園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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居場所・ドラマの基礎と応用(2プログラム)

居場所・ドラマの基礎と応用(2プログラム)

中野成樹+フランケンズ

シアター711(東京都)

2026/05/19 (火) ~ 2026/05/24 (日)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★★

ナカフラによる演劇作品集。様々な短編〜中編を複数集め、2プログラムにパッケージされている。近年のナカフラ公演によく見られる形式で、僕の中では音楽ライブの「セットリスト」のように捉えています。多彩なレパートリーと多様な活動経験を誇るナカフラならではのスタイルと言えるかも。

今回は、公募した「1分間の戯曲」で構成された『ランダム1・2』や、1947年に執筆された秋元松代のデビュー作『軽塵』、ナカフラの代名詞とも言える「誤意訳」としてテネシー・ウィリアムズの短編2作が上演された。

ネタバレBOX

2プログラムを観劇して思うのは、テーマの「居場所」が全体隅々まで行き届いているなぁ……という実感でした。テネシー・ウィリアムズの短編がこのテーマに直結するのは勿論のこと、秋元松代の『軽塵』も、公募を経て採用された1分間戯曲も、このテーマの上に立っている、と強く感じます。1分間戯曲は「その断片をお楽しみください」とアナウンスされ、前後の物語から独立し、自立した戯曲として、まさに「居場所を求めて彷徨い、ここに辿り着いた」物語のように思えた。

『ランダム』は、形式的にはショートコントのような形になるが、笑いの要素は薄め、あるいは抑えめで、余韻が長めに残るストーリーに感じられた。『軽塵』は、強い問題意識を持って執筆されたことがよく伝わる、論理的かつ俯瞰視のしっかりした戯曲。1947年なので、まだ戦後の混乱期と言える時代に、戦争をモチーフにしつつ、私たちはどう生きるか? どう暮らしていくべきか? という自立や自尊について言及していることに驚いた。テネシー・ウィリアムズ原作の2本は、どちらも現代の設定。現代的なリアルと、そのねじれのような歪みが混ざり合う、複雑かつ、私たちがいま直面している「現在」を観ているよう。2作とも、キレッキレの台詞、極上の見立て表現、現代的キャッチーさ、的確な演技体が混在する、至福のナカフラ体験。

ナカフラ公演として新鮮に感じたのは、2プログラムとも終盤を締めくくった身体表現。ダンスで締めるナカフラは、おそらく初めて観たかも。元々「語らないシーン」で魅せることに長けた団体なので、作風との相性は良いと思います。振付は Von・no ズ。

「居場所」というテーマは、社会問題のひとつではあるし、積極的に取り上げるべきものだと思います。けれども、小劇場作品では、意外にも上演例が少ないかも…と、今回改めて感じました。(←あくまで僕の経験上の感想です)。そんな中、ナカフラは過去公演を含めて、居場所をテーマにした上演が多いように感じます。『軽塵』が執筆された時代から現代まで、あるいは日本のみにとどまらず、人間が生まれ、育ち、生き続ける環境において、居場所は大きなテーマなのだと改めて考えました。
裏緑特技悲喜話(うらみどりとくぎひきばなし)​  ​

裏緑特技悲喜話(うらみどりとくぎひきばなし)​ ​

爍綽と

浅草九劇(東京都)

2026/05/20 (水) ~ 2026/05/24 (日)上演中

実演鑑賞

俳優・佐久間麻由さんの団体「爍綽と」の第3回公演。外部から作・演出家を招聘するスタイルで、今回はTHE ROB CARLTONの村角太洋さんが作・演出を担います。キャスティングやアフタートークゲストなどから察するに、演劇ファンとお笑いファンを上手に融合させたい、という意図を感じます。実際、客席の反応も上々で、舞台上と客席による良い相乗効果が起きている印象でした。

