園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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紅鬼物語

紅鬼物語

劇団☆新感線

シアターH(東京都)

2025/06/24 (火) ~ 2025/07/17 (木)公演終了

実演鑑賞

45周年記念公演でありつつ、今もなお「新しい新感線を模索する」という姿勢。素直に尊敬に値すると思いますし、その試みをしっかり感じられる点も「さすが」の一言。メインキャストは劇団外から多く招へいし、新鮮味のある座組ですし、全体的に「劇団固有のらしさと新しさの融合」のような印象を受けました。

ネタバレBOX

シアターHは昨年オープンした新しい劇場、とのこと。キャパ700といえど、新感線が使用すると小さく感じるのも不思議な体験でした。全編を通して感じたのは、音響や照明など、スタッフワークがとても安定しており、その基盤があるからこそ、華やかで臨場感のある上演が成立するのだなぁ…ということ。キャスト陣に見どころが多いのは勿論ですが、こういうスタッフワークも含めて、45年目の劇団の強みだと考えました。
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』

アクラム・カーン『ジャングル・ブック』

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2025/06/20 (金) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

視覚面の感想としては、アニメーション映像を多用した演出、動物たちの映像表現などは見応えがありました。そして何より、ダンサーたちの身体表現には強い意思と説得力が宿っていたと思います。物語面の感想は、独自解釈や要素がしっかり挿入されており、アクラム・カーンが今作に寄せる想い、情熱などが伝わってきます。物語だけを抽出して捉えれば、かなり大胆な改訂と言えるでしょう。ただ、賛否が巻き起こるような改訂ではなく、現代社会を強く意識した、いま上演する意義のある改訂作だと思いました。

ネタバレBOX

そして、これは個人的な感想になりますが、アニメーション映像、音楽、物語と、多層的な魅力が掛け合わさることが最大の特徴と頭では理解しつつ、やはり、最も説得力に溢れた表現は、出演者たちの身体表現と、それに特化したシーンであると感じました。本気の身体(という表現が適切かどうか怪しいところですが…)が観客を魅了するという観点から、今作はやはり「ダンス公演」なのだと思います。
『from HOUSE to HOUSE』

『from HOUSE to HOUSE』

終のすみか

劇場HOPE(東京都)

2025/06/19 (木) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「家の中」を舞台にした二作品の再演企画。『Deep in the woods』は昨年の上演を別の劇場で拝見していたので、今回は『I'll BE OKAY』を観劇。観劇後にはタイトルの意味が染みる。上演の特徴として、男女二人の出演者が全登場人物を演じ、特に中心的存在の男性「カキヤ」を二名が交互に演じること。演劇上演においてそれほど珍しいことではないものの、観客の想像力が介入する余地が生まれ、良い効果を生んでいました。

ネタバレBOX

酩酊し財布を失くしたカキヤ。そのことに気付いた朝、カキヤは自宅ではなく既婚者の友人宅にいた。その友人は一年程前から蒸発しており、カキヤは友人の妻・ミサキと奇妙な同居生活をしている。カキヤが財布を失くした前後(と思われる状況)や、ミサキとの会話、友人との会話、などが回想シーンとして語られ、この状況に到るまでの、カキヤやミサキの過去が描かれていく。

昨年観た『Deep in the woods』で感じた「うっすらとした恋情の欠片」みたいな描写が記憶にあり、今作にもそれに似たものを感じました。個人的には『Deep in the woods』より今作の方がその傾向が濃かった気がします。ただ、それを隠れ蓑にして、本質的に描きたいものは別にあると想像します。劇中に「やらかし」という言葉が何度か登場し、凡ミスというか、本番に弱いというか、そういう「間の悪さ」の悲哀も感じました。カキヤもミサキも、失くしたものに固執した日々から離脱できたとして、その先にある続きの物語も気になるエンディングも印象的でした。
Pica

Pica

ハトノス

現代座会館(東京都)

2025/06/15 (日) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

広島の「黒い雨」訴訟をモチーフに、戦中、戦後、そして現代を描いた一作。広島と関連する題材を取り扱う団体ですが、東京を拠点に活動しているそうです。今作で初の広島公演を行うとか。良い意味で若い世代が中心となり創作した一作に感じられ、状況を客観視しようとする姿勢や現代人としての素直な感情の吐露など、戦争を取り扱いつつ、等身大の表現を模索する姿が印象的でした。

