

Locatone(ロケトーン)というGPSの位置情報を活用した音声アプリが導入された野外劇。一定のルートを辿りながら街を歩き、特定のスポットで流れる音声を聴きながら観劇する。かなり手の込んだ仕様になっており、その点でも新鮮な体験でした。ロケトーンというアプリの可能性を感じつつ、演劇とどう組み合わせるか?の前例がないだけに、新しい表現に意欲的な企画公演と言えます。ただ、せっかく街を散策するスタイルなのに、観客が受け身でも体験できてしまう親切設計が、やや勿体ないとも感じました。街中を自由に散策できれば観客の自由度は上がりますが、交通安全面のリスクなども生じてしまうため、その辺のバランス調整が難しいのかも。劇場観劇と馴染みの薄いご新規さん獲得の可能性もある企画なので、今後の動向にも注目したいです。

ガリレオ~ENDLESS TURN~

ガリレオ~ENDLESS TURN~

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2026/01/18 (日) ~ 2026/03/07 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

原作は地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの半生を描いたブレヒトによる戯曲。台本・演出は多田淳之介。漫画&アニメの『チ。』がヒットしたタイミングでもあり、観客にとって興味を持ちやすい、身近に捉えやすい好機の上演と言えるでしょう。静岡県による中高生鑑賞事業の対象プログラムでもあり、若い観客が観劇体験できる機会になったことも好印象でした。

ネタバレBOX

物語は人類の黎明期から始まり、四足歩行から二足歩行へ、道具を用い、火を活かし、徐々に進化する様子を描く。地球や人類、文明などの歴史を俯瞰し、中盤から本題であるガリレオの半生も挿入され、天体や宇宙、そして人々の思想や生活など、多方面から覗き見る人類史に立ち会えた気分に。終盤には、AIの劇的進化による2026年以降の未来の描写もあり、壮大な時間旅行が幕を閉じる。創作にAIを活用し、人類のパラダイム・シフトを俯瞰的に描くなど、モチーフへの興味と観客自身の現実がリンクする内容になっていたと感じます。中高生へ向けた公演の意義を実感できる、適度な咀嚼や楽しい空間づくりなど、随所に愛のある工夫を感じました。
THE GREATEST ZICO HIHAN SHOWMAN

THE GREATEST ZICO HIHAN SHOWMAN

自己批判ショー

水戸市民会館 中ホール(ユードムホール)(茨城県)

2026/01/31 (土) ~ 2026/01/31 (土)公演終了

実演鑑賞

茨城県古河市で旗揚げしたコント劇団・自己批判ショーの活動30周年記念公演。会場は水戸市民会館。1ステージのキャパは約400席だそうで、過去公演と比較して華やかな会場を選んでのアニバーサリーと言えます。上演時間は2時間強。コント劇団なので、複数のコントで構成されるオムニバス形式の上演でした。広い客席は30周年を祝う人々で賑わい、「キ、キ、キ〜、客が少な〜い♪」と自虐する劇団テーマソングに象徴される昔の自己批判ショーは、もう存在しないと言えるでしょう。

ネタバレBOX

目に付いたのは、コントの中で自身の役割をしっかり認識している劇団初期メンバーたち。特に鮫島ひかるさんの安定感は笑いを導引する土台になっていました。個人的には、笑いよりも演劇としてしっかりアプローチしようと試みている出演者たちに惹かれた公演でした。
『だくだくと、』No One’s Rite

『だくだくと、』No One’s Rite

果てとチーク

シアター711(東京都)

2026/01/15 (木) ~ 2026/01/18 (日)公演終了

実演鑑賞

シアター711で上演された東京公演を観ました。場内は満席で注目度の高さを感じます。劇中に登場する特異な設定(特別な能力を持った超人の存在や、その影響で世界の理が変わる、など)がサラリと語られ、そのSF的現代を生きる人々を描いている。社会構造の問題や人間関係の歪みなどは現代日本そのままなので、時系列は語られないが、過去でも未来でもなく、現代の物語と言える。

ネタバレBOX

劇中の設定で最も印象的だったのは「感覚共有(フレーズは正確じゃないかも、すみません)」という能力・概念。一人の感覚を周囲の他者と共有させることができ、この能力を戦場で発揮して争いを止めた、という逸話が登場する。これにより、例えばAが足をぶつけると、周囲にいたBとCも足の痛みを共有してしまう。そして、この感覚共有が世界中に浸透した…という設定。人々は傷つけ合うことを止め、世界はそれ以前より平和になった、という解釈もできるが、それでも尚、人々は言葉で互いを傷つけ、相変わらず分かり合えない。この強烈な皮肉、あるいは自虐、そして絶望。この団体の描く強い「当事者意識」を感じる一作でした。
口いっぱいの鳥たち

口いっぱいの鳥たち

理性的な変人たち

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2026/01/15 (木) ~ 2026/01/18 (日)公演終了