ネタバレBOX

観劇後にタイトルを見直すと、「……なるほどねぇ」と思える展開で、創作過程から丁寧に計算された一作であることが窺い知れます。物語前半は、ドアからの出入りを多用したシチュエーションコメディに近い印象でしたが、後半は、生っぽいドタバタをより活かした、ライブ感強めの笑いが印象的でした。「一粒で二度美味しい」的なコメディだと思います。
かいころく

かいころく

安住の地

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

蚕(かいこ)にまつわるお話を同時上演する企画公演。2026年現在でレパートリーが三作あり、この先演目が増える可能性もありそう。当パンによると「元養蚕農家で上演する作品」を依頼されたことがきっかけだとか。これらの演目を養蚕と縁のある土地で上演するとか、想像しただけで激アツだなぁ。

上演前に作・演出の私道かぴさんによる「蚕に関する前説」があり、これも良かった。私道さんが「蚕にあまり馴染みのない方もいらっしゃると思うので、少し解説を」と仰っていたが、上演作品と観客の間に、こういう丁寧なコミュニケーションを挟んでくれるのはとても有難い。

ネタバレBOX

僕が観劇した日は、創作した順番に観劇できた。蚕や養蚕そのものにスポットが当たる(ように見えた)『養蚕農家編』、製糸業が盛んになり、女性の働き方や工場労働を描いた『工女編』、そして、蚕の飼育や品種改良をモチーフに、市井の人々の楽ではない暮らしぶりや、その生き方、命の問題を描く『蚕種編』。この順番で観ると、「蚕」を起点とした作り手たちの興味や問題意識が、徐々に拡張・発展していることがよく分かる。また全ての作品で、人間と、その営みを描いており、産業の歴史を俯瞰視したようなドライな作品ではない。

2月に上演された前作『よそほひ』もそうでしたが、出演者1〜2人の少人数体制での創作&上演が、作品そのものを形作っている点も興味深い。一人の俳優が何役もこなし、落語のように掛け合うシーンなども、この団体や作品の特徴でもあり、この形式の必然でもある。3都市ツアーを行うことも含めて、細部までよく計算&配慮された創作だと感じます。

……などと考えていて、ふと会場内の床に目をやると、モチーフの根幹とも言える繭が床上に散らばっている。もちろん意図的に配置されているのですが、ここは妙な「雑さ」を感じ、こういう全体バランスも魅力のひとつと感じました。
優しい劇団の大恋愛 Volume10『夕焼け色のダイダラボッチ』

優しい劇団の大恋愛 Volume10『夕焼け色のダイダラボッチ』

優しい劇団

吉祥寺シアター(東京都)

2026/05/09 (土) ~ 2026/05/09 (土)公演終了

実演鑑賞

名古屋が活動拠点の団体で、僕は初見でした。この「大恋愛」シリーズは、事前に出演者へ台本を郵送し、個別稽古を重ねてもらった上で、上演当日の朝から、顔合わせ、稽古、本番、撤収を一日で行う企画だそうです。実質的な拘束日は一日になるのかな…? 小劇場で演劇公演を主催するハードルが徐々に高まりつつある昨今、実現可能かつ持続可能なフォーマットや企画性を模索する姿勢には共感できます。実際に色々な劇団・演劇人が、それぞれの特徴を活かすやり方を模索しているなか、優しい劇団が選んだ選択肢が「この企画」だったのでは。過去には河川敷で上演したこともあるそうで、コロナの影響でしょうけれど、もしこの企画を河川敷で観たら全く違う印象になりそうだなぁ……と想像。

ネタバレBOX

主に東京で活動する舞台俳優を中心に、優しい劇団の劇団員も出演する座組。単純に動員への期待もあるでしょうし、珍しい組み合わせを観られる希少性への期待もあるでしょう。個人的によく知る出演者も多く、その意味でのお得感は確かにありました。一方で、この企画性の器の限界も割とすぐ可視化できてしまうため、そこは諸刃の剣でもあります。上演全体にうっすらと漂う「内輪感」も少し気になりました。ただし、意図的に特殊なスタイルを選択した企画公演なので、その意図は汲みたいし、その意味でも、この公演だけでは判断できないなぁ…と思いました。
牧神の午後 Version.1