ネタバレBOX

1945年8月6日当日のシーンもあるけれど、物語の軸足は「黒い雨」及び「黒い雨訴訟」に置かれています。黒い雨による被曝、及び被曝者の方々のその後の人生、等々。人々の感情、生活、社会との接点、を描いているため、より繊細な感情の行き違いや、社会が抱える諸問題が浮かび上がってきます。広義で捉えれば「反戦劇」と言えますが、より生々しい人間の生き様が感じられる「人間ドラマ」寄りの印象が残りました。

BORN TO RUN

BORN TO RUN

コンドルズ

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2025/06/07 (土) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

タイトル通り、テーマは「RUN」。コンドルズにぴったりのテーマ。RUNをモチーフにした振付、映像、コント、人形劇、等々で構成され、コンセプチュアルな楽しみ方もできる。また、割とスタンダード仕様のコンドルズとも言えるため、昔からのファンには嬉しい構成とも。途中、ロックが爆音でかかるなか踊る群舞シーンがあり、照明や美術も格好良く、コンドルズらしさ全開の空間作りに圧倒されました。ガンズアンドローゼズが似合う日本人といえば、僕の中ではコンドルズです。

ネタバレBOX

小林顕作さんが出演されていました。やはり、顕作さんが出るコンドルズは一味違いますね。
秘密

秘密

劇団普通

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/05/30 (金) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

全編茨城弁で綴られる、とても静かな会話劇。登場人物は主に、両親、子どもたち、孫たち、親戚などで、家庭内での日常が描かれる。物語の起伏は少ないものの、リアリティの高い繊細なシーンが多く、見入っているうちに飽きることなく終演。劇団普通は、その名の通り「普通」を極めようとする団体だと思う。

ネタバレBOX

封建的で意固地な父親。父親を立てることで家庭を保ってきた母親。実家を離れた長男夫婦、同じく実家を離れたが両親の看病や支援のため帰省中の長女、等々。リアルな設定が活きる物語。淡々と綴られる日常がここまで観客を惹きつけるのは、この団体の特性だと思う。ごく個人的なことですが、僕自身の状況とかなりオーバーラップするため、他人事として観ることはできません。この感想が、僕個人のものなのか、多くの観客たちに共通するものか、その辺りに大変興味があります。
チョコレイト

チョコレイト

キルハトッテ

小劇場 楽園(東京都)

2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

僕は初見の団体でした。チラシや舞台美術から「ポップ過ぎないポップさ」というか、ちょいズラしたポップ(を狙っているように見える)を感じます。レトロといえばそうかもしれないし、やや内向性を感じるポップ。本編は、登場人物もさほど多くなく、上演時間も90分。ストーリーも難解ではなく、小劇場で見るには程よい「見易さ」がありました。それでいて「あまり言いきらない(特別な結論を求めない)」作風は、想像力が介入する余地もあり、演劇らしいポイントだと思います。

ネタバレBOX

結婚式を来週に控えた、婚約済みの若い男女が、劇中に起こるアレコレから「結婚とは何だろう?」と、恋愛&結婚について再考する物語…と捉えました。劇作家が述べる「ロマンチック・ラブ・イデオロギーへの懐疑」は、正に創作の根底にあったテーマだと考えます。恋愛観や結婚観は時代と共に目まぐるしく変化しますし、このテーマも多くの人に届き得る汎用性の高いものと言えるでしょう。

そして、小劇場界隈では恋愛をメインテーマに据える作品が極端に少なく、そういう意味でも希少性が高いと感じました。
舞台『祈りの幕が下りる時』

舞台『祈りの幕が下りる時』

ナッポス・ユナイテッド

サンシャイン劇場(東京都)

2025/05/17 (土) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

東野圭吾作品の舞台化に挑む企画「東野圭吾シアター」の第一弾公演。あくまで僕の体感ですが、ここまで高濃度に「ミステリー(謎解き)」に特化した舞台作品は、かなり珍しいと感じます。そのミステリー演劇が終盤一気に「人間ドラマ」へと舵を切る展開は、今作の大きな特徴であり、魅力であると言えるでしょう。殺人事件に関与する登場人物など、かなり難しい役どころもありながら、出演俳優たちの献身的な貢献が作品世界全般を支え、より見所の多い上演に感じられました。

ネタバレBOX

原作小説の、ミステリーとしての魅力は舞台上でも健在で、原作ファンやミステリーファンも納得の上演だと思います。そして、演劇的な見どころとしては、出演俳優たちの「舞台俳優としてこの物語を支えよう」という、自分たちの特技を活かした献身性だと感じました。殺人事件の背景や動機、不幸な巡り合わせなどについて、説得力を伴う上演となったのは、俳優たちの力が大きいと感じています。
『ベイジルタウンの女神』

『ベイジルタウンの女神』

キューブ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/05/09 (金) ~ 2025/05/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