実演鑑賞

上演会場で席につき、当パンを開くと、詳細な公演資料が掲載されていました。原作戯曲が下敷きにしたギリシャ悲劇のあらすじ、演出家コメント、翻訳者コメント、原作の研究者のコメント、配役表、用語解説、etc。それに加えて、有料パンフには更に詳細な資料が掲載されており、印刷版と、安価なデジタル版も用意され、丁寧に「解説する」環境が整備されていました。それらを踏まえても、やはり「難解な戯曲」であることは間違いないと感じます。1986年に英国で書かれた原作戯曲も、かなり実験的、かつ前衛的な創作だったのでは…と想像。複数の登場人物たちの日常が断片的に構成され、そこに多くの身体表現も加わり、いわゆる「目の前の物語を追いかける」形の観劇スタイルだと、なかなかに追いつきづらい戯曲です。ただ、だからと言って、つまらない上演ではありませんでしたし、後半の途中から僕なりに掴めたこともあり、刺激的な観劇体験でした。資料によると「憑依」がテーマにあるそうで、理屈では理解できるものの、僕には「社会集団の狂乱」のようなワードが頭に浮かびました。狂気の源は、人か、社会か。終演後には、登場人物たちの背景に潜む、社会や集団について考える時間が長かったです。

インターネ島エクスプローラー

インターネ島エクスプローラー

ヨーロッパ企画

本多劇場(東京都)

2026/01/07 (水) ~ 2026/01/25 (日)公演終了

実演鑑賞

ヨーロッパ企画の本公演。モチーフは「冒険」。タイトルは某ブラウザの語呂合わせ。観劇前に内容や方向性を想像しましたが…、それでも予想は当たらず、客席で「そうきたか〜!」と膝を打ちました。上田誠のマニアックな視点・こだわりを劇団全体で拡張していくような創作が想像できます。この団体の持つ遊び心に共鳴できると一気に視界が開けてくるーー。そういう「共感型」のコメディだと思います。

ネタバレBOX

おそらくですが、小劇場史上最も暗転の多い作品…ではないでしょうか。そこが今作の賛否を分けるポイントになることは十分理解できます。意図を持った暗転のため、その背景を自由に想像することも楽しさだと思いつつ、「暗転が多い」という感想が多数出ることも納得。というか実際多いし。個人的には、ヨーロッパ企画の過去公演にヒントやルーツを感じる設定も多く、劇団が長く活動してきたことの意義を感じます。その意味で、いま上演するべき作品になっているし、いま到達した「集大成でもある、通過点のひとつ」に感じられました。
奇跡かな

奇跡かな

劇団かもめんたる

本多劇場(東京都)

2025/12/25 (木) ~ 2025/12/29 (月)公演終了

実演鑑賞

一本のストーリーラインが比較的まったり伸びていくような群像劇、という印象を受けました。「まったり」という語彙が適切なのか少し自信がありませんが、僕のイメージではお餅やゴムのように、にゅーっと伸びていく感じ。冒頭シーンを出発点に、物語がゆっくり拡張し続けるような。どこまでも伸びていく物語が、終盤意外なところへ着地することも含めて、先の展開が読めず、最後まで新鮮な気持ちで観劇できました。

ネタバレBOX

敢えてカテゴリ分けするのなら「コメディ」が最もしっくりくると思いつつ、観客によってかなり印象が異なる一作だと思います。ある人は「ナンセンス」だったり「やや偏執的」と感じるかもしれないし、別の人は「ピュア」と感じるかもしれません。そういう玉虫色の魅力があります。個人的には、表現者たちの「演劇でしかやれない笑いを追求したい」という気概が感じられ、その姿勢が好きでした。完全に僕の妄想ですが、構想段階、又は稽古途中で「あの人にカエルをやらせたい」と閃いた瞬間の岩崎さんの表情を想像して、つられてニヤリとしてしまいます。
トルネイド

トルネイド

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2025/12/19 (金) ~ 2025/12/25 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇団にとって三度目の上演で三回目の改題となる、ちょっと珍しい作品。二度目の上演となった『彗星はいつも一人』(2003年)の脚本をベースに、時代設定を令和7年に修正して上演されました。「時の流れ」を描いている物語なので、時間軸を現代にすることで、そのテーマが一層際立つ形となり、作品から受け取れるテーマやメッセージはより明確になったと感じます。

ネタバレBOX

三人の幕末武士がトルネイド(竜巻)に巻き込まれたことをきっかけに不老不死を得る、という設定があり、ここから「加齢や老い、そして死を超越した人間の苦悩」が描かれます。劇中で「不老不死を解除する方法」に言及しないため、おそらく三名は永遠に生き続けるのでしょう。ここで重点が置かれるのが、人間同士の交流・コミュニケーションであり、第三者と交流が持てない、人と親愛を交わすことのできない絶望が、観る者の心を揺さぶります。キャラメルボックスの代名詞である「人が人を想う気持ち」が愚直なまでに注入された一作と感じました。出演者は全員劇団員ですが、若手俳優の躍動もあり、世代バランスのとれた魅力的な座組みに感じられました。来年は41年目となる劇団公演が楽しみになる、アニバーサリーイヤーの締め括りと言えるでしょう。

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