牧神の午後 Version.1

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2026/05/04 (月) ~ 2026/05/05 (火)公演終了

実演鑑賞

特徴がはっきりしているのに、どこか不思議な感覚に陥る。そんな二律背反に似た感想を抱きました。スーパーやコンビニなどのレジ袋にハサミを入れて形を作り、人形のようなものを作ります。次に、円状に並べた数台の扇風機(送風機)で上昇気流を作り、レジ袋人形を空中に舞わせます。人間、あるいは妖精のように見えるたくさんのレジ袋人形たちが舞う様子を、観客たちがじっと見守る……という流れ。フォルムが人型なこともあり、気流になびくレジ袋人形たちがそれぞれ個別の動きをするので、その様子には命の存在を感じます。個人的に興味深かったのは、その様子を「人間が、自身より小さい生物を観察する」のか、「人間より大きな生物が、人間を観察する」のか、その見方で印象が大きく異なるのでは?という点。どう見えたか?はまさに観客次第なので、感想の幅も広いでしょう。環境を整えさえすれば再現性は高いのに、逆に環境を整えないと絶対に再現できないという意味でも、ひとときの幻想のような不思議な体験ができました。

ファソラシどすこい!タコどすこい!

ファソラシどすこい!タコどすこい!

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2026/05/04 (月) ~ 2026/05/05 (火)公演終了

実演鑑賞

企画コンセプトに惹かれて、関心を持ちました。観劇前は「相撲甚句に寄っているのかな?」と想像しましたが、そんなこともなく、声楽や合唱など、色々な文化がミックスされ、かつ大人と子どもが一緒に楽しめる「音楽と相撲のイベント」になっていたと思います。特に「お子さんに飽きさせない」工夫は随所に見られ、そういう点も好印象でした。GW、そしてこどもの日の上演なので、来場したお子さんたちが、休み明けの学校で友達や先生にどんな話をするのだろう?と想像すると、ちょっと可笑しい。「劇場で四股を踏みました」とか言うのかな…?

『サボテンの微笑み』

『サボテンの微笑み』

キューブ

シアタートラム(東京都)

2026/03/29 (日) ~ 2026/04/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

登場人物7名が織りなす、静かで、情感豊かな、群像会話劇。ある兄妹を軸に、決して広いとは言えないささやかな人間相関が描かれ、人々の心の機微が丁寧に紡がれていく。上演時間は途中休憩を含む3時間強。派手さで魅せる物語ではないが、全く飽きることなく前のめりで観劇できた。

ネタバレBOX

とある兄妹と、その父親(の幽霊)。兄が密かに慕う女性と、兄の友人で妹が密かに慕う男性。女性の元夫。そして、兄妹と同じ町内の花屋の店員。登場人物はこの7名のみ。この人物たちの日常と、兄妹の淡い恋模様、そして、人物同士の心の機微が描かれていく。兄と妹は共に内向的な性格で、他者とのコミュニケーションが得意ではない。亡くなった父親は兄妹に莫大な遺産を残したが、幽霊となった今でも兄妹たちに干渉する。物語の核となる兄妹の恋模様は、上り調子に見えて、中盤から別の様相を見せ始める……。特別大きな出来事は起こらず、人と人が静かに向き合い、言葉を交わし、ゆっくりと時が流れる。台詞で語られる心情と、台詞で語られない心情、その双方が観客へしっかり届く一作でした。

出演俳優は皆さん魅力的で、独特の色気を持つ人たちばかり。特に緒川たまきさんは、ケムリ研究室の過去公演で演じてきたどのキャラクターとも異なる女性像を演じ、その引き出しの多さに驚かされます。早くも次回公演が楽しみになる、団体も、作品も、共に充実の公演だと感じました。
粛々と運針

粛々と運針

iaku

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2026/04/09 (木) ~ 2026/04/19 (日)公演終了