5年前の初演時から大好きな演目でした。この再演版も、初演で感じた魅力はそのままに、より「ならでは」の魅力が増した印象。この出演者ならでは、ファンタジー作品ならでは、映像演出ならでは、物語ならでは、etc…。ベイジルタウンという架空の貧民地区を舞台に、市井の人々の前向きな生命力を描き、「夢を見ることの大切さ」を感じさせる一作だと思います。

ネタバレBOX

公演チラシのビジュアルにある「カートゥーン調」のイラストが劇中でも用いられます。その結果、カートゥーン映像から俳優へ、俳優からカートゥーン映像へ、のスイッチング演出が多用され、より「フィクションだからこその夢物語」が強調された印象を受けました。キャスト陣には初演を経験済みの俳優が多く、そこに再演版から参加した俳優も加わり、見応えも十分。難解すぎず飲み込み易い物語は、後半に進むにつれて大きく揺れ動き、ラストシーンまで飽きることなく楽しめます。劇場体験の少ないお子さんなどを連れて、家族みんなで夢中になってもらいたくなる一作です。
遠巻きに見てる

遠巻きに見てる

劇団アンパサンド

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2025/04/18 (金) ~ 2025/04/27 (日)公演終了

実演鑑賞

岸田戯曲賞の受賞も良い追い風となり、満員の客席で観る劇団アンパサンドの新作公演。会場の熱気もあり、良い環境で上演され、良い環境で観劇できたと思います。ややシュール系とも受け取れる笑いを含んだ作風なので、客席の反応は何よりの支援になるでしょう。

ネタバレBOX

上演時間は約70分ほど。舞台セットの中央に坂道があり、ランニング愛好者たちを中心とした物語。出演俳優たちは皆さん良い存在感を放っていました。中盤から「並行世界」という概念が登場し、現在地と平行世界の境目・繋がりがターニングポイントになります。

安藤さんの作風は割と一貫していて、そこに創作者の強いこだわり、あるいは直感の鋭さを感じます。ある意味で「ここではないどこか」への羨望や、現実への虚無があるのかも(あくまで僕の推測ですが)。かなり昔に聞いた話ですが、シュールコント系を手掛ける作家が「劇の終わり方が最も悩む」と語っていたことを思い出しました。
WALK THIS WAY

WALK THIS WAY

ROCKSTAR有限会社

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2025/04/12 (土) ~ 2025/04/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

コンドルズとハンドルズ(近藤良平&埼玉県内の障がい者たちによるユニット)による合同公演。2024年の第一回公演に続き、今回が二回目にあたる。それぞれ8名ずつ出演者を選抜し、基本的に「コンドルズとハンドルズ1名ずつによるペア(二人一組)」で表現する。オープニングで全員学ラン姿で登場し踊る様子を観ると、この演目が自然体で企画・上演されていることが伝わってきて、それだけで胸が熱くなります。この雰囲気を生み出し、実際にステージ上で表現できることが、近藤さんやコンドルズメンバーの大きな魅力のひとつだと改めて感じました。

ネタバレBOX

この合同公演スタイルは、昨年に続き二度目になりますが、昨年とは参加者が異なり、改めて「参加者ごとに表現が異なる」ことに気付きました。得意なこと、できること、あるいはやりたいことなど、個々人の動機が表現に昇華されているならば、この企画はとても意義があると考えます。見応えのある、そして、躍動感のある、ダンス公演でした。
鎌塚氏、震えあがる

鎌塚氏、震えあがる

森崎事務所M&Oplays

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/03/30 (日) ~ 2025/04/20 (日)公演終了

実演鑑賞

『鎌塚氏』シリーズの第7弾公演。舞台に限らず、オリジナルIPを人気シリーズに育てるのは簡単なことではなく、今シリーズの成功も内容の充実が伴ってこそ。ドラマと俳優で観客を魅了し、随所でしっかり笑わせる、良質なコメディだと感じました。

ネタバレBOX

シリーズものなので、過去作を知るファンが期待する「定番ネタ」もありつつ、初見の観客も置いていかない細やかな配慮を感じます。「この俳優が出演するのなら、こういうシーンを創ろう」という意図が明確(に感じられた)なので、ある種の見易さも伴い、そういう意味でも丁寧な上演だと思いました。個人的には池谷のぶえさんの存在感に(これまで何度も感服していますが)とても感服しました。本当に「底が見えない」舞台俳優さんです。
悲円 -pi-yen-

悲円 -pi-yen-

ぺぺぺの会

ギャラリー南製作所(東京都)