実演鑑賞

劇場内に入り、最初に目に飛び込んできたのは、銀色の巨大な輪が吊られた舞台美術でした。初演は新宿眼科画廊とのことで、空間性を考慮すると、舞台美術は全く別物でしょう。これは、今回の舞台美術で観劇した後だから感じたことですが、舞台美術がここまで大きく変わると、観客の観劇体験は全く変わってきます。無駄のないシンプルな舞台美術が作品の魅力に大きく貢献していました。

ネタバレBOX

その巨大な輪の後方には階段がふたつあり、舞台を見下ろすような高い位置に座った白い衣装を着た二人の登場人物が縫い物をしています。ワイヤーが降りてきて、巨大な輪が斜めに傾いた状態になると、別の登場人物が二人出てきて、会話が始まります。巨大な輪の内側はどこかの家で、後方の階段とは別空間のようです。

物語は、序盤から中盤程度まで、とある夫婦、とある兄弟、の二組の会話で進んでいきます。夫婦は「妊娠したかもしれない新しい命を、産むか、産まないか」について。兄弟は「癌で入院中の高齢母親の延命」について、そして「母親に見せてあげたい孫の顔(=新しい命)」について、議論を続けます。中盤以降は、後方にいる二人も会話をします。この白い衣装の二人が、兄弟の母親であり、宿った新しい命を象徴する存在であることが、徐々に分かってきます。二人の会話劇が三組、それらが入り組んで構成された立体的な会話劇、という捉え方で観ました。

夫婦と兄弟は、基本的に相対する意見を持っており、その議論が会話の中心。それは「すれ違う」というより、根本的に思想や立場が異なる議論であり、着地点を見つけるのはかなり困難な状況。それでも、何とか着地点を見つけようと対話は続くーー。

全体の構成、会話の展開、俳優の存在感、そして舞台美術などが組み合わさった、演劇としての総合力は高いと感じます。個人的にはそれだけで十分見応えがありました。ただし、劇中で描かれる「命に関する価値観」が自身と合わず、あまり観劇に集中できなかった観客もいらっしゃるかもしれません。ですが、僕個人が作品から感じたことは、価値や倫理の提示、あるいは、価値や倫理の正解を描くことではなく、話し合いの場そのものを描く、その場を提供しようとする「試み」でした。
I Want To Hold Your Hand

I Want To Hold Your Hand

ROCKSTAR有限会社

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2026/04/11 (土) ~ 2026/04/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

コンドルズ × ハンドルズ による合同コラボ公演も今年で3回目。僕は全3回観ていて、毎年良い刺激をもらっています。障がい者&健常者がひとつのステージで舞い、それをある程度客観的に見た時に、普通に違和感を感じないことが、とてもコンドルズらしい。車椅子の方もいるし、それぞれ不自由な箇所も異なるので、身体の動きは不揃いですが、それがまるで気にならず、妙な統一感やまとまりがあるのです。そこには「支援活動」のような雰囲気はなく、ダンス公演としてのダイナミズムや情熱が渦巻いていました。近藤良平やコンドルズメンバーだからこそ、これだけ垣根のないフラットなステージが創れるのだろうなぁと思うと、本当に、奇跡のような出会い・組み合わせと言えるでしょう。コンドルズの「人を巻き込む力」に魅了された公演でした。

The Closet Revue

The Closet Revue

EPOCH MAN〈エポックマン〉

ザ・スズナリ(東京都)

2026/04/04 (土) ~ 2026/05/04 (月)公演終了

実演鑑賞

下北沢のスズナリで一ヶ月のロングラン公演。観劇前は単純に「凄いなぁ」と思っていましたが、観劇後には、小沢さんの覚悟、そして強い思い、それらの現れのように感じました。ロングラン公演を行うことで、じわじわと口コミが広がっていき、テーマに共感する人が観に行ったり、逆に共感できない人が観に行くこともあるでしょう。より多くの人へ、より多様な人へ、作品を届けたいという強い思いがあるからこそ、スズナリでのロングランだと、想像しました。

ネタバレBOX

舞台美術で特徴的なのは、中央位置にある円形状の小さなステージ。タイトルに「revue」が含まれるので、ショー上演のためのステージと捉えられます。その周囲に同じく円形状にワイヤーが吊られ、カーテンのような状態になっています。そのワイヤーに様々な衣装が吊られており、シーン状況によってそれらを用いながら物語が進んで行きます。

テーマは、性自認や性的嗜好に関するカミングアウト。子どもの頃からその不確かさを実感する登場人物が、いじめや自認について悩み、揺らぎ、紆余曲折しながら、自身の心と向き合っていく。社会の中で生きづらさを強く実感し、辿り着いた場所が「秘密を告白できる場所」の The Closet Revue だった。

同じ苦悩や葛藤を持つ者が集い、胸の内を告白できる場所を描いた物語なので、明るいレビューシーンやユーモアを感じ取れるシーンもあるものの、全編を通して見ると、内容は非常にシリアス。後半からラストシーンにかけて、自分たちの生き方やカミングアウトについてなど、真剣な問答や独白がある。その真面目な姿勢、真面目な演出が、真っ直ぐかつ力強い。そして、それらのシーンを、作・演出・出演の小沢さんは、役柄上の「傍観者」として見守り続ける。客席から見ていると、舞台中央に登場人物たち、そこから少し後ろに(役柄としてそこにいる)小沢さん、という構図が、とても印象的でした。祈り、そして慈愛の眼差しを向ける傍観者のように感じました。
GOTTANI!!2026

GOTTANI!!2026

CHAiroiPLIN

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2026/04/04 (土) ~ 2026/04/05 (日)公演終了

実演鑑賞

2025年11月にニューヨークで上演された、踊る小説『橋づくし~The Seven Bridges~』(作・三島由紀夫)の凱旋上演、そして新作となる、踊る詩集『こだまでしょうか』(作・金子みすゞ)の二本立て。力強い群舞シーンが印象的なカンパニーですが、この二作はどちらも10名以下のダンサーで構成され、身体性や人間性により重きを置いたように感じられました。

ネタバレBOX

個人的に印象深いのは『こだまでしょうか』。詩集がダンス作品になる新鮮な驚きもありますし、頭の中で、文字そのものが踊り手に変換されたイメージも浮かびました。創作の幅の広がりを感じますし、ストイックな創作姿勢も健在。ダンスカンパニー として、他に替えの効かない存在だと改めて思います。
日米交流「異文化ダンス記憶の出会い」

日米交流「異文化ダンス記憶の出会い」

セッションハウス

神楽坂セッションハウス(東京都)

2026/03/28 (土) ~ 2026/03/29 (日)公演終了

映像鑑賞

セッションハウスによる、異文化交流・共生プログラム「ダンスブリッジ」シリーズの最新作。今回は配信映像で拝見しました。マドモアゼル・シネマ、近藤良平、米国のダンスカンパニー 「サンディエゴダンスシアター」による3演目。三者三様の差異も興味深いけれど、物語性を重視した表現、という意味ではひと繋がりの印象もあり、統一感があるように感じられました。

ネタバレBOX

上演内容とは直接関係のない余談かもしれませんが、「初見であり、おそらく一度しか観られない」団体や演目、そして、「何度も観ているし、今後も観る機会がある」団体や演目では、主観的な見方が変わってくるなぁ…と考えました。比較対象がある、ないという話でもあるし、その一期一会の演目と向き合う際の、観客の覚悟や集中力の話でもあります。「一度きり」だと、どうしても派手さや見易さに影響を受けがちですが、サンディエゴダンスカンパニーの上演は、もっと骨太な、本質的な表現に感じられました。
天照と倭姫命

天照と倭姫命

人間の条件

高田馬場ラビネスト(東京都)