2025/03/26 (水) ~ 2025/03/31 (月)公演終了

実演鑑賞

主なモチーフに「新NISA」と「ワーニャ伯父さん」をセレクトし、現代日本をぶった斬る!(←とは書いてないけれど)演目となれば、自然と期待は高まるもの。実際に最後まで観劇すると、この作品が明示しようとするスタンスが伝わってくるし、色々と興味深く観劇しました。上演中の写真撮影・短い動画撮影OKというのも、一歩踏み込んだ形式だと感じました。

ネタバレBOX

ワーニャ伯父さんの物語背景・人物相関などは割としっかり重ね合わせてあり、とはいえ、場所は日本で時代は現代、投資関連の要素も盛り込み、オリジナルドラマの要素が強い印象。会話劇として比較的飲み込みやすかったと思います。投資そのものに大きくスポットを当てるというより、投資を通して見える日本の近況に憂いている物語と言えるかも。上演会場が珍しい空間で(元々は町工場だった?)、その点も新鮮でした。ただ観劇日が寒い日にあたってしまったのが、ちょっとだけ残念でした。
蹂躙さん

蹂躙さん

サモ・アリナンズ

ザ・スズナリ(東京都)

2025/03/23 (日) ~ 2025/03/31 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

サモアリの「最後の公演」と銘打たれ、キャスティングも良く、会場のスズナリは超満員。こんなに満員のスズナリを体験するのは久しぶり。客席もサモアリの魅力を分かっている人が多く、反応は上々で、物語が進むにつれその熱はどんどんヒートアップしていく。ライブ体験である演劇だからこそ起こり得る、楽しい共有でした。

ネタバレBOX

物語は団体が大切にしてきたレパートリーのひとつ「勧善懲悪ものの学園ドラマ」。伝説の不良がいて、更に伝説の番長がいて、その二人の対決?を軸にストーリーは展開していく。座長の小松和重が舞台上で楽しそうに顔を綻ばせる度に、つられて観客も笑ってしまう。小劇場でしか成立しないこの手の笑いに真摯に向き合った団体でした。またどこかで観られる機会が、あるのか、ないのか。それを楽しみに待ちたいと思います。
花にまつわる考察

花にまつわる考察

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)

2025/03/13 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

観劇前は、どちらかといえば地域交流を主眼としたプログラムかな?…と想像していましたが、地域性もありつつ、より多様性を意識された公演に見えました。「発表会」ではなく「表現の場」であったと思います。

ネタバレBOX

本編中は多少言葉もあるものの、かなりノンバーバルな表現が多い構成でした。直感的に届くシーンもありますが、多層的でグラデーション鮮やかな、深みを感じるシーンも多かったです。身体を中心に、音、演奏、影絵、などなど、出演者による群像シーンは、ひとまとまりのようで、同時に不規則(不定型?)でもあり、観る人によって解釈が膨らみそう。この言葉が適切かどうか悩みますが…、観劇前の想像よりずっと「本格派」な表現に見えました。
幸子というんだほんとはね

幸子というんだほんとはね

はえぎわ

本多劇場(東京都)

2025/02/26 (水) ~ 2025/03/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

はえぎわの25周年公演。資料にも出てきますが、旗揚げ公演初日は観客が4名、途中退出があったのか、終演後には3名になっていたそうです。本多劇場での公演は今回が初とのことですが、それを意外に感じるほど、堅実に人気と実力を蓄えてきた25年間と言えるのかも。

登場人物たちはそれぞれの「不幸」を抱え、直面する現実をやり過ごそうとする。一見無関係だった登場人物たちの相関図が徐々に紐解かれ、断片的な物語が繋がり、大きな広がりを見せる……。

ネタバレBOX

下北沢を舞台に、その街を行き来する人々たちの群像劇。物語が進むにつれ、徐々に全貌が見えてくる構成が巧みで、序盤では断片的だった物語が終盤にはひと繋がりに見えてくる。合唱シーンを入れたり、白いボードに墨絵を描き、それを舞台美術に使用するなど、シンプルで力強いアイディアもはえぎわらしいと言えます。タイトルに込められた意味も含めて、とてもはえぎわらしい、25周年にふさわしい公演だと感じました。ノゾエさんの書く台詞の美しさは、どこかシェイクスピアを彷彿とさせます。
オセロー/マクベス

オセロー/マクベス

劇団山の手事情社

シアター風姿花伝(東京都)

2025/02/21 (金) ~ 2025/02/25 (火)公演終了

実演鑑賞

山の手事情社は創立40周年を迎えるそうで、その蓄積をひしひしと感じる公演でした。演出は劇団主宰の安田さんではなく、劇団のメソッドをよく知る劇団員2名。出演俳優同士によるコミュニケーションも活発に行い、劇団による集団創作の魅力を感じることができる。演目は『オセロー』と『マクベス』の二本立て。