2026/04/01 (水) ~ 2026/04/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

この団体が事前に提示してくれる公演コンセプトやあらすじなどは、とても丁寧で、かつ観劇の参考になるので、興味のある方は公演概要をご覧ください。公演チラシには「本作で挑むのは、神道を切り口とした、日本人のアイデンティティの再定義」とあります。これだけ読むと難解な印象が残りますが、実際の上演には、観客への配慮と見易さへの工夫が多く見受けられます。特に、シーンの意図と表現方法の因果関係が明確で、「いま何が表現されているか?」を想像しやすく、自分の意思で思考を巡らせることの多い、価値のある観劇体験ができました。

ネタバレBOX

舞台構造や演出などに能へのリスペクトを感じ取ることができます。モチーフとの相性もあり、その試みは上手く機能していると感じられました。物語はある種ロードムービー(移動する物語)的な側面があり、天照大神を祀る土地を探す旅に出て、その先々で様々な登場人物たちと出会います。彼らは土地それぞれの神々を信仰しており、天照や大和の国に対して抱く感情も様々。人々がその土地で生きること、そして、その信仰や生活が略奪されたり、服従を強いられることなど、同化や異化、あるいは共生などの諸問題が描かれます。

時代設定は大体2100年くらい前の日本だが、現代に創作され、上演され、現代の観客が観ることで、いまの日本社会が抱える問題をいくつも連想することができます。多くの創作意図が背景にあり、結果としてそうなっていることは理解しつつ、それでも、現代を写す鏡としてしっかり機能していることに感銘を受けました。学びの多い観劇体験に感謝。
第2回KO-KO-KOENJI演劇けんきゅー大会

第2回KO-KO-KOENJI演劇けんきゅー大会

徳島県立小松島高等学校放送・演劇部

座・高円寺2(東京都)

2026/03/23 (月) ~ 2026/03/25 (水)公演終了

実演鑑賞

高校演劇の現役生と卒業生が垣根を越えて参加できるショーケース形式の企画公演。上演すること、鑑賞されること、対話すること、などを経て「高校演劇を楽しく研究しよう!」という意図があるそうです。特に、演劇部を卒業した生徒たちが、その後の人生でも演劇と関わり続けるためには? という問題意識を大事にされています。東京・高円寺で徳島県の高校演劇が観られる機会は貴重ですし、個人的に初見の学校や団体も多く、良い経験となりました。

ネタバレBOX

高校生4演目、卒業生3演目、計7演目を観劇しました。部員の少ない学校は二人芝居を上演したり、部員の多い学校は群像劇や集団パフォーマンスを披露したり、各学校・団体の状況に応じた内容でした。良い意味で、自分の内側で顕在化したのは「これらの上演を高校演劇の文脈で観るべきか?」という問題意識。全体的に「演劇活動とは?」「演劇部とは?」「高校演劇とは?」という、作り手たちの内省的な視点が見える作品が多く、客席に座る大人たちも「高校演劇を研究する」場に参加することができました。
ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド

MAO WORKS

インディペンデントシアターOji(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

脚本・演出・出演を兼ねるのが、このユニットの主宰・田村真央さんで、劇の構成やコンセプト的に「主演」と解釈して差し支えないと思います。劇中には、韻を踏むように単語を繋げる「言葉遊び」的な台詞も多く、また、マイクを持って歌うラップシーンの挿入も多数あり、この作者特有の、作風へのこだわりを感じます。団体コンセプトとしても「主宰のやりたい表現を追求する」団体だそうです。

ネタバレBOX

王子小劇場の長方形の空間に円形舞台を作っていて、客席はそれを囲むようにL字型に配列されています。また、僕は初見の団体で、以前の作品のことは分からないのですが、割と物語要素が薄く観念的な内容で、観劇後はやや脳が疲れてクラクラしました。個人的には量子力学の話かな? と感じましたが、全然違ったらすみません。劇中の核とも言える概念として「わたくしの世界(に入ること)」が念入りに描かれますが、僕個人は「その世界の有り様」というか、その世界の具体的な特徴をあまり感じとることができず、その点が残念でした。
川影と半月に、