ネタバレBOX

僕の観劇順は『オセロー』→『マクベス』でしたが、個人的にはこの順番で観られて良かったです。『オセロー』は山の手メソッドの魅力を十分感じることができる、とても山の手らしい上演。狭めの舞台空間を俳優たちが身体表現で埋め、かつ「コマ送り」のように各シーンの見せ方が格好いい。改めて「山の手の演劇は唯一無二だなぁ」と実感できる上演でした。『マクベス』は、先に観た『オセロー』と比較すると、劇団特有のメソッドから少し離れて、より独自性を探るような演出に見えました(とはいえ、それでも十分に山の手らしいのですが)。出演者は女性のみで、舞台は円形。その円形舞台を囲むように身体表現でみせるシーンも多めで、コンテンポラリーダンスのような見方もできそう。『マクベス』は日本国内で上演する機会も多く、あらすじや展開などもある程度浸透していることから、より大胆なアレンジがしやすいのも、今回の上演に良い影響を与えているかもしれない。二本立て公演で、双方どちらも観ると、山の手が蓄積してきた40年の歩みが感じられ、二作の共通項や差異もあり、興味深い体験でした。
キロキロ

キロキロ

ストスパ

「劇」小劇場(東京都)

2025/02/12 (水) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

高校の同級生が結婚し、式を終えた出席者たちが二次会としてカラオケボックスに集う。そのカラオケボックスで働いている主人公も同じ高校出身で、実は同級生のひとり。案内状は実家に届いたのか、主人公は式の存在を知らず、結婚の事実も知らなかった。35歳を迎えた登場人物たちは、各々の生活事情を抱え、それぞれの「人生の岐路」を意識せざるを得ない状況に陥っていた。

ネタバレBOX

そんな二次会に集う同級生たちの群像劇。人間には「岐路」と称されるタイミングが何度か訪れるが、35歳はそのひとつと言えるだろうし、登場人物たちの悩みや葛藤は、観客が感情移入しやすい要素かもしれない。ただ、これは個人的な感想だが、劇中にはエネルギッシュな大振りの表現が多く、それに圧倒されているうちに、なんとなく物語の流れに乗り損なってしまったことが残念だった。
CHAiroiPLIN FES 2025

CHAiroiPLIN FES 2025

CHAiroiPLIN

本多劇場(東京都)

2025/02/06 (木) ~ 2025/02/16 (日)公演終了

実演鑑賞

太宰治作品をモチーフにした、おどる小説シリーズの『ERROR』の再演版。僕は初演も観ていて、おそらく初演時にも似た感想を抱いたと思うのですが、ダンス作品でありながら強くストーリー性を感じる一作でした。朗読した記録音声を「聴く小説」と称するように、今作は正に「おどる小説」だと思います。

ネタバレBOX

太宰治の『人間失格』と短編『失敗園』を土台に創作されたそうで、登場人物たちが野菜や植物などに置き換えられ、育成・成長などの「失敗の過程」を語ります。印象的なのは、舞台中央に吊るされた長いポール。劇が進行する度に登場する小道具などをポールに吊るしていき、その「バランス」こそが重要と語ります。生きていく過程で得た経験を自身に蓄積していき、それらの要素が複雑に絡み合い構成されていくのが人生だとすると、それを簡略化し視覚化したものと言えるのかも。踊るシーンも多くダンス作品であることは間違いないが、それ以上に「小説の舞台化」というイメージで観劇しました。
GOTTANI!!!

GOTTANI!!!

CHAiroiPLIN

本多劇場(東京都)

2025/02/09 (日) ~ 2025/02/09 (日)公演終了

実演鑑賞

本多劇場で観るCHAiroiPLIN。公演期間中に既成作・新作を織り交ぜた短編集を一日限定上演。「ごった煮」と言いつつも、統一感のあるラインナップだと感じましたし、団体の特性なども見えやすかったと思います。

ネタバレBOX

既成作ふたつと新作ひとつ、合計3作のラインナップ。上演の合間に映像で団体の活動歴を流すのですが、それぞれの会場、作品名、受賞歴などが時系列で紹介され、改めて「しっかりした活動実績をもつ団体」だと感じました。社会性を帯びたモチーフの作品、群舞で魅せるスポーティな作品、短編小説を原作とした都会的で幻想的な作品、等々、多彩な創作を展開しつつ、どこか統一感も感じさせる構成でした。

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