川影と半月に、

つぁつぁ

おぐセンター2階(東京都)

2026/03/20 (金) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初見の団体でしたが、僕はとても好きな作品でした。会場はおぐセンター2F。古民家をリノベーションした建物で、1Fは食堂兼コミュニティスペース、2Fがアトリエ利用可のスペースになっています(多分)。上演時間約1時間。出演者4名。窓の外は心地良い天気で、観劇環境も良好でした。

ネタバレBOX

登場人物は4人の女性。うち3名は20代前半(おそらく大学生)、1名は70代後半。各々が各々の事情を抱えていて、特に行くべき場所もなく、偶然も重なり、同じ時間を過ごすようになる。70代の女性「まきちゃん」は、普段は面倒見の良い朗らかな女性だが、時折軽度の認知症の症状が見受けられるようになっていた。一緒にお茶を飲んだり、ゆっくりお喋りをしたり、穏やかな時間を過ごす女性たち。だが、あるシーンを境にまきちゃんの姿は登場しなくなり、3人はまきちゃんの故郷を一目見ようと、ヒッチハイクで長崎へ向かうのだがーー。

タイトルにも含まれている「川」が重要なモチーフになっており、忙しい日常や他者とのすれ違い、葛藤、孤独など、私たちの生活・時間の象徴になっている(と思う)。全編を通して、丁寧かつ等身大の表現が多く、作り手たちの日常を感じさせつつ、上手くフィクションに昇華している印象を受けました。僕は、自分たちの小さな日常と正対し、等身大の感情や問題意識を提示してくれる、当人たちの「大切なこと」が丁寧に描かれた作品が大好物で、この作品に感じたのは、まさにそういう感想。そうそう、東京には意外と川が多く、川を見たくなったり、川岸に座り込みたくなったりするよね、などと考えたり。また、僕の父親(故人)も認知症でとても苦しんだので、そういう想いも重ね合わせて観劇しました。

4人の出演俳優は皆さん良い表情をしていて、それをコンパクトなアトリエ空間で観られたことも良かったです。おぐセンターの空間にマッチする存在感でした。

また、団体主宰のときちとせさんが当パンに書かれていたことに深く共感できるので、色々な苦労があるのだろうと想像しつつ、ぜひ創作活動を継続して欲しいと感じています。シンプルに応援したくなる団体や俳優と出会えた機会に感謝。
墓場、女子高生

墓場、女子高生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

テアトルBONBON(東京都)

2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

今更ながら「初演はいつだっけ?」と思い調べてみると、2010年のようです。ENBUゼミの公演であることは覚えていたけれど、上演年は誤認していました(震災以降だと思っていました)。そうか、2010年か〜…。その後、作者の福原さん自ら再演を手掛け、以降も様々な形で再演されています。今回は石澤希代子さんプロデュースによる上演。石澤さん本人も出演しています。

ネタバレBOX

福原充則脚本の感想を書く際はいつも似たようなことを書いてしまうのですが、やはり、言語チョイスの繊細さ&美しさがとても好きです。美辞麗句で飾り立てるのではなく、市井の言葉で飾るスタイル。劇の中盤以降から終盤にかけての物語展開、特に「再度死因を決め直す」シーンなども美しく、福原脚本独特の美学に魅了されました。
ミッキーアイランド

ミッキーアイランド

滋企画

アトリエ春風舎(東京都)

2026/03/09 (月) ~ 2026/03/22 (日)公演終了

実演鑑賞

終演後に「滋企画の次回公演は来年3月に『ガラスの動物園』を再演いたします」というアナウンスを聞き、思わずニヤリとしてしまいました。今作『ミッキーアイランド』から『ガラスの動物園』まで、団体が取り扱う作品の幅がとても広い。これもまた、団体や主宰・佐藤滋の特性のひとつなのかも。

外部から糸井幸之介を招き、アトリエ春風舎で上演される妙ージカル(妙なミュージカル)。期待が高まります。

ネタバレBOX

公演チラシに記載されているあらすじどおり、もうすぐ古希を迎える男性ロッカーがライブハウスで腰を痛め、自室のベッドで横になったまま動けず過ごす…という物語。幼少期の母親との思い出、離婚した元妻と出会った思い出など、男の過去エピソードも複数挿入され、男の現在と過去がゆっくり浮かび上がる。中盤に挿入された、長尺の台詞のないシーン(クラシック音楽に合わせて俳優たちが乱舞するようなシーン)や、エンディング的に上演されるテーマ曲『ミッキーアイランド』など、台詞以外で魅せるシーンが多かったことも、糸井作品ならでは。物語の表層的には、愛するロックを追い求めて自由に生きた男の晩年(?)を明るく愛嬌たっぷりに描いているが、その裏側には悲哀や絶望も潜んでいるはず。個人的には「ダメを肯定する」ことも、小劇場演劇の魅力のひとつと考えます。経済力も社会的地位もないが、周囲の人々から愛され、つつましく命を全うしようとする男の生き様に、独自の哲学を見た気がしました。
ガラパゴス

ガラパゴス

キルハトッテ

水性(東京都)

2026/03/10 (火) ~ 2026/03/15 (日)公演終了

実演鑑賞

公演資料を読むと、一本芯がしっかり通っている作品であることが伝わってきます。創作意図もテーマも理解できるし、合理的でありながら、見易さや受け取り易さも意識している。公式情報に載っているためネタバレにはならない…と思いつつ、以降は下のboxに書きます。

ネタバレBOX

タイトルが『ガラパゴス』で、ガラパゴスだからイグアナなのでしょう。いわゆる「ガラパゴス化」の意味合いでこのタイトルだと解釈しています。女性の基本的人権をテーマにしているため、シーン各所や台詞の数々で「自分で決められる権利、そして、その重要性」に触れられています。作品が放つメッセージが点として散りばめられ、それらを頭の中で反芻し繋げていくと、やはり一本芯が通った上演に感じられます。ただ、お話の中盤以降で、シチュエーションやエピソードの数が増えてしまい、やや散漫になってしまった印象も。公演全体の骨格やテーマはしっかりしているため、演劇的な膨らませ方に時間や労力を割くと、よりバリエーションが生まれそう。個人的に、この団体が持つコラージュセンスに魅力を感じているので、今後の創作にも期待しています。
繊維葬失

繊維葬失

人文借景

早稲田大学某所(東京都)

2026/03/13 (金) ~ 2026/03/13 (金)公演終了

実演鑑賞

早稲田大学の敷地内で上演された企画公演。架空のオートクチュールデザイナーをモチーフに、それにまつわる作品や資料の展示会と、演劇の上演会がセットになっています。企画の中心にいるのが架空の人物のため、基本的にフィクションであり、意図的に創作された内容で構成されています。展示会には、人物の年表、肖像、作品などが置かれ、上演会は、同じ会場内で行われ、出演者がその展示会を訪れた設定で進行します。

ネタバレBOX

公演資料を読んだ時に、その企画性に惹かれました。演劇公演の見せ方として新鮮に感じたし、演劇は「いない人の話をする」ことに向いています。アイディアの広げ方にも複数の可能性があると思いました。展示会の中を覗くと、笑いにウエイトを置いた内容に見え、コメディ要素が強い印象を受けました。後半の上演会では、その展示会を訪れた大学生が「分からないこと」をテーマに短編を上演します。この内容も、いわゆる「あるあるネタ」のような雰囲気で、やはり笑いにウエイトを置いており、展示会を含めて全体的に笑いが強めかなぁ…と思わせつつ、最後の最後に「分からないことこそ面白い・惹きつけられる」というシリアスなシーンで締めていました。公演趣旨や企画性も理に適っており、本人たちがやりたいことの輪郭もはっきりしていて、そこへ等身大の問題意識を投影し、コミカルでありながら、それ一辺倒ではない作品。全編を通して、そんな印象を持ちました。